【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、(a)下記化学式1で表される繰り返し単位と、複数の化学式1の繰り返し単位を互いに連結する3価または4価の分枝状繰り返し単位とを含む分枝状ポリカーボネート、および(b)芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位;および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を含むコポリカーボネートを含む、ポリカーボネート組成物を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1において、
R
1〜R
4は、それぞれ独立に、水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【0012】
ポリカーボネートは、ビスフェノールAのような芳香族ジオール化合物とホスゲンのようなカーボネート前駆体とが縮重合して製造されるもので、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などを有し、電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの広範囲な分野に適用される。このようなポリカーボネートの物性をより改善するために、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入させることができ、これによって様々な物性を改善することができる。しかし、上記にもかかわらず、多様な応用分野に適合するように、ポリシロキサン構造が導入されたポリカーボネートは難燃性と耐薬品性に優れていなければならない。このために、各種添加剤と共に使用されるが、このような添加剤は、ポリカーボネート本来の物性を低下させる一要因となる。
【0013】
そこで、本発明では、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造を導入したコポリカーボネートを使用し、また、後述のように、分枝状繰り返し単位を導入した分枝状ポリカーボネートを含むことによって、高い衝撃強度および流動性は維持しつつ、難燃性と耐薬品性を改善することができる。
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
<分枝状ポリカーボネート(a)>
本発明で使用する分枝状ポリカーボネート(a)において、前記3価または4価の分枝状繰り返し単位は、従来より知られた多様な3価または4価の繰り返し単位になるとよいが、好適には、下記化学式2で表される繰り返し単位になるとよい。つまり、前記分枝状ポリカーボネート(a)の好ましい一例は、前記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含むことができる:
【0016】
【化2】
【0017】
前記化学式2において、
R
5は、水素、C
1-10アルキル、または
【0018】
【化3】
【0019】
であり、
R
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素、C
1-10アルキル、ハロゲン、C
1-10アルコキシ、アリル、C
1-10ハロアルキル、またはC
6-20アリールであり、
n1〜n4は、それぞれ独立に、1〜4の整数である。
【0020】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0021】
前記化学式1において、好ましくは、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0022】
また好ましくは、Zは、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC
1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに好ましくは、Zは、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【0023】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
およびビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン
からなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。
【0024】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0025】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記化学式1−1で表される。
【0026】
【化4】
【0027】
前記カーボネート前駆体としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジ−m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、およびビスハロホルメートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、トリホスゲンまたはホスゲンを使用することができる。
【0028】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、芳香族多価アルコール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。
【0029】
前記化学式2において、好ましくは、R
5は、C
1-6アルキル、または
【0030】
【化5】
【0031】
であり、より好ましくは、C
1-4アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0032】
また好ましくは、R
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素、C
1-6アルキル、またはハロゲンであり、より好ましくは、水素である。
【0033】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−1で表される芳香族多価アルコール化合物に由来する。
【0034】
【化6】
【0035】
前記化学式2−1において、
R
5は、水素、C
1-10アルキル、または
【0036】
【化7】
【0037】
であり、
R
6〜R
9およびn1〜n4は、先に定義した通りである。
【0038】
前記「芳香族多価アルコール化合物に由来する」の意味は、芳香族多価アルコール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式2で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0039】
例えば、芳香族多価アルコール化合物がTHPE(1,1,1−tris(4−hydroxyphenyl)ethane)であり、カーボネート前駆体のトリホスゲンと重合された場合、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−2で表される。
【0040】
【化8】
【0041】
他の例として、芳香族多価アルコール化合物が4,4’,4’’,4’’’−メタンテトライルテトラフェノール(4,4’,4’’,4’’’−methanetetrayltetraphenol)であり、カーボネート前駆体のトリホスゲンと重合された場合、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2−3で表される。
【0042】
【化9】
【0043】
前記化学式2の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0044】
好ましくは、前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位の重量比は、1:0.001〜1:0.1である。上記で意味する重量比は、前記化学式1および2の繰り返し単位を形成するのに使用される芳香族ジオール化合物および芳香族多価アルコール化合物の重量比に対応する。
【0045】
前記分枝状ポリカーボネート(a)は、上述した芳香族ジオール化合物、芳香族多価アルコール化合物、およびカーボネート前駆体を重合して製造することができる。
【0046】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0047】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0048】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0049】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0050】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0051】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0052】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0053】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0054】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0055】
また好ましくは、前記分枝状ポリカーボネート(a)は、重量平均分子量が1,000〜100,000g/molであり、より好ましくは、15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0056】
<コポリカーボネート(b)>
本発明に係るコポリカーボネート(b)は、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されている点で、上述した分枝状ポリカーボネート(a)と区分される。
【0057】
前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位および1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位のモル比は、1:0.004−0.006が好ましく、重量比は、1:0.04−0.07が好ましい。
【0058】
また好ましくは、前記コポリカーボネートは、前記シロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位を2種含むコポリカーボネートを提供する。
【0059】
具体的には、前記芳香族ポリカーボネート系の第1繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式3で表される:
【0060】
【化10】
【0061】
前記化学式3において、
R’
1〜R’
4は、それぞれ独立に、水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【0062】
好ましくは、R’
1〜R’
4は、それぞれ独立に、水素、メチル、クロロ、またはブロモである。
【0063】
また好ましくは、Z’は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換された直鎖または分枝鎖のC
1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、1−フェニルエタン−1,1−ジイル、またはジフェニルメチレンである。さらに好ましくは、Z’は、シクロヘキサン−1,1−ジイル、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【0064】
また、好ましくは、R’
1〜R’
4およびZ’は、それぞれ前記化学式1のR
1〜R
4およびZと同じである。
【0065】
好ましくは、前記化学式3で表される繰り返し単位は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、およびα,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群より選択されるいずれか1つ以上の芳香族ジオール化合物に由来するとよい。
【0066】
前記「芳香族ジオール化合物に由来する」の意味は、芳香族ジオール化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記化学式3で表される繰り返し単位を形成することを意味する。
【0067】
例えば、芳香族ジオール化合物のビスフェノールAとカーボネート前駆体のトリホスゲンとが重合された場合、前記化学式3で表される繰り返し単位は、下記化学式3−1で表される。
【0068】
【化11】
【0069】
前記カーボネート前駆体としては、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0070】
前記1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系の第2繰り返し単位は、1つ以上のシロキサン化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成されるもので、好ましくは、下記化学式4で表される繰り返し単位および下記化学式5で表される繰り返し単位を含む:
【0071】
【化12】
【0072】
前記化学式4において、
X
1は、それぞれ独立に、C
1-10アルキレンであり、
R’
5は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC
1-10アルコキシ、またはC
6-20アリールで置換されたC
1-15アルキル;ハロゲン;C
1-10アルコキシ;アリル;C
1-10ハロアルキル;またはC
6-20アリールであり、
nは、10〜200の整数であり、
【0073】
【化13】
【0074】
前記化学式5において、
X
2は、それぞれ独立に、C
1-10アルキレンであり、
Y
1は、それぞれ独立に、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、またはC
6-20アリールであり、
R’
6は、それぞれ独立に、水素;非置換であるか、もしくはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC
1-10アルコキシ、またはC
6-20アリールで置換されたC
1-15アルキル;ハロゲン;C
1-10アルコキシ;アリル;C
1-10ハロアルキル;またはC
6-20アリールであり、
mは、10〜200の整数である。
【0075】
前記化学式4において、好ましくは、X
1は、それぞれ独立に、C
2-10アルキレンであり、より好ましくは、C
2-4アルキレンであり、最も好ましくは、プロパン−1,3−ジイルである。
【0076】
また好ましくは、R’
5は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。さらに好ましくは、R’
5は、それぞれ独立に、C
1-10アルキルであり、より好ましくは、C
1-6アルキルであり、より好ましくは、C
1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0077】
また好ましくは、前記nは、10以上、15以上、20以上、25以上、26以上、27以上、または28以上で、50以下、45以下、40以下、35以下、34以下、または33以下の整数である。
【0078】
前記化学式3において、好ましくは、X
2は、それぞれ独立に、C
2-10アルキレンであり、より好ましくは、C
2-6アルキレンであり、最も好ましくは、イソブチレンである。
【0079】
また好ましくは、Y
1は、水素である。
【0080】
また好ましくは、R’
6は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルである。さらに好ましくは、R’
6は、それぞれ独立に、C
1-10アルキルであり、より好ましくは、C
1-6アルキルであり、より好ましくは、C
1-3アルキルであり、最も好ましくは、メチルである。
【0081】
好ましくは、前記mは、40以上、45以上、50以上、55以上、56以上、57以上、または58以上で、80以下、75以下、70以下、65以下、64以下、63以下、または62以下の整数である。
【0082】
前記化学式4で表される繰り返し単位および前記化学式5で表される繰り返し単位は、それぞれ下記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および下記化学式5−1で表されるシロキサン化合物に由来する。
【0083】
【化14】
【0084】
前記化学式4−1において、X
1、R’
5およびnの定義は、先に定義した通りである。
【0085】
【化15】
【0086】
前記化学式5−1において、X
2、Y
1、R’
6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0087】
前記「シロキサン化合物に由来する」の意味は、前記それぞれのシロキサン化合物のヒドロキシ基とカーボネート前駆体とが反応して、前記それぞれの化学式4で表される繰り返し単位および化学式5で表される繰り返し単位を形成することを意味する。また、前記化学式4および5の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体は、先に説明した化学式1の繰り返し単位の形成に使用可能なカーボネート前駆体で説明した通りである。
【0088】
前記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式5−1で表されるシロキサン化合物の製造方法は、それぞれ下記反応式1および2の通りである。
【0089】
【化16】
【0090】
前記反応式1において、
X
1’は、C
2-10アルケニルであり、
X
1、R’
5およびnの定義は、先に定義した通りであり、
【0091】
【化17】
【0092】
前記反応式2において、
X
2’は、C
2-10アルケニルであり、
X
2、Y
1、R’
6およびmの定義は、先に定義した通りである。
【0093】
前記反応式1および反応式2の反応は、金属触媒下で行うことが好ましい。前記金属触媒としては、Pt触媒を使用することが好ましく、Pt触媒として、アシュビー(Ashby)触媒、カルステッド(Karstedt)触媒、ラモロー(Lamoreaux)触媒、スパイヤー(Speier)触媒、PtCl
2(COD)、PtCl
2(ベンゾニトリル)
2、およびH
2PtBr
6からなる群より選択された1種以上を使用することができる。前記金属触媒は、前記化学式7または9で表される化合物100重量部を基準として、0.001重量部以上、0.005重量部以上、または0.01重量部以上で、1重量部以下、0.1重量部以下、または0.05重量部以下で使用することができる。
【0094】
また、前記反応温度は、80〜100℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜5時間が好ましい。
【0095】
また、前記化学式7または9で表される化合物は、オルガノジシロキサンとオルガノシクロシロキサンとを酸触媒下で反応させて製造することができ、前記反応物質の含有量を調節して、nおよびmを調節することができる。前記反応温度は、50〜70℃が好ましい。さらに、前記反応時間は、1時間〜6時間が好ましい。
【0096】
前記オルガノジシロキサンとして、テトラメチルジシロキサン、テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびヘキサフェニルジシロキサンからなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記オルガノシクロシロキサンは、一例として、オルガノシクロテトラシロキサンを使用することができ、その一例として、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0097】
前記オルガノジシロキサンは、前記オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、または2重量部以上で、10重量部以下、または8重量部以下で使用することができる。
【0098】
前記酸触媒としては、H
2SO
4、HClO
4、AlCl
3、SbCl
5、SnCl
4、および酸性白土からなる群より選択された1種以上を使用することができる。また、前記酸触媒は、オルガノシクロシロキサン100重量部を基準として、0.1重量部以上、0.5重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、5重量部以下、または3重量部以下で使用することができる。
【0099】
特に、前記化学式4で表される繰り返し単位と前記化学式5で表される繰り返し単位の含有量を調節することができる。前記繰り返し単位間の重量比は、1:99〜99:1になるとよい。好ましくは、3:97〜97:3、5:95〜95:5、10:90〜90:10、または15:85〜85:15であり、より好ましくは、20:80〜80:20である。前記繰り返し単位の重量比は、シロキサン化合物、例えば、前記化学式4−1で表されるシロキサン化合物および前記化学式5−1で表されるシロキサン化合物の重量比に対応する。
【0100】
好ましくは、前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記化学式4−2で表される:
【0101】
【化18】
【0102】
前記化学式4−2において、R’
5およびnは、先に定義した通りである。好ましくは、R’
5は、メチルである。
【0103】
また好ましくは、前記化学式5で表される繰り返し単位は、下記化学式5−2で表される:
【0104】
【化19】
【0105】
前記化学式5−2において、R’
6およびmは、先に定義した通りである。好ましくは、R’
6は、メチルである。
【0106】
また好ましくは、本発明に係るコポリカーボネートは、前記化学式3−1で表される繰り返し単位、前記化学式4−2で表される繰り返し単位、および前記化学式5−2で表される繰り返し単位を全て含む。
【0107】
また、本発明は、前記コポリカーボネートの製造方法として、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物を重合する段階を含むコポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0108】
前記芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物は、先に説明した通りである。
【0109】
前記重合時、前記1つ以上のシロキサン化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、2.5重量%以上、または3.0重量%以上で、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下を使用することができる。また、前記芳香族ジオール化合物は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上で、80重量%以下、70重量%以下、または65重量%以下で使用することができる。さらに、前記カーボネート前駆体は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体、および1つ以上のシロキサン化合物の総和100重量%に対して、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%で、60重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下で使用することができる。
【0110】
また、前記重合方法としては、一例として、界面重合方法を使用することができ、この場合、常圧と低い温度で重合反応が可能であり、分子量の調節が容易である効果がある。前記界面重合は、酸結合剤および有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。さらに、前記界面重合は、一例として、先重合(pre−polymerization)後にカップリング剤を投入してから、再び重合させる段階を含むことができ、この場合、高分子量のコポリカーボネートを得ることができる。
【0111】
前記界面重合に使用される物質は、ポリカーボネートの重合に使用可能な物質であれば特に制限されず、その使用量も必要に応じて調節することができる。
【0112】
前記酸結合剤としては、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0113】
前記有機溶媒としては、通常、ポリカーボネートの重合に使用される溶媒であれば特に制限されず、一例として、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0114】
また、前記界面重合は、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどの3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加的に使用することができる。
【0115】
前記界面重合の反応温度は、0〜40℃であることが好ましく、反応時間は、10分〜5時間が好ましい。また、界面重合反応中、pHは、9以上または11以上に維持することが好ましい。
【0116】
さらに、前記界面重合は、分子量調節剤をさらに含んで行うことができる。前記分子量調節剤は、重合開始前、重合開始中、または重合開始後に投入できる。
【0117】
前記分子量調節剤として、モノ−アルキルフェノールを使用することができ、前記モノ−アルキルフェノールは、一例として、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、およびトリアコンチルフェノールからなる群より選択された1種以上であり、好ましくは、p−tert−ブチルフェノールであり、この場合、分子量調節の効果が大きい。
【0118】
前記分子量調節剤は、一例として、芳香族ジオール化合物100重量部を基準として、0.01重量部以上、0.1重量部以上、または1重量部以上で、10重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で含まれ、この範囲内で所望の分子量を得ることができる。
【0119】
また好ましくは、前記コポリカーボネート(b)は、重量平均分子量が1,000〜100,000g/molであり、より好ましくは、15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0120】
<ポリカーボネート組成物>
本発明に係るポリカーボネート組成物は、上述した分枝状ポリカーボネート(a)およびコポリカーボネート(b)を含む。
【0121】
前記ポリカーボネート組成物において、分枝状ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの重量比は、1:99〜99:1である。より好ましくは、3:97〜97:3、5:95〜95:5、10:90〜90:10、15:85〜85:15、または20:80〜80:20である。
【0122】
また、本発明に係るポリカーボネート組成物は、必要に応じて非分枝状ポリカーボネートを共に使用することができる。前記非分枝状ポリカーボネートは、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサン構造が導入されておらず、分枝状繰り返し単位を含まない点で、前記分枝状ポリカーボネート(a)およびコポリカーボネート(b)と区分される。
【0123】
好ましくは、前記非分枝状ポリカーボネートは、下記化学式6で表される繰り返し単位を含む:
【0124】
【化20】
【0125】
前記化学式6において、
R”
1〜R”
4は、それぞれ独立に、水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、
Z”は、非置換であるか、もしくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換であるか、もしくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、またはCOである。
【0126】
また好ましくは、前記非分枝状ポリカーボネートは、重量平均分子量が15,000〜35,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量(g/mol)は、20,000以上、21,000以上、22,000以上、23,000以上、24,000以上、25,000以上、26,000以上、27,000以上、または28,000以上である。さらに、前記重量平均分子量は、34,000以下、33,000以下、または32,000以下である。
【0127】
前記化学式6で表される繰り返し単位は、芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体が反応して形成される。前記使用可能な芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体は、先に化学式1で表される繰り返し単位で説明したのと同じである。
【0128】
好ましくは、前記化学式4のR”
1〜R”
4およびZ”は、それぞれ先に説明した化学式1のR
1〜R
4およびZと同じである。
【0129】
また好ましくは、前記化学式6で表される繰り返し単位は、下記化学式6−1で表される。
【0130】
【化21】
【0131】
また、本発明は、前記ポリカーボネート組成物を含む物品を提供する。
【0132】
好ましくは、前記物品は、射出成形品である。また、前記物品は、一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料、および染料からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0133】
前記物品の製造方法は、本発明に係るポリカーボネート組成物と酸化防止剤などのような添加剤とをミキサを用いて混合した後、前記混合物を押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後、射出成形機で射出する段階を含むことができる。