(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空糸膜を動的粘弾性測定装置に固定したまま、前記中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えつつ前記動的粘弾性測定を行う、請求項1に記載の中空糸膜の耐久性評価方法。
対象に圧縮モードで繰り返しひずみを与える繰返し圧縮試験機を用いて、前記周波数および前記ひずみ振幅にて、前記中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えるステップと、
前記繰返し圧縮試験機から取り出した前記中空糸膜について、動的粘弾性測定装置を用いて、前記周波数および前記ひずみ振幅にて、前記中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えつつ前記動的粘弾性測定を行うステップと
を繰り返し行う、請求項1に記載の中空糸膜の耐久性評価方法。
前記中空糸膜の有効長、前記周波数および前記ひずみ振幅を、前記中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与える際に前記中空糸膜の途中で座屈が生じないような中空糸膜の有効長およびひずみ振幅に設定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜の耐久性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「圧縮モード」とは、中空糸膜を長手方向に圧縮する方向のひずみまたは応力を中空糸膜に与えて、中空糸膜を変形させる変形モードを意味する。
「中空糸膜の有効長」とは、動的粘弾性測定装置または繰返し圧縮試験機の一対の固定具間に静的張力0Nでかつ弛みがない状態で固定された中空糸膜において、前記固定具に接しておらず、かつポッティング部も形成されていない部分の長さを意味する。
「ひずみ」とは、中空糸膜の有効長L
0に対する一対の固定具間の変位量ΔLの比(ひずみ(%)=ΔL/L
0×100)を意味する。
「ひずみ振幅」とは、繰り返しひずみを与えた際のひずみの最大値と最小値(すなわち0%)との差を意味する。
【0015】
<中空糸膜の耐久性評価方法>
本発明の耐久性評価方法は、下記のステップ(S1)およびステップ(S2)を有する。なお、本発明における変形モードとしては、MBRにおける曝気に伴う中空糸膜の揺れで生じる運動様式を再現している点から、圧縮モードを採用する。
(S1)中空糸膜について、あらかじめ設定された一定の周波数およびあらかじめ設定された一定のひずみ振幅にて、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えつつ動的粘弾性測定を行うステップ。
(S2)動的粘弾性測定によって得られた、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化から、中空糸膜の耐久性を評価するステップ。
【0016】
(中空糸膜)
評価対象の中空糸膜としては、多孔質中空糸膜、非多孔質中空糸膜、多層(二層、三層またはそれ以上)の複合中空糸膜等が挙げられる。支持体(中空編紐、中空組紐等)によって補強されたものであってもよい。また、均一な内部構造を有する膜であってもよく、不均一な内部構造を有する膜であってもよく、多孔質層と均質層との両方を具備する複合膜であってもよい。
【0017】
中空糸膜の材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体等)、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネイト、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート等が挙げられる。
【0018】
(ステップ(S1))
ステップ(S1)は、あらかじめ設定された一定の温度下で行う。通常は、23±2℃で行う。
【0019】
ステップ(S1)においては、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与え続けてさえいれば、動的粘弾性測定を常時行う必要は必ずしもない。すなわち、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与え続けている間、動的粘弾性測定は、常時行ってもよく、断続的に行ってもよい。
以下、ステップ(S1)の一例である第1の実施形態および第2の実施形態について説明する。
【0020】
(ステップ(S1)の第1の実施形態)
ステップ(S1)の第1の実施形態においては、中空糸膜を動的粘弾性測定装置に固定したまま、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えつつ動的粘弾性測定を行う。動的粘弾性測定は、常時行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0021】
図1に示すように、評価対象の中空糸膜10を、動的粘弾性測定装置の一対の固定具20間に静的張力0Nでかつ弛みがない状態で固定する。
中空糸膜10の固定方法は、ステップ(S1)の間、固定部分が緩む等のトラブルによって中空糸膜10が外れることがない固定方法であればよく、特に限定されない。
【0022】
固定具20としては、例えば、円柱状のサンプルを固定するためのドリルチャック、サンプルを挟み込んで固定する2枚の平板等が挙げられる。中空糸膜10の両端の固定部分に固定具20からの応力が集中して中空糸膜10が破損することを避ける点からは、ドリルチャックが好ましい。
【0023】
中空糸膜10をより確実に固定するために、中空糸膜10の固定部分を補強してもよい。補強方法としては、中空糸膜10の固定部分の中空部に、中空部と同じ径の針金を差し込む方法;中空糸膜10の固定部分に高強度の樹脂を塗布してポッティング部12を形成する方法等が挙げられる。
【0024】
中空糸膜10の有効長L
0は、設定されるひずみ振幅および動的粘弾性測定装置の可動域、中空糸膜10の膜径によって適宜設定される。中空糸膜10の有効長L
0は、中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えた際に、ステップ(S1)の初期段階で
図2に示すような座屈を中空糸膜10の途中に生じない範囲が好ましい。ステップ(S1)の初期段階で中空糸膜10が座屈した場合、中空糸膜10の耐久性評価に必要な、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化を得ることができない場合がある。
【0025】
図3に示すように、あらかじめ設定された一定の周波数およびあらかじめ設定された一定のひずみ振幅にて、中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返し正弦波のひずみ(振動)を与える。
動的粘弾性測定における変形モードには、引張モード、圧縮モード、両持ち梁曲げモード、3点曲げモード、せん断モード等がある。MBRにおける曝気に伴う中空糸膜の揺れで生じる運動様式を再現している点から、本発明においては、動的粘弾性測定における変形モードとして圧縮モードを採用する。
【0026】
中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与える際の周波数、すなわち繰り返しの速度は、使用する中空糸膜10の材質および動的粘弾性測定装置の性能によって適宜設定される。周波数を高くすれば、ステップ(S1)を短時間で実施できる。一方、周波数の上限は、動的粘弾性測定装置における負荷機構(アクチュエータ等)の能力に依存する。また、使用する中空糸膜の材質が熱を生じやすい場合は、周波数を高くしすぎると、熱による影響で中空糸膜の劣化が促進されてしまうという問題を生じる。
【0027】
中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与える際のひずみ振幅は、中空糸膜10の有効長L
0および動的粘弾性測定装置の可動域、中空糸膜10の膜径によって適宜設定される。ひずみ振幅は、中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えた際に、ステップ(S1)の初期段階で
図2に示すような座屈を中空糸膜10の途中に生じない範囲が好ましい。
ひずみ振幅は、中空糸膜の有効長L
0に対する、中空糸膜に圧縮モードでひずみを与えた際の一対の固定具間の最大変位量ΔL
maxの比(ひずみ振幅(%)=ΔL
max/L
0×100)から求められる。
【0028】
動的粘弾性測定は、動的粘弾性測定装置を用い、公知の手法によって行えばよい。動的粘弾性測定によれば、中空糸膜に正弦波のひずみ(振動)を加えたときに得られる、正弦的に変化する検出応力と、この検出応力の、正弦波のひずみに対する位相差とを利用して、貯蔵弾性率が求められる。
【0029】
(ステップ(S1)の第2の実施形態)
ステップ(S1)の第2の実施形態においては、対象に圧縮モードで繰り返しひずみを与える繰返し圧縮試験機を用いて、あらかじめ設定された一定の周波数およびあらかじめ設定された一定のひずみ振幅にて、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えるステップ(S11)と;繰返し圧縮試験機から取り出した中空糸膜について、動的粘弾性測定装置を用いて、ステップ(S11)と同じ周波数およびステップ(S11)と同じひずみ振幅にて、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えつつ動的粘弾性測定を行うステップ(S12)とを繰り返し行う。動的粘弾性測定は、結果として、断続的に行うこととなる。
【0030】
ステップ(S11):
図1に示すように、評価対象の中空糸膜10を、繰返し圧縮試験機の一対の固定具20間に静的張力0Nでかつ弛みがない状態で固定する。
繰返し圧縮試験機は、あらかじめ設定された一定の周波数およびあらかじめ設定された一定のひずみ振幅にて、対象に圧縮モードで繰り返し正弦波のひずみ(振動)を与え得る装置であればよく、その構成等は特に限定されない。
【0031】
中空糸膜10の固定方法は、第1の実施形態における動的粘弾性測定装置への固定方法と同様であり、好ましい形態も同様である。
固定具20としては、第1の実施形態における動的粘弾性測定装置の固定具20と同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
中空糸膜10の補強方法は、第1の実施形態における中空糸膜10の補強方法と同様であり、好ましい形態も同様である。
中空糸膜10の有効長L
0は、第1の実施形態における中空糸膜10の有効長L
0と同様であり、好ましい形態も同様である。
【0032】
図3に示すように、あらかじめ設定された一定の周波数およびあらかじめ設定された一定のひずみ振幅にて、中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返し正弦波のひずみ(振動)を与える。
【0033】
中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与える際の周波数、すなわち繰り返しの速度は、第1の実施形態における周波数と同様であり、好ましい形態も同様である。
中空糸膜10の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与える際のひずみ振幅は、第1の実施形態におけるひずみ振幅と同様であり、好ましい形態も同様である。
【0034】
ステップ(S12):
一旦ステップ(S11)を中断し、繰返し圧縮試験機から中空糸膜を取り出す。
繰返し圧縮試験機から取り出した中空糸膜について、第1の実施形態と同様にして、動的粘弾性測定装置に固定し、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返し正弦波のひずみ(振動)を与えつつ動的粘弾性測定を行う。
【0035】
ステップ(S12)における周波数およびひずみ振幅は、ステップ(S11)における周波数およびひずみ振幅と同一とする。
動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率を求めた後、ステップ(S12)を中断し、動的粘弾性測定装置から中空糸膜を取り出す。
動的粘弾性測定装置から取り出した中空糸膜について、繰返し圧縮試験機に固定し、ステップ(S11)を再開する。
【0036】
ステップ(S12)におけるひずみの繰返し数は、動的粘弾性測定を実施できる程度の繰返し数であればよい。
ステップ(S12)を行う頻度は、要求される耐久性の評価の精度に応じて適宜決定される。ステップ(S12)を行う頻度が多いほど、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化を確実にモニタリングできる。
【0037】
(ステップ(S2))
ステップ(S2)においては、ステップ(S1)の動的粘弾性測定によって得られた、ひずみの繰返し数(ステップ(S1)が第2の実施形態の場合は、ステップ(S11)とステップ(S12)の通算回数)に対する貯蔵弾性率の変化から、中空糸膜の耐久性を評価する。
【0038】
図4に、中空糸膜の耐久性評価に用いる2種類のグラフを示す。一方は、後述する実施例において、ステップ(S1)における動的粘弾性測定によって得られた、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化を示すグラフである(○印)。ここで、実際にプロットした貯蔵弾性率は、初期段階での貯蔵弾性率に対する各繰返し数での貯蔵弾性率の相対値である。他方は、後述する参考例において、ステップ(S1)と同じ条件にて中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えた中空糸膜について、実際にリークテストを行うことによって得られた、ひずみの繰返し数に対するリーク発生率の変化を示すグラフである(◆印)。
【0039】
ステップ(S1)の初期においては、多少のブレはあるものの貯蔵弾性率はほぼ一定である。
ひずみの繰返し数がある程度多くなると、貯蔵弾性率の上昇がみられる。貯蔵弾性率の上昇開始と、リーク発生率の上昇開始との間には相関関係が見られる。
さらに繰返し数が増えると、貯蔵弾性率はピークを示し、その後、下降に転じる。この間、リーク発生率は上昇し続ける。
【0040】
したがって、要求されるリーク発生率に応じて貯蔵弾性率の閾値を規定することによって、貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数の多少から中空糸膜の疲労破壊に対する耐久性を評価できる。例えば、10%以下のリーク発生率が要求されている場合は、
図4の例においては、閾値を1.05とし、これを超えた場合にNGと判定すればよい。また、70%以下のリーク発生率が要求されている場合は、
図4の例においては、閾値を0.95とし、これを下回った場合にNGと判定すればよい。
【0041】
具体的には、複数品種の中空糸膜についてステップ(S1)を行い、それぞれについて貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数を求め、その多少から耐久性の優劣を評価できる。
また、新品の中空糸膜からサンプリングを行い、これについてステップ(S1)を行い、貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数を求め、その多少から製品の品質を知ることができ、これを利用して品質管理を行うことができる。
【0042】
また、下記のようにして使用中の中空糸膜の余命を予測できる。
同一品種の未使用の中空糸膜および実際の現場で使用された使用年数の異なる複数の中空糸膜についてステップ(S1)を行い、それぞれについて貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数を求め、使用年数に対するひずみの繰返し数の検量線を作成する。
同一品種の余命を知りたい中空糸膜についてステップ(S1)を行い、貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数を求め、これを検量線にあてはめることによって中空糸膜の検量線上での使用年数を求め、検量線においてひずみの繰返し数が0となる年数(寿命)までの余命を予測できる。
さらに、中空糸膜の検量線上での使用年数と、実際の使用年数とを比較することによって、その中空糸膜自体の疲労の度合いを評価できる。
【0043】
また、同一品種の複数の中空糸膜について、それぞれひずみ振幅を変えてステップ(S1)を行い、貯蔵弾性率が閾値を超えるまたは下回るまでのひずみの繰返し数を求め、ひずみの繰返し数とひずみ振幅との関係を評価しておき、実際の現場における中空糸膜への負荷の大きさに相当するひずみの繰返し数を外挿により求めることによって、現場での中空糸膜の耐久性を予測できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる網紐を支持体とするポリフッ化ビニリデン製の多孔質中空糸膜(三菱レイヨン社製、内径1000μm、外径2800μm、長さ:12cm)を用意した。
中空糸膜の中空部と同じ径の2cmの針金を2本用意した。
中空糸膜の両端から針金をそれぞれ差し込んだ。中空糸膜の両端からそれぞれ3cmの位置まで、2液混合型のエポキシ系接着剤(セメダイン社製、ハイスーパー30)を薄くかつ均一に塗布し、十分に硬化させることによってポッティング部を形成し、評価対象の中空糸膜Aを作製した。
【0046】
中空糸膜Aの両端それぞれ2cmをドリルチャックに固定することによって、中空糸膜Aを動的粘弾性測定装置(島津製作所社製、電磁力式微小試験機、マイクロサーボMMT−101N−10)に取り付けた。
室温:23℃、中空糸膜の有効長:6cm、静的張力:0N、周波数:5Hz、最大変位量:6mm(ひずみ振幅:10%)、圧縮モードの条件にて、動的粘弾性測定をひずみの繰返し数:2×10
7回(約5日間)まで行った。
【0047】
動的粘弾性測定によって得られた、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化を
図4に示す。なお、ひずみ振幅が設定値と一致する以前のデータは、測定開始直後の不安定なデータとして取り除いた。貯蔵弾性率が下降を開始するひずみの繰返し数は2.3×10
5回であった。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、周波数を20Hz、最大変位量を3mm(ひずみ振幅:5%)とし、ひずみの繰返し数を2×10
7回(約1日間)とした以外は、実施例1と同一の条件で動的粘弾性測定を行った。結果を
図5に示す。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、周波数を30Hz、最大変位量を3mm(ひずみ振幅:5%)とし、ひずみの繰返し数を2×10
7回(約1日間)とした以外は、実施例1と同一の条件で動的粘弾性測定を行った。結果を
図5に示す。
【0050】
(参考例1)
実施例1と同様にして中空糸膜Aを100本用意した。
100本の中空糸膜Aについて、自作の繰返し圧縮試験機を用い、実施例1の動的粘弾性測定と同条件にて、中空糸膜の長手方向に圧縮モードで繰り返しひずみを与えた。100本の中空糸膜Aは、10本ずつの10個のグループに分け、各グループごとにひずみの繰返し数を異ならせた。
【0051】
所定回数の繰り返しひずみを与えた各グループごとに下記のリークテストを実施した。
中空糸膜Aの一次側を封止し、二次側から気体を加圧導入できるようセッティングした。中空糸膜Aを純水中へ浸漬した状態で気体を加圧導入し、中空糸膜Aの膜表面からの気体のリークの有無を確認した。導入する気体の圧力は40kPaとした。
各グループ(各ひずみの繰返し数)におけるリーク発生率を下記式から算出した。ひずみの繰返し数に対するリーク発生率の変化を
図4に示す。
リーク発生率(%)=リークを発生した中空糸膜Aの本数/10本×100
【0052】
図4から明らかなように、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化と、ひずみの繰返し数に対するリーク発生率の変化とには相関関係が見られる。したがって、貯蔵弾性率の変化は、中空糸膜の破壊に起因していると考えられる。
【0053】
異なるひずみ振幅で動的粘弾性測定することにより得られた、ひずみの繰返し数に対する貯蔵弾性率の変化を
図5に示す。なお、ひずみ振幅が設定値と一致する以前のデータは、測定開始直後の不安定なデータとして取り除いた。
ひずみ振幅5%で測定した実施例3の結果において、貯蔵弾性率が上昇し始める繰返し数は、ひずみ振幅10%で測定した実施例1(○印)の結果よりも高い繰返し数側にシフトした。これはひずみ振幅が低いほど中空糸膜への負荷も小さくなり、破壊までの繰返し数が大きくなったためと考えられる。
また、ひずみ振幅5%での測定結果について、実施例2(□印)では貯蔵弾性率はほぼ一定であったのに対し、実施例3(△印)では繰返し数約1×10
6回から貯蔵弾性率の上昇が見られた。さらに、動的粘弾性測定後のサンプルについてリークテストを実施したところ、実施例2で用いたサンプルではリークは見られなかったのに対し、実施例3で用いたサンプルではリークが確認された。したがって、貯蔵弾性率の変化(上昇)は中空糸膜の破壊に起因していると考えられる。また、動的粘弾性測定を行うことにより、リークテストを行うことなく、中空糸膜の破壊の有無をリアルタイムで判断できる。
【0054】
本発明の中空糸膜の耐久性評価方法によれば、動的粘弾性測定によって中空糸膜の疲労破壊に対する耐久性を評価できる。また、中空糸膜に繰り返しひずみ(または応力)を与えた後に、リークテストでリークの有無を確認して頻度を評価する方法に比べ、非常に少ないサンプル数で耐久性を評価できるため、サンプル数に限りがある場合に有利な方法となる。