【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0043】
尚、本実施例における図中の「MG」はモノグリセライドを意味し、「DG」はジグリセライドを意味し、「TG」はトリグリセライドを意味し、「FFA」は遊離脂肪酸を意味している。
【0044】
<実施例1>
(1)試験装置及び操作
図2に示す試験装置を使用して試験を行った。実質的な装置構成は
図1に示す油脂抽出装置1と同じである。抽出方式は、油脂抽出溶媒の供給と油脂含有物からの抽出物の取り出しを連続的に行う半回分式とした。
【0045】
抽出容器6はステンレス鋼(SUS316)製とし、サイズは、内径49.2mm、内部高さ69.2mm、内容量180cm
3とした。液体二酸化炭素とエントレーナの流入口となる抽出容器6の底部にはハニカム型の底板を取り付けた。抽出容器6は液体二酸化炭素とエントレーナの供給ラインと共に恒温槽8内に設置し、抽出容器6内を35℃に制御した。図中点線はリボンヒーターであり、必要に応じて配管内を適宜加熱した。また、図中Pは圧力計であり、Tは熱電対である。
【0046】
まず、抽出容器6内に油脂含有物100gを封入し、抽出容器6内の空気を二酸化炭素ガスで置換した。次に、シリンダ2から供給された二酸化炭素ガスを冷却器3で冷却して液体二酸化炭素とし、これを第一高圧ポンプ4で加圧して、最終的に超臨界状態で抽出容器6に4mL/分で導入した。尚、符号2aは減圧弁である。抽出容器6内を35℃まで昇温して30MPaまで昇圧した後、溶解平衡に到達させるために、超臨界二酸化炭素を抽出容器6内に二時間保持した後、抽出試験を開始した。
【0047】
油脂抽出物からの抽出物が溶解した超臨界二酸化炭素は、背圧弁9から常温・常圧下に排出して気化させ、抽出物を捕捉容器10内に捕捉するようにした。捕捉容器10は2つ準備し、いずれも氷槽11内に設置した。捕捉容器10及びフィルタ12を通過したガスの積算流量を計測する積算流量計13をフィルタ12の後段に設置した。
【0048】
(2)分析方法
捕捉容器10に捕捉された抽出物の質量は、電子秤量計(精度:0.1mg)で秤量した。
【0049】
排出された二酸化炭素の質量は、積算流量計13により計測された二酸化炭素ガスの積算流量に基づいて、理想気体方程式(室温及び大気圧、精度:3.6×10
−3g)を利用して計算した。
【0050】
抽出物中のモノグリセライド、ジグリセライド、及びトリグリセライドの含有量は、オンカラムインジェクターとZB−5HTキャピラリカラム(15m×0.32mm ID;df=0.1μm;Phenomenex製)を備えたガスクロマトグラフィー(GC−2010、島津製作所製)により測定した。分析条件は、EN14105(Fat and oil derivatives. Fatty acid methyl esters (FAME). Determination of free and total glycerol and mono-, di-, triglyceride contents (Reference method).)に準拠した方法で実施した。
【0051】
抽出物中の遊離脂肪酸の含有量は、価数分析(JIS K 0070:「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」日本規格協会、1992.)の結果から算出した。
【0052】
抽出物中のリンの含有量は、JPI法準拠により測定した。
【0053】
抽出物中の水分の含有量は、カールフィッシャー法(JIS K2275)により測定した。
【0054】
(3)油脂含有物
本実施例では、油脂含有物としてジャトロファ種子を用いた。このジャトロファ種子は、フィリピン国内にて収穫された後に十分に乾燥され、その後日本に輸入されたものである。殻を含むジャトロファ種子をミルで1mm程度に粉砕し、抽出試験に供した。
【0055】
(4)試験結果
(4−1)エントレーナの検討
超臨界二酸化炭素を油脂抽出溶媒とした油脂抽出におけるエントレーナの添加効果を検討した。
【0056】
エントレーナは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、ヘキサン(Hexane)、又はテトラヒドロフラン(THF)とした。
【0057】
エントレーナは、貯留槽20から第二高圧ポンプ21を介して、液体二酸化炭素供給ラインの第一高圧ポンプ4よりも下流の位置に添加した。符号22は電子秤量計である。
【0058】
エントレーナの添加量は、抽出容器6中の二酸化炭素質量流量に対して5wt%とした。
【0059】
まず、各種エントレーナを添加した場合の、排出された二酸化炭素の質量と抽出物の質量の関係について検討した結果を
図3に示す。
【0060】
エントレーナを添加することで、エントレーナを添加しない場合(つまり、超臨界二酸化炭素のみで抽出を行う場合)と比較して、排出された二酸化炭素の質量に対する抽出物の質量が増大することがわかった。したがって、エントレーナを添加することで、油脂含有物からの抽出物の抽出効率が増大することが明らかとなった。
【0061】
次に、各種エントレーナを添加した場合の、抽出物中の油脂(トリグリセライド)及び遊離脂肪酸の含有率、並びにリン(P)の含有量の経時変化を
図4に示す。
【0062】
抽出物中の油脂の含有率は、エントレーナを添加した場合、抽出試験開始から6時間で最大レベルに到達した。エントレーナを添加しなかった場合は、エントレーナを添加した場合と比較して抽出物中の油脂の含有率が低く、しかも徐々に少しずつ増加する傾向が見られた。抽出物中の遊離脂肪酸の含有率は、抽出試験開始から6時間経過時から急速に減少した。このことから、油脂は遊離脂肪酸から分離し得ることが明らかとなった。また、エントレーナを添加することで、油脂含有物からの油脂の抽出速度を確実に向上させることが可能であることが明らかとなった。
【0063】
抽出試験開始から12時間後の抽出物中の油脂の含有率は、エントレーナとしてヘキサンとTHFを用いた場合よりもメタノール又はエタノールを用いた場合の方が優れていた。しかしながら、エントレーナとしてメタノール又はエタノールを用いた場合、抽出物にリンが抽出されることが明らかとなった。一方で、エントレーナとしてヘキサン又はTHFを用いた場合には抽出物にリンが殆ど抽出されなかった。この結果から、エントレーナとしての、メタノールやエタノール等のアルコールの使用は、油脂の選択的な抽出においては適していないことが明らかとなった。
【0064】
以上の結果から、エントレーナとしては、THFまたはヘキサンの使用が好適であることがわかった。
【0065】
(4−2)油脂抽出条件の検討
油脂抽出時間をさらに短縮するために、油脂抽出条件をさらに検討した。二酸化炭素の流量を4mL/分から8mL/分に増大させ、且つTHFをエントレーナとしてその添加量を2.5wt%、5wt%、又は7.5wt%とした場合の、抽出物中の油脂(トリグリセライド)及び遊離脂肪酸の含有率の経時変化を
図5に示す。
【0066】
THFの添加量を2.5wt%とした場合には、抽出物中の油脂の含有率が抽出試験開始から4.5時間で最大に達した。また、遊離脂肪酸の含有率は、抽出試験開始から3時間経過後には十分に抑えられることが明らかとなった。
【0067】
THFの添加量を5wt%、7.5wt%とした場合には、抽出物中の油脂の含有率が抽出試験開始から3時間で最大に達した。また、THFの添加量を7.5wt%とした場合には、抽出物中の油脂の含有率が90%以上にまで達することが明らかとなった。さらに、遊離脂肪酸の含有率は、抽出試験開始から3時間経過後には十分に抑えられることが明らかとなった。
【0068】
また、THFの添加量を7.5wt%とした場合、抽出試験開始から4.5時間経過後には油脂は殆ど抽出されなくなった。
【0069】
表1に、二酸化炭素の流量を8mL/分とし、THFの添加量を7.5wt%とした場合の、抽出物の組成を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示される結果から、抽出開始90分後〜180分後において、遊離脂肪酸と水分の含有量が大幅に減少し、抽出開始180分後〜270分後においては、遊離脂肪酸と水分の含有量が極めて大幅に減少していることが確認できた。
【0072】
以上の結果から、エントレーナとしてTHFを用い、その添加量や二酸化炭素の流量等を調整することによって、水分、リン及び遊離脂肪酸を含む油脂含有物から、超臨界二酸化炭素を用いて油脂を抽出するに際し、水分、リン及び遊離脂肪酸の抽出を抑えて、油脂を選択的且つ短時間に抽出できることが明らかとなった。
【0073】
具体的には、二酸化炭素の流量を8mL/分とし、THFの添加量を7.5wt%とした場合には、抽出試験開始からから3時間分の抽出物は廃棄し、その後1.5〜2時間程度回収物を回収することで、油脂を高濃度に回収できることが明らかとなった。
【0074】
(4−3)ジャトロファ種子粉砕物の粒径の検討
ジャトロファ種子粉砕物の粒径が抽出物に与える影響について検討した。
【0075】
ジャトロファ種子粉砕物を篩い分けして、以下の2種の粒径のものを準備した。
(a)0.5mm以上1.0mm未満
(b)1.0mm以上1.4mm未満
【0076】
二酸化炭素の流量を8mL/分とし、THFの添加量を5wt%として、上記3種の粒径のジャトロファ種子粉砕物について、抽出試験を行った。結果を
図6に示す。
【0077】
ジャトロファ種子粉砕物の粒径が小さい方が、わずかに抽出物の抽出率が増加することが明らかとなった。したがって、ジャトロファ種子粉砕物は、抽出容器6に封入する前に適切に篩い分けしておくことが好適であると考えられた。
【0078】
(4−4)油脂含有物に含まれる水分が抽出効率に与える影響の検討
ジャトロファ種子の未処理品と乾燥処理品を用いて、油脂含有物に含まれる水分が抽出効率に与える影響について検討した。
【0079】
乾燥処理品は、ジャトロファ種子の殻をむいた後、すり砕き、乾燥して、試験に供した。尚、ジャトロファ種子の殻には殆ど油分が含まれていない。未処理品は乾燥処理を行わずに抽出試験に供した。未処理品の含水率は4.4%であり、乾燥処理品の含水率は2.3%であった。
【0080】
この試験では、油脂抽出処理の際にエントレーナは添加しなかった。
【0081】
未処理品と乾燥処理品について、排出された二酸化炭素の質量と抽出物の質量の関係について検討した結果を
図7に示す。乾燥処理品の場合の抽出物の抽出効率は、未処理品の場合の抽出物の抽出率と比較すると、25%程度増大していた。したがって、乾燥処理のような水分低減処理は、油脂含有物からの抽出物の抽出効率を改善する効果があることが明らかとなった。但し、ジャトロファ種子は、乾燥処理を行わずとも含水率が4.4%と低いことから、乾燥処理による抽出率の向上効果はそれほど大きなものではなく、乾燥等の水分低減処理を必須の処理とする必要はないと考えられた。
【0082】
(4−5)油脂抽出溶媒の違い抽出効率に与える影響の検討
油脂抽出溶媒として亜臨界二酸化炭素を用いた場合に抽出効率に与える影響について、油脂抽出溶媒として超臨界二酸化炭素を用いた場合と比較検討した。
【0083】
亜臨界二酸化炭素は、抽出容器6内の温度を25℃に制御することで生成させた。超臨界二酸化炭素は、上記の通り抽出容器6内の温度を35℃に制御することで生成させた。また、この抽出試験は、油脂抽出溶媒を超臨界二酸化炭素とした場合及び亜臨界二酸化炭素とした場合のいずれにおいても、エントレーナを添加せずに実施した。
【0084】
試験結果を
図8に示す。CO
2質量2000gまでは、超臨界二酸化炭素を用いた場合よりも亜臨界二酸化炭素を用いた場合の方が抽出率が若干低下する傾向が見られたものの、亜臨界二酸化炭素を用いた場合にも超臨界二酸化炭素を用いた場合と同様にCO
2質量の増加に伴って抽出率が増加する傾向が見られ、最終的には同じ抽出率となることが明らかとなった。このことから、亜臨界二酸化炭素を用いた場合にも、超臨界二酸化炭素を用いた場合と同様の油脂抽出傾向を示すことが明らかとなった。