特許第6227440号(P6227440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227440
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】凹部にコバルトを供給する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01L21/88 R
   H01L21/28 301R
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-32941(P2014-32941)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-159183(P2015-159183A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】島田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】古川 真司
(72)【発明者】
【氏名】波多野 達夫
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−524264(JP,A)
【文献】 特表2013−534370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0320505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/28
H01L 21/768
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の絶縁膜に形成された凹部にコバルトを供給する方法であって、
前記凹部を画成する面を含む前記絶縁膜の表面に沿ってコバルト窒化膜を形成する工程と、
前記コバルト窒化膜上にコバルト膜を形成する工程と、
前記コバルト膜を構成するコバルトを前記凹部の底に向けて流動させてコバルトの充填領域を形成するよう、前記コバルト膜を加熱する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記コバルト膜を形成する前記工程及び前記コバルト膜を加熱する前記工程が交互に繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コバルト膜を形成する前記工程と前記コバルト膜を加熱する前記工程が、同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コバルト膜を加熱する前記工程の後、前記被処理体を還元性ガス雰囲気中で加熱する工程を更に含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、凹部にコバルトを供給する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、絶縁膜に形成された凹部に金属材料を埋め込むことがある。例えば、コンタクトホール或いはトレンチに金属材料を埋め込む処理を行うことにより、配線を形成することがある。このような金属材料の埋込め込みのための処理の一例としてリフロー技術が知られている。
【0003】
リフロー技術では、凹部を有する絶縁膜の表面上に金属材料の膜が形成される。次いで、形成された金属材料の膜を有する被処理体が加熱される。このように流動した金属材料によって、凹部が充填される。
【0004】
このようなリフロー技術は、例えば、特開2013−171940号公報に記載されている。この文献に記載されたリフロー技術では、絶縁膜上にバリア層が形成され、銅を含有するシード層が当該バリア層上に形成され、当該シード層上に固定層が形成される。固定層は、Ta、Ti、W、Ni、Ru、Mnといった材料、これら材料の酸化物、又は、これら材料の窒化物から構成されている。そして、被処理体が加熱されることにより、シード層及び固定層が流動し、流動した材料により凹部が充填される。この技術では、固定層を利用することにより、凹部にボイドといった空洞が発生することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−171940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、絶縁膜に形成された凹部に埋め込まれる材料として、コバルトに対する要求がある。しかしながら、コバルト膜にリフロー技術を適用すると、コバルトが凝集し、凹部に向けてコバルトが流動しないという現象が生じ得る。
【0007】
したがって、空洞の発生を抑制して、絶縁膜に形成された凹部にコバルトを供給することが必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面においては、被処理体の絶縁膜に形成された凹部にコバルトを供給する方法が提供される。この方法は、(a)凹部を画成する面を含む絶縁膜の表面に沿ってコバルト窒化膜を形成する工程(以下、「工程(a)」という)と、(b)コバルト窒化膜上にコバルト膜を形成する工程(以下、「工程(b)」という)と、(c)コバルト膜を加熱する工程(以下、「工程(c)」という)と、を含む。
【0009】
上記方法によれば、コバルト窒化膜が絶縁膜とコバルト膜との間に形成されているので、工程(c)によりコバルト膜を加熱しても、コバルトの凝集を抑制することができる。したがって、工程(c)により、空洞の発生を抑制して、凹部にコバルトを供給することが可能となる。
【0010】
一形態においては、工程(b)及び工程(c)が交互に繰り返されてもよい。この形態では、工程(b)及び工程(c)の繰り返しにより、コバルトを凹部に順次供給することができる。したがって、サイズの大きな凹部をコバルトで充填することが可能となる。
【0011】
一形態においては、工程(b)及び工程(c)が同時に行われてもよい。この形態によれば、コバルト膜を成膜しつつ当該コバルト膜が加熱される。これにより、凹部にコバルトを供給するために必要となる時間が短縮され得る。
【0012】
一形態においては、工程(c)の後、被処理体を還元性ガス雰囲気中で加熱してもよい。この形態によれば、コバルト窒化膜に由来する窒素を除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、空洞の発生を抑制して、絶縁膜に形成された凹部にコバルトを供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】凹部にコバルトを供給する方法の一実施形態を示す流れ図である。
図2】一実施形態に係る処理システムを示す図である。
図3】一実施形態に係る成膜装置を示す図である。
図4】一実施形態に係る加熱処理装置を示す図である。
図5】方法MTの各工程後の被処理体の状態を示す図である。
図6】方法MTの各工程後の被処理体の状態を示す図である。
図7】方法MTの原理を説明するための概念図である。
図8】別の実施形態に係る方法の実施に用いることが可能な成膜装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0016】
図1は、凹部にコバルトを供給する方法の一実施形態を示す流れ図である。図1に示す方法MTは、絶縁膜に形成された凹部にコバルトを供給する方法である。この方法MTでは、工程ST1により、凹部を画成する面を含む絶縁膜の表面上に窒化コバルト膜が形成される。次いで、工程ST2により、当該窒化コバルト膜上にコバルト膜が形成される。また、工程ST2の後に、或いは工程ST2と同時に、工程ST3が実行されることにより、コバルト膜が加熱される。これによる、凹部にコバルトが供給される。
【0017】
以下、方法MTに関する詳細な説明の前に、方法MTの実施に用いることが可能な処理システムについて説明する。図2は、一実施形態に係る処理システムを示す図である。
図2に示す処理システム100は、工程ST2用のプロセスモジュールと、工程ST3用のプロセスモジュールを備える処理システムである。この処理システム100は、台102a〜102d、収容容器104a〜104d、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1、ロードロックチャンバLL2、プロセスモジュールPM1、プロセスモジュールPM2、及び、トランスファーチャンバ110を備えている。
【0018】
台102a〜102dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。これら台102a〜102dの上には、収容容器104a〜104dがそれぞれ設けられている。収容容器104a〜104d内には、被処理体(以下、「ウエハ」という)Wが収容される。
【0019】
ローダモジュールLM内には、搬送ロボットRb1が設けられている。搬送ロボットRb1は、収容容器104a〜104dの何れかに収容されているウエハWを取り出して、当該ウエハWを、ロードロックチャンバLL1又はロードロックチャンバLL2に搬送する。
【0020】
ロードロックチャンバLL1及びロードロックチャンバLL2は、ローダモジュールLMの別の一縁に沿って設けられている。ロードロックチャンバLL1及びロードロックチャンバLL2は、予備減圧室を構成している。ロードロックチャンバLL1及びロードロックチャンバLL2は、トランスファーチャンバ110にゲートバルブを介してそれぞれ接続されている。
【0021】
トランスファーチャンバ110は、減圧可能なチャンバであり、当該チャンバ内には搬送ロボットRb2が設けられている。トランスファーチャンバ110には、プロセスモジュールPM1及びプロセスモジュールPM2がゲートバルブを介してそれぞれ接続されている。搬送ロボットRb2は、ロードロックチャンバLL1又はロードロックチャンバLL2からウエハWを取り出し、取り出したウエハWを、プロセスモジュールPM1又はプロセスモジュールPM2に搬送する。また、搬送ロボットRb2は、プロセスモジュールPM1とプロセスモジュールPM2の間で、ウエハWを搬送する。
【0022】
プロセスモジュールPM1は、工程ST1及び工程ST2に用いられるプロセスモジュールであり、スパッタリングにより成膜を行う成膜装置である。また、プロセスモジュールPM2は、加熱処理装置である。
【0023】
図3は、一実施形態に係る成膜装置を示す図である。図3に示す成膜装置10は、処理システム100のプロセスモジュールPM1として利用可能な成膜装置である。成膜装置10は、処理容器12を備えている。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されており、接地電位に接続されている。処理容器12は、その内部に空間Sを提供している。この処理容器12の底部には、空間Sを減圧するための排気装置14が接続されている。排気装置14は、例えば、クライオポンプ、及びドライポンプを含み得る。また、処理容器12の側壁には、ウエハWの搬送用の開口が形成されており、当該側壁に沿って当該開口を開閉するためのゲートバルブGVが設けられている。
【0024】
処理容器12内には、ステージ16が設けられている。ステージ16は、ベース部16a及び静電チャック16bを含み得る。ベース部16aは、例えば、アルミニウムから構成されており、略円盤形状を有している。
【0025】
ベース部16a上には、静電チャック16bが設けられている。静電チャック16bは、誘電体膜と、当該誘電体膜の内層として設けられた電極と、を有する。静電チャック16bの電極には、直流電源SDCが接続されている。静電チャック16b上に載置されたウエハWは、静電チャック16bが発生する静電気力によって、当該静電チャック16bに吸着される。
【0026】
ステージ16は、ステージ駆動機構18に接続されている。ステージ駆動機構18は、支軸18a及び駆動装置18bを含んでいる。支軸18aは、略柱状の部材である。支軸18aの中心軸線は、鉛直方向に沿って延びる軸線AX1に略一致している。この軸線AX1は、ステージ16の中心を鉛直方向に通る軸線である。支軸18aは、ステージ16の直下から処理容器12の底部を通って処理容器12の外部まで延在している。この支軸18aと処理容器12の底部との間には、封止部材SL1が設けられている。封止部材SL1は、支軸18aが回転及び上下動可能であるように、処理容器12の底部と支軸18aとの間の空間を封止する。このような封止部材SL1は、例えば、磁性流体シールであり得る。
【0027】
支軸18aの上端には、ステージ16が結合されており、当該支軸18aの下端には駆動装置18bが接続されている。駆動装置18bは、支軸18aを回転及び上下動させるための動力を発生する。この動力によって支軸18aが回転することに伴ってステージ16は軸線AX1中心に回転し、支軸18aが上下動することに伴ってステージ16は上下動する。
【0028】
ステージ16の上方には、一以上のターゲット(カソードターゲット)20が設けられている。ターゲット20は、コバルト製である。一例においては、ターゲット20の個数は、四つである。これらターゲット20は、軸線AX1を中心とする円弧に沿って配列されている。なお、ターゲット20の個数は、四つに限定されるものではなく、一つ以上の任意の個数であり得る。
【0029】
ターゲット20は、金属製のホルダ22aによって保持されている。ホルダ22aは、絶縁部材22bを介して処理容器12の天部に支持されている。ターゲット20には、ホルダ22aを介して電源24が接続されている。電源24は、負の直流電圧を、ターゲット20に印加する。なお、電源24は、複数のターゲット20に選択的に電圧を印加する単一の電源であってもよい。或いは、電源24は、複数のターゲット20にそれぞれ接続された複数の電源であってもよい。
【0030】
成膜装置10では、一以上のマグネット(カソードマグネット)26が、ホルダ22aを介して対応のターゲット20と対向するよう、処理容器12の外部に設けられている。
【0031】
また、ターゲット20とステージ16との間には、シャッターSHが設けられている。シャッターSHは、ターゲット20の表面に対峙するように延在している。一実施形態では、シャッターSHは、軸線AX1を中心軸線とする円錐面に沿う形状を有している。
【0032】
シャッターSHには、開口APが形成されている。また、シャッターSHの中央部分には、回転軸RSが結合している。この回転軸RSは略柱状の部材であり、その中心軸線は、軸線AX1に略一致している。この回転軸RSの一端は、処理容器12の内部においてシャッターSHの中央部分に結合している。また、回転軸RSは、処理容器12の内部から処理容器12の天部を通過して処理容器12の外部まで延在している。処理容器12の外部において、回転軸RSの他端は、駆動装置RDに接続している。駆動装置RDは、回転軸RSを回転させる動力を発生する。この動力によって回転軸RSが軸線AX1中心に回転することに伴って、シャッターSHは軸線AX1中心に回転することができる。このシャッターSHの回転により、開口APの位置とターゲット20との相対的な位置が変化する。これにより、ターゲット20は、シャッターSHによってステージ16に対して遮蔽されるか、或いは、シャッターSHの開口APを介してステージ16に対して露出される。
【0033】
また、成膜装置10は、処理容器12内にガスを供給するガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、一実施形態においては、ガスソース30a、マスフローコントローラといった流量制御器30b、及び、ガス導入部30cを備えている。ガスソース30aは、処理容器12内において励起されるガスのソースであり、例えば、Arガスといった希ガスのソースである。ガスソース30aは、流量制御器30bを介してガス導入部30cに接続している。ガス導入部30cは、ガスソース30aからのガスを処理容器12内に導入するガスラインである。ガス導入部30cは、一実施形態では、軸線AX1に沿って延びている。
【0034】
このガス供給部30から処理容器12内にガスが供給され、電源24によってターゲット20に電圧が印加されると、処理容器12内に供給されたガスが励起される。また、マグネット26により対応のターゲット20の近傍に磁界が発生する。これにより、ターゲット20の近傍にプラズマが集中する。そして、ターゲット20にプラズマ中の正イオンが衝突することで、当該露出ターゲットからコバルトが放出される。これにより、コバルトがウエハWに堆積する。その結果、ウエハW上にコバルト膜が形成される。
【0035】
また、成膜装置10は、処理容器12内にガスを供給するガス供給部31を備えている。ガス供給部31は、一実施形態においては、ガスソース31a、マスフローコントローラといった流量制御器31b、及び、ガス導入部31cを備えている。ガスソース31aは、窒素ガス(Nガス)のソースである。ガスソース31aは、流量制御器31bを介してガス導入部31cに接続している。ガス導入部31cは、ガスソース31aからのガスを処理容器12内に導入するガスラインである。ガス導入部31cは、一実施形態では、処理容器12の側壁に設けられている。
【0036】
ガス供給部30からのガス及びガス供給部31からのガスが処理容器12内に供給され、電源24によってターゲット20に電圧が印加されると、ターゲット20からコバルトが放出され、更に、当該コバルトが窒化する。これにより、ウエハW上にコバルト窒化膜が形成される。
【0037】
次いで、図4を参照する。図4は、一実施形態に係る加熱処理装置を示す図である。図4に示す加熱処理装置50は、処理システム100のプロセスモジュールPM2として利用可能な加熱処理装置である。加熱処理装置50は、処理容器52を備えている。処理容器52は、例えば、アルミニウムから構成されている。処理容器52の底部には、当該処理容器52の内部空間を減圧するための排気装置54が、接続されている。排気装置54は、例えば、クライオポンプ及びドライポンプを含み得る。また、処理容器52の側壁には、ウエハWの搬送用の開口が形成されており、当該側壁に沿って当該開口を開閉するためのゲートバルブGV5が設けられている。
【0038】
処理容器52内には、ステージ56が設けられている。このステージ56上には、ウエハWが載置される。ステージ56の上方には、加熱源としてのランプユニット58が設けられている。ランプユニット58には、当該ランプユニット58に電力を供給する電源58aが接続されている。
【0039】
また、加熱処理装置50は、ガス供給部60及びガス供給部62を更に備えている。ガス供給部60は、不活性ガスのガスソース60a、及び流量制御器60bを有している。不活性ガスは、例えば、Arガスといった希ガスである。ガス供給部62は、還元性ガスのガスソース62a、及び流量制御器62bを有している。還元性ガスは、処理対象の膜から窒素を除去するためのガスであり、水素を含むガスである。例えば、還元性ガスは、Hガスである。ガス供給部60及びガス供給部62は、例えば、処理容器52の側壁に形成されたガスラインを介して、処理容器52の内部空間に接続している。
【0040】
加熱処理装置50では、ランプユニット58を動作させることにより、ウエハWを加熱することができる。ウエハWの加熱時には、ガス供給部60から処理容器52内に不活性ガスが供給されてもよい。また、加熱処理装置50では、ガス供給部62から処理容器52内に還元性ガスを供給し、ランプユニット58を動作させることにより、ウエハWに含まれる窒素を除去することができる。
【0041】
再び図2を参照する。図2に示すように、処理システム100は、更に、制御部Cntを備えている。制御部Cntは、処理システム100の各部、プロセスモジュールPM1(例えば、成膜装置10)の各部、及び、プロセスモジュールPM2(例えば、加熱処理装置50)の各部を制御する。制御部Cntは、例えば、コンピュータ装置であり、方法MTを実施するために必要なレシピを記憶する記憶装置、及び、当該レシピに従って、処理システム100の各部を制御するプロセッサを有し得る。
【0042】
以下、図1を参照して、方法MTに関してより詳細に説明する。また、以下の説明においては、図4及び図5を参照する。図4及び図5は、方法MTの各工程後の被処理体の状態を示す図である。
【0043】
図1に示すように、方法MTにおいては、まず、工程ST1が実行される。工程ST1では、図5の(a)に示すウエハW上にコバルト窒化膜が形成される。図5の(a)に示すように、ウエハWは、下地層UL及び絶縁膜ILを有している。絶縁膜ILは、例えば、シリコン酸化膜、又は、所謂Low−k材料から構成されており、下地層UL上に設けられている。この絶縁膜ILには、トレンチ又はホールといった凹部RPが形成されている。工程ST1では、このウエハW上にコバルト窒化膜CNLが形成されることにより、図5の(b)に示すウエハWが作成される。具体的には、コバルト窒化膜CNLは、凹部RPを画成する絶縁膜ILの側壁面SW、絶縁膜ILの上面TS、及び、凹部RPを画成する下地層ULの表面に形成される。
【0044】
図2に示す処理システム100を用いて方法MTの工程ST1を実施する場合には、ウエハWは、プロセスモジュールPM1、即ち、成膜装置10の処理容器12内に搬送され、ステージ16上に載置される。そして、処理容器12内の空間Sの圧力が所定の圧力に設定され、ガス供給部30から希ガスが供給され、ガス供給部31から窒素ガスが供給され、ステージ16が回転され、電源24からターゲット20に電圧が印加される。例えば、電源24からターゲット20に印加される直流電圧は1.5kWの電力を有し、希ガス(Arガス)の流量及び窒素ガス(Nガス)の流量はそれぞれ100sccmの流量、3sccm〜20sccmの範囲内の流量に設定される。また、処理容器12内の空間Sの圧力は、数mTorr程度の圧力に設定される。また、ターゲット20とステージ16との間の鉛直方向における距離は、例えば、280mmに設定される。これにより、ターゲット20から放出されるコバルトが窒化し、窒化コバルトがウエハW上に堆積する。その結果、コバルト窒化膜CNLが形成される。なお、コバルト窒化膜CNLは、凹部RPを閉塞しないように形成される。コバルト窒化膜CNLは、凹部RPの大きさに依存するが、例えば、20nmの膜厚を有するように形成される。
【0045】
一実施形態においては、工程ST1の実行後、後述する工程ST2においてコバルト膜を形成する前に、ウエハWが加熱されてもよい。この加熱を図2に示す処理システム100を用いて行う場合には、図5の(b)に示すウエハWが、プロセスモジュールPM2、即ち、加熱処理装置50に搬送され、当該加熱処理装置50によって加熱される。例えば、ウエハWは、5×10−7Torrの圧力環境下で300℃〜400℃の温度で60秒間加熱される。このように、工程ST1と工程ST2との間において、ウエハWを加熱することにより、後述する工程において形成されるコバルト膜の流動性を高めることが可能となる。
【0046】
次いで、方法MTでは、工程ST2が実行される。工程ST2では、図6の(a)に示すように、コバルト窒化膜CNL上にコバルト膜CLが形成される。
【0047】
図2に示す処理システム100を用いて方法MTの工程ST2を実施する場合には、ウエハWは、プロセスモジュールPM1、即ち、成膜装置10の処理容器12内に搬送され、ステージ16上に載置される。そして、処理容器12内の空間Sの圧力が所定の圧力に設定され、ガス供給部30から希ガスが供給され、ステージ16が回転され、電源24からターゲット20に電圧が印加される。例えば、電源24からターゲット20に印加される直流電圧は1.5kWの電力を有し、希ガス(Arガス)の流量は100sccmの流量に設定される。また、処理容器12内の空間Sの圧力は、数mTorr程度の圧力、例えば、0.7mTorrに設定される。また、ターゲット20とステージ16との間の鉛直方向における距離は、例えば、280mmに設定される。これにより、ターゲット20から放出されるコバルトが、コバルト窒化膜CNL上に堆積することする。その結果、コバルト膜CLが形成される。なお、コバルト膜CLは、凹部RPを閉塞しないように形成される。コバルト膜CLは、凹部RPの大きさに依存するが、例えば10nmの膜厚を有するように形成される。
【0048】
次いで、方法MTでは、工程ST3が実行される。工程ST3では、ウエハWが加熱される。これにより、図6の(b)に示すように、コバルト膜CLを構成するコバルトが、凹部RPの底に向けて流動し、コバルト製の充填領域FRを形成する。この工程ST3により、凹部RPはその底部からコバルトによって充填される。
【0049】
図2に示す処理システム100を用いて方法MTの工程ST3を実施する場合には、図6の(a)に示すウエハWは、プロセスモジュールPM2、即ち、加熱処理装置50内に搬送され、当該加熱処理装置50によって加熱される。例えば、ウエハWは、5×10−7Torrの圧力環境下で300℃〜400℃の温度で60秒間加熱される。
【0050】
一実施形態においては、上述した工程ST2及び工程ST3が交互に複数回実行される。即ち、工程ST2及び工程ST3が交互に繰り返される。この繰り返しにより、凹部RPがコバルトによって充填される。
【0051】
方法MTでは、次いで、工程ST4において、停止条件が判定される。この停止条件は、工程ST2及び工程ST3の繰り返し回数が所定回数に達したか否かという条件であり得る。工程ST2及び工程ST3の繰り返し回数が所定回数に達していない場合には、再び工程ST2及び工程ST3が実行される。一方、工程ST2及び工程ST3の繰り返し回数が所定回数に達している場合には、工程ST2及び工程ST3の繰り返しが終了する。
【0052】
一実施形態においては、方法MTでは、工程ST5が更に実行され得る。工程ST5では、ウエハWに還元処理が施される。これにより、ウエハWのコバルト窒化膜CNLに由来する窒素が除去される。
【0053】
図2に示す処理システム100を用いて方法MTの工程ST5を実施する場合には、ウエハWは、プロセスモジュールPM2、即ち、加熱処理装置50内に搬送され、当該加熱処理装置50によって加熱される。ウエハWは、還元性ガス、例えば、Hガスの雰囲気中で、300℃〜400℃の温度で60秒間加熱される。
【0054】
以上説明した方法MTによれば、コバルト窒化膜CNLを絶縁膜ILとコバルト膜CLとの間に介在させているので、工程ST3の加熱によってコバルトが凝集することが抑制される。図7は、方法MTの原理を説明するための概念図である。図7の(b)に示すように、絶縁膜IL上に直接、コバルト膜CLが形成される場合には、絶縁膜ILに対するコバルトの接触角θは、相当に大きな角度になる。この原因は、絶縁膜IL上に直接、コバルト膜を形成する場合には、結晶成長過程において、コバルト同士の金属間結合が形成され、コバルトが最密面成長する結果、コバルトの絶縁膜ILに対する濡れ性が低下することによるものと推測される。これにより、絶縁膜IL上に直接、コバルト膜CLが形成されている場合には、コバルトが凝集し、凹部に空洞が発生することとなる。
【0055】
一方、図7の(a)に示すように、コバルト窒化膜CNL上にコバルト膜CLが形成される場合には、コバルト窒化膜CNLに対するコバルトの接触角θは、比較的小さな角度になる。この原因は、コバルト窒化膜CNLでは窒素に一つの自由電子が余る状態となり、結晶成長過程において、当該窒素とコバルトが結合して、コバルトが細密面成長しないために、コバルト窒化膜CNLに対するコバルトの濡れ性が高くなることによるものと推測される。したがって、コバルト窒化膜CNLを絶縁膜ILとコバルト膜CLとの間に介在させる方法MTでは、コバルトの流動性が高められ、結果的に、コバルトの凝集が抑制される。故に、方法MTによれば、空洞の発生を抑制して、凹部RPにコバルトを供給し、当該凹部RPをコバルトによって充填することが可能となる。
【0056】
以下、別の実施形態について説明する。上述した方法MTでは、工程ST2の実行後に工程ST3が実行されていたが、別の実施形態に係る方法では、工程ST2と工程ST3とが同時に実行されてもよい。即ち、成膜装置内においてウエハW上にコバルト膜CLを形成しつつ、当該ウエハWを加熱してもよい。この別の実施形態に係る方法によれば、工程ST2と工程ST3との間でウエハWを搬送する時間が省略される。即ち、上述した方法MTに比して、凹部RPにコバルトを供給するために必要となる時間が短縮される。したがって、スループットが向上される。
【0057】
図8は、上記の別の実施形態に係る方法の実施に用いることが可能な成膜装置の一例を示す図である。図8に示す成膜装置10Aは、ステージ16内にヒータHTを備える点において、成膜装置10とは異なっている。このヒータHTは、ヒータ電源HPに接続されている。ヒータHTは、例えば、電熱線によって構成され得る。
【0058】
この成膜装置10Aでは、工程ST1の実行が可能である。また、成膜装置10Aでは、工程ST2及び工程ST3の同時の実行が可能である。即ち、成膜装置10Aでは、ヒータHTによってウエハWを加熱しつつ、コバルト膜CLを形成することが可能である。即ち、成膜装置10Aによれば、コバルト膜CLの形成と加熱によるコバルトの凹部RPへの供給とが同時に行われ得る。
【0059】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した成膜装置10AのヒータHTは、誘導加熱方式のヒータであってもよい。また、成膜装置10Aに、還元性ガスのガス供給部を接続すれば、上述した工程ST1、工程ST2、工程ST3、及び工程ST5を含む方法の実施が、単一の成膜装置10Aを用いて実現可能である。
【符号の説明】
【0060】
100…処理システム、PM1,PM2…プロセスモジュール、10…成膜装置、12…処理容器、14…排気装置、16…ステージ、18…ステージ駆動機構、20…ターゲット、24…電源、26…マグネット、30…ガス供給部(希ガス)、31…ガス供給部(窒素ガス)、50…加熱処理装置、52…処理容器、54…排気装置、56…ステージ、58…ランプユニット、Cnt…制御部、W…ウエハ、IL…絶縁膜、RP…凹部、CNL…コバルト窒化膜、CL…コバルト膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8