(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材の少なくとも片面に、ポリエーテル変性シリコーンを含有するシリコーン粘着剤組成物からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層の上に、帯電防止剤層を有する貼合せ用フィルムが、前記帯電防止剤層を介して貼合された表面保護フィルムにおいて、前記貼合せ用フィルムが、樹脂フィルムの片面に、前記帯電防止剤層として、バインダー樹脂と、該バインダー樹脂と反応しない帯電防止剤とを含有する帯電防止剤層を積層してなり、前記帯電防止剤層の成分が、前記貼合せ用フィルムから前記粘着剤層の表面に転写され、前記粘着剤層を被着体から剥離するときの剥離帯電圧が低減されてなることを特徴とする表面保護フィルム。
前記貼合せ用フィルムを、前記粘着剤層から剥離する時の剥離力が、0.005〜0.3N/50mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を、製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
【0003】
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0004】
光学部品用の表面保護フィルムにおいては、アクリル系粘着剤が多く使用されている。ところが、表面保護フィルムを貼合された光学用フィルムを、ディスプレイの寸法に合わせて所定のサイズに断裁する時に、表面保護フィルムの粘着剤が断裁刃によりちぎられ、小片状の異物(糊玉ともいう)が発生し易いという問題がある。こうした異物が発生すると、工程汚染(使用される装置、半製品等の汚染)や、光学用フィルムに押され跡が発生するなどの不具合が生じる原因となる。そのため、表面保護フィルムが貼合された光学用フィルムをスリットしたり断裁したりする時に、異物の発生が少ない表面保護フィルムが求められている。また、プリズムシートやアンチグレア処理した偏光板など、表面に凹凸形状を有する光学用フィルムに対してもなじみ性(濡れ性)が良く、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合する際に気泡が入り難い表面保護フィルムが求められている。
【0005】
このように、スリットや断裁時に粘着剤の糊玉が発生し難く、各種の光学用フィルムに対してなじみ性が良い表面保護フィルムが求められていることから、ポリウレタン系粘着剤やシリコーン系粘着剤を使用した表面保護フィルムが好適に使用されている。
【0006】
また、近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶ディスプレイの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV〜−0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
【0007】
表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための、帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0008】
特許文献1及び特許文献2には、アクリル系ポリマーと帯電防止剤を含有するアクリル系粘着剤を用いた表面保護フィルムが開示されている。また、特許文献3には、アルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタン、イオン性化合物及び3官能のイソシアネート化合物からなる帯電防止粘着剤が開示されている。また、特許文献4には、超強酸のアルカリ金属塩類、アルカリ土類金属塩類の少なくとも一種の塩を含有することを特徴とする表面保護フィルム用ポリウレタン粘着剤組成物が開示されている。さらに、特許文献5には、フルオロ有機アニオンを含有するイオン性液体、及び数平均分子量5,000以上のポリウレタンからなる粘着剤組成物および当該粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムが開示されている。特許文献6にはシリコーン系粘着剤と導電性粉体からなる導電性シリコーン粘着剤組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1及び2に記載の表面保護フィルムでは、アクリル系粘着剤を使用しているため、光学用フィルムをディスプレイの大きさに合わせて所定のサイズに断裁する時に、粘着剤が断裁刃によりちぎられ、小片状の異物(糊玉ともいう)が発生し易いという問題がある。こうした異物が発生すると、工程汚染や光学用フィルムに押され跡が発生するなどの不具合が生じる原因となる。
【0011】
上記の特許文献3乃至5に記載の表面保護フィルムでは、ウレタン系粘着剤を使用しているため、光学用フィルム断裁時の小片状物(糊玉)の発生は少ないが、シリコーン系粘着剤に比べて、被着体に対するなじみ性(濡れ性)が劣る問題がある。表面が比較的平滑な光学用フィルムやガラスに対しては大きな問題にはならないが、表面に凹凸形状を有する光学用フィルムに対しては、なじみ性が劣る問題があった。
【0012】
一方、上記の特許文献6に記載の接着用導電性シリコーン粘着剤組成物では、シリコーン粘着剤に導電性粉体を使用しているため、透明性などの光学特性が劣る問題があり、ディスプレイ表面、ガラス、各種光学用フィルムなどの光学部品の表面に貼着される表面保護フィルムとしては使用し難い問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、所定の寸法に断裁する時にも粘着剤層に起因する異物(粘着剤の糊玉)が発生し難く、表面に凹凸がある光学用フィルムに対してもなじみ性(濡れ性)が良く、かつ、被着体への汚染が少なく、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、この課題について鋭意検討を行なった。
断裁時にも粘着剤層に起因する異物(糊玉)が発生し難く、表面に凹凸がある光学用フィルムに対してもなじみ性(濡れ性)が良い表面保護フィルムを得るためには、シリコーン系粘着剤が好適と判断した。そこで、シリコーン粘着剤層に帯電防止性を付与でき、かつ、光学的な特性を落とさない粘着剤層の検討を行った。また、被着体に対する汚染が少なく、かつ汚染性の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染していると推測される帯電防止剤の含有量を減量する必要があると考えた。さらに、帯電防止剤の含有量を増加させないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。
【0015】
本発明は、粘着剤組成物の中に、帯電防止剤を混合して粘着剤層を形成するのではなく、最初に、帯電防止剤を含まない粘着剤組成物を、基材の片面に塗工・乾燥して粘着剤層を積層する。その後に、帯電防止剤を含有した樹脂層を有する貼合せ用フィルムを、粘着剤層と帯電防止剤層が接触するように貼り合わせ、粘着剤層の表面に、適量の帯電防止剤の成分を貼合せ用フィルム側から転写、付与することを技術思想としている。本発明者らは、この技術思想により、被着体から表面保護フィルムを剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる表面保護フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、上記の課題を解決するため、本発明は、透明基材の少なくとも片面に、ポリエーテル変性シリコーンを含有するシリコーン粘着剤組成物からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層の上に、帯電防止剤層を有する貼合せ用フィルムが、前記帯電防止剤層を介して貼合された表面保護フィルムにおいて、前記貼合せ用フィルムが、樹脂フィルムの片面に、前記帯電防止剤層として、バインダー樹脂と、該バインダー樹脂と反応しない帯電防止剤とを含有する帯電防止剤層を積層してなり、前記帯電防止剤層の成分が、前記貼合せ用フィルムから前記粘着剤層の表面に転写され、前記粘着剤層を被着体から剥離するときの剥離帯電圧が低減されてなることを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
【0017】
また、帯電防止剤が、イオン性化合物であることが好ましい。
【0018】
また、前記帯電防止剤が、アルカリ金属をカチオンとするイオン性化合物であることが好ましい。
【0019】
また、前記粘着剤層の厚みが、2〜250μmであることが好ましい。
【0020】
また、前記貼合せ用フィルムを、前記粘着剤層から剥離する時の剥離力が、0.005〜0.3N/50mmであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上記の表面保護フィルムが貼合されてなる光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の表面保護フィルムは、断裁時にも粘着剤層に起因する異物(糊玉)が発生し難く、表面に凹凸がある光学用フィルムに対してもなじみ性(濡れ性)が良く、かつ、被着体への汚染が少なく、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品を提供できる。
また、本発明の表面保護フィルムによれば、断裁時にも粘着剤層に起因する異物(糊玉)の発生を抑えることができるので、工程汚染や光学用フィルムに押され跡が発生するなどの不具合の発生を防ぐことができる。
また、本発明の表面保護フィルムによれば、光学用フィルムの表面を確実に保護することができることから、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の表面保護フィルムの、概念断面図である。この表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に帯電防止剤層4が形成された貼合せ用フィルム5が、貼合されている。
【0025】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルム(透明基材)が用いられる。これにより、表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
【0026】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止剤層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0027】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥離でき、かつ、被着体を汚染し難い粘着剤である。また、断裁時の糊玉の発生が少ないこと、光学用フィルムなどの被着体に対して濡れ性が良好であることから、シリコーン系粘着剤が好適である。
【0028】
シリコーン系粘着剤としては、反応形態により付加反応型や過酸化物硬化型などがあるが、被着体汚染性が少ないことから、付加反応型が好適である。また、直鎖状シリコーンポリマーとシリコーンレジンの配合比率や、シリコーンポリマーの架橋密度により、粘着剤の粘着力を変えることができる。表面保護フィルムに使用する粘着剤は、粘着力が比較的軽いものが好適である。
市販のシリコーン系粘着剤としては、信越化学工業製KR−3704、X40−3306や東レ・ダウコーニング製DC7651ADHESIVE、SD7587L PSA、アイカ工業製SE9500、SE9600などが挙げられる。
【0029】
シリコーン粘着剤には、貼合せ用フィルムから帯電防止剤を転写し易くするために、ポリエーテル変性シリコーンを含有することが望ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、シリコーン粘着剤と帯電防止剤との親和性を高め、粘着剤層に帯電防止性能を付与し易くするために添加するものである。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリアルキレンオキシド基を有するポリシロキサン(ポリメチルポリアルキレンオキシドシロキサン)であってもよく、必要に応じてポリジメチルシロキサンとポリメチルポリアルキレンオキシドシロキサンとの共重合体でも良い。ポリアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合物などがある。ポリエーテル変性シリコーンには、ポリジメチルシロキサン成分の有無や、共重合比、ポリアルキレンオキシド基の種類などにより多種のものがあり、帯電防止性能や被着体汚染性などを考慮して選択すればよい。
【0030】
市販のポリエーテル変性シリコーンとしては、信越化学工業製KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−644、KF−6020、KF−6204、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、東レ・ダウコーニング製SH8700、SH8400、SF8410、L−7002、FZ−2104、FZ−77、L−7606などが挙げられる。
【0031】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、被着体の種類や表面形状に合わせて選定すればよいが、2〜250μm程度とすることが多い。価格面や被着体へのなじみ性から5〜40μm程度の厚みが好ましく、10〜30μm程度の厚みがより好ましい。表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03〜0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。また、表面保護フィルム10から貼合せ用フィルム5を剥がす時の操作性に優れることから、貼合せ用フィルム5を、粘着剤層2から剥離する時の剥離力が、剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件で測定した時に、0.005〜0.3N/50mmであることが好ましい。
【0032】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される貼合せ用フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、バインダー樹脂と、該バインダー樹脂と反応しない帯電防止剤とを含有する帯電防止剤層4が積層されている。
【0033】
樹脂フィルム3としては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや、価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。樹脂フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
樹脂フィルム3の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、樹脂フィルム3の表面に、プラズマ放電やコロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0034】
帯電防止剤層4を構成するバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキッド樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂としては、架橋するタイプ、溶剤または分散媒を揮発させるタイプなどいずれも使用できる。
【0035】
帯電防止剤層4を構成する帯電防止剤7としては、バインダー樹脂溶液に対して分散性の良いもので、かつ、バインダー樹脂が硬化するタイプの場合であれば、バインダー樹脂の硬化を阻害しないものが好ましい。また、帯電防止剤層4から粘着剤層2の表面に移行して、粘着剤層2に帯電防止効果を付与するため、バインダー樹脂と反応しない帯電防止剤が良い。こうした帯電防止剤としてはイオン性化合物が好適である。
【0036】
イオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等の、有機カチオン又は無機カチオンが挙げられる。また、アニオンとしては、C
nH
2n+1COO
−、C
nF
2n+1COO
−、NO
3−、C
nF
2n+1SO
3−、(C
nF
2n+1SO
2)
2N
−、(C
nF
2n+1SO
2)
3C
−、RC
6H
4SO
3−、PO
43−、AlCl
4−、Al
2Cl
7−、ClO
4−、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、SbF
6−、SCN
−等の、有機アニオン又は無機アニオンが挙げられる。これらのイオン性化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0037】
中でも、カチオンとしてアルカリ金属カチオンを持ったイオン性化合物(アルカリ金属塩)が好適である。アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられる。具体的には、例えば、Li
+、Na
+、K
+等から選択されるカチオンと、Cl
−、Br
−、I
−、BF
4−、PF
6−、SCN
−、ClO
4−、CF
3SO
3−、(FSO
2)
2N
−、(CF
3SO
2)
2N
−、(C
2F
5SO
2)
2N
−、(CF
3SO
2)
3C
−等から選択されるアニオンとから構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、LiBr、LiI、LiBF
4、LiPF
6、LiSCN、LiClO
4、LiCF
3SO
3、Li(FSO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N、Li(CF
3SO
2)
3Cなどのリチウム塩が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は、1種のアルカリ金属塩を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0038】
バインダー樹脂に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類やバインダー樹脂との親和性の度合いにより異なるが、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0039】
バインダー樹脂と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。バインダー樹脂を溶剤または分散媒で希釈した後に帯電防止剤を添加、混合する方法、バインダー樹脂と帯電防止剤を混合した後に溶剤または分散媒で希釈する方法、バインダー樹脂と帯電防止剤を各々溶剤または分散媒で希釈した後、両者を混合する方法などいずれでもよい。また、必要に応じて、バインダー樹脂を硬化するための架橋剤や架橋触媒、バインダー樹脂の樹脂フィルムへの密着性を向上するための密着性向上剤、帯電防止剤を含有したバインダー樹脂塗料の塗工性を上げるためのレベリング剤などの添加剤を添加しても良い。
【0040】
バインダー樹脂と、帯電防止剤との混合比率は、特に限定はないが、バインダー樹脂の固形分100に対して、帯電防止剤を固形分として5〜100程度の割合が好ましい。帯電防止剤の固形分換算の添加量が、バインダー樹脂の固形分100に対して5の割合より少ないと、粘着剤層2の表面への帯電防止剤7の転写量も少なくなり、粘着剤層2に剥離帯電防止性能が発揮され難くなる。また、帯電防止剤の固形分換算の添加量が、バインダー樹脂の固形分100に対して100の割合を超えると、帯電防止剤7とともにバインダー樹脂も、粘着剤層2の表面に転写されてしまうため、粘着剤層2の粘着特性を低下させる可能性がある。
【0041】
本発明に係わる表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び貼合せ用フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、貼合せ用フィルム5を貼合する方法が一般的である。
【0042】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0043】
また、同様に、樹脂フィルム3に、帯電防止剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0044】
上記の構成を有する本発明に係わる表面保護フィルム10は、被着体である光学用フィルムから剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることが好ましい。さらに、表面電位が、+0.5kV〜−0.5kVであることがより好ましく、表面電位が、+0.1kV〜−0.1kVであることが特に好ましい。この表面電位は、帯電防止剤層4に含有される帯電防止剤7の種類、添加量等を加減することによって調整できる。
【0045】
図2は、本発明の表面保護フィルムから、貼合せ用フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
図1に示した表面保護フィルム10から、貼合せ用フィルム5を剥がすことにより、貼合せ用フィルム5の帯電防止剤層4に含まれる帯電防止剤(符号7)の一部が、表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に、転写される(付着する)。そのため、
図2においては、表面保護フィルムの粘着剤層2の表面に付着した帯電防止剤を、符号7の斑点で模式的に示している。帯電防止剤7の成分が、貼合せ用フィルム5から粘着剤層2の表面に転写されることにより、転写する前の粘着剤層2に比べて、粘着剤層2を被着体から剥離する際の剥離帯電圧が低減される。なお、粘着剤層を被着体から剥離する際の剥離帯電圧は、公知の方法で測定可能である。例えば、表面保護フィルムを偏光板などの被着体に貼り合わせた後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、被着体表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)として測定する。
本発明に係わる表面保護フィルムでは、
図2に示した貼合せ用フィルムを剥がした状態の表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に転写された帯電防止剤が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。
【0046】
図3は、本発明の表面保護フィルムを、光学部品に貼合した実施例を示す断面図である。
本発明の表面保護フィルム10から、貼合せ用フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態(
図2の表面保護フィルム11)で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、
図3は、本発明の表面保護フィルム10から、貼合せ用フィルム5を剥がした状態の表面保護フィルム11が貼合された、光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの、光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の光学系装置、等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
本発明の表面保護フィルム10から、貼合せ用フィルム5を剥がした状態の表面保護フィルム11を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができる。そのため、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
(表面保護フィルムの作製)
エチルセルロース(ダウケミカル製エトセル(登録商標)100FP)1.5重量部、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミドの20%酢酸エチル溶液1.125重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒98.5重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の帯電防止剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の帯電防止剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚みが0.2μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の貼合せ用フィルムを得た。一方、シリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製、品名:X−40−3306)100重量部、触媒(信越化学工業(株)製、品名:PL−50T)0.2重量部、ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、品名:SH8400)1.0重量部を添加、混合した塗付液を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の貼合せ用フィルムの帯電防止剤層(帯電防止処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0048】
(実施例2)
帯電防止剤をリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1の帯電防止剤層を形成する塗料を、アミノアルキッド樹脂(日立化成工業(株)製、品名:テスファイン(登録商標)303)3.125重量部、触媒(日立化成工業(株)製、品名:ドライヤー900)0.1重量部、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの20%酢酸エチル溶液1重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒96.275重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合した塗料にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0050】
(比較例1)
エチルセルロース(ダウケミカル製エトセル(登録商標)100FP)1.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒98.5重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例1の貼合せ用フィルム側の塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、比較例1の貼合せ用フィルム側の塗料を、乾燥後の厚みが0.2μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例1の貼合せ用フィルムを得た。一方、シリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製、品名:X−40−3306)100重量部、触媒(信越化学工業(株)製、品名:PL−50T)0.2重量部、ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、品名:SH8400)1.0重量部、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミドの20%酢酸エチル溶液2.5重量部を添加、混合した塗付液を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例1の貼合せ用フィルムのバインダー樹脂塗布層を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0051】
(比較例2)
帯電防止剤層に、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミドを添加しない他は、実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを得た。この場合、貼合せ用フィルムの表面には、比較例1と同様に、帯電防止剤を含まないバインダー樹脂塗布層が形成される。
【0052】
(比較例3)
粘着剤層にSH8400を添加せずに、帯電防止剤層にSH8400を1.0重量部添加した以外は実施例1と同様にして、比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0053】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
(帯電防止剤層および粘着剤層の表面抵抗率)
貼合せ用フィルムの帯電防止剤層の表面抵抗率、及び表面保護フィルムの粘着剤層の表面抵抗率を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)−UP)にて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。測定は、粘着剤層と帯電防止剤層を貼合した粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、その後粘着フィルムから貼合せ用フィルムを剥離し、粘着フィルムの粘着剤層と貼合せ用フィルムの帯電防止剤層の表面抵抗率(Ω/□)をそれぞれ測定する。
【0054】
(貼合せ用フィルムの剥離力の測定方法)
表面保護フィルムのサンプルを、幅50mm、長さ150mmに裁断する。23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、貼合せフィルムを剥離したときの強度を測定し、これを貼合せ用フィルムの剥離力(N/50mm)とした。
【0055】
(表面保護フィルムの粘着力の測定方法)
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
【0056】
(表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法)
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0057】
(表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法)
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面における汚染の有無を目視にて観察し、表面汚染性を確認した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染の移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染の移行が確認された場合を(×)とした。
【0058】
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の表面保護フィルムについて、測定した測定結果を表1に示した。「X40−3306」は、X−40−3306を、「PL−50T」は、PL−50Tを、「SH8400」はSH8400を、「100FP」はエトセル(登録商標)100FPを、「LiFSI」は、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミドを、「LiTFSI」は、リチウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、「T303」はテスファイン(登録商標)303を、「D900」はドライヤー900を、それぞれ意味する。
また、「貼合せ層」は、貼合せ用フィルムの片面に積層される、帯電防止剤層及びバインダー樹脂塗布層の総称である。
また、表面抵抗率Aは、本発明の表面保護フィルムの、粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定したものである。また、表面抵抗率Bは、粘着剤層の表面から剥離した後の、貼合せ用フィルムの帯電防止剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定したものである。表1のORは、オーバーレンジの略であり、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)−UP)の測定範囲オーバーを意味していて、表面抵抗率が、1E+13Ω/□以上であることを意味する。また、表面抵抗率の表記で、例えば、1.7E+10は、1.7×10の10乗を意味する。表面抵抗率の単位はΩ/□である。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1〜3の表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、被着体の表面に対する汚染がなく、かつ、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低い。
一方、帯電防止剤を粘着剤層に混合させた比較例1の表面保護フィルムは、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低く良好であるが、剥離した後の、被着体に対する汚染が多くなった。また、帯電防止剤を用いなかった比較例2の表面保護フィルムでは、被着体に対する汚染性は改善したが、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高くなった。ポリエーテル変性シリコーンを粘着剤層側に用いずに、貼合せ層側に用いた比較例3の表面保護フィルムも、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高くなった。