特許第6226596号(P6226596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6226596-支持体分離装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6226596
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】支持体分離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-145864(P2013-145864)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-18974(P2015-18974A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年4月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 真治
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 吉浩
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4214147(JP,B2)
【文献】 特許第4472285(JP,B2)
【文献】 特許第2979194(JP,B2)
【文献】 特開平10−107131(JP,A)
【文献】 特開2010−010267(JP,A)
【文献】 特開2009−183997(JP,A)
【文献】 特開2010−283286(JP,A)
【文献】 実開平01−096287(JP,U)
【文献】 特許第4705450(JP,B2)
【文献】 特開2008−000782(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001889(WO,A1)
【文献】 特開2012−140257(JP,A)
【文献】 特開2006−140230(JP,A)
【文献】 特開平08−309576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、接着層と、光を照射することにより変質する分離層と、支持体とをこの順で積層してなる積層体に、上記支持体の上記分離層を有さない側からレーザ光を照射することによって支持体を分離する支持体分離装置において、
白色セラミックを含み、上記積層体の上記基板を有する側を吸引することで上記積層体を保持する保持ステージと、
上記積層体における上記支持体の上記分離層を有さない側からレーザ光を照射するレーザユニットとを備えていることを特徴とする支持体分離装置。
【請求項2】
上記白色セラミックは、酸化アルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の支持体分離装置。
【請求項3】
上記保持ステージは、帯電防止部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持体分離装置。
【請求項4】
さらに、上記保持ステージに帯電する静電気を除電する除電手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の支持体分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体から支持体を分離する支持体分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、携帯電話等の電子機器の薄型化、小型化、軽量化等が要求されている。これらの要求を満たすためには、組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップを使用しなければならない。このため、半導体チップの基となるウエハ基板の厚さ(膜厚)は現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないといわれている。したがって、上記の膜厚のウエハ基板を得るためには、ウエハ基板の薄板化工程が必要不可欠である。
【0003】
ウエハ基板は、薄板化により強度が低下するので、薄板化したウエハ基板の破損を防ぐために、製造プロセス中は、ウエハ基板にサポートプレートを貼り合わされた状態で自動搬送しながら、ウエハ基板上に回路等の構造物を実装する。そして、製造プロセス後に、ウエハ基板をサポートプレートから分離する。したがって、製造プロセス中は、ウエハ基板とサポートプレートとが強固に接着していることが好ましいが、製造プロセス後には、サポートプレートからウエハ基板を円滑に分離できることが好ましい。
【0004】
ウエハ基板とサポートプレートとを強固に接着した場合、接着材料によっては、ウエハ基板上に実装した構造物を破損させることなく、ウエハ基板からサポートプレートを分離することは困難である。したがって、製造プロセス中にはウエハ基板とサポートプレートとの強固な接着を実現しつつ、製造プロセス後にはウエハ基板上に実装した素子を破損させることなく分離するという、非常に困難な仮止め技術の開発が求められている。
【0005】
仮止め技術としては、ウエハ基板及びサポートプレートを接着する接着層とサポートプレートとの間に、光を照射することにより変質する分離層を予め設けておく技術が挙げられる。具体的には、サポートプレートが接着され、上述の薄化工程によって薄板化した半導体ウエハの裏面を、保持ステージ上においてダイシングフレームに保持されているダイシングテープ上に固定する。この状態で、分離層にレーザ光を照射して当該分離層を変質させることによって、半導体ウエハの回路形成面を覆うサポートプレートを剥離する。その後、ウエハ基板とサポートプレートとが接着した積層体に力を加えることにより、サポートプレートとウエハ基板との分離を行うことができる。
【0006】
ここで、特許文献1には、支持膜が接着されている基板を保持する保持装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−59994号公報(2012年3月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような技術では、保持ステージに保持した積層体にレーザ光照射するときにおいて、保持ステージにまでレーザ光が照射された場合に、保持ステージがレーザ光照射によって変質するという問題がある。
【0009】
一方、保持ステージの変質を考慮して、保持された積層体の基板上から外にはみ出さないようにレーザ光照射を行うと、基板の周端部にまでレーザ光が照射されないため、基板の周端部の分離層が未処理のままで残存することになる。このため、積層体から基板を安定して分離することができないという問題がある。よって、レーザ光照射による保持ステージの変質を防ぐことが求められている。
【0010】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、レーザ光照射による保持ステージの変質を防止することができる支持体分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る支持体分離装置は、基板と、接着層と、分離層と、支持体とをこの順で積層してなる積層体に、光を照射することによって支持体を分離する支持体分離装置において、上記積層体を保持する保持ステージを備え、上記保持ステージは、白色セラミックを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザ光照射による保持ステージの変質を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る支持体分離装置の概略の構成を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る支持体分離装置は、基板と、接着層と、分離層と、支持体とをこの順で積層してなる積層体に、光を照射することによって支持体を分離する支持体分離装置において、上記積層体を保持する保持ステージを備え、上記保持ステージは、白色セラミックを含んでいる構成である。
【0015】
上記構成によれば、保持ステージは白色セラミックを含んでいるため、保持ステージへのレーザ光の吸収を低減することができる。このため、保持ステージのレーザ光照射による変質を防止することができる。それゆえ、保持ステージ上に保持された積層体の基板の周端部より内側のみならず、基板の周端部より外側にまで十分にレーザ光照射を行うことができるようになる。従って、分離層の周端部を含めた全面をレーザ光照射によって十分に変質させることができ、積層体から支持体を安定して分離することができる。
【0016】
〔積層体10〕
まず、本発明の一実施形態に係る支持体分離装置100により分離する積層体10の概略の構成について説明する。図1において、支持体分離装置100によってサポートプレート(支持体)4を分離される積層体10は、基板1と、例えば熱可塑性樹脂を含む接着層2と、光を吸収することによって変質する分離層3と、上記基板を支持するサポートプレート4とがこの順に積層されて形成されている。
【0017】
ここで、積層体10を形成する形成方法及び形成装置、つまり、接着層2の形成方法や接着層形成装置、並びに、基板及びサポートプレートの重ね合わせ方法や重ね合わせ装置は、特に限定されるものではなく、種々の方法や装置を採用することができる。積層体10は、貼付装置によって押圧力が加えられる時点で、基板1と、接着層2と、分離層3と、サポートプレート4とがこの順に積層されて形成されていればよい。
【0018】
(基板1)
基板1は、サポートプレート4に支持された(貼り付けられた)状態で、薄化、搬送、実装等のプロセスに供される。基板は、ウエハ基板に限定されず、例えば、サポートプレートによる支持が必要なセラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板であってもよい。
【0019】
(サポートプレート4)
サポートプレート4は、基板1を支持する支持体であり、接着層2を介して基板に貼り付けられる。そのため、サポートプレート4は、基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板1の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していればよく、より軽量であることが望ましい。以上の観点から、サポートプレート4は、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂、セラミックス、シリコンウエハ等で構成されていることがより好ましい。
【0020】
(接着層2)
接着層2を構成する接着剤は、例えば、加熱することによって熱流動性が向上する熱可塑性樹脂を接着材料として含んでいればよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、炭化水素系樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0021】
接着層2の形成方法、即ち、基板1又はサポートプレート4に接着剤を塗布する塗布方法、或いは、基材に接着剤を塗布して接着テープを形成する形成方法は、特に限定されるものではないが、接着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズルによる塗布法等が挙げられる。
【0022】
接着層2の厚さは、貼り付けの対象となる基板1及びサポートプレート4の種類、貼り付け後の基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましく、15μm以上、100μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
(分離層3)
分離層3は、光を照射することによって変質する層である。分離層3は、基板1とサポートプレート4との間に形成されている。そのため、基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス後に光を分離層3に照射することで、容易に基板1とサポートプレート4とを分離することができる。
【0024】
本明細書において、分離層3が「変質する」とは、分離層3がわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層3と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。又、分離層3の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層3の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)等であり得る。
【0025】
又、分離層3として、プラズマCVD法により形成した無機膜又は有機膜を用いてもよい。無機膜としては、例えば、金属膜を用いることができる。又、有機膜としては、フルオロカーボン膜を用いることができる。このような反応膜は、例えば、サポートプレート4上にプラズマCVD法により形成することができる。
【0026】
分離層3は、例えば光等によって分解される光吸収剤を含んでいてもよい。光吸収剤としては、例えば、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛、テルル等の微粒子金属粉末、黒色酸化チタン等の金属酸化物粉末、カーボンブラック、又は芳香族ジアミノ系金属錯体、脂肪族ジアミン系金属錯体、芳香族ジチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、スクアリリウム系化合物、シアニン系色素、メチン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の染料もしくは顔料を用いることができる。このような分離層3は、例えば、バインダー樹脂と混合して、サポートプレート4上に塗布することによって形成することができる。又、光吸収基を有する樹脂を分離層3として用いることもできる。
【0027】
(ダイシングテープ5)
ダイシングテープ5は、基板1の強度を補強するために基板1の片面に接着される。本実施形態において、積層体10における基板1は、その外周にダイシングフレーム6が取り付けられたダイシングテープ5に貼着されている。
【0028】
ダイシングテープ5としては、例えばベースフィルムに粘着層が形成された構成のダイシングテープを用いることができる。ベースフィルムとしては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリオレフィン又はポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。ダイシングテープ5の外径は基板1の外径よりも大きく、これらを貼り合わせると基板1の外縁部分にダイシングテープ5の一部が露出した状態になっている。
【0029】
(ダイシングフレーム6)
ダイシングテープ5の露出面のさらに外周には、ダイシングテープ5の撓みを防止するためのダイシングフレーム6が取り付けられている。すなわち、ダイシングテープ5の外縁部分では、ダイシングフレーム6が露出した状態になっている。ダイシングフレーム6としては、例えば、アルミニウム等の金属製のダイシングフレーム、ステンレススチール(SUS)等の合金製のダイシングフレーム、及び樹脂製のダイシングフレームが挙げられる。樹脂製のダイシングフレームとしては、例えば、信越ポリマー株式会社製又は株式会社ディスコ製の樹脂製ダイシングフレーム等が挙げられる。
【0030】
ダイシングフレーム6として、金属製又は合金製のダイシングフレームを用いれば、剛性があり、ひずみにくい上に安価であるが、樹脂製のダイシングフレームと比較すると重いため、搬送時に作業者又は搬送ロボットに負担が掛かる。近年、平坦で剛性のある樹脂製のダイシングフレームが開発されており、従来広く用いられている金属製又は合金製のダイシングフレームと比較して軽量であるという利点がある。樹脂製のダイシングフレームは、軽量であるため搬送が容易であり、さらに金属製のフレームカセットに出し入れするときに、摩擦による発塵が少ないという利点がある。
【0031】
<支持体分離装置100>
次に、図1を用いて、支持体分離装置100について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る支持体分離装置100の概略の構成を説明する側面図である。
【0032】
図1に示す通り、支持体分離装置100は、基板1と、接着層2と、分離層3と、サポートプレート(支持体)4とをこの順で積層してなる積層体10に、光を照射することによってサポートプレート4を分離する装置であり、積層体10を保持する保持ステージ11を備え、保持ステージ11は白色セラミックを含んでいる。
【0033】
ここで、支持体分離装置100は、白色セラミックを含むポーラス部11aと外周部11bとを備えている保持ステージ11と、レーザユニット12とを備えている。又、図1に示す通り、保持ステージ11の外周部11bには、アース(帯電防止手段)13を備えていてもよく、又、支持体分離装置100のユニット内にイオナイザー(除電手段)14を備えていてもよい。
【0034】
〔保持ステージ11〕
ポーラス部11aは、保持ステージ11に設けられた貫通孔を備える多孔質体である。ポーラス部11aの上に積層体10が位置するように、ダイシングテープ5を貼着した積層体10が保持ステージ11に載置される。ここで、保持ステージ11と積層体10のダイシングテープ5を貼着した面との間の気体を、当該貫通孔を介して吸い出すことによって、積層体10を保持ステージ11に吸引する。これによって、積層体10は、保持ステージ11に保持される。
【0035】
ポーラス部11aは白色セラミックを含んでいる。これによって、レーザ光照射を行ったときにおいても、ポーラス部11aはレーザ光を吸収することなく反射する。このため、ポーラス部11aは、レーザ光照射による変質、変色したものの剥れによる汚染物質の発生、ポーラス部11aの表面における凹凸の発生等の変質を防止することができる。従って、ポーラス部11aに白色セラミックを用いることで、レーザ照射により発生する汚染物によって積層体10が汚染することを防止することができ、レーサ照射により発生する凹凸によってポーラス部11aの吸着力が低下することを防止することができる。
【0036】
白色セラミックは、酸化アルミニウムを含んでいることが好ましい。白色セラミックが酸化アルミニウムを含んでいることによって、ポーラス部11aは好適にレーザ光を反射することができる。従って、レーザ光照射による変質を好適に防止することができる。又、ポーラス部11aは、酸化アルミニウムのみによって形成されたものであってもよい。なお、ポーラス部11aは、白色セラミックを含んでいることによって好適にレーザ光による変質を防止することができる。このため、ポーラス部11aの変質を防止するためのコーティング処理を予め施しておく必要がない。
【0037】
ポーラス部11aは導電性材料を含有していてもよい。導電性材料を含有することによって、積層体10からサポートプレート4を分離するときに発生する静電気の帯電を防止することができる。これにより、基板1に実装された素子が静電気によって破損することを防止することができる。
【0038】
保持ステージ11のポーラス部11aは、厚さ方向に貫通している貫通孔を備えている。貫通孔の大きさとしては、その直径が40μm以上、80μm以下であることが好ましく、50μm以上、70μm以下であることが最も好ましい。又、ポーラス部11aの貫通孔は、40%以上、45%以下の気穴率でポーラス部11aに設けられていることが好ましい。このような貫通孔を備えていることによって、ポーラス部11aは、より好適にレーザ光を反射するとともに、十分な吸引力によって積層体10を保持することができる。
【0039】
ポーラス部11aの平面部の大きさは、積層体10よりも大きく、積層体10を保持したときに、基板1の周端部から、0.2cm以上、1.0cm以下、より好ましくは、0.2cm以上、0.5cm以下、最も好ましくは、0.2cm以上、0.4cm以下の範囲内の幅で余剰部分を持たせることができる大きさであることが好ましい。ポーラス部11aの大きさを、積層体10の基板1の周端部から、上記範囲内の幅で余剰部分を持たせることができる大きさとすることによって、積層体10の基板1の周端部から外側にまで幅広くレーザ光照射を行なうことが可能になる。又、保持ステージ11の上に積層体10を保持するときに、積層体10を保持する位置の位置合わせ精度を高くする必要がなく、位置合わせに余裕を持たせることができる。このため、積層体10を搬送する装置のアライメントにも高い精度が要求されないので位置合わせに余裕を持たせることができるようになる。従って、アライメントを簡便に設定することができる搬送装置を用いて積層体10を搬送することが可能になる。
【0040】
外周部11bは、ポーラス部11aを支持する部材であり、例えば、セラミック、導電性セラミック、若しくはステンレス、及びアルミ等の金属を含んだ導電性材料によって形成することができる。ここで、外周部11bは導電性セラミック、又は金属を含んだ導電性材料によって形成されていることが好ましい。外周部11bを導電性材料によって形成することによって、ポーラス部11aへの静電気の帯電を低減しやすくなる。
【0041】
外周部11bは、ポーラス部11aに吸引力をもたらすための減圧手段(図示せず)に接続されていてもよい。
【0042】
(レーザユニット12)
レーザユニット12は、積層体10の分離層3にレーザ光を照射して、分離層3を変質させる。ポーラス部11aがレーザ光照射により変質しない材料によって形成され、基板1の周端部に余剰部分が生じるように積層体10よりも大きく形成されているため、積層体10の幅よりも広い幅でレーザ光を照射することが可能である。従って、レーザユニット12は、積層体10の全面にレーザ照射されるように、積層体10より広い範囲に一斉にレーザ光照射を行ってもよい。又、保持ステージ11に保持された積層体10の上をレーザユニット12が走査するようにして、積層体10の全面にレーザ光照射をしてもよい。これによって、積層体10の基板1の周端部にまで十分にレーザ光照射を行うことができる。
【0043】
なお、レーザユニット12が上述の分離層3に照射する光としては、分離層3が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザー等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光を適宜選択すればよい。又、分離層3を変質することができれば、非レーザ光を照射してもよい。分離層3に照射する光の波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長の光であり得る。又、レーザ出力、パルス周波数についても分離層の種類、厚さ、基板の種類等の条件に応じて適宜調整すればよい。
【0044】
〔アース13〕
図1に示す通り、保持ステージ11は、アース(帯電防止部材)13を備えている。ここで、保持ステージ11の外周部11bが導電性材料によって形成されていれば、外周部11bにアース13を接続すればよい。
【0045】
これによって、好適にポーラス部11aへの静電気の帯電を防止することができる。従って、基板1に実装された素子への静電気による損傷を防止することができる。積層体10から分離される基板1の種類によって異なるものの、ポーラス部11aにおける静電気の帯電量が±100V以下となるように、上記ポーラス部11aは帯電防止されていることが好ましい。これによって、基板1に実装された素子への静電気のスパークによる破損を防止することができる。
【0046】
〔イオナイザー14〕
図1に示す通り、支持体分離装置100は、さらに、保持ステージ11に帯電する静電気を除電するイオナイザー(除電手段)14を備えている。
【0047】
イオナイザー14から供給されるイオンによってポーラス部11aに帯電している静電気を中和することで、ポーラス部11aの帯電量を低減することができる。これにより、基板1に実装された素子の静電気による破損を防止することができる。
【0048】
イオナイザー14は、支持体分離装置100のユニット内部において、ポーラス部11aにイオンを供給することができるように設置されている。
【0049】
イオナイザー14としては、AC方式、DC方式、パルスAC方式、及びパルスDC方式、高周波方式等のコロナ放電方式、若しくはプラズマ方式、軟X線方式及び紫外線方式等のイオナイザーを例示することができる。ここで、イオナイザー14は、イオンバランス、除電時間、イオンの発生量等の観点から、ブロア方式、バー方式のイオナイザーであることが好ましい。
【0050】
又、イオナイザー14は、異なる電荷のイオンが引き付け合うクーロン力を利用してイオンをポーラス部11aに供給してもよく、ファン又はエアブローによってイオンをポーラス部11aに供給してもよい。ここで、設置距離の観点から、イオナイザー14は、ポーラス部11aに、ファン又はエアブローによってイオンを供給することがより好ましい。
【0051】
〔支持体分離装置100の操作〕
まず、支持体分離装置100によってサポートプレート4を積層体10から分離する前に、上記積層体10は、薄板化工程において基板1の露出面がグラインダーによって研削される。これによって、基板1を所望の厚さにまで薄板化する。
【0052】
その後、積層体10における薄板化した基板1側の面を、ダイシングフレーム6に保持されているダイシングテープ5に貼着する。次に、図1に示す通り、保持ステージ11のポーラス部11aによって、ダイシングテープ5を貼着した側から積層体10を吸着する。これによって、積層体10を保持ステージ11の上に保持する。なお、この時点で、積層体10は、サポートプレート4を透過して分離層3にレーザ光照射できるような状態に保持されている。
【0053】
レーザユニット12は、分離層3の種類に応じて選択されたレーザ光を照射する。ここで、レーザユニット12は、積層体10の基板の周端部の内側のみならず、基板1の周端部よりも外側にまで十分にレーザ光照射を行なう。当該操作は、保持ステージ11に設けられたポーラス部11aにおいて、レーザ光照射による変質を防止することができるために可能となる操作である。
【0054】
その後、支持体分離装置100は、積層体10の基板1をポーラス部11aの吸引力によって保持した状態を維持しつつ、サポートプレート4を吸着手段(図示せず)により固定して鉛直方向に引き上げる。このとき、積層体10は分離層3の周端部を含めた全面がレーザ光照射によって十分に変質されている。このため、支持体分離装置100は、積層体10に過度な力を付与することなく、安定してサポートプレート4を積層体10から分離することができる。
【0055】
また、アース13及びイオナイザー14により、積層体10からサポートプレート4を分離するときに発生する静電気のポーラス部11aへの帯電を防止している。このため、基板1に実装された素子が静電気によって破損することを防止することができる。
【0056】
その後、基板1は、接着層2及び分離層3の残渣が洗浄により除去され、ダイシング装置によって各チップに分割される。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0058】
〔レーザ光照射による保持ステージへのダメージの評価〕
実施例1として、白色セラミックとして酸化アルミニウムをポーラス部に用いた保持ステージを作製した。同様に、比較例1として、灰色セラミックをポーラス部に用いた保持ステージを作製した。これら、実施例1と比較例1とにおいて、レーザ光照射による各保持ステージへのダメージの評価を行った。
【0059】
(積層体の作製)
実施例に用いる積層体を次のようにして作製した。まず、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W、及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてCを使用したCVD法により、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ1μm)を支持体(12インチガラスサポートプレート、厚さ700μm)上に形成した。次に、12インチシリコンウエハに接着剤組成物であるTZNR(登録商標)−A3007t(東京応化工業株式会社製)をスピン塗布して、100℃、160℃、200℃で各3分間加熱して接着層を形成した(膜厚50μm)。そして、真空下、220℃、4000Kgの条件で3分間、接着層及び分離層を介してシリコンウエハとサポートプレートとの貼り合せを行ない、積層体を作製した。
【0060】
(レーザ光照射)
以上により作製した積層体を実施例1の保持ステージに保持し、12インチシリコンウエハの周端部よりも外側にまでレーザ光照射するという工程を、一回ごとに積層体を替えて3回行った。又、比較例1についても実施例1と同様の操作を行なった。
【0061】
レーザ光照射は、波長532nmのパルスレーザーを、パルス周波数40KHzの条件で照射した。又、レーザ光の走査速度は、6500mm/秒、照射スキャンピッチは、180μmになるように設定した。又、照射範囲は、12インチシリコンウエハの周端部よりも外側にまでレーザ光照射するため、φ=309mmに設定した。
【0062】
(ダメージの評価)
上記操作後に、実施例1の保持ステージと比較例1の保持ステージとの外観の変化を目視にて評価した。実施例1の保持ステージにおいては、3回のレーザ光照射による外観の変化は認められなかった。これに対して、比較例1の保持ステージにおいては、灰色セラミックを用いたポーラス部の周端部に、3回のレーザ光照射によって赤褐色の変色が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る支持体分離装置は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 接着層
3 分離層
4 サポートプレート(支持体)
10 積層体
11 保持ステージ
11a ポーラス部(保持ステージ)
11b 外周部(保持ステージ)
13 アース(帯電防止部材)
14 イオナイザー(除電手段)
100 支持体分離装置
図1