【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明に係る正極活物質は、下記化学式1で表され、Li層でのNiカチオン混合を防止するように、Niカチオンよりも大きいイオン半径を有する下記のMで表される金属カチオンを、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に含むことを特徴とする。
【0014】
Li
aNi
xMn
yCo
zM
wO
2−tA
t (1)
【0015】
上記式において、
【0016】
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、0<w≦0.3、2≦a+x+y+z+w≦2.3、x>y、x>z、0≦t<0.2;
【0017】
Mは、+2価の酸化数の一つ以上の金属カチオンであり;Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【0018】
前記金属カチオンは、正極活物質の結晶構造において、Liカチオンサイトまたは結晶格子内の空き空間に主に位置して電荷のバランスを取るので、NiカチオンがLiカチオンサイトへ混入するカチオン混合(cation mixing)を最小化することができる。このとき、前記Niカチオンは、+2価の酸化数を有するNi
2+である。
【0019】
前記金属カチオンは、結晶格子内で一種のフィラー(filler)として作用することによって、正極活物質の構造的安定性を図り、Liカチオンの自然損失を最小化することができる。その結果、前記正極活物質を含むリチウム二次電池は、Liカチオンの自然損失により発生する不純物Li
2CO
3、LiOHによるスウェリングが最小化されて、安全性が向上するという効果がある。
【0020】
前記金属カチオンは、Niカチオン(Ni2
+)よりもイオン半径が大きく、+2価の酸化数を有するアルカリ土金属のカチオンであって、本出願の発明者らが実験したところによれば、前記金属カチオンのイオン半径が増加するほどLiカチオンの自然損失を最小化することができるので、前記金属カチオンは、Sr
+2またはBa
2+であることがより好ましい。
【0021】
また、前記化学式1において酸素イオンは、所定の範囲で酸化数−1価または−2価のアニオン(A)で置換することができ、前記Aは、好ましくは、互いに独立にF、Cl、Br、Iのようなハロゲン、S及びNからなる群から選ばれる一つ以上であってもよい。
【0022】
このようなアニオンの置換によって、遷移金属との結合力が増加し、化合物の構造転移が防止されるので、電池の寿命を向上させることができる。反面、アニオンAの置換量が多すぎると(t≧0.2)、不完全な結晶構造によってむしろ寿命特性が低下するため好ましくない。
【0023】
前記正極活物質は、前記化学式1を満たす物質であれば、特に制限されずに本発明に含まれるが、好ましくは、前記化学式1において、y+z≦0.6、より好ましくは、y+z≦0.44の条件を満たす正極活物質である。
【0024】
一方、前記正極活物質は、Liカチオンの自然損失などによるLi含有化合物をさらに含んでいてもよく、前記Li含有化合物は、正極活物質の全体重量対比4重量%未満含まれていてもよく、具体的に、前記Li含有化合物は、Li
2CO
3及び/またはLiOHであってもよい。
【0025】
以下の実験例からわかるように、前記化学式1で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)は、同一の焼性温度の条件下で製造された下記化学式2で表される正極活物質のX線回折ピーク比(003)/(014)に比べて大きい値を有する。
【0026】
Li
aNi
xMn
yCo
zO
2−tA
t (2)
【0027】
上記式において、
【0028】
0≦a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.9、0<z≦0.9、a+x+y+z=2、x>y、x>z、0≦t<0.2;
【0029】
Mは、+2価の酸化数の一つ以上の金属カチオンであり、Aは、−1または−2価の一つ以上のアニオンである。
【0030】
本発明はまた、上記のような正極活物質を含む二次電池用正極合剤、及び該正極合剤を含む二次電池用正極を提供する。
【0031】
前記正極合剤は、前記正極活物質以外に、選択的に導電材、バインダー、充填剤などを含むことができる。
【0032】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0033】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。
【0034】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0035】
本発明に係る正極は、上記のような化合物を含む正極合剤をNMPなどの溶媒に混合して製造されたスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0036】
前記正極集電体は、一般的に3〜500μmの厚さに製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0037】
本発明はまた、前記正極と、負極、分離膜、及びリチウム塩含有非水電解液で構成されたリチウム二次電池を提供する。本発明に係るリチウム二次電池は、45℃で0.5C充電及び1.0C放電条件の50サイクル(cycle)で初期容量対比容量維持率が85%以上であり得る。
【0038】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質を含んでいる負極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記負極合剤には、必要に応じて、前述したような成分が含まれてもよい。
【0039】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;Li
xFe
2O
3(0≦x≦1)、Li
xWO
2(0≦x≦1)、Sn
xMe
1-xMe’
yO
z(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
2O
3、Pb
3O
4、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、GeO、GeO
2、Bi
2O
3、Bi
2O
4、及びBi
2O
5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などを使用することができる。
【0040】
前記負極集電体は、一般的に3〜500μmの厚さに製造する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0041】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0042】
前記リチウム塩含有非水系電解液は、電解液とリチウム塩からなっており、前記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0043】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0044】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0045】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li
3N、LiI、Li
5NI
2、Li
3N−LiI−LiOH、LiSiO
4、LiSiO
4−LiI−LiOH、Li
2SiS
3、Li
4SiO
4、Li
4SiO
4−LiI−LiOH、Li
3PO
4−Li
2S−SiS
2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0046】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0047】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善の目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温貯蔵特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene carbonate)、PRS(Propene sultone)、FPC(Fluoro−Propylene carbonate)などをさらに含ませることができる。
【0048】
本発明に係る二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用することができる。
【0049】
また、本発明は、前記電池モジュールを中大型デバイスの電源として含む電池パックを提供し、前記中大型デバイスは、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車及び電力貯蔵装置などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、本発明は、合成温度を低下させることによって、生産性が向上した正極活物質の製造方法を提供する。
【0051】
前記製造方法に係る正極活物質は、遷移金属供給源及びリチウム供給源を混合した混合物に、+2価の酸化数を有するアルカリ土金属供給源を添加し、空気中で焼結することによって製造される。
【0052】
本出願の発明者らは、前記アルカリ土金属を添加して正極活物質を焼結する場合、焼結温度が低くなる効果が発揮されることを確認した。したがって、上記の正極活物質の製造方法は、焼結温度を低下させることによって生産性を向上させる効果を発揮する。
【0053】
前記遷移金属供給源は、特に制限されないが、2種以上の遷移金属からなる場合には共沈法を用いて準備し、下記化学式3で表される遷移金属水酸化物であることが好ましい。
【0054】
M(OH)
2(M=Ni
xMn
yCo
z、x+y+z=1) (3)
【0055】
また、前記アルカリ土金属供給源は、SrCO
3またはBaCO
3であってもよく、場合によっては、これらの混合物であってもよい。