(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、試験パルス光のパルス幅は、各周波数成分が連続する所定時間と前記周波数成分の数(すなわち周波数多重数)の積となり、ほぼ連続光に近い時間的に長いパルス列となる。
【0008】
一方、試験パルス光の総帯域幅は、受信側で用いるA/D変換器の実効的なサンプリング帯域よりも小さくする必要があり、複数の周波数成分の周波数間隔は数百kHz程度と非常に小さく設定され、試験パルス光全体でも数十MHz程度となっている。
【0009】
以上のように総帯域幅が小さく、ほぼ連続光と見なせる試験パルス光がFUTに入射すると、その入射パワーが大きい場合において、誘導ブリルアン散乱現象を発生させる。
【0010】
光ファイバにおける誘導ブリルアン散乱発生の入力パワー閾値Pthは、Δvsを試験パルス光の総帯域幅とすると、以下の式で与えられる。
Pth ∝ (1+Δvs/Δvb)/Leff (式1)
ここで、Δvbはブリルアン利得帯域幅であり、一般の石英系光ファイバではその半値全幅で約35MHz程度で、全体的に約100MHz程度の広がりを有していると言われている。
【0011】
Leffは有効相互作用長であり、試験パルス光のパルス幅に比例し、入力光がほぼ連続光と見なせる場合に最大となり、一般の石英系光ファイバでは約20km程度である。すなわち、式1より、試験パルス光の総帯域幅が小さく、ほぼ連続光とみなせる場合は、誘導ブリルアン散乱発生の入力パワー閾値Pthが小さくなり、低い試験パルス光入力パワーであっても誘導ブリルアン散乱が発生しやすいということを意味している。
【0012】
誘導ブリルアン散乱光が発生した場合、試験パルス光が減衰してダイナミックレンジを低下させたり、発生した誘導ブリルアン散乱光そのものが測定対象である後方レイリー散乱光との間で非線形現象を発生させ、測定そのものが実施できなくなるという課題がある。
【0013】
近年の海底光伝送システムで用いられる海底光増幅器は、高出力化が進んでおり、このような海底光ケーブル線路の試験では、試験パルス光が発生する誘導ブリルアン散乱光によって測定できないといった課題がある。
【0014】
なお、受信側で用いるA/D変換器の実効的なサンプリング帯域は有限であるため、試験パルス光の総帯域幅を拡大するために、複数の周波数成分の周波数間隔を大きくすれば、反対に周波数多重数が減少し、多重によるダイナミックレンジ改善効果が小さくなってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点によれば、コヒーレント光を発する信号光発生手段と、前記信号光発生手段からの出力光を分岐し局発光と試験光とを生成する光分岐手段と、前記試験光の周波数を時間的に変化させる試験光周波数制御手段と、前記周波数が時間的に変化させられた試験光をパルス化して試験パルス光を生成するパルス化手段と、前記試験パルス光を被試験光ファイバに入射し、前記被試験光ファイバの各地点で反射または散乱により発生した後方散乱光と前記局発光をヘテロダイン検波して得られるビート信号をサンプリングする数値化手段と、前記サンプリングされたビート信号を周波数分離し、前記被試験光ファイバの長さ方向の後方散乱光強度分布を演算する演算処理手段とを備えた光パルス試験装置であって、前記試験パルス光は、所定の時間で連続する複数の周波数成分を有し、前記複数の周波数成分の時間領域および周波数領域における配置は、所定の時間範囲で区切られた複数のグループを有し、周波数領域で隣り合う周波数成分同士は互いに異なるグループに配置され、時間領域で隣り合う周波数成分同士の周波数差が、前記被試験光ファイバのブリルアン利得帯域に対応する周波数帯域幅と同等かそれよりも大きい、光パルス試験装置である。
【0016】
本発明の第2の観点によれば、第1の観点において、前記所定の時間範囲は、前記被試験光ファイバの有効相互作用長に対応した時間と同等かそれよりも大きい、光パルス試験装置である。
【0017】
本発明の第3の観点によれば、第1の観点又は第2の観点において、前記局発光に対して抑圧搬送波両側波帯変調する局発光周波数制御手段をさらに備え、前記試験パルス光の周波数帯域が前記数値化処理手段の実効的なサンプリング帯域よりも大きい、光パルス試験装置である。
【0018】
本発明の第4の観点によれば、第3の観点において、前記試験パルス光の強度波形は、前記時間領域で隣り合う周波数成分の間で強度が零になるように変調されている、光パルス試験装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有限であるA/D変換器の実効的なサンプリング帯域を最大限活用しながら、周波数多重によるダイナミックレンジ拡大の恩恵を受けると同時に試験パルス光による誘導ブリルアン散乱現象の発生を可能な限り抑制することができ、高出力化された海底光増幅器を用いた海底光伝送システムのケーブル監視を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態の光パルス試験装置を示すブロック構成図である。
【0022】
同図に示す光パルス試験装置1は、試験光の各周波数成分による被試験光ファイバからの反射光および後方散乱光の反射率分布を求めることができるものであり、かつ光増幅器18を光線形中継器として用いた海底光増幅中継システムの測定において、試験光パルスの光サージを抑圧するためのダミー光を構成するため、第2の光源11を用いたものである。
【0023】
コヒーレント光を発する第1の光源14からの出力光は合分波器15で2系統に分岐される。分岐された光の一方は、偏波制御器23により偏波制御が行われた後、局発光として用いられ、他方は試験光として光周波数制御器16に入射される。この光周波数制御器16は所定の時間W(秒)毎に試験光の周波数を変化させることができる。すなわち、光周波数制御器16によって出力される試験光は、所定の時間Wを単位としたM個の周波数成分から構成されている。本実施の形態では、40の周波数成分(M=40)から構成されており、所定の時間Wは10マイクロ秒としている。
【0024】
ここで、第1の光源14からの出力光の線幅は、光周波数制御器16により所定周波数を持続させる時間Wの逆数よりも小さい必要がある。これは、光パルス試験装置に要求される距離分解能に対応した光の振幅および周波数の持続した時間幅の逆数よりも小さい線幅を持った光源を用意する必要があることを意味しており、本実施の形態では10kHz以下としている。
【0025】
光周波数制御器16は、正弦波発生器21から発生する正弦波により制御される。正弦波発生器21は、信号タイミング制御器20からの制御信号により制御され、正弦波を発生する。
上記光周波数制御器16から出力された試験光は、光パルス化処理器17で光パルス化された後、光増幅器18で信号光パワーが増幅される。また、第2の光源11から出力されたダミー光は、光パルス化処理器12で光パルス化された後、光増幅器18で信号光パワーが増幅される。
【0026】
なお、上記光周波数制御器16と光パルス化処理器12、17は、信号タイミング制御器20により互いに同期するように制御され、試験パルス光の総時間幅を、光周波数制御器16により周波数を変化させた時間幅と等しくなるようにしている。
【0027】
光パルス化処理器17で光パルス化された試験パルス光は、光サーキュレータ19を通過し、FUTに入射される。FUTでは、試験パルス光による後方散乱光が生じる。光サーキュレータ19から出力された後方散乱光は、合分波器22を通して、上記局発光と合分波器(結合素子)24で結合される。
【0028】
この合分波器24からの出力光は、バランス型光受信器25で光受信されて電流信号となる。バランス型光受信器25から出力される電流信号は、帯域ろ過フィルタ26でフィルタリングされた後、数値化処理器27で数値化される。
【0029】
なお、数値化処理器27は、正弦波発生器21及びパルス発生器13と同様に、信号タイミング制御器20からの制御信号によって制御されている。数値化処理器27は、試験パルス光を被試験光ファイバに入射し、被試験光ファイバの各地点で反射または散乱により発生した後方散乱光と局発光をヘテロダイン検波して得られるビート信号をサンプリングする。
【0030】
そして、数値化された電流信号は、数値演算処理器28に入力される。数値演算処理器28は、サンプリングされた信号を周波数分離し、被試験光ファイバの長さ方向の後方散乱光強度分布を演算する。
【0031】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る試験パルス光の時間領域および周波数領域における複数の周波数成分の配置を示す図である。
【0032】
試験パルス光の時間領域および周波数領域における複数の周波数成分の配置は、以下の条件を満たす必要がある。
(条件1)
局発光の周波数をfLOとし、試験パルス光を構成する複数の周波数成分のうち、前記局発光の周波数と周波数領域で最も離れた周波数成分の周波数をfN、とした時、その差分周波数|fLO−fN|は、バランス型光受信器25及び数値化処理器27の受信帯域の半分以下、すなわち実効的なサンプリング帯域以下となるようにする。これは、サンプリングにおけるナイキストの定理による要請のためである。
【0033】
なお、本実施形態における実効的なサンプリング帯域は1.2GHzとしている。第1の光源14からの出力光は、光周波数制御器16にて510〜2080MHzで制御され、光パルス化処理器12、17に音響光学スイッチを用い、その周波数シフトは−500MHzである。従って、局発光とビートして得られる信号は、10〜1580MHzになるような構成としており、実効的なサンプリング帯域に収まるようにしている。
(条件2)
時間領域において隣り合う周波数成分の間、すなわち周波数が切り替わる境界点において位相が連続である必要がある。これは、周波数が切り替わる境界点において位相が不連続となると、後方散乱光を受信した信号のスペクトルサイドローブが高くなり、複数の周波数成分間のクロストークの影響が顕著になるためである。
【0034】
なお、本実施形態では、正弦波発生器21から光周波数制御器16に入力する電気信号が上記条件に準ずるように、前記所定の時間Wの逆数の自然数倍となるよう前記複数の周波数成分を選択しており、周波数が切り替わる境界点において常に位相が2πで完結し、次の周波数成分は位相が0から開始されるようにしている。
(条件3)
前記複数の周波数成分は、所定の時間範囲S(秒)で区切られた複数のグループから構成され、周波数領域で隣り合う周波数成分同士は互いに異なるグループに配置され、かつ時間領域で隣り合う周波数成分同士の周波数差が、前記被試験光ファイバのブリルアン利得帯域に対応する周波数帯域幅よりも大きくする必要がある。
【0035】
条件3は、光ファイバのブリルアン利得帯域内の光のみが光ファイバの誘導ブリルアン散乱現象に寄与することを利用している。周波数領域で本現象を見ると、周波数領域で隣り合う周波数成分同士、すなわち近い周波数成分を有する2つの光が互いに所定の時間範囲Sで区切られたグループに配置されることで、連続光ではなく、所定の時間範囲のパルス間隔を有する変調光として取り扱うことができる。
【0036】
また、時間領域で本現象を見ると、時間領域で隣り合う周波数成分同士の周波数差が、前記被試験光ファイバのブリルアン利得帯域に対応する周波数帯域幅よりも大きいため、同じグループ内では光ファイバのブリルアン利得帯域内に存在する光は1つの周波数成分のみとなる。このため、誘導ブリルアン散乱現象への寄与を実効的に小さくすることが可能となる。
【0037】
一般に、石英系光ファイバのブリルアン利得帯域は、特別な温度やひずみが光ファイバに分布的に加えられていない限り、その半値全幅で約35MHz程度で、全体的に約100MHz程度の広がりを有していると言われている。このため、本実施形態では、周波数成分間の周波数間隔は、前述のように110MHzとブリルアン利得帯域幅よりも大きく設定している。
【0038】
なお、前記所定の時間範囲Sは大きいほど望ましいが、あまりに大きくなると複数のグループが時間的に離れて配置されることになり、試験パルス光全体のパルス幅が大きくなるため、コヒーレントOTDRにおいて行う試験パルス光の入射繰り返し入射において、繰り返し周期が長くなり、結果として測定時間が長くなってしまう恐れがある。
【0039】
本発明に係る第1の実施形態では、各周波数成分が連続する所定時間Wと前記周波数成分の数M(すなわち周波数多重数)の積、W×Mが試験パルス光のパルス幅となる条件を維持する配置となっている。
【0040】
なお、前述のように周波数成分間の周波数間隔を前記被試験光ファイバのブリルアン利得帯域よりも大きいとした条件下では、前記所定の時間範囲Sが、前記被試験光ファイバの有効相互作用長に対応した時間よりも大きくすることができる。この場合、誘導ブリルアン散乱現象から見れば、実効的に所定時間Wのパルス幅を持つ単一の周波数の試験パルス光を用いた場合と同等となり、周波数多重数M分の多重効果を得ることができる。
【0041】
本実施形態では、W=10マイクロ秒の周波数成分を1つのグループに10〜15個以上を配置しているため、各グループの時間範囲Sは、100〜150マイクロ秒、すなわち20〜30kmの光ファイバ長に対応する時間となっており、前記被試験光ファイバの有効相互作用長に対応した時間よりも大きい。
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態の光パルス試験装置を示すブロック構成図である。前記第1の実施形態と基本的な構成は同様であり、異なる点のみを以下に説明する。
【0042】
合分波器15で分岐された局発光は、光位相変調器32により周波数制御される構成となっている。この光位相変調器32は、正弦波発生器31が発生する正弦波によって制御される。
【0043】
局発光は、前記光位相変調器32により、抑圧搬送波両側波帯変調され、偏波制御器23に偏波制御され、複数の両側波帯が局発光として後方散乱光と合分波器24にて結合し、バランス型光受信器25にて検出される。
【0044】
なお、本実施形態では、
図4に示されるように、第1の光源14から分岐された光の搬送波41の2次までの両側波帯を発生するようにしており、−2次、−1次、+1次、+2次の計4つの局発光42〜45を発生させている。
【0045】
また、バランス型光受信器25にて受信される複数の局発光強度が異なると、後方散乱光とビートした場合のビート信号強度が用いる局発光によって変化してしまうため、1次と2次の局発光強度が一定になる条件として、前記光位相変調器32の変調指数を2.6としている。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る試験パルス光の時間領域および周波数領域における複数の周波数成分の配置を示している。
【0047】
前記第1の実施形態において述べた条件1〜3は、同様である。
【0048】
なお、本実施形態における実効的なサンプリング帯域は第1の実施形態よりも小さい50MHzとしている。第1の光源14からの出力光は、光周波数制御器16にて310.8〜737.2MHzで制御されている。
【0049】
本実施形態においても、時間領域で隣り合う周波数成分間の周波数間隔は、100MHzとブリルアン利得帯域幅よりも大きく設定している。光パルス化処理器12、17に音響光学スイッチを用い、その周波数シフトは−500MHzである。正弦波発生器31より、100MHzの正弦波を光位相変調器32に入力し、前記4つの局発光の周波数は−2次、−1次、+1次、+2次でそれぞれ−200、−100、100、200MHzとしている。従って、局発光とビートして得られる信号は、8.4〜39.6MHzになるような構成としており、実効的なサンプリング帯域に収まるようにしている。
【0050】
なお、例えばある次数の局発光とビートさせる後方散乱光が他の次数の局発光とビートすることはあるが、前記実効的なサンプリング帯域から外れるようになっているため、測定に支障を与えない。
【0051】
すなわち、本実施形態では、試験パルス光の総帯域は426.4MHz、受信側の実効的なサンプリング帯域は50MHzであり、受信側の実効的なサンプリング帯域は、試験パルス光の総帯域よりも小さい。
【0052】
これは、実施形態に係る数値化処理器27のサンプリング帯域が低帯域で有限であっても、試験パルス光による総帯域を拡大し、誘導ブリルアン散乱現象を抑制しつつ、周波数多重の効果を得ることができることを意味している。
【0053】
光周波数制御器16から出力された試験光は、光パルス化処理器にてパルス化される。本発明の第2の実施形態では、前記所定時間Wを第1の実施形態の2倍とし、20マイクロ秒とし、半値全幅がWとなるレイズドコサインパルスとしている。
【0054】
すなわち、試験パルス光は周波数多重数M個分のレイズドコサインパルス列から構成され、試験パルス光全体のパルス幅は第1の実施形態の2倍となる。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様にM=40としている。
【0055】
ここで、第1の実施形態のように各周波数成分の強度が時間的に連続でなくレイズドコサインパルスで強度変調を採用している理由は、時間領域で隣り合う周波数成分間の強度を零にするためである。第1の実施形態における条件2で、周波数が切り替わる境界点において位相が不連続となると、後方散乱光を受信した信号のスペクトルサイドローブが高くなり、複数の周波数成分間のクロストークの影響が顕著になるということを述べた。
【0056】
第2の実施形態でも送信する試験パルス光については同様であるが、第2の実施形態の場合、前記4つの局発光の位相条件が各々で変化してしまうために、後方散乱光と前記4つの局発光をバランス型光受信器25にて検出したビート信号において、位相が不連続になり、スペクトルサイドローブが高くなることを、時間領域で隣り合う周波数成分間の強度を零にすることで回避している。
【0057】
なお、本実施形態では、各周波数成分を1つのグループに4個を配置しているため、各グループの時間範囲Sは、80マイクロ秒、すなわち16kmの光ファイバ長に対応する時間となっている。この光ファイバ長は、前記被試験光ファイバの有効相互作用長よりも若干小さい距離となっており、完全に理想的な配置とはなっていないが、第2の実施形態は、試験パルス光の総帯域は実効的なサンプリング帯域よりも極端に大きく、第1の実施形態よりもより受信側の帯域に配慮した設計となっている。
【0058】
しかしながら、時間領域で隣り合う周波数成分間の周波数間隔は、100MHzとブリルアン利得帯域幅よりも大きく設定しているため、従来技術と比較しても、誘導ブリルアン散乱光の抑制に大きな寄与をする設計である。
【0059】
図6は、本発明に係る第1および第2の実施形態を用いて得られた、試験パルス光を被試験光ファイバに入力したパワーに対して、L=100kmの光ファイバを伝搬後に検出した透過光、および後方散乱光のパワーを示した図である。
【0060】
比較のために、従来技術として、多重数M=1、すなわち単一の周波数成分を有するコヒーレントOTDRの場合と、特許文献1に記載の周波数多重を行ったコヒーレントOTDR(ただしM=1、隣り合う周波数成分間の周波数間隔は0.8MHz)を用いて測定した結果も合わせて表記している。
【0061】
これより、特許文献1に記載の従来技術では、試験パルス光の入力パワーが約5dB付近で後方散乱光のパワーが非線形に上昇し始めることから、誘導ブリルアン散乱現象が発生していることが分かる。
【0062】
第2の実施形態では、約10dB付近、第1の実施形態では約15dB付近と、非線形に上昇し始める入力パワーが変化している。第1の実施形態で40の周波数を多重しているにもかかわらず、単一周波数成分のコヒーレントOTDRの試験パルス光の場合とほぼ同じ誘導ブリルアン散乱特性を有していることが分かる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、誘導ブリルアン散乱光発生を抑圧でき、高出力化された海底光増幅器を用いた海底光伝送システムにおいても、試験パルス光が減衰してダイナミックレンジを低下させたり、発生した誘導ブリルアン散乱光そのものが測定対象である後方レイリー散乱光との間で非線形現象を発生させ、OTDR波形に影響を与えたりする事無く測定可能なコヒーレントOTDRを提供することができる。
【0064】
なお、受信側の実効的なサンプリング帯域が無限であれば、周波数成分の時間領域および周波数領域における配置の自由度は非常に高いが、本実施形態によれば、有限である実効的なサンプリング帯域を最大限活用しつつ、試験パルス光による誘導ブリルアン散乱光を抑制した光パルス試験装置を実現できる。
【0065】
言い換えれば、本実施形態によれば、広帯域のバランス光受信器を用いる必要が無く、安価で受信感度の良い低帯域なバランス型光受信器を用いる効果も奏する。
【0066】
また、上記実施形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種種の発明を形成できる。例えば、実施形態例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。