特許第6227784号(P6227784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6227784-コポリカーボネート樹脂組成物 図000026
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227784
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】コポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20171030BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20171030BHJP
   C08G 77/448 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08G64/18
   !C08G77/448
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-535724(P2016-535724)
(86)(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公表番号】特表2017-501256(P2017-501256A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】KR2015013158
(87)【国際公開番号】WO2016089136
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0173005
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0170811
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョン−チュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ム−ホ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヒョン−ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒ−ヨン
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234298(JP,A)
【文献】 特開2010−275565(JP,A)
【文献】 特開2011−046911(JP,A)
【文献】 特表2014−532793(JP,A)
【文献】 特開平10−007897(JP,A)
【文献】 特表2016−509106(JP,A)
【文献】 特開2008−248262(JP,A)
【文献】 特開2011−122048(JP,A)
【文献】 特開平08−081620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08G 64/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位;および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を含むコポリカーボネートを含むか、またはii)前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートを含む、コポリカーボネート組成物であり、
前記コポリカーボネート組成物は、下記数式1を満足する、コポリカーボネート組成物であって、
前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、下記化学式1で表され、
前記1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位は、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位を含むコポリカーボネート組成物。
[数式1]
1.0682×X+0.51<Y<1.0682×X+1.2
前記数式1において、
Xは、前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートの総重量対比のシリコン含有量(重量%)を意味し、
Yは、TD(Time−domain)Fid実験により得られたFid Intensity値を、0.1msecでnormalizedした値を意味する。
【化16】

[前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。]
【化17】

[前記化学式2において、
1は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
5は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
nは、10〜200の整数である。]
【化18】

[前記化学式3において、
2は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
1は、それぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、またはC6-20アリールであり、
6は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
mは、10〜200の整数である。]
【請求項2】
前記Xは、0.1〜20であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項3】
前記コポリカーボネート組成物は、下記数式1−1を満足することを特徴とする、請求項1または2に記載のコポリカーボネート組成物:
[数式1−1]
1.0682×X+0.60<Y<1.0682×X+1.0
前記数式1−1において、
XおよびYは、請求項1で定義した通りである。
【請求項4】
前記コポリカーボネート組成物は、ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃で測定した常温衝撃強度が750〜1000J/mであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項5】
前記コポリカーボネート組成物は、重量平均分子量(g/mol)が1,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項6】
前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【請求項7】
前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、下記化学式1−1で表されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【化19】
【請求項8】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−2で表されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【化20】
【請求項9】
前記化学式3で表される繰り返し単位は、下記化学式3−2で表されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコポリカーボネート組成物。
【化21】
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2014年12月4日付の韓国特許出願第10−2014−0173005号および2015年12月2日付の韓国特許出願第10−2015−0170811号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、物性に優れたコポリカーボネート組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAのような芳香族ジオールとホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造され、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂は、最近、より多様な分野に適用するために、2種以上の互いに異なる構造の芳香族ジオール化合物を共重合し、構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入して所望の物性を得ようとする研究が多く試みられている。
【0005】
特に、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入させる研究も進められてはいるものの、ほとんどの技術が生産単価が高く、耐薬品性や衝撃強度、特に低温衝撃強度が増加すれば逆に流動性などが低下するという欠点がある。したがって、様々な物性を同時に改善するためには、ポリカーボネートの化学構造、ポリカーボネート鎖の流動性(mobility)などが多角的に検討されなければならない。そこで、本発明では、TD(Time−domain)−NMR Fid実験により分子のmobilityを分析した。
【0006】
Fid signal patternに示される重要なNMR情報は、T2 relaxation timeであって、分子構造のflexibilityに応じて差を示し、これにより、Fid signalでdecay rateが異なる。つまり、分子がrigidであるほどFid decay rateが速くなり、flexibleであるほどFid decay rateが遅くなる。
【0007】
そこで、本発明では、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入したコポリカーボネートおよび選択的にポリカーボネートを含むコポリカーボネート組成物に対するTD(Time−domain)−NMR Fid分析により、各種物性に優れたコポリカーボネート組成物を製造した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コポリカーボネートおよび選択的にポリカーボネートを含むコポリカーボネート組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記コポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、i)芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位;および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を含むコポリカーボネートを含むか、またはii)前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートを含む、コポリカーボネート組成物であり、前記コポリカーボネート組成物は、下記数式1を満足する、コポリカーボネート組成物を提供する:
【0011】
【数1】
【0012】
前記数式1において、
Xは、前記コポリカーボネートおよびポリカーボネートの総重量対比のシリコン含有量(重量%)を意味し、
Yは、TD(Time−domain)Fid実験により得られたFid Intensity値を、0.1msecでnormalizedした値を意味する。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明し、各成分の区分および説明の便宜のために、コポリカーボネートは「A」、ポリカーボネートは「B」と表示する。
【0014】
<コポリカーボネート(A)>
本発明に係るコポリカーボネート(A)は、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入された高分子を意味する。
【0015】
具体的には、前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式1で表されるコポリカーボネートを提供する:
【0016】
【化1】
【0017】
前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0018】
好ましくは、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0019】
また好ましくは、Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。また好ましくは、Zは、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0020】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。


【0021】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0022】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表される。
【0023】
【化2】
【0024】
前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ−m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、およびビスハロホルメートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、トリホスゲンまたはホスゲンを使用することができる。
【0025】
また、前記1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位は、1つ以上のシロキサン化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位を含むコポリカーボネートを提供する:
【0026】
【化3】
【0027】
前記化学式2において、
1は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
5は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
nは、10〜200の整数であり、
【0028】
【化4】
【0029】
前記化学式3において、
2は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
1は、それぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、またはC6-20アリールであり、
6は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
mは、10〜200の整数である。
【0030】
前記化学式2において、好ましくは、X1は、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-4アルキレンであり、最も好ましくは、プロパン−1,3−ジイルである。
【0031】
また好ましくは、R5は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。また好ましくは、R5は、それぞれ独立に、C1-10アルキルであり、より好ましくは、C1-6アルキルであり、より好ましくは、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0032】
また好ましくは、前記nは、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、31以上、または32以上で、50以下、45以下、40以下、39以下、38以下、または37以下の整数である。
【0033】
前記化学式3において、好ましくは、X2は、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-6アルキレンであり、最も好ましくは、イソブチレンである。
【0034】
また好ましくは、Y1は、水素である。
【0035】
また好ましくは、R6は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。また好ましくは、R6は、それぞれ独立に、C1-10アルキルであり、より好ましくは、C1-6アルキルであり、より好ましくは、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0036】
また好ましくは、前記mは、40以上、45以上、50以上、55以上、56以上、57以上、または58以上で、80以下、75以下、70以下、65以下、64以下、63以下、または62以下の整数である。
【0037】
前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位は、それぞれ下記化学式2−1で表されるシロキサン化合物および下記化学式3−1で表されるシロキサン化合物に由来する。
【0038】
【化5】
【0039】
前記化学式2−1において、X1、R5およびnの定義は、先に定義した通りである。
【0040】
【化6】
【0041】
前記化学式3−1において、X2、Y1、R6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0042】
前記「シロキサン化合物に由来する」の意味は、前記それぞれのシロキサン化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記それぞれの化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位を形成することを意味する。また、前記化学式2および3の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0043】
前記化学式2−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式3−1で表されるシロキサン化合物の製造方法は、それぞれ下記反応式1および2の通りである。
【0044】
【化7】
【0045】
前記反応式1において、
1’は、C2-10アルケニルであり、
1、R5およびnの定義は、先に定義した通りであり、
【0046】
【化8】
【0047】
前記反応式2において、
2’は、C2-10アルケニルであり、
2、Y1、R6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0048】
前記反応式1および反応式2の反応は、金属触媒下で行うことが好ましい。前記金属触媒としては、Pt触媒を使用することが好ましく、Pt触媒として、アシュビー(Ashby)触媒、カルステッド(Karstedt)触媒、ラモロー(Lamoreaux)触媒、スパイヤー(Speier)触媒、PtCl2(COD)、PtCl2(ベンゾニトリル)2、およびH2PtBr6からなる群より選択された1種以上を使用することができる。前記金属触媒は、前記化学式7または9で表される化合物100重量部を基準として、0.001重量部以上、0.005重量部以上、または0.01重量部以上で、1重量部以下、0.1重量部以下、または0.05重量部以下で使用することができる。
【0049】
また、前記反応温度は、80〜100℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜5時間が好ましい。
【0050】
また、前記化学式7または9で表される化合物は、オルガノジシロキサンとオルガノシクロシロキサンとを酸触媒下で反応させて製造することができ、前記反応物質の含有量を調節して、nおよびmを調節することができる。前記反応温度は、50〜70℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜6時間が好ましい。
【0051】
前記オルガノジシロキサンとして、テトラメチルジシロキサン、テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびヘキサフェニルジシロキサンからなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記オルガノシクロシロキサンは、一例として、オルガノシクロテトラシロキサンを使用することができ、その一例として、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0052】
前記オルガノジシロキサンは、前記オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、または2重量部以上で、10重量部以下、または8重量部以下で使用することができる。
【0053】
前記酸触媒としては、H2SO4、HClO4、AlCl3、SbCl5、SnCl4、および酸性白土からなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記酸触媒は、オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、0.5重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下で使用することができる。
【0054】
特に、前記化学式2で表される繰り返し単位と前記化学式3で表される繰り返し単位の含有量を調節して、物性を調節することができる。前記繰り返し単位間の重量比は、1:99〜99:1になるとよい。好ましくは、3:97〜97:3、5:95〜95:5、10:90〜90:10、または15:85〜85:15であり、より好ましくは、20:80〜80:20である。前記繰り返し単位の重量比は、シロキサン化合物、例えば、前記化学式2−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式3−1で表されるシロキサン化合物の重量比に対応する。
【0055】
好ましくは、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−2で表される:
【0056】
【化9】
【0057】
前記化学式2−2において、R5およびnは、先に定義した通りである。好ましくは、R5は、メチルである。
【0058】
また好ましくは、前記化学式3で表される繰り返し単位は、下記化学式3−2で表される:
【0059】
【化10】
【0060】
前記化学式3−2において、R6およびmは、先に定義した通りである。好ましくは、R6は、メチルである。
【0061】
また好ましくは、前記コポリカーボネートは、前記化学式1−1で表される繰り返し単位、前記化学式2−2で表される繰り返し単位、および前記化学式3−2で表される繰り返し単位を全て含む。
【0062】
また、本発明は、上述したコポリカーボネートの製造方法として、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物を重合する段階を含むコポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0063】
前記芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物は、先に説明した通りである。
【0064】
前記重合時、前記1つ以上のシロキサン化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、または1.5重量%以上であり、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、または2重量%以下を使用することができる。また、前記芳香族ジオール化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上であり、80重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下で使用することができる。さらに、前記カーボネート前駆体は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%であり、60重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下で使用することができる。
【0065】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0066】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0067】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0068】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0069】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0070】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0071】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0072】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0073】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0074】
前記コポリカーボネートは、重量平均分子量が1,000〜100,000g/mol、より好ましくは、15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量は、20,000g/mol以上、21,000g/mol以上、22,000g/mol以上、23,000g/mol以上、24,000g/mol以上、25,000g/mol以上、26,000g/mol以上、27,000g/mol以上、または28,000g/mol以上である。また、前記重量平均分子量は、34,000g/mol以下、33,000g/mol以下、または32,000g/mol以下である。
【0075】
<ポリカーボネート(B)>
本発明に係るポリカーボネート(B)は、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されていない点で、前記コポリカーボネート(A)と区分される。
【0076】
好ましくは、前記ポリカーボネートは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含む:
【0077】
【化11】
【0078】
前記化学式4において、
R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0079】
また好ましくは、前記ポリカーボネート(B)は、重量平均分子量が1,000〜100,000g/mol、より好ましくは、10,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、11,000以上、12,000以上、13,000以上、14,000以上、15,000以上、16,000以上、17,000以上、または18,000以上である。さらに、前記重量平均分子量(g/mol)は、34,000以下、33,000以下、32,000以下、31,000以下、30,000以下、または29,000以下である。
【0080】
前記化学式4で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。前記使用可能な芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体は、先に化学式1で表される繰り返し単位で説明したのと同じである。
【0081】
好ましくは、前記化学式4のR’1〜R’4およびZ’は、それぞれ先に説明した化学式1のR1〜R4およびZと同じである。
【0082】
また好ましくは、前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記化学式4−1で表される。
【0083】
【化12】
【0084】
また、前記ポリカーボネート(B)の製造方法は、1つ以上のシロキサン化合物を使用しない点を除いては、前記コポリカーボネート(A)の製造方法と同じである。
【0085】
<コポリカーボネート樹脂組成物>
本発明に係るコポリカーボネート樹脂組成物は、上述したコポリカーボネート(A)および選択的にポリカーボネート(B)を含む。
【0086】
前記数式1のXは、コポリカーボネート樹脂組成物中のシリコン含有量(wt%)を意味し、NMR分析により測定することができる。また、前記ポリカーボネート(B)は、ポリシロキサン構造が導入されていないことから、コポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート(B)の含有量を調節して、Xを調節することができる。
【0087】
好ましくは、Xは、0.1〜20であり、より好ましくは、1〜10であり、最も好ましくは、1.2〜7.0である。また、前記数式1のY値は、後述する実験例のようにTD(Time−domain)−NMR Fid実験で測定することができる。
【0088】
本発明の一実施例によれば、本発明に係るコポリカーボネート組成物は、数式1の範囲に含まれるのに対し、比較例はその範囲に含まれず、したがって、高分子構造の流動性(mobility)に劣ることを確認することができる。また、このような流動性(mobility)の差は、各種物性に影響を与えることを確認することができる。
【0089】
より好ましくは、本発明に係るコポリカーボネート組成物は、下記数式1−1を満足する:
【0090】
【数2】
【0091】
前記数式1−1において、
XおよびYは、先に定義した通りである。
【0092】
本発明に係るコポリカーボネート組成物は、好ましくは、重量平均分子量(g/mol)が1,000〜100,000であり、より好ましくは、15,000〜35,000である。より好ましくは、前記重量平均分子量は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0093】
また、本発明に係るコポリカーボネート組成物は、好ましくは、ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃で測定した常温衝撃強度が750〜1000J/mである。より好ましくは、前記常温衝撃強度(J/m)は、760以上、770以上、780以上、790以上、800以上、810以上、820以上、830以上、840以上、850以上、860以上、または870以上である。さらに、前記常温衝撃強度(J/m)はその値が高いほど優れているので、上限の制限はないが、一例として、990以下、980以下、または970以下であるとよい。
【0094】
また、本発明に係るコポリカーボネート組成物は、好ましくは、ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて−30℃で測定した低温衝撃強度が150〜1000J/mである。より好ましくは、前記低温衝撃強度(J/m)は、160以上、170以上、180以上、190以上、または200以上である。さらに、前記低温衝撃強度(J/m)はその値が高いほど優れているので、上限の制限はないが、一例として、990以下、980以下、または970以下であるとよい。
【0095】
また、前記コポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料、および染料からなる群より選択されたいずれか1つ以上を追加的に含むことができる。
【0096】
さらに、本発明は、前記コポリカーボネート樹脂組成物を含む物品を提供する。好ましくは、前記物品は、射出成形品である。
【0097】
前記物品の製造方法は、本発明に係るコポリカーボネート樹脂組成物と、必要に応じて上述した添加剤とをミキサを用いて混合した後、前記混合物を押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後、射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0098】
上記で説明したように、本発明に係るポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入したコポリカーボネートおよび選択的にポリカーボネートを含むコポリカーボネート組成物は、TD(Time−domain)−NMR Fid分析による特定条件を満足する特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】本発明により測定したT2 relaxationをグラフで示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明をこれらにのみ限定するものではない。
【0101】
[製造例1:AP−34]
【0102】
【化13】
【0103】
オクタメチルシクロテトラシロキサン47.60g(160mmol)、テトラメチルジシロキサン2.40g(17.8mmol)を混合した後、前記混合物を、オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比の酸性白土(DC−A3)1重量部と共に3Lフラスコに入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、エチルアセテートで希釈し、セライトを用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(n)は、1H NMRで確認した結果、34であった。
【0104】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、2−アリルフェノール4.81g(35.9mmol)とカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応シロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンを「AP−34」と名付けた。AP−34は薄黄色オイルであり、Varian500MHzを用いて、1H NMRにより繰り返し単位(n)は34であることを確認し、それ以上の精製は必要でなかった。
【0105】
[製造例2:MB−58]
【0106】
【化14】
【0107】
オクタメチルシクロテトラシロキサン47.60g(160mmol)、テトラメチルジシロキサン1.5g(11mmol)を混合した後、前記混合物を、オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比の酸性白土(DC−A3)1重量部と共に3Lフラスコに入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、エチルアセテートで希釈し、セライトを用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(m)は、1H NMRで確認した結果、58であった。
【0108】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、3−メチルブト−3−エニル4−ヒドロキシベンゾエート(3−methylbut−3−enyl4−hydroxybenzoate)6.13g(29.7mmol)とカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応シロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンを「MB−58」と名付けた。MB−58は薄黄色オイルであり、Varian500MHzを用いて、1H NMRにより繰り返し単位(m)は58であることを確認し、それ以上の精製は必要でなかった。
【0109】
[製造例3:EU−50]
【0110】
【化15】
【0111】
オクタメチルシクロテトラシロキサン47.60g(160mmol)、テトラメチルジシロキサン1.7g(13mmol)を混合した後、前記混合物を、オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比の酸性白土(DC−A3)1重量部と共に3Lフラスコに入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、エチルアセテートで希釈し、セライトを用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(n)は、1H NMRで確認した結果、50であった。
【0112】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、オイゲノール(Eugenol)6.13g(29.7mmol)とカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応シロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンを「EU−50」と名付けた。EU−50は薄黄色オイルであり、Varian500MHzを用いて、1H NMRにより繰り返し単位(n)は50であることを確認し、それ以上の精製は必要でなかった。
【0113】
[製造例4:PC]
重合反応器に、水1784g、NaOH385g、およびBPA(bisphenol A)232gを入れて、N2雰囲気下で混合して溶かした。これに、PTBP(para−tert butylphenol)4.7gをMC(methylene chloride)に溶解して入れた。その後、TPG(triphosgene)128gをMCに溶かしてpHを11以上に維持させながら1時間投入して反応させてから、10分後にTEA(triethylamine)46gを入れてカップリング(coupling)反応をさせた。総反応時間1時間20分が経過後にpHを4に下げてTEAを除去し、蒸留水で3回洗浄して、生成された重合体のpHを6〜7の中性に合わせた。こうして得られた重合体をメタノールとヘキサンとの混合溶液で再沈殿させて得た後、これを120℃で乾燥して最終ポリカーボネートを得て、これを「PC」と名付けた。
【0114】
[実施例1]
重合反応器に、水1784g、NaOH385g、およびBPA(bisphenol A)232gを入れて、N2雰囲気下で混合して溶かした。これに、PTBP(para−tert butylphenol)4.3gとポリジメチルシロキサン6.57g(製造例1で製造したAP−PDMS(n=34)5.91gおよび製造例2で製造したMBHB−PDMS(m=58)0.66gの混合液(重量比90:10))をMC(methylene chloride)に溶解して入れた。その後、TPG(triphosgene)128gをMCに溶かしてpHを11以上に維持させながら1時間投入して反応させてから、10分後にTEA(triethylamine)46gを入れてカップリング(coupling)反応をさせた。総反応時間1時間20分が経過後にpHを4に下げてTEAを除去し、蒸留水で3回洗浄して、生成された重合体のpHを6〜7の中性に合わせた。こうして得られた重合体をメタノールとヘキサンとの混合溶液で再沈殿させて得た後、これを120℃で乾燥して最終コポリカーボネートを得た。
【0115】
[実施例2]
前記実施例1のコポリカーボネート20重量部および製造例4のポリカーボネート(PC)80重量部を混合して、コポリカーボネート組成物を製造した。
【0116】
[実施例3]
前記実施例1のコポリカーボネート40重量部および製造例4のポリカーボネート(PC)60重量部を混合して、コポリカーボネート組成物を製造した。
【0117】
[実施例4]
前記実施例1のコポリカーボネート60重量部および製造例4のポリカーボネート(PC)40重量部を混合して、コポリカーボネート組成物を製造した。
【0118】
[実施例5]
前記実施例1のコポリカーボネート80重量部および製造例4のポリカーボネート(PC)20重量部を混合して、コポリカーボネート組成物を製造した。
【0119】
[比較例]
前記実施例1と同様の方法で製造するが、ポリジメチルシロキサンとして製造例3で製造したEU−50 6.57gを使用して、コポリカーボネートを得た。
【0120】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造したコポリカーボネートまたはコポリカーボネート組成物1重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.050重量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.010重量部、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.030重量部添加して、ベント付きΦ30mm二軸押出機を用いて、ペレット化した後、JSW(株)N−20C射出成形機を用いて、シリンダ温度300℃、金型温度80℃で射出成形して試片を製造した。
【0121】
以下の方法で各物性を測定した。
【0122】
1)重量平均分子量(Mw):Agilent1200 seriesを用いて、PCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定した。
【0123】
2)常温衝撃強度:ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃で測定した。
【0124】
3)低温衝撃強度:ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて−30℃で測定した。
【0125】
4)シリコン含有量(wt%):NMR分析によりシリコン含有量を測定した。
【0126】
5)TD(Time−domain)−NMR Fid実験:The minispec mq20 Polymer Research Systemを用い、標準操作手順書『SOP−0274−0k Bruker Optics社のMinispec標準操作手順書』に従って、実験setupおよびfid dataを得た。
【0127】
前記結果を下記表1に示し、TD(Time−domain)−NMR Fid実験の結果は図1にも示した。図1において、X軸は、コポリカーボネート組成物中のシリコン含有量(重量%)を意味し、Y軸は、TD(Time−domain)−NMR Fid実験で測定したNormalized Fid intensityを意味する。
【0128】
【表1】
【0129】
前記表1および図1に示されているように、本発明に係る実施例の場合、XおよびYが数式1を満足しているのに対し、比較例の場合、これを満足しないことを確認することができた。また、これにより、特に常温衝撃強度において差があることを確認することができた。
図1