(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液晶性化合物が重合性基を有し、前記液晶性化合物が重合した後の液晶性化合物のオーダーパラメータが0.55以上である、請求項1または2に記載の光学補償フィルム;
但し、オーダーパラメータSとは
S=(A||−A⊥)/(2A⊥+A||)
「A||」は、液晶の配向方向に対して平行に偏光した光に対する吸光度
「A⊥」は、液晶の配向方向に対して垂直に偏光した光に対する吸光度
を意味する。
透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が70nm以上であり、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(550)が、0〜200nmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
前記保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系ポリマーフィルム、アクリル系ポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリエチレンテレフタレート系フィルムから選択される、請求項14に記載の偏光板。
透明支持体上に、液晶性化合物を含む液晶性組成物を塗布し、前記液晶性化合物が液晶相を形成する温度で保持して前記液晶性化合物を所定の配向状態に配向させ、30〜60℃で紫外線照射を行いながら、前記液晶性化合物の配向状態を固定させることを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学補償フィルムの製造方法。
透明支持体上に、(メタ)アクリル樹脂を含み、固形分濃度が30質量%以上である配向膜組成物を塗布し、10〜40℃で乾燥させて配向膜を形成し、前記配向膜の表面に液晶性化合物を含む液晶性組成物を塗布することを含む、請求項19に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0016】
なお、本明細書中において、"(メタ)アクリレート"はアクリレートおよびメタクリレートを表し、"(メタ)アクリル"はアクリルおよびメタクリルを表し、"(メタ)アクリロイル"はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
【0017】
<光学補償フィルム>
本発明の光学補償フィルムは、透明支持体と、上記透明支持体上に液晶性化合物を含む液晶性組成物から形成された光学異方性層を少なくとも一層有する光学補償フィルムであって、
2枚のクロスニコル配置された偏光板の間に上記光学補償フィルムを配置した際の正面の偏光解消度が0.000022以下であり、かつ一方の偏光板の吸収軸方向の極角50度での偏光解消度が0.00077以下であることを特徴とする。偏光解消度Dとは
D=Lmin/Lmax−L
0min/L
0max
Lminはクロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記光学補償フィルムの最小輝度
Lmaxは平行ニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記光学補償フィルムの最大輝度
L
0minはクロスニコル状態の2枚の偏光板の最小輝度
L
0maxは平行ニコル状態の2枚の偏光板の最大輝度を意味する。
本発明者が、液晶の垂直配向を利用した液晶表示装置の斜めコントラストが低いことの原因を検討したところ、その一つが、光学補償フィルムにおける斜め方向の偏光解消度が劣る点にあることが分かった。そして、偏光解消度を改善することにより、コントラストの改善に成功したものである。さらに詳細に検討した結果、光学補償フィルムの液晶の配向ゆらぎにより、配向秩序度(オーダーパラメータ)が劣る傾向にあり、光散乱しやすい傾向にあることがわかった。このオーダーパラメータを改良することで偏光解消度が改善し、液晶表示装置の上下および斜め方向のコントラストが顕著に改善されることが分かった。
【0018】
本発明の光学補償フィルムの斜め方向の偏光解消度を向上させる方法としては、例えば、光学異方性層を形成するにあたり、特定の液晶性化合物の選択し、2種以上の液晶性化合物を所定の混合比率で含有させたり、所定の添加剤を含有させたり、液晶性化合物を垂直配向させる配向膜の材料や配向硬化させる紫外線照射の温度を最適化させたり、配向乾燥させる温度の最適化等により向上させることができる。その結果、配向ゆらぎによる液晶の光散乱に起因したコントラスト(CR)の低下を低減することができる。液晶散乱が斜め方向コントラストに与える影響については従来全く検討されておらず、本発明者らが初めて見出したことである。
【0019】
また、発明者が検討した結果、
図1に一例を示すように、オーダーパラメータは液晶性化合物のNI点(Nematic―Isotropic転移温度)が高いほど、高くなる傾向にあることを見出した。
また、NI点が同一の液晶性化合物を用いて配向硬化させる温度との相関を同様に求めた場合、配向硬化させる温度が低いほど、オーダーパラメータが高くなる傾向にあることも見出している。
液晶性化合物を垂直配向させる配向膜は支持体からの添加剤等が液晶性化合物に浸みこむことで配向不良を引起し、オーダーパラメータの低下を防ぐことにあり、材料濃度を上げたり、添加剤が浸みこみにくい材料を選択したり、最適な乾燥温度にすることが有効であると考えられる。配向硬化させる紫外線(UV)照射時の温度は低いほど有効であるが、温度が低すぎると、重合不十分で硬化しない問題があるため最適化が必要である。これらのオーダーパラメータを向上させる方法を組み合わせることで、本発明では、偏光解消度0.00077以下を達成することが可能となった。
【0020】
一般にコントラストに影響を与える物性としてヘイズが用いられることがある。ヘイズは、拡散光源での全光量に対する光学補償フィルムの全透過光の比で表されている。本発明者が検討した結果、下記表に示したように、ヘイズでは斜め方向のコントラストの差を十分に検知できず、また、実際の液晶表示装置では拡散光源から偏光板を通過し、偏光した光が光学補償フィルムに入射するため、実際の測定系とは異なる。本発明の斜め偏光解消度は実際の偏光した光を入射した測定系であるため、液晶表示装置のコントラスト(CR)と相関しており、測定系の改良も本発明に寄与するところが大きい。
【0022】
本発明の光学補償フィルムを2枚のクロスニコル配置された偏光板の間に配置した際の正面の偏光解消度は、((クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記光学補償フィルムの最小輝度)/(平行ニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記光学補償フィルムの最大輝度)に従って測定されるものである。本発明における正面の偏光解消度は、0.000022以下であり、0.000020以下が好ましく、0.000018以下がより好ましい。
また、本発明の光学補償フィルムを2枚のクロスニコル配置された偏光板の間に配置した際の一方の偏光板の吸収軸方向の極角50度での偏光解消度は0.00077以下であり、0.00067以下が好ましく、0.00059以下がより好ましい。
このような範囲とすることにより、コントラストがより向上する傾向にある。
【0023】
<<光学異方性層>>
本発明の光学補償フィルムは、液晶性化合物を含有する液晶性組成物から形成された光学異方性層を、透明支持体上に有する。なお、上記光学異方性層は、予め透明支持体上に配向膜を形成し、配向膜上に形成されることが好ましい。
また、別の基材に形成した液晶性化合物層を、接着剤等を用いて、透明支持体上に転写することで、本発明の光学補償フィルム付き偏光板を作製することも可能である。その際、光学異方性層を仮に支持する支持体は、透明でなくてもよく、被転写支持体が透明支持体であればよい。
【0024】
光学異方性層中に含まれる液晶性化合物は、垂直配向していることが好ましい。また、光学異方性層に含まれる液晶性化合物は重合性基を有し、上記液晶性化合物が重合した後の液晶性化合物のオーダーパラメータが0.55以上であることが好ましい。
ここで、オーダーパラメータについて説明する。光学異方性を発生させるためには、光学要素の配向が必要である。ここでいう光学要素とは、屈折率の異方性を生じさせる光学的な要素であり、例えば、所定の温度範囲において液晶相を示す円盤状又は棒状の液晶性分子、及び延伸処理等によって配向する高分子が挙げられる。1つの光学要素の固有の複屈折率、およびその光学要素が統計的にどの程度配向しているかによって、光学材料のバルクの複屈折は決まる。例えば、液晶性化合物で構成される光学異方性層の光学異方性の大きさは、光学異方性を生じさせる主要な光学要素である液晶性化合物の固有の複屈折率と、液晶性化合物の統計的な配向の度合いで決まる。配向の度合いを表すパラメータとして、オーダーパラメータSが知られている。配向オーダーパラメータは結晶のように分布がない場合に1、液体状態のように完全にランダムな場合に0となる。例えば、ネマチック液晶では、通常0.6程度の値をとると言われている。オーダーパラメータSについては、例えば、DE JEU,W.H.(著) 「液晶の物性」(共立出版、1991年、11頁)に詳しく記載があり、次の式で表される。
【0025】
【数1】
θは、配向要素の平均的な配向方向と、各配向要素の軸とのなす角である。
【0026】
オーダーパラメータを測定する手段としては、偏光ラマン法、IR法、X線法、蛍光法、音速法などが知られている。
オーダーパラメータ(S値)は、分光学的な測定に基づき、前述の日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」に記載の次式から求めることができる。
S=(A
||−A⊥)/(2A⊥+A
||)
ここで、「A
||」及び「A⊥」は、それぞれ、液晶の配向方向に対して平行及び垂直に偏光した光に対する吸光度であり、S値は、理論上は0〜1の範囲の値をとり、その値が1に近づく程、液晶素子としてのコントラストが向上することとなる。
上記式は偏光吸収測定により求めるため、液晶性化合物が2色性を有する場合、または2色性色素で染色された液晶層について、比較的容易に求めることができる方法である。
また、上記重合後のオーダーパラメータが、0.55以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.65以上がさらに好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、1.0以下とすることができる。
【0027】
本発明における光学異方性層は、液晶性化合物を含む液晶性組成物から形成される。
光学異方性層の形成に用いる液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物が挙げられる。棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、更に、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0028】
本発明に使用可能な棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻「液晶の化学(1994)日本化学会編」の第4章、第7章、及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0029】
本発明に用いる棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基が更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。
【0030】
本発明における光学異方性層は、重合後のオーダーパラメータを0.55以上とするために、下記一般式(1)で表される液晶性化合物、下記一般式(2)で表される液晶性化合物、および下記一般式(3)で表される化合物のうち少なくとも2種含むことが好ましく、その混合比率としては、80:20〜90:10が好ましい。
【化4】
(一般式(1)中、A
1は、炭素原子数2〜18のメチレン基を表し、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2つ以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよい;
Z
1は、−CO−、−O−CO−または単結合を表し;
Z
2は、−CO−または−CO−CH=CH−を表し;
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、置換基を有していても良いフェニル基、ビニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、アセトキシ基、N−アセチルアミド基、N−アクリルアミド基、N,N−ジメチルアミノ基またはマレイミド基を表し;
L
1、L
2、L
3およびL
4は各々独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜4のアシル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、L
1、L
2、L
3およびL
4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。)
【0031】
上記A
1は、炭素原子数2〜18のメチレン基を表し、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよい。
上記A
1は、炭素原子数2〜7のメチレン基を表すことが好ましく、上記A
1が炭素原子数3〜6のメチレン基であることがより好ましく、上記A
1が炭素原子数3又は4のメチレン基であることが特に好ましい。ただし、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよいが、上記メチレン基中に含まれる−O−で置換されているCH
2は0〜2個であることが好ましく、0または1個であることがより好ましく、0個であることが特に好ましい。
上記Z
1は、−CO−、−O−CO−または単結合を表し、−O−CO−又は単結合を表すことが好ましい。
上記Z
2は、−CO−または−CO−CH=CH−を表し、−CO−を表すことが好ましい。
上記R
1は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子を表すことが好ましい。
上記R
2は、水素、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、置換基を有していても良い芳香環、シクロヘキシル基、ビニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、アセトキシ基、N−アセチルアミド基、N−アクリルアミド基、N,N−ジメチルアミノ基またはマレイミド基を表し、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表すことが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表すことがより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表すことがさらに好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表される化合物は、上記L
1、L
2、L
3およびL
4は各々独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜4のアシル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、上記L
1、L
2、L
3およびL
4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。
炭素原子数1〜4のアルキル基としては、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
炭素原子数1〜4のアルコキシ基の炭素原子数は、1または2が好ましく、1がより好ましい。
炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜4が好ましく、2がより好ましい。
ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
L
1、L
2、L
3およびL
4は各々独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子を表すことが好ましい。
上記L
1、L
2、L
3およびL
4は、少なくとも1つが炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、少なくとも1つがメチル基またはエチル基であることがより好ましく、少なくとも1つがメチル基であることがさらに好ましい。特に、上記L
1、L
2、L
3およびL
4のうちメチル基が1つで水素原子が3つであることが好ましい。
【化5】
(一般式(2)中、A
2およびA
3は各々独立して、炭素原子数2〜18のメチレン基を表し、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2つ以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよい;
R
5およびR
6は各々独立して、水素原子又はメチル基を表し;
L
9、L
10、L
11およびL
12は各々独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜4のアシル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、L
9、L
10、L
11およびL
12のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。)
【0033】
上記A
2およびA
3は各々独立して、炭素原子数2〜18のメチレン基を表し、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2つ以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよい。
上記A
2およびA
3は各々独立して、炭素原子数2〜7のメチレン基を表すことが好ましく、炭素原子数3〜6のメチレン基であることがより好ましい。A
2およびA
3が炭素原子数4のメチレン基であることが特に好ましい。ただし、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよいが、上記メチレン基中に含まれる−O−で置換されているCH
2は0〜2個であることが好ましく、0または1個であることがより好ましく、0個であることが特に好ましい。
R
5およびR
6は各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、水素原子を表すことが好ましい。
【0034】
L
9、L
10、L
11およびL
12は、上記一般式(1)で表される化合物のL
1、L
2、L
3およびL
4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0035】
【化6】
(一般式(3)中、A
21およびA
31は各々独立して、炭素原子数2〜18のメチレン基を表し、上記メチレン基中の1つのCH
2または隣接していない2つ以上のCH
2は、−O−で置換されていてもよい;
Z
5は、−CO−、または−O−CO−を表し;
Z
6は、−CO−、または−CO−O−を表し;
R
51およびR
61は各々独立して、水素原子又はメチル基を表し;
L
13、L
14、L
15およびL
16は各々独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜4のアシル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、L
13、L
14、L
15およびL
16のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。)
【0036】
上記A
21およびA
31は、上記一般式(2)で表される化合物のA
2およびA
3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記Z
5は、−CO−、または−O−CO−を表し、−O−CO−を表すことが好ましい。
上記Z
6は、−CO−、または−CO−O−を表し、−CO−O−を表すことが好ましい。
R
51およびR
61は各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、水素原子を表すことが好ましい。
【0037】
L
13、L
14、L
15およびL
16は、上記一般式(1)で表される化合物のL
1、L
2、L
3およびL
4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
(一般式(4)中、n1は3〜6の整数を表し;
R
11は水素原子またはメチル基を表し;
Z
12は、−CO−または−CO−CH=CH−を表し;
R
12は、水素原子、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表す。)
上記n1は3〜6の整数を表し、3又は4であることが好ましい。
上記Z
12は、−CO−または−CO−CH=CH−を表し、−CO−を表すことが好ましい。
上記R
12は、水素原子、炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表し、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表すことがより好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基を表すことがさらに好ましい。
【0039】
上記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
(一般式(5)中、n2およびn3は各々独立して、3〜6の整数を表し;
R
15およびR
16は各々独立して、水素原子またはメチル基を表す。)
【0040】
一般式(5)中、n2およびn3は各々独立して、3〜6の整数を表し、上記n2およびn3が4であることが好ましい。
一般式(5)中、R
15およびR
16は各々独立して、水素原子またはメチル基を表し、上記R
15およびR
16が水素原子を表すことが好ましい。
【0041】
上記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【化9】
(一般式(6)中、n4およびn5は各々独立して、3〜6の整数を表し;
R
25およびR
26は各々独立して、水素原子またはメチル基を表す。)
【0042】
一般式(6)中、n4およびn5は各々独立して、3〜6の整数を表し、上記n4およびn5が4であることが好ましい。
一般式(6)中、R
25およびR
26は各々独立して、水素原子またはメチル基を表し、上記R
25およびR
26が水素原子を表すことが好ましい。
【0043】
以下に、上記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0056】
以下に、上記一般式(2)で表される液晶性化合物、および一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0059】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、特表2002−536529号公報やMolecular Crystals and Liquid Crystals (2010), 530 169−174などに記載の方法に基づいて製造することができる。
【0060】
上記一般式(2)で表される液晶性化合物および一般式(3)で表される液晶性化合物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、特開2009−184975号公報などに記載の方法に基づいて製造することができる。
【0061】
本発明における光学異方性層は、一般式(1)で表される液晶性化合物と、一般式(2)で表される液晶性化合物とを含むことが好ましい。この場合、一般式(1)で表される液晶性化合物と、一般式(2)で表される液晶性化合物との混合比率としては、80:20〜90:10が好ましく、80:20〜85:15がより好ましい。
または一般式(2)で表される液晶性化合物と、一般式(3)で表される液晶性化合物とを含むことも好ましい。この場合、一般式(2)で表される液晶性化合物と、一般式(3)で表される液晶性化合物との混合比率としては、80:20〜90:10が好ましく、80:20〜85:15がより好ましい。
【0062】
一方、本発明における光学異方性層に含まれるディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0063】
より具体的には、ディスコティック液晶性化合物としては、例えば、特開2007−108732号公報の段落番号0021〜0122に記載の化合物や特開2010−244038号公報の段落番号0013〜0108に記載の化合物を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0064】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む位相差層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基の組み合わせがよい。上記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ上記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0065】
本発明で用いる液晶性組成物は、添加剤を含んでいてもよい。
本発明では、例えば、垂直配向剤を用いることができる。垂直配向剤の配合量は、液晶性化合物の合計100質量部に対し、0.1〜3質量部であることが好ましい。垂直配向剤は1種のみ用いても良いし、2種類以上用いても良い。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
垂直配向剤としては、ピリジニウム化合物やオニウム化合物を使用することが好ましく、これら化合物を含有させることで、液晶性化合物の配向膜界面におけるホメオトロピック配向を促進する垂直配向剤として作用するとともに、液晶性化合物の配向状態を固定した光学異方性層と配向膜との界面の密着性改善にも寄与する。液晶性化合物の配向状態を固定した光学異方性層は、必要に応じて、空気界面側の配向を制御する空気界面側配向制御剤(例えば、フルオロ脂肪族基を有する繰り返し単位を含む共重合体)を含有していてもよい。
ピリジニウム塩としては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【化24】
【0066】
式(I)において、L
1は2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO
2−、−NR
a−(但し、R
aは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基は、直鎖であっても分岐であってもよい。
【0067】
式(I)において、R
1は、水素原子、無置換のアミノ基または炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基である。R
1が置換アミノ基である場合、脂肪族基によって置換されていることが好ましい。脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が挙げられる。また、R
1が2置換アミノ基である場合、2つの脂肪族基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。R
1は水素原子、無置換のアミノ基または炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であることが好ましく、水素原子、無置換のアミノ基または炭素原子数が2〜12の置換アミノ基であることがより好ましく、水素原子、無置換のアミノ基または炭素原子数が2〜8の置換アミノ基であることがさらに好ましい。R
1がアミノ基である場合、ピリジニウム環の4位に置換されていることが好ましい。
【0068】
式(I)において、Xはアニオンである。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。Xは、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。
【0069】
式(I)において、Y
1は5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Y
1に含まれる環状部分構造はシクロヘキシル環、芳香環または複素環であることがより好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、およびピレン環を挙げることができる。ベンゼン環、ビフェニル環、およびナフタレン環がさらに好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環などを挙げることができる。複素環は6員環であることが好ましい。Yで表される5員環又は6員環を部分構造として有する2価の連結基は置換基を有していてもよい。
【0070】
式(I)において、Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であり、シアノ置換フェニル基、ハロゲン置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基または炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であるのが好ましい。
Zは、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜16のアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルケニル基、炭素原子数が1〜16のアルキニル基、炭素原子数が1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0071】
本発明に用いられるピリジニウム化合物としては、下記式(Ia)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
【0073】
式(Ia)において、L
3は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−である。ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L
3は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、単結合もしくは−O−であるのがより好ましい。
【0074】
式(Ia)において、L
4は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−である。
【0075】
式(Ia)において、R
3は、水素原子、無置換アミノ基または炭素原子数が2〜20のアルキル置換アミノ基である。R
3がジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R
3は水素原子、無置換アミノ基または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基がさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基が最も好ましい。R
3が無置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位がアミノ置換されていることが好ましい。
【0076】
式(Ia)において、Y
2およびY
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環からなる2価の基である。6員環の例は、脂肪族環、芳香環(ベンゼン環)および複素環が挙げられる。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環が挙げられる。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が挙げられる。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。アシル基およびアシルオキシ基の定義は、後述する。
【0077】
式(Ia)において、X
1はアニオンである。X
1は、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素
イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン)が含まれる。
【0078】
式(Ia)において、Z
1は水素原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基または炭素原子数が1〜12のアルコキシ基であって、アルキル基およびアルコキシ基は、それぞれ、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。
【0079】
式(Ia)において、mは1または2であって、mが2の場合、2つのL
4および2つのY
3は、異なっていてもよい。
mが2の場合、Z
1は、シアノ基、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましい。
mが1の場合、Z
1は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0080】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0081】
式(Ia)において、pは、1〜10の整数である。C
pH
2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。C
pH
2pは、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。また、pは1または2であることがより好ましい。
【0082】
上記式(I)および/または(Ia)で表される化合物の具体例としては、特開2007−093864号公報の段落[0049]〜[0052]の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。オニウム化合物については、例えば、特開2012−208397号公報の段落番号0027〜0058に記載があり、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0083】
本発明で用いる液晶性組成物には、また、結合剤を配合することができる。結合剤の配合量は、液晶性化合物の合計100質量部に対し、0.5〜20質量部であることが好ましい。結合剤は1種のみ用いても良いし、2種類以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
結合剤としては、アクリル系結合剤が例示され、次のような化合物を用いることができる。
【化26】
また、アクリル系結合剤はNI点を上昇させる効果があり、オーダーパラメータを上昇させるのに有効である。
【0084】
本発明では垂直配向剤の他に、結合剤密着剤、レベリング剤、重合開始剤、増感剤、結合剤を配合することができる。
【0085】
本発明で用いる液晶性組成物は、通常、溶剤を含む。溶剤としては、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。炭化水素および/またはケトンが好ましい。
溶剤は1種のみを用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。本発明では、液晶性組成物の固形分濃度が20〜50質量%となるように調整されることが好ましい。
【0086】
光学異方性層の形成方法
次に、光学異方性層の形成方法について述べる。光学異方性層の形成方法の一例は、透明支持体上に、または、後述する配向膜上に液晶性化合物を含む液晶性組成物を塗布し、上記液晶性化合物が液晶相を形成する温度で保持して上記液晶性化合物を所定の配向状態に配向させ、光照射を行いながら、上記液晶性化合物の配向状態を固定して形成することができる。より好ましくは、透明支持体上に、または、後述する配向膜上に液晶性化合物を含む液晶性組成物を塗布し、上記液晶性化合物が液晶相を形成する温度で保持して上記液晶性化合物を所定の配向状態に配向させ、所定の温度で紫外線照射を行いながら、上記液晶性化合物の配向状態を固定して形成することができる。所定の温度としては、30〜60℃が好ましい。
【0087】
透明支持体または配向膜の上(通常は表面)に、上述の液晶性組成物を塗布する。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0088】
上記塗布液を塗布した後、液晶性化合物が液晶相を形成する温度で保持して液晶性化合物の分子を所望の配向状態にする。この際に、加熱することが好ましい。加熱温度は、50〜120℃が好ましく、70〜100℃がさらに好ましい。また、加温する時間は、60〜300秒程度であるのが好ましく、90〜300秒程度であるのがより好ましい。
【0089】
液晶性化合物の分子を所望の配向状態とした後、重合により硬化させ、その配向状態を固定して、光学異方性層を形成する。照射する光は、X線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)を用いることができる。中でも、紫外線(UV)を利用するのが好ましい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。露光量は、50〜6000mJ/cm
2程度であることが好ましく、100〜2000mJ/cm
2 程度であることがさらに好ましい。短時間で配向を制御するためには、加熱しながら光を照射することが好ましい。この場合の加熱温度は、30〜60℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。
【0090】
上記方法等により得られた光学異方性層の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(550)が、−200〜−100nmであることが好ましく、−180〜−120nmであることがより好ましく、−160〜−140nmであることがさらに好ましい。
また、本発明における光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が−1.0〜+1.0nmであることが好ましく、−0.5〜+0.5nmであることがより好ましく、−0.1〜+0.1nmであることがさらに好ましい。
【0091】
本発明では、光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。液晶性化合物の配向を均一にする観点から、光学異方性層の厚さは1.0μm以上が好ましく、1.0〜2.0μmであることがより好ましい。
【0092】
<<透明支持体>>
本発明で用いる透明支持体は、具体的には、光透過率が80%以上である透明なポリマーフィルムであることが好ましい。透明支持体として使用可能なポリマーフィルムとしては、セルロースエステル(セルロースアシレート系フィルム、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、環状ポリオレフィン系ポリマー、環状ポリオレフィン系コポリマー、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、アクリル系ポリマー等からなるポリマーフィルムが挙げられ、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系ポリマーフィルムおよびアクリル系ポリマーフィルムが好ましい。
市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、ア−トン(登録商標)、及びゼオネックス(登録商標)、アペル(登録商標)など)を用いてもよい。また、セルロースエステルからなるフィルムが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルからなるフィルムが更に好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。
本発明では、特に、芳香族基を含むアシル基を有するセルロースアシレートを含むことが好ましい。ここで、芳香族基を含むアシル基としては、下記一般式(I)で表される基が好ましい。
【化27】
(式中、Xは水素原子または置換基を表す。nは0または1〜5の整数を表す。nが2以上の時、互いに連結して縮合多環を形成してもよい。)
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびカルボンアミド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基がより好ましい。
一般式(I)において芳香環に置換する置換基Xの数(n)は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
このようなセルロースアシレートの製造方法については、特開2002−322201号公報の段落番号0015の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、芳香族基を含むアシル基の具体例としては、特開2002−322201号公報の段落番号0017〜0020の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0093】
本発明で用いるセルロースアシレート系フィルムは、アシル置換度が、2.0〜3.0であることが好ましく、2.3〜2.7であることがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。また、本発明で用いるセルロースアシレート系フィルムは、共流延等によって得られた2層、3層または4層以上からなる積層体であってもよい。この場合、平均アシル置換度を上記アシル置換度として考えることができる。
置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算によって求められる。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。
具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、1.0〜1.65であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
【0094】
<<<添加剤>>>
本発明で用いるセルロースアシレート系フィルムは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、重縮合エステル、糖エステル、レターデーション発現剤、酸化防止剤、剥離促進剤、微粒子、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤等を含んでいても良い。
重縮合エステルの例としては、特開2012−226276号公報の段落番号0034〜0049の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
糖エステルの例としては、特開2012−226276号公報の段落番号0050〜0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。このような化合物の添加によって、疎水性の付与による透湿性や含水率の調整や可塑性の付与による機械的物性の調整などが容易となる。本発明では特に、ヒドロキシル基の少なくとも1つが芳香族エステル化されたピラノース構造またはフラノース構造を1個〜12個含む糖エステルが好ましい。
レターデーション発現剤としては、含窒素芳香族化合物が好ましい。レターデーション発現剤の例としては、特開2012−226276号公報の段落番号0081〜0109の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
その他の添加剤については、特開2012−226276号公報の段落番号0109〜0112の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、国際公開WO2008−126535号パンフレットに記載の化合物を採用できる。
【0095】
なお、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開WO00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明において、透明支持体として用いることもできる。
【0096】
透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は、70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。下限については特に制限はないが、0nm以上である。
透明支持体の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(550)は、0〜200nmであることが好ましく、0〜50nmであることがより好ましく、0〜30nmであることがさらに好ましい。
【0097】
透明支持体の厚みとしては、20〜60μmであることが好ましく、25〜60μmがより好ましく、25〜45μmがさらに好ましい。
【0098】
本発明で用いる支持体の製造方法は、特開平10−45804号公報の実施例の記載、特開2011−127127号公報の記載を参酌することができる。
【0099】
<<配向膜>>
本発明の光学補償フィルムは、配向膜を有していてもよい。特に、本発明では、液晶性化合物が垂直配向、および/または液晶性化合物の重合後のオーダーパラメータが0.55以上となるように配向させることが好ましいが、このように配向させる方法として、光学異方性層と透明支持体との間に配向膜を形成する方法も好ましく採用できる。配向膜は、通常であれば、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを用いるが、本発明の場合には、コントラストを向上させるため、より均一に配向規制力を作用させる目的で、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜、高配向規制力配向膜、光配向膜を持ちることができる。また、水平配向経由ハイブリッド均一配向、磁場配向、斜方蒸着配向、Iso温度経由ハイブリッド均一配向、風向による配向促進、低い重合温度による配向促進、及び温度差による配向促進の少なくともいずれかの手段を行うことも好ましく、低い重合温度による配向促進がより好ましい。
【0100】
<<<(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜>>>
本発明の光学補償フィルムは、透明支持体と光学異方性層との間に、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜を用いることが好ましい。特に、固形分濃度が10〜60質量%である、組成物を用いて形成することが好ましい。(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜を有することで、光学異方性層に含まれる液晶性化合物を適切に配向させることができる。固形分濃度は、好ましくは12〜50質量%であり、より好ましく15〜45質量%である。
また、詳細を後述する配向膜組成物を塗布後、10〜70℃で乾燥させることが好ましく、15〜60℃で乾燥させることがより好ましく20〜50℃で乾燥させることがさらに好ましく、25〜40℃で乾燥させることがさらに好ましい。このような範囲で乾燥させることで、液晶性化合物のオーダーパラメータを向上させることができる。
【0101】
(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜は、(メタ)アクリレートモノマーを含む組成物であって、上記組成物中の(メタ)アクリレートモノマーを構成するY(炭素数)/M(炭素原子および水素原子以外の元素数)が、1.4以上3未満である組成物を硬化してなる配向膜が好ましい。Y/Mは、1.4以上3未満であり、1.8以上2未満であることが好ましく、1.9以上2未満であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
特に本発明では、(メタ)アクリレートモノマーを構成する原子の95%以上が、炭素原子、酸素原子および水素原子のいずれかであることが好ましく、100%が炭素原子、酸素原子および水素原子のいずれかであることがより好ましい。
【0102】
本発明における(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜は極性基を有することが好ましく、極性基としては、水酸基が好ましい。水酸基を有することにより、透明支持体との密着性が向上する傾向にある。
【0103】
(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜を形成する(メタ)アクリレートモノマーとしては、1分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を併用することが好ましく、1分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物と、2〜4つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を併用することがより好ましい。
本発明における(メタ)アクリレートモノマーは、分子量が100〜800であることが好ましく、150〜500であることがより好ましい。
【0104】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0105】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、グリセリンモノメタクリレート(GLM)、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0106】
(メタ)アクリレートモノマーとしては市販されているものを用いることもできる。例えば、(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類としては、日本化薬(株)製KAYARAD PET30、KAYARAD DPHA、同DPCA−30、同DPCA−120を挙げることができる。また、ウレタンアクリレートとしては、新中村化学工業(株)製U15HA、同U4HA、A−9300、ダイセルUCB(株)製EB5129等を挙げることができる。
【0107】
(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜は、より好ましくは、透明支持体上に、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能または膨潤能を有する溶剤と(メタ)アクリレートモノマーを含み、上記(メタ)アクリレートモノマーを構成するY(炭素数)/M(炭素原子および水素原子以外の元素数)が、1.4以上3未満である組成物を支持体上に適用し、(メタ)アクリレートモノマーを硬化することによって形成することができる。(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能または膨潤能を有する溶剤を用いることにより、溶剤が支持体および形成過程の(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜を溶解または膨潤する。この後、溶剤が揮発することによって、支持体の主成分と(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分が混在した中間層を形成できる。溶解能または膨潤能を有する溶剤の揮発は、好ましくは上述の乾燥手段によって行うことが好ましいが、その後の光学異方性層の形成過程等で加熱することにより、乾燥させることもできる。また、自然乾燥であってもよい。本発明で用いる(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能または膨潤能を有する溶剤は、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能および膨潤能を有する溶剤であることが好ましい。
【0108】
(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能または膨潤能を有する溶剤とは、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分と相溶性の高い溶剤をいい、支持体に使用する樹脂に対しての溶解能や膨潤能に応じて使い分けることができる。
【0109】
支持体および(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜を膨潤させ、密着性を向上する観点から、溶剤には、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、メチルシクロヘキサン、酢酸メチル、シクロヘキサノンの少なくとも1種を含むことが好ましく、酢酸メチルおよびメチルイソブチルケトンがさらに好ましい。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
なお、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対する溶解能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体フィルムを上記溶剤の入った15cm
3の瓶に室温下(25℃)で60秒浸漬させて取り出した後に、浸漬させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したとき、支持体の主成分のピーク面積が400mV/sec以上である溶剤のことを意味する。若しくは24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体フィルムを上記溶剤の入った15cm
3の瓶に室温下(25℃)で24時間経時させ、適宜瓶を揺らすなどして、フィルムが完全に溶解して形をなくすものも、支持体の主成分に対して溶解能を有する溶剤を意味する。
支持体の主成分に対する膨潤能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体フィルムを上記溶剤の入った15cm
3の瓶に縦に入れ、25℃で60秒浸漬し、適宜上記瓶を揺らしながら観察し、折れ曲がりや変形が見られる溶剤を意味する(フィルムは膨潤した部分の寸度が変化し折れ曲がりや変形として観察される。膨潤能の無い溶媒では折れ曲がりや変形といった変化が見られない)。
【0111】
また、上記溶剤の効果を制御するために、(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の主成分および支持体の主成分に対して溶解能も膨潤能も持たない溶剤を併用することができる。
溶解能も膨潤能も持たない溶剤としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
溶解能も膨潤能も持たない溶剤の添加量は、使用する全溶剤に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0112】
(メタ)アクリル樹脂を含む配向膜の膜厚としては、0.1〜10μmが好ましく、0.4〜3.0μmがより好ましく、1.0〜2.0μmがさらに好ましい。
【0113】
<<<高配向規制力配向膜>>>
高配向規制力配向膜は、微小領域における液晶性化合物の配向軸分布を小さくできる配向膜である。そのようなものであれば特に限定されないが、高配向規制力配向膜の形成に用いられる材料としては。例えば、特開2002−98836号公報の段落番号0014〜0016、に記載のコポリマー化合物を用いることが好ましく、特に、段落番号0024〜0029及び0173〜00180に記載のコポリマー化合物を用いることがより好ましい。また、特開2005−99228号公報の段落番号0007〜0012に記載のコポリマー化合物を用いることが好ましく、特に段落番号0016〜0020に記載のコポリマー化合物を用いることがより好ましい。上記2つの公開公報に記載のコポリマー化合物は、配向膜と光学異方性層との密着性を改良する観点から各コポリマーの構成単位が、ビニル基などの重合性基で置換されていることが更に好ましい。
【0114】
<<<光配向膜>>>
光配向膜とは、光の照射により配向機能を発現させる膜をいう。光配向膜の形成に用いられる材料としては、光配向機能を発現させる光配向性基を有する化合物が好ましく、例えば、アゾ基等の光異性化する光配向性基を有する化合物、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化する光配向性基を有する化合物が好適である。また、ベンゾフェノン基等の光架橋により配向機能を発現させる化合物やポリイミド樹脂等の光分解により配向機能を発現させる化合物も好ましい例としてあげることができる。
【0115】
光配向膜は、透明支持体上に、光配向膜用の材料、例えば、光配向性基を有する化合物を含有する組成物を適用することで形成することができる。上記組成物を塗布液として調製し、基板等の表面に塗布・乾燥して形成するのが好ましい。具体的には、上記光配向性基を有する化合物等を、適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、上記塗布液を、透明支持体上に塗布・乾燥して、形成するのが好ましい。塗布液は、公知の方法(例、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。
光配向膜の厚さは、0.01〜2μmが好ましく、0.01〜0.15μmが更に好ましい。
【0116】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。光照射は非偏光でも偏光でもよく、偏光を用いる場合は直線偏光を用いることが好ましい。更に、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0117】
<偏光板>
本発明は、本発明の光学補償フィルムと、偏光膜とを少なくとも有する偏光板にも関する。
偏光膜と、本発明の光学補償フィルムとは、接着剤または粘着剤を利用して貼合することができる。接着剤としては、透明性に優れた材料であるのが好ましい。接着剤の例には、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤、イソシアネート系接着剤、ゴム系接着剤等が含まれる。粘着剤の例には、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、イソシアネート系、ゴム系等の粘着剤が含まれる。
なお、偏光膜と本発明の光学補償フィルムとの間に介在させる接着層は、薄いほうが好ましく、例えば、厚み50μm以下が好ましく、10μm以下程度がより好ましく、5μm以下程度がさらに好ましい。下限値としては特に定めるものではないが、例えば、1μm以上とすることができる。
【0118】
偏光膜には、例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素にて染色し、延伸を行うことによって得られる偏光膜などが用いられる。
偏光膜の他方の表面には保護フィルムが貼合されているのが好ましく、かかる保護フィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート系(PET系)フィルム等が用いられる。
保護フィルムの厚みとしては、10〜90μmが好ましく、20〜90μmがより好ましい。
【0119】
<液晶表示装置>
本発明は、本発明の光学補償フィルム、または偏光板を有する液晶表示装置にも関する。液晶表示装置としては、IPS型又はFFS型である。また、本発明では、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置であってもよい。
【0120】
IPS型液晶表示装置は、例えば特開2003−15160号、特開2003−75850号、特開2003−295171号、特開2004−12730号、特開2004−12731号、特開2005−106967号、特開2005−134914号、特開2005−241923号、特開2005−284304号、特開2006−189758号、特開2006−194918号、特開2006−220680号、特開2007−140353号、特開2007−178904号、特開2007−293290号、特開2007−328350号、特開2008−3251号、特開2008−39806号、特開2008−40291号、特開2008−65196号、特開2008−76849号、特開2008−96815号等の各公報に記載のものも使用できる。
【0121】
FFS型(以下、FFSモードともいう)液晶セルは、カウンター電極と画素電極を有する。これらの電極はITO等の透明物質で形成され、及び上・下部基板等の間の間隔より狭い間隔で、電極上部に配置されている液晶性分子等が全て駆動することができる程度の幅で形成されている。この構成により、FFS型では、IPS型(以下、IPSモードともいう)より向上した開口率を得ることができ、さらに、電極部分が光透過性であるので、IPS型より向上した透過率を得ることができる。FFS型液晶セルについては、例えば特開2001−100183号、特開2002−14374、特開2002−182230、特開2003−131248、特開2003−233083号等の各公報の記載を参照することができる。
【0122】
なお、本明細書において、本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内レターデーション(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション(単位:nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
【0123】
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0124】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(21)及び数式(22)よりRthを算出することもできる。
【0125】
【数2】
上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、上記式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0126】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0127】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、Re、Rth及び屈折率について特に測定波長が付記されていない場合は、測定波長550nmであるものとする。また、「面内遅相軸」とは、面内で屈折率が最大になる方向であり、「面内進相軸」とは面内遅相軸に面内で直交する方向である。また、可視光領域とは、波長380〜780nmを意味する。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0129】
実施例1
1.透明支持体の作製
特開平10−45804号公報に記載の方法で、同公報の実施例1に記載のセルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0130】
(セルロースアシレート溶液C01の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度は22質量%となるように溶剤(メチレンクロライドおよびメタノール)の量は適宜調整した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.43) 100.0質量部
・下記表の添加剤 化合物A 19.0質量部
・化合物B 5.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0131】
(セルロースアシレート溶液C02の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度は22質量%となるように溶剤(メチレンクロライドおよびメタノール)の量は適宜調整した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度2.81) 100.0質量部
・下記表の添加剤 化合物A 19.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0132】
セルロースアシレート溶液C01を用いて62μmの膜厚のコア層になるように、セルロースアシレート溶液C02を2μmの膜厚のスキンA層になるように、それぞれバンド延伸機を用いて3層共流延した。得られた厚さは、66μmであった。引き続き、得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、テンターを用いて横延伸した。延伸温度193℃及び延伸倍率73%に設定した。その後、フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルムを得た。得られたフィルムの厚さは38μmであった。
作製した透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションReは102nm、厚さ方向のレターデーションRthは108nmであった。
【0133】
化合物A:
【化28】
【0134】
Acはアセチル基を表す。
化合物Aはテレフタル酸/コハク酸/エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体(共重合比[モル%]=27.5/22.5/25/25)を表す。
化合物Aは、非リン酸エステル系の化合物であり、かつ、レターデーション発現剤でもある。化合物Aの末端はアセチル基で封止されている。
【0135】
化合物B:
【化29】
【0136】
2.配向膜の形成
下記のアクリル系化合物二種(ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)/グリセリンモノメタクリレート(GLM)=100/50(質量比))100質量部、光重合開始剤(イルガキュア127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、及び溶剤(酢酸メチル:メチルイソブチルケトン=35:65(質量比))を混合し、固形分濃度30%となるように配向膜形成用組成物を調製した。この様に調整した配向膜形成用組成物を、支持体上に、ワイヤーバーコーター#1.6で塗布量が8.4ml/m
2となるように塗布し、40℃で0.5分乾燥後、120W/cm高圧水銀灯を用いて、30℃、30秒間54mJの紫外線(UV)照射を行い架橋した。
【0137】
3.光学異方性層の形成
配向膜上に、下記に記載した光学異方性層塗布液を#3.2のワイヤーバーで6ml/m
2となるように塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた(ホメオトロピック配向)。次に、50℃に冷却した後に、窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、40℃(固定化時のUV温度)で、照度190mW/cm
2、照射量310mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させた。その後、70℃で乾燥させた。光学異方性層のRe(550)およびRth(550)を透明支持体と同様の方法で測定したところ、Re(550)は0.1nm、Rth(550)は−165nmであった。
【0138】
<光学異方性層塗布液の組成>
液晶性化合物(液晶性化合物B01:液晶性化合物B02=90:10(質量比)で含む混合物):100質量部
垂直配向剤(S01):1質量部
密着改良剤:0.25質量部
レベリング剤::0.8質量部
重合開始剤:3質量部
増感剤:1質量部
アクリル系結合剤:8質量部
溶剤:メチルエチルケトン/シクロヘキサン(=86/14(質量%))固形分濃度33質量%となる量
【0139】
【化30】
【化31】
【0140】
【化32】
【0141】
【化33】
【0142】
密着改良剤:
【化34】
【0143】
レベリング剤:
【化35】
上記において、a:b=90:10である。
【0144】
重合開始剤:
【化36】
Meはメチル基を表す。
【0145】
増感剤:
【化37】
【0146】
アクリル結合剤:
【化38】
【0147】
実施例2〜10、比較例1〜2は、下記表に記載の通り、液晶性化合物、液晶性化合物の配合比率、固定化時の紫外線照射温度、配向膜の固形分濃度、配向膜の乾燥温度を下記表に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして光学補償フィルムを作製した。
【0148】
【表2】
【0149】
4.偏光板の作製
<接着層の形成>
実施例1の光学補償フィルムとポリビニルアルコール系偏光膜(厚み22μm)とを下記接着剤を用いて貼合し、且つ偏光膜の反対側表面に、同様にして富士フイルム(株)製、フジタックTD60UL(厚さ60μm)を貼合して、偏光板を作製した。なお、接着層の膜厚は20μmであった。
【0150】
<接着剤の作製>
以下の手順に従い、接着剤に用いるアクリレート系ポリマーを調整した。
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100質量部、アクリル酸3質量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を酢酸エチルと共に加えて固形分濃度30質量%とし窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させ、アクリレート系ポリマー(A1)を得た。
次に得られたアクリレート系ポリマー(A1)を用いて、以下の手順に従い、アクリレート系接着剤を作製した。
アクリレート系ポリマー(A1)固形分100質量部あたり2質量部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1質量部を加えシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し150℃で3時間乾燥させ、アクリレート系接着剤を得た。架橋剤であるコロネートL(日本ポリウレタン)は、2つ以上の芳香環を持つ架橋剤である。
【0151】
5.液晶表示装置の作製
<液晶セルの準備>
IPS型の液晶セルを備えるiPad(登録商標)[商品名;Apple社製]から、液晶パネルを取り出し、液晶セルのフロント側(表示面側)とリア側(バックライト側)に配置されていた光学フィルムをフロント側(表示面側)のみ取り除いて、液晶セルの表ガラス面を洗浄した。
【0152】
<液晶表示装置の作製>
上記IPS型液晶セルの表示面側表面に光学補償フィルム付きの偏光板を貼合した。
この様にしてIPS型液晶表示装置LCDを作製した。
作製したLCDを取り出したiPadに戻し、以下の評価を実施した。
【0153】
6.評価
<レターデーション>
上記で得られた光学補償フィルムのレターデーションを上述の方法に従い測定した。
【0154】
<偏光解消度の測定>
iPadの光源、偏光膜、サンプル、検光子、受光器(トプコン社製SR−UL1R)の光学系を構築し、偏光膜の吸収軸とサンプルの遅相軸は直交に配置した。正面での偏光解消度の測定では光源の法線方向上に偏光膜、サンプル、検光子、受光器を配置し、検光子を回転させて、最小輝度Lminと最大輝度Lmaxを測定した。また、サンプルを置かないブランク状態で、検光子を回転させて、最小輝度L
0minと最大輝度L
0maxを測定した。以下の式で偏光解消度を算出した。
偏光解消度=Lmin/Lmax−L
0min/L
0max
Lminはクロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記サンプルの最小輝度
Lmaxは平行ニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された上記サンプルの最大輝度
L
0minはクロスニコル状態の2枚の偏光板の最小輝度
L
0maxは平行ニコル状態の2枚の偏光板の最大輝度
【0155】
斜め方向の偏光解消度の測定では光源の法線方向上に偏光膜、サンプルを配置し、偏光膜の吸収軸方向に50度傾斜した線上に検光子、受光器を配置し、検光子を回転させて、最小輝度と最大輝度を測定した。正面と同様の計算式を用いて、斜め方向の偏光解消度を算出した。
【0156】
<オーダーパラメータの測定>
上記で作製に用いた光学異方性用塗布液に2色性色素を加え、水平配向膜を用いて、水平配向セルを作製した。日本分光社製V7070を用いて、液晶の配向方向に対して平行な入射偏光に対する吸光度「A
||」及び垂直な偏光入射に対する吸光度「A⊥」を測定し、以下の式から算出した。
S=(A
||−A⊥)/(2A⊥+A
||)
【0157】
<正面コントラスト(CR)の評価>
上記作製したIPS型の液晶表示装置それぞれについて、バックライトを設置し、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、黒表示時および白表示時の輝度を測定し、正面コントラスト比(CR)を算出し、以下の基準で評価した。
A:900≦CR
B:850≦CR<900
C:800≦CR<850
D:800>CR
【0158】
<上視野角CRの評価>
上記作製したIPS型の液晶表示装置それぞれについて、バックライトを設置し、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、黒表示時および白表示時の輝度を測定し、上下方向(方位角90および270度極角50度)のコントラスト比(CR)の平均を算出し、以下の基準で評価した。
A:400≦CR
B:370≦CR<400
C:340≦CR<370
D:340>CR
【0159】
<視野角CR評価>
上記作製したIPS型の液晶表示装置それぞれについて、バックライトを設置し、各々について測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示時および白表示時の輝度を測定し、極角60度方向の各象元の最小値の平均値を視野角コントラスト比(視野角CR)と定義し、算出し、以下の基準に従って、評価した。
A:視野角CRが100以上。
B:視野角CRが90以上、100未満。
C:視野角CRが80以上、90未満。
D:視野角CRが80未満。
【0160】
比較例3は液晶性化合物が使用されているiPhone4(APPLE社)のフロント偏光板および光学補償フィルムを剥して、評価を行った。
【0161】
比較例4は液晶性化合物が使用されている37Z3500(東芝社製TV)のフロント偏光板および光学補償フィルムを剥して、評価を行った。
【0162】
【表3】
【0163】
表から、本発明の光学補償フィルムは、正面コントラスト、斜め方向のコントラスト、および視野角コントラストに優れることがわかる。一方、偏光解消度が本発明の要件を満たさない比較例は、本発明の光学補償フィルムと比較して、正面コントラスト、斜め方向のコントラスト、および視野角コントラストの少なくともいずれかが劣ることがわかる。
【0164】
薄膜用のポリマーフィルムを用いた場合の実施例
下記に示す組成をそれぞれ有するドープP10及びドープT30をそれぞれ調製した。
ドープP10の組成:
市販の三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR88 100.0質量部
添加剤AA1 5.8質量部
添加剤AA2 1.8質量部
添加剤UU1 2.0質量部
ドープT30の組成:
セルロースアシレート(置換度2.42) 100.0質量部
添加剤AA1 5.8質量部
添加剤AA2 1.8質量部
添加剤UU1 2.0質量部
【0165】
添加剤AA1は、下記式で表される化合物である。下記構造式中、Rはベンゾイル基を表し、平均置換度が5〜7のものを使用した。
【0166】
【化39】
【0167】
添加剤AA2は、下記式で表される化合物である。R
9のそれぞれの構造式と置換度は以下に示す。
【0168】
【化40】
【0169】
添加剤UU1は、下記式で表される化合物である。
【0170】
【化41】
【0171】
ドープP10及びドープT30を用いて、溶液流延法により、積層フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、金属支持体上に上記2種のドープを流延した。このとき、金属支持体面側から、下側層(T30)、中間層(P10)及び上側層(T30)の順で流延した。各層の粘度は、共流延が可能なように各ドープの組合せに応じて適宜、固形分濃度で調整し、均一流延が可能な状態になるように設定した。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥し、積層フィルムの状態で巻き取った。
その後、この3層の積層フィルムを剥離した。下側層のフィルムは、上記で製造したポリマーフィルムの光学性能と同等(Re=1.0nm、Rth=35nm)であり、フィルム膜厚は20μmであった。この様にして、薄膜のポリマーフィルムを安定的に作製できた。
【0172】
この薄膜のフィルムを、偏光膜の保護フィルムの変わりに配置して、同一の構成の液晶表示装置をそれぞれ製造した。これらの液晶表示装置について、上記と同様に評価したところ、同様に良好な評価結果が得られた。