特許第6227639号(P6227639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6227639EUV用途向け光学素子を冷却するための方法および冷却システム
<>
  • 特許6227639-EUV用途向け光学素子を冷却するための方法および冷却システム 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227639
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】EUV用途向け光学素子を冷却するための方法および冷却システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20171030BHJP
   G02B 7/195 20060101ALI20171030BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G03F7/20 521
   G02B7/195
   H05K7/20 N
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-518988(P2015-518988)
(86)(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公表番号】特表2015-529836(P2015-529836A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2013062862
(87)【国際公開番号】WO2014001188
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】102012210712.6
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/663,702
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター デンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ハルトイェーズ
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0091485(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0220302(US,A1)
【文献】 米国特許第05327442(US,A)
【文献】 独国特許発明第19622472(DE,C1)
【文献】 特開2011−053687(JP,A)
【文献】 特表2012−504323(JP,A)
【文献】 特開平08−211211(JP,A)
【文献】 特開2011−158332(JP,A)
【文献】 特開平01−263471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
G02B 7/00、7/18−7/24
H05K 7/20
B01F 1/00−5/26
F21V 23/00−37/00、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV用途向けの光学素子(12、14)を冷却する方法であって、熱を該光学素子(12、14)からヒートシンク(22)に伝達し、第1供給ライン(26)を介して第1冷媒を前記ヒートシンク(22)内の冷却チャネル(24)に導入して、前記第1冷媒が前記冷却チャネル(24)を流れる層流に影響を与え、該工程において前記ヒートシンク(22)から熱を吸収するようにし、前記第1冷媒を、前記冷却チャネル(24)に流した後、前記光学素子(12、14)から出る排出ライン(28)に排出し、第2冷媒を第2供給ライン(38)を介して排出ライン(28)に導入し、前記第1冷媒および第2冷媒を、前記冷却チャネル(24)よりも前記光学素子(12、14)から離れた場所における前記第2供給ライン(38)の下流で、前記排出ライン(28)に外部から導入される力場にさらして、前記第1冷媒および前記第2冷媒を相互に混合することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第1冷媒と前記第2冷媒とで相互に、または前記第1および/または前記第2冷媒が前記排出ライン(28)の壁部と共に、電気二重層を形成し、前記第1冷媒および前記第2冷媒を力場としての交流電場にさらし、該交流電場が前記排出ライン(28)の前記壁部を通って作用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記力場の強さを、前記排出ライン(28)における前記第1冷媒および前記第2冷媒の流れが乱流となるように設定する方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法において、前記力場が前記排出ライン(28)に垂直に作用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の方法において、少なくとも1つの第3冷媒を前記第2供給ライン(38)の下流の少なくとも1つの第3供給ライン(46)を介して前記排出ライン(28)に供給し、前記第1冷媒および前記第2冷媒の混合物と少なくとも1つの第3冷媒とを前記排出ライン(28)に外部から導入される力場にさらして、前記第1冷媒および第2冷媒の混合物と前記少なくとも1つの第3冷媒とを相互に混合することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記第1および第2冷媒の混合物と前記少なくとも1つの第3冷媒とで相互に、または、前記第1および第2冷媒の混合物および/または前記第3冷媒と前記排出ライン(28)の壁部(50)とで電気二重層を形成し、前記第1および第2冷媒の混合物と前記少なくとも1つの第3冷媒とを力場としての交流電場にさらして相互に混合し、該交流電場が前記排出ライン(28)の前記壁部(50)を通って作用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載の方法において、前記第1冷媒と前記第2冷媒が同一の液体であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の方法において、前記第1冷媒、前記第2冷媒、および前記少なくとも1つの第3冷媒が同一の液体であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜の何れか一項に記載の方法において、前記第1冷媒と第2冷媒が異なる液体であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5または6に記載の方法において、前記第1冷媒と第2冷媒、および/または前記少なくとも1つの第3冷媒が異なる液体であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法において、前記第1冷媒と前記第2冷媒を、前記排出ライン(28)に流した後で、それらが前記第1および第2供給ラインに再び供給される前に、相互に分離することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記第1冷媒と前記第2冷媒、および/または前記少なくとも1つの第3冷媒を、前記排出ライン(28)に流した後で、それらが前記第1および第2、および/または前記少なくとも1つの第3供給ラインに再び供給される前に、相互に分離することを特徴とする方法。
【請求項13】
EUV用途向けの光学素子(12、14)を冷却する冷却システムであって、前記光学素子(12、14)からヒートシンク(22)へ熱を伝達するヒートシンク(22)と、該ヒートシンク(22)内の冷却チャネル(24)と、
第1冷媒を冷却チャネル(24)へ、前記第1冷媒が前記冷却チャネル(24)を流れる層流に影響を与え、該工程内で、前記ヒートシンク (22)から熱を吸収するように導入する第1供給ライン(26)とを備え、さらに、前記第1冷媒を前記冷却チャネル(24)から排出する排出ライン(28)を備え、該排出ラインは前記光学素子(12、14)から出ており、第2冷媒を前記排出ライン(28)に導入する第2供給ライン(38)が前記排出ライン(28)に通じ、前記第1冷媒と前記第2冷媒とを混合する混合装置(40)が、前記冷却チャネル(24)よりも前記光学素子 (12、14)から離れた場所の前記排出ライン(28)の外部の前記第2供給ライン(38)の下流に配置され、前記混合装置(40)が、前記第1冷媒および前記第2冷媒を、前記排出ライン(28)に外部から導入される力場にさらすように設計されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項14】
請求項13に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒および前記第2冷媒は相互に電気二重層を形成するのに適している、または、前記第1冷媒および/または前記第2冷媒は、前記排出ライン(28)の壁部と共に電気二重層を形成するのに適しており、前記混合装置(40)は前記第1冷媒および前記第2冷媒を力場としての交流電場にさらすように設計され、該交流電場は前記排出ライン(28)の前記壁部(42)を通って作用することを特徴とする冷却システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の冷却システムにおいて、前記力場の強さが前記排出ライン(28)内において前記第1冷媒および前記第2冷媒の乱流を生成するために調節可能であることを特徴とする冷却システム。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、前記混合装置(40)が前記排出ラインに垂直に前記力場を生成することを特徴とする冷却システム。
【請求項17】
請求項13〜16の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、少なくとも1つの第3供給ライン(46)が、前記第2供給ライン(38)の下流の前記排出ライン(28)に通じ、少なくとも1つの第3冷媒が前記排出ライン(28)に導入され、第1および第2冷媒の混合物を前記第3冷媒と混合させる少なくとも1つのさらなる混合装置(48、54)が前記排出ライン(28)の外部の前記第2供給ライン(46)の下流に配置され、前記混合装置(48、54)が前記第1および第2冷媒の混合物と前記第3冷媒とを前記排出ライン(28)に外部から導入される力場にさらすように設計されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項18】
請求項17に記載の冷却システムにおいて、前記第1および第2冷媒の混合物と前記少なくとも1つの第3冷媒は、相互に電気二重層を形成するのに適している、または、前記第1および第2冷媒の混合物および/または前記第3冷媒は、前記排出ライン(28)の壁部(50、56)と共に電気二重層を形成するのに適しており、前記少なくとも1つのさらなる混合装置(48、54)が前記第1および第2冷媒の混合物と前記少なくとも1つの第3冷媒とを力場としての交流電場にさらすように設計され、該交流電場が前記排出ライン(28)の前記壁部(50、52)を通って作用することを特徴とする冷却システム。
【請求項19】
請求項13〜16の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒および前記第2冷媒が同一の液体であることを特徴とする冷却システム。
【請求項20】
請求項17または18に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒および前記第2冷媒と、前記少なくとも1つの第3冷媒とが同一の液体であることを特徴とする冷却システム。
【請求項21】
請求項13〜16の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒と前記第2冷媒が異なる液体であることを特徴とする冷却システム。
【請求項22】
請求項17または18に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒と前記第2冷媒、および/または前記少なくとも1つの第3冷媒が異なる液体であることを特徴とする冷却システム。
【請求項23】
請求項21に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒および前記第2冷媒を分離する分離装置(76)を特徴とし、該分離装置が前記排出ライン(28)と、前記第1、第2供給ライン(26、38,46)との間に配置される冷却システム。
【請求項24】
請求項22に記載の冷却システムにおいて、前記第1冷媒および前記第2冷媒、および/または前記少なくとも1つの第3冷媒を分離する分離装置(76)を特徴とし、該分離装置が前記排出ライン(28)と、前記第1、第2および/または前記少なくとも1つの第3供給ライン(26、38,46)との間に配置される冷却システム。
【請求項25】
請求項13〜24の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、少なくとも1つの流れ障害物(102、104、106)が前記力場の作用領域内の前記排出ライン(28)に配置されることを特徴とする冷却システム。
【請求項26】
請求項13〜25の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、前記冷却チャネル(24)および/または前記排出ライン(28)が少なくとも1つの寸法において1mm未満の内径(clear width)を有することを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2012年6月25日に出願されたドイツ特許出願第10 2012 210 712.6号の優先権を主張するものであり、その全体の内容を本明細書に参照として援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明はEUV用途向け光学素子を冷却する方法に関し、ここで、熱は光学素子からヒートシンクに伝達され、第1冷媒は第1供給ラインを介してヒートシンク内の冷却チャネルに、 第1冷媒が冷却チャネルを流れる層流に影響を与え、この工程においてヒートシンクから熱を吸収するように導入され、第1冷媒は冷却チャネル内を流れた後、光学素子から出ている排出ラインに排出される。
【0003】
本発明はさらにEUV用途向け光学素子を冷却する冷却システムに関し、光学素子からヒートシンクへ熱を伝達するヒートシンク、ヒートシンク内の冷却チャネル、および第1冷媒が冷却チャネルを流れる層流に影響を与え、この工程においてヒートシンクから熱を吸収できるように、第1冷媒を冷却チャネルに導入する第1供給ラインを備え、また、冷却チャネルから第1冷媒を排出する排出ラインを備え、この排出ラインは光学素子から出ている。
【背景技術】
【0004】
冒頭に記載したタイプの方法および冷却システムは、米国特許第7,591,561 B2号から知られている。
【0005】
EUV用途向け光学素子は、例えば、マイクロリソグラフィ用EUV投影露光装置のミラーである。
【0006】
マイクロリソグラフィ用投影露光装置は、例えば、微細構造の電子コンポーネントの製造に使用される。EUV投影露光装置は、短波放射、より詳細には波長範囲が例えば約5nm〜約20nmの、EUVと略される極紫外線放射で作動する。
【0007】
EUV用途向け光学素子において発生する技術的な問題は、光学素子がEUV放射にさらされることによってかなり熱せられることである。光学素子への熱入力は、作動中光学素子に変形を生じさせるという影響を与える。光学素子の変形は、望ましくない結像収差を投影露光装置に招く可能性がある。
【0008】
従って、光学素子を冷却するために、EUV放射の影響による、作動中の光学素子への熱入力を光学素子から放散させる冷却システムが提案されている。
【0009】
引用した米国特許第7,591,561 B2号では、光学素子と一体化されたヒートシンクに冷媒を誘導する複数の冷却チャネルを設けることが最初に提案されており、そこで、冷媒は冷却チャネルを流れる層流に影響を与える。
【0010】
なお、この点は、本発明の意味において、ヒートシンクを光学素子の一体部分、または光学素子が好適には熱伝導的に接続された別個のヒートシンクとすることができる。さらに、言うまでもなく、本発明の意味において、ヒートシンクは冷媒用の複数の冷却チャネルおよび/または排出ラインを有することができる。この点において、曖昧になる可能性のあるドイツ語の単語、「ein(a/an;one)」は、本明細書および請求項において、数詞と解釈せず、不定冠詞と解釈されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,591,561 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
光学素子の近くの冷却チャネル内の冷媒の層流は、振動が冷媒の流れによって光学素子に導入されないという利点を有する。このような振動は光学素子の光学特性を損なわせる可能性がある。対照的に、冷媒の層流は、冷媒への熱伝達および冷媒による熱放散が冷媒の乱流と比較すると少ないという欠点がある(例えば、Melcom R. Howells氏による、1996年4月発行の基本原理に関する論文、Opt.Eng.35(4)、1187〜1197ページ参照)。反対に、光学素子の近くの冷媒の乱流によって光学素子に振動が生じ、層流と比較して熱放散が向上する。
【0013】
このような背景に鑑み、本発明は、光学素子の振動を生じさせずに光学素子の十分な冷却を確実に行う、冒頭に記載したタイプの方法および冷却システムを開発する目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、冒頭に記載した方法に関して、第1冷媒と第2冷媒を相互に混合するために、第2冷媒を第2供給ラインを介して排出ラインに導入し、第1冷媒および第2冷媒を、冷却チャネルよりも光学素子から離れた場所における第2供給ラインの下流で、排出ラインに外部から導入される力場にさらすという事実によって実現される。
【0015】
冒頭で述べた冷却システムに関して、本発明が基づく目的は、第2冷媒を排出ラインに導入する第2供給ラインが排出ラインに開口され、第1冷媒を第2冷媒と混合させる混合装置が、冷却チャネルよりも光学素子から離れた場所における、排出ラインの外部の第2供給ラインの下流に配置されるという事実によって実現され、ここで、混合装置は、第1冷媒および第2冷媒を排出ラインに外部から導入される力場にさらすように設計されている。
【0016】
本発明に係る方法および本発明に係る冷却システムは、冷媒が光学素子の近くのヒートシンクの層流に影響を与え、振動が光学素子に導入されるのを防ぐという事実に基づくものである。冷媒の熱伝達能力を高めるために、冷却チャネルと光学素子の間の距離よりも光学素子からの距離が離れた排出ラインに第2冷媒を導入し、ここで、第1および第2冷媒は、排出ラインに外部から結合される力場によって排出ライン内で相互に混合され、このため熱放散が高まる。排出ライン内で作用する力場によって、排出ラインに流入する第1および第2冷媒が攪拌される、換言すれば、その結果、第1と第2冷媒の間の熱交換領域が拡大され、第1および第2冷媒の混合物の熱伝達能力が高められる。第1および第2冷媒の排出ラインにおける混合により、排出ラインの振動を生じさせる可能性のあることは事実であるが、第1および第2冷媒の混合は、ヒートシンク内の冷却チャネルと光学素子の間の距離よりも光学素子から大きく離れた距離で行われるので、混合領域の振動は光学素子に伝わらない、またはほんの僅かの振動が光学素子に伝わる。必要に応じて、力場の作用領域において排出ラインをヒートシンクから振動分離させてもよい。
【0017】
外部から排出ラインに導入される力場は、例えば、外部からかけられる圧力勾配、電場および/または磁場、音場などであってもよい。排出ラインに外部から導入されるこのような力場は、排出ラインの大きさに制限がない、つまり、排出ラインを数ミリまたは1ミリ未満の範囲の非常に小さな断面で具現化することができるという、攪拌機構を使う機械的な混合に勝る利点がある。
【0018】
第2冷媒は必要とされる冷却能力に応じて排出ラインに供給することができる。冷却チャネル内の冷媒の層流によって光学素子が十分に冷却された場合、第2冷媒の供給を、例えば制御弁によってオフにすることができる。
【0019】
1つの好適な方法の構成において、第1冷媒および第2冷媒は相互に電気二重層を形成する、または、第1および/または第2冷媒は排出ラインの壁部と電気二重層を形成し、この場合、第1冷媒および第2冷媒は力場としての交流電場にさらされ、この交流電場は排出ラインの壁部を通じて作用する。
【0020】
冷却システムの場合、第1冷媒および第2冷媒は、好適には電気二重層を形成するために相互に適合している、または、第1冷媒および/または第2冷媒は排出ラインの壁部と共に電気二重層を形成するのに適し、ここで、混合装置は、第1冷媒および第2冷媒を力場としての交流電場にさらすように設計され、この交流電場は排出ラインの壁部を通じて作用する。
【0021】
液体と壁部または液体と液体の間の電気二重層を使用して2つ以上の液体を混合するミキサーが、ドイツ特許出願第102 13 003 B4号に記載されている。そこに記載されているミキサーは、化学、製剤または生化学プロセス産業におけるマイクロフルイディクスで使用されるものである。上述の構成において、冷媒を適切に選択して第1冷媒および第2冷媒で相互に電気二重層を形成することができる、または第1および/または第2冷媒と排出ラインの壁部とで電気二重層を形成することができ、この電気二重層に、排出ラインの壁部の外部から作用する振動交流電場が力を及ぼし、それによって攪拌、従って第1および第2冷媒の混合と、熱交換領域の拡大とがもたらされる。力場としての交流電場の利点は、交流電場の強さ、従って攪拌強度を簡単に制御できることである。
【0022】
言うまでもなく、排出ラインの壁部は、交流電場の少なくとも作用領域において電導性がなく、従って交流電場に対して遮蔽効果はない。
【0023】
好適には、交流電場の力線は、排出ラインにおける第1および第2冷媒の流れ方向に略垂直に走る。
【0024】
さらに好適には、本発明に係る方法において、力場の強さを、排出ラインにおいて第1冷媒および第2冷媒の流れが乱流となるように設定する。
【0025】
冷却システムの場合、従って、力場の強さは、排出ラインにおいて第1冷媒および第2冷媒の乱流を生成するように調節可能である。
【0026】
前述の様に、乱流による熱伝達は層流よりも向上している。排出ラインの乱流領域と光学素子との間の距離が大きいことにより、乱流によって生成される振動は光学素子に作用しない、ここで、必要に応じて、光学素子から乱流領域を離す振動を付加的に提供することもできる。
【0027】
よって本発明において、好適には、2つの冷却回路、詳細には、光学素子に隣接して熱を吸収する層流冷却回路および光学素子から大きく離れた乱流冷却回路による冷却を提供する。
【0028】
本方法のさらに好適な構成では、第2供給ラインの下流の少なくとも1つの第3供給ラインを介して、少なくとも1つの第3冷媒を排出ラインに供給し、第1と第2冷媒の混合物と少なくとも1つの第3冷媒とを排出ラインに外部から導入される力場にさらして、第1と第2冷媒の混合物と、少なくとも1つの第3冷媒とを相互に混合する。
【0029】
冷却システムの場合、好適には、少なくとも1つの第3供給ラインが第2供給ラインに対して下流にある排出ラインに通じ、少なくとも1つの第3冷媒が排出ラインに導入され、 第1、第2冷媒の混合物を第3冷媒と混合させる少なくとも1つのさらなる混合装置が排出ラインの外部の第2供給ラインの下流に配置され、ここで、混合装置は、第1、第2冷媒の混合物と第3冷媒とが排出ラインに外部から導入される力場にさらされるように設計されている。
【0030】
この冷却システムの構成およびその方法は、従って、冷媒を排出ラインに供給するラインのカスケード接続を提供し、この結果、熱伝達のさらなる向上およびこれによる光学素子のさらに良好な冷却がもたらされる。第3冷媒は排出ラインに存在する第1、第2冷媒の混合物と共に外部的に作用する力場によって攪拌され、ここでも、第1、第2冷媒の混合物と第3冷媒とが乱流となるように攪拌することができる。
【0031】
冷媒を排出ラインへ供給するラインのカスケード接続を有する冷却システムの構成の場合も、好適には、冷媒を適切に選択することによって、第1、第2冷媒の混合物と少なくとも1つの第3冷媒との間に電気二重層を形成することができる、または電気二重層を第1、第2冷媒の混合物および/または第3冷媒と排出ラインの壁部との間に形成することができ、ここで、力場としての交流電場は排出ラインの壁部を通じて電気二重層に作用する。
【0032】
方法および冷却システムの場合、第1冷媒および第2冷媒と、必要に応じて少なくとも1つの第3冷媒とを同じ液体とすることができる。
【0033】
この利点は、冷却システムを実行する作業が全体的に少なくてすむことであり、例えば熱交換器における熱放散後、冷媒回路において冷媒を対応する第1、第2および第3供給ラインに再度供給する場合、冷媒を対応する供給ラインに供給する前に再び分離させる必要はない。
【0034】
しかしながら、第1冷媒と第2冷媒、および/または必要に応じて少なくとも1つの第3冷媒を異なる液体とすることもできる。
【0035】
その結果、冷却システムは上述の構成の場合よりも複雑となるが、この構成は、電解特性の異なる液体が使用され、これらがその相互の境界層において電気二重層を形成し、冷媒が交流電場にさらされた場合、これらの液体が交流電場に特に良好に反応して冷媒間の界面のより大きなアンフォールディング、従って、熱伝達の向上が実現されるという利点がある。
【0036】
上述の構成の場合、本方法では、第1冷媒と第2冷媒、および/または必要に応じて少なくとも1つの第3冷媒を排出ラインに流した後、第1供給ラインと第2供給ラインおよび/または必要に応じて少なくとも1つの第3供給ラインに供給する前に、相互に分離させる。
【0037】
従ってこのため冷却システムは排出ラインと、第1、第2および/または必要に応じて少なくとも1つの第3供給ラインとの間に分離装置を有する。
【0038】
分離装置により、異なる冷媒は、同一の冷媒の場合の様に、冷媒閉回路内を循環することができる。つまり、第1、第2および/または必要に応じて少なくとも1つの第3冷媒を分離した後、これらをそれらに割り当てられた供給ラインに分離して再び供給することができる。
【0039】
冷却システムのさらに好適な構成において、少なくとも1つの流れ障害物を力場の作用領域の排出ラインに配置する。
【0040】
このような流れ障害物は、例えば、その縦軸が排出ラインの主要流れ方向に垂直に延びる、丸い、または四角い断面を有するピンであってもよい。力場との相互作用において、この少なくとも1つの流れ障害物は冷媒の混合をさらに向上させる。具体的には、特に少なくとも1つの流れ障害物が力場の作用範囲の先頭に位置する場合、冷媒の主要流れ方向における力場の作用領域を、少なくとも1つの流れ障害物のために短くすることができる。
【0041】
冷却システムのさらに好適な構成において、冷却チャネルおよび/または排出ラインは、少なくとも1つの寸法において、1mm以下の内径(clear width)を有する。
【0042】
上述の様に、本発明に係る冷却システムおよび本発明に係る方法において、ヒートシンク内に複数の冷却チャネルを設け、冷却チャネルから複数の排出ラインを設けることができる。さらに、本発明の範囲内において、ヒートシンクを光学素子と一体化することができる。例えば、光学素子がミラーの場合、ヒートシンクをミラーの基板によって形成してもよいし、これと一体化させてもよい。
【0043】
さらなる利点および特徴は下記の記載および添付の図面から明らかである。
【0044】
言うまでもなく、上述の特徴および以下にさらに説明する特徴は、それぞれ記載される組み合わせにおいてだけでなく、本発明の趣旨から逸脱しない限り、その他の組み合わせで、または単独で使用してもよい。
【0045】
本発明の例示的実施形態を図面に示し、図面を参照して以下により詳しく説明する。図は光学素子用の冷却システムを示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】光学素子用の冷却システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図では、光学素子12用の冷却システムが参照符号10を用いて略的に示されており、この例示的実施形態には光学素子14がさらに示されている。
【0048】
光学素子12および光学素子14はEUV用途向けに設計されている。光学素子12および光学素子14は、例えば、マイクロリソグラフィ用EUV投影露光装置のミラーである。
【0049】
光学素子12は入射側面16を有し、光学素子14は入射側面18を有する。光学素子12および14の作動中、入射側面はEUV放射20にさらされる。
【0050】
EUV放射20は光学素子12および14への熱入力を導き、冷却システム10は、光学素子12および14から熱を放散させることにより、光学素子12および14を冷却する働きをする。
【0051】
冷却システム10は、光学素子12および14が熱伝導的に接続されるヒートシンク22を有する。この場合、光学素子12および14はヒートシンク22に機械的に固定され、ここで、熱は光学素子12および14からヒートシンク22へと伝導によって伝達される。この場合、熱伝導率は光学素子12および14のヒートシンク22および使用される材料への接触圧に本質的に依存する。例えば、銅、スチール、シリコンまたは石英を光学素子12および14の材料として利用することができ、ヒートシンク22は、例えばSiC、SSiCなどのセラミックの非導電材料から製造することができる。しかしながらヒートシンク22は金属、具体的には銅、アルミニウムまたはスチールから構成することもできる。ヒートシンク22の材料は用途に合わせて選択することができ、材料の選択は、例えば、熱膨張係数が光学素子12、14の熱膨張係数に適合するように、また、最適な熱伝導が達成できるように行う。
【0052】
光学素子12および14をヒートシンク22に機械的に接続する代わりに、ヒートシンク22を光学素子12および14と一体化させることもできる。例えば、光学素子12および14がミラーの場合、ヒートシンク22を個々のミラー基板と一体化させることができる。さらに、共通のヒートシンク22を光学素子12および14に割り当てた、本明細書に記載する配置に代えて、光学素子12および14の各々に専用のヒートシンクを割り当ててもよい。
【0053】
冷却チャネル24はヒートシンク22内に存在し、この冷却チャネルは例示的実施形態において第1セクション24aおよび第2セクション24bを有する。一般に、供給ライン26は冷却チャネルに通じている。2つのセクション24aおよび24bに沿って供給ライン26aおよび供給ライン26bがある。冷却チャネルは光学素子12および14に近接して配置されている。
【0054】
排出ライン28は冷却チャネル24から、より詳細には冷却チャネル24のセクション24aおよび24bから出ており、当該排出ラインは光学素子12および14から出ている。例示的実施形態において、排出ライン28は冷却チャネル24に対して垂直に出ており、光学素子12および14から垂直に出ているが、排出ライン28は光学素子12および14から横方向、つまり、冷却ライン24と実質的に平行に配置することもできる。
【0055】
例示的実施形態において、排出ライン28は第1セクション30およびそれに続くセクション32と、それに続く分岐セクション34aおよびセクション34bと、さらにそれに続くセクション36aおよびセクション36bとを有する。
【0056】
例示的実施形態において、第2供給ライン38は排出ライン28の第1セクション30と第2セクション32の間の排出ライン28に通じており、ここで、2つの第2供給ライン38aおよび38bは、セクション30と32との間の排出ライン28に通じている。
【0057】
供給ライン38の下流において、冷却システム10は第1混合装置40を有し、これは、排出ライン28の外側、ここでは排出ライン28の第2セクション32の外側に配置されている。混合装置40は、図からも明らかであるように、冷却チャネル24よりも光学素子12または光学素子14から離れた場所に配置されている。
【0058】
混合装置40は、排出ライン28、ここでは排出ライン28の第2セクション32の壁部42を通って排出ライン28の内部に作用する力場を生成するように設計されている。
【0059】
この場合、混合装置40は力場としての交流電場を生成し、このために2つの電極44aおよび44bを有し、これらは平板コンデンサの形態で相互に対向している。AC電圧を電極44aおよび44bに印加すると、E−(+)およびE+(−)で示すように、電極44aと44bとの間の空間に交流電場が生成される。この場合、交流電場の力線は、排出ライン28、より詳細には排出ライン28の第2セクションに垂直に走っている。
【0060】
排出ライン28をさらに進んだ所、つまり排出ライン28の第2セクション32の下流において、第3供給ライン46は排出ライン28に通じる。例示的実施形態では2つの第3供給ライン46aおよび46bを示しており、ここで、第3供給ライン46aは供給ライン28のセクション34aに通じ、第3供給ライン46bは排出ライン28のセクション34bに通じている。
【0061】
排出ライン28のセクション44aへの第3供給ライン46aの開口の下流において、冷却システム10は第2混合装置48を有しており、これは力場を生成して壁部、ここでは排出ライン28のセクション36aの壁部50を通って排出ライン28、ここでは排出ライン28のセクション36aに作用するように設計されている。混合装置40と同様に、混合装置48は力場としての交流電場を生成し、このために2つの電極52aおよび52bを有している。 ここでも混合装置48によって生成される交流電場は、排出ライン28、より詳細には排出ライン28のセクション36aに垂直に作用する。
【0062】
同様に、さらなる混合装置54を排出ライン28のセクション34bに通じる第3供給ライン46bの開口の下流に配置し、このさらなる混合装置は、排出ライン28、ここでは排出ライン28のセクション36bの内部に壁部56を通って作用する力場を発生させる。混合装置40と同様に、混合装置54は力場としての交流電場を発生させ、このために2つの電極58aおよび58bを有する。この場合、交流電場は排出ライン28のセクション36bに垂直に作用する。
【0063】
言うまでもなく、少なくとも排出ライン28の壁部42、50および56を非導電材料から製造して、混合装置40、48および54から生成された上述の交流電場が壁部42、50および56によって遮蔽されないようにする。
【0064】
冷却システム10を使用して実行することのできる、光学素子12および14を冷却する方法、および冷却システム10のさらなるコンポーネントを以下に記載する。
【0065】
第1供給ライン26aおよび26bを介して光学素子12および14を冷却する方法において、第1冷媒を冷却チャネル24、ここではセクション24aおよび24bに導入する。この場合、第1冷媒を冷却チャネル24に導入して、第1冷媒が冷却チャネル24の層流に影響を与えるようにする。層流の基準としてレイノルズ数を使用し、これは冷媒の特徴的な流速、冷却チャネル24の特徴的な長さ、冷媒の動粘性率または動的粘性および密度に依存する。レイノルズ数の臨界値から、層流は小さな外乱に対して不安定になる。管流の場合、レイノルズ数の臨界値は約2300である。冷却チャネル24内の第1冷媒の流れが厳密に層状となるように、レイノルズ数を500以下にするようにしなければならない。
【0066】
しかしながら、レイノルズ数自身は層流から乱流への遷移を正確に判断するには十分でない。冷却チャネル24の内壁における冷媒の摩擦もここでは非常に重要である。
【0067】
冷却チャネル24のセクション24aおよび24bにおける第1冷媒の層流を矢印60aおよび60bで示す。
【0068】
第1冷媒は冷却チャネル24を流れた後、排出ライン28に排出される。ここで、第1冷媒の流れは、矢印62で示すように、セクション30ではまだ層流である。排出ライン28において、第1冷媒は光学素子12および14から離れて排出される。
【0069】
第1冷媒の層流の冷却能力が光学素子12および14の所望される冷却にとって十分でない場合、第2供給ライン38を介して第2冷媒が排出ライン28に導入され、ここで、供給ライン38aおよび38bはそれぞれ矢印64aおよび64b、さらに矢印66aおよび66bに沿っている。
【0070】
排出ライン28のセクション32に共に流入する第1冷媒および第2冷媒は、相互に電気二重層を形成するのに適している、または、第1冷媒および/または第2冷媒は、排出ライン28のセクション32の壁部と共に電気二重層を形成するのに適している。
【0071】
第1冷媒および第2冷媒は、 第1冷媒および第2冷媒が異なる電解特性を持つ異なる液体、例えば、第1冷媒が水で第2冷媒がアルコール、水溶液、食塩水または有機液体であれば、相互に電気二重層を形成することができる。電気二重層は2つの冷媒の界面に形成される。
【0072】
第1冷媒と第2冷媒が同一の液体であれば、排出ライン28におけるセクション32の壁部の材料を適切に選択し、液体を適切に選択することによって、少なくとも排出ライン28の壁部42に対するそれぞれの冷媒の境界層において、電気二重層が形成される。
【0073】
排出ライン28のセクション32において、混合装置40によって生成された交流電場は、電気二重層、正確には第1および第2冷媒の主要流れ方向に垂直に作用し、それによって第1冷媒と第2冷媒との間の界面のアンフォールディングがもたらされる。第1冷媒と第2冷媒との間の境界層のアンフォールディングの結果、これら2つの冷媒は相互によく混合され、それに応じて熱交換領域が増大する。
【0074】
この場合、混合装置40によって生成される交流電場の強さは調節可能であり、ここで、交流電場の強さは、渦線67によって示されるように、排出ライン28のセクション32における第1および第2冷媒の流れが乱流となるように設定してもよい。第1および第2冷媒の強い攪拌によって、このように、排出ライン28のセクション32に乱流が生成され、この乱流により、冷媒による熱伝達が増強される。
【0075】
第1および第2冷媒の混合物は、排出ライン28のセクション32から排出ライン28の分岐に沿ってセクション34aおよび34bに流される。排出ライン28のセクション34aおよび34bにおいて、第1および第2冷媒の混合物は、矢印68aおよび68bで示すように、再び層流となる。
【0076】
冷却能力をさらに増大させようとする場合、第3供給ライン46aおよび46bを介して、第3冷媒をそれぞれ矢印70a、72aおよび70b、72bに沿って導入し、第1冷媒と第2冷媒の混合物と第3冷媒とを排出ライン28のさらなるセクション36aおよび36bにそれぞれ流入する。
【0077】
第1冷媒と第2冷媒の混合物および第3冷媒の構成に応じて、第1冷媒と第2冷媒の混合物と第3冷媒とは再び相互に電気二重層を形成する、または、第1冷媒と第2冷媒の混合物および/または第3冷媒は、排出ライン28のセクション36aおよび36bの壁部50および56とそれぞれ電気二重層を形成する。混合装置48および混合装置54によって、第1冷媒と第2冷媒の混合物と第3冷媒との間の分離層が再びアンフォールドされ、混合が生じ、混合装置48および混合装置54によってそれぞれ生成された交流電場の強さに応じて、第1冷媒と第2冷媒の混合物と第3冷媒のセクション36aおよび36bにおける流れがそれぞれ乱流になる。
【0078】
例示的実施形態において、第2冷媒は第3冷媒と同じ液体であるが、第2冷媒と第3冷媒を異なる液体とすることもできる。
【0079】
例示的実施形態において、第1冷媒は第1液体であり、第2冷媒および第3冷媒は同一の第2液体である。第1冷媒は例えば水であり、第2および第3冷媒はアルコール、食塩水、有機液体などである。
【0080】
この場合、分離装置76は排出ライン28の下流に配置され、この分離装置内で第1液体は第2液体から分離されている。第1冷媒から熱を放散させて第1冷媒を調節するために、第1ライン78を介して、第1液体 (第1冷媒)が分離装置76から熱交換器80aおよび80bに供給される。熱交換器は例えば外部の機械ユニット内にある。第1ライン82a、82bと、ポンプユニット84a、84bと、第1ライン86a、86bとをさらに介して、第1冷媒は供給ライン26aおよび26bから冷却チャネル24内に再び供給される。第1冷媒は、従って、冷却チャネル24の冷媒の層流のおかげで、層流の冷却回路を形成する第1回路を循環する。
【0081】
本実施形態において第2および第3冷媒を形成する第2液体は、熱放散および調整のために、分離装置76から第2ライン88を介して外部の第2熱交換器90aおよび90bに供給され、そしてさらに第2ライン92aおよび92b、第2ポンプユニット94aおよび94bならびに第2ライン96aおよび96bをさらに介して、供給ライン46aおよび46bから排出ライン28内に再び供給され、 またさらに第2ライン98aおよび98bを介して、供給ライン38aおよび38bから排出ライン内に供給される。
【0082】
ライン98aおよび98bと同様に、切替可能な弁をライン96aおよび96bに配置して、必要に応じて、すなわち必要とされる冷却能力に応じて、第2、第3冷媒の供給ライン38a、38bおよび46a、46bへの供給をオン、オフに切替える、または調節することができる。
【0083】
本実施形態において第2、第3冷媒を形成する第2液体は、よって第2冷却回路を循環し、第2冷却回路は、混合装置40、48および54ならびに排出ライン28のセクション32、36aおよび36bにおいて乱流を生成する可能性のため、外乱冷却回路を形成する。
【0084】
図において、線100は分離線を示し、線の上部には冷却システム10の層流領域があり、線の下には冷却システム10の乱流領域がある。乱流領域は光学素子12および14から離れたところにあるので、この領域から冷媒の乱流による振動が発生しても光学素子12および14には伝わらない、または僅かな振動のみがそれらに伝わる。また、乱流領域の層流領域からの振動デカップリングをさらに設けることもできる。
【0085】
例示的実施形態において、流れ障害物102、104および106を排出ライン28のセクション32、36aおよび36bに設置し、これらの流れ障害物は混合装置40、48および54によって生成される交流電場と相互作用して、第1冷媒と第2冷媒の混合または第1および第2冷媒の第3冷媒との混合をさらに増強させ、これによって熱放散をさらに向上させる。
【0086】
第1冷媒、第2冷媒および第3冷媒は、例えば約1sl/min〜約5sl/minの範囲の流量で供給ライン26、38および46にそれぞれ供給され、流量は好適には約3sl/minであり、slは標準リットルである。
【0087】
排出ライン28を囲む壁全体はヒートシンク22と一体成型することができ、例えばSiC,SSiCなどのセラミックで製造することができる。
【0088】
第1、第2および第3冷媒として使用する液体は、それらが排出ラインの壁部と共に、または相互に電気二重層を形成するのに適しているのであれば、所望に応じて選択することができる。使用できる液体の例として、水、水溶液、食塩水、アルコール、有機液体がある。
【0089】
混合装置40、48および54によって生成される電場の強さは、好適には、1V/mm〜約500V/mmの範囲である。
【0090】
冷却チャネル24および/または排出ライン28は、好適には1mm未満の隙間、好適には約50μm〜800μmの範囲の内径(clear width)である、少なくとも1つの寸法を有する。
図1