特許第6227811号(P6227811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227811
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   G01N35/02 H
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-9916(P2017-9916)
(22)【出願日】2017年1月24日
(62)【分割の表示】特願2016-149175(P2016-149175)の分割
【原出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-67794(P2017-67794A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-126248(P2013-126248)
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 満博
(72)【発明者】
【氏名】嶋守 敏之
(72)【発明者】
【氏名】石沢 雅人
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526289(JP,A)
【文献】 特開2008−003010(JP,A)
【文献】 特開2009−150859(JP,A)
【文献】 特開2004−279357(JP,A)
【文献】 特開2007−322287(JP,A)
【文献】 特開平03−183957(JP,A)
【文献】 特開平03−048769(JP,A)
【文献】 特開2003−262642(JP,A)
【文献】 米国特許第06521183(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が保持された検体容器を収容する検体ラックを供給するラック供給部と、
反応容器が配置される反応ディスク並びに、
検体が検体容器から前記反応容器へ分注される位置であるサンプリングエリアと、前記サンプリングエリアの上流側で当該分注が開始されるまで検体ラックが待機する待機エリアを含み検体ラックを上流側から下流側の第1方向に搬送する1つの分注ラインを有する分析部と、
前記ラック供給部から供給された検体ラックを前記第1方向に搬送する搬送ラインと、
前記搬送ラインと前記分注ラインとの間で検体ラックを搬送する搬送機構と、
前記検体ラックの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記搬送機構は、検体ラックを前記搬送ラインから前記分注ラインの前記サンプリングエリアの上流側または下流側に搬送することができ、
前記1つの分注ラインは、前記搬送ラインから搬送された検体ラックを前記第1方向と逆の方向である第2方向に搬送することができ、
前記搬送機構によって前記搬送ラインから前記サンプリングエリアの上流側に検体ラックが到着した場合は、前記1つの分注ラインは、前記制御部の制御によって、検体ラックを、前記第1方向に搬送し、
前記サンプリングエリアに検体ラックが存在し、かつ前記搬送機構によって前記搬送ラインから前記サンプリングエリアの下流側に検体ラックが到着した場合は、前記1つの分注ラインは、前記制御部の制御によって、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックと、前記サンプリングエリアの下流側に到着した検体ラックとを、前記第2方向に一度の動作で搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動分析装置であって、
前記1つの分注ラインは、前記制御部の制御によって、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックの前記サンプリングエリアの上流側に隣接する位置への搬送と、前記サンプリングエリアの下流側に存在する検体ラックの前記サンプリングエリアへの搬送と、を一度の動作で行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された自動分析装置であって、
前記ラック供給部から供給された前記検体ラック及び/または前記検体ラックに収容された検体容器に対する識別情報を読み取る識別装置を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載された自動分析装置であって、
前記制御部は、前記識別装置により読み取られた識別情報に基づいて前記検体ラックの搬送を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載された自動分析装置であって、
前記識別装置は、前記分析部に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された自動分析装置であって、
当該サンプリングエリアに搬送された検体ラックに収容された検体容器に保持された検体の分注後、再検査の要否が決定するまで前記検体ラックを待機させるラック待機部を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された自動分析装置であって、
前記サンプリングエリアの下流側に、前記搬送機構が前記搬送ラインから前記検体ラックを搬送するための空きスペースが設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載された自動分析装置であって、
前記サンプリングエリアの上流側の隣接する位置の空きスペースに、前記1つの分注ラインが前記サンプリングエリアに存在する検体ラックを搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
検体を収容する検体ラックを供給するラック供給部と、
サンプリングエリアを含み、検体ラックを上流側から下流側の第1方向に搬送して前記サンプリングエリアに位置付ける第1のラック搬送部と、
前記ラック供給部から供給された検体ラックを前記第1方向に搬送可能な第1経路と、
前記第1経路と前記第1のラック搬送部の間で検体ラックを搬送可能な第2経路において、検体ラックを搬送する第2のラック搬送部と、
反応ディスクと、前記第1のラック搬送部によって前記サンプリングエリアに位置付けられた検体ラックに収容された検体を前記反応ディスクに分注する検体分注機構を有する分析部と、
前記検体ラックの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記第2のラック搬送部は、検体ラックを前記第1経路から前記第1のラック搬送部の前記サンプリングエリアの上流側または下流側に搬送することができ、
前記第1のラック搬送部は、前記第1経路から搬送された検体ラックを前記第1方向と逆の方向である第2方向に搬送することができ、
前記制御部は、
前記第2のラック搬送部によって前記第1経路から前記サンプリングエリアの上流側に検体ラックが到着した場合は、前記第1のラック搬送部が検体ラックを前記第1方向に搬送するように制御し、
前記サンプリングエリアに検体ラックが存在し、かつ前記第2のラック搬送部によって前記第1経路から前記サンプリングエリアの下流側に検体ラックが到着した場合は、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックと、前記サンプリングエリアの下流側に到着した検体ラックとを、前記第2方向に一度の動作で搬送するように前記第1のラック搬送部の動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載された自動分析装置であって、
前記制御部は、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックの前記サンプリングエリアの上流側に隣接する位置への搬送と、前記サンプリングエリアの下流側に存在する検体ラックの前記サンプリングエリアへの搬送と、を一度の動作で行うように、前記第1のラック搬送部の動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載された自動分析装置であって、
前記ラック供給部から供給された前記検体ラック及び/または前記検体ラックに収容された検体容器に対する識別情報を読み取る識別装置と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載された自動分析装置であって、
前記サンプリングエリアの下流側に、前記搬送機構が前記搬送ラインから前記検体ラックを搬送するための空きスペースが設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載された自動分析装置であって、
前記サンプリングエリアの上流側の隣接する位置の空きスペースに、前記1つの分注ラインが前記サンプリングエリアに存在する検体ラックを搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項11に記載された自動分析装置であって、
前記識別装置は、前記分析部に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項15】
サンプル分注待ちの検体ラックを複数待機させることができ、第1の位置から複数の検体ラックが待機するエリアを介して第2の位置に向かって第1方向に検体ラックを搬送する1つの分注ラインと、
検体が保持された検体容器を収容した検体ラックを前記第1方向に搬送する第1経路と、前記第1経路と前記分注ラインの間で検体ラックを搬送する第2経路において、検体ラックを搬送する搬送機構と、
反応容器を備えた反応ディスクと、
前記分注ライン内のサンプリングエリアに位置付けられた検体ラックの検体容器から検
体を前記反応容器へ分注する検体分注機構と、
試薬を前記反応容器へ分注する試薬分注機構と、
前記検体ラックの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記搬送機構は、前記第1経路から前記分注ラインの第1の位置に検体ラックを搬送すること、及び前記第1経路と前記分注ラインの第2の位置との間で検体ラックを搬送することができ、
前記分注ラインは、前記搬送機構によって前記第1経路から前記第2の位置に搬送された検体ラックを前記第1の位置側へ前記第1方向と逆の第2方向に搬送することができ、
前記制御部は、
通常分析時に、検体ラックを前記第1経路から前記分注ラインの第1の位置に搬送し、
複数の検体ラックが待機するエリアを介して前記サンプリングエリアに当該検体ラックを搬送し、前記分注ラインの第2の位置から前記第1経路に当該検体ラックを搬送するように前記搬送機構及び前記分注ラインの動作を制御し、
緊急分析時に、前記サンプリングエリアに検体ラックが存在する場合であって、前記第2の位置に検体ラックが到着したときに、前記サンプリングエリアから前記第1の位置側のサンプリングエリアに隣接する位置への当該検体ラックの搬送と、前記第2の位置から前記サンプリングエリアへの当該検体ラックの搬送と、を一度の動作制御で行うように前記1つの分注ラインの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項16】
請求項15に記載された自動分析装置であって、
前記サンプリングエリアの第2の位置側に、前記搬送機構が前記第1経路から前記検体ラックを搬送するための空きスペースが設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載された自動分析装置であって、
前記制御部は、
緊急分析時に、前記サンプリングエリアの第1の位置側の隣接する位置の空きスペースに、前記1つの分注ラインが前記サンプリングエリアに存在する検体ラックを搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項18】
検体が保持された検体容器を収容する検体ラックを供給するラック供給部と、
検体ラックを上流側から下流側の第1方向に搬送してサンプリングエリアに位置付ける
第1のラック搬送部と、
前記ラック供給部から供給された検体ラックを前記第1方向に搬送する第1経路と、前記第1経路と前記第1のラック搬送部との間で検体ラックを搬送可能な第2経路において、検体ラックを搬送する第2のラック搬送部と、
反応容器が配置される反応ディスクと、
前記第1のラック搬送部によってサンプリングエリアに位置付けられた検体ラックの検体容器から検体を前記反応容器へ分注する検体分注機構と、
試薬を前記反応容器へ分注する試薬分注機構と、
前記検体ラックの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記第2のラック搬送部は、検体ラックを前記第1経路から前記第1のラック搬送部の前記サンプリングエリアの上流側または下流側に搬送することができ、
前記第1のラック搬送部は、前記第2のラック搬送部から搬送された検体ラックを前記第1方向と逆の第2方向に搬送することができ、
前記第2のラック搬送部によって前記第1経路から前記サンプリングエリアの上流側に検体ラックが到着した場合は、前記第1のラック搬送部は、前記制御部の制御によって、検体ラックを、前記第1方向に搬送し、
前記サンプリングエリアに検体ラックが存在し、かつ前記第2のラック搬送部によって前記第1経路から前記サンプリングエリアの下流側に検体ラックが到着した場合は、それぞれ検体ラックが存在する場合に、前記第1のラック搬送部は、前記制御部の制御によって、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックと、前記サンプリングエリアの下流側に到着した検体ラックとを、前記第2方向に一度の動作で搬送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項19】
請求項18に記載された自動分析装置であって、
前記第1のラック搬送部は、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックの前記サン
プリングエリアの上流側に隣接する位置への搬送と、前記サンプリングエリアの下流側に
存在する検体ラックの前記サンプリングエリアへの搬送と、を一度の動作で行うことを特
徴とする自動分析装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載された自動分析装置であって、
前記第2のラック搬送部は、検体ラックを前記第1経路から前記第1のラック搬送部の
前記サンプリングエリアの上流側に搬送することができ、
前記第1のラック搬送部は、前記第2のラック搬送部から搬送されたサンプル分注待ち
の検体ラックを複数待機させることができる分注ラインを有することを特徴とする自動分
析装置。
【請求項21】
請求項20に記載された自動分析装置であって、
前記分注ラインは前記サンプリングエリアを含むことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などのサンプルに含まれる成分量を分析する自動分析装置であって、特に検体ラックの搬送ラインに沿って複数の分析モジュールを配置した自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための自動分析装置では、血液,血漿,血清,尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対して、指示された分析項目を自動的に分析検査する。これらの自動分析装置には、それぞれ独立した装置として運用されるスタンドアローンタイプのものや、検査室の業務合理化のために、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部を検体ラック搬送ラインで接続し、1つの装置として運用するモジュールタイプのものが知られている。モジュールタイプの自動分析装置は、サンプルと試薬を混合、反応させた反応液を分析する複数の分析部を有し、その分析部にサンプルを供給する方法としては、サンプル容器を収容した検体ラックを搬送ライン経由で分析部のサンプル吸入位置に位置づける方法がある。通常、検体ラックは搬送ラインでラック供給部から搬入された順序に従い搬送、分析されるため、至急分析の必要がある緊急検体を優先的に分析ユニットに搬送することが課題となっている。
【0003】
このような課題に対し、特許文献1はディスクタイプの回転可能な検体ラック待機部により、分析の優先度に応じて分析部に検体ラックを供給する技術を提案している。
【0004】
また、装置の高処理能力化という課題に対して、分析部の分注ラインに複数の検体ラックを待機させる自動分析装置が知られている。特許文献2では通常モード、緊急モードなど状況に応じて、分注ラインに待機させる検体ラックの数を変更する技術が紹介されている。
【0005】
また、特許文献3はラック入れ替え部を備え、緊急検体ラックの分析依頼があった場合に、通常検体ラックのサンプル分注中でもサンプル分注を中断し、検体ラックをラック入れ替え部に戻し、ラック入れ替え部から緊急検体ラックをサンプリングエリアに供給することで、緊急性の高い測定に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−281453号公報
【特許文献2】特許第3930977号公報
【特許文献3】WO10/087303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、サンプリング中の検体ラックを再度検体ラック待機部に収納し、緊急検体をサンプリングエリアに投入するという動作は、迅速性に乏しいことが問題であった。また、ラック待機部からサンプリングエリアまでは、往復可能な1本の搬送ラインにより接続されており、サンプリングの都度、検体ラックを入れ替えるように運用するため、装置の処理能力向上にも限界があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、装置に求められる状況は時々刻々変化することが通常であり、通常モード分析時に至急測定が必要な緊急検体が依頼される場合に対応が困難となる。
【0009】
また、特許文献3に開示された技術では、ラック入れ替え部とサンプリングエリアは、1本の搬送ラインでつながれる構成であり、その間を検体ラックが行き来するため高処理能力化は困難である。緊急度の高い検体ラックを専用に搬送する緊急ラック搬送ラインを設置することも考えられるが、装置の複雑化や装置コストの上昇が問題となる。ラック入れ替え部とサンプリングを共用する案も考えられるが、特許文献3のような複数スロット式のラック入れ替え部ではスペースをかなり必要とすることや、ラック入れ替え動作とサンプル分注動作が干渉することとなり、やはり高処理能力化は困難である。
【0010】
モジュールタイプの自動分析装置において、装置の複雑化や装置コストを上昇することなく、高処理能力を維持し、緊急検体ラックの測定を早急に実施できる手段が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の代表的なものは以下のとおりである。
【0012】
検体が保持された検体容器を収容する検体ラックを供給するラック供給部と、反応容器が配置される反応ディスク並びに、検体が検体容器から前記反応容器へ分注される位置であるサンプリングエリアと、前記サンプリングエリアの上流側で当該分注が開始されるまで検体ラックが待機する待機エリアを含み検体ラックを上流側から下流側の第1方向に搬送する1つの分注ラインを有する分析部と、前記ラック供給部から供給された検体ラックを前記第1方向に搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインと前記分注ラインとの間で検体ラックを搬送する搬送機構と、前記検体ラックの搬送を制御する制御部と、を備え、前記搬送機構は、検体ラックを前記搬送ラインから前記分注ラインの前記サンプリングエリアの上流側または下流側に搬送することができ、前記1つの分注ラインは、前記搬送ラインから搬送された検体ラックを前記第1方向と逆の方向である第2方向に搬送することができ、前記搬送機構によって前記搬送ラインから前記サンプリングエリアの上流側に検体ラックが到着した場合は、前記1つの分注ラインは、前記制御部の制御によって、検体ラックを、前記第1方向に搬送し、前記サンプリングエリアに検体ラックが存在し、かつ前記搬送機構によって前記搬送ラインから前記サンプリングエリアの下流側に検体ラックが到着した場合は、前記1つの分注ラインは、前記制御部の制御によって、前記サンプリングエリアに存在する検体ラックと、前記サンプリングエリアの下流側に到着した検体ラックとを、前記第2方向に一度の動作で搬送する自動分析装置である。

【0013】
検体ラックの搬送はベルトコンベア方式、ラックの後端部を押し出して移送する押し出しアーム方式等、ラックを移動させることができるものであればどのような方法でも適用可能である。
【0014】
本願発明のような構成とすることで、従来の高処理能力モジュラータイプの自動分析装置に、新たな機構を追加することなく、迅速な緊急検体分析が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の目的は、装置の複雑化や装置コストの上昇を抑制しつつ、緊急検体ラックを早急に測定できる処理能力の高い自動分析装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態であるモジュールタイプの自動分析装置の概略図である。
図2】本発明の一実施の形態における、通常分析時の検体ラックの搬送経路を示した概略図である。
図3】本発明の一実施の形態における、緊急検体ラックの搬送経路を示した概略図である。
図4】本発明の一実施の形態における、通常分析動作を示したフローチャートである。
図5】本発明の一実施の形態における、通常分析時の分析部におけるサンプル分注動作を示したフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態における、緊急検体分析動作を示したフローチャートである。
図7】本発明の一実施の形態における、緊急検体分析時の分析部におけるサンプル分注動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。検体ラックは、1本以上の検体容器を搭載できるものであれば、搭載数は限定されない。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態であるモジュールタイプの自動分析装置の概略図であり、図2は通常分析時の検体ラックの搬送経路を示した概略図である。
【0019】
搬送ライン104に沿って配置される第1分析部113は、検体ラック101に収容されているサンプルに対する分析依頼情報を照合するための識別装置119と、搬送ライン104から検体ラック101を受け取るラック取込機構117と、検体ラック101のサンプル容器内のサンプル分注を行うサンプリングエリア115と、サンプリングエリア115までの検体ラック101の搬送と分注開始まで検体ラック101を待機させる役割を持つ分注ライン114と、緊急検体サンプリング時に検体ラック101を退避させるラック退避エリア116と、サンプリング終了後の検体ラック101を再び搬送ライン104に戻すラックハンドリング機構118を備える。
【0020】
第2分析部120は、搬送ライン104に沿って第1分析部113に隣接して配置され、第1分析部113と同様に、識別装置125、ラック取込機構124、サンプリングエリア122、分注ライン121、ラック退避エリア123を備える。
【0021】
分析部の1例としては、生化学分析部が考えられる。生化学分析部の構成の1例としては、円周上に並べて配置された各反応容器内で各種の分析項目に応じたサンプルと試薬の反応を進める反応ディスクと、各種の分析項目に応じた試薬を試薬吸入位置に位置づけるように動作する試薬ディスクと、サンプリングエリア115から反応ディスク上の反応容器へサンプル容器内のサンプルを分注するサンプル分注機構と、試薬ディスク上の試薬ボトルから反応ディスク上の反応容器へ分析項目に応じた試薬を分注する試薬分注機構を具備する。分析部の配置は、検体ラック101の渋滞を抑制するために、一般的に検体処理能力の高い分析部を上流側に配置することが望ましい。
【0022】
図2および、通常分析動作を示したフローチャートの図4、通常分析時の分析部におけるサンプル分注動作を示したフローチャートの図5を用いて、通常分析時の検体ラック101の搬送経路を説明する。
【0023】
入力部129により分析が依頼されると分析が開始し、ラック供給部102に並べられた検体ラック101は、搬送ライン104に移載された後、検体ラック101及び検体ラック101に収容されるサンプル容器に貼り付けられたバーコードラベル等の識別媒体を識別装置112により読み取ることで、検体ラック番号及びサンプル容器番号が認識され、測定依頼情報の照合が行われる(図4a〜c)。識別装置112によって認識された検体ラック番号及びサンプル容器番号は、制御部126に伝達され、検体ラック101の種別、各サンプル容器に対し指示されている分析項目の種類等が、検体受付番号と対応させて入力部129から予め指示されている分析情報と照合され、その照合結果に基づいて検体ラック101の送り先が制御部126によって決定され、記憶部127に記憶されてその後の検体ラック101の処理に利用される。
【0024】
第1分析部113による分析が依頼されているサンプルが存在する場合(図4d〜e)、検体ラック101は第1分析部113の識別装置119まで搬送され、識別装置119により検体ラック情報(分析情報)が照合される(図5a〜c)。第1分析部の分注ラインに空きがある場合、ラック取込機構117により搬送ライン104上から分注ライン114に移載され、空きがない場合はその場で待機する(図5d〜f)。移載された検体ラック101は、サンプリングエリア115に移動され、分析が指示されているサンプル容器内に検体分注機構の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる(図5g〜h)。同じサンプル容器について2項目以上の検査が指示されている場合、及び同じ検体ラック101上の他のサンプル容器に対し検査項目が指示されている場合は、引き続いてサンプル採取動作が繰り返される。
【0025】
第1分析部について指示されている総ての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック101は、ラックハンドリング機構118の対応位置まで移動され、ラックハンドリング機構118によって搬送ライン104上へ移載される(図5i〜j)。
【0026】
第2分析部120による分析が依頼されているサンプルが存在する場合(図4f〜g)、図5で示すように、検体ラック101は、第2分析部120の識別装置125まで搬送され、識別装置125により検体ラック情報(分析情報)が照合され、ラック取込機構124により搬送ライン104上から分注ライン121に移載される。移載された検体ラック101は、サンプリングエリア122に移動され、分析が指示されているサンプル容器内に検体分注機構の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる。同じサンプル容器について2項目以上の検査が指示されている場合、及び同じ検体ラック101上の他のサンプル容器に対し検査項目が指示されている場合は、引き続いてサンプル採取動作が繰り返される(図5a〜i)。
【0027】
第2分析部について指示されている総ての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック101は、ラックハンドリング機構108の対応位置まで移動され、ラックハンドリング機構108によって帰還ライン105に移送され(図4h)、帰還ライン105によりラック振分機構110まで搬送される。
【0028】
搬送された検体ラック101の検体ラック番号は記憶部127に記憶されている為、コントロール検体用ラック、標準試料用ラック、及び洗浄液用ラック等の再検査が不要な検体ラック101か、再検査の可能性のある検体ラック101かは制御部126により既に判断されている。検体ラック101はその判断に基づいて、再検査が不要で有れば、制御部126の制御信号を受けたラック振分機構110によりラック戻し機構109に移送され、ラック戻し機構109によりラック収納部103へ収納される。検体ラック101に再検査の可能性が有れば、待機部ハンドリング機構107に受け渡されラック待機部106へ運ばれ、再検査の要否が決定するまで待機する(図4i)。
【0029】
一方、分析部の反応ディスク上の反応容器に採取されたサンプルは、試薬分注機構によって分注された試薬と反応され、所定時間後に測定された各分析項目に対応するデータが制御部126へ出力される(図4j)。制御部126は、予め設定されている判定規準と分析検査データを照合し、測定データが不適性な場合は、再検査が必要な検体であることを検体ラック番号及びサンプル容器番号と対応させて記憶部127に記憶する(図4k)。再検査が不要と判定された検体ラック101は、待機部ハンドリング機構107にてラック待機部106から帰還ライン105に移送され、帰還ライン105にてラック戻し機構109まで搬送され、ラック戻し機構109によりラック収納部103へ収納される。第1回目の分析検査データ及び再検査の分析検査データは、測定結果がマージされ、マージした測定結果が表示部128に出力(表示)される(図4l〜n)。
【0030】
第1分析部113および第2分析部120の測定結果に基づき、制御部126により再検査が必要と判断された検体ラック101は、待機部ハンドリング機構107にてラック待機部106から搬送ライン104に移送され、第1分析部113、または第2分析部120へ搬送され、前述の手順で再び分析される。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態における、緊急検体ラックの搬送経路を示した概略図である。図3および、緊急検体分析動作を示したフローチャートの図6、緊急検体分析時の分析部におけるサンプル分注動作を示したフローチャートの図7を用いて、緊急検体分析時の検体ラック101の搬送経路を説明する。図2において、分注ライン内を検体ラックが上流から下流に搬送されていたのに対し、図3においては、緊急検体ラックがサンプリングエリア下流側からサンプリングエリアに位置付けられるよう搬送される点が異なる。
【0032】
入力部129により緊急検体分析が依頼されると分析が開始し、緊急検体ラック投入部111に検体ラック101が置かれると、緊急検体ラック投入部111にある検体ラック101がラック供給部102に存在する検体ラック101に優先して搬送ライン104に移載される(図6a〜b)。検体ラック101は搬送ライン104に移載された後、検体ラック101及び検体ラック101に収容されるサンプル容器に貼り付けられたバーコードラベル等の識別媒体を識別装置112により読み取ることで、検体ラック番号及びサンプル容器番号が認識され、測定依頼情報の照合が行われる(図6c)。識別装置112によって認識された検体ラック番号及びサンプル容器番号は、制御部126に伝達され、検体ラック101の種別,各サンプル容器に対し指示されている分析項目の種類等が、検体受付番号と対応させて入力部129から予め指示されている分析情報と照合され、その照合結果に基づいて検体ラック101の送り先が制御部126によって決定され、記憶部127に記憶されてその後の検体ラック101の処理に利用される。
【0033】
第1分析部113による分析が依頼されているサンプルが存在する場合(図6d〜e)、検体ラック101は第1分析部113の識別装置119まで搬送され、識別装置119により検体ラック情報(分析情報)が照合される(図7a〜c)。サンプリングエリア115にサンプル分注中の検体ラック101が存在するか確認され(図7d)、検体ラック101が存在しない場合、該検体ラック101はラック取込機構117の対応位置まで搬送ライン104によって搬送される(図7i)。搬送ライン104上に停止された検体ラック101はラック取込機構117により分注ライン114に移載され、移載された検体ラック101は、サンプリングエリア115に移動され、分析が指示されているサンプル容器内に検体分注機構の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる(図7j、k、l)。
【0034】
サンプリングエリア115に検体ラック101が存在する場合は、サンプリングエリア115にある検体ラック101をラック退避エリア116に後退させて、サンプリングエリア115を空ける(図7e)。緊急検体が搭載された検体ラック101は、搬送ライン104によりラックハンドリング機構118まで搬送され、ラックハンドリング機構により分注ライン114に移送される(図7f〜g)。検体ラック101は、分注ライン114によりサンプリングエリア115に移動され、分析が指示されているサンプル容器内に検体分注機構の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる(図7h、図7l)。
【0035】
このように、分注ライン114内であって、サンプリングエリア115上流側に隣接した位置にラック退避エリア116を備え、制御部126は、緊急検体測定時にサンプリングエリア115に検体ラックが存在する場合は、検体ラックをラック退避エリア116に移動した上で、サンプリングエリア115下流側から緊急検体ラックをサンプリングエリアに位置付ける。これにより、装置の複雑化や装置コストの上昇を抑制しつつ、緊急検体ラックを早急に測定できる処理能力の高い自動分析装置を提供することができる。なお、前述したように、緊急検体測定時にサンプリングエリア115に検体ラックが存在しない場合は、制御部126は、サンプリングエリア上流側から緊急検体ラックをサンプリングエリアに位置づける。
【0036】
また、サンプリング中の検体ラック101と緊急検体が搭載された検体ラック101の移送は、各々実施してもよいし、緊急検体が搭載された検体ラック101が分注ラインに移送された後に、両方の検体ラック101を同時に移動させてもよい。つまり、分注ライン内で、サンプリングエリア115にある検体ラックと緊急検体ラックとを同時に上流側へ移動させ、サンプリングエリア115にある検体ラックはラック退避エリア116に、緊急検体ラックはサンプリングエリアに移動させてもよい。これにより、2つの検体ラックを分注ラインの下流側から上流側へ一度のライン制御動作で行うことができ、それぞれ上流側へ移動させるよりも効率的に移動させることができる。
【0037】
なお、この一度のライン制御動作で2つの検体ラックを移動させるようにするために、ラックハンドリング機構118が緊急検体ラックを分注ライン114に載せられるように、検体ラックがサンプリングエリア115に位置付けられた状態でも、分注ライン上に検体ラック1つ分が載せられるスペースが設けられていることが望ましい。また、ラック退避エリア116には、少なくても1つの検体ラックが待機できるスペースが設けられている。
【0038】
また、通常時には上記制御を実現できるような工夫が必要である。つまり、サンプリングエリア115に存在する検体ラックがラック退避エリアに移動できるよう、制御部126は、検体ラックがラック退避エリア116に停止しないよう分注ライン内の検体ラックの停止位置を制御する。
【0039】
このために、分注ラインに搬送された検体ラック同士の間隔が、分注ライン内のラック退避エリアの上流側で、検体ラック1つ分のスペースが空くように移送したり、ラック退避エリア分のスペースを空けなくてもよいように、ラック退避エリアの上流側の直前にラックの進入を防ぐための公知のラックストッパを設けてもよい。また、分注ラインが一つのラインで構成されている場合には、ラック退避エリアに検体ラックが位置付けられる際に、ラック退避エリアの上流側の直前の検体ラックも同時に後退することが考えられる。このような後退を避けるために、検体ラックのラック退避エリアの直前の検体ラックが分注ラインの上流側に後退しないように、検体ラックの上流側に公知のラックストッパを設けてもよい。検体ラックがラック退避エリアからサンプリングエリア115に移動する際に、同時に前進してラック退避エリアに進入するのを防ぐために、この場合には、やはり公知のラックストッパを設けることが有効である。
【0040】
指示されている総ての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック101は、ラックハンドリング機構118の対応位置まで移動され、ラックハンドリング機構118によって搬送ライン104上へ移載される(図7m〜o)。
【0041】
第2分析部120による分析が依頼されている場合は、検体ラック101は第2分析部へ搬送され、上記と同様の動作により、検体ラック101が搬送され、第2分析部へサンプルが分注される(図6f〜g)。
【0042】
指示されている総ての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック101は、ラックハンドリング機構108の対応位置まで移動され、ラックハンドリング機構108によって帰還ライン105に移送され(図6h)、帰還ライン105によりラック振分
機構110まで搬送される。
【0043】
搬送された検体ラック101は、再検査が不要で有れば、制御部126の制御信号を受けたラック振分機構110によりラック戻し機構109に移送され、ラック戻し機構109によりラック収納部103へ収納される。検体ラック101に再検査の可能性が有れば、待機部ハンドリング機構107に受け渡されラック待機部106へ運ばれ、再検査の要否が決定するまで待機する(図6i)。制御部126は、予め設定されている判定規準と
分析検査データを照合し、測定データが不適性な場合は、再検査が必要な検体であることを検体ラック番号及びサンプル容器番号と対応させて記憶部127に記憶する(図6k)。再検査が不要と判定された検体ラック101は、待機部ハンドリング機構107にてラック待機部106から帰還ライン105に移送され、帰還ライン105にてラック戻し機構109まで搬送され、ラック戻し機構109によりラック収納部103へ収納される。第1回目の分析検査データ及び再検査の分析検査データは、測定結果がマージされ、マージした測定結果が表示部128に出力(表示)される(図6l〜n)。
【0044】
本実施例のような構成とすることにより、装置の複雑化や装置コストの上昇を抑制しつつ、緊急検体ラックの早急に測定できる処理能力の高い自動分析装置を提供できる。
【0045】
なお、識別装置は、各分析部にそれぞれ設ける構成で説明したが、各分析部に設けずに識別装置112にその役割を担わせてもよい。また、ラック供給部、ラック収納部、ラック待機部について、図1で説明したが、本発明においては、必須の構成ではなく、このような供給部、収納部、待機部を設けていない装置についても適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
101 検体ラック
102 ラック供給部
103 ラック収納部
104 搬送ライン
105 帰還ライン
106 ラック待機部
107 待機部ハンドリング機構
108 ラックハンドリング機構
109 ラック戻し機構
110 ラック振分機構
111 緊急検体ラック投入部
112 識別装置(搬送ライン)
113 第1分析部
114 分注ライン(第1分析部)
115 サンプリングエリア(第1分析部)
116 ラック退避エリア(第1分析部)
117 ラック取込機構(第1分析部)
118 ラックハンドリング機構(第1分析部)
119 識別装置(第1分析部)
120 第2分析部
121 分注ライン(第2分析部)
122 サンプリングエリア(第2分析部)
123 ラック退避エリア(第2分析部)
124 ラック取込機構(第2分析部)
125 識別装置(第2分析部)
126 制御部
127 記憶部
128 表示部
129 入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7