特許第6226428号(P6226428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226428光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226428
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法。
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/27 20060101AFI20171030BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 6/024 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G02B6/27 301
   G02B6/02 421
   G02B6/024
   G02B27/28 A
   G02B5/30
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-134064(P2014-134064)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12063(P2016-12063A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159433
【弁理士】
【氏名又は名称】沼澤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡明
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−061996(JP,A)
【文献】 特開2009−175553(JP,A)
【文献】 特開2008−249914(JP,A)
【文献】 特開平04−291211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0100263(US,A1)
【文献】 特開平09−080269(JP,A)
【文献】 特開平04−268520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/44
G02B 5/30
G02B 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波保存ファイバとファラデー回転子との間に、偏波保存ファイバ側の第1偏光子と光アイソレータ側の第2偏光子との2枚の連続した偏光子を介して構成される光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法であって、偏波保存ファイバと第1偏光子を接着固定した後、光アイソレータ側の第2偏光子と偏波保存ファイバ側の第1偏光子を接着固定することを特徴とする光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法。
【請求項2】
前記第1偏光子と前記第2偏光子は正方形状または長方形状であって、第1偏光子の辺と第2偏光子の辺を揃えるように光アイソレータ側の第2偏光子と偏波保存ファイバ側の第1偏光子を接着固定することを特徴とする請求項1に記載の光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法
【請求項3】
前記第1偏光子と前記第2偏光子の形状が同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法
【請求項4】
前記第1の偏光子の平面の面積が前記第2の偏光子の平面の面積と同じか又はそれより大きいことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信や光計測で用いられる光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光計測において、半導体レーザから出た光が伝送路途中に設けられた部材表面からの反射光として半導体レーザに戻ってくると、レーザ発振が不安定になるため、偏光面を非相反で回転させて、この反射戻り光を遮断するファラデー回転子を用いた光アイソレータが知られている。また、このような光アイソレータを用いて、半導体レーザ素子(以下、「LD素子」という)と偏波保存ファイバを光学的に結合して構成された半導体レーザモジュールも知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。そして、近年、このような半導体レーザモジュールでは、偏波保存ファイバを透過する光が20dB以上の消光比を有することが求められている。
【0003】
ところで、この半導体レーザモジュールに用いる偏波保存ファイバは、顕微鏡で観察(又は局部拡大観察)しつつ、125μmの光ファイバをマーキング付きフェルールに接着固定し、その後、このマーキングを目印として研磨加工して製作されているが、このような製作工程では、この目印と偏波透過軸との間で±3deg程度の角度差異が発生してしまう現状である。
【0004】
また、光アイソレータと偏波保存ファイバとを光学的に結合したときに、光アイソレータの出射光軸間との間でも角度差異が発生してしまうために、20dB以上の消光比を有する半導体レーザモジュールを達成しようとすると、製作工程で生じる角度差異の合計を±5.7degの範囲に抑える必要がある。
【0005】
そのため、偏波保存ファイバの製作後に、LD光を発振させて、ファイバに光学的に結合される光学系を構成しながら、消光比メータで光を受けて光アイソレータの出射偏波方向と偏波保存ファイバとの角度を調整しているが、この作業でも、光軸ズレが大きく、光結合効率が変動しやすくなるために、角度の調製作業が困難であり、時間がかかってしまうという問題がある。
【0006】
他にも、角度の調整手法として、偏波保存ファイバ側から光を入射させて、光アイソレータのファイバ側偏光子と角度を合わせる手法も考えられるが、この手法では、本来の目的方向であるLD素子側からファイバ側へ光透過する方向と逆向きであるから、逆向きの磁場を与えながら調整・固定し、その後、再度逆向きの磁場を与えて本来の目的方向と同じ磁場方向とする必要があるため、同様に、手間と時間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
また、この手法では、長いワークでファイバを折らないように注意しながら作業を進める必要があり、しかも、電磁石のヨーク間距離を大きくとるために大型電磁石等が必要になるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−211239号
【特許文献2】特開平11−183759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
また、近年のコヒーレント通信においては、消光性能が25dB以上である半導体レーザモジュールが必要とされているため、偏波保存ファイバと光アイソレータのファイバ側偏光子間の角度を±5.7degの精度から、±3.2deg以内の精度にさらに向上させる必要があり、調整作業の精度の向上が求められている。
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、偏波保存ファイバ出力端での消光性能の高い光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行ったところ、偏波保存ファイバ側の偏光子5を偏波保存ファイバ6に予め接着固定した後に、この偏光子5と光アイソレータ側の偏光子4とを、その角度を調整しながら取り付ける方が調整作業が簡単で、しかも調整の精度を向上させることが出来ることを見出して、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法は、偏波保存ファイバとファラデー回転子との間に、偏波保存ファイバ側の第1偏光子と光アイソレータ側の第2偏光子との2枚の連続した偏光子を介して構成される光アイソレータ付偏波保存ファイバの製造方法であって、偏波保存ファイバと第1偏光子を接着固定した後、光アイソレータ側の第2偏光子と偏波保存ファイバ側の第1偏光子を接着固定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の製造方法では、第1偏光子と第2偏光子は正方形状または長方形状であって、第1偏光子の辺と第2偏光子の辺を揃えるように光アイソレータ側の第2偏光子と偏波保存ファイバ側の第1偏光子を接着固定することが好ましい。さらに、第1偏光子と第2偏光子の形状は同じであり、第1の偏光子の平面の面積が第2の偏光子の平面の面積と同じかまたはそれより大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、調整作業が簡単で、しかもその調整作業の精度を向上させることができるので、偏波保存ファイバ出力端での消光性能の高い光アイソレータ付偏波保存ファイバを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の光アイソレータ付偏波保存ファイバを示す模式図である。
図2図1を光入射側から見た模式図である。
図3】本発明の光アイソレータ付偏波保存ファイバを用いた場合の原理図である。
図4】2枚のファラデー回転子で構成された光アイソレータ付偏波保存ファイバを示す模式図である。
図5】1枚のファラデー回転子で構成された光アイソレータ付偏波保存ファイバを示す模式図である。
図6】光アイソレータチップを偏波保存ファイバに取り付ける他の手法を示す模式図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の光アイソレータ付偏波保存ファイバは、光ファイバ側から光を透過させながら角度調整して、偏光子5を偏波保存ファイバ6に予め接着固定した後、この偏波保存ファイバ側の偏光子5と光アイソレータ側の偏光子4とを接着固定して組立てるものである。したがって、本発明は、偏波保存ファイバ6とファラデー回転子3との間に、第1と第2の2枚の連続した偏光子4,5を介して構成されることを特徴とする。
ここで、「連続した」とは、図1に示すように、光路に配置された独立した2枚の偏光子4,5が、接着剤(空気層を含む)を介して続いている状態、又は、図6に示すように、光路に配置された独立した2枚の偏光子44,45が、偏光回転機能や偏光機能の無いガラス等の透明体(例えば、アイソレータ保持筐体49)を介して続いている状態をいう。したがって、この「連続した」状態において、独立した2枚の偏光子4の間に存在するものは、接着剤、空気層又は前記ガラス等の透明体である。
【0018】
本発明の実施態様では、偏波保存ファイバ6と偏光子5とを予め接着固定する場合、接着固定した時点で偏光子5付き偏波保存ファイバ6の消光比が25dB以上であるように調整することが好ましく、この場合の偏光子5の形状としては、透過偏光軸が判別しやすいように正方形または長方形状に切断加工したものが好ましい。
【0019】
図1は、本発明の光アイソレータ付偏波保存ファイバを示す模式図である。図1の実施態様では、ファラデー回転子3の両端面に偏光子2,4をそれぞれ接着固定した光アイソレータチップが偏光子5を介して偏波保存ファイバ6に接着固定されている。図2は、図1の光アイソレータ付偏波保存ファイバを光入射側から見た模式図であり、図3は、光アイソレータ付偏波保存ファイバを用いた場合の原理図である。
【0020】
図1の実施態様では、偏光子2,4とファラデー回転子3とから成るアイソレータチップを1枚用いているが、図4に示すように、3枚の偏光子と2枚のファラデー回転子で構成されたアイソレータチップを用いてもよい。そして、その場合、アイソレータチップの形状は、図2に示すように、偏光子4の透過光軸方向が判別しやすくなるように、予め正方形または長方形状に加工したものが好ましい。
【0021】
また、偏波保存ファイバ6と光アイソレータチップとを接着固定する場合は、偏光子5と偏光子4のそれぞれの加工辺を基準として、その角度を合わせるように調整すればよい。この調整作業において、偏光子4と偏光子5の形状が同じであれば、辺を揃えやすくなるし、また、偏光子5と偏光子4の大きさが同じか、又は何れか一方が大きいと辺を揃えやすくなるので好ましい。
【0022】
本発明によれば、偏光子5と偏光子4の角度の合わせ込み作業において、合わせ込み角度が±5degずれても、偏波保存ファイバ伝送での消光比劣化の影響はなく、偏光子5と偏光子4の角度ズレに起因する挿入損失が0.03dB程度(透過率で100%が99.3%に劣化する程度)で済むし、また、角度ズレが±10degでも、挿入損失が0.13dB程度発生(透過率で97.1%に劣化)するのみである。
【0023】
以上の記載のように、本発明では、偏波保存ファイバ側の偏光子5と光アイソレータ側の偏光子4とを、その角度を調整しながら接着固定するだけで、光アイソレータ付偏波保存ファイバを組立てることができるから、その組立て作業が簡単で、しかもその消光比を大幅に向上させることが出来る。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例について、具体的に説明する。
【0025】
<実施例1>
図1に示す実施例1では、先ず、偏波保存ファイバについて、1550nmの光を用いるため、同波長対応の光ファイバを準備し、この光ファイバをフェルール7中に固定し研磨した後、後方より光を入射させる一方で、研磨面には接着剤を塗布した。次に、厚み0.15mmの材料を0.6×0.5mmになるように切断加工した偏光子5の透過偏光軸と光ファイバの透過偏光軸とを調整した後、両者を接着剤固定位置15bで接着固定して作製した。
【0026】
そして、このように作製した偏光子5付き偏波保存ファイバ6の接着固定後の消光比を確認したところ、28dBであった。
【0027】
一方、アイソレータチップについては、偏光子2を接着固定したファラデー回転角度が45degのファラデー回転子3と偏光子4とを、光透過方向からみて、その偏光子2と光透過方向の相対角度が反時計回りで45degになるように、接着剤位置12b,13bで予め接着固定した後、0.5×0.4mmに切断加工して作製した。
【0028】
次に、偏光子5付き偏波保存ファイバ6の偏光子5上に接着剤を塗布するとともに、この偏光子5とアイソレータチップの偏光子4の切断端面の長辺と短辺が沿うように目視にて合わせた後、図1に示す14bの位置で両者を接着固定した。この実施例1では、偏光子4と偏光子5の長辺と短辺を揃えやすくするために、図2に示すように、その形状を同じ長方形とし、また偏光子5のサイズを偏光子4より大きく設定している。
【0029】
最後に、このように作製した光アイソレータ付偏波保存ファイバの外部にSmCo磁石8を配置して、この消光性能を確認したところ、消光比は、28dBであり、偏光子5が接着固定された状態の偏波保存ファイバ6の消光比と同じ数値であった。
【0030】
<比較例1>
比較例1では、予め作成した実施例1と同じアイソレータチップを用いて、偏波保存ファイバ6のフェルール外周に設けた切欠き部を目印として、アイソレータチップの偏光子4の偏光方向を偏波保存ファイバ6に合わせながら、アイソレータチップと偏波保存ファイバ6を接着固定して光アイソレータ付偏波保存ファイバを作製した。
【0031】
そして、この手法で作製した比較例1の光アイソレータ付偏波保存ファイバ6の消光比を確認したところ、17〜26dBと大きく、しかも、その値にばらつきもあり、ファイバ研磨時の目印とファイバの透過軸のズレやアイソレータチップの搭載角度のズレの影響が大きいことが確認された。
【0032】
<実施例2>
実施例2では、図4に示すように、2枚のアイソレータチップを用いて、光アイソレータ付偏波保存ファイバ26を作製した。具体的には、3枚の偏光子22,24,29と2枚のファラデー回転子23,28で構成されたアイソレータチップを準備し、実施例1と同様の手法で、このアイソレータチップ側の偏光子29と偏波保存ファイバ26側の偏光子25とを接着固定して組立てたものである。
【0033】
そして、この実施例2でも、実施例1と同様に、偏光子5付き偏波保存ファイバ26の消光比を劣化させることなく、光アイソレータ付偏波保存ファイバ26を組立てることが出来た。
【0034】
次に、図5は、図1の偏光子2に相当する偏光子を省略して、1枚のファラデー回転子33と1枚の偏光子34で構成される光アイソレータチップを用いた例である。この例でも同様の結果を得ることが出来た。
【0035】
また、図6は、光アイソレータチップを偏波保存ファイバ46に取り付ける他の手法を示す模式図である。この手法では、先ず、両端面に偏光子42,44を接着固定したファラデー回転子43から成るアイソレータチップを予めアイソレータ保持筐体49に搭載して準備し、一方、偏波保存ファイバ46の周囲を取り囲むファイバフェルール47の外周にフェルール保持筐体48を設けるとともに、この偏波保存ファイバ端に偏光子45を接着固定した偏光子45付き偏波保存ファイバ46を準備して、両者のアイソレータ保持筐体49とフェルール保持筐体48とをYAG溶接することで、光アイソレータチップと偏波保存ファイバ46とを組立てるものである。
【0036】
そして、このような手法で組み立てた光アイソレータ付偏波保存ファイバ46でも、偏波保存ファイバ出力端で同様の消光比を有することが確認された。
【符号の説明】
【0037】
1:LDチップ
2 4 5 22 24 25 29 34 35 42 44 45:偏光子
3 23 28 33 43:ファラデー回転子
6 26 36 46:偏波保存ファイバ
7 27 37 47:ファイバフェルール
8 30 40 50:磁石
12b 13b 14b 15b:接着剤固定位置
48:フェルール保持筐体
49:アイソレータ保持筐体

図1
図2
図3
図4
図5
図6