特許第6227974号(P6227974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227974
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】バースト信号受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/10 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   H04L7/10
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-224165(P2013-224165)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-88821(P2015-88821A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木村 英明
(72)【発明者】
【氏名】浅香 航太
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊二
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−005772(JP,A)
【文献】 特開2006−345284(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0136452(US,A1)
【文献】 栖川 淳 Jun Sugawa,ITU−T/FSANにおける光アクセス標準化動向−NG−PON− A trend of standardization for ITU-T/FSAN optical access network -NG-PON-,電子情報通信学会2012年通信ソサイエティ大会講演論文集2 PROCEEDINGS OF THE 2012 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,日本,電子情報通信学会,2012年 8月28日,P.SS-31〜SS-34
【文献】 石井 健二 Kenji Ishii,次世代光アクセスシステムに向けた低消費電力光送受信技術 A Low Power Transceiver Technologies for Next Generation Optical Access Systems,電子情報通信学会2011年通信ソサイエティ大会講演論文集2 PROCEEDINGS OF THE 2011 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,日本,電子情報通信学会,2011年 8月30日,P.SS123〜SS124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の親ノードと複数の子ノードを時分割多重によって接続するデジタルコヒーレント光伝送システムにおける前記親ノードに備わるバースト信号受信装置であって、
前記子ノードから送信されるバースト信号毎に、前記親ノードに備わるコヒーレント検波を行うための信号処理部に対してリセット信号を送信するリセット信号送信部を備え
前記信号処理部は、前記リセット信号を受信後に検出された次のバースト信号のトレーニング信号又は引き込み信号を用いて前記コヒーレント検波のパラメータを決定する、
バースト信号受信装置。
【請求項2】
バースト信号の終端情報を検出する終端情報検出部をさらに備え、
前記リセット信号送信部は、前記終端情報検出部における終端情報の検出を契機に、前記リセット信号を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のバースト信号受信装置。
【請求項3】
前記終端情報検出部が前記終端情報を検出すると、トレーニング信号受信タイミングを当該バースト信号のガード時間間隔経過後に変更し、変更後のトレーニング信号受信タイミングを前記信号処理部に通知するトレーニング信号受信タイミング推定部をさらに備える請求項2に記載のバースト信号受信装置。
【請求項4】
バースト信号の受信開始時刻及び受信終了時刻並びに当該バースト信号の送信元情報を格納するユーザ情報参照テーブルを作成する信号割り当てスケジューラをさらに備え、
前記リセット信号送信部は、前記信号割り当てスケジューラにおけるバースト信号の受信終了時刻に従って、前記リセット信号を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のバースト信号受信装置。
【請求項5】
前記引き込み信号は、バースト信号のプリアンブルである、請求項1、2、及び4のいずれかに記載のバースト信号受信装置。
【請求項6】
単一の親ノードと複数の子ノードを時分割多重によって接続するデジタルコヒーレント光伝送システムにおける前記親ノードの行うバースト信号受信方法であって、
リセット信号送信部が、前記子ノードから送信されるバースト信号毎に、前記親ノードに備わるコヒーレント検波を行うための信号処理部に対してリセット信号を送信するリセット信号送信手順と、
前記信号処理部が、前記リセット信号を受信後に検出された次のバースト信号のトレーニング信号又は引き込み信号を用いて前記コヒーレント検波のパラメータを決定するパラメータ設定手順と、
を実行することを特徴とするバースト信号受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコヒーレント光伝送によるPONシステムの上りバースト信号の受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network)システムに代表される光伝送システムにおいて、デジタル信号処理を用いることで光伝送システムを高度化することができる。信号処理技術や集積回路技術の向上に伴って信号処理技術を用いた光伝送システムに対する期待が高まっている。
【0003】
基幹系光伝送システムにおいてはデジタルコヒーレント技術を用いた大容量長距離伝送に関する検討が進んでいる。デジタルコヒーレント技術では、等化処理、光周波数オフセット補償処理、位相推定処理など信号処理技術によって実用的なコヒーレント検波を実現する。
【0004】
デジタルコヒーレント受信を実現する信号処理技術としては、図1に示すように基準となる定期的なトレーニング信号を用いて推定処理や補償処理を行うトレーニング信号方式や、引き込み信号を用いて初期パラメータを設定した後に実データを受信しつつパラメータを更新するブラインド方式がある(例えば、非特許文献1)。
【0005】
トレーニング信号方式では、多値信号送信装置において実データに加えて一定の時間間隔でトレーニング信号PTを送信する。デジタルコヒーレント受信装置は、このトレーニング信号PTの誤差を最小化するように推定処理及び補償処理のパラメータを決定し、そのパラメータを用いてデータを受信する。このような方法は、実装が容易であるという利点があるが、トレーニング信号分だけ実行スループットが低下する、トレーニング信号に対する同期が必要となり遅延が生じる、次のトレーニング信号を受信するまで信号処理パラメータを変更することができず信号特性の変化に追従できないなどの欠点がある。
【0006】
ブラインド方式では、引き込み信号PLを用いて補償値の初期パラメータを設定した後、実データを用いて信号処理に用いるパラメータを更新し続ける。これにより定期的なトレーニング信号PTとの同期が不要となり、高い実効スループットを達成できる。一方、引き込み信号およびデータ信号は連続的に変化する必要があり、伝送路の切り替えなど信号特性が不連続に変化する場合には実データによるパラメータ更新が困難である。
【0007】
基幹系光伝送システムは、Point−to−Point接続システムであり、システム構築後に伝送路環境が大幅に変化することは少ない。基幹系光伝送システムでは、連続信号を対象とし、図1に示されるようなトレーニング信号方式、あるいはブラインド方式により推定処理や補償処理を行い、デジタルコヒーレント技術を実現してきた。
【0008】
一方、PONシステムに代表されるアクセス向け光伝送システムは単一のOLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)からなるPoint−to−MultiPoint接続システムである。PONシステムでは、時分割多重により複数ユーザによる接続を実現し、OLTは伝送環境の異なる相手との通信をある時間間隔で切り替えながら実現する。したがって、PONシステムで用いられる信号はバースト信号(間欠信号)となり、OLTにおいてはバースト信号に対してデジタルコヒーレント受信を行う。
【0009】
トレーニング信号方式、ブラインド方式は、共に、連続信号に対するデジタルコヒーレント技術の適用を前提としている。連続信号に対する推定処理あるいは補償処理をバースト信号に適用した場合、例えば、前バースト信号を用いて信号処理パラメータを設定した状態で次バースト信号を受信する可能性がある。一方、光オフセットや位相情報はバースト信号毎に異なるため、前バースト信号のトレーニング信号あるいは引き込み信号による信号処理パラメータを用いて次バースト信号の推定処理あるいは補償処理を行うことはできない。
【0010】
PONシステムでは、ONUからOLTに対する上り信号がバースト信号となる。バースト信号に対してデジタルコヒーレント受信を行うためには、バースト信号毎に信号処理パラメータを切り替える必要がある。バースト信号のフレーム長が不均一であることから、連続信号に対するトレーニング信号方式をそのまま適用することはできず、異なるバースト信号に対しては異なる信号処理パラメータを用いるようトレーニング信号のタイミングを調整する必要がある。ブラインド方式では、バースト信号毎に信号処理パラメータを変更する必要があることから、バースト信号の先頭フレームを用いて引き込みを行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】鈴木扇太 宮本裕 富澤将人 坂野寿和 村田浩一 美野真司 柴山充文 渋谷真 福知清 尾中寛 星田剛司 小牧浩輔 水落隆司 久保和夫 宮田好邦 神尾享秀:「光通信ネットワークの大容量化に向けたディジタルコヒーレント信号処理技術の研究開発」、電子情報通信学会誌 Vol.95、No.12、2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、バースト信号毎に連続信号向けのトレーニング方式やブラインド方式の適用を可能とし、PONシステムでデジタルコヒーレント受信を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、バースト信号毎に信号処理パラメータを更新することにより、バースト信号毎に連続信号向けのトレーニング方式やブラインド方式の適用を可能とし、PONシステムでデジタルコヒーレント受信を実現する。
【0014】
具体的には、本発明に係るバースト信号受信装置は、
単一の親ノードと複数の子ノードを時分割多重によって接続するデジタルコヒーレント光伝送システムにおける前記親ノードに備わるバースト信号受信装置であって、
前記子ノードから送信されるバースト信号毎に、前記親ノードに備わるコヒーレント検波を行うための信号処理部に対してリセット信号を送信するリセット信号送信部を備え
前記信号処理部は、前記リセット信号を受信後に検出された次のバースト信号のトレーニング信号又は引き込み信号を用いて前記コヒーレント検波のパラメータを決定する
【0015】
本発明に係るバースト信号受信装置では、バースト信号の終端情報を検出する終端情報検出部をさらに備え、前記リセット信号送信部は、前記終端情報検出部における終端情報の検出を契機に、前記リセット信号を送信してもよい。
【0016】
本発明に係るバースト信号受信装置では、前記終端情報検出部が前記終端情報を検出すると、トレーニング信号受信タイミングを当該バースト信号のガード時間間隔経過後に変更し、変更後のトレーニング信号受信タイミングを前記信号処理部に通知するトレーニング信号受信タイミング推定部をさらに備えてもよい。
【0017】
本発明に係るバースト信号受信装置では、バースト信号の受信開始時刻及び受信終了時刻並びに当該バースト信号の送信元情報を格納するユーザ情報参照テーブルを作成する信号割り当てスケジューラをさらに備え、前記リセット信号送信部は、前記信号割り当てスケジューラにおけるバースト信号の受信終了時刻に従って、前記リセット信号を送信してもよい。
【0018】
本発明に係るバースト信号受信装置では、前記引き込み信号は、バースト信号のプリアンブルであってもよい。
【0019】
具体的には、本発明に係るバースト信号受信方法は、
単一の親ノードと複数の子ノードを時分割多重によって接続するデジタルコヒーレント光伝送システムにおける前記親ノードの行うバースト信号受信方法であって、
リセット信号送信部が、前記子ノードから送信されるバースト信号毎に、前記親ノードに備わるコヒーレント検波を行うための信号処理部に対してリセット信号を送信するリセット信号送信手順と、
前記信号処理部が、前記リセット信号を受信後に検出された次のバースト信号のトレーニング信号又は引き込み信号を用いて前記コヒーレント検波のパラメータを決定するパラメータ設定手順と、を実行する
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バースト信号毎に連続信号向けのトレーニング方式やブラインド方式の適用を可能とし、PONシステムでデジタルコヒーレント受信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】デジタルコヒーレント受信を実現する信号処理技術の一例であり、(a)はトレーニング方式を示し、(b)はブラインド方式を示す。
図2】実施形態1に係るバースト信号受信装置の一例を示す構成図である。
図3】実施形態2に係るバースト信号受信装置の一例を示す構成図である。
図4】トレーニング信号方式により信号処理パラメータを設定する場合のフレーム構成例を示す図である。
図5】ブラインド方式により信号処理パラメータを設定する場合のフレーム構成例を示す図である。
図6】実施形態3に係るバースト信号受信装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態に係る発明は、バースト信号の終端情報を検出し、デジタルコヒーレント受信の信号処理に用いるパラメータを初期化する。本実施形態のバースト信号受信装置は、PONシステムの上りバースト信号受信装置、すなわちOLTに用いることができる。
【0024】
本実施形態に係るバースト信号受信装置は、図2に示すように、ADC(Analog Digital Converter)20、等化処理部21、光オフセット補償処理部22、位相補償処理部23、復調部24、終端情報検出部として機能するEOB検出部25、リセット信号送信部26を備える。
【0025】
本実施形態に係るバースト信号受信方法は、終端検出手順と、パラメータ設定手順と、を順に有する。
終端検出手順では、EOB検出部25が、バースト信号のEOB情報を検出し、リセット信号送信部26に対してメッセージを送信する。
パラメータ設定手順では、リセット信号送信部26は、等化処理部21、光オフセット補償処理部22、位相補償処理部23などのバースト信号毎にパラメータを変更する必要のある信号処理部に対してリセット信号を送信し、各信号処理パラメータを初期化する。
【0026】
このように、バースト信号毎に信号処理パラメータをリセットし、バースト信号毎に連続信号向けと同様のトレーニング信号方式、あるいはブラインド方式を適用する。これにより、連続信号向けの推定処理、補償処理と同様の信号処理技術をバースト信号に対して適用することが可能となり、デジタルコヒーレント受信器においてバースト信号を受信できる。
【0027】
本実施形態に係るバースト信号受信方法は、バースト信号の終端であるEOB情報を用いて信号処理パラメータをリセットする。EOB情報を用いることにより、現行のパラメータを用いてバースト信号を受信してから次のバースト信号を受信開始するまでに信号処理パラメータを初期化することができる。
【0028】
すなわち、バースト信号受信装置は、EOB情報検出後に次バースト信号のトレーニング信号を検出するまで待ち、次バースト信号のトレーニング信号検出後に定期的なバースト信号待ち受けに遷移しても良い。これにより、バースト信号送信装置は他のバースト信号送信装置と連携することなく、トレーニング信号の送信タイミングを制御することができる。
【0029】
また、次バースト信号のプリアンブルを引き込み信号とみなしても良い。これにより、バースト信号送信手法に変更を加えることなくバースト信号を受信できる。
【0030】
このように信号処理部をリセットすることにより、他のバースト信号を用いて設定したパラメータを用いて推定処理あるいは補償処理を行うことを回避することができる。これにより、トレーニング信号方式でトレーニング信号間に他のバースト信号に切り替わった場合において、異なる信号処理パラメータを用いた推定処理あるいは補償処理を行うことができる。また、ブラインド方式においては、バースト信号のプリアンブル毎に信号処理パラメータを変更するため、バースト信号に応じた信号処理パラメータを用いて推定処理あるいは補償処理を行うことができる。
【0031】
図2では、デジタルコヒーレント受信のために等化処理、光オフセット補償処理、位相補償処理を行っているが、前記処理以外の信号処理に対してもリセット信号を送信することにより、バースト信号毎に既存の連続信号向け信号処理技術を適用することができる。
【0032】
また、バースト信号の先端であるプリアンブルを用いてリセット信号を送信しても良い。プリアンブルを用いてリセット信号を送信する場合、前バースト信号に適合したパラメータ情報を用いてプリアンブルを検出する必要があるが、信号処理パラメータのリセットおよび初期値の設定をプリアンブルのみで実行することができる。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態に係る発明は、信号割り当てスケジューラを参照し、バースト信号の受信開始時刻、受信終了時刻、バースト信号の送信元情報をもとに、デジタルコヒーレント受信の信号処理に用いるパラメータを初期化する。また、ユーザ情報に依存する信号処理パラメータに対して、バースト信号毎に信号処理パラメータの保存および書き戻しを行うことにより、同一ユーザからのバースト信号の初期化を行っても良い。
【0034】
本実施形態に係るバースト信号受信装置は、図3に示すように、ADC30、等化処理部31、光オフセット補償処理部32、位相補償処理部33、復調部34、切り替え制御信号送信部35、リセット信号送信部36、ユーザ情報参照テーブル37、信号割り当てスケジューラ38を備える。
【0035】
本実施形態に係るバースト信号受信方法は、テーブル作成手順と、パラメータ設定手順と、を順に有する。
テーブル作成手順では、ユーザ情報参照テーブル37は、信号割り当てスケジューラ38によって与えられるユーザ情報、時刻情報を用いてユーザ情報参照テーブルを格納する。
パラメータ設定手順では、バースト信号受信開始時刻に、等化処理部31や光オフセット補償処理部32に代表される信号処理部が、ユーザ情報参照テーブル37を参照し、ユーザ情報参照テーブルに従ってパラメータを設定する。
【0036】
信号割り当てスケジューラ38はDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)のように既存のPONシステムにおいて用いられている手法を利用しても良い。
【0037】
設定されるパラメータには、ONUに依存するパラメータとバースト信号そのものに依存するパラメータがある。ONUに依存するパラメータとして例えば受信バースト信号の強度情報や波長情報があり、バースト信号そのものに依存するパラメータとしては受信バースト信号の位相情報がある。ONUによって変化するパラメータは、バースト信号終了時のパラメータをユーザ情報参照テーブル37に書き戻すことにより、同一ONUからのバースト信号受信時に初期設定パラメータとして使用することができる。一方、受信信号の位相情報のようにバースト信号そのものに依存するパラメータに対しては、リセット信号によりパラメータを初期化する。例えば、リセット信号送信部36は、ユーザ情報参照テーブル37のバースト信号受信開始時刻、バースト信号受信終了時刻といった時刻情報を参照し、バースト信号受信終了時刻の情報に従って位相補償処理部33に対してリセット信号を送信する。
【0038】
このように、本実施形態に係る発明は、信号処理の特性に応じて信号処理パラメータの保存および書き戻し、あるいはリセット信号の送信を行うことにより、バースト信号をデジタルコヒーレント受信することが可能となる。信号処理パラメータの保存および書き戻しを併用することにより、信号処理パラメータの設定に用いるトレーニング信号や引き込み信号のビット長を削減することができる。
【0039】
図3では、リセット信号の送信に用いるバースト信号受信開始時刻およびバースト信号受信終了時刻といった時刻情報はユーザ情報参照テーブル37を参照することにより取得しているが、ユーザ情報参照テーブル37を介さずに信号割り当てスケジューラ38から取得しても良い。また、切り替え制御信号送信部35およびリセット信号送信部36がユーザ情報参照テーブル37を参照するPULL型ではなく、ユーザ情報参照テーブル37から切り替え制御信号送信部35およびリセット信号送信部36にパラメータ設定信号およびリセット信号送信メッセージを送信するPUSH型の構成としても良い。
【0040】
このように初期パラメータの設定あるいはリセット信号の送信により、他のバースト信号を用いて設定したパラメータを用いて推定処理あるいは補償処理を行うことを回避することができる。トレーニング信号方式においては、トレーニング信号を再受信して信号処理パラメータを決定することにより、他バースト信号によって設定された信号処理パラメータを用いた信号処理を回避することができる。また、ブラインド方式においては、次バースト信号のプリアンブルを引き込み信号として利用することにより、バースト信号に応じた推定処理あるいは補償処理を行うことができる。
【0041】
図3では、デジタルコヒーレント受信のために等化処理、光オフセット補償処理、位相補償処理を行っており、等化処理部、光オフセット処理部にはパラメータ設定を、位相補償処理部にはリセット信号を送付しているが、前記処理以外の信号処理に対してもパラメータの設定あるいはリセット信号を送信しても良い。また、等化処理部や光オフセット補償処理部にリセット信号を送信、あるいは位相補償処理部にパラメータ設定信号を送信しても良い。
【0042】
(実施形態3)
本実施形態に係る発明は、一定の時間間隔でトレーニング信号を受信することにより信号処理パラメータを決定し信号処理により補償を行うバースト信号に対するデジタルコヒーレント受信であって、EOB信号検出時に次トレーニング信号受信時刻をバースト信号間のガード時間間隔後に変更することにより、バースト信号受信のトレーニング信号受信タイミングを推定する。
【0043】
本実施形態に係るバースト信号受信装置は、図6に示すように、ADC60、等化処理部61、光オフセット補償処理部62、位相補償処理部63、復調部64、EOB検出部65、リセット信号送信部66、トレーニング信号受信タイミング推定部67を備える。EOB検出部65は、EOB信号検出部651及びタイマ652を備える。
【0044】
本実施形態では、ある一定時間間隔で送付されるトレーニング信号を用いて推定処理、補償処理を行う。パラメータ設定手順において、トレーニング信号受信タイミング推定部67が、単一バーストフレーム内においては一定時間毎にバースト信号が送付されるものとして次バースト信号の受信タイミングを推定し、各信号処理部に対して情報を送付する。
【0045】
一方、EOB信号検出部651においてEOB信号を検出した場合、パラメータ設定手順において、次のバースト信号受信タイミングまでの時間をタイマ652において取得し、この時間をトレーニング信号受信タイミング推定部67に送付する。トレーニング信号受信タイミング推定部67はバースト信号内では一定時間間隔でトレーニング信号を受信すると推定していたが、バースト時間間隔後にトレーニング信号を受信すると推定値を変更する。そして、パラメータ設定手順において、トレーニング信号受信タイミング推定部67が、等価処理部61、光オフセット補償処理部62及び位相補償処理部63を含む各推定処理及び補償処理部に対して情報を送付する。このように次トレーニング信号の到達予測時刻を変更することにより、バースト信号受信装置においてトレーニング信号受信タイミングを明確化し、実データ信号の識別を容易化することができる。
【0046】
図4に、デジタルコヒーレント光伝送によるバースト信号受信方法においてトレーニング信号方式を適用した場合の受信例を示す。図4では、2つのバースト信号を受信する例を示す。デジタルコヒーレント光伝送におけるバースト信号受信装置では、トレーニング信号PTを検出し、信号処理パラメータを決定する。トレーニング信号方式では、バーストフレーム内の一定時間間隔でトレーニング信号PTを挿入し、上記トレーニング信号PTから算出される信号処理パラメータを用いて推定処理、補償処理を行う。トレーニング信号PTの挿入間隔はバースト信号送信装置、バースト信号受信装置間であらかじめ決めておく。
【0047】
バースト信号の終端において、EOB信号検出部651がEOB信号を検出する。この時、バースト信号受信装置は信号処理パラメータを初期化するとともに、次バースト信号のトレーニング信号を待ち受ける状態に遷移する。例えば、リセット信号送信部66が等価処理部61、光オフセット補償処理部62及び位相補償処理部63にリセット信号を出力して各信号処理部の信号処理パラメータを初期化する。そして、トレーニング信号受信タイミング推定部67がトレーニング信号を受信する時間の推定値を変更する。このようにすることで、バースト信号送信装置に変更を加えることなく、バースト信号毎に連続信号向けデジタルコヒーレント信号処理を適用できる。
【0048】
また、EOB信号を検出して待ち受け状態に遷移することにより、次トレーニング信号受信予測時刻を変更することが可能である。バーストフレーム内では一定時間間隔でトレーニング信号を受信するため、前トレーニング受信時刻からトレーニング信号間隔時間経過した時刻が次トレーニング信号受信予測時刻となる。一方、EOB検出部65がEOB信号を検出した場合、次のバーストフレームにおけるトレーニング信号は、信号処理部をリセットしてからバーストフレーム間のガードインターバル時間が経過した後となる。信号処理部に対してリセット信号を送信するとともに、次トレーニング信号の到達予測時刻を変更することにより、バースト信号受信装置においてトレーニング信号受信タイミングを明確化し、実データ信号の識別を容易化することができる。
【0049】
なお、本実施形態では実施形態1において説明したEOB信号検出時に次トレーニング信号受信時刻をバースト信号間のガード時間間隔後に変更する例について説明したが、これに限定されない。例えば、実施形態2において説明した信号割り当てスケジューラを参照してバースト信号の終端を検出し、この検出を契機に次トレーニング信号受信時刻をバースト信号間のガード時間間隔後に変更してもよい。
【0050】
(実施形態4)
図5に、デジタルコヒーレント光伝送によるバースト信号受信方法において引き込み信号を用いたブラインド方式を適用した場合の受信例を示す。図5では、図4と同様に2つのバースト信号を受信する例を示す。
【0051】
ブラインド方式においては、プリアンブル信号を引き込み信号PLとみなして初期信号処理パラメータを設定し、実データ伝送時に信号処理パラメータを更新することにより推定処理、補償処理を行う。バースト信号受信装置は、EOB信号検出時にパラメータ更新を停止し、引き込み信号を待ち受ける状態に遷移する。引き込み信号PLを待ち受ける状態に遷移することにより、次に受信するバースト信号のプリアンブルを引き込み信号と見なして初期補償値を設定することができる。一方、引き込み信号待ち受け状態に遷移しない場合、次バースト信号も前バースト信号の信号処理パラメータを用いて補償してしまう可能性がある。
【0052】
このようにすることで、バースト信号送信装置に変更を加えることなく、バースト信号毎に連続信号向けデジタルコヒーレント信号処理を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
20、30、60:ADC
21、31、61:等価処理部
22、32、62:光オフセット補償処理部
23、33、63:位相補償処理部
24、34、64:復調部
25、65:EOB検出部
26、36、66:リセット信号送信部
35:切り替え制御信号送信部
37:ユーザ情報参照テーブル
38:信号割り当てスケジューラ
651:EOB信号検出部
652:タイマ
67:トレーニング信号受信タイミング推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6