【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
フィラー(銀粉、黒鉛粉、銀被覆黒鉛混合粉)のBET比表面積、タップ密度、及び粒度分布(D
10、D
50、及びD
90)の測定方法は、以下に示す通りである。
【0043】
<BET比表面積>
フィラーのBET比表面積は、Macsorb HM−model 1210(MOUNTECH社製)を用いて、窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃で10分間とした。
【0044】
<タップ密度>
フィラーのタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、フィラーを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、タップ密度=試料質量(g)/タッピング後の試料体積から算出した。なお、銀被覆黒鉛混合粉は銀の割合で体積が大きく変わる。そのため、各測定試料の体積を合わせるように、銀の含有量に対する試料質量を、実施例1の約50質量%では2.5g、実施例2の約70質量%では8.5g、実施例3の約90質量%では15g、のように変えて実施した。
【0045】
<粒度分布(D
10、D
50、及びD
90)>
粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、MICROTORAC MT3300EXII)を用いて、フィラー0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加え、チップ径20mmの超音波ホモジナイザーにより2分間分散させて試料を準備し、全反射モードで粒径の測定を行った。測定により得た体積基準の累積分布により、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)、及び累積90%粒子径(D
90)の値を求めた。
【0046】
(実施例1)
−銀被覆黒鉛混合粉の作製−
<センシタイジング工程>
300mLビーカーに、塩化錫二水和物(SnCl
2・2H
2O、0.105mol/L)を4.76g、塩酸(0.408mol/L)を8g、純水を199.36g入れて錫化合物溶液の調液を行った。その後、500mLビーカーに調液した液体を移し、黒鉛粉を10g入れて、室温(25℃)で撹拌しながら2時間保持し、Snイオンを黒鉛粉表面に吸着させた。
次いで、ヌッチェを用いて5Cのろ紙上でろ過し、ろ液の伝導度が0.5μS/m以下となるまで純水を用いて洗浄を行った。
前記黒鉛粉のBET比表面積は13.3m
2/g、タップ密度は0.31g/mL、体積基準の累積50質量%粒子径(D
50)は8.3μmであった。
図1に実施例1で用いた黒鉛粉の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を示す。
【0047】
<置換メッキ工程>
純水が撹拌回転数524rpmにて攪拌されている1,000mLのビーカーに硝酸銀を投入し、Zn粉添加までに加わる水量を考慮して置換反応時において、硝酸銀を0.185mol/L含む450mLの硝酸銀水溶液となるよう調液した(25℃)。
その後、前記センシタイジング工程後の黒鉛粉を乾燥させない状態で、原料の黒鉛粉換算で9gとなるよう9割分取して投入した。硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉の質量比は1:1である。
引き続き、この反応槽中へ錯化剤としてのEDTA−4Naを液中の銀の量に対してモル比で2.67当量添加し、5分間反応させ、銀のEDTA錯体水溶液を得た。この銀のEDTA錯体水溶液のpHを測定すると、13.4であった。pH調整は行わずに、Zn粉(2mm〜5mm箔)を液中の銀の量に対してモル比で3当量を一括添加し、20分間撹拌しながら置換メッキを行った。
その後、目幅150μmの篩を通すことで残存するZn粉を回収し、5Cのろ紙上にて吸引ろ過を行い、ろ液の伝導度が0.5μS/m以下となるまで純水を用いて洗浄を行った。その後、70℃の真空乾燥機で5時間乾燥させ、実施例1の銀被覆黒鉛混合粉を得た。
得られた銀被覆黒鉛混合粉より0.5g分取して硝酸で加熱溶解し、ろ過することで黒鉛粉以外を溶解した溶液を用いて結合誘導プラズマ(ICP)発光分析(SII社製、SPS5100)により測定した結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は49質量%、亜鉛の含有量が0.44質量%、錫の含有量が0.9質量%であった。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、置換反応時に、硝酸銀を0.249mol/L含む650mLの水溶液となるよう調液し、投入するセンシタイジング工程後の黒鉛粉の量を、原料の黒鉛粉換算で7.5gとなる量とし、硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉との質量比を7:3とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の銀被覆黒鉛混合粉を得た。
得られた銀被覆黒鉛混合粉について、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は69質量%、亜鉛の含有量が0.27質量%、錫の含有量が0.33質量%であった。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、置換反応時に、硝酸銀を0.333mol/L含む800mLの水溶液となるよう調液し、投入するセンシタイジング工程後の黒鉛粉の量を、原料の黒鉛粉換算で3.2gとなる量とし、硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉との質量比を9:1とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の銀被覆黒鉛混合粉を得た。
得られた銀被覆黒鉛混合粉について、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は89質量%、亜鉛の含有量が0.18質量%、錫の含有量が0.044質量%であった。
【0050】
得られた実施例1〜3の銀被覆黒鉛混合粉について、銀被覆黒鉛混合粉中の銀(Ag)の含有量(銀含有率)は、それぞれ49質量%、69質量%、及び89質量%であり、硝酸銀水溶液中の銀は、ほぼ全て黒鉛粉の表面に析出したと考えられた。
また、錫(Sn)の含有量は、それぞれ0.9質量%、0.33質量%、及び0.044質量%であり、銀の含有量が多いほど錫の含有量が少ないことからセンシタイジングにより表面に付着していた錫は、銀の析出に寄与した後は、液中に放出されると考えられる。
また、亜鉛の含有量は、それぞれ0.44質量%、0.27質量%、及び0.18質量%であり、本発明のようにZn粉による置換反応を行う場合は、亜鉛が不純物として含まれることが分かる。
【0051】
次に、実施例1〜3の銀被覆黒鉛混合粉について、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM IT3000、日本電子株式会社製)を用いて100倍の反射電子像(以下、BEC像とする。)を観察したものを
図2〜
図4に示す。
図2〜
図4において、白(薄灰色)く見える粒子が銀被覆黒鉛粒子であり、黒(濃灰色)に見える部分が銀に被覆されていない原料の黒鉛粒子である。これらの図が示すように、実施例1〜3にかけて銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量を増やすことで、全黒鉛粉に対する銀被覆黒鉛粒子の割合は増加している。
次に、実施例1〜3の銀被覆黒鉛混合粉のそれぞれについて、粒子解析ソフトウエア(株式会社システムインフロンティア製、RegionAdviser)を使用して、画像解析を行った。この画像解析では、COMPO像を平滑化処理した後、自動コントラスト・輝度調整部(ACB)において、コントラストを100とし、ブライトネスを60〜100の間で調整し、領域分割によりヒストグラム方式で2値化処理(画像上の輝度値のヒストグラムを構築し、ヒストグラムの傾向に基づいて2値化する処理)を行った。
2値化処理後の面積比を算出した結果、被覆率(面積比)は、16%、36%、及び50%であった。
また、実施例1と2について、密度を3g/mLに調整したポリタングステン酸Na重液に添加し、超音波による分散後に10日間静止して比重分離させ、浮き粉と沈殿粉とをそれぞれろ過回収して測定した結果、銀被覆黒鉛混合粉のうち密度が3g/mLより大きく沈殿した沈殿粉の割合(質量比)は、73%、及び90%であった。上記記載のように銀(Ag)の密度が10.5g/mLに対してグラファイトの密度は2.26g/mL程度であることから、この沈殿粉の割合を、銀被覆黒鉛混合粉における銀被覆黒鉛粒子の割合(質量比)とみなす。
硝酸銀水溶液中の銀が全て銀被覆に使用されたと仮定して銀被覆黒鉛混合粉における銀被覆黒鉛粒子の割合(質量比)から計算した黒鉛粉の中で銀が被覆された割合(黒鉛被覆率)は、実施例1で46%、実施例2で66%となった。
【0052】
また、実施例3の銀被覆黒鉛混合粉について、樹脂埋めして粉末断面のBEC像を観察したものを
図5に示す。断面のコントラストの明るい部分が銀であり、黒鉛粒子は銀によって被覆されており、銀被覆の厚みは10nm〜3μm(3,000nm)の間で不均一であることが分かった。
【0053】
(比較例1〜3)
黒鉛粉と、黒鉛粉と形状が類似の銀粉とを混合した場合を比較例1〜3として、銀被覆黒鉛混合粉の有効性について評価した。
【0054】
<ペレット測定評価>
前記黒鉛粉、前記実施例1〜3、及び、前記黒鉛粉と銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、フレーク銀粉、FA−D−6)とを実施例1〜3と同じAg含有量としてコーヒーミルを用いて混合した比較例1〜3を用意した。
次に、各フィラーを、それぞれ、直径10.6mmの円筒状のシリンダーに入れて圧力2.65tにて1分間保持し、比抵抗1が測定できるサイズのペレットを作製し、圧粉体での比抵抗1をLorestaHP(MITSUBISHI CHEMIAL社製、MCP−T410)を用いて評価した。各フィラーの銀(Ag)含有量と体積比、各ペレットのサイズや密度、充填率、及び比抵抗1の値を表1に示す。また、Ag含有量と比抵抗1の関係を、
図6に示す。
【0055】
【表1】
表1の結果から、ペレット測定評価の結果より、黒鉛粉と銀粉を混合した場合に比較して、銀被覆黒鉛混合粉は比抵抗1が低くなることが分かる。また、
図6の結果より、銀(Ag)含有量が40質量%未満では、黒鉛粉のみの場合や黒鉛粉と銀粉とを混合した場合に比べて、銀被覆黒鉛混合粉の比抵抗1の低減効果は小さいことが示唆される。
【0056】
<ペースト評価>
実施例1と、前記黒鉛粉と銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、フレーク銀粉、FA−D−6)とを実施例1と同じ銀(Ag)含有量としてコーヒーミルを用いて混合した比較例1と、を用意した。
次に、実施例1及び比較例1の各フィラーをそれぞれ70質量部、エポキシ樹脂((EP4901E、株式会社ADEKA製)を45質量部、硬化剤(BF
3NH
2EtOH、和光純薬工業株式会社製)を2.25質量部、及び溶剤(BCA:ブチルカルビトールアセテート、和光純薬工業株式会社製)を7質量部として混合し、3本ロールミル(EXAKT社製、EXAKT80S)にて前記溶剤(BCA)を2.3質量部追加しながら混練し、導電性ペーストとした。
次に、得られた導電性ペーストをアルミナ基板上に幅500μm×長さ37,500μmの線状パターンとなるようにスクリーン印刷し、200℃で40分間硬化して導電膜とした。
−比抵抗2の測定−
得られた導電膜について、接触式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−30D)を用い、導電膜の膜厚と線幅を測定し、デジタルマルチメータ(ADVANTEST社製、R6551)を用いてライン抵抗(Ω)を測定し、比抵抗2(Ω・cm)を計算した。
実施例1の銀被覆黒鉛混合粉を用いた導電膜の膜厚は17.8μm、線幅は500μmであり、比抵抗2は0.31Ω・cmであった。
比較例1の混合粉の場合は、膜厚は17.7μm、線幅は500μmであり、比抵抗2は0.43Ω・cmであった。
ペースト評価した場合においても、黒鉛粉と銀粉を混合した場合に比較して、銀被覆黒鉛混合粉は比抵抗2が低くなることが分かる。
【0057】
以下、実施例1に対して被覆率を向上させる手段についての実験例について説明する。
【0058】
(実験例1)
実施例1において、Zn粉添加前に、硝酸(HNO
3)を対EDTA−4Naモル比で1.27となる量を投入し、pH調整を行った以外は、実施例1と同様にして、実験例1の銀被覆黒鉛混合粉を得た。pH調整後のpHは7.2であった。
得られた銀被覆黒鉛混合粉より0.5g分取して硝酸に浸漬し、ろ過することで黒鉛粉以外を溶解した溶液を用いて、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は47質量%、亜鉛の含有量が0.0035質量%、錫の含有量が0.39質量%であった。
【0059】
得られた実験例1の銀被覆黒鉛混合粉の100倍と5,000倍のBEC像を
図7及び
図8に示す。銀被覆黒鉛粒子の割合(被覆率(面積))は54%であった。pH調整を行う前の実施例1と比較して、pHを中性に近づけたことにより、白色(銀被覆黒鉛粒子)の割合が実施例1の被覆率(面積)の16%から大幅に増加しており、被覆率が大きいことが分かる。また、比重分離後の沈殿粉の割合である被覆率(質量比)も79質量%であり、実施例1の73質量%に比べて増加していた。
【0060】
(実験例2)
実施例1において、Zn粉添加前に、硝酸(HNO
3)を対EDTA−4Naモル比で1.64となる量を投入し、pH調整を行った以外は、実施例1と同様にして、実験例2の銀被覆黒鉛混合粉を得た。pH調整後のpHは4.5であった。
得られた銀被覆黒鉛混合粉より0.5g分取して硝酸に浸漬し、ろ過することで黒鉛粉以外を溶解した溶液を用いて、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は51質量%、亜鉛の含有量が0.0052質量%、錫の含有量が0.4質量%であった。
【0061】
得られた実験例2の銀被覆黒鉛混合粉の100倍と5,000倍のBEC像を
図9及び
図10に示す。銀被覆黒鉛粒子の割合(被覆率(面積))は8%であった。pH調整を行う前の実施例1と比較して、酸性域までpHが低下したことで、白色(銀被覆黒鉛粒子)の割合が大幅に減少しており、銀により被覆されていない黒鉛粉が多いことが分かる。また、比重分離後の沈殿粉の割合である被覆率(質量比)も55質量%であり、実施例1の73質量%に比べて減少していた。
【0062】
(実験例3−1)
実施例1において、前記黒鉛粉を、鱗状黒鉛(株式会社中越黒鉛工業所製、BF−15AK)に代えた以外は、実施例1と同様として、実験例3−1の銀被覆黒鉛混合粉を得た。
前記鱗状黒鉛のBET比表面積は5.44m
2/g、タップ密度は0.32g/mL、体積基準の累積50%粒子径(D
50)は15.7μmであった。
図11に実験例3−1で用いた鱗状黒鉛の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を示す。
得られた銀被覆黒鉛混合粉より0.5g分取して硝酸に浸漬し、ろ過することで黒鉛粉以外を溶解した溶液を用いて、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は52質量%、亜鉛の含有量が0.23質量%、錫の含有量が0.046質量%であった。
【0063】
得られた実験例3−1の銀被覆黒鉛混合粉の100倍のBEC像を
図12に示す。実験例3−1の銀被覆黒鉛粒子の割合(被覆率(面積))は43%であり、実施例1の16%に対して増加しており、BET比表面積の小さい黒鉛粉である方が被覆率を上げやすく、銀被覆に適していることが分かった。
【0064】
(実験例3−2)
実験例3−1において、置換反応時に、硝酸銀を0.111mol/L含む320mLの水溶液となるよう調液し、投入するセンシタイジング工程後の黒鉛粉の量を、原料の黒鉛粉換算で9gとなる量とし、硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉との質量比を3:7とした以外は同様にして、実験例3−2の銀被覆黒鉛混合粉を得た。
得られた銀被覆黒鉛混合粉より0.5g分取して硝酸に浸漬し、ろ過することで黒鉛粉以外を溶解した溶液を用いて、実施例1と同様にして、ICPによる定量分析を行った結果、銀被覆黒鉛混合粉における銀の含有量は29質量%、亜鉛の含有量が0.2質量%、錫の含有量が0.054質量%であった。
【0065】
得られた実験例3−2の銀被覆黒鉛混合粉の100倍のBEC像を
図13に示す。実験例3−2の銀被覆黒鉛粒子の割合(被覆率(面積))は16%であり、硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉との質量比が1:1の実験例3−1に対して、銀の割合を減らした影響で減少しているものの、硝酸銀水溶液中の銀と原料の黒鉛粉との質量比が1:1の実施例1と比べて同等であり、BET比表面積の小さい黒鉛粉である方が銀の割合を減らした場合でも被覆率を上げやすく、銀被覆に適していることが分かった。
【0066】
(実験例4)
−導電性ペーストの作製−
前記実験例1の銀被覆黒鉛混合粉5.52質量部、フレーク状銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製)51.888質量部、球状銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製)34.592質量部、エポキシ樹脂(EP4901E、株式会社ADEKA製)8質量部、硬化剤(BF
3NH
2EtOH、和光純薬工業株式会社製)0.4質量部、オレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.1質量部、及び溶剤としてのブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)2質量部を加え、プロペラレス自公転式攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製、AR−250)を用い、混合した。その後、3本ロールミル(EXAKT社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを徐々に狭めながら通過させて、実験例4の導電性ペーストを得た。
なお、用いたフレーク状銀粉及び球状銀粉の諸特性を表2に示した。また、用いた銀被覆黒鉛混合粉の諸特性を表3に示した。
【0067】
(実験例5)
−導電性ペーストの作製−
実験例4において、前記実験例1の銀被覆黒鉛混合粉を、前記実験例3の銀被覆黒鉛混合粉に代えた以外は、実験例4と同様にして、実験例5の導電性ペーストを作製した。実験例5の導電性ペーストを用いて作製した導電膜の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図14に示した。
【0068】
(比較例4)
−導電性ペーストの作製−
実験例4において、前記実験例1の銀被覆黒鉛混合粉を添加せず、ペースト中の銀総量を実験例4や5と合わせるために表4に示す各成分の配合量に変えた以外は、実験例4と同様にして、比較例4の導電性ペーストを作製した。比較例4の導電性ペーストを用いて作製した導電膜の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図15に示した。
【0069】
(比較例5)
−導電性ペーストの作製−
実験例4において、前記実験例1の銀被覆黒鉛混合粉を、黒鉛粉に代え、表4に示す各成分の配合量に変えた以外は、実験例4と同様にして、比較例5の導電性ペーストを作製した。なお、用いた黒鉛粉の諸特性を表3に示した。
【0070】
(比較例6)
−導電性ペーストの作製−
実験例4において、前記実験例1の銀被覆黒鉛混合粉を、鱗状黒鉛粉に代え、表4に示す各成分の配合量に変えた以外は、実験例4と同様にして、比較例6の導電性ペーストを作製した。なお、用いた鱗状黒鉛粉の諸特性を表3に示した。また、比較例4の導電性ペーストを用いて作製した導電膜の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を
図16に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
得られた各導電性ペーストについて、以下のようにして、粘度、熱伝導率、及び比抵抗3を測定し、同様にして諸特性を評価した。結果を表5に示した。
【0075】
<導電性ペーストの粘度>
得られた導電性ペーストの粘度は、BROOKFIELD社製の粘度計5XHBDV−IIIUCを用い、コーンスピンドルCP−52、ペースト温度25℃で測定した。1rpm(ずり速度2sec
−1)で5分間の値を測定した。
【0076】
<熱伝導率>
各導電性ペーストを200℃で20分間硬化し、直径10mm、厚み1mmの成形体サンプルを作製した。
得られたサンプルをレーザーフラッシュ法(株式会社ULVAC製、TC−7000)により熱拡散率を測定し、比熱と密度から熱伝導率を求めた。
【0077】
<比抵抗3>
各導電性ペーストを板状に塗布し、200℃で20分間硬化して板状体とした後、型の打ち抜きにより直径10mm、厚み1mmの成形体サンプルを作製した。
得られたサンプルを四探針法(三菱化学株式会社製、Loresta HP MCP−
T410)により、比抵抗3を測定した。
【0078】
【表5-1】
【0079】
【表5-2】
【0080】
表5の結果から、比較例5及び6のように単に黒鉛粉を混合する場合には1rpmでの粘度が900Pa・sを超えて、スクリーン印刷での配線描写は困難になる。
実験例4及び5のように銀被覆黒鉛混合粉を混合して導電性ペーストを作製すると、比較例5及び6に比べて粘度の上昇が抑制され、黒鉛粉を使用する前と同等のチクソ比のペーストを得ることができるため、黒鉛粉に比べてペーストの組成や塗布方法を大きく変更することなく使用することができる。また、銀被覆黒鉛混合粉を含む導電性ペーストを塗布した導電膜は、銀被覆黒鉛混合粉を用いない場合に比べて比抵抗3を下げて熱伝導率を上げる効果を有しているおり、SEM像からも比較的粒子間の結合が多く緻密な導電膜が得られていることが分かる。