【実施例1】
【0027】
本発明に係る第一の実施の形態について説明する。ここで、
図1は本実施例に係る分析装置100の概略の構成図の一例を示したものである。まず、これを用いて、分析装置100の基本動作を説明する。
【0028】
図1に示した分析装置100は、概略、検体収納部機構1、検体用分注ノズル27を備えた検体供給用分注機構2、反応ディスク3、試薬ディスク機構5、試薬用分注ノズル28を備えた試薬供給用分注機構7、及びインターフェース23を介して全体を制御するマイクロコンピュータ19を備えて構成されている。
【0029】
検体収納部機構1には、一つ以上の検体容器25が配置されている。ここでは、ディスク状の機構部に搭載された検体収納部機構である検体ディスク機構の例で説明するが、検体収納部機構の他の形態としては分析装置で一般的に用いられている検体ラック又は検体ホルダー状の形態であってもよい。また、ここで言う検体とは、反応ディスク3内の反応セル4で反応させるために使用する被検査液体のことを指し、血清や尿といった採集検体原液でもよく、またそれを希釈や前処理等の加工処理をした溶液であってもよい。
【0030】
検体容器25内に収容された検体は、検体供給用分注機構2の検体用分注ノズル27によって吸引され、反応ディスク3内の所定の反応セル4に吐出される。試薬ディスク機構5は、多数の試薬容器6を備えている。また、試薬ディスク機構5には、試薬供給用分注機構7が配置されており、試薬は、この試薬供給用分注機構7の試薬用分注ノズル28によって、吸引され反応ディスク3内の所定の反応セル4に注入される。これら検体用分注ノズル27、試薬用分注ノズル28の材料には、加工性の良さ、耐腐食性などの観点からステンレススチールなどが広く用いられている。
【0031】
図1に示した分析装置100では、試薬ディスク機構5及びそれに付随する機構を2式備えている。
【0032】
反応ディスク3には、分光光度計10と集光フィルタつき光源26が装備されており、分光光度計10と集光フィルタつき光源26の間に、測定対象を収容する反応ディスク3が配置される。この反応ディスク3の外周上には、例えば、120個の反応セル4が設置されている。また、反応ディスク3の全体は、恒温槽9によって、所定の温度に保持されている。反応セル4に供給された検体と試薬は、撹拌機構8により撹拌される。
【0033】
11は反応セル洗浄機構であり、洗浄剤容器13から供給された洗浄剤を、反応ディスク3の外周上に配置された反応セル4に供給して反応セル4の内部を洗浄する。洗浄後の反応セル4内の洗浄剤は、吸引ノズル12で吸引されて反応セル4から排出される。
【0034】
インターフェース23には、マイクロコンピュータ19、Log変換器及びA/D変換器18、試薬用ピペッタ17、洗浄水ポンプ16、検体用ピペッタ15、プリンタ20、CRT21、記憶装置としてのフロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク22、物理洗浄を行う検体の検体番号を記憶する記憶装置101、操作パネル24が接続されている。記憶装置101は、マイクロコンピュータ19のメモリ内にあっても良い。また分析装置100の各部は、インターフェース23を介してマイクロコンピュータ19により制御される。
【0035】
検体容器25に入れられ、検体収納部機構1の所定の位置にセットされた測定対象検体は、マイクロコンピュータ19及び記憶装置101のメモリに記憶された分析依頼情報に従って、検体ピペッタ15及び検体供給用分注機構2の検体用分注ノズル27によって、反応セル4に所定量分注される。測定対象検体を反応セル4に所定量分注した検体用分注ノズル27は洗浄され、次の検体の分注に使用される。この際、洗浄は次に分注される検体への影響や化学物質使用量の低減といった観点から純水による流水洗浄が一般的に用いられている。こうした洗浄は洗浄槽30で行われる。
【0036】
上述の構成において、操作者は、操作パネル24を用いて分析依頼情報の入力を行う。操作者が入力した分析依頼情報は、上述の通り、マイクロコンピュータ19内のメモリと物理洗浄を行う検体の検体番号を記憶する記憶装置101に記憶される。
【0037】
図2に、物理洗浄を行う検体番号の選択を行う操作パネル24上での表示画面の例を示す。201は装置の状態を表すステータスライン、202はJOBメニューボタン、203はサブメニューシート、204は操作エリア、205はグローバルメニューエリアである。
【0038】
操作エリア204内では、操作者はある検体に対しての分析に関する情報を入力する事が出来る。入力される情報は、例えば、緊急検体/一般検体/コントロール検体といった検体の種類や、患者ID、血清や尿といった検体の種類、サンプルカップの種類、検体量などである。この操作エリア204内に、検体に対して物理洗浄の有無を選択するボタン206を設ける。これによりこの指定された検体を検体用分注ノズル27を用いて分注した後に、検体用分注ノズル27の物理洗浄を行う。
【0039】
物理洗浄の具体的な実施法は、以下の通りである。説明は
図1に基づいて行う。まず、入力情報に基づき、物理洗浄を行う場合には、インターフェース23を通じて、検体用分注ノズル駆動系102を駆動する。これにより、検体用分注ノズル27は、物理洗浄機構付き洗浄槽103に位置へ回転移動する。この物理洗浄機構付き洗浄槽103には、洗浄液リザーバ104から流路105を通じて、洗浄液がためられている。この物理洗浄機構付き洗浄槽103に検体用分注ノズル27が下降する。その後、物理洗浄駆動系106が動作し、検体用分注ノズル27の物理洗浄を行う。
【0040】
所定の洗浄時間が経過後に検体用分注ノズル27の物理洗浄を停止する。ここで、物理洗浄の時間は操作者が決定しても良いし、もしくは、システム内で予め決められた時間であっても良い。この物理洗浄終了後に、検体用分注ノズル駆動系102で検体用分注ノズル27を駆動して洗浄機構30の位置に移動させ、純水洗浄を行う。
【0041】
このように、物理洗浄機構付き洗浄槽103で物理洗浄後に洗浄機構30において純水による検体用分注ノズル27の洗浄を行うことで、物理洗浄の洗浄液中の成分が検体用分注ノズル27の外面に残存することを防ぐことが出来る。また、十分な洗浄時間が取れる場合には、この物理洗浄と純水洗浄を繰り返すことも可能である。
また、物理洗浄機構付き洗浄槽に純水洗浄の機能を持たせることも可能である。
【0042】
物理洗浄機構付き洗浄槽103で行う物理洗浄としては、超音波洗浄、電解洗浄、高圧水洗浄、マイクロバブル洗浄、拭取り洗浄などが有る。本実施例においては、超音波洗浄を行う場合について説明する。
【0043】
一方、検体用分注ノズル27に対して物理洗浄を行わない場合には、検体用分注ノズル27を物理洗浄機構付き洗浄槽103の洗浄液中に浸漬させた状態で物理洗浄駆動系106を動作させずに所定の時間放置する。所定の時間経過後に検体用分注ノズル27を物理洗浄機構付き洗浄槽103から取出し、検体用分注ノズル駆動系102で検体用分注ノズル27を駆動して洗浄機構30の位置に移動させ、純水洗浄を行う。
【0044】
図3Aに、物理洗浄法として超音波洗浄を用いた場合の物理洗浄機構付き洗浄槽103の、より詳細な構成の例を示す。この物理洗浄機構付き洗浄槽103では、洗浄槽306に物理洗浄の手段として超音波振動子301が取り付けてある。洗浄槽306の超音波振動子301を取り付ける面3061はステンレスなどの金属で作られることが望ましい。洗浄槽306のその他の面については、ステンレスなどの金属で作られる必要は必ずしもなく、樹脂などの有機分子により成っていても良い。
【0045】
超音波振動子301は、超音波振動子駆動系302により駆動する。物理洗浄を行う際には、洗浄液供給機構303から流路304を通じて、洗浄液305が洗浄槽306の内部へ供給される。洗浄液305の供給後、検体供給用分注機構2の先端部付近に取り付けられた検体用分注ノズル27は、検体用分注ノズル駆動系102の動作により、洗浄槽306へ下降する。この際、検体用分注ノズル27の外面のうち、検体と接触する範囲、即ち、検体容器25での検体へ浸漬される部分、もしくは反応セル4の内部に検体吐出時に吐出検体と検体用分注ノズル27が接触する部分のいずれか広い方よりもさらに広い領域をカバーするように洗浄液に検体用分注ノズル27の外面を洗浄槽306内に供給された洗浄液305に浸漬させる。次に所定の時間が経過後、超音波振動子駆動系302で超音波振動子301を駆動して、洗浄槽306内の洗浄液305の中において超音波洗浄を開始する。
【0046】
洗浄槽306内で超音波洗浄を行った検体用分注ノズル27は、
図3Bに示すように、検体用分注ノズル駆動系102で駆動されて洗浄機構30の洗浄液収納槽310の上方へ移動する。洗浄液収納槽310の上方に移動した検体用分注ノズル27に対して洗浄機構30の純水供給ノズル311から純水312が振りかけられる。検体用分注ノズル27の表面は、純水供給ノズル311から振りかけられた純水により洗浄される。純水供給ノズル311から供給された純水312は、洗浄液収納槽310で回収される。
【0047】
超音波振動子301の洗浄槽306への取り付け位置や洗浄槽103の構造については、
図3Aに示した以外にも、いくつかの方法が考えられる。例えば、
図3に示した洗浄槽306では、超音波振動子301は洗浄槽103の側面に取り付けられているが、洗浄槽306の底面に取り付けられても良く、その場合でも同程度の効果が得られる。
【0048】
また、
図3Aに示した洗浄槽306では、洗浄液305の注入される洗浄槽306に直接超音波振動子301が取り付けられているが、必ずしも洗浄槽306に対して、超音波振動子301が直接取り付けられる必要はない。
【0049】
洗浄槽306内で超音波洗浄に使用する洗浄液は、実験例での検討の結果から、ハイアルカリDなどのアルカリ系洗浄液であることが望ましい。
【0050】
本実施例による検体用分注ノズル27の線状の処理フローを
図4を用いて説明する。
まず、検体用分注ノズル駆動系102で検体供給用分注機構2を駆動して、検体供給用分注機構2の先端部付近に取り付けられた検体用分注ノズル27の先端部分を下降させて検体収納部機構1にセットされた検体Aを収容した検体容器25内に挿入する。この状態で、マイクロコンピュータ19及び記憶装置101のメモリに記憶された分析依頼情報に従って、検体ピペッタ15により検体用分注ノズル27内に検体容器25内の検体Aが所定量吸引される(S401)。
【0051】
次に、検体用分注ノズル駆動系102で検体供給用分注機構2を駆動して、検体Aを所定量吸引した検体用分注ノズル27を上昇させる。次に、検体用分注ノズル27を反応ディスク3の反応セル4の上方に移動させた後、反応セル4の近傍まで下降させる。この状態で、マイクロコンピュータ19及び記憶装置101のメモリに記憶された分析依頼情報に従って検体ピペッタ15を作動させて、検体用分注ノズル27に吸引した検体Aを反応セル4に所定量分注する(S402)。
【0052】
次に、検体Aの反応セル4への所定量分注を終えた検体用分注ノズル27は反応セル4の上方へ上昇する。ここで、マイクロコンピュータ19は、操作パネル24の操作エリア204内で検体に対して物理洗浄の有無を選択するボタン206が選択されているかをチェックし、物理洗浄の要否を確認する(S403)。
【0053】
マイクロコンピュータ19が、検体に対して物理洗浄の有無を選択するボタン206が選択されていることを確認した場合(S403でYESの場合)には、検体用分注ノズル駆動系102で検体供給用分注機構2を駆動して、検体用分注ノズル27を物理洗浄機構付き洗浄槽103の位置へ回転移動させる。つぎに、検体供給用分注機構2を駆動して検体用分注ノズル27を下降させ、検体用分注ノズル27の検体Aと接触した領域を含む領域を物理洗浄機構付き洗浄槽103の洗浄槽306に供給された洗浄液に浸漬させる。この状態で所定の時間が経過後、超音波振動子駆動系302で超音波振動子301を駆動して、洗浄槽306内の洗浄液305の中において超音波洗浄を開始する(S404)。
【0054】
一方、S403においてマイクロコンピュータ19が、検体に対して物理洗浄の有無を選択するボタン206が選択されていないことを確認した場合(S403でNOの場合)には、検体用分注ノズル駆動系102で検体供給用分注機構2を駆動して、検体用分注ノズル27を物理洗浄機構付き洗浄槽103の位置へ回転移動させ、検体供給用分注機構2を駆動して検体用分注ノズル27を下降させ、検体用分注ノズル27の検体Aと接触した領域を含む領域を物理洗浄機構付き洗浄槽103の洗浄槽306に供給された洗浄液に所定の時間浸漬させて洗浄する(S405)。このとき、超音波振動子駆動系302は超音波振動子301を駆動しない。
【0055】
S404で洗浄槽306内で超音波洗浄を行った検体用分注ノズル27、またはS405で洗浄槽306内で洗浄液に所定の時間浸漬させて洗浄を行った検体用分注ノズル27は、検体用分注ノズル駆動系102で駆動されて洗浄機構30の洗浄液収納槽310の上方へ移動する。洗浄液収納槽310の上方に移動した検体用分注ノズル27に対して洗浄機構30の純水供給ノズル311から純水312が振りかけられる。検体用分注ノズル27の表面は、純水供給ノズル311から振りかけられた純水により洗浄される(S406)。純水供給ノズル311から供給された純水312は、洗浄液収納槽310で回収される。
【0056】
検体用分注ノズル27の純水洗浄を終えた後、マイクロコンピュータ19は、検体収納部機構1の別の検体容器25から反応ディスク3の別の反応セル4に供給すべき新たな検体が有無を判断し(S407)、この新たな検体が有る場合にはS401からの動作を繰り返す。一方、新たな検体がない場合には、一連の動作を終了する。
【0057】
超音波洗浄などの物理洗浄を行うタイミングは、超音波洗浄などの物理洗浄が有効なフィブリンが血清中に存在している可能性の高い検体を分析した直後に行なっても良い。
もしくは、次の分析時間までの待ち時間と物理洗浄にかかる時間とを比較して、物理洗浄にかかる時間の方が短い場合にメンテナンス洗浄を実施することも考えられる。また、1日の使用終了時に行っても良い。以上のうち、少なくとも一つのタイミングで実行することが考えられる。
こうしたメンテナンス洗浄のタイミングは、操作者により決定されても良い、また、システムにより自動算出する様に構成しても良い。
【0058】
フィブリンが検体内に存在するかどうかの判定は、検体の凝固に関する事前情報、もしくは、検体の遠心分離後の経過時間のいずれか少なくとも一つによって判断されることが考えられる。
【0059】
検体の凝固に関する事前情報とは、例えば、抗凝固剤が投与されているか否かということが例として挙げられる。抗凝固剤が投与されている場合には、凝固時間が通常よりも長くなり、フィブリンが通常よりも検体内に析出しやすいと考えられる。
【0060】
また、遠心分離後の経過時間が短い時には、凝固が十分進んでおらず、この場合にもフィブリンが析出しやすいと考えられる。
【0061】
本実施例によれば、分析装置用の検体用分注ノズル表面に付着する可能性のある汚染要因毎に洗浄方法を分けて検体用分注ノズル表面を洗浄することにより、超音波洗浄などの物理洗浄による洗浄回数を減らすことができ、物理洗浄装置の寿命を延ばすことができると共に、電力の消費量を低減することが可能になった。また、検体用分注ノズルへのダメージを低減することができ、検体用分注ノズルの交換頻度を低減し、分析装置の稼働率を上げることができるようになった。