(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のイオン交換膜は、ビニルアルコール系重合体成分(a)とイオン基を有する重合体成分(b)を構成成分とするブロックまたはグラフト共重合体(P)と、イオン基を有する重合体(B)と、から構成され、さらに上記構成要素にビニルアルコール系重合体(A)が含まれていてもよい。そして、前記イオン基を有する重合体成分(b)およびイオン基を有する重合体(B)は、それぞれイオン基を有する単量体(M)から構成されており、前記ブロックまたはグラフト共重合体(P)および前記重合体(B)に含まれるイオン基を有する単量体(M)の総モル数(M
P+B)に対する、前記ブロックまたはグラフト共重合体(P)に含まれるイオン基を有する単量体(M)のモル数(M
P)のモル比率[(M
P/M
P+B)×100]が、30.0%以上、99.9%以下の範囲内にあることを特徴としている。
【0017】
(ブロック共重合体)
本発明のイオン交換膜を構成するブロック共重合体(P)の好ましい構造としては、下記一般式(1)で表わされるブロック共重合体(P1)が挙げられる。
【0018】
【化2】
[式中、0.5000≦o
1/(n
1+o
1)≦0.9999であり、0.01≦m
1/(m
1+n
1+o
1)≦0.50であり、Mはイオン基を有する単量体である。]
【0019】
前記一般式(1)におけるo
1/(n
1+o
1)は、ビニルアルコール系重合体成分(a)中に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。下限に関しては0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。一方、上限に関しては、好ましくは0.9999であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。
【0020】
前記一般式(1)におけるm
1/(m
1+n
1+o
1)はビニルアルコール系重合体成分(a)およびイオン基を有する重合体成分(b)に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)の比率を示す。下限に関しては0.01以上であり、よりこのましくは0.03以上であり、更に好ましくは0.05以上である。上限に関しては0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、されに好ましくは0.25以下である。
【0021】
(グラフト共重合体)
本発明のイオン交換膜を構成するグラフト共重合体(P)の好ましい構造としては、下記一般式(2)で表わされるグラフト共重合体(P2)が挙げられる。
【化3】
[式中、0.5000≦o
2/(n
2+o
2)≦0.9999であり、0.001≦p
2/(n
2+o
2+p
2)≦0.05であり、0.01≦m
2/(m
2+n
2+o
2)≦0.50であり、R
2は、水素原子又はカルボキシル基であり、R
3は、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Lは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、R
2がカルボキシル基の場合やR
3がカルボキシル基又はカルボキシルメチル基の場合は、隣接する水酸基と環を形成していてもよい。Mはイオン基を有する単量体である。]
【0022】
前記一般式(2)におけるo
2/(n
2+o
2)は、ビニルアルコール系重合体成分(a)中に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。下限に関しては0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。一方、上限に関しては、好ましくは0.9999であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。
【0023】
前記一般式(2)におけるm
2/(m
2+n
2+o
2)はビニルアルコール系重合体成分(a)およびイオン基を有する重合体成分(b)に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)の比率を示す。下限に関しては0.01以上であり、よりこのましくは0.03以上であり、更に好ましくは0.05以上である。上限に関しては0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、されに好ましくは0.25以下である。
【0024】
なお、前記一般式(1)および(2)において、単量体繰り返し単位n
1、o
1、n
2、o
2およびp
2は、表示されたとおりに配置されていることを意味するのではなく、単に各単位が存在することを表しており、通常は互いにランダムに配置しているが、同一単位が連続していても良い。
【0025】
前記一般式(2)において、Lは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であればよく、特に限定されない。Lが含む窒素原子及び酸素原子の数は特に限定されない。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖又は分岐状である。前記脂肪族炭化水素基が分岐している場合には、脂肪族炭化水素基の主鎖(硫黄原子と窒素原子との間で原子が連続する鎖)から分岐した部位の炭素数は、1〜5であることが好ましい。Lが窒素原子及び/又は酸素原子を含む場合としては、例えば、前記脂肪族炭化水素基が、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エ−テル結合(−O−)、アミノ結合〔−NR−(Rは水素原子またはNと結合する炭素を含む基)〕、アミド結合(−CONH−)等として含む場合や、前記脂肪族炭化水素基が、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基を置換する、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)等として含む場合がある。原料入手性、合成上の容易さから、Lは、好ましくは、合計炭素数が1〜20の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、より好ましくは、合計炭素数が2〜15の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、さらに好ましくは、合計炭素数が2〜10の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基である。
【0026】
(イオン基を有する単量体)
前記のブロック共重合体またはグラフト共重合体を構成するイオン基を有する単量体(M)におけるイオン基としては、アニオン性基もしくはカチオン性基が挙げられる。
【0027】
アニオン性基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、スルホニルイミド基等が挙げられる。カウンターのカチオンとしては特に限定されないが、アルカリ金属イオン、H
+、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンが好ましい。
【0028】
カチオン性基としては、N-トリアルキルアンモニウム基、N-アルキルピリジニウム基、N-アルキルイミダゾリウム基、チオウロニウム基、イソチオウロニウム基等が挙げられる。カウンターのアニオンとしては特に限定されないが、PF
6−、SbF
6−、AsF
6−等の5B族元素のハロゲン化アニオン、BF
4−等の3B族元素のハロゲン化アニオン、I
−(I
3−)、Br
−、Cl
−等のハロゲンアニオン、ClO
4−等のハロゲン酸アニオン、AlCl
4−、FeCl
4−、SnCl
5−等の金属ハロゲン化物アニオン、NO
3−で示される硝酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CH
3SO
3−、CF
3SO
3−等の有機スルホン酸アニオン、CF
3COO
−、C
6H
5COO
−等のカルボン酸アニオン、OH
−等の1価のアニオンが好ましい。
【0029】
イオン基を有する単量体Mとしては、前記イオン基と共有結合する少なくとも一つ以上のエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸又はそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン等のメタクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n―プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸又はそのエステル類等が挙げられる。
【0030】
イオン基を有する単量体(M)の例としては、上記一般式(a−1)に加え、下記一般式(a−2)〜(a−13)等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
[式中、R
1は水素原子またはアルカリ金属原子である。]
【0041】
[式中、R
1は前記と同義であり、R
4は水素原子またはメチル基である。]
【0043】
[式中、R
1とR
4は前記と同義である。]
【0045】
[式中、X
−は、PF
6−、SbF
6−、AsF
6−等の5B族元素のハロゲン化アニオン、BF
4−等の3B族元素のハロゲン化アニオン、I
−(I
3−)、Br
−、Cl
−等のハロゲンアニオン、ClO
4−等のハロゲン酸アニオン、AlCl
4−、FeCl
4−、SnCl
5−等の金属ハロゲン化物アニオン、NO
3−で示される硝酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CH
3SO
3−、CF
3SO
3−等の有機スルホン酸アニオン、CF
3COO
−、C
6H
5COO
−等のカルボン酸アニオン、OH
−等の1価のアニオンであり、R
4は前記と同義である。]
【0054】
(イオン基を有する重合体成分)
本発明におけるブロックまたはグラフト共重合体(P)を構成するイオン基を有する重合体成分(b)は、上記のイオン基を有する単量体(M)がm
1またはm
2回の繰返しを有する重合体から構成されている。なお、上記の単量体から重合体を形成するにあたり、上記のイオン基を有する単量体の単独重合体だけでなく、本発明に係るイオン交換膜が得られる限り、他のエチレン性不飽和単量体との共重合体であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、前記のエチレン性不飽和単量体を例示することができる。
【0055】
(イオン交換膜の構成要素)
本発明のイオン交換膜は、上記のビニルアルコール系重合体成分(a)とイオン基を有する重合体成分(b)を構成成分とするブロックまたはグラフト共重合体(P)を主要構成要素として形成されているが、後述する前記ブロックまたはグラフト共重合体の製造時に副生するイオン基を有する重合体(B)を含んでおり、前記ブロックまたはグラフト共重合体(P)および前記重合体(B)に含まれるイオン基を有する単量体(M)の総モル数(M
P+B)に対する、前記ブロックまたはグラフト共重合体(P)に含まれるイオン基を有する単量体(M)のモル数(M
P)のモル比率[(M
P/M
P+B)×100]が、30.0%以上、99.9%以下の範囲内にあることを特徴としており、より好ましくは50.0%以上かつ95.0%以下であり、更に好ましくは70.0%以上かつ90.0%以下である。後記する実施例・比較例において示されているように、イオン基を有する重合体成分(b)のモル比率が30.0%以上、好ましくは、50%以上有することにより、膜抵抗の低いイオン交換膜を得ることができる。
また、本発明のイオン交換膜は、後述するブロックまたはグラフト共重合体(P)の製造時に残存するイオン基を有しないビニルアルコール系重合体(A)、イオン基を有する単量体(M)を含んでいてもよい。
【0056】
本発明のイオン交換膜を構成するブロックまたはグラフト共重合体に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)は、カチオン性単量体又はアニオン性単量体の単独重合体あるいはランダム共重合体によって構成され、組成、分子量、分子量分布等には特に制限はないが、カチオン性単量体又はアニオン性単量体の含有量がブロックまたはグラフト共重合体の全構成単位に対し1〜90モル%であることが好ましく、1〜50モル%であることがより好ましく、1〜40%であることがさらに好ましく、3〜30%であることが特に好ましい。含有量がこれらの好ましい範囲にある場合皮膜の靱性が発現しやすい。含有量が1モル%未満であると、イオン交換膜中の有効荷電密度が低下し、膜の対イオン選択性が低下する恐れがある。含有率が90モル%を超えると、膜の強度が低下するおそれがある。
【0057】
本発明において、前記ブロックまたはグラフト共重合体(P)およびこれから構成されるイオン交換膜には、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよく、その添加する順序も任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、金属微粒子、無機微粒子、無機塩、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、導電補助剤、表面改質剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、消泡剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(ブロック共重合体の製造方法)
本発明のイオン交換膜を構成するブロック共重合体(P1)は、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q1)と、イオン基を有する単量体(M)を用いて、例えば、特許文献1や特許文献2等に記載された重合方法で製造することができる。上記の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q1)は、特公平3−57923号公報等に記載の方法で、チオ酢酸存在下で酢酸ビニルモノマーをラジカル重合し、得られた重合体をアルカリで処理することにより得ることが出来る。
【0059】
上記の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q1)におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。一方、上限に関しては、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
【0060】
上述の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q1)のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されず、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、誘導される樹脂組成物の機械的強度が低下することがある。粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。
【0061】
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明のイオン交換膜を構成するグラフト共重合体(P2)は、下記一般式(3)で示される構成単位と、ビニルアルコール系構成単位と、から構成される、下記一般式(4)で示される、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)を幹ポリマーとして、特許文献1や特許文献2に記載された方法でイオン基を有する単量体(M)を重合することにより製造することができる。
【0063】
[式中、R
2およびR
3は前記と同義である。]
【0065】
[式中、n
2、o
2、p
2、L、R
1およびR
2は前記と同義である。]
【0066】
前記一般式(3)で示される構成単位は、該構成単位に変換可能な不飽和単量体より誘導することができ、好ましくは、下記一般式(5)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体より誘導することができる。
【0068】
[式中、R
2aおよびR
2bは、水素原子又はカルボキシル基であり、少なくとも一方は水素原子であり、R
5はメチル基であるか、Lに含まれる特定の炭素原子と共有結合して環状構造を形成し、R
3およびXは前記と同義である。]
【0069】
前記一般式(5)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体は、公知方法に準じて製造することができる。
【0070】
前記一般式(5)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体の好ましい具体例としては、例えば、チオ酢酸S−(3−メチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−17−オクタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−15−ヘキサデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−14−ペンタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−13−テトラデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−12−トリデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−11−ドデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−10−ウンデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−9−デセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−8−ノネン−1−イルエステル、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−6−ヘプテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−5−ヘキセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−4−ペンテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−3−ブテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−2−プロペン−1−イルエステル、チオ酢酸S−[1−(2−プロペン−1−イル)ヘキシル]エステル、チオ酢酸S−(2,3−ジメチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1−エテニルブチル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−5−ヘキセン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1,1−ジメチル−2−プロペン−1−イル)エステル、2−[(アセチルチオ)メチル]−4−ペンテン酸、チオ酢酸S−(2−メチル−2−プロペン−1−イル)エステル等、また下記化学式(b−1)〜(b−30)が挙げられる。
【0101】
上記化合物群の中でも、原料入手性、合成上の容易さの観点から、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、(b−6)、(b−7)、(b−9)、(b−10)、(b−11)、(b−12)、(b−14)、(b−15)、(b−16)、(b−17)、(b−19)、(b−20)、(b−21)、(b−22)、(b−24)、(b−25)、(b−26)、(b−27)、(b−29)、(b−30)が好ましい。
【0102】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)における前記一般式(3)に示される構成単位の含有率は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは0.05〜10モル%であり、より好ましくは0.1〜7モル%、特に好ましくは0.3〜6モル%である。
【0103】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)は、式(3)で示される構成単位を1種又は2種以上有することができる。2種以上の当該構成単位を有する場合、これら2種以上の構成単位の含有率の合計が上記範囲にあることが好ましい。
【0104】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。一方、上限に関しては、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
【0105】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)におけるビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解等によってビニルエステル単位から誘導することができる。ビニルエステル単位のビニルエステルとしては特に限定されないが、酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
【0106】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)は、本発明の効果が得られる限り、式(3)で示される構成単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の構成単位をさらに有することができる。当該構成単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能でありかつ式(3)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体及びビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位である。エチレン性不飽和単量体は、前記と同義である。
【0107】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)における式(3)で示される構成単位、ビニルアルコール単位、及びその他の任意の構成単位の配列順序には特に制限はなく、ランダム、ブロック、交互等のいずれであってもよい。
【0108】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されず、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、誘導される樹脂組成物の機械的強度が低下することがある。粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。
【0109】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)の製造方法は、目的とする側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体が製造できる限り特に限定されない。例えば、そのような製造方法としては、(i)ビニルエステルと、(ii)ビニルエステルと共重合可能であり、かつ式(3)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体とを共重合する共重合工程と、加溶媒分解により、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換し、一方、式(3)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体に由来する単位を式(3)で示される構成単位に変換する変換工程とを含む方法が挙げられる。
【0110】
特に、ビニルエステルと前記一般式(5)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体(以下、チオエステル系単量体(5)と称する)とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合及びチオエステル系単量体(5)由来の構成単位のチオエステル結合を、加水分解又は加アルコール分解する方法が簡便であり好ましく用いられ、以下この方法について説明する。
【0111】
ビニルエステルとチオエステル系単量体(5)との共重合は、ビニルエステルを単独重合する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。
【0112】
なお、共重合の際、ビニルエステル及びチオエステル系単量体(5)と共重合可能な単量体をさらに共重合させてもよい。当該共重合可能な単量体は、前記のエチレン性不飽和単量体と同様である。
【0113】
得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合と、チオエステル系単量体(5)由来の構成単位のチオエステル結合は、ほぼ同じ条件で加水分解又は加アルコール分解可能である。したがって、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合及びチオエステル系単量体(5)由来の構成単位のチオエステル結合の加水分解又は加アルコール分解は、ビニルエステルの単独重合体をけん化する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。
【0114】
末端メルカプト基含有ビニルアルコール重合体の(Q1)のメルカプト基含有量は、特許文献3に記載の製造方法においてチオ酢酸の量を変えることにより、変えることが出来る。
【0115】
前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール重合体(Q2)のメルカプト基含有量は、前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール重合体(Q2)に含まれる前記一般式(3)に示される構成単位の含有率を変えることにより、変えることが出来る。
【0116】
末端メルカプト基含有ビニルアルコール重合体(Q1)および前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)に含まれるメルカプト基含有量としては、より多いほうが、ブロックまたはグラフト共重合体(P)中のイオン基を有する単量体(M
P)とイオン基を有する重合体(M
B)中のイオン基を有する単量体との総モル数(M
P+B)に対する、ブロックまたはグラフト共重合体(P)中のイオン基を有する単量体のモル数(M
P)のモル分率[(M
P/M
P+B)×100]が高くなり、基礎特性の高いイオン交換膜が得られる。一方で、メルカプト基含有量が過剰に多くなると、メルカプト基同士が酸化的カップリング反応により分子間架橋され、水溶液粘度が上昇し、加工性が急激に悪化する。そのため、末端メルカプト基含有ビニルアルコール重合体(Q1)および前記一般式(4)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(Q2)に含まれるメルカプト基含有量としては、1.0×10
−5eq/gから30×10
−5eq/gの範囲が好ましく、更に好ましくは2.0×10
−5eq/gから20×10
−5eq/gの範囲である。メルカプト基含有量は水溶液中でのヨウ素滴定により求めることが出来る。
【0117】
(イオン交換膜)
本発明のイオン交換膜は、ブロックまたはグラフト共重合体(P)を用いて形成され、その成形方法は、製膜可能である限り、例えば当該重合体の溶媒に溶解した溶液の状態から成形する方法(例えばキャスト成形法);加熱により当該重合体を可塑化して成形する方法(例えば押出成形法、インフレ成形法ななど)のさまざまな製膜方法を利用することができる。これらの成形方法のうち、キャスト成形が好ましく用いられる。
【0118】
キャスト成形では、ブロックまたはグラフト共重合体の溶液から皮膜を形成することにより、得ることができる。皮膜形成工程としては、ブロックまたはグラフト共重合体を、その可溶性溶媒により溶解させた溶液を準備する準備工程と、その溶液を薄膜として流し、その薄膜を乾燥させる製膜する製膜工程とを備えている。
【0119】
ブロックまたはグラフト共重合体の溶液に用いられる溶媒としては、通常、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
製膜工程では、通常、キャスティングにより溶液中の溶媒を揮発させることにより得ることができる。製膜工程の際の温度は、特に限定されないが、室温〜100℃程度の温度範囲が適当である。
【0120】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、前記製膜工程に加えて、熱処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことによって、物理的な架橋が生じ、得られるイオン交換膜の機械的強度が増大する。熱処理の方法は特に限定されず、熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は特に限定されないが、50〜250℃であることが好ましい。熱処理の温度が50℃未満であると、得られるイオン交換膜の機械的強度が不足するおそれがある。該温度は80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがより好ましい。一方、熱処理の温度が250℃を超えると、結晶性重合体が融解するおそれがある。該温度は230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、前記製膜工程に加えて、架橋処理を施すことが好ましい。架橋処理を施すことによって、得られるイオン交換膜の機械的強度が増大する。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、ホルムアルデヒド、或いはグリオキザールやグルタルアルデヒドなどのジアルデヒド化合物が例示される。本発明においては、熱処理を行った後の上記皮膜を、酸性条件下で、水、アルコール又はそれらの混合溶媒にジアルデヒド化合物を溶解させてなる溶液に浸漬することにより、架橋処理を行うことが好ましい。架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜5体積%である。
【0122】
本発明のイオン交換膜の製造方法においては、熱処理と架橋処理の両方を行ってもよいし、そのいずれかのみを行ってもよい。熱処理と架橋処理を両方行う場合、熱処理の後に架橋処理を行ってもよいし、架橋処理の後に熱処理を行ってもよいし、両者を同時に行ってもよい。熱処理の後に架橋処理を行うことが、得られるイオン交換膜の機械的強度の面から好ましい。
【0123】
本発明のイオン交換膜は、電気透析用電解質膜として必要な性能、膜強度、ハンドリング性等を確保する観点から、その膜厚が1〜1000μm程度であることが好ましい。膜厚が1μm未満である場合には、膜の機械的強度が不充分となる傾向がある。逆に、膜厚が1000μmを超える場合には、膜抵抗が大きくなり、充分なイオン交換性が発現しないため、電気透析効率が低くなる傾向となる。膜厚はより好ましくは5〜500μmであり、更に好ましくは7〜300μmである。
特に、本発明のイオン交換膜は、膜としての靱性が高いため、支持体を利用しない自立膜として、単一層から形成することが可能である。単一層として用いられる場合、膜厚としては、例えば、30μm以上であってもよく、好ましくは50μm以上であってもよい。
【0124】
電気透析用のイオン交換膜として使用するのに十分なイオン交換性を発現するためには、イオン交換膜のイオン交換容量は0.30mmol/g以上であることが好ましく、0.50mmol/g以上であることがより好ましい。ブロックまたはグラフト共重合体のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり膨潤度の制御が困難となるので、3.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0125】
イオン交換膜は、水中での膨潤度を抑制することが可能であり、例えば、下記式で表される膨潤度が、1.00〜1.68であるのが好ましく、1.10〜1.66以下であるのがより好ましく、1.20〜1.63であるのが特に好ましい。
膨潤度=[W1]/[W2]
(式中、W1は、25℃でのイオン交換水中、膨潤平衡に到達した膜の質量であり、W2は、W1で測定した膜を40℃12時間で真空乾燥した後の質量を表す。)
【実施例】
【0126】
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、特に断りのない限り「%」および「部」は重量基準である。
【0127】
1)膜抵抗の測定
膜抵抗は、
図1に示される白金黒電極板を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、膜の両側に0.5mol/L−NaCl溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数10サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗と陽イオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により求めた。上記測定に使用する膜は、あらかじめ0.5mol/L−NaCl溶液中で平衡にしたものを用いた。
【0128】
2)ブロックまたはグラフト共重合体(P)中のイオン基を有する単量体(M
P)とイオン基を有する重合体(M
B)中のイオン基を有する単量体との総モル数(M
P+B)に対する、ブロックまたはグラフト共重合体(P)中のイオン基を有する単量体のモル数(M
P)のモル分率[(M
P/M
P+B)×100]の測定
ブロックまたはグラフト共重合体(P)とイオン基を含む重合体を含む水溶液に対して、含まれるイオン基と同じモル数のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含む水溶液を添加し、室温下で10分間攪拌した後、真空乾燥機を用いて乾燥させた。得られた固形物をミキサーで粉砕した後、メタノールを抽出溶媒とし、5時間ソックスレー抽出を行い、イオン基を有する重合体(B)を溶出させた。残渣を真空乾燥機で乾燥した後、DMSO−d6を溶媒とし、1H−NMR測定を行った。得られた1H−NMRより算出されるポリビニルアルコール由来のピークの積分値と、イオン基成分由来のピークの積分値に比率から、残渣に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)中のイオン基を有する単量体のモル%を算出し、以下の計算式によりモル比率を算出した。
[モル比率]=[残渣に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)(イオン基を有する単量体)のモル%]/[ブロック共重合体(P)に含まれるイオン基を有する重合体成分(b)(イオン基を有する単量体)と、イオン基を有する重合体(B)(イオン基を有する単量体)とを合わせたモル%]×100%
【0129】
[末端メルカプト基含有ポリビニルアルコールの合成]
<PVA−1、−2>
特公平3−57923号公報に記載された方法によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1,2)を合成した。得られたPVA−1のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は99.9モル%、メルカプト基含有量は2.4×10
−5eq/gであった。得られたPVA−2のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は500、けん化度は99.8モル%、メルカプト基含有量は5.6×10
−5eq/gであった。
【0130】
[側鎖メルカプト基含有ポリビニルアルコールの合成]
<PVA−3>
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル1100質量部、コモノマーとして前記化学式(b−16)で示されるチオエステル系単量体、0.47質量部、及びメタノール478質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、コモノマーの逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてチオエステル系単量体(b−16)のメタノール溶液(濃度5質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.28質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとチオエステル系単量体(b−16)のモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、チオエステル系単量体(b−16)が導入された変性ポリビニルアセテートのメタノール溶液を得た。
【0131】
上記(2)で得られたチオエステル系単量体(b−16)が導入されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のチオエステル系単量体(b−16)が導入されたポリ酢酸ビニル濃度30%、チオエステル系単量体(b−16)が導入されたポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.050)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約8分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で52分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−3)を得た。
1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(b−16)由来の構成単位の変性量は0.3mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.5モル%、メルカプト基含有量は6.7×10
−5eq/gであった。
【0132】
<PVA−4>
PVA−32において、前記化学式(b−16)で示されるチオエステル系単量体を0.47質量部から0.77質量部に変更し、メタノールを478質量部から473質量部に変更したこと以外は合成例2と同様の操作を行い、その後合成例3と同様の操作を行い、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−4)を得た。
1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(b−16)由来の構成単位の変性量は0.5mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.3モル%、メルカプト基含有量は8.7×10
−5eq/gであった。
【0133】
<PVA−5>
PVA−3において、前記化学式(b−16)で示されるチオエステル系単量体を0.47質量部から1.56質量部に変更し、メタノールを478質量部から438質量部に変更したこと以外は合成例2と同様の操作を行い、その後合成例3と同様の操作を行い、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−5)を得た。
1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(b−16)由来の構成単位の変性量は1.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.5モル%、メルカプト基含有量は18.2×10
−5eq/gであった。
【0134】
<ブロック共重合体BCP-1の合成>
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水136g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を25.0gとパラスチレンスルホン酸ナトリウムを14.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液11.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体BCP−1の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0135】
<ブロック共重合体BCP−2の合成>
前記BCP−1の合成において、PVA−1の代わりにPVA−2を使用したこと以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体BCP−2の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0136】
<グラフト共重合体BCP−3の合成>
前記BCP−1の合成において、PVA−1の代わりにPVA−3を使用したこと以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのグラフト共重合体BCP−3の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0137】
<グラフト共重合体BCP-4の合成>
前記BCP−1の合成において、PVA−1の代わりにPVA−4を使用したこと以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのグラフト共重合体BCP−4の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0138】
<グラフト共重合体BCP-5の合成>
前記BCP−1の合成において、PVA−1の代わりにPVA−5を使用したこと以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのグラフト共重合体BCP−5の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0139】
<ブロック共重合体BCP−6の合成>
前記BCP−1の合成において、窒素バブリングおよび窒素置換を行わずに大気雰囲気下で操作を行った以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体BCP−6の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0140】
<ブロック共重合体BCP−7の合成>
BCP−1の合成において、2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液添加前に、1M水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応液のpHを10に調整した以外は同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体BCP−7の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0141】
<PVAとポリ(パラスチレンスルホン酸ナトリウム)混合物BCP−8の作製>
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水136g、パラスチレンスルホン酸ナトリウムを14.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液11.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させた。その後、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を25.0g添加し、攪拌下90℃で溶解した。その後、冷却して、ポリビニルアルコールとポリ(パラスチレンスルホン酸ナトリウム)の混合物BCP−8の水溶液を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は10モル%であった。
【0142】
<
参考例1>
[イオン交換膜の作製]
ブロック共重合体BCP−1の水溶液を、縦270mm×横210mmのアクリル製のキャスト板に流し込み、余分な液、気泡を除去した後、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥させた後、高温熱処理機を用いて160℃30分間の条件で熱処理を行った。350g/Lの硫酸ナトリウム水溶液1Lに対して、硫酸を添加しpH(25℃)を1.0に調整した後に、40mlの25%グルタルアルデヒド水溶液を添加して、処理液を作製した。処理液を50℃に加温した後、得られた各々の膜を30分浸漬し、架橋処理を施した。その後イオン交換水で30分以上洗浄を行い、陽イオン交換膜BCP−1を得た。
【0143】
[イオン交換膜の評価]
上記において作製した陽イオン交換膜BCP−1を、所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記の膜抵抗の測定方法にしたがって、膜抵抗の測定を行なった。得られた結果を表1に示す。
【0144】
[モル比率の測定]
上記測定方法に従って、ブロックまたはグラフト共重合体中の重合体成分(b)と重合体(B)とに対する、ブロックまたはグラフト共重合体に含まれる重合体成分(b)のモル分率の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0145】
<
参考例2
、実施例3〜5>
ブロック共重合体BCP-2,グラフト共重合体BCP−3〜5のそれぞれについて
参考例1と同様にイオン交換膜を作製し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0146】
<比較例1〜3>
ブロック共重合体BCP−6〜7、ポリマー混合物BCP−8のそれぞれについて、実施例1と同様にイオン交換膜を作製して評価を行った。結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
表1の結果からも明らかのように、共重合体(P)中の重合体成分(b)のモル比率が高いことにより、膜抵抗が低減されていることが判る。つまりは、ブロックまたはグラフト共重合体製造時にイオン基を有する単量体が、単独重合体(B)を形成する割合が小さく、ブロックまたはグラフト共重合体に
変換する割合が高いことにより、膜抵抗などの基礎性能の高いイオン交換膜を提供することが出来る。