特許第6227411号(P6227411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6227411リチウムイオン電池向けの一体型セパレータの電界紡糸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227411
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池向けの一体型セパレータの電界紡糸
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20171030BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20171030BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171030BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M2/16 L
   H01M4/58
   H01M4/505
   H01M4/525
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-531607(P2013-531607)
(86)(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公表番号】特表2013-539186(P2013-539186A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011050394
(87)【国際公開番号】WO2012050682
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/388,498
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オリラル, マヘンドラ シー.
(72)【発明者】
【氏名】タルワー, ラマン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, カール, エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ルー
(72)【発明者】
【氏名】ボランディ, ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】ペベニート, ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ワン, コニー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】バクラック, ロバート, ゼット.
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−044935(JP,A)
【文献】 特開2010−103050(JP,A)
【文献】 特表2006−527911(JP,A)
【文献】 特開2010−194726(JP,A)
【文献】 特開2001−319634(JP,A)
【文献】 特表2003−533862(JP,A)
【文献】 特表2003−533861(JP,A)
【文献】 特表2010−500717(JP,A)
【文献】 特表2010−500718(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139727(WO,A1)
【文献】 化学大辞典,株式会社東京化学同人,1989年,第1版,p.824
【文献】 本間精一,プラスチックポケットブック,株式会社工業調査会,2003年,全面改訂版,pp.121−122
【文献】 Kazuo Shinozaki et al.,Fabrication and Optical Properties ofPb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3 Thin Films on Si Substrates Using the PLD Method,IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL,2008年,VOL. 55, NO. 5,pp.1023-1028
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極構造を有するリチウムイオン電池であって、
アノード電流コレクタ、および
前記アノード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたアノード構造
を備えるアノード積層体と、
カソード電流コレクタ、および
前記カソード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたカソード構造
を備えるカソード積層体と、
前記アノード構造と前記カソード構造との間に位置決めされた多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータであって、
ナノファイババックボーン構造であって、
融点が200℃を超える第1のポリマー材料から形成されたナノファイバと、
前記ナノファイバに埋め込まれたセラミック粒子とを有する、ナノファイババックボーン構造と、
融点が140℃未満の複数のポリマーラインを形成し、前記ナノファイババックボーン構造を覆うように堆積された第2のポリマー材料とを備えた、ポリマーセパレータ、とを備え
前記第1のポリマー材料が、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)からなる群から選択される、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記セラミック粒子が、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(PMN−PT)、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記第2のポリマー材料が前記第1のポリマー材料とは異なる、請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記カソード構造が、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)、二酸化マンガンリチウム(LiMnO)、二硫化チタン(TiS)、LiNiMnCoO、LiMn、LiFePO、LiFeMgPO、LiMoPO、LiCoPO、Li(PO、LiVOPO、LiFe1.5、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、LiNiPOF、Na(PO、LiFeSiO、LiMnSiO、LiVOSiO、LiNiO、およびこれらの組合せからなる群から選択されるカソード活性材料を含む多孔質構造である、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記ナノファイババックボーン構造の前記ナノファイバが、100ナノメートル〜200ナノメートルの直径を有し、かつ、前記セラミック粒子の粒子サイズが前記ナノファイババックボーン構造のナノファイバの直径よりも小さい、請求項2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
熱暴走中に前記複数のポリマーラインがともに融解および溶和され、前記多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータの多孔性を低減させ、ゆえにLiイオン輸送および関連する電気化学反応を遅らせる、請求項に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、高容量のエネルギー蓄積デバイスに関し、より詳細には、一体型セパレータを有する電池およびそのような電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーキャパシタおよびリチウムイオン(Liイオン)電池などの急速充電式で高容量のエネルギー蓄積デバイスは、携帯用電子機器、医療、輸送、系統連系形の大容量エネルギー蓄積、再生可能なエネルギー蓄積、および無停電電源(UPS)を含むますます多くの適用分野で使用されている。
【0003】
Liイオン電池は通常、アノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に位置決めされたセパレータとを含む。セパレータとは、カソード電極とアノード電極との間に物理的かつ電気的な分離を提供する電子的な絶縁体である。セパレータは通常、微孔質のポリエチレンおよびポリオレフィンから作られ、別個の製造ステップで塗布される。電気化学反応、すなわち充電および放電中、Liイオンは、セパレータ内の孔を通って2つの電極間を、電解液を介して輸送される。したがって、イオンの伝導性を増大させるには、多孔性が高いことが望ましい。しかし、一部の高多孔性のセパレータは、サイクリング中に形成されるリチウムの樹枝状結晶が電極間で短絡を生じさせたときに電気短絡の影響を受けやすい。
【0004】
現在、電池セルの製造業者はセパレータを購入し、次いでそれらのセパレータを、別個の処理ステップでアノードおよびカソード電極とともに積層させる。他のセパレータは、ポリマーの湿式または乾式の押出し成形によって作られ、次いでポリマー内に孔(裂け目)を生じさせるように引き延ばされる。セパレータはまた、Liイオン電池内で最も高価な構成要素の1つでもあり、電池セル内の材料コストの20%を超える割合を占める。
【0005】
大部分のエネルギー蓄積の適用分野では、エネルギー蓄積デバイスの充電時間および容量は重要なパラメータである。さらに、そのようなエネルギー蓄積デバイスの寸法、重量、および/または費用は、著しい制限になる可能性がある。現在のセパレータの使用には、複数の弱点がある。すなわち、そのような材料が、そのような材料から構築される電極の最小寸法を制限し、電気短絡を受け、複雑な製造方法および高価な材料を必要とする。
【0006】
したがって、より小さく、より軽く、より高い費用効果で製造できるセパレータを有する、より急速に充電され、より高容量のエネルギー蓄積デバイスが、当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、一般に、高容量のエネルギー蓄積デバイスに関し、より詳細には、一体型セパレータを有する電池およびそのような電池を製造する方法に関する。一実施形態では、電極構造を有するリチウムイオン電池が提供される。リチウムイオン電池は、アノード積層体と、カソード積層体と、ナノファイババックボーン構造を備える多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータとを備える。アノード積層体は、アノード電流コレクタと、アノード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたアノード構造とを備える。カソード積層体は、カソード電流コレクタと、カソード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたカソード構造とを備える。多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータは、アノード構造とカソード構造との間に位置決めされる。
【0008】
別の実施形態では、電極構造を形成する方法が提供される。電極構造は、第1の電極構造を提供することと、第1の電極構造の表面上へ直接、ナノファイババックボーン構造を電界紡糸して、多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータを形成することとを含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、フレキシブル導電基板を覆うように一体型セパレータを形成するインライン基板処理システムが提供される。インライン基板処理システムは、フレキシブル導電基板を覆うように電極構造の少なくとも一部分を形成する微細構造形成チャンバと、電極構造上に直接、多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータの少なくとも一部分を形成する電界紡糸チャンバと、チャンバ間でフレキシブル導電基板を移送するように構成された基板移送機構とを備える。基板移送機構は、各チャンバの処理体積の外側に配置され、各チャンバの処理体積内にフレキシブル導電基板の一部分を保持するように構成された送りロールと、処理体積の外側に配置され、フレキシブル導電基板の一部分を保持するように構成された巻取りロールとを備え、基板移送機構は、送りロールおよび巻取りロールを作動させて各チャンバでフレキシブル導電基板を出し入れし、各チャンバの処理体積内でフレキシブル導電基板を保持するように構成されている。
【0010】
本発明の上記の特徴を詳細に理解できるように、実施形態を参照することによって、上記で簡単に要約した本発明のより詳細な説明を得ることができる。これらの実施形態の一部は、添付の図面に示されている。しかし、本発明は他の等しく効果的な実施形態も許容しうるため、添付の図面は本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本明細書に記載の実施形態による電界紡糸ポリマーセパレータを有する部分的なLiイオン電池セル2重層の概略図である。
図1B】本明細書に記載の実施形態による電界紡糸ポリマーセパレータを有する部分的なLiイオン電池セルの概略図である。
図2】本明細書に記載の実施形態によって形成された電界紡糸ポリマーセパレータを有するカソード積層体およびアノード積層体の一実施形態の概略横断面図である。
図3】本明細書に記載の実施形態による図2のカソード積層体およびアノード積層体を形成する方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図4】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図5】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図6】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図7】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図8】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図9】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図10】本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法の一実施形態を要約する処理流れ図である。
図11】本明細書に記載の実施形態による電極表面上へ一体型セパレータを電界紡糸する装置の一実施形態を示す概略図である。
図12】本明細書に記載の実施形態による電極表面上へ一体型セパレータを電界紡糸する装置の別の実施形態を示す概略図である。
図13A】本明細書に記載の実施形態によって堆積した電界紡糸不織ポリマーファイバの走査電子顕微鏡(SEM)画像の概略図である。
図13B】本明細書に記載の実施形態によって堆積した電界紡糸不織ポリマーファイバの走査電子顕微鏡(SEM)画像の概略図である。
図14A】本明細書に記載の実施形態によって堆積した電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。
図14B】本明細書に記載の実施形態によって堆積した電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。
図15A】本明細書に記載の実施形態によって堆積したセラミックが装荷された電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。
図15B】本明細書に記載の実施形態によって堆積したセラミックが装荷された電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。
図16】本明細書に記載の実施形態による処理システムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするために、複数の図に共通の同一の要素を指すには、可能な場合、同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素および特徴は、さらなる記述がなくても、他の実施形態で有益に組み込むことができることが企図される。
【0013】
本発明の実施形態は、一般に、高容量のエネルギー蓄積デバイスに関し、より詳細には、一体型セパレータを有する電池およびそのような電池を製造する方法に関する。特定の実施形態では、電池電極上への一体型の直接電界紡糸セパレータの直接堆積が提供される。セパレータは、低コストを実現するには単層とすることができ、または改善された性能を実現するには多層とすることができる。電界紡糸セパレータは、多孔質ポリマーを含むことができる。電界紡糸ポリマーは、複数のポリマーを含むことができる。多孔質ポリマーは、カソードおよび/またはアノードなどの電極上へ直接電界紡糸されたポリマーファイバを含むことができる。電界紡糸セパレータは、セラミック粒子をさらに含むことができる。セラミック粒子は、ポリマーファイバとともに共堆積させることができる。その後、多孔質ポリマー構造の孔内にセラミックポリマーを堆積させることができる。ポリマーが電界紡糸される特定の実施形態では、ポリマーは、ランダムまたは「スパゲティ状」の網を有することができる。セラミック粒子は、多孔質の「スパゲティ状」の網の孔内へ堆積させることができる。そのようなポリマーファイバの一例には、約250℃の融解温度(T)を有するナイロン6.6などの半結晶ポリアミドが含まれる。別の例は、約170℃のTを有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)のファイバである。別の例は、PVDF−HFP(ポリビニリデン+ヘキサフルオロプロペン)などの共重合体である。被覆されたカソード構造とアノード構造をともに積層させて、電池セル積層体を形成することができる。
【0014】
電界紡糸とは、電気的な力によりポリマー溶液から噴射を導出する技法である。噴射は、毛細管の先端部から導出することができ、または必要のない処理で導出することができる。ポリマー溶液の液滴またはフィルムに十分な高電圧が印加され、液体が帯電し、静電反発力が表面張力を打ち消して液滴が引き伸ばされたとき、臨界点で表面から液体の流れが噴出する。この噴出点は、テイラーコーンとして知られている。液体の分子結合力が十分に高い場合、流れの崩壊が生じることはなく(流れの崩壊が生じた場合、液滴は電子噴霧される)、帯電した液体の噴射が形成される。噴射は飛行中に乾燥するにつれて、電荷がファイバの表面へ移動するため、電流モードは抵抗性から対流性に変化する。次いで噴射は、ファイバ内の小さい湾曲部で始まる静電反発力によって引き起こされる端止処理によって、最終的にコレクタ接地上に堆積するまで延ばされる。この湾曲の不安定性の結果、ファイバを延ばして薄くすることで、ナノメートル規模の直径を有する均一のファイバが形成される。
【0015】
本明細書に記載の実施形態を実施できる特定の装置は限定されるものではないが、これらの実施形態をカリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.によって販売されているウエブベースのロールツーロールシステム上で実施することは特に有益である。本明細書に記載の実施形態を実施できる例示的なロールツーロールシステムおよび個別の基板システムは、本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許第2010/0126849号として公開されている、LopatinらのAPPARATUS AND METHOD FOR FORMING 3D NANOSTRUCTURE ELECTRODE FOR ELECTROCHEMICAL BATTERY AND CAPACITORという名称の米国特許出願第12/620,788号(代理人整理番号APPM/012922/EES/AEP/ESONG)、本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許第2011/0129732号として公開されている、2010年7月19日出願のBachrachらのCOMPRESSED POWDER 3D BATTERY ELECTRODE MANUFACTURINGという名称の米国特許出願第12/839,051号(代理人整理番号APPM/014080/EES/AEP/ESONG)、および本発明の譲受人に譲渡された、2010年9月13日出願のBachrachらのSPRAY DEPOSITION MODULE FOR AN IN−LINE PROCESSING SYSTEMという名称の米国特許出願第12/880,564号(代理人整理番号APPM/015469/AEP/LES/ESONG)に、さらに詳細に記載されている。これらの出願はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0016】
ファイバの形成に影響を与えうるパラメータには、溶液の特性(たとえば、伝導性、表面張力、粘性、および弾性)、毛細管間の距離、毛細管先端部の電位、ならびに周囲のパラメータ(たとえば、湿度、溶液温度、および空気速度)が含まれる。
【0017】
ポリマー溶液またはセパレータを形成する溶液は、溶剤系内に希釈された1つまたは複数のポリマーを含むことができる。例示的なポリマー材料には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ナイロン6,6、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、PEVA/PLA、ポリメチルアクリレート(PMMA)/テトラヒドロパーフルオロオクチルアクリレート(tetrahydroperfluorooctylacrylate、TAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチルイミド(PEI)、ポリカプロラクタム、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリビニル−ピリジン、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリエステル(PE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PES)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、スチレン無水マレイン酸(SMA)、およびこれらの組合せが含まれる。ポリマーは、セパレータを形成する溶液の総重量の約0.5重量%〜約30重量%を構成することができる。
【0018】
セパレータを形成する溶液は、溶剤系をさらに含む。溶剤系は、1つまたは複数のポリマー成分を溶和することが可能な任意の溶剤を含むことができる。例示的な溶剤系には、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、水、蟻酸、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、およびこれらの組合せが含まれる。溶剤系は、セパレータを形成する溶液の残り部分を構成することができる。溶剤系は、セパレータを形成する溶液の総重量の約70重量%〜約99.5重量%を構成することができる。
【0019】
セパレータを形成する溶液は、無機成分をさらに含むことができる。無機成分は、一体型セパレータが組み込まれる電池材料および化学的性質に適合している様々な材料から選択することができる。無機材料は、セラミック材料とすることができる。例示的なセラミック材料には、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、CaCO、およびこれらの組合せが含まれる。一実施形態では、セラミック粒子は、SiO、Al、MgO、およびこれらの組合せを含む群から選択される。
【0020】
セラミック粒子の寸法は、粒子寸法をポリマーファイバの直径より小さくして粒子に堆積システムを詰まらせないように選択することができる。特定の実施形態では、セラミック粒子は、約5nm〜約0.3μmの粒子寸法を有することができる。これらの粒子は、直径300nm未満または直径100nm未満とすることができ、より典型的には、直径約10〜20nmとすることができる。セラミック粒子の粒子寸法が小さいことで、サイクリング処理中に形成されるリチウムの樹枝状結晶がセパレータを貫通して成長し、短絡を引き起こすのがより困難になる。
【0021】
セラミック粒子は、ゾルゲル処理を使用してポリマー溶液に添加することができる。ゾルゲル処理では、ポリマー溶液に無機前駆体が添加され、反応してポリマー溶液内にセラミック粒子を形成する。たとえば、TiClおよびTi(OH)などの無機前駆体がポリマー溶液に添加され、反応してTiOのゾル粒子を形成する。このように、セラミック粒子のための前駆体は、ポリマー溶液に添加される。セラミック粒子は、前駆体が混合されるときに形成することができ、または場合によっては、前駆体は、電界紡糸された後に、混合物の加熱もしくはファイバの加熱を必要とすることもある。加熱温度は、ポリマーファイバの融解温度未満である。
【0022】
ポリマーファイバは、ポリマーの融解物から形成することができる。融解処理では、高温で融解したポリマーを使用することができる。ポリマー融解物の電界紡糸は、ポリマー溶液の電界紡糸処理に類似しているが、ポリマー融解物の電界紡糸は、真空環境内で実行される。帯電した融解物の噴射、および融解物が堆積した基板は通常、真空環境内でカプセル化される。融解物の形で電界紡糸できる例示的なポリマーには、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン12、PA−12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PET/PEN混合物、およびこれらの組合せが含まれる。
【0023】
図1Aは、本明細書に記載の一実施形態による電界紡糸セパレータ115を有する部分的なLiイオン電池セル2重層100の概略図である。図1Bは、本明細書に記載の実施形態による電界紡糸セパレータを有する部分的なLiイオン電池セル120の概略図である。本明細書に記載の一実施形態によれば、Liイオン電池セル100、120は負荷101に電気的に接続される。Liイオン電池セル2重層100の主要な機能構成要素は、アノード構造102a、102bと、カソード構造103a、103bと、セパレータ層104a、104bと、電界紡糸セパレータ115と、電流コレクタ111および113と、セパレータ層104a、104b間の領域内に配置された電解液(図示せず)とを含む。Liイオン電池セル120の主要な機能構成要素は、アノード構造102bと、カソード構造103bと、電界紡糸セパレータ115と、電流コレクタ111および113と、電流コレクタ111、113間の領域内に配置された電解液(図示せず)とを含む。電解液としては、様々な材料、たとえば有機溶剤内のリチウム塩を使用することができる。Liイオン電池セル100、120は、電流コレクタ111および113に対するリードを有する適したパッケージ内に電解液で気密封止することができる。アノード構造102a、102b、カソード構造103a、103b、電界紡糸セパレータ115、および流体透過性のセパレータ層104a、104bは、セパレータ層104aおよび104b間に形成された領域内で電解液中に浸漬される。部分的な例示的構造が示されており、特定の実施形態では、セパレータ層104aおよび104bは、電界紡糸セパレータ層115に類似の電界紡糸セパレータ層に置き換えられ、それに続いて、アノード構造、カソード構造、および電流コレクタが対応することを理解されたい。
【0024】
アノード構造102bおよびカソード構造103bは、Liイオン電池100の半電池として働く。アノード構造102bは、金属アノード電流コレクタ111と、リチウムイオンを保持する炭素ベースの層間ホスト材料などの第1の電解液含有材料とを含む。同様に、カソード構造103bは、それぞれのカソード電流コレクタ113と、リチウムイオンを保持する金属酸化物などの第2の電解液含有材料とを含む。電流コレクタ111および113は、金属などの導電性材料から作られる。一実施形態では、アノード電流コレクタ111は銅を含み、カソード電流コレクタ113はアルミニウムを含む。特定の実施形態では、電界紡糸セパレータ層115は、アノード構造102bおよびカソード構造103b内の構成要素間の直接的な電気接触を防止するために使用される。
【0025】
Liイオン電池セル100、120のカソード側、すなわち正電極側の電解液を含有する多孔質材料は、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)または二酸化マンガンリチウム(LiMnO)などのリチウムを含有する金属酸化物を含むことができる。電解液を含有する多孔質材料は、酸化コバルトリチウムなどの積層酸化物、リン酸鉄リチウムなどの橄欖石、または酸化マンガンリチウムなどの尖晶石から作ることができる。リチウム以外の実施形態では、例示的なカソードは、TiS(二硫化チタン)から作ることができる。例示的なリチウム含有酸化物は、酸化コバルトリチウム(LiCoO)などのように積層することができ、またはLiNiCo1−2xMnO、LiNi0.5Mn1.5、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、LiMnなどの混合された金属酸化物とすることができる。例示的なリン酸塩は、鉄橄欖石(LiFePO)およびその変種(LiFe1−xMgPOなど)、LiMoPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、またはLiFe1.5とすることができる。例示的なフルオロリン酸塩は、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、またはLiNiPOFとすることができる。例示的なケイ酸塩は、LiFeSiO、LiMnSiO、またはLiVOSiOとすることができる。例示的なリチウムを含まない化合物は、Na(POである。
【0026】
Liイオン電池セル100、120のアノード側、すなわち負電極側の電解液を含有する多孔質材料は、上記の材料、たとえばポリマーマトリクス内に分散させたグラファイト粒子および/または様々な微粒粉末、たとえばミクロ規模もしくはナノ規模の寸法の粉末から作ることができる。さらに、グラファイトミクロビーズとともに、またはグラファイトミクロビーズの代わりに、ケイ素、スズ、またはチタン酸リチウム(LiTi12)のミクロビーズを使用して、導電コアアノード材料を提供することもできる。例示的なカソード材料、アノード材料、および添加方法は、本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許第2011/0129732号として公開されている、2010年7月19日出願のCOMPRESSED POWDER 3D BATTERY ELECTRODE MANUFACTURINGという名称の米国特許出願第12/839,051号(代理人整理番号APPM/014080/EES/AEP/ESONG)、および本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許第2011/0168550号として公開されている、2010年1月13日出願のGRADED ELECTRODE TECHNOLOGIES FOR HIGH ENERGY LITHIUM−ION BATTERIESという名称の米国特許出願第12/953,134号(代理人整理番号APPM/014493/LES/AEP/ESONG)にさらに記載されている。両出願は、その全体の参照により本明細書に組み込まれている。Liイオン電池セル2重層100を図1に示すが、本明細書に記載の実施形態はLiイオン電池セル2重層構造に限定されるものではないことも理解されたい。アノード構造とカソード構造は、直列接続しても並列接続してもよいことも理解されたい。
【0027】
図2は、本明細書に記載の実施形態によって形成された電界紡糸ポリマーセパレータを有するカソード積層体202およびアノード積層体222の一実施形態の概略横断面図である。図3は、本明細書に記載の実施形態によってカソード積層体202およびアノード積層体222を形成し、カソード積層体202とアノード積層体222との間に図2の電界紡糸セパレータ115を位置決めする方法300の一実施形態を要約する処理流れ図である。一実施形態では、カソード積層体202は、2重層カソード構造206と、セパレータ層104bと、電界紡糸セパレータ115とを備える。
【0028】
ブロック302で、2重層カソード構造206が形成される。一実施形態では、2重層カソード構造206は、図2に示すように、第1のカソード構造103aと、カソード電流コレクタ113と、第2のカソード構造103bとを備える。一実施形態では、カソード積層体202は、図1Bに示すように、単層のカソード構造を構成する。
【0029】
カソード構造103a、103bは、リチウムイオンを保持する任意の構造を構成することができる。特定の実施形態では、カソード構造103a、103bは、カソード電極構造全体にわたって段階的な粒子寸法を有する。特定の実施形態では、カソード構造103a、103bは多層構造を構成し、これらの層は、異なる寸法および/または特性を有するカソード活性材料を含む。例示的なカソード構造は、本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許第2011/0168550号として公開されている、2010年1月13日出願のGRADED ELECTRODE TECHNOLOGIES FOR HIGH ENERGY LITHIUM−ION BATTERIESという名称の米国特許出願第12/953,134号(代理人整理番号APPM/014493/LES/AEP/ESONG)に記載されている。
【0030】
一実施形態では、カソード構造103a、103bは、カソード活性材料を含む多孔質構造を構成する。一実施形態では、カソード活性材料は、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)、二酸化マンガンリチウム(LiMnO)、二硫化チタン(TiS)、LiNixCo1−2xMnO、LiMn、LiFePO、LiFe1−xMgPO、LiMoPO、LiCoPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、LiFe1.5、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、LiNiPOF、Na(PO、LiFeSiO、LiMnSiO、LiVOSiO、LiNiO、およびこれらの組合せを含む群から選択される。一実施形態では、カソード構造は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ならびにスチレンブタジエンゴム(SBR)などの水溶性の結合剤、導電性結合剤、および他の溶剤の少ないまたは溶剤のない結合剤を含む群から選択される結合剤をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、カソード構造は、それだけに限定されるものではないが、ふるいがけ技法、静電噴霧技法、溶射または火炎溶射技法、プラズマ溶射技法、流動層被覆技法、スリット被覆技法、ロール被覆技法、およびこれらの組合せを含む粉末塗布技法を使用して、塗布することができる。これらの技法はすべて、当業者には知られている。特定の実施形態では、カソード電極は、カソード電極の構造全体にわたって多孔性が変動するような段階的な多孔性を有する。図2に示す2重層カソード構造206などの両面2重層電極が形成される特定の実施形態では、両面堆積処理を使用して、カソード構造103aとカソード構造103bをカソード電流コレクタ113の両側に同時に堆積させることができる。たとえば、両面静電噴霧処理では、対向する噴射塗布器を使用して、基板の両側にカソード活性材料を堆積させる。両面静電噴霧チャンバの1つの例示的な実施形態は、本発明の譲受人に譲渡された、2010年9月13日出願のBachrachらのSPRAY DEPOSITION MODULE FOR AN IN−LINE PROCESSING SYSTEMという名称の米国特許出願第12/880,564号に開示されている。
【0032】
ブロック304で、カソード構造206の表面上に多孔質の電界紡糸セパレータ115を堆積させることができる。電界紡糸セパレータ115は、図4から図8に記載の方法のいずれかを使用して堆積させることができる。多孔質の電界紡糸セパレータ115は、1つまたは複数のポリマーを含む。
【0033】
多孔質の電界紡糸セパレータは、無機充填剤またはセラミック粒子をさらに含むことができる。例示的なセラミック粒子には、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、PB(MgNb2/3)O−PbTiO(PMN−PT)、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、CaCO、およびこれらの組合せが含まれる。一実施形態では、セラミック粒子は、SiO、Al、MgO、およびこれらの組合せを含む群から選択される。特定の実施形態では、セラミック粒子は、約50nm〜約0.5μmの粒子寸法を有することができる。セラミック粒子の粒子寸法が小さいことで、サイクリング処理中に形成されるリチウムの樹枝状結晶がセパレータを貫通して成長し、短絡を引き起こすのがより困難になる。特定の実施形態では、セラミック粒子スラリーは、PVDF、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)から選択された結合剤をさらに含むことができる。一実施形態では、一体型の電界紡糸セパレータ115は約10〜60重量%の結合剤を含み、残りはセラミック粒子である。
【0034】
電界紡糸セパレータは、約50ナノメートル〜1,000ナノメートル、たとえば100ナノメートル〜200ナノメートルの直径を有するナノファイバを含むことができる。電界紡糸セパレータは、約1ミクロン〜約100ミクロン、たとえば約1ミクロン〜約20ミクロンの厚さを有することができる。電界紡糸セパレータは、同じ材料から形成される固体フィルムと比較すると、約40%〜約90%の多孔性を有することができる。
【0035】
ブロック306で、アノード積層体222が形成される。一実施形態では、アノード積層体222は、2重層アノード構造226と、セパレータ104とを備える。一実施形態では、2重層アノード構造226は、図2に示すように、第1のアノード構造102aと、アノード電流コレクタ111と、第2のアノード構造102bとを備える。一実施形態では、アノード積層体222は、図1Bに示すように、単層のアノード構造を構成する。
【0036】
一実施形態では、アノード構造102a、102bは、炭素ベースの多孔質構造、グラファイトまたは硬質炭素とすることができ、粒子寸法は約5〜15μmである。一実施形態では、リチウム層間炭素アノードは、ポリマー結合剤のマトリクス内に分散される。電力性能を強化するために、カーボンブラックを添加することもできる。結合剤マトリクス向けのポリマーは、ゴム弾性を有するポリマーを含む熱可塑性または他のポリマーから作られる。ポリマー結合剤は、クラックの形成を防いでコレクタ箔への接着を促進するように、活性材料粉末をともに結合させる働きをする。ポリマー結合剤の数量は、1重量%〜40重量%の範囲内とすることができる。アノード構造102a、102bの電解液を含有する多孔質材料は、上記の材料、たとえばポリマーマトリクス内に分散させたグラファイト粒子および/または様々な微粒粉末、たとえばミクロ規模もしくはナノ規模の寸法の粉末から作ることができる。さらに、グラファイトミクロビーズとともに、またはグラファイトミクロビーズの代わりに、ケイ素、スズ、またはチタン酸リチウム(LiTi12)のミクロビーズを使用して、導電コアアノード材料を提供することもできる。
【0037】
一実施形態では、アノード構造は、限界電流(i)を上回る電流密度で実行される高メッキ速度の電気メッキ処理を使用することによって3次元の円柱状に成長する材料として形成される導電性の微細構造を含む。それによって、電気メッキ限界電流を満足または超過する導電性の微細構造による拡散が制限された電気化学メッキ処理は、従来の高密度の共形フィルムではなく、低密度のメソ多孔質/円柱状の金属構造を生じさせる。導電性の微細構造の異なる構成も、本明細書に記載の実施形態によって企図される。導電性の微細構造は、銅、スズ、ケイ素、コバルト、チタン、これらの合金、およびこれらの組合せを含む群から選択される材料を含むことができる。導電性の微細構造を形成するための例示的なメッキ溶液および処理条件は、本発明の譲受人に譲渡された、2010年1月29日出願のLopatinらのPOROUS THREE DIMENSIONAL COPPER,TIN,COPPER−TIN,COPPER−TIN−COBALT,AND COPPER−TIN−COBALT−TITANIUM ELECTRODES FOR BATTERIES AND ULTRA CAPACITORSという名称の米国特許出願第12/696,422号に記載されている。同出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
一実施形態では、電流コレクタ111および113は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、これらの合金、およびこれらの組合せを含む群から別個に選択される材料を含むことができる。一実施形態では、カソード電流コレクタ113はアルミニウムであり、アノード電流コレクタ111は銅である。正の電流コレクタ113(カソード)向けの材料の例には、アルミニウム、ステンレス鋼、およびニッケルが含まれる。負の電流コレクタ111(アノード)向けの材料の例には、銅(Cu)、ステンレス鋼、およびニッケル(Ni)が含まれる。そのようなコレクタは、箔、フィルム、または薄板の形状とすることができる。特定の実施形態では、コレクタは、全体として約5〜約50μmの範囲の厚さを有する。
【0039】
ブロック308で、アノード構造226の表面上に多孔質の電界紡糸セパレータ115を堆積させることができる。電界紡糸セパレータ115は、図4から図8に記載の方法のいずれかを使用して堆積させることができる。電界紡糸セパレータをカソード積層体202、アノード積層体222、または両方の上に堆積させてから、ブロック308で、アノード積層体222とカソード積層体202をともにつなぎ合わせることができる。
【0040】
ブロック310で、カソード積層体202とアノード積層体222をともにつなぎ合わせることができ、カソード積層体202とアノード積層体222との間に電界紡糸セパレータが形成される。一実施形態では、カソード積層体202およびアノード積層体222は、薄層化処理を使用して、たとえばAl/Al箔などのパッケージングフィルム箔でパッケージングすることができる。
【0041】
図4は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法400の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック402で、アノード構造またはカソード構造の表面上に、第1のポリマー材料を含むポリマーバックボーン構造が電界紡糸される。ブロック404で、電界紡糸または電子噴霧処理を使用して、ポリマーバックボーン構造を覆うように第2のポリマー材料を形成し、一体型のポリマーセパレータ115を形成する。第2のポリマー材料は、第1のポリマー材料を含むポリマーバックボーン構造を補強または強化するために使用することができる。
【0042】
図5は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法500の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック502で、アノード構造の表面上またはカソード構造の表面上に、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料が同時に電界紡糸される。
【0043】
複数のポリマー材料を使用する特定の実施形態では、第1のポリマー材料層は、高い融解温度(T)(たとえば、200℃を超える)を有するポリマー材料を含むことができ、第2のポリマー材料層は、低い融解温度(たとえば、140℃未満)を有するポリマー材料を含むことができる。一実施形態では、第1のポリマー材料層は、ポリアミド6,6を含む群から選択される高い融解温度を有するポリマー材料を含む。一実施形態では、第2のポリマー材料層は、約150℃のTを有するSBRなどのより低い融解温度のポリマーを含む。したがって、熱暴走中、より低い融解温度のポリマーラインはともに融解および溶和され、層内の多孔性を低減させ、したがってLiイオン輸送および関連する電気化学反応を遅らせる。
【0044】
図6は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法600の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック602で、アノード構造の表面またはカソード構造の表面上に、第1のポリマー材料を含むポリマーバックボーン構造が電界紡糸される。ブロック604で、たとえば電子噴霧処理を使用して、ポリマーバックボーン構造を覆うようにセラミック材料を堆積させ、一体型のポリマーセパレータ115を形成する。
【0045】
図7は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法700の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック702で、アノード構造またはカソード構造の表面上に、セラミック粒子でドープされたポリマー材料が同時に電界紡糸される。セラミック粒子は、電界紡糸処理前に、ポリマー溶液に組み込むことができる。
【0046】
セパレータ115がセラミック粒子を含む実施形態では、セラミック粒子は、カソード構造103a、103bまたはアノード構造102a、102bの表面上へ直接、セラミック粒子ポリマースラリーを電界紡糸、直接噴霧、または被覆することによって堆積させることができる。
【0047】
一実施形態では、セラミック粒子は、それだけに限定されるものではないが、ふるいがけ技法、静電噴霧技法、溶射または火炎溶射技法、プラズマ溶射技法、流動層被覆技法、スリット被覆技法、ロール被覆技法、およびこれらの組合せを含む粉末塗布技法を使用して、粉末として塗布される。これらの技法はすべて、当業者には知られている。一実施形態では、噴霧処理は半乾式噴霧処理であり、堆積させるときに各層の乾燥を容易にするために、基板は噴霧処理前に加熱される。
【0048】
図8は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法800の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック802で、アノード構造および/またはカソード構造上に、ポリマー含有液体混合物が堆積される。ポリマー含有液体混合物は、本明細書に記載のポリマー溶液またはポリマー融解物とすることができる。ブロック804で、ポリマー含有液体混合物を超音波またはメガソニックで攪拌し、ポリマー含有液体混合物内に定在波を生じさせる。ブロック806で、超音波で攪拌されたポリマー含有液体混合物に電圧を印加し、カソード構造および/またはアノード構造の表面上にポリマー材料を電界紡糸する。超音波攪拌を使用することで、ポリマー含有液体混合物から複数の噴射をもたらし、電界紡糸処理の堆積速度を増大させると考えられる。
【0049】
図9は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法900の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック902で、アノードの表面またはカソードの表面に対して平行な表面上へ、ポリマー含有液体混合物が堆積される。ブロック904で、ポリマー含有液体混合物を超音波またはメガソニックで攪拌し、ポリマー含有液体混合物内に定在波を生じさせる。ブロック906で、超音波で攪拌されたポリマー含有液体混合物に電圧を印加し、カソード構造の表面および/またはアノード構造の表面上へポリマー材料を電界紡糸する。
【0050】
図10は、本明細書に記載の実施形態による一体型の電界紡糸セパレータを形成する別の方法1000の一実施形態を要約する処理流れ図である。ブロック1002で、アノード構造またはカソード構造の表面に対して平行な表面上に、ポリマー含有液体混合物が堆積される。ブロック1004で、ポリマー含有液体混合物に電圧を印加し、アノード構造またはカソード構造の表面上へポリマー材料を電界紡糸する。
【0051】
図11は、本明細書に記載の実施形態による電極表面上へ一体型セパレータを電界紡糸する装置1100の一実施形態を概略的に示す。装置1100は、真空環境内で密閉することができる。シリンジ1104内のポリマー含有液体混合物1102が押されて、電圧供給1110に結合された金属針1106を通過する。電圧供給は、金属針1106の先端部へ約5kV〜120kVを供給するように構成することができる。電圧供給は、金属針1106の先端部へ約30kV〜120kVを供給するように構成することもできる。電圧供給は、使用されるポリマーのタイプ、所望の孔寸法、および生産速度などの要因に依存することができる。
【0052】
金属針1106の先端部から電極構造1116の接地表面1114の方へ、ポリマー噴射1112が放出される。噴射は、ファイバ内の小さい湾曲部で始まる静電反発力によって引き起こされる端止処理によって、最終的に電極構造1116の接地表面1114上に堆積するまで延ばされる。ファイバの直径は、ポリマー溶液内の溶剤濃度を調整し、金属針1106の先端部と電極構造の接地表面1114との間の間隙距離1120を調整することによって制御することができる。金属針1106の先端部と電極構造の接地表面1114との間の間隙距離1120は、約1mm〜約1,000mmとすることができる。ポリマーファイバの直径は、約80nm〜約300nmとすることができる。
【0053】
図12は、本明細書に記載の実施形態による電極構造1216の接地表面1214上へ一体型セパレータを電界紡糸する装置1200の別の実施形態を概略的に示す。図12に示す装置1200は、必要のない電界紡糸に使用される。装置1200は、真空環境内で密閉することができる。電極を介して電圧供給1210に結合された容器1204内に、ポリマー含有液体混合物1202を位置決めすることができる。電圧供給は、ポリマー含有液体混合物1202へ約5kV〜120kVを供給するように構成することができる。電圧供給は、ポリマー含有液体混合物1202へ約30kV〜120kVを供給するように構成することもできる。電圧供給は、使用されるポリマーのタイプ、所望の孔寸法、および生産速度などの要因に依存することができる。
【0054】
ポリマー含有液体混合物1202の先端部から電極構造1216の接地表面1214の方へ、ポリマー噴射1212a、1212bが放出される。噴射は、ファイバ内の小さい湾曲部で始まる静電反発力によって引き起こされる端止処理によって、最終的に電極構造1216の接地表面1214上に堆積するまで延ばされる。ファイバの直径は、ポリマー含有液体混合物1202内の溶剤濃度を調整し、ポリマー含有液体混合物1202と電極構造1216の接地表面1214との間の間隙距離1220を調整することによって制御することができる。ポリマー含有液体混合物1202と電極構造1216の表面1214の接地表面1214との間の間隙距離1220は、約1mm〜約1,000mmとすることができる。ポリマーファイバの直径は、約80nm〜約300nmとすることができる。
【0055】
実施例
以下の仮説に基づく非限定的な実施例は、本明細書に記載の実施形態についてさらに説明するために提供する。しかし、これらの実施例は、すべて包括しようとするものではなく、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定しようとするものでもない。
【実施例1】
【0056】
水溶液中で5重量%のポリアクリル酸(PAA)が使用される。この溶液に少量の塩化ナトリウムを添加して、溶液のイオン伝導性を増大させる。溶液は、内径0.4mmの平坦な毛細管先端部を有するシリンジ内へ装荷される。毛細管の先端部へ5〜30kVを供給して液体の噴射でテイラーコーンを形成するために、直流−直流変換器が使用され、コレクタとして接地金属の可動サンプル段が使用される。先端部とコレクタとの間の距離は、50mm〜200mmで変動する。これらのサンプルを、それぞれ数分間紡糸させ、液体の流量は、毛細管の先端部上に溶液の小さい液滴を維持するように手動で調整される。ユニバーサルシリアルバス(USB)のカメラ顕微鏡を使用して、紡糸処理中の先端部からの液体の放出を観察する。
【実施例2】
【0057】
10重量%のナイロン6(蟻酸)、5重量%のシリカの溶液が使用される。この溶液は、内径0.4mmの平坦な毛細管先端部を有するシリンジ内へ装荷される。毛細管の先端部へ5〜30kVを供給して液体の噴射でテイラーコーンを形成するために、直流−直流変換器が使用され、コレクタとして接地金属の可動サンプル段が使用される。先端部とコレクタとの間の距離は、50mm〜200mmで変動する。これらのサンプルを、それぞれ数分間紡糸させ、液体の流量は、毛細管の先端部上に溶液の小さい液滴を維持するように手動で調整される。ユニバーサルシリアルバス(USB)のカメラ顕微鏡を使用して、紡糸処理中の先端部からの液体の放出を観察する。
【0058】
図13Aおよび図13Bは、その結果得られる電界紡糸不織ポリマーファイバの走査電子顕微鏡(SEM)画像の概略図である。図13Aおよび図13Bに示すように、ランダムな向きのファイバの非常に均一の寸法分配を有する電界紡糸層が得られ、平均ファイバ寸法は約100〜200nmである。得られた電界紡糸層の多孔性は、90%より大きいと考えられる。図9Aおよび図9Bに示す電界紡糸ファイバの場合、この処理は、針先端部とコレクタ表面との間の20cmの間隔で、20kVの先端部電圧で実行された。ポリマー溶液は、水中で8重量%のPAAであり、伝導性を増大させるために0.65重量%のNaClが添加された。
【0059】
図14Aおよび図14Bは、本明細書に記載の実施形態によって堆積した電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。図14Aおよび図14Bに示す電界紡糸ファイバは、電界紡糸ファイバの直径をポリマー溶液濃度の調整ならびに噴射とコレクタ表面との間の距離の変動によって制御できることを実証する。図14Aおよび図14Bに示す電界紡糸ファイバの場合、この処理は、針先端部とコレクタ表面との間の20cm間隔で、20kVの先端部電圧で実行された。
【0060】
図15Aおよび図15Bは、本明細書に記載の実施形態によって堆積したセラミックが装荷された電界紡糸ファイバのSEM画像の概略図である。図15Aおよび図15Bは、ポリマー溶液にセラミック粉末を装荷して電界紡糸ポリマー層の機械強度を高めることによってセパレータ特性をさらに設計する1つの手法を実証する。図15Aおよび図15Bのその結果得られるマットは、電界紡糸ポリマーファイバによって接続される凝集したSiO領域を示す。
【0061】
図16は、本明細書に記載の実施形態による多孔質の電界紡糸セパレータを形成する垂直処理システム1600の一実施形態を概略的に示す。処理システム1600は、一列に構成された複数の処理チャンバ1612〜1636を備えることができ、各処理チャンバは、フレキシブル導電基板1610に対して処理ステップを実行するように構成されている。一実施形態では、処理チャンバ1612〜1636は、単独型のモジュラ処理チャンバであり、各モジュラ処理チャンバは、他のモジュラ処理チャンバから構造上分離される。したがって、単独型のモジュラ処理チャンバはそれぞれ、互いに影響を与えることなく別個に構成、再構成、交換、または維持することができる。処理チャンバ1612〜1636は、同時2面処理を実行してフレキシブル導電基板1610の両側を同時に処理するように構成することができる。
【0062】
処理システム1600は、フレキシブル導電基板を覆うように多孔質アノード構造の一部分または多孔質カソード構造の一部分を形成する微細構造形成チャンバ1612を備えることができる。一実施形態では、微細構造形成チャンバは、メッキチャンバ、刻印チャンバ、エンボスチャンバ、および電気化学エッチングチャンバから選択される。
【0063】
処理システム1600は、第1のリンスチャンバ1614をさらに備えることができ、第1のリンスチャンバ1614は、刻印処理後、垂直に向けた導電性のフレキシブル基板1610の部分から、リンス流体、たとえば脱イオン水で、あらゆる残留粒子および処理溶液を水洗いして除去するように構成されている。
【0064】
処理システム1600は、第2の微細構造形成チャンバ1616をさらに備えることができ、第2の微細構造形成チャンバ1616は、第1のリンスチャンバ1614の隣に配置され、フレキシブル導電基板を覆うように多孔質アノード構造の一部分または多孔質カソード構造の一部分を形成する。一実施形態では、第2の微細構造形成チャンバ1616は、フレキシブル導電基板1610の少なくとも一部分上でエッチング処理を実行してカソード構造またはアノード構造を形成するように構成されている。チャンバ1612およびチャンバ1616は、刻印チャンバ、湿式エッチングチャンバ、電気化学エッチングチャンバ、パターン穿孔チャンバ、およびこれらの組合せから選択されるチャンバを個々に備えることができる。
【0065】
処理システム1600は、第2のリンスチャンバ1618をさらに備えることができ、第2のリンスチャンバ1618は、湿式エッチング処理が実行された後、導電性のフレキシブル基板1610の部分から、リンス流体、たとえば脱イオン水で、あらゆる残留エッチング溶液を水洗いして除去するように構成されている。一実施形態では、第2のリンスチャンバ1618に隣接して、エアナイフを備えるチャンバ1620が位置決めされる。
【0066】
処理システム1600は、事前加熱チャンバ1622をさらに備えることができ、事前加熱チャンバ1622は、フレキシブル導電基板1610を乾燥処理に露出させて、堆積した多孔質構造から余分な湿気を除去するように構成されている。一実施形態では、事前加熱チャンバ1622は、空気乾燥処理、赤外線乾燥処理、電磁乾燥処理、またはマランゴニ乾燥処理などの乾燥処理を実行するように構成されたソースを含む。
【0067】
処理システム1600は、第1のスプレー被覆チャンバ1624をさらに備えることができ、第1のスプレー被覆チャンバ1624は、フレキシブル導電基板1610を覆うように形成された多孔質アノードまたはカソード構造の上および/または中へカソード活性またはアノード活性粒子などの電気活性粒子を堆積させるように構成されている。スプレー被覆チャンバとして論じたが、第1のスプレー被覆チャンバ1624は、前述の堆積処理のいずれかを実行するように構成することができる。
【0068】
処理システム1600は、後乾燥チャンバ1626をさらに備えることができ、後乾燥チャンバ1626は、第1のスプレー被覆チャンバ1624に隣接して配置され、フレキシブル導電基板1610を乾燥処理に露出させるように構成されている。一実施形態では、後乾燥チャンバ1626は、たとえば導電基板1610を加熱窒素に露出させる空気乾燥処理、赤外線乾燥処理、マランゴニ乾燥処理、またはアニール処理、たとえば急速熱アニール処理などの乾燥処理を実行するように構成されている。
【0069】
処理システム1600は、第2のスプレー被覆チャンバ1628をさらに備えることができ、第2のスプレー被覆チャンバ1628は、後乾燥チャンバ1626に隣接して位置決めされる。スプレー被覆チャンバとして論じたが、第2のスプレー被覆チャンバ1628は、前述の堆積処理のいずれかを実行するように構成することができる。一実施形態では、第2のスプレー被覆チャンバは、フレキシブル導電基板1610上に形成された多孔質の導電構造を覆うようにアノードまたはカソード活性粒子を堆積させるように構成されている。一実施形態では、第2のスプレー被覆チャンバ1628は、垂直に向けた導電基板1610を覆うように結合剤などの添加材料を堆積させるように構成されている。
【0070】
処理システム1600は、圧縮チャンバ1630をさらに備えることができ、圧縮チャンバ1630は、第2のスプレー被覆チャンバ1628に隣接して配置され、フレキシブル導電基板1610をカレンダ処理に露出させて、堆積した電気活性粒子を導電性の微細構造内へ圧縮するように構成されている。
【0071】
一実施形態では、処理システム1600は、第3の乾燥チャンバ1632をさらに備え、第3の乾燥チャンバ1632は、電界紡糸チャンバ1634に隣接して配置され、たとえばフレキシブル導電基板1610を加熱窒素に露出させる空気乾燥処理、赤外線乾燥処理、マランゴニ乾燥処理、またはアニール処理、たとえば急速熱アニール処理などの乾燥処理にフレキシブル導電基板1610を露出させるように構成されている。
【0072】
一実施形態では、処理システム1600は、電界紡糸チャンバ1634をさらに備え、電界紡糸チャンバ1634は、第3の乾燥チャンバ1632に隣接して位置決めされ、本明細書に記載の実施形態によるフレキシブル導電基板1610を覆うように多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータの少なくとも一部分を形成する。
【0073】
一実施形態では、処理システム1600は、第3のスプレー被覆チャンバ1636をさらに備え、第3のスプレー被覆チャンバ1636は、第3のスプレー被覆チャンバ1636に隣接して位置決めされたフレキシブル導電基板1610を覆うように多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータの少なくとも一部分を形成する。スプレー被覆チャンバとして論じたが、第3のスプレー被覆チャンバ1636は、前述の堆積処理のいずれかを実行するように構成することができる。
【0074】
特定の実施形態では、処理システム1600は、追加の処理チャンバをさらに備える。追加のモジュラ処理チャンバは、電気化学メッキチャンバ、無電解堆積チャンバ、化学気相堆積チャンバ、プラズマ化学気相堆積チャンバ、原子層堆積チャンバ、リンスチャンバ、アニールチャンバ、乾燥チャンバ、スプレー被覆チャンバ、追加のスプレーチャンバ、ポリマー堆積チャンバ、およびこれらの組合せを含む処理チャンバの群から選択される1つまたは複数の処理チャンバを含むことができる。インライン処理システム内には、追加のチャンバまたはより少ないチャンバを含むことができることも理解されたい。
【0075】
処理チャンバ1612〜1636は通常、送りロール1640および巻取りロール1642を通る各チャンバを通じて垂直に向けた導電基板1610の部分を合理化できるように、一列に沿って構成されている。一実施形態では、垂直に向けた基板1610が巻取りロール1642を離れるとき、基板1610をさらに処理して角柱状のアセンブリを形成する。
【0076】
垂直に向けた基板を処理するシステムとして論じたが、異なる向き、たとえば水平の向きを有する基板上でも同じ処理を実行できることも理解されたい。本明細書に記載の実施形態とともに使用できる水平処理システムの詳細は、本発明の譲受人に譲渡された、現在は米国特許出願第2010−0126849号として公開されている、2009年11月18日出願のLopatinらのAPPARATUS AND METHOD FOR FORMING 3D NANOSTRUCTURE ELECTRODE FOR ELECTROCHEMICAL BATTERY AND CAPACITORという名称の米国特許出願第12/620,788号に開示されている。同出願の図5A〜5C、図6A〜6E、図7A〜7C、および図8A〜8D、ならびに前述の図に対応する文章は、参照により本明細書に組み込まれている。特定の実施形態では、垂直に向けた基板は、垂直平面に対して傾斜させることができる。たとえば、特定の実施形態では、基板は、垂直平面から約1度〜約20度で傾斜させることができる。
【0077】
特定の本明細書に記載の実施形態は、その場で適用でき、Liイオン電池製造向けの一体型セパレータとして使用できる非常に多孔質のナノファイバ膜を形成する技法について実証した。この一体型セパレータ堆積技法により、現在の電池製造処理に対する著しいコストの低減および簡略化が可能になるはずである。
【0078】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のさらなる実施形態を考えることができ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
電極構造を有するリチウムイオン電池であって、
アノード電流コレクタ、および
前記アノード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたアノード構造
を備えるアノード積層体と、
カソード電流コレクタ、および
前記カソード電流コレクタの第1の表面を覆うように形成されたカソード構造
を備えるカソード積層体と、
前記アノード構造と前記カソード構造との間に位置決めされたナノファイババックボーン構造を備える多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータと
を備えるリチウムイオン電池。
(態様2)
前記ナノファイババックボーン構造が、前記ナノファイババックボーン構造のナノファイバ内に埋め込まれたセラミック粒子をさらに含む、態様1に記載のリチウムイオン電池。
(態様3)
前記セラミック粒子が、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、PB(MgNb2/3)O−PbTiO(PMN−PT)、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、およびこれらの組合せからなる群から選択される、態様2に記載のリチウムイオン電池。
(態様4)
前記ナノファイババックボーン構造が、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)から選択される第1のポリマー材料を含む、態様3に記載のリチウムイオン電池。
(態様5)
前記多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータが、前記ナノファイババックボーン構造を覆うように堆積した第2のポリマー材料をさらに含み、前記第2のポリマー材料が前記第1のポリマー材料とは異なる、態様4に記載のリチウムイオン電池。
(態様6)
前記カソード構造が、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)、二酸化マンガンリチウム(LiMnO)、二硫化チタン(TiS)、LiNixCo1−2xMnO、LiMn、LiFePO、LiFe1−xMgPO、LiMoPO、LiCoPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、LiFe1.5、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、LiNiPOF、Na(PO、LiFeSiO、LiMnSiO、LiVOSiO、LiNiO、およびこれらの組合せを含む群から選択されるカソード活性材料を含む多孔質構造である、態様1に記載のリチウムイオン電池。
(態様7)
前記ナノファイババックボーン構造の前記ナノファイバが、約100ナノメートル〜約200ナノメートルの直径を有し、前記ナノファイババックボーン構造が、同じ材料から形成される固体フィルムと比較すると、約40%〜約90%の多孔性を有する、態様3に記載のリチウムイオン電池。
(態様8)
前記第1のポリマー材料が、200℃を超える融解温度を有し、前記第2のポリマー材料が、140℃未満の融解温度を有し、したがって、熱暴走中に前記第2のポリマー材料がともに融解および溶和され、前記層内の多孔性を低減させ、ゆえにLiイオン輸送および関連する電気化学反応を遅らせる、態様5に記載のリチウムイオン電池。
(態様9)
電極構造を形成する方法であって、
第1の電極構造を提供することと、
前記第1の電極構造の表面上へ直接、ナノファイババックボーン構造を電界紡糸して、多孔質の電界紡糸ポリマーセパレータを形成することと
を含む方法。
(態様10)
前記ナノファイババックボーン構造が、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)から選択される第1のポリマー材料を含む、態様9に記載の方法。
(態様11)
前記ナノファイババックボーン構造を電界紡糸することが、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)から選択される前記第1のポリマー材料とは異なる第2のポリマー材料を電界紡糸することをさらに含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記ナノファイババックボーン構造を覆うように第2のポリマー材料を電子噴霧することをさらに含み、前記第2のポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびスチレン−ブタジエン(SBR)から選択される、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記ナノファイババックボーン構造が、前記ナノファイババックボーン構造のナノファイバ内に埋め込まれたセラミック粒子をさらに含む、態様11に記載の方法。
(態様14)
前記セラミック粒子が、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1−xLaZr1−yTi(PLZT、xおよびyは0〜1で独立している)、PB(MgNb2/3)O−PbTiO(PMN−PT)、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、およびこれらの組合せからなる群から選択される、態様13に記載の方法。
(態様15)
前記ナノファイババックボーン構造を電界紡糸することが、
前記第1の電極構造の表面に対して平行な表面上へ、前記セラミック粒子を含むポリマー含有液体混合物を堆積させることと、
前記ポリマー含有液体混合物に電圧を印加して、前記セラミック粒子が埋め込まれた前記ナノファイババックボーン構造を、前記第1の電極構造の前記表面上へ電界紡糸することとを含む、
態様13に記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16