(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤと、このワイヤの周囲に配置したワイヤ被覆層と、このワイヤ被覆層の周囲に配置したワイヤ接着剤層と、を備え、前記ワイヤ被覆層が、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は10GHzでの比誘電率が3.6未満の低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれら2種類以上の組み合わせであり、前記ワイヤ接着剤層が、フッ素系樹脂又は比誘電率が10GHzで3.6未満の低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれらの2種以上の組合せであり、前記ワイヤ被覆層の10GHzでの比誘電率が2.1〜3.2又はワイヤ接着層の10GHzでの比誘電率が2.6〜3.2である絶縁被覆ワイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近電子機器の高速化が進み、配線板内を流れる電気信号は、短時間により多くの情報を伝達するため、周波数が益々高くなっている。このような高周波対応の基板設計では、(イ)導体損失と(ロ)誘電損失を考慮する必要がある。(イ)導体損失については、信号線となる配線を太くすることが有効であるが、高密度化した配線板においては、信号線の配線幅に制限がある。このため、(ロ)誘電損失の改善が重要となっている。(ロ)誘電損失については、コア基材やプリプレグ等の信号線となる配線の周囲に配置される絶縁材料の比誘電率や誘電正接を下げることが有効であるが、高周波対応のコア基材やプリプレグ等の材料は、一般の材料に比べて、コストアップになる。ここで、高周波とは、限定はしないが、特に約10GHz以上の高周波信号をいい、高周波対応材とは、一般のFR−4材(10GHzでの比誘電率が約3.9)に比べて、比誘電率が小さく、高周波信号に対する伝送損失を抑制するコア基材やプリプレグ等の材料をいう。
【0006】
マルチワイヤ配線板についてみると、まず、(イ)導体損失については、従来のポリイミド(10GHzでの比誘電率が3.6)のワイヤ被覆層を用いた絶縁被覆ワイヤを使用したマルチワイヤ配線板においては、ワイヤ径が0.10mmの場合、10GHzでの伝送損失が−40〜45dB/mであり、10GHz以上の高周波対応には、ワイヤ径が0.16mm以上にワイヤ径を太くすることが考えられる。ここで、ワイヤ径とは、ワイヤ被覆層を含まない電線の直径をいう。しかし、ワイヤ径を太くすると、配線密度が低下して1層当りの配線収容量が減少するため、層構成の増加や板厚の増加となり、基板設計が困難であった。
【0007】
次に、マルチワイヤ配線板の(ロ)誘電損失については、高周波対応の場合、マルチワイヤ配線板に使用する絶縁層(コア基材及びプリプレグ)や布線用接着シートの接着剤層の材料として、高周波材を用いることが考えられるが、マルチワイヤ配線板の大部分を占める材料に、高周波材を用いるので、コストアップの問題がある。
【0008】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、コストアップを抑制しつつ、高周波対応が可能な絶縁被覆ワイヤ及びマルチワイヤ配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に関する。
1.ワイヤと、このワイヤの周囲に配置したワイヤ被覆層と、このワイヤ被覆層の周囲に配置したワイヤ接着剤層と、を備え、前記ワイヤ被覆層が、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は10GHzでの比誘電率が3.6未満の低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれら2種類以上の組み合わせであり、前記ワイヤ接着剤層が、フッ素系樹脂又は10GHzでの比誘電率が3.6未満の低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれらの2種以上の組合せであ
り、前記ワイヤ被覆層の10GHzでの比誘電率が2.1〜3.2又はワイヤ接着層の10GHzでの比誘電率が2.6〜3.2である絶縁被覆ワイヤ。
2.項
1の絶縁被覆ワイヤと、この絶縁被覆ワイヤの周囲に配置した絶縁層と、この絶縁層を介して配置した導体パターンと、を備えるマイクロストリップ構造又はストリップ構造を有するマルチワイヤ配線板。
3.項
1の絶縁被覆ワイヤと、この絶縁被覆ワイヤの周囲に配置した絶縁層と、この絶縁層を介し前記絶縁被覆ワイヤを挟んで対向配置した導体パターンと、を備えるストリップ構造を有するマルチワイヤ配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストアップを抑制しつつ、高周波対応が可能な絶縁被覆ワイヤ及びマルチワイヤ配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の絶縁被覆ワイヤを表し、
図2(a)、(b)は、それぞれ本発明の一実施形態のマルチワイヤ配線板の概略断面図を表す。
【0013】
(絶縁被覆ワイヤ)
図1に示すように、本実施の形態の絶縁被覆ワイヤ9は、信号線となるワイヤ1と、このワイヤ1の周囲に配置したワイヤ被覆層2と、このワイヤ被覆層2の周囲に配置したワイヤ接着剤層3と、を備え、前記ワイヤ被覆層2が、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれら2種類以上の組み合わせである絶縁被覆ワイヤ9である。
【0014】
このように、本実施の形態の絶縁被覆ワイヤでは、ワイヤ被覆層の材料として、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂のような、従来用いていたポリイミド(10GHzでの比誘電率が3.6)よりも比誘電率の小さい絶縁材料を用いるため、ワイヤの周囲に配置されたワイヤ被覆層の比誘電率が低下するので、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。また、ワイヤ被覆層として用いる、これらの比誘電率の小さい材料は、一般にコスト高であるが、ワイヤの周囲に用いるだけでよいので、使用量が少なくて済み、マルチワイヤ配線板全体としてのコストアップを抑制することができる。
【0015】
絶縁被覆ワイヤとは、信号線となるワイヤを、絶縁樹脂で被覆したワイヤをいう。
図1に示すように、本実施の形態の絶縁被覆ワイヤ9は、信号線となるワイヤ1と、このワイヤ1の周囲に配置した絶縁樹脂のワイヤ被覆層2と、このワイヤ被覆層2の周囲に配置した絶縁樹脂のワイヤ接着剤層3とを備えている。
【0016】
ワイヤとは、信号線となる電線をいう。ワイヤとしては、銅が一般的に用いられる。また、ワイヤ径とは、ワイヤを被覆する絶縁樹脂を除く、電線のみの直径をいう。
【0017】
ワイヤ被覆層とは、信号線となるワイヤを被覆するものであり、絶縁樹脂を用いて形成される。このような絶縁樹脂としては、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれら2種類以上の組み合わせが用いられる。
【0018】
ワイヤ被覆層に用いるフッ素系樹脂としては、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)が挙げられる。ポリアミドイミド系樹脂としては、例えば、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。低誘電ポリイミド樹脂とは、10GHzでの比誘電率が3.6未満のポリイミド樹脂のことをいい、このような低誘電ポリイミド樹脂としては、例えば、含フッ素ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0019】
比誘電率の値は、トリプレートストリップライン共振器法(IPC−TM−650 2.5.5.5)により測定した10GHzでの値であり、以下、同様である。
【0020】
ワイヤ被覆層の形成方法としては、フッ素系樹脂(PFA、ETFE等)であれば、ペレット状にしたフッ素系樹脂(PFA、ETFE等)を、約300℃程度の炉内で溶融させ、溶融したこれらの樹脂中にワイヤを通して引き出すことで、ワイヤに融着させる、いわゆる引き出し法を用いることができる。また、ポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂であれば、上記の引き出し法に加え、他の方法として、ポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂を有機溶媒と混ぜてワニスとし、これをワイヤの周囲にコーティングする方法を用いることができる。
【0021】
ワイヤ被覆層の厚みとしては、特に限定はないが、10〜20μm程度である。この程度の厚みであれば、ワイヤ被覆層の比誘電率が高周波信号の伝送損失を改善するのに有効であり、かつ、周囲にワイヤ接着層を配置しても、絶縁被覆ワイヤとしての布線性を確保でき、取り扱いにも適している。
【0022】
ワイヤ接着剤層とは、ワイヤ被覆層の周囲に配置され、絶縁被覆ワイヤと、その下に配置される布線用接着シート(接着性絶縁層)とを、布線によって接着するものである。
【0023】
ワイヤ接着層が、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂の何れか1種類又はこれらの2種以上の組合せである絶縁被覆ワイヤであるのが好ましい。
【0024】
このように、本実施の形態の絶縁被覆ワイヤでは、ワイヤ接着層の材料として、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂のような比誘電率の小さい絶縁材料を用いるため、ワイヤ被覆層だけでなく、ワイヤ被覆層の周囲に配置されたワイヤ接着層の比誘電率も低下するので、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。また、ワイヤ接着層として用いる、これらの比誘電率の小さい材料は、一般にコスト高であるが、ワイヤ被覆層の周囲に用いるだけでよいので、使用量が少なくて済み、配線板全体としてのコストアップを抑制することができる。
【0025】
ワイヤ接着層に用いるフッ素系樹脂としては、ワイヤ被覆層の場合と同様に、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)が挙げられる。ポリアミドイミド系樹脂としては、例えば、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。低誘電ポリイミド樹脂とは、10GHzでの比誘電率が3.6未満のポリイミド樹脂のことをいい、このような低誘電ポリイミド樹脂としては、例えば、含フッ素ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0026】
ワイヤ被覆層の10GHzでの比誘電率が2.1〜3.2又はワイヤ接着層の10GHzでの比誘電率が2.6〜3.2である絶縁被覆ワイヤであるのが好ましい。このようなワイヤ被覆層又はワイヤ接着剤層に用いる樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂として、PFA、ETFEが挙げられる。
【0027】
このように、本実施の形態の絶縁被覆ワイヤでは、ワイヤ被覆層の比誘電率及びワイヤ接着層の比誘電率が、一般のFR−4材(10GHzでの比誘電率が約3.9)に比べて小さいため、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。また、ワイヤ被覆層又はワイヤ接着層として用いる、これらの比誘電率の小さい材料は、一般にコスト高であるが、ワイヤ又はワイヤ被覆層の周囲に用いるだけでよいので、使用量が少なくて済み、配線板全体としてのコストアップを抑制することができる。
【0028】
(マルチワイヤ配線板)
図2(a)、(b)に示すように、本実施の形態のマルチワイヤ配線板は、上記実施形態の絶縁被覆ワイヤ9と、この絶縁被覆ワイヤ9の周囲に配置した絶縁層(プリプレグ6と布線用接着シート7又はプリプレグ8)と、この絶縁層(プリプレグ6と布線用接着シート7又はプリプレグ8)を介して配置した導体パターン5と、を備えるマイクロストリップ構造又はストリップ構造を有するマルチワイヤ配線板である。
【0029】
このように、本実施の形態のマルチワイヤ配線板では、ワイヤ被覆層の材料として、フッ素系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂又は低誘電ポリイミド樹脂のような比誘電率の小さい絶縁材料を用いるため、ワイヤの周囲に配置されたワイヤ被覆層の比誘電率が低下するので、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。また、ワイヤ被覆層として用いる、これらの比誘電率の小さい材料は、一般にコスト高であるが、ワイヤの周囲に用いるだけでよいので、使用量が少なくて済み、配線板全体としてのコストアップを抑制することができる。さらに、絶縁被覆ワイヤの周囲に、絶縁層を介して導体パターンを備えることで、マイクロストリップ構造又はストリップ構造を形成するため、ワイヤ被覆層に比誘電率の小さい材料を用いるだけで、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。
【0030】
図2(a)、(b)に示すように、絶縁被覆ワイヤ9の周囲に配置した絶縁層は、コア基材4との接着に用いるアンダーレイ層としてのプリプレグ6と絶縁被覆ワイヤ9を布線する際に用いた布線用接着シート7又はコア基材10との接着に用いる絶縁材としてのプリプレグ8等の多層化接着用の絶縁材料で形成される。
【0031】
図2(a)、(b)に示すように、絶縁層(プリプレグ6と布線用接着シート7又はプリプレグ8)を介して配置した導体パターン5は、銅張り積層板の銅箔を回路加工して形成した導体パターン5を、布線用接着シート7又はプリプレグ6、8等の多層化接着用の絶縁材料を介して、積層することにより、絶縁被覆ワイヤ9を挟んだ一方側又は両側に配置される。
【0032】
図2(a)に示すように、上記実施形態の絶縁被覆ワイヤ9と、この絶縁被覆ワイヤ9の周囲に配置した絶縁層(プリプレグ6と布線用接着シート7又はプリプレグ8)と、この絶縁層(プリプレグ6と布線用接着シート7又はプリプレグ8)を介し前記絶縁被覆ワイヤ9を挟んで対向配置した導体パターン5と、を備えるストリップ構造を有するマルチワイヤ配線板であるのが好ましい。
【0033】
このように、絶縁層を介し絶縁被覆ワイヤを挟んで対向配置した導体パターンにより、ストリップ構造を構成できるので、ワイヤ被覆層に比誘電率の小さい材料を用いるだけで、高周波信号の誘電損失が少なく、伝送特性を改善することができる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
図3(a)、(b)は、本実施例の絶縁被覆ワイヤ9及びそれを用いたマルチワイヤ配線板の製造工程の概略を示す。
【0035】
図3(a)に示すように、本実施例の絶縁被覆ワイヤ9は、信号線となるワイヤ1と、このワイヤ1の周囲に配置したワイヤ被覆層2と、このワイヤ被覆層2の周囲に配置したワイヤ接着剤層3と、を備えている。ワイヤ被覆層2は、フッ素系樹脂であるテフロンPFA(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名、「テフロン」は登録商標。)を用いており、引き出し法により、ワイヤ1の周囲に融着している。ワイヤ接着剤層3は、フッ素系樹脂であるテフロンETFE(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名、「テフロン」は登録商標。)を用いており、引き出し法により、ワイヤ被覆層2の周囲に融着している。このようにして、絶縁被覆ワイヤ9を準備した。
【0036】
図3(a)に示すように、銅張積層板(日立化成株式会社製、商品名:MCL−I−671)のコア基材4に回路形成して導体パターン5を形成し、プリプレグ6(日立化成株式会社製、MCL−I−671)でアンダーレイ層6を積層形成し、布線用接着シート7(日立化成株式会社製、商品名:HPAI)をラミネートして、上記で準備した絶縁被覆ワイヤ9を布線して固定する。布線用接着シート7は熱硬化型を用い、絶縁被覆ワイヤ9を数値制御装置により超音波出力25kHz、布線速度25mm/secで布線をした後、200℃、90分の熱処理で、絶縁被覆ワイヤ9のワイヤ接着剤層3と布線用接着シート7を硬化し固定させ、布線基板17を作製した。
【0037】
図3(b)に示すように、上記で準備した布線基板17の両面に、絶縁材としてプリプレグ8(日立化成株式会社製、商品名:GFA―2)を介して、銅箔11(日本電解株式会社製、商品名:NDGR)を、熱プレスにより多層化積層し一体化した。その後、絶縁被覆ワイヤ9のワイヤ1と表層の導体パターン15とを接続させるべき位置、及び、内層の導体パターン5(グランド層)と表層の導体パターン15とを接続させるべき位置に、ドリルで貫通穴明して、過マンガン酸処理でホールクリーニングした後、無電解銅めっき(日立化成株式会社製、商品名:L−60)を用いてスルーホールめっきした後に、エッチングにより導体パターン15を形成し、マルチワイヤ配線板を作製した。
【0038】
(実施例2)
図3(a)に示すように、本実施例の絶縁被覆ワイヤ9は、ワイヤ被覆層2とワイヤ接着剤層3の両方に、フッ素系樹脂であるテフロンETFE(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名、「テフロン」は登録商標。)を用いており、引き出し法により、ワイヤ1の周囲に融着している。これ以外の点は、実施例1と同様にして、絶縁被覆ワイヤ9を準備した。
【0039】
図3(a)、(b)に示すように、実施例1と同様にして、布線基板17及びマルチワイヤ配線板を作製した。
【0040】
(
参考例)
図3(a)に示すように、本
参考例の絶縁被覆ワイヤ9は、ワイヤ被覆層2として、10GHzでの比誘電率が3.6の低誘電ポリイミド(デュポン社製、含フッ素ポリイミド)を用いており、引き出し法により、ワイヤ1の周囲に融着している。ワイヤ接着剤層3は、シロキサン変性ポリイミドアミド樹脂(日立化成株式会社製、商品名:KS−6600)を用いており、引き出し法により、ワイヤ被覆層2の周囲に融着している。これ以外の点は、実施例1と同様にして、絶縁被覆ワイヤ9を準備した。
【0041】
図3(a)、(b)に示すように、実施例1と同様にして、布線基板17及びマルチワイヤ配線板を作製した。
【0042】
(比較例)
図3(a)に示すように、本実施例の絶縁被覆ワイヤ9は、ワイヤ被覆層2として、従来のポリイミド(Industrial Summit Technology社製、商品名:Pyre−ML)を用いており、引き出し法により、ワイヤ1の周囲に融着している。ワイヤ接着剤層3は、シロキサン変性ポリイミドアミド樹脂(日立化成株式会社製、商品名:KS−6600)を用いており、引き出し法により、ワイヤ被覆層2の周囲に融着している。これ以外の点は、実施例1と同様にして、絶縁被覆ワイヤ9を準備した。
【0043】
図3(a)、(b)に示すように、実施例1と同様にして、布線基板17及びマルチワイヤ配線板を作製した。
【0044】
実施例1〜3及び比較例のマルチワイヤ配線板について、比誘電率及び誘電正接の値を測定した結果を、表1及び
図4に示す。表1に示した比誘電率及び誘電正接の値は、何れも
図4のトリプレートストリップライン共振器法(IPC−TM−650 2.5.5.5)により測定した信号減衰測定結果における周波数10GHzでの値である。マルチワイヤ配線板の伝送特性は、表1及び
図4に示すように、ワイヤ被覆層、ワイヤ接着層の比誘電率、誘電正接が小さいほど、マルチワイヤ配線板の信号伝送特性が優れているといえる。以上のようにして、信号伝送特性に優れたワイヤ多層配線板が得られる。
【0045】
【表1】