特許第6227326号(P6227326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227326
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】風味油およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A23D9/00 504
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-176306(P2013-176306)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-43712(P2015-43712A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】大島 優奈
(72)【発明者】
【氏名】葉桐 宏厚
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−034454(JP,A)
【文献】 特開平08−228696(JP,A)
【文献】 特開昭60−030663(JP,A)
【文献】 米国特許第05266339(US,A)
【文献】 特開平03−183441(JP,A)
【文献】 特開昭46−006820(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02283656(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油を食品に添加することを特徴とするフライ風味を付与する方法。
【請求項2】
前記油脂100部に対し、生パン粉換算で5部以上50部以下の前記パン粉を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油温の保持時間が5時間以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パン粉がローストパン粉を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記油脂が糖類および/またはアミノ酸を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油をフライ食品に添加することを特徴とするフライ風味を持続する方法。
【請求項7】
前記油脂100部に対し、生パン粉換算で5部以上50部以下の前記パン粉を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記油温の保持時間が5時間以下である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記パン粉がローストパン粉を含む、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記油脂が糖類および/またはアミノ酸を含む、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味油およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロッケなどのフライ食品は、具材の周りにパン粉を付けて、フライ油で揚げて調理、製造される。フライ食品は、油脂特有の旨みやパン粉特有の風味といったフライ風味があり、人々に好まれる食品のひとつである。しかし、フライ食品は、フライ油で揚げて調理されるため、カロリーが高い食品の典型であり、近年の健康志向において避けられる傾向にある。また、調理、製造の際、フライ油の匂い、油はね、あるいは、廃油処理などの点で、フライ食品は避けられる傾向にある。
【0003】
このような状況の中で、フライ油で揚げることなく、スチームオーブンや電子レンジでの加熱調理等により、フライ食品と同様な外観および食感を得ることができるノンフライ食品が開発されている。
【0004】
このようなノンフライ食品は、フライ調理されていないため、充分なフライ風味を得ることができないという課題があった。また、スーパーやコンビニエンスストア等でのお弁当、総菜は、フライ調理から喫食時までの時間が長く、フライ風味が喫食時まで維持されないという課題があった。
【0005】
特許文献1(特開平10−28543)の請求項1には、糖類及びアミノ酸類を含む油脂乳化物を付着せしめたことを特徴とするパン粉が開示されている。当該発明の目的は、電子レンジ等による加熱調理であっても、均一な揚げ色を発現することである。よって、油脂により、フライ風味を向上、維持することについて、開示していない。
【0006】
特許文献2(特開平8−289752)には、特定の条件でパン粉を油揚げ処理した後、焙煎処理をすることを特徴とするパン粉の製造方法が開示されている。当該発明の目的は、電子レンジ等による加熱調理であっても、揚げ色を呈し、さらに、サクサクとした食感を提供することにある。よって、油脂により、フライ風味を向上、維持することについて、開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28543号公報
【特許文献2】特開平8−289752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来、ノンフライ食品のフライ風味を向上するための試みはほとんどなされておらず、パン粉を加工することで外観や食感を改良するにすぎなかった。さらに、フライ食品やノンフライ食品に限らず、フライ風味を維持することについても、ほとんど報告がない。そこで、本発明では、食品のフライ風味を向上するための風味油およびその製造方法を提供することを目的とする。また、食品のフライ風味を付与する方法、フライ風味を持続する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、パン粉を含む油脂を所定の油温に加熱して得られる油脂組成物がフライ風味を付与、維持できることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風味油によれば、フライ風味を付与、維持することができる。
【0011】
本発明の製造方法によれば、油脂にパン粉を添加する工程、および、パン粉を添加した前記油脂の油温を100℃以上200℃以下になるように加熱する工程を含むことにより、フライ風味を付与できる風味油を製造することができる。
【0012】
また、本発明の第一の方法によれば、パン粉を含む油脂の油温が100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油を食品に添加することでフライ風味を付与することができる。
【0013】
また、本発明の第二の方法によれば、パン粉を含む油脂の油温が100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油をフライ食品に添加することでフライ風味を持続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油である。
【0015】
前記油脂100部に対し、生パン粉換算で5部以上50部以下の前記パン粉を含むことが好ましい。
【0016】
前記油温の保持時間が5時間以下であることが好ましい。
【0017】
前記パン粉がローストパン粉を含むことが好ましい。
【0018】
前記油脂が糖類および/またはアミノ酸を含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明は、パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油を含有する食品である。
【0020】
また、本発明は、油脂にパン粉を添加する工程、および、パン粉を添加した前記油脂の油温が100℃以上200℃以下になるように加熱する工程を含む、風味油の製造方法である。
【0021】
前記油脂100部に対し、パン粉を生パン粉換算で5部以上50部以下添加することが好ましい。
【0022】
前記油温の保持時間が5時間以下であることが好ましい。
【0023】
前記パン粉がローストパン粉を含むことが好ましい。
【0024】
前記油脂に、糖類および/またはアミノ酸を添加する工程を含むことが好ましい。
【0025】
加熱した前記油脂の不溶物を除去する工程を含むことが好ましい。
【0026】
また、本発明は、パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油を食品に添加することを特徴とするフライ風味を付与する方法である。
【0027】
また、本発明は、パン粉を含む油脂の油温を100℃以上200℃以下に加熱して得られる風味油をフライ食品に添加することを特徴とするフライ風味を持続する方法である。
【0028】
本発明で使用される油脂は、その種類には特に限定がなく食用油として用いられるものであればよい。具体例として、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油などの植物油脂並びに牛脂、豚脂等の動物脂、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品又は、これらの二種類以上の混合したものでも良い。作業の点や、食品の食感や外観の点で、大豆油、菜種油、コーン油、パームオレイン等のヨウ素価が50以上の油脂から選ばれる一種または二種以上を60質量%以上配合した油脂が好ましい。
【0029】
前記油脂には、通常の油脂に用いられる添加剤が含まれていても良い。具体的には、乳化剤、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、ジグリセリド、シリコーン、トコフェロール等が挙げられる。
【0030】
本発明で使用されるパン粉は、一般的に入手できるパン粉でよい。パン粉には、生パン粉、乾燥パン粉、生パン粉等を焙煎したローストパン粉等がある。ローストパン粉は、生パン粉等をフライパン等で、例えば、100℃以上250℃以下に加熱して得られたものであり、風味の点で、好ましくは140℃以上220℃以下である。加熱温度が高すぎると不均一なローストパン粉となる場合がある。
【0031】
風味油が良好な香ばしい風味を得る点で、パン粉には、ローストパン粉を含むことが好ましく、生パン粉換算で、パン粉中20質量%以上を含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば100質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。特に、パン粉は、ローストパン粉と生パン粉を含むことが好ましく、ローストパン粉(生パン粉換算)に対する生パン粉の量が、0.2以上5以下であることが好ましく、0.5以上2以下であることがより好ましい。
【0032】
ローストパン粉と生パン粉の両方を油脂に添加する場合には、添加の順番やタイミングは特に問わないが、パンの風味の点で、生パン粉を先に添加するのが好ましく、生パン粉を添加、加熱後、ローストパン粉を添加することがさらに好ましい。
【0033】
また、生パン粉の粒度は、荒目(3メッシュのふるいで100%通過するもので、40メッシュのふるいで90%残るもの)、中目(7メッシュのふるいで100%通過するもので、40メッシュのふるいで90%残るもの)、細目(12メッシュのふるいで100%通過するもので、40メッシュのふるいで90%残るもの)と規格化されている。使用する生パン粉(ローストパン粉等の原料としての生パン粉を含む)の粒度は特に限定されないが、風味の点で荒目が好ましい。
【0034】
油脂に含有させるパン粉の量は、充分な風味を得る点で、例えば、油脂100部に対し、パン粉を生パン粉換算で5部以上が好ましく、8部以上がより好ましい。また、特に上限はないが、油脂100部に対し、パン粉を生パン粉換算で50部以下が好ましく、40部以下がより好ましく、35部以下がさらに好ましい。風味の点で大きな差はないが、多すぎると製造時の撹拌が困難となる場合がある。
【0035】
油脂にパン粉を含有させるために、パン粉を添加する際の油脂の油温は、特に限定されないが、少なくとも1種以上のパン粉を油温が好ましくは200℃以下で添加する。より好ましは150℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下であり、最も好ましくは100℃未満である。油温の下限は特に限定されないが、例えば、10℃以上である。
【0036】
油脂の加熱方法は、所定の温度に達することができれば、特に問わない。熱源として、例えば、直火、IH、蒸気加熱等のいずれも使用することができる。また、加熱時には、蒸散または還流のいずれを用いても製造することができるが、風味の力価の点から、還流を用いることが好ましい。
【0037】
油脂の加熱は、油温が100℃以上200℃以下になるように加熱する。風味の点で、110℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましく、118℃以上がさらに好ましい。また、油脂の劣化の点で、190℃以下が好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
【0038】
また、所定の油温に達した後の油温の保持時間の上限は、油脂の劣化の点で、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。下限は、保持時間0分(つまり、達温後速やかに冷却)でも構わないが、風味の力価の点から3分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
【0039】
本発明では、油脂に糖類および/またはアミノ酸を添加することが好ましい。
【0040】
本発明で使用される糖類は食用であればよい。例えば、グルコース、フルクトース等のヘキソース、キシロース等のペントース、キシロオリゴ糖、蔗糖、乳糖、スクロース等のオリゴ糖などである。単糖および二糖が好ましく、グルコース、フルクトース等のヘキソースがより好ましい。
【0041】
糖類の添加量の下限は、風味の強さの点で、油脂100部に対し0.1部以上が好ましく、0.3部以上がより好ましく、0.5部以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、風味の点で、5部以下が好ましく、3部以下がより好ましい。
【0042】
本発明で使用されるアミノ酸は食用であればよい。例えば、ヒスチジン、リジン等の塩基性アミノ酸、メチオニン等の含硫アミノ酸、イソロイシン、ロイシン等の脂肪族アミノ酸、フェニルアラニン、チロシン等の芳香族アミノ酸、プロリン等のイミノ酸などである。特に、風味の点で、ヒスチジン、リジン等の塩基性アミノ酸、メチオニン等の含硫アミノ酸が好ましく、ヒスチジン及び/またはメチオニンがより好ましい。
【0043】
アミノ酸の添加量の下限は、風味の強さ点で、油脂100部に対し0.1部以上が好ましく、0.3部以上がより好ましく、0.5部以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、風味の点で、5部以下が好ましく、3部以下がより好ましい。
【0044】
糖類やアミノ酸の組み合わせは特に限定されないが、特定の組み合わせとすることでフライ風味だけでなく、さらに別の好ましい風味を得ることができる。例えば、甘い風味も付与したい場合には、フルクトースとヒスチジンの組み合わせが好ましい。また、蒸かしたジャガイモの風味を付与したい場合にはフルクトースとメチオニンの組み合わせが好ましい。
【0045】
糖類やアミノ酸を油脂に添加する際の油脂の油温は特に限定されないが、好ましくは200℃以下で添加する。より好ましは150℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下であり、最も好ましくは100℃未満である。油温の下限は特に限定されないが、例えば、10℃以上である。また、糖類やアミノ酸を油脂に添加するタイミングは、特に限定されない。つまり、パン粉の添加前、後、あるいは、同時のいずれであってもよいが、好ましくは、パン粉の添加後または同時であり、より好ましくはパン粉を添加加熱後である。
【0046】
また、油脂に糖類やアミノ酸を添加した後、必要であれば、油温が100℃以上200℃以下になるように加熱することが好ましい。油脂の劣化の点で、190℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。また、所定の油温に達した後の油温の保持時間の上限は、油脂の劣化の点で、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。下限は、保持時間0分(つまり、達温後速やかに冷却)でも構わないが、風味の力価の点から3分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
【0047】
油脂を加熱する工程で得られた風味油は、そのまま使用することもできるが、外観や品質の安定性の点で、パン粉等不溶物を除去することが好ましい。除去する方法として静置、ろ別、遠心分離等がある。作業効率の点から、ろ別が好ましい。
【0048】
本発明の食品としては、例えば、ノンフライ食品やフライ食品、あるいは、パン・菓子類等がある。ノンフライ食品としては、フライ調理しないフライ様食品が好ましい。例えば、豚肉、牛肉、鶏肉等の畜肉類、各種魚をはじめエビ、ホタテ、カキ等の魚介類、あるいはこれら畜肉や魚介類をミンチした成形品等を使用したフライ様食品である。フライ食品としては、例えば、トンカツ、チキンカツ、コロッケ、天ぷら、から揚げ、ナゲット、ミンチカツ、魚肉のフライ等の揚げ物である。ノンフライ食品、フライ食品いずれも、特に、衣材にパン粉やクラッカー粉、砕いたナッツや春雨等を使用した食品が好ましく、パン粉を使用した食品がより好ましい。また、パン・菓子類としては、例えば、菓子パン、食パン、揚げパン、ドーナツ、ポテトチップス、コーンチップス、成形ポテトスナック、せんべい、あられ、クラッカー等である。
【0049】
また、風味油を食品に添加する場合、食品の表面に直接塗布あるいは噴霧してもよいし、予めパン粉等の衣材に添加しておいてもよい。
【0050】
食品への風味油の添加量は特に限定されないが、充分な効果を得る観点から、下限は、食品100部に対し0.5部以上が好ましく、1部以上がより好ましく、1.5部以上がさらに好ましい。また、上限は、食品100部に対し50部以下が好ましく、40部以下がより好ましく、30部以下がさらに好ましい。
【0051】
食品に風味を付与する場合、本発明の製造方法で得られた風味油の添加は、食品の加熱前後いずれであってもよい。ノンフライ食品の場合、一般的にノンフライ食品は中具を成型しパン粉をつけた後、スチーム等で加熱を行うため、風味の逸脱の観点から、加熱後に添加することが好ましい。一方、フライ食品の場合、食材をフライ油で調理した後に当該風味油を添加することが好ましい。また、フライ食品の風味を持続させる場合、食材をフライ油で調理した後に当該風味油を添加することが好ましい。
【0052】
フライ食品の風味を持続させる場合、充分な効果を得る観点から、下限は、食品100部に対し0.5部以上が好ましく、1部以上がより好ましく、1.5部以上がさらに好ましい。また、上限は、食品100部に対し50部以下が好ましく、40部以下がより好ましく、30部以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0054】
実施に際しては、以下のものを使用した。
【0055】
コーン油(AJINOMOTO胚芽の恵みコーン油、株式会社J−オイルミルズ社製)
パームオレイン(ヨウ素価67、株式会社J−オイルミルズ社製)
生パン粉(荒目、雪和食品株式会社製)
グルコース(加藤化学株式会社製)
フルクトース(加藤化学株式会社製)
ヒスチジン(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)
メチオニン(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)
【0056】
(実施例1−1)
<ローストパン粉の調製>
170℃に温めたフライパンに生パン粉20gを投入し、IH加熱機にて170℃で約5分間加熱してローストパン粉14gを得た。以下の実施例において、特に断りのない場合は、同条件で得たローストパン粉を使用した。
【0057】
<風味油の調製>
ステンレス鍋にコーン油200gおよび上記で得たローストパン粉14gを入れて、IH加熱機で表1記載の所定油温になるまで加熱攪拌した。得られた油脂の不溶物を除去するため、ろ紙(ADVANTEC NO.2、東洋濾紙株式会社製)でろ別して風味油を得た。
また、ローストパン粉に代えて生パン粉20gを使用し、表1記載の所定油温になるまで加熱撹拌した。得られた油脂の不溶物を除去するため、ろ紙でろ別して風味油を得た。また、パン粉を加えず、加熱しただけのものも調製した。
フライ風味を下記評価によりおこない、風味油の評価をした。結果を表1に示す。なお、風味油の評価の対照には加熱等していないコーン油を使用した。
【0058】
<香ばしい風味、パンの風味、油のコク味の評価>
得られた風味油を専門パネラー(n=3)が口に含み、対照と比して香ばしい風味、パンの風味の評価を相談し、決めた。併せて、油のコク味も同様に評価した。以下の評価基準を示す。

5: 対照に比べ猛烈に強く感じる
4: 対照に比べ非常に強く感じる
3: 対照に比べ強く感じる
2: 対照に比べやや強く感じる
1: 対照と同じ、または、弱く感じる
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、パン粉を含むコーン油を100℃以上に加温すると揚げたての香ばしい風味とパンの風味が得られた。ローストパン粉を使用した場合、120℃以上になるとさらに香ばしい風味が強くなり、揚げたてらしい好ましい風味であった。また、生パン粉を使用した場合、120℃〜130℃で、パンの風味が特に強くなることがわかった。一方、加熱温度が低い場合や、単に油脂を加熱しただけでは香ばしい風味やパンの風味を得ることはできなかった。
【0061】
(実施例2−1)
ローストパン粉の製造時の加熱温度条件を170℃と200℃で実施例1−1と同様の条件でローストパン粉を調製した。
容量500mlのフラスコに、コーン油200gおよび170℃で加熱したローストパン粉14gを入れた。127℃のオイルバスに浸し、油温が120℃になるまで加熱撹拌をした。ろ過し風味油を得た。また、上記調製条件で、170℃で加熱したローストパン粉14gに代えて、170℃で加熱したローストパン粉14gと生パン粉20g(ローストパン粉(生パン粉換算)に対する生パン粉の量=1)、および、200℃で加熱したローストパン粉14gと生パン粉20gを使用し、風味油を得た。風味油の評価結果を表2に示す。
風味油の評価の対照には加熱等していないコーン油を使用した。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示すように、ローストパン粉と生パン粉を併用した実施例2−2では、ローストパン粉のみの実施例2−1よりもパンの風味が非常に強く、また、油のコク味も向上していた。また、ローストパン粉の製造時の加熱温度は、温度が高いと香ばしい風味が向上した。一方で、パンの風味の点では、製造時の加熱温度は高すぎないほうが好ましいことがわかった。
さらに、添加するパン粉の量は、生パン粉換算で、油100部に対し10〜20部で風味油を調製できることがわかった。なお、20部以上添加しても風味に大きな違いはなかった。
【0064】
(実施例3−1)
実施例2−2のコーン油に代えて、パームオレインを使用し同様に風味油を得た。パームオレインを対照に、得られた風味油の評価をおこなった。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
油種がコーン油、パームオレインいずれでも充分な風味を有する風味油を得ることができた。
【0067】
(実施例4−1)
容量500mlのフラスコに、コーン油200g、ローストパン粉14gおよび生パン粉20gを同時に入れ、127℃のオイルバスに浸した。油温が120℃になるまで加熱撹拌したのち、約90℃まで冷却した。油温が105℃になるまで加熱撹拌し、60分間保持した。不溶物をろ過後、風味油を得た。
また、フラスコにコーン油200g、ローストパン粉14gを入れ、127℃のオイルバスに浸した。油温が120℃になるまで加熱撹拌したのち、約90℃まで冷却した。生パン粉20gを加えて、油温が105℃になるまで加熱撹拌し、60分間保持した。不溶物をろ過後、風味油を得た。
さらに、フラスコにコーン油200g、生パン粉20gを入れ、127℃のオイルバスに浸した。油温が120℃になるまで加熱撹拌をしたのち、約90℃まで冷却した。ローストパン粉14gを加えて、油温が105℃になるまで加熱撹拌し、60分間保持した。不溶物をろ過後、風味油を得た。
得らえた風味油は、実施例1−1と同様に評価をおこなった。結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示すように、ローストパン粉と生パン粉の投入順番、すなわち両方のパン粉を同時に入れて加熱する方法、先にローストパン粉を入れて加熱し、後で生パン粉を加えて加熱する方法、または先に生パン粉を入れて加熱し、後でローストパン粉を入れて加熱する方法の三種のパン粉を添加する順番を比較した結果、どの順番も好適な香ばしい風味やパンの風味を得られた。特に、生パン粉を先に入れて加熱した後、ローストパン粉を加えてさらに加熱する方法がもっとも好ましい風味を得ることができた。
【0070】
(実施例5−1)
容量500mlのフラスコに、コーン油200gおよび生パン粉20gを入れ、127℃のオイルバスに浸した。油温が120℃になるまで加熱撹拌したのち、約90℃まで冷却した。ローストパン粉14g、グルコース1.5gおよびヒスチジン1.5gを加えて、油温が105℃になるまで加熱撹拌し、60分間保持した。不溶物をろ過後、風味油を得た。
また、グルコースの代わりにフルクトースを使用したもの、グルコース1.5gの代わりにフルクトース2g、かつ、ヒスチジン添加量を2gにしたもの、および、グルコースの代わりにフルクトース、かつ、ヒスチジンの代わりにメチオニンを使用したもの、で上記と同様に処理し風味油を得た。
得らえた風味油は、実施例1−1と同様に評価をおこなった。結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
表5に示すように、糖類やアミノ酸を併用すると、さらに、香ばしい風味、パンの風味、油のコク味を向上できることがわかり、揚げたての好ましい風味を持つ風味油が得られた。また、フルクトースとヒスチジンの組み合わせでは、カラメル様の甘い風味があり、フルクトースとメチオニンの組み合わせでは、蒸かしたじゃがいも様の好ましい風味があった。よって、糖類とアミノ酸の組み合わせで、さらに多様な風味が付与できることが示唆された。
また、実施例5−3では香ばしい風味は、実施例5−2と大きく変わらないものの、カラメル様の甘い風味が強くなり、特徴的な風味を得ることができた。また、糖類やアミノ酸をこれ以上増量しても、香ばしい風味等は大きく変わらなかった。
【0073】
(実施例6−1)
容量2Lのステンレス容器に、コーン油900gを入れて127℃のオイルバスに浸し、油温が90℃に到達するまで加熱撹拌し、生パン粉110gを加えた。油温が120℃になるまで加熱撹拌したのち、約90℃まで冷却した。ローストパン粉72g、フルクトース10gおよびヒスチジン8.3gを加えて、油温が105℃になるまで加熱撹拌し、60分間保持した。不溶物をろ過後、風味油を得た。
得らえた風味油は、実施例1−1と同様に評価をおこなった。結果を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
表6に示すように、油脂にパン粉を添加する際の温度は90℃でもあっても、風味に優れた風味油を得ることが出来た。
【0076】
(実施例7−1)
市販の乾燥パン粉(フライスター株式会社製「フライスターセブン」)8gに、実施例4−3の風味油2gを混ぜた。得られたパン粉を試食評価した。対照はコーン油2gをパン粉に混ぜたものとした。結果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
本実施例の風味油を添加した乾燥パン粉では、フライ油で揚げていないにもかかわらず、香ばしい風味と油のコク味があり、揚げたてのような好ましい風味を呈していた。
【0079】
(実施例8−1)
市販の揚げない惣菜(味の素冷凍食品株式会社製「揚げずにサクッとさん・ふっくら白身魚」)1個20gに、実施例5−2の風味油1g滴下した。得られた惣菜を電子レンジアップし、試食評価した。対照はコーン油1gを滴下したものとした。
【0080】
【表8】
【0081】
本実施例の風味油を添加した惣菜は、フライ油で揚げていないにも関わらず、香ばしい風味や油のコク味があり、揚げたてのような好ましい風味を呈していた。
【0082】
(実施例9−1)
市販の持ち帰りとんかつ(株式会社イトーヨーカ堂「ロースかつ(スライス済み)」)1片40gに実施例5−2の風味油1g滴下し、得られたとんかつを冷蔵庫で1日保存した。電子レンジアップしたとんかつを試食評価した。対照はコーン油1gを滴下したものとした。
【0083】
【表9】
【0084】
本実施例を添加したとんかつは、1日保存後に再加熱しているにも関わらず、香ばしい風味や油のコク味があり、揚げたてのような好ましい風味を呈していた。
【0085】
(実施例10−1)
市販の揚げないスナック菓子(カルビー株式会社「じゃがライト こんがり焼き製法」)10gに実施例5−2の風味油をそれぞれ2g、5g滴下し、得られたスナックを試食評価した。対照はコーン油5gを滴下したものとした。
【0086】
【表10】
【0087】
本実施例の風味油を添加したスナックでは、フライ油で揚げていないにもかかわらず、香ばしい風味と油のコク味があり、揚げたてのような好ましい風味を呈していた。