特許第6227711号(P6227711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーエルエー−テンカー コーポレイションの特許一覧

特許6227711センサ・ウェーハ、及びセンサ・ウェーハを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227711
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】センサ・ウェーハ、及びセンサ・ウェーハを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   H01L21/302 103
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-110390(P2016-110390)
(22)【出願日】2016年6月1日
(62)【分割の表示】特願2013-531606(P2013-531606)の分割
【原出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-178331(P2016-178331A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】12/892,841
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュイアン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キュリ ファーハット
(72)【発明者】
【氏名】サン メイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテサン ヴァスデフ
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−536726(JP,A)
【文献】 特開2007−243020(JP,A)
【文献】 特開2006−049461(JP,A)
【文献】 特開2009−212293(JP,A)
【文献】 特開2005−156314(JP,A)
【文献】 特表2005−504953(JP,A)
【文献】 特表2009−535855(JP,A)
【文献】 特表2004−521329(JP,A)
【文献】 特開平08−306665(JP,A)
【文献】 特開2004−153119(JP,A)
【文献】 特開2007−294889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H01L 21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に接続されるカバーと、
前記カバーの裏面に形成される1つ以上の部品と、
前記カバーの1つ以上の表面上、及び、前記基板の1つ以上の表面上に形成された耐エッチング・コーティングと、
を含み、
前記カバーは、前記耐エッチング・コーティングの少なくとも一部と、前記基板の少なくとも一部との間に配置され、
前記耐エッチング・コーティングは、希土類酸化物で形成される、
ことを特徴とするセンサ・ウェーハ。
【請求項2】
前記耐エッチング・コーティングは、厚さが2ミクロン以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項3】
前記耐エッチング・コーティングは、1層の希土類酸化物層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項4】
前記希土類酸化物層は、酸化イットリウム(Y2O3)を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項5】
前記耐エッチング・コーティングは、亀裂を含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項6】
前記耐エッチング・コーティングは、サイズが10ミクロンより大きいピンホールを含
まず、ピンホール濃度は、平方センチメートル毎のピンホールの個数が7個未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項7】
前記耐エッチング・コーティングは、前記カバーの縁部及び前記基板の縁部を覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項8】
前記カバーは、前記基板の上部表面に取り付けられ、
前記耐エッチング・コーティングは、前記カバーの上部表面を覆い、
前記耐エッチング・コーティングは、前記基板の縁部から3mmから5mmまでの前記
基板の底面を覆う、
ことを特徴する請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項9】
前記カバーは、半導体材料で製造される、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項10】
前記カバーは、シリコンで製造される、
ことを特徴とする請求項に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項11】
前記基板は、半導体材料で製造される、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項12】
前記基板は、シリコンで製造される、
ことを特徴とする請求項11に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項13】
基板と、
前記基板に接続されるカバーと、
前記カバーの裏面に形成される1つ以上の部品と、
前記カバー及び/又は前記基板の1つ以上の表面上に形成された耐エッチング・コーティングと、
を含み、
前記カバーは、前記耐エッチング・コーティングの少なくとも一部と、前記基板の少なくとも一部との間に配置され、
前記耐エッチング・コーティングは、希土類酸化物で形成され、
前記カバーは、前記基板の上面を完全には覆わず、
前記耐エッチング・コーティングは、前記カバーで覆われていない前記基板の前記上面の部位に形成される、
ことを特徴とするセンサ・ウェーハ。
【請求項14】
前記1つ以上の部品は、1つ以上のセンサを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項15】
前記1つ以上の部品は、1つ以上の電子部品を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項16】
前記耐エッチング・コーティングは、汚染金属を含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ・ウェーハ。
【請求項17】
基板及びカバーを有するセンサ・ウェーハを製造する方法において、
a)前記カバーの1つ以上の表面上、及び、前記基板の1つ以上の表面上に耐エッチング・コーティングを形成し、前記カバーは、前記耐エッチング・コーティングの少なくとも一部と、前記基板の少なくとも一部との間に配置され、前記耐エッチング・コーティングは、希土類酸化物で形成されるステップと、
b)前記カバーの裏面に、1つ以上の部品を形成するステップと、
更に、
c)前記カバーを前記基板に接続するステップと、
を含むことを特徴とするセンサ・ウェーハを製造する方法。
【請求項18】
ステップa)は、ステップb)及びステップc)の後に実施される、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記耐エッチング・コーティングは、1層の希土類酸化物層である、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記希土類酸化物は、酸化イットリウム(Y2O3)を含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記耐エッチング・コーティングは、前記希土類酸化物の電子ビーム蒸着処理または他の物理気相成長処理を含んで形成される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記希土類酸化物層は、厚さが2ミクロン以下である、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記耐エッチング・コーティングは、サイズが10ミクロンより大きいピンホールを含まず、ピンホール濃度は、平方センチメートル毎のピンホールの個数が7個未満である、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ステップb)は、
その上部内に複数の空洞を有する基板を形成するステップと、
各部品が各空洞内に配置されるよう、複数の部品を前記複数の空洞へと埋め込むステップと、
を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項25】
ステップa)は、前記耐エッチング・コーティングを堆積する前に前記表面を洗浄するステップ、
を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記耐エッチング・コーティングは、汚染金属を含まない、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、一般に、半導体ウェーハ処理技術に関し、具体的には、エッチング・チャンバ用の耐(エッチング)コーティング付きセンサ・ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、ディスプレイ、またはディスク・メモリーの製造では、多数の処理工程を用いることが一般的である。正常に動作するデバイスを得るには、各処理工程を綿密に監視する必要がある。可視化プロセス、蒸着成長プロセス、エッチングとマスキング・プロセス等を通して、例えば、温度、ガス流量、真空度、圧力、そして、化学物質、ガス、またはプラズマの組成、及び照射距離を各工程中に綿密に調整することが重要である。工程ごとに関わる種々のプロセス条件に払うべき細心の注意は、最適化された半導体または薄膜プロセスにおける要求事項である。最適なプロセス条件からどのように外れても、集積回路またはデバイスは標準レベル以下で動作することになり、更に悪い場合には完全に故障することもある。
【0003】
プロセス・チャンバ内では、プロセス条件が変化する。プロセス条件、例えば温度、ガス流量、及び/またはガス組成の変動が、構造及び集積回路の性能に著しい影響をもたらす。プロセス条件を測定するための集積回路または他のデバイスと同じか、若しくはこれと類似する材料で作られた基板を備えたセンサを使用すれば、基板の材料特性が実際に処理される回路のものと同じであるので、より正確な条件の測定が可能となる。実質的に全てのプロセス条件について、勾配及び変動がチャンバ全体に存在する。このため、これらの勾配は、基板表面全体及び基板上下にも存在する。ウェーハにおいてプロセス条件を正確に制御するには、測定結果をウェーハ上で取得し、更にチャンバ・プロセス条件を容易に最適化できるよう、自動化制御システムまたはオペレータを実時間で利用できることが重要である。プロセス条件には、半導体または他のデバイス製造の制御において必要とされる全てのパラメータ、または製造業者が監視するのに必要とされる全ての条件が含まれる。
【0004】
in−situ(その場)でプロセス条件を監視するためのある方法では、チャンバ内で処理されるウェーハと類似する基板に組み込まれたセンサを備えた測定装置が使用される。米国特許出願公開第2006/0174720号明細書では、ウェーハが製造中に受ける可能性のあるプロセス条件を測定するためのセンサを備えた基板を組み込んだ測定装置の一例を開示している。この基板は、ロボットでプロセス・チャンバへと挿入可能であり、測定装置は条件を実時間で送信するか、または条件を後工程での解析用に記憶する。この装置における感度の高い電子部品は、装置の精度、動作範囲、及び信頼性を高めるよう、最も有害なプロセス条件を避けるか、または隔離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0174720号明細書
【特許文献2】米国特許第6,776,873号明細書
【特許文献3】米国特許第7,135,852号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0225462号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0213079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサ・ウェーハが、チャンバ内のプロセス条件の監視中にエッチング処理の影響を受けやすいため、センサ・ウェーハを用いたエッチング・プロセス(例えばプラズマ・エッチング)中の温度のような、エッチング状態のin−situでの監視はとりわけ困難である。それ故、未保護のセンサ・ウェーハは、エッチング環境におけるシリコン・エッチングの特性、またはプラズマ照射等による損傷を受けやすい。従来のセンサ・ウェーハは、シリコン・カバーを使用してセンサを保護し、エッチングされる加工材料を最適に再現する。だが、シリコン・カバーがエッチング・プロセスを受けると、白黒色のシリコンが発生する。このような白黒色のシリコン汚染によって、プロセス・チャンバでは望ましくない粒子発生が起こる。
【0007】
シリコン・ウェーハ基板に基づく従来型センサ・ウェーハの一部では、プラズマ・エッチング条件下での測定中にセンサ・ウェーハをエッチング処理から保護するため、標準的な薄膜材料、例えば、ポリイミドまたは酸化ケイ素コーティングが使用されてきた。だが、ポリイミド及び酸化ケイ素コーティングは、ポリ(シリコン)エッチング条件下、及びシリコン貫通電極(TSV)エッチング条件下でのエッチング処理に対する耐性に限界がある。プラズマ・エッチング・チャンバで使用されるセンサ・ウェーハでは、保護用コーティングが、少なくとも10時間は耐えられることが望ましい。このようなコーティング・ウェーハを使用した結果、SiO及びポリイミド・コーティングは、その厚さが極めて厚いこと、例えば、SiOでは約10μm、そしてポリイミドでは少なくとも100μmでないと、このような長時間使用に対する耐性がないことが明らかとされている。しかし、厚みを増したコーティングは、温度測定中にアーチファクトが発生する場合があり、しかもウェーハを屈曲させる恐れもある。このため、10時間に渡るプラズマ・エッチング環境への累積的な暴露に耐えられるセンサ・ウェーハを実現する必要性がある。
【0008】
更に、耐エッチング特性に加えて、コーティングは、その厚さが比較的薄いこと、汚染されていないこと、そしてカバーと基板材料に極めて接着しやすいことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況下で、本発明の実施例が登場したのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の教示は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を検討することで容易に理解できる。
図1A】本発明の実施例に基づく耐エッチング・コーティングを備えたセンサ・ウェーハの断面図である。
図1B図1Aのセンサ・ウェーハの平面図である。
図1C】本発明の代替え実施例に基づく耐エッチング・コーティングを備えたセンサ・ウェーハの概略的断面図である。
図1D】本発明の別の代替え実施例に基づく耐エッチング・コーティングを備えたセンサ・ウェーハの概略的断面図である。
図1E】本発明の別の代替え実施例に基づく耐エッチング・コーティングを備えたセンサ・ウェーハの概略的断面図である。
図2A】本発明の別の実施例に基づく耐エッチング・コーティングを備えたセンサ・ウェーハの製造装置を示す概略図である。
図2B図1で示した種類のセンサ・ウェーハの側面図であり、その上部、及び、底部の斜面について説明している。
図3】ウェーハ上に耐エッチング・コーティングを作成する方法について説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明には実例を目的とする特定の詳細が多く含まれているが、当業者であれば誰でも、以下の詳述に対する多くの変形及び変更も、本発明の範囲内に含まれることを認識していることであろう。したがって、以下で述べる本発明の例示的実施例について、汎用性を損なわず、そして主張されている発明を制約せずに述べる。
【0012】
導入部
これまでに、センサ・ウェーハ用の保護用コーティングとして使用するための種々の多くの材料が検討されている。本発明者は、希土類酸化物がこの目的に適切なコーティングを製造する上で有望とされる種類の材料であることを突き止めた。希土類酸化物を用いて耐エッチングとなるよう、プラズマ・エッチング・チャンバの部品をコーティングした。通常、Al、Al、またはステンレス鋼が、このような希土類酸化物で被覆される。米国特許第6,776,873号では、半導体集積回路(IC)プロセス真空チャンバへのフッ素及び酸素プラズマ照射に対する陽極酸化アルミニウム合金材料のチャンバ材料性能を高めるよう、陽極酸化処理したアルミニウム合金部品または高純度アルミニウム基板上に備えられた酸化イットリウム(Y(イットリアとも知られる))が開示されている。
【0013】
通常、イットリア・コーティングは、プラズマ溶射プロセスにより実施される。プラズマ溶射プロセスでは、蒸着材料(原料)が、プラズマ・トーチから放射されるプラズマ・ジェットに導入される。原料は、主に粉末であるが、液体、懸濁液、またはワイヤの場合もある。プラズマ・ジェットでは、温度が10,000K程度であるので、原料物質は溶融し、基板に向かって移動する。そこで、溶融した材料の液滴は平坦化し、急速に凝固してから沈殿物が形成される。一般に、この沈殿物は、コーティングとして基板に付着したままである。多数の技術パラメータが、粒子及びプラズマ・ジェットと基板との相互作用、そして蒸着特性に影響をもたらす。これらのパラメータとして、原料の種類、プラズマ・ガス成分と流量、エネルギ入力、トーチ・オフセット距離、基板冷却等がある。
【0014】
プラズマ溶射で生成したコーティングは厚すぎ、しかも粒子が発生しやすく、ウェーハ・コーティングとして使用できないという問題がある。更に、イットリアでコーティングしたシリコン・ウェーハに関する汚染データは存在しない。また、イットリアでコーティングした部品は、通常、エッチング・チャンバ内でのプラズマ照射について考慮されることは無い。一般に、エッチング・チャンバ内のプラズマは、正常なエッチング・プロセス中、ウェーハのみがプラズマからのイオン照射、及び化学的な損傷を受けるように閉じ込められる。このコーティングを用いて、チャンバ洗浄プロセス中の損傷からチャンバを保護する。だが、チャンバ洗浄プロセスは、チャンバ部品への高エネルギ・イオン照射を伴わず、プラズマにより増強する反応性のある化学特性に依存する。
【0015】
このような従来技術の欠点を克服するため、本発明の実施例には、基板を備えたセンサ・ウェーハ、及びその上面の耐エッチング希土類酸化物保護コーティングを備えたカバーが含まれる。(耐エッチング希土類酸化物保護)コーティングは、保護用コーティングと厚さが同じか、またはこれより厚い標準的な薄膜材料よりも長い時間に渡って、カバー、及び/または基板をエッチング処理するエッチング・プロセスによるエッチング処理に耐えうるよう構成される。このコーティングは、SiO上で光学コーティングを作成するのに一般に使用される蒸発堆積法で形成可能である。また、耐エッチング・コーティングは、他の方法、例えば、物理気相成長(PVD)法、有機化学気相成長(CVD)法、プラズマ・プロセス、レーザ・アブレーション、または他の標準的なIC製造膜蒸着プロセスで形成可能である。
【0016】
標準的な薄膜材料の例として、シリコン酸化物、ポリイミド、スピン−オン・ポリイミド、窒化ケイ素、スピン−オン・ガラス、フォトレジスト、窒化アルミニウム、窒化チタン等がある。
【0017】
実施例1
図1Aは、本発明の実施例に基づくセンサ・ウェーハ100の断面図である。センサ・ウェーハ100は、プロセス条件測定装置(PCMD)とも呼ばれることもある。このようなセンサ・ウェーハ、その製造法、及びPCMDと併用されるための処理システムの例については、Wayne Glenn Renken等に対して発行された米国特許第7,135,852号において詳細に述べられており、本明細書ではこの開示を参照により援用する。
【0018】
この実例的な例では、センサ・ウェーハ100には、基板102、例えば、種々の層をウェーハ上に形成したシリコン・ウェーハが含まれる。基板102の上部には、空洞104が形成される。図1Aで示すように、空洞104中に部品106を埋め込むことができる。この部品は、センサ、または、プロセッサ、トランシーバ、メモリ、バッテリ等のような電子部品が可能である。そして、カバー108が基板102の上部に接続され、部品106を覆う。このカバー108は、エッチング・チャンバ内のエッチング・プロセスを受ける標準的な製造ウェーハと同じ材料の半導体材料で作られることが望ましい。一例として、限定されないが、基板102、またはカバー108、或いはその双方がシリコンにより製造可能である。センサ・ウェーハ100を備えたエッチング環境の測定中に、ウェーハがエッチング環境内でエッチング処理されることを防止するよう、耐エッチング・コーティング110がカバー108の上部に形成される。耐エッチング・コーティング110は、約2ミクロン以下のイットリア(Y)のような希土類酸化物膜を含むことが望ましい。他の希土類元素、例えば、ハフニウムの代替え酸化物を用いて、耐エッチング・コーティング110を形成できる。これ以外の有望なシリコン・耐エッチング化学膜(耐エッチング・コーティング)110には、シリコン酸化物及びアルミナがある。
【0019】
図1Bでは、基板102内/上に埋め込まれた部品106の望ましい割付について説明している。例として、部品は、基板全体でのプロセス条件を測定するため、表面の種々の領域内または基板102内で構成された1つ以上のセンサ106を含めることができる。本明細書にて述べる「プロセス条件」とは、集積回路の製造で使用される様々な処理パラメータのことを言う。プロセス条件には、半導体製造を制御するのに使用される全てのパラメータ、または製造者による監視が必要とされる全ての条件、例えば、限定されないが、温度、エッチング速度、基板上の層の厚さ、プロセス・チャンバの圧力、チャンバ内のガス流量、チャンバ内のガスの化学組成、チャンバ内の位置、電気プラズマ特性、光エネルギ密度、及びチャンバ内、或いはチャンバへの移動、またはそこからの移動中のウェーハ、ないし他の基板の振動や加速がある。様々なプロセスが、必然的に何年にも渡って開発され、それに伴いプロセス条件も経時に渡り変動するであろう。このことから、本明細書で述べた実施例では、如何なる状況においても、このようなプロセス条件を測定できることは予測できるであろう。更に、半導体ウェーハの処理中におけるこれら条件の測定に加えて、本明細書で述べたシステム及び技術を、ウェーハ・マスクのような他の種類の基板の処理における類似条件の監視にも適用可能である。
【0020】
基板の種々の部位を測定することで基板全体の勾配を求めることが可能であり、しかも、基板の特定の位置における状態も測定できる。基板102内またはその上のセンサの数は、測定されるプロセス条件及び基板102の大きさに応じて変動可能である。限定されないが、例えば、半径200mmの基板は、温度測定用の55個のセンサを含み、半径300mmの基板は、65個のセンサを含むことができる。センサを種々のプロセス条件を検知するよう構成可能であり、公知の半導体トランスデューサ構成に従って、基板102上に実装するか、または基板102内で製造可能である。本発明の実施例では、プラズマ・エッチング・プロセス中のエッチング・プラズマのエッチング・パラメータの検知で使用するよう、センサを構成可能である。
【0021】
温度測定用の一般的なトランスデューサとして、温度抵抗係数が既知の薄膜抵抗材料を含むRTDまたはサーミスタがある。更に、磁気抵抗材料を用いて、基板102上に印加される磁束量を介して温度を測定する場合もある。抵抗−電圧変換器を、基板102内の抵抗感知材料(サーミスタまたは磁気−抵抗材料の何れか)の遠位端間で構成可能であり、これにより、電圧を温度スケールへと容易に関連付けることが可能である。他の有望な温度センサは、基板102の層内でリソグラフィック形成された異なる2つの導体から構成された熱電対を備える。導体間の接合が加熱されると、任意の公知の様式により(例えば略線形的に)接合部の温度と共に上昇する僅かな熱電気電圧が発生する。
【0022】
他の例示的な温度センサには、温度と共に増加する電圧降下をもたらすダイオードが含まれる。このダイオードを正電源と負荷抵抗器間で接続することで、負荷抵抗器から、電流−電圧変換を実行できる。
【0023】
有望とされる他の形態のセンサは、振動周波数に応じた温度を示す結晶方向上で切断した石英結晶から製造した石英音叉のような圧電素子である。センサの振動周波数は、温度に伴う周波数変化を最小限に抑えるよう配向する結晶から製造した石英音叉のような圧電素子で形成された主発信器から参照できる。センサと主発信器間の周波数差から、直接的な温度依存信号が得られる。更に、圧電センサを用いて質量変化を感知して、蒸着質量と蒸着率、または他のプロセス条件を測定できる。
【0024】
更に、センサを用いて、基板102全体の所定領域での圧力、力、または歪みを、単独のセンサまたは基板102の層内で統合形成されたセンサの何れかとして測定可能である。ウェーハ上に印加される大気圧の測定に対応する圧力トランスデューサには、多くの種類がある。適切な圧力トランスデューサには、ダイヤフラム型トランスデューサがあり、このトランスデューサでは、ダイヤフラムまたは弾性素子が圧力を感知して、これに応じた歪みまたは偏向を生成し、これをダイヤフラム或いはダイヤフラム後方の空洞に接続するブリッジ回路が読み取る。他の適切な圧力トランスデューサには、基板102内に配置された圧電材料も含められる。圧電材料は、ドーピング化合物を基板102の所定部位に拡散させることで形成可能である。最終的に生成される圧電抵抗材料から、そこに印加された圧力または歪みの量に比例する出力電流が発生する。
【0025】
更に、基板102全体の流量をセンサで測定できる。この他、湿度水分センサを基板102上に形成できる。公知の流量測定法として、熱線流速計を基板102に組み込むことが可能である。流速は、流線型の流体の流れが基板102上またはその中に配置された非流線型の障害物に衝突する際の渦発生の頻度に基づいている。流体の流れの測定では、障害物の両側上での特殊な渦の発生を伴うことが一般的である。このため、交流的圧力差が障害物の両側間で発生する。閾値(これより低いと渦が発生しない)より上では、交流的圧力差の周波数は流速に比例する。交流的圧力差を検知する多くの方法では、高温サーミスタを障害物の両側間の微小チャンネル内に配置できる。利用したチャンネルを通る流れ方向の交替により、自己加熱式サーミスタが定期的に冷却されることで、AC信号及び対応する電気パルスが渦の発生頻度の2倍で発生する。これにより、サーミスタ前方の基板102から突出する障害物によって、固体状態流量測定が可能となる。熱は、互いに近接配置された自己加熱型サーミスタ間を伝わることができる。流体の流れが隣接したサーミスタ間で熱エネルギを伝えることで、質量流に比例する熱的不均衡が生じる。あるベクトルに沿って流れを測定するよう、隣合った複数のセンサを配列するか、または複数の流れベクトルも感知できる。熱的不均衡を検知して、質量流に関連するDC信号を生成することができる。複数方向の流れを比較して、流れベクトルを検知可能である。
【0026】
更に、基板102上のガス状化学物質の濃度もセンサで測定できる。化学成分センサでは、測定対象の所定イオンを通す薄膜を利用する。理想的には、この薄膜は、他の全てのイオンを完全に不透過とする必要がある。薄膜の伝導率は、これを通過する所定イオンの輸送量と直接比例する。薄膜の伝導率の変動性がある場合では、基板102周囲の環境内に存在する化学イオンの量と直接相関する測定を実行できる。
【0027】
更に、センサは、並列平板構造、収集プレートから構成されるアレー、及び収集プレート上で支持される制御グリッド付き収集プレートとともに、イオン流密度及びイオン流エネルギを測定するために用いられることができる。並列プレート間または収集プレートから構成されるアレーへと流れるイオン流は、イオン流密度と共に増加する。プレート上のグリッドに一定または変動するDCポテンシャルを印加することで、イオン電流エネルギを検知できるので、エネルギ分布を分析できる。これは、蒸着プロセスまたはエッチング・プロセスを監視及び調整する上で有用である。
【0028】
更に、圧電トランスデューサ/センサを基板102に統合して、層の共鳴周波数を測定して、層の質量または厚さを求めることも可能である。
【0029】
更に、基板102から離れた物体の位置の変化、つまり、変位を、センサで検知することも可能である。例示的な変位トランスデューサとして、フォトン・エネルギ(または強度)を測定して、フォトン・エネルギを電場或いは電圧に変換することが可能な電気−光学素子がある。比較的良く知られている電気−光学素子としては、発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ等があり、これらは、半導体基板上に形成するか、または基板内に組み込まれるか、若しくは表面上に配置できる。変位センサを用いて、エッチング・チャンバまたは蒸着チャンバ内の電極間隔に関する正確な情報を取得し、更に、ウェーハと対応マスク及び/または照射源間の間隔に関する情報も得ることができる。
【0030】
センサ・ウェーハ100を、IC製造でのシリコン・エッチング処理向けに構成できる。このようなシリコン・エッチング処理の例としては、ポリシリコン・エッチング、STIエッチング、及びTSVエッチングがある。センサ・ウェーハの目的は、プラズマ・エッチング中に温度をin−situで測定することである。このようなセンサ・ウェーハ構成に関する重要な要求事項としては、シリコン・エッチング環境において少なくとも10時間の寿命であること、エッチング・プロセス中と膜の寿命に渡って、ウェーハの平坦さ及び温度安定性を損なわないこと、更に、粒子汚染がOEM/ファブ・トランスファー試験で測定されるような許容できる程度であることである。このような場合、カバー108及び基板102をシリコンで作ることができる。
【0031】
図1Aで示した実施例に対する複数の変形も可能である。例えば、図1Cの展開図で見られるように、部品106の幾つかを、薄膜105の一部として、カバーの裏面または基板の上面上に直接形成し、基板102とカバー108間に接続若しくは形成できる。例えば、限定されないが、薄膜105は、カバー108を基板102の上面に接合する結合剤または接着剤を含むことができる。一部の場合では、図1Dで示すように、カバー108の空洞内に部品106を形成可能である。実施例によっては、基板102は、シリコンのような半導体材料で作ることが可能であり、カバー108は、例えば、図1Eで説明するように基板102の上面を完全には覆わない。このような場合、耐エッチング・コーティング110は、カバー108で覆われない基板102の上面の部位を覆うことができる。注意すべき点として、図1Eでは、カバー108を1つ示してあるが、それぞれが、基板102の上面の種々の部位を覆うよう、カバーを1つ以上設けることが可能である。
【0032】
(耐エッチング)コーティング110は、汚染されていないことが望ましい。例えば、ある種の膜、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、及び窒化チタン(TiN)であると、汚染発生の恐れがある。(耐エッチング)コーティング110は、汚染金属を含まない方が有利である。本明細書で使用される用語「汚染金属」には、半導体処理の清浄度の理由から許容されない金属が含まれる。汚染金属の例として、銅、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、チタン、金、銅、プラチナ、及び遷移金属がある。
【0033】
本発明の実施例によれば、保護用コーティング110は、シリコンで製造可能なカバー層108上部に蒸着されたY膜のような希土類酸化物膜が可能である。一般に、保護用コーティング110は、処理中及び使用中に損傷しない程度の十分な薄さの膜であることが望ましい。更に、(保護用)コーティング110は、一般に、非熱的摂動であることが望ましい。本明細書で使用される「非熱的摂動」という表記は、ウェーハの温度がコーティングの無い場合での温度から著しい量まで変位しないということを意味する。これは大部分が、(コーティング)膜110の厚さに依存する。例えば、保護用コーティング110は、厚さが略2ミクロン以下、望ましくは1.5ミクロン以下、より望ましくは1.2ミクロン以下が可能である。更に、例えば、この膜は縁部から数ミリメートル以内で、センサ・ウェーハ100の側面縁部及び裏面の一部を覆うことができる。膜は、その表面を室温から250℃までの温度範囲で被覆する電子ビームで蒸着できる。
【0034】
図2Aは、センサ・ウェーハのカバー層上部に耐エッチング・コーティングを作成する装置を示す概略図である。耐エッチング・コーティングの作成プロセスは、真空チャンバ202内で実行可能である。真空チャンバは、適切な真空システム(図示せず)を介して空気を排出できる。
【0035】
図2Aで示すように、Yのような希土類酸化物材料が、るつぼ204の中で蒸着される。希土類酸化物材料は、粉末形状で良い。るつぼ204は、希土類酸化物材料の沸点よりも融点が高い材料で作られることが望ましい。耐エッチング・コーティング110を含まない図1Aで示した種類の部分的若しくは完全に製造したセンサ・ウェーハ208を、前面210がるつぼ204内の希土類酸化物材料206と面するよう、るつぼ204上で吊設する。電子ビーム213は希土類酸化物材料206に照射され、酸化物材料が蒸発するのに十分高い温度まで加熱する。電子銃215によって、電子ビーム213を生成可能である。電子銃は、コールド・カソード・エミッタを使用するか、または電流でフィラメントを加熱することによって電子を発生させられる。電子ビームは、電子銃215とるつぼ204間で高い電圧差(例えばキロボルト以上)を印加することで、希土類酸化物へ加速される。電子は、例えば、磁場を用いて希土類酸化物材料206に向けて偏向できる。電子銃215による電子ビームの集束及び磁場によるビームの偏向によって、ビームは高い出力密度で(希土類酸化物)材料206へと密に集束できる。高出力密度の電子ビームによって、希土類酸化物材料206が局所的に加熱される。必要であれば、希土類酸化物を電子ビームにより局所的に加熱する際、例えば、水を搬送する冷却線を介して、るつぼ204を冷却できる。局所的な熱は、センサ・ウェーハ208周囲で蒸発プルームを形成して、希土類酸化物をセンサ・ウェーハ208の前面210、裏面の鉛直面、上部斜面と底部斜面及び縁部上に蒸着して、耐エッチング・コーティング214を形成することで、希土類酸化物材料206を蒸発させる。
【0036】
図2Bは、センサ・ウェーハ208の側面図であり、このセンサ・ウェーハは、上部斜面と底部斜面218、220を夫々備えた基板201、カバー203、前面210、裏面209、及び鉛直面216を含む。コーティング214は、センサ・ウェーハ208の前面210、鉛直面216、及び上部斜面218と底部斜面220上に形成される。コーティング214は、上部カバー203と基板201の縁部を被覆し、この縁部を蒸発プルームに晒すことにより、縁部から約3mmから5mmの距離g内で基板底面の周囲を覆うことが可能である。コーティング214の厚さは、約2ミクロン以下であることが望ましい。
【0037】
均一なコーティング214を形成できるよう、センサ・ウェーハをY軸周囲で回転できる。更に、センサ・ウェーハ208が回転する際、コーティング214を裏面の鉛直面、上部斜面と底部斜面、及び、縁部において形成できるよう、センサ・ウェーハは、X軸の周囲を十分な角度で傾斜することが可能である。
【0038】
センサ・ウェーハの側面縁部、及び、裏面の保護は、任意である。センサ・ウェーハが、エッチング・チャンバ内のウェーハを保護するチャンクの縁部を僅かに突き出ると、縁部付近のセンサの裏面が、エッチング処理に晒されることがある。例えば、裏面のエッチングによりセンサ・ウェーハの処理が阻害される場合、縁部数ミリメートル以内の裏面上の保護用コーティングが、有用となることもある。
【0039】
実験
シリコン・カバーを備えたセンサ・ウェーハを用いた実験を実施した。(シリコン)カバーを、種々の保護膜でコーティングした。この膜には、希土類酸化物(Y)及び幾つかの標準膜として、例えば、酸化ケイ素(例えば、SiO)、Kapton(登録商標)(カプトン)、及びスピン−オン・ポリイミドが含まれる。Kapton(登録商標)(カプトン)とは、化学組成式ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)を有する高分子である。Kapton(登録商標)は、米国デラウェア州ウイルミントン市のE.I.Du Pont De Nemours and Company(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー)社の登録商標である。この膜について、エッチング速度、ウェーハの反り、膜によるウェーハの温度範囲と精度にもたらす影響、及び金属汚染の観点から調査した。コーティングの性能は、同じエッチング条件下では、ウェーハの反り、膜によるウェーハの温度範囲と精度にもたらす影響、及び金属汚染について同様であった。だが、エッチング速度における著しい違いが見られた。測定したエッチング速度を測定した膜厚で除算することで、各膜の寿命を見積もった。見積もられた寿命が10時間を超えた唯一の膜はY膜であり、試験した膜の中では、厚さ1.5ミクロンが最も薄かった。この膜のエッチング速度は検知不可能であり、つまり寿命は10時間を超えて十分長く、しかも他の全ての膜よりも十分長いことを示唆している。その次に最良な膜(厚さ2ミクロンのSiO)の寿命は、5時間よりも短いと見積もられた。厚さが50ミクロンのKapton(登録商標)(カプトン)膜の寿命は約3時間であり、厚さが2ミクロンのスピンオン・ポリイミドは寿命が15分よりも短いと見積もられた。
【0040】
厚さが1.5ミクロンのYコーティング膜を含むセンサ・ウェーハを、HBr化学による典型的なポリシリコン・エッチング反応炉における原型試験で使用した。この原型試験を典型的なHBrポリシリコン・エッチング・レシピにおいて実施した。
【0041】
試験結果から、Yコーティング膜を含む場合と、これを含まない場合でのシリコン・センサ・ウェーハ間のチャンバ温度変動は、測定ノイズ内にあることが示された。従って、コーティングの存在が、センサで測定される温度の影響をあまりもたらさず、コーティングは、非熱的摂動であると呼べる。Yコーティング膜について観測されたエッチング速度は、どれも最小ではなかった。Yコーティング膜を含むセンサ・ウェーハと、これを含まないセンサ・ウェーハとにおける著しいセンサ間の温度変動ΔTは無かった。更に、センサとセンサ・ウェーハ間の温度は、プラズマを動作した試験中に渡り安定であり、種々のプラズマ・エッチング・プロセス下でのY膜の劣化または腐食の痕跡は検知されなかった。これらの試験結果は、六フッ化硫黄(SF)エッチング化学を用いた典型的なSTI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)での原型試験の結果と類似している。
【0042】
コーティング・センサ・ウェーハの性能は予測を超えた。膜の腐食の痕跡は見られなかった。だが、保護用コーティング中にピンホールがある場合、センサ・ウェーハは腐食の影響を受けることが観察されている。ピンホールの存在は、ウェーハ表面の不十分な清浄度によるものと考えられてきた。このような欠陥には、膜の核形成を抑止して不均一なコーティングをもたらす粒子、キズ、及び汚染部位が含まれるとされている。欠陥のサイズが、更なるコーティングでのピンホールのサイズを決定付けるものと考えられている。コーティング前にウェーハを洗浄し、ウェーハを検査して、ある許容最大サイズよりも大きい何らかの欠陥がウェーハ表面上に存在するか、または何らかの欠陥が許容可能な濃度よりも高い濃度で存在するかどうかを判定することで、ピンホール欠陥を低減または可能であれば除去できる。例えば、標準的なウェーハ検査ツールで、ウェーハ表面の欠陥を走査することが可能である。ピンホールの許容可能な最大サイズ及び濃度は、エッチング・プロセスに応じて変動することがある。例えば、六フッ化硫黄(SF)を用いたアグレッシブ(aggressive)なエッチング処理を受ける厚さが約1.2μmのY膜の場合、ピンホールの許容可能最大サイズは10μmであり、許容可能最大濃度は25mm×25mm平方毎のピンホールの個数が45個に相当する(平方センチメートル毎のピンホールが約7個)。六フッ化硫黄(SF)を用いたアグレッシブ(aggressive)なエッチングの例として、電圧バイアスが500V、圧力が20ミリTorr、そして、ガス流量が塩素(Cl)では125SCCM、酸素(O)では15SCCM、SFでは15SCCM、及びヘリウム(He)では50SCCMについて、出力が約600W TCPでのプラズマ・エッチングである。
【0043】
ピンホール(とりわけ縁部付近)のサイズ及び濃度を低減するため、粒子及び/または有機汚染物質を除去するよう、センサ・ウェーハ・カバーを特別に洗浄し、処理してから耐エッチング・コーティングを形成する。
【0044】
図3は、センサ・ウェーハの製造法300を示す流れ図である。ステップ301で示すように、基板を形成したら、ステップ302で示すように、カバーを形成する。具体的には、標準的なシリコン・ウェーハを所望の厚さまで堆積して基板を形成することが可能である。同様に、カバーを所望の厚さまで堆積した標準的なシリコン・ウェーハから形成できる。接触部をカバーの片側に堆積できる。カバーは、水酸化カリウム(KOH)等において苛性湿式洗浄処理して両側から所望の厚さまで堆積し、研磨することが可能である。ステップ303で示すように、センサ(及び、プロセッサ、トランシーバ、メモリ、バッテリ等の他の電子部品)を基板に接続できる。例えば、ウェーハの上面内で空洞を形成可能であり、空洞の平面内でセンサ及び他の部品を固定できる。実施例によっては、センサ及び他の部品を、基板上面内の空洞位置に対応する位置での基板カバーの裏側に接続可能である。他の実施例では、ウェーハ・カバー内で空洞を形成可能であり、センサ及び他の部品を、空洞の位置に対応する位置で、センサ・ウェーハの上面に直接接続できる。
【0045】
ステップ304で示すように、ピンホールの濃度及びピンホールのサイズを抑えるよう、カバー上面を予洗浄する。例えば、任意の標準手法で有機汚染物質及び/または粒子を除去することで、カバー上面を洗浄できる。予洗浄後、ステップ306で示すように、プラズマまたは高速中性粒子ビーム等を用いて、カバー上面を集中的に洗浄可能である。洗浄後、ステップ308で示すように、カバー上面を保護用コーティングでコーティングできる。具体的には、蒸発法または物理気相成長法により、(カバー)上面を、希土類酸化物、例えばYでコーティングすることが可能である。このコーティングは、厚さが例えば1.1μmから1.2μmまでの厚さで約1.15μmで良い。このようなコーティングの厚さが、亀裂形成防止における十分な薄さであることが実験から示された。
【0046】
カバー洗浄後、ステップ310で示すように、ウェーハ・カバーを基板上面に接合できる。適切な任意のウェーハ結合プロセスを用いて、基板上面とカバー間のセンサと共に、カバーを定位置で固定することが可能である。コーティング処理したカバー上面は、最終的なセンサ・ウェーハの上面を形成する。製造中のピンホール形成を抑えるため、製造中のみに縁部においてカバーを処理でき、更に、基板へのカバーの接合処理及び他の処理中におけるカバー表面との接触を防止可能である。
【0047】
カバーが基板に接合されるまでセンサが定位置にある限りは、基板とカバーの製造に関する厳密な順序は、それほど重要ではない。基板とカバーの厚さは、最終的なセンサ・ウェーハの厚さが、監視用にセンサ・ウェーハを使用するエッチング・チャンバ内で処理される標準的な製造ウェーハと略同じとなるよう選択可能である。一部の実施例では、ウェーハへの接合後にカバーをコーティングできる。このようにすれば、側面縁部及び裏側の縁部排除領域を、ウェーハ・カバーの前面と共にコーティングすることが可能である。
【0048】
上記で述べたように製造したセンサ・ウェーハを用いて、エッチング・シリコンで使用されるプラズマ・エッチング・チャンバ内のプロセスを分析できる。本明細書で述べたセンサ・ウェーハを、ポリシリコン・エッチング・チャンバ・プロセス分析、または湿式エッチング、例えばKOH分析でも代替え的に使用可能である。
【0049】
上述の内容は、本発明の推奨実施例全体の説明であり、種々の代替え形態、変更形態、及び等価形態の使用も可能である。それ故、本発明の範囲は、上記説明を基準に決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲とその等価物の十分な範囲を加えて決定されるべきである。本明細書で述べた全ての特徴は、それが推奨されるかどうかに関わらず、本明細書で述べた他の全ての特徴と、それが推奨されるかどうかに関わらず、組み合わせることが可能である。以下の特許請求の範囲では、不定冠詞「A(1つ)」または「An(1つ)」は、別途明記される場合を除き不定冠詞に続く1つ以上の項目の量について言及する。Means−plus−function(ミーンズ・プラス・ファンクション)制約が、「means for(するための手段)」を用いて所与の請求項内で明示的に引用されない限りは、添付の請求項はこのような制約を含むものとして捉えるべきでは無い。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3