特許第6227785号(P6227785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227785ポリカーボネート組成物およびこれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227785
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート組成物およびこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20171030BHJP
   C08G 64/04 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08G64/04
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-536591(P2016-536591)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-501260(P2017-501260A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】KR2015013243
(87)【国際公開番号】WO2016089168
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0173005
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョン−チュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ム−ホ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヒョン−ミン
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073709(WO,A1)
【文献】 特表2004−536193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08G 64/04−64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記化学式1で表される繰り返し単位と、複数の化学式1の繰り返し単位を互いに連結する3価または4価の分枝状繰り返し単位とを含む分枝状ポリカーボネート、および
(b)芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位;および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を含むコポリカーボネートを含む、ポリカーボネート組成物であって、
前記第2繰り返し単位は、下記化学式4で表される繰り返し単位および下記化学式5で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート組成物。
【化24】

前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【化25】

[前記化学式4において、
1は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
R’5は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
nは、10〜200の整数である。]
【化26】

[前記化学式5において、
2は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
1は、それぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、またはC6-20アリールであり、
R’6は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
mは、10〜200の整数である。]
【請求項2】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来することを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリカーボネート組成物
【化27】
【請求項4】
前記3価または4価の分枝状繰り返し単位は、下記化学式2で表される繰り返し単位であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物:
【化28】

前記化学式2において、
5は、水素、C1-10アルキル、または
【化29】

であり、
6〜R9は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、ハロゲン、C1-10アルコキシ、アリル、C1-10ハロアルキル、またはC6-20アリールであり、
n1〜n4は、それぞれ独立に、1〜4の整数である。
【請求項5】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−2または化学式2−3で表されることを特徴とする、請求項4に記載のポリカーボネート組成物
【化30】
【化31】
【請求項6】
前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位の重量比は、1:0.001〜1:0.1であることを特徴とする、請求項4または5に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートの重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項8】
前記分枝状ポリカーボネートは、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されていないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項9】
前記第1繰り返し単位は、下記化学式3で表されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物:
【化32】

前記化学式3において、
R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【請求項10】
前記化学式3は、下記化学式3−1で表されることを特徴とする、請求項9に記載のポリカーボネート組成物
【化33】
【請求項11】
前記化学式4で表される繰り返し単位と前記化学式5で表される繰り返し単位の重量比は、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項10に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項12】
前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記化学式4−2で表されることを特徴とする、請求項10または11に記載のポリカーボネート組成物
【化34】
【請求項13】
前記化学式5で表される繰り返し単位は、下記化学式5−2で表されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物
【化35】
【請求項14】
前記コポリカーボネートの重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項15】
前記分枝状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの重量比は、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項16】
ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されておらず、分枝状繰り返し単位を含まない非分枝状ポリカーボネートを追加的に含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項17】
前記非分枝状ポリカーボネートは、下記化学式6で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項16に記載のポリカーボネート組成物:
【化36】

前記化学式6において、
R”1〜R”4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z”は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2014年12月4日付の韓国特許出願第10−2014−0173005号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、ポリカーボネート組成物およびこれを含む物品に関し、特定のシロキサン構造を含むコポリカーボネートおよび分枝状繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度および流動性を有しながらも、難燃性および耐薬品性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAのような芳香族ジオールとホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造され、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂は、最近、より多様な分野に適用するために、2種以上の互いに異なる構造の芳香族ジオール化合物を共重合し、構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入して所望の物性を得ようとする研究が多く試みられている。
【0005】
特に、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入させる研究も進められてはいるものの、ほとんどの技術が生産単価が高く、難燃性および耐薬品性が低下するという欠点がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、特定のシロキサン構造を含むコポリカーボネートおよび分枝状繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度および流動性を維持しつつ、難燃性および耐薬品性を向上させることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い衝撃強度および流動性は維持しつつ、難燃性および耐薬品性が向上したポリカーボネート組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記ポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、(a)下記化学式1で表される繰り返し単位と、複数の化学式1の繰り返し単位を互いに連結する3価または4価の分枝状繰り返し単位とを含む分枝状ポリカーボネート、および(b)芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位;および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を含むコポリカーボネートを含む、ポリカーボネート組成物を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1において、
1〜R4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0012】
ポリカーボネートは、ビスフェノールAのような芳香族ジオール化合物とホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造されるもので、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。このようなポリカーボネートの物性をより改善するために、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入させることができ、これによって様々な物性を改善することができる。しかし、上記にもかかわらず、多様な応用分野に適合するように、ポリシロキサン構造が導入されたポリカーボネートは難燃性と耐薬品性に優れていなければならない。このために、各種添加剤と共に使用されるが、このような添加剤は、ポリカーボネート本来の物性を低下させる一要因となる。
【0013】
そこで、本発明では、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入したコポリカーボネートを使用し、また、後述のように、分枝状繰り返し単位を導入した分枝状ポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度および流動性は維持しつつ、難燃性と耐薬品性を改善することができる。
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
<分枝状ポリカーボネート(a)>
本発明で使用する分枝状ポリカーボネート(a)において、前記3価または4価の分枝状繰り返し単位は、従来より知られた多様な3価または4価の繰り返し単位になるとよいが、好適には、下記化学式2で表される繰り返し単位になるとよい。つまり、前記分枝状ポリカーボネート(a)の好ましい一例は、前記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含むことができる:
【0016】
【化2】
【0017】
前記化学式2において、
5は、水素、C1-10アルキル、または
【0018】
【化3】
【0019】
であり、
6〜R9は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、ハロゲン、C1-10アルコキシ、アリル、C1-10ハロアルキル、またはC6-20アリールであり、
n1〜n4は、それぞれ独立に、1〜4の整数である。
【0020】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0021】
前記化学式1において、好ましくは、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0022】
また好ましくは、Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに好ましくは、Zは、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0023】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。
【0024】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0025】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表される。
【0026】
【化4】
【0027】
前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ−m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、およびビスハロホルメートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、トリホスゲンまたはホスゲンを使用することができる。
【0028】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、芳香族多価アルコール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0029】
前記化学式2において、好ましくは、R5は、C1-6アルキル、または
【0030】
【化5】
【0031】
であり、より好ましくは、C1-4アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0032】
また好ましくは、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、またはハロゲンであり、より好ましくは、水素である。
【0033】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−1で表される芳香族多価アルコール化合物に由来する。
【0034】
【化6】
【0035】
前記化学式2−1において、
5は、水素、C1-10アルキル、または
【0036】
【化7】
【0037】
であり、
6〜R9およびn1〜n4は、先に定義した通りである。
【0038】
前記「芳香族多価アルコール化合物に由来する」の意味は、芳香族多価アルコール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式2で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0039】
例えば、芳香族多価アルコール化合物がTHPE(1,1,1−tris(4−hydroxyphenyl)ethane)であり、カーボネート前駆体のトリホスゲンと重合された場合、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−2で表される。
【0040】
【化8】
【0041】
他の例として、芳香族多価アルコール化合物が4,4’,4’’,4’’’−メタンテトライルテトラフェノール(4,4’,4’’,4’’’−methanetetrayltetraphenol)であり、カーボネート前駆体のトリホスゲンと重合された場合、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−3で表される。
【0042】
【化9】
【0043】
前記化学式2の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0044】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位の重量比は、1:0.001〜1:0.1である。上記で意味する重量比は、前記化学式1および2の繰り返し単位を形成するのに使用される芳香族ジオール化合物および芳香族多価アルコール化合物の重量比に対応する。
【0045】
前記分枝状ポリカーボネート(a)は、上述した芳香族ジオール化合物、芳香族多価アルコール化合物、およびカーボネート前駆体を重合して製造することができる。
【0046】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0047】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0048】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0049】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0050】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0051】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0052】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0053】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0054】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0055】
また好ましくは、前記分枝状ポリカーボネート(a)は、重量平均分子量が1,000〜100,000g/molであり、より好ましくは、15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0056】
<コポリカーボネート(b)>
本発明に係るコポリカーボネート(b)は、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されている点で、上述した分枝状ポリカーボネート(a)と区分される。
【0057】
前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位のモル比は、1:0.004−0.006が好ましく、重量比は、1:0.04−0.07が好ましい。
【0058】
また好ましくは、前記コポリカーボネートは、前記シロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を2種含むコポリカーボネートを提供する。
【0059】
具体的には、前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式3で表される:
【0060】
【化10】
【0061】
前記化学式3において、
R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0062】
好ましくは、R’1〜R’4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0063】
また好ましくは、Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに好ましくは、Z’は、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0064】
また、好ましくは、R’1〜R’4およびZ’は、それぞれ前記化学式1のR1〜R4およびZと同じである。
【0065】
好ましくは、前記化学式3で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、およびα,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。
【0066】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式3で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0067】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式3で表される繰り返し単位は、下記化学式3−1で表される。
【0068】
【化11】
【0069】
前記カーボネート前駆体としては、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0070】
前記1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位は、1つ以上のシロキサン化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式4で表される繰り返し単位および下記化学式5で表される繰り返し単位を含む:
【0071】
【化12】
【0072】
前記化学式4において、
1は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
R’5は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
nは、10〜200の整数であり、
【0073】
【化13】
【0074】
前記化学式5において、
2は、それぞれ独立に、C1-10アルキレンであり、
1は、それぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、またはC6-20アリールであり、
R’6は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、またはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;またはC6-20アリールであり、
mは、10〜200の整数である。
【0075】
前記化学式4において、好ましくは、X1は、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-4アルキレンであり、最も好ましくは、プロパン−1,3−ジイルである。
【0076】
また好ましくは、R’5は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。さらに好ましくは、R’5は、それぞれ独立に、C1-10アルキルであり、より好ましくは、C1-6アルキルであり、より好ましくは、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0077】
また好ましくは、前記nは、10以上、15以上、20以上、25以上、26以上、27以上、または28以上で、50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、または33以下の整数である。
【0078】
前記化学式3において、好ましくは、X2は、それぞれ独立に、C2-10アルキレンであり、より好ましくは、C2-6アルキレンであり、最も好ましくは、イソブチレンである。
【0079】
また好ましくは、Y1は、水素である。
【0080】
また好ましくは、R’6は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。さらに好ましくは、R’6は、それぞれ独立に、C1-10アルキルであり、より好ましくは、C1-6アルキルであり、より好ましくは、C1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0081】
好ましくは、前記mは、40以上、45以上、50以上、55以上、56以上、57以上、または58以上で、80以下、75以下、70以下、65以下、64以下、63以下、または62以下の整数である。
【0082】
前記化学式4で表される繰り返し単位および前記化学式5で表される繰り返し単位は、それぞれ下記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および下記化学式5−1で表されるシロキサン化合物に由来する。
【0083】
【化14】
【0084】
前記化学式4−1において、X1、R’5およびnの定義は、先に定義した通りである。
【0085】
【化15】
【0086】
前記化学式5−1において、X2、Y1、R’6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0087】
前記「シロキサン化合物に由来する」の意味は、前記それぞれのシロキサン化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記それぞれの化学式4で表される繰り返し単位および化学式5で表される繰り返し単位を形成することを意味する。また、前記化学式4および5の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0088】
前記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式5−1で表されるシロキサン化合物の製造方法は、それぞれ下記反応式1および2の通りである。
【0089】
【化16】
【0090】
前記反応式1において、
1’は、C2-10アルケニルであり、
1、R’5およびnの定義は、先に定義した通りであり、
【0091】
【化17】
【0092】
前記反応式2において、
2’は、C2-10アルケニルであり、
2、Y1、R’6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0093】
前記反応式1および反応式2の反応は、金属触媒下で行うことが好ましい。前記金属触媒としては、Pt触媒を使用することが好ましく、Pt触媒として、アシュビー(Ashby)触媒、カルステッド(Karstedt)触媒、ラモロー(Lamoreaux)触媒、スパイヤー(Speier)触媒、PtCl2(COD)、PtCl2(ベンゾニトリル)2、およびH2PtBr6からなる群より選択された1種以上を使用することができる。前記金属触媒は、前記化学式7または9で表される化合物100重量部を基準として、0.001重量部以上、0.005重量部以上、または0.01重量部以上で、1重量部以下、0.1重量部以下、または0.05重量部以下で使用することができる。
【0094】
また、前記反応温度は、80〜100℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜5時間が好ましい。
【0095】
また、前記化学式7または9で表される化合物は、オルガノジシロキサンとオルガノシクロシロキサンとを酸触媒下で反応させて製造することができ、前記反応物質の含有量を調節して、nおよびmを調節することができる。前記反応温度は、50〜70℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜6時間が好ましい。
【0096】
前記オルガノジシロキサンとして、テトラメチルジシロキサン、テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびヘキサフェニルジシロキサンからなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記オルガノシクロシロキサンは、一例として、オルガノシクロテトラシロキサンを使用することができ、その一例として、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0097】
前記オルガノジシロキサンは、前記オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、または2重量部以上で、10重量部以下、または8重量部以下で使用することができる。
【0098】
前記酸触媒としては、H2SO4、HClO4、AlCl3、SbCl5、SnCl4、および酸性白土からなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記酸触媒は、オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、0.5重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下で使用することができる。
【0099】
特に、前記化学式4で表される繰り返し単位と前記化学式5で表される繰り返し単位の含有量を調節することができる。前記繰り返し単位間の重量比は、1:99〜99:1になるとよい。好ましくは、3:97〜97:3、5:95〜95:5、10:90〜90:10、または15:85〜85:15であり、より好ましくは、20:80〜80:20である。前記繰り返し単位の重量比は、シロキサン化合物、例えば、前記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式5−1で表されるシロキサン化合物の重量比に対応する。
【0100】
好ましくは、前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記化学式4−2で表される:
【0101】
【化18】
【0102】
前記化学式4−2において、R’5およびnは、先に定義した通りである。好ましくは、R’5は、メチルである。
【0103】
また好ましくは、前記化学式5で表される繰り返し単位は、下記化学式5−2で表される:
【0104】
【化19】
【0105】
前記化学式5−2において、R’6およびmは、先に定義した通りである。好ましくは、R’6は、メチルである。
【0106】
また好ましくは、本発明に係るコポリカーボネートは、前記化学式3−1で表される繰り返し単位、前記化学式4−2で表される繰り返し単位、および前記化学式5−2で表される繰り返し単位を全て含む。
【0107】
また、本発明は、前記コポリカーボネートの製造方法として、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物を重合する段階を含むコポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0108】
前記芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物は、先に説明した通りである。
【0109】
前記重合時、前記1つ以上のシロキサン化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、2.5重量%以上、または3.0重量%以上で、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下を使用することができる。また、前記芳香族ジオール化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上で、80重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下で使用することができる。さらに、前記カーボネート前駆体は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%で、60重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下で使用することができる。
【0110】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0111】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0112】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0113】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0114】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0115】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0116】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0117】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0118】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0119】
また好ましくは、前記コポリカーボネート(b)は、重量平均分子量が1,000〜100,000g/molであり、より好ましくは、15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0120】
<ポリカーボネート組成物>
本発明に係るポリカーボネート組成物は、上述した分枝状ポリカーボネート(a)およびコポリカーボネート(b)を含む。
【0121】
前記ポリカーボネート組成物において、分枝状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの重量比は、1:99〜99:1である。より好ましくは、3:97〜97:3、5:95〜95:5、10:90〜90:10、15:85〜85:15、または20:80〜80:20である。
【0122】
また、本発明に係るポリカーボネート組成物は、必要に応じて非分枝状ポリカーボネートを共に使用することができる。前記非分枝状ポリカーボネートは、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されておらず、分枝状繰り返し単位を含まない点で、前記分枝状ポリカーボネート(a)およびコポリカーボネート(b)と区分される。
【0123】
好ましくは、前記非分枝状ポリカーボネートは、下記化学式6で表される繰り返し単位を含む:
【0124】
【化20】
【0125】
前記化学式6において、
R”1〜R”4は、それぞれ独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z”は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、またはCOである。
【0126】
また好ましくは、前記非分枝状ポリカーボネートは、重量平均分子量が15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0127】
前記化学式6で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。前記使用可能な芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体は、先に化学式1で表される繰り返し単位で説明したのと同じである。
【0128】
好ましくは、前記化学式4のR”1〜R”4およびZ”は、それぞれ先に説明した化学式1のR1〜R4およびZと同じである。
【0129】
また好ましくは、前記化学式6で表される繰り返し単位は、下記化学式6−1で表される。
【0130】
【化21】
【0131】
また、本発明は、前記ポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【0132】
好ましくは、前記物品は、射出成形品である。また、前記物品は、一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料、および染料からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0133】
前記物品の製造方法は、本発明に係るポリカーボネート組成物と酸化防止剤などのような添加剤とをミキサを用いて混合した後、前記混合物を押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後、射出成形機で射出する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0134】
上記で説明したように、本発明に係るポリカーボネート組成物は、特定のシロキサン構造を含むコポリカーボネートおよび分枝状繰り返し単位を含む分枝状ポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度および流動性を有しながらも、難燃性および耐薬品性を向上させることができる特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0135】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明をこれらにのみ限定するものではない。
【0136】
[製造例1:ポリオルガノシロキサン(AP−30)の製造]
【0137】
【化22】
【0138】
オクタメチルシクロテトラシロキサン42.5g(142.8mmol)、テトラメチルジシロキサン2.26g(16.8mmol)を混合した後、この混合物を、酸性白土(DC−A3)をオクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比1重量部と共に3Lフラスコ(flask)に入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、これをエチルアセテートで希釈し、セライト(celite)を用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(n)は、1H NMRで確認した結果、30であった。
【0139】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、2−アリルフェノール9.57g(71.3mmol)およびカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応ポリオルガノシロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンを「AP−30」と名付けた。AP−30は薄黄色オイルであり、Varian500MHzを用いて、1H NMRにより繰り返し単位(n)は30であることを確認し、それ以上の精製は必要でなかった。
【0140】
[製造例2:ポリオルガノシロキサン(MB−60)の製造]
【0141】
【化23】
【0142】
オクタメチルシクロテトラシロキサン47.60g(160mmol)、テトラメチルジシロキサン1.5g(11mmol)を混合した後、前記混合物を、オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部対比の酸性白土(DC−A3)1重量部と共に3Lフラスコに入れて、60℃で4時間反応させた。反応終了後、エチルアセテートで希釈し、セライトを用いて速やかにフィルタリングした。こうして得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンの繰り返し単位(m)は、1H NMRで確認した結果、60であった。
【0143】
前記得られた末端未変性ポリオルガノシロキサンに、3−メチルブト−3−エニル4−ヒドロキシベンゾエート(3−methylbut−3−enyl4−hydroxybenzoate)6.13g(29.7mmol)とカルステッド白金触媒(Karstedt’s platinum catalyst)0.01g(50ppm)を投入して、90℃で3時間反応させた。反応終了後、未反応シロキサンは、120℃、1torrの条件でエバポレーションして除去した。こうして得られた末端変性ポリオルガノシロキサンを「MB−60」と名付けた。MB−60は薄黄色オイルであり、Varian500MHzを用いて、1H NMRにより繰り返し単位(m)は60であることを確認し、それ以上の精製は必要でなかった。
【0144】
[製造例3:コポリカーボネート(PPC)の製造]
20Lガラス(Glass)反応器に、ビスフェノールA(BPA)978.4g、NaOH32%水溶液1,620g、蒸留水7,500gを入れて、窒素雰囲気でBPAが完全に溶けたことを確認した後、メチレンクロライド3,670g、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)18.3g、先に製造したポリオルガノシロキサン(AP−30)49.68g、および製造例2のポリオルガノシロキサン(MB−60)5.52gを投入して混合した。これにトリホスゲン542.5gを溶かしたメチレンクロライド3,850gを1時間滴加した。この時、NaOH水溶液をpH12に維持した。滴加完了後15分間熟成し、トリエチルアミン195.7gをメチレンクロライドに溶かして投入した。10分後、1N塩酸水溶液でpHを3に合わせた後、蒸留水で3回水洗してから、メチレンクロライド相を分離した後、メタノールで沈殿させて、粉末状のコポリカーボネート樹脂を得た。これを「PPC」と名付けた。
【0145】
[製造例4:分枝状ポリカーボネート(B−PC)の製造]
20Lガラス(Glass)反応器に、ビスフェノールA(BPA)978.4g、THPE(1,1,1−tris(4−hydroxyphenyl)ethane)3.2g、NaOH32%水溶液1,620g、蒸留水7,500gを入れて、窒素雰囲気でBPAが完全に溶けたことを確認した後、メチレンクロライド3,670g、およびp−tert−ブチルフェノール(PTBP)21.0gを投入して混合した。これにトリホスゲン542.5gを溶かしたメチレンクロライド3,850gを1時間滴加した。この時、NaOH水溶液をpH12に維持した。滴加完了後15分間熟成し、トリエチルアミン195.7gをメチレンクロライドに溶かして投入した。10分後、1N塩酸水溶液でpHを3に合わせた後、蒸留水で3回水洗してから、メチレンクロライド相を分離した後、メタノールで沈殿させて、粉末状のポリカーボネート樹脂を得た。これを「B−PC」と名付け、重量平均分子量は、Agilent1200 seriesを用いて、PCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定した結果、28,100であった。
【0146】
[実施例1]
製造例3で製造したPPC80重量部および製造例4で製造したB−PC20重量部を混合して、ポリカーボネート組成物を製造した。
【0147】
[実施例2]
製造例3で製造したPPC70重量部および製造例4で製造したB−PC30重量部を混合して、ポリカーボネート組成物を製造した。
【0148】
[実施例3]
製造例3で製造したPPC60重量部および製造例4で製造したB−PC40重量部を混合して、ポリカーボネート組成物を製造した。
【0149】
[比較例1]
製造例3で製造したPPCを比較例1とした。
【0150】
[比較例2]
ポリオルガノシロキサン(AP−30)およびポリオルガノシロキサン(MB−60)を使用しないことを除き、製造例3と同様の方法でポリカーボネート樹脂を得た。これを比較例2とした。
【0151】
[比較例3]
製造例3で製造したPPC70重量部および比較例2で製造したポリカーボネート30重量部を混合して、ポリカーボネート組成物を製造した。
【0152】
[比較例4]
製造例4で製造したB−PC25重量部および比較例2で製造したポリカーボネート75重量部を混合して、ポリカーボネート組成物を製造した。
【0153】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造した樹脂1重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.050重量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.010重量部、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.030重量部添加して、ベント付きΦ30mm二軸押出機を用いて、ペレット化した後、JSW(株)のN−20C射出成形機を用いて、シリンダ温度300℃、金型温度80℃で射出成形して試片を製造した。
【0154】
前記試片の特性を下記の方法で測定した。
【0155】
1)重量平均分子量(g/mol):Agilent1200 seriesを用いて、PCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定した。
【0156】
2)常温衝撃強度:ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて23℃で測定した。
【0157】
3)低温衝撃強度:ASTM D256(1/8inch、Notched Izod)に基づいて−30℃で測定した。
【0158】
4)流動性(Melt Index;MI):ASTM D1238(300℃、1.2kgの条件)に基づいて測定した。
【0159】
5)難燃性:UL94Vに基づいて難燃性を評価した。具体的には、難燃testの適用に必要な3.0mmの厚さの難燃試片を5つ準備し、下記に従って評価した。
【0160】
まず、20mmの高さの火花を10秒間試片に接炎後、試片の燃焼時間(t1)を測定し、燃焼の様相を記録した。次に、1次接炎後燃焼が終了すると、再び10秒間接炎後、試片の燃焼時間(t2)および火の粉がついた時間(glowing time、t3)を測定し、燃焼の様相を記録した。5つの試片に対して同一に適用した後、下記表1の基準で評価した。
【0161】
【表1】
【0162】
6)耐薬品性:ASTM D638に基づいて、引張応力(Tensile strength)を測定するための試片(厚さ:3.2mm)を製造して、ASTM D543(PRACTICE B)に基づいてJIG Strain R1.0を基準として耐薬品性を測定した。具体的には、常温(23℃)で綿材質の布切れ(2cm×2cm)を試片の中央に載せておき、溶媒(ニベア○Rアクアプロテクトサンスプレー−SPF30、バイヤスドルフ社製造)2mLを布切れに落とした瞬間から各試片の破壊が生じるまでにかかる時間を測定し、下記基準で評価した。
【0163】
○:1時間〜24時間
×:1分以内
前記結果を下記表2に示した。
【0164】
【表2】
【0165】
前記表2に示されているように、比較例対比、実施例の衝撃強度は同等の水準で維持されながらも、耐薬品性が向上することを確認することができた。したがって、本発明に係るポリカーボネート組成物は、特定のシロキサン構造を含むコポリカーボネートおよび分枝状繰り返し単位を含むポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度を有しながらも、耐薬品性を向上させることを確認することができた。