特許第6226430号(P6226430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6226430正極活物質、及びこれを含み、不純物またはスウェリング制御のためのリチウム二次電池、並びに生産性が向上した正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226430
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】正極活物質、及びこれを含み、不純物またはスウェリング制御のためのリチウム二次電池、並びに生産性が向上した正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20171030BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20171030BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20171030BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171030BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171030BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01M4/525
   C01G53/00 A
   H01M4/131
   H01M4/36 A
   H01M4/505
   H01M10/052
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-539889(P2014-539889)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公表番号】特表2015-503181(P2015-503181A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】KR2013000316
(87)【国際公開番号】WO2013109038
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年4月30日
【審判番号】不服2016-9523(P2016-9523/J1)
【審判請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0005070
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0064727
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】テジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スンジョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジュホン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・キュ・パク
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−531034(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/147179(WO,A1)
【文献】 特開2011−233369(JP,A)
【文献】 特開2009−32467(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0042145(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/131, 4/36, 4/505, 4/525
H01M 10/052
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、Li層でのNi2+混合を防止するように、Ni2+よりも大きいイオン半径を有する下記のMで表される金属カチオンを、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に含む正極活物質であって、
前記正極活物質が、Li含有化合物をさらに含み、前記Li含有化合物は、正極活物質の全体重量対比0.161重量%以下含まれており、
前記Li含有化合物は、LiCO及び/またはLiOHであることを特徴とする、正極活物質。
LiNiMnCo2−t (1)
上記式において、
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、0<w≦0.3、2≦a+x+y+z+w≦2.3、x>y、x>z、0≦t<0.2、
Mは、Srあり、Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【請求項2】
前記化学式1において、y+z≦0.6の条件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記化学式1において、y+z≦0.44の条件を満たすことを特徴とする、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記化学式1で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)は、同一の焼性温度の条件下で製造された下記化学式2で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)に比べて大きい値を有することを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
LiNiMnCo2−t (2)
上記式において、
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、a+x+y+z=2、x>y、x>z、0≦t<0.2、
Mは、+2価の酸化数の一つ以上の金属カチオンであり、Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載の正極活物質を含むことを特徴とする、二次電池用正極合剤。
【請求項6】
請求項に記載の二次電池用正極合剤が集電体上に塗布されていることを特徴とする、二次電池用正極。
【請求項7】
請求項に記載の二次電池用正極を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項8】
前記リチウム二次電池は、45℃で0.5C充電及び1.0C放電条件の50サイクル(cycle)で初期容量対比容量維持率が85%以上であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
請求項に記載のリチウム二次電池を単位電池として含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項10】
請求項に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載の電池パックを電源として使用することを特徴とする、デバイス。
【請求項12】
遷移金属供給源及びリチウム供給源を混合した混合物を空気中で焼結して正極活物質を製造する方法であって、前記混合物は、焼結温度が低くなるように、SrCOである+2価の酸化数を有するアルカリ土金属供給源を含むことを特徴とする、正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記遷移金属供給源は、下記化学式3で表される遷移金属水酸化物であることを特徴とする、請求項12に記載の正極活物質の製造方法。
M(OH)(M=NiMnCo、x+y+z=1) (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学式で表され、Li層でのNiカチオン混合を防止するように、Niカチオンよりも大きいイオン半径を有する金属カチオンを、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に含む正極活物質、及びこれを含むリチウム二次電池、並びに生産性が向上した正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急増しており、そのような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて、広く使用されている。
【0003】
また、環境問題への関心が高まるにつれて、大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの化石燃料を使用する車両を代替しうる電気自動車、ハイブリッド電気自動車に対する研究が多く行われている。このような電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源としては、主にニッケル水素金属二次電池が使用されているが、高いエネルギー密度及び放電電圧のリチウム二次電池を使用する研究が活発に行われており、一部は商用化段階にある。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)が主に使用されており、その他に、層状結晶構造のLiMnO、スピネル結晶構造のLiMnなどのリチウム含有マンガン酸化物、及びリチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)の使用も考慮されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性及び充放電効率に優れているので、最も多く使用されているが、高温安全性が低く、原料として使用されるコバルトが資源的限界により高価の物質であるため、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が低廉で、且つ合成が容易であるという長所があるが、容量が小さく、高温特性が劣悪であり、伝導性が低いという問題点がある。
【0007】
また、LiNiO系正極活物質は、比較的低廉であり、高い放電容量の電池特性を示しているが、NiカチオンがLiカチオンサイトの一部を置換するカチオン混合(cation mixing)によるスウェリング、高率放電特性の低下、充放電サイクルに伴う体積の変化によって結晶構造の急激な相転移が発生し、空気と湿気に露出されたとき、安定性が急激に低下するという問題点がある。
【0008】
このような問題を解決するために、ニッケル−マンガンとニッケル−コバルト−マンガンが、それぞれ、1:1または1:1:1に混合されたリチウム酸化物を正極活物質として使用するための試み及び研究が多く行われた。
【0009】
ニッケル、コバルトまたはマンガンを混合して製造された正極活物質は、それぞれの遷移金属を別々に使用して製造した電池に比べて相対的にサイクル特性及び容量特性に優れるという長所があるが、この場合にも、長期間使用時にはサイクル特性が急激に低下し、カチオン混合によるガス発生によるスウェリング、高率放電特性の低下などの問題は十分に解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0011】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、特定の組成のLiNiO系正極活物質に所定のアルカリ土金属をドープする場合、Li層へのNiカチオンの混入が防止されて、電池の性能が向上することを確認した。
【0012】
また、本出願の発明者らは、所定のアルカリ土金属を添加して正極活物質を合成する場合、焼結温度を低下させることができることを確認した。本発明は、これに基づいて完成された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明に係る正極活物質は、下記化学式1で表され、Li層でのNiカチオン混合を防止するように、Niカチオンよりも大きいイオン半径を有する下記のMで表される金属カチオンを、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に含むことを特徴とする。
【0014】
LiNiMnCo2−t (1)
【0015】
上記式において、
【0016】
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、0<w≦0.3、2≦a+x+y+z+w≦2.3、x>y、x>z、0≦t<0.2;
【0017】
Mは、+2価の酸化数の一つ以上の金属カチオンであり;Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【0018】
前記金属カチオンは、正極活物質の結晶構造において、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に主に位置して電荷のバランスを取るので、NiカチオンがLiカチオンサイトへ混入するカチオン混合(cation mixing)を最小化することができる。このとき、前記Niカチオンは、+2価の酸化数を有するNi2+である。
【0019】
前記金属カチオンは、結晶格子内で一種のフィラー(filler)として作用することによって、正極活物質の構造的安定性を図り、Liカチオンの自然損失を最小化することができる。その結果、前記正極活物質を含むリチウム二次電池は、Liカチオンの自然損失により発生する不純物LiCO、LiOHによるスウェリングが最小化されて、安全性が向上するという効果がある。
【0020】
前記金属カチオンは、Niカチオン(Ni2)よりもイオン半径が大きく、+2価の酸化数を有するアルカリ土金属のカチオンであって、本出願の発明者らが実験したところによれば、前記金属カチオンのイオン半径が増加するほどLiカチオンの自然損失を最小化することができるので、前記金属カチオンは、Sr+2またはBa2+であることがより好ましい。
【0021】
また、前記化学式1において酸素イオンは、所定の範囲で酸化数−1価または−2価のアニオン(A)で置換することができ、前記Aは、好ましくは、互いに独立にF、Cl、Br、Iのようなハロゲン、S及びNからなる群から選ばれる一つ以上であってもよい。
【0022】
このようなアニオンの置換によって、遷移金属との結合力が増加し、化合物の構造転移が防止されるので、電池の寿命を向上させることができる。反面、アニオンAの置換量が多すぎると(t≧0.2)、不完全な結晶構造によってむしろ寿命特性が低下するため好ましくない。
【0023】
前記正極活物質は、前記化学式1を満たす物質であれば、特に制限されずに本発明に含まれるが、好ましくは、前記化学式1において、y+z≦0.6、より好ましくは、y+z≦0.44の条件を満たす正極活物質である。
【0024】
一方、前記正極活物質は、Liカチオンの自然損失などによるLi含有化合物をさらに含んでいてもよく、前記Li含有化合物は、正極活物質の全体重量対比4重量%未満含まれていてもよく、具体的に、前記Li含有化合物は、LiCO及び/またはLiOHであってもよい。
【0025】
以下の実験例からわかるように、前記化学式1で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)は、同一の焼性温度の条件下で製造された下記化学式2で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)に比べて大きい値を有する。
【0026】
LiNiMnCo2−t (2)
【0027】
上記式において、
【0028】
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、a+x+y+z=2、x>y、x>z、0≦t<0.2;
【0029】
Mは、+2価の酸化数の一つ以上の金属カチオンであり、Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【0030】
本発明はまた、上記のような正極活物質を含む二次電池用正極合剤、及び該正極合剤を含む二次電池用正極を提供する。
【0031】
前記正極合剤は、前記正極活物質以外に、選択的に導電材、バインダー、充填剤などを含むことができる。
【0032】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0033】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。
【0034】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0035】
本発明に係る正極は、上記のような化合物を含む正極合剤をNMPなどの溶媒に混合して製造されたスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0036】
前記正極集電体は、一般的に3〜500μmの厚さに製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0037】
本発明はまた、前記正極と、負極、分離膜、及びリチウム塩含有非水電解液で構成されたリチウム二次電池を提供する。本発明に係るリチウム二次電池は、45℃で0.5C充電及び1.0C放電条件の50サイクル(cycle)で初期容量対比容量維持率が85%以上であり得る。
【0038】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質を含んでいる負極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記負極合剤には、必要に応じて、前述したような成分が含まれてもよい。
【0039】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などを使用することができる。
【0040】
前記負極集電体は、一般的に3〜500μmの厚さに製造する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0041】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0042】
前記リチウム塩含有非水系電解液は、電解液とリチウム塩からなっており、前記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0043】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0044】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0045】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0046】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0047】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善の目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温貯蔵特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene carbonate)、PRS(Propene sultone)、FPC(Fluoro−Propylene carbonate)などをさらに含ませることができる。
【0048】
本発明に係る二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用することができる。
【0049】
また、本発明は、前記電池モジュールを中大型デバイスの電源として含む電池パックを提供し、前記中大型デバイスは、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車及び電力貯蔵装置などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、本発明は、合成温度を低下させることによって、生産性が向上した正極活物質の製造方法を提供する。
【0051】
前記製造方法に係る正極活物質は、遷移金属供給源及びリチウム供給源を混合した混合物に、+2価の酸化数を有するアルカリ土金属供給源を添加し、空気中で焼結することによって製造される。
【0052】
本出願の発明者らは、前記アルカリ土金属を添加して正極活物質を焼結する場合、焼結温度が低くなる効果が発揮されることを確認した。したがって、上記の正極活物質の製造方法は、焼結温度を低下させることによって生産性を向上させる効果を発揮する。
【0053】
前記遷移金属供給源は、特に制限されないが、2種以上の遷移金属からなる場合には共沈法を用いて準備し、下記化学式3で表される遷移金属水酸化物であることが好ましい。
【0054】
M(OH)(M=NiMnCo、x+y+z=1) (3)
【0055】
また、前記アルカリ土金属供給源は、SrCOまたはBaCOであってもよく、場合によっては、これらの混合物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】890℃、900℃、910℃でそれぞれ焼結した本発明の具体的な実施例と比較例1及び2のXRD分析結果を示すグラフ(Graph)である。
図2】本発明に係る具体的な実施例と比較例の寿命特性を比較したグラフである。
図3】本発明に係る具体的な実施例と比較例の貯蔵特性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらに限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
遷移金属前駆体として金属水酸化物M(OH)(M=Ni0.6Mn0.2Co0.2)(遷移金属水酸化物の全体重量に基づいて0.5重量%)を準備し、前記金属水酸化物と、ドーピング金属源としてMgCOドーピング金属源の全体重量に基づいて0.5重量%)と、リチウム供給源としてLiCOとを化学量論的割合で混合し、混合物を空気中で890〜930℃の温度範囲で10時間焼結して、Mgがドープされた正極活物質を製造した。
【0059】
<実施例2>
ドーピング金属源としてSrCO(0.5重量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、Srがドープされた正極活物質を製造した。
【0060】
<実施例3>
ドーピング金属源としてBaCO(0.5重量%)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、Baがドープされた正極活物質を製造した。
【0061】
<比較例1>
遷移金属水酸化物M(OH)(M=Ni0.6Mn0.2Co0.2)とLiCOとを化学量論的割合で混合し、混合物を空気中で910℃の温度範囲で10時間焼結して、正極活物質を製造した。
【0062】
<比較例2>
850〜900℃の温度範囲で10時間焼結したこと以外は、比較例1と同様の方法で、正極活物質を製造した。
【0063】
<実験例1>
実施例1、2、3及び比較例1の正極活物質を用いて不純物LiCO、LiOHの量を測定し、その結果を下記表1に示した。不純物の量の確認は、HClで滴定する方法を使用した。
【0064】
【表1】
【0065】
上記表1で確認できるように、Mg2+、Sr2+、Ba2+がそれぞれドープされた実施例1、2、3の正極活物質は、+2価の酸化数を有する金属カチオンを添加していない比較例1の正極活物質に比べて、不純物LiCO、LiOHの量が減少した。すなわち、Mg2+、Sr2+、Ba2+がそれぞれドープされることによって、Ni2+のカチオン混合が抑制されて、Liの自然損失を最小化することができる。
【0066】
また、実施例1、2、3を比較するとき、Mg2+がドープされた場合に比べて、イオン半径が大きいSr2+、Ba2+がドープされた場合に不純物の量がさらに減少したことを確認することができる。Mg2+に比べてイオン半径が大きいSr2+、Ba2+は、Liカチオンサイトよりも結晶格子内の空き空間に主に位置することによって、Ni2+の移動経路をより効率的に遮断するからであると予測される。
【0067】
<実験例2>
890℃、900℃、910℃でそれぞれ焼結した実施例2の正極活物質及び比較例1、2の正極活物質を用いてX線回折分析を実施し、その結果を下記表2及び図1に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
上記表2で確認できるように、910℃で焼結した実施例2の正極活物質の(003)/(014)値は、比較例1の正極活物質に比べて大きい反面、比較例2の正極活物質の(003)/(014)値は、比較例1の正極活物質に比べて小さい。
【0070】
これは、910℃で焼結した実施例2の正極活物質は、比較例1の正極活物質に比べてオーダリング(ordering)が強くなされたことを意味し、比較例2の正極活物質は、α−NaFeO型(空間群R3m)構造を形成しているが、オーダリング(ordering)が完全になされなかったことを意味する。
【0071】
一方、890℃で焼結した実施例2の正極活物質の(003)/(014)値は、比較例1の正極活物質とほぼ同一である。上記の結果を総合すると、Srを添加して焼結した実施例2の場合、比較例1に比べてより低い温度で焼結がなされる効果を発揮することがわかる。
【0072】
<実施例4>
実施例2の正極活物質:導電材:バインダーの量が95:2.5:2.5になるように計量した後、NMPに入れ、ミキシング(mixing)して正極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに前記正極合剤を200μmの厚さでコーティングした後、圧延及び乾燥して、電極を製造した。
【0073】
前記電極をコイン状に打ち抜き、負極としてLi金属、電解質としてLiPFが1モル溶解しているカーボネート電解液を用いてコイン型電池を作製した。
【0074】
<実施例5>
実施例3の正極活物質を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で、コイン型電池を作製した。
【0075】
<比較例3>
比較例1の正極活物質を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で、コイン型電池を作製した。
【0076】
<実験例3>
実施例4、5及び比較例3のセルを用いて、45℃の温度条件、0.5C充電条件及び1.0C放電条件下で50回充放電を繰り返し、寿命特性を比較した。サイクルによる容量維持率を測定し、その結果を図2に示した。
【0077】
図2で確認できるように、Sr2+がドープされた実施例4及びBa2+がドープされた実施例5のセルは、ドーピング金属カチオンを添加していない比較例3のセルに比べて寿命特性が向上したことがわかる。すなわち、50回のサイクル後、実施例4及び実施例5の容量維持率の低下があまり発生しなかった。結晶格子内の空間にSr2+またはBa2+がドープされることによって、Liの自然損失を最小化して、構造的安定性が向上したことを確認することができる。
【0078】
<実験例4>
実施例4、5及び比較例3のセルを用いて貯蔵特性を比較した。実施例4、5及び比較例3のセルを60℃の温度条件で1週間保管した後、SOC70%でのパワーの変化を比較した。その結果を図3に示した。図3を参照すると、実施例4及び実施例5のセルは、ドーピング金属カチオンを添加していない比較例3のセルに比べて、SOC70%でのパワーの変化率が小さいことがわかる。すなわち、Sr2+またはBa2+がドープされることによって、優れた貯蔵特性を有することがわかる。
【0079】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る正極活物質は、結晶構造においてLiカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に金属カチオンを含んでいるので、構造的安定性が向上し、Liカチオンの自然損失を最小化することができる。
【0081】
したがって、前記正極活物質を含むリチウム二次電池は、Liカチオンの自然損失によって発生する不純物LiCO、LiOHによるスウェリングが最小化されて、安全性が向上するという効果がある。
【0082】
また、本発明に係る正極活物質の製造方法は、アルカリ土金属を添加して正極活物質の合成温度を低下させることができるので、生産性が向上するという効果がある。
【0083】
本発明に係る二次電池は、アルカリ土金属がドープされているリチウム複合遷移金属酸化物を正極活物質として含んでいるので、長期間の貯蔵期間にも自然的容量減少を最小化することによって、向上した貯蔵特性を発揮する。
図1
図2
図3