特許第6227985号(P6227985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227985
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20171030BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20171030BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B24B27/06 M
   H01L21/78 F
   B24B55/06
   B24B55/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-245720(P2013-245720)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-100909(P2015-100909A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】清水 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】服部 滋
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−125773(JP,A)
【文献】 特開2007−069280(JP,A)
【文献】 特開2011−173190(JP,A)
【文献】 特開2013−123781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/00 − 55/12
B23Q 11/00
H01L 21/301
B24B 27/06
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されるウエーハを切削する切削手段と、該切削手段による切削に用いる切削水を供給する切削水供給手段と、を少なくとも備える切削装置であって、
該切削水供給手段からウエーハの上面に供給された該切削水によって電気的に接続されるように、該チャックテーブルを囲繞し該チャックテーブルを挟んで対峙して配設されたプラス電極とマイナス電極と、
該プラス電極と該マイナス電極とを通電させる電源部と、を備え、
該切削水供給手段にて供給される該切削水によって該プラス電極と該マイナス電極とを接続させ、該電源部にて該プラス電極と該マイナス電極とを通電させ該チャックテーブルに保持されるウエーハの表面に在る該切削水に含まれる不純物を該プラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方に付着させることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されるウエーハを切削する切削手段と、該切削手段による切削に用いる切削水を供給する切削水供給手段と、を少なくとも備える切削装置であって、
該切削水供給手段からウエーハの上面に供給された該切削水によって電気的に接続されるように、該チャックテーブルを囲繞して配設されたプラス電極と該チャックテーブルに配設されたマイナス電極と、
該プラス電極と該マイナス電極とを通電させる電源部と、を備え、
該切削水供給手段にて供給される該切削水によって該プラス電極と該マイナス電極とを接続させ、該電源部にて該プラス電極と該マイナス電極とを通電させ該チャックテーブルに保持されるウエーハの表面に在る該切削水に含まれる不純物を該プラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方に付着させることを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削水を供給しながらウエーハを切削する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置では、切削ブレードを挟んで対向配置された一対の切削ノズルから切削ブレードに切削水が噴射されると共に、切削方向の前方に配置されたシャワーノズルからウエーハの上面に切削水が噴射される。切削ブレードに切削水が噴射されることで、切削ブレードとウエーハとの間に生じる切削時の摩擦熱が抑えられている。また、切削方向の前方側からウエーハの表面にシャワー状の切削水が噴射されることで、切削時に生じる微細な切削屑が洗い流されて、切削水中に含まれる切削屑等の不純物がウエーハの表面に付着することが防止されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−187849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の切削装置においては、切削ノズルやシャワーノズルから噴射される切削水の流量を増加させることで、切削水中の不純物をウエーハの表面に更に付着させ難くすることができる。しかしながら、切削水の流量を増加させると、切削によって小片化されたチップが切削水の勢いによって吹き飛ばされてしまうという問題があり、ウエーハの表面に対する不純物の付着を効果的に防止することができなかった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、切削水の流量を増加させることなく、ウエーハの表面に対する切削水中の不純物の付着を効果的に防止できる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されるウエーハを切削する切削手段と、該切削手段による切削に用いる切削水を供給する切削水供給手段と、を少なくとも備える切削装置であって、該切削水供給手段からウエーハの上面に供給された該切削水によって電気的に接続されるように、該チャックテーブルを囲繞し該チャックテーブルを挟んで対峙して配設されたプラス電極とマイナス電極と、該プラス電極と該マイナス電極とを通電させる電源部と、を備え、該切削水供給手段にて供給される該切削水によって該プラス電極と該マイナス電極とを接続させ、該電源部にて該プラス電極と該マイナス電極とを通電させ該チャックテーブルに保持されるウエーハの表面に在る該切削水に含まれる不純物を該プラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方に付着させることを特徴とする。
また本発明の他の切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されるウエーハを切削する切削手段と、該切削手段による切削に用いる切削水を供給する切削水供給手段と、を少なくとも備える切削装置であって、該切削水供給手段からウエーハの上面に供給された該切削水によって電気的に接続されるように、該チャックテーブルを囲繞して配設されたプラス電極と該チャックテーブルに配設されたマイナス電極と、該プラス電極と該マイナス電極とを通電させる電源部と、を備え、該切削水供給手段にて供給される該切削水によって該プラス電極と該マイナス電極とを接続させ、該電源部にて該プラス電極と該マイナス電極とを通電させ該チャックテーブルに保持されるウエーハの表面に在る該切削水に含まれる不純物を該プラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方に付着させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ウエーハの表面に供給された切削水には、ウエーハの切削時に生じた不純物がプラス又はマイナスに帯電された状態で含まれている。このため、プラス電極とマイナス電極とを切削水を介して通電することで、マイナスに帯電された不純物がプラス電極側に引き寄せられ、プラスに帯電された不純物がマイナス電極側に引き寄せられる。このように、電気泳動によって切削水中の不純物をプラス電極又はマイナス電極に付着させて、ウエーハの表面に対する不純物の付着を防止することができる。また、強い水流を必要しないため、切削によって小片化されたチップが水流によって飛ばされることがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切削水を介してプラス電極とマイナス電極を通電させて、切削水中の不純物を電気泳動させることで、切削水の流量を増加させることなく、ウエーハの表面に対する不純物の付着を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係る切削装置の斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】第2の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。
図5】第3の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、第1の実施の形態に係る切削装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る切削装置の斜視図である。なお、図1においては、主にチャックテーブルの周辺構成についてのみ図示しており、その他の構成については記載を省略している。また、本実施の形態に係る切削装置は、図1に示す構成に限定されない。切削装置は、切削屑等の切削水中の不純物に電気泳動を起こさせる構成であれば、どのように構成されてもよい。
【0014】
図1に示すように、切削装置1は、切削水35(図2参照)を供給しながら切削ブレード25でウエーハWを切削する際に、切削時に生じた切削水35中の不純物36(図2参照)を電気泳動によってウエーハWの表面31から除去するように構成されている。ウエーハWは、略円板状に形成されており、表面31が不図示の分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインで区画された各領域には、IC、LSI等の各種デバイスが形成されている。ウエーハWの裏面32(図2参照)には保護テープTが貼着されている。
【0015】
なお、ウエーハWは、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウエーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア等の光デバイスウエーハでもよい。また、保護テープTは、例えば、シート状のPET(polyethylene terephthalate)でもよい。
【0016】
切削装置1の基台11上には、ウエーハWを保持する円形状のチャックテーブル12が設けられている。チャックテーブル12の上面には、ポーラスセラミックス材により保持面21(図2参照)が形成されている。保持面21は、チャックテーブル12内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されており、保持面21上に生じる負圧によって保護テープTを介してウエーハWが吸着保持される。また、チャックテーブル12の周囲には、チャックテーブル12を挟んで対峙するように円弧状のプラス電極13とマイナス電極14が配設されている。プラス電極13及びマイナス電極14は、基台11に立設された柱部23によってチャックテーブル12の上面高さ付近で支持されている。
【0017】
また、プラス電極13及びマイナス電極14は、チャックテーブル12の外縁に対して僅かな隙間Lを空けて配置されている。この隙間Lは、チャックテーブル12の外縁から切削水35を排出させる一方で、排出時の切削水35によって満たされる程度の大きさに設計されている。このため、チャックテーブル12上に切削水35が供給されると、チャックテーブル12上の切削水35を通じてプラス電極13とマイナス電極14とが電気的に接続される。プラス電極13及びマイナス電極14には電源部15が接続されており、電源部15によってプラス電極13とマイナス電極14とが切削水35を通じて通電される。
【0018】
チャックテーブル12の上方には、チャックテーブル12に保持されるウエーハWを切削する切削手段16が設けられている。切削手段16の切削ブレード25は、スピンドルケース26のスピンドル軸27の先端に設けられている。切削ブレード25は、例えば、ダイアモンド砥粒をレジンボンドで固めて円形にしたレジンブレードで構成される。また、切削ブレード25は、ブレードカバー(不図示)によって周囲が覆われており、ブレードカバーには切削手段16による切削に用いる切削水35を供給する切削水供給手段17(図2参照)が設けられている。切削水供給手段17は、配管を通じて切削水35の供給源(不図示)に接続されている。
【0019】
このように構成された切削装置1では、切削水35を噴射しながら、高速回転する切削ブレード25をウエーハWに切り込ませることより、分割予定ラインに沿ってウエーハWが切削される。このとき、切削水35が切削ブレード25やウエーハWの表面に供給されることで、切削時に生じる微細な切削屑が不純物36(図2参照)として切削水35に混ざり込み、これら不純物36がウエーハWの表面31に付着するおそれがある。本実施の形態に係る切削装置1は、切削水35中の不純物36がプラス又はマイナスに帯電することに着目してなされたものであり、切削水35中の不純物36に電気泳動を起こさせることで、不純物36をプラス電極13及びマイナス電極14の少なくとも一方に付着させている。
【0020】
以下、図2及び図3を参照して、第1の実施の形態に係る切削装置による切削加工について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。図3は、図2の部分拡大図である。なお、ここでは切削水中の不純物がマイナスに帯電しているものとして説明するが、不純物がプラスに帯電していても同様にしてウエーハ上から不純物を除去することが可能である。
【0021】
図2及び図3に示すように、チャックテーブル12の保持面21には、保護テープTを介してウエーハWが保持されている。切削ブレード25は、ウエーハWの径方向外側において分割予定ラインに対して切削ブレード25が位置合わせされ、ウエーハWの表面31からの切削ブレード25の深さ位置がウエーハWの厚み方向の略中間位置に調整される。そして、切削水供給手段17から切削水35が供給されながら、高速回転する切削ブレード25に対してチャックテーブル12上のウエーハWが切削送りされる。これにより、切削ブレード25によってウエーハWが切削されて、分割予定ラインに沿ってウエーハWがハーフカットされる。
【0022】
このとき、切削水供給手段17から供給された切削水35は、ウエーハWの表面31に広がって切削水35の層を形成しながらチャックテーブル12の外縁に向かって流れている。この切削水35には、ウエーハWの切削によって生じた切削屑(ウエーハ粉)が、マイナスに帯電した不純物36として混在されている。そして、チャックテーブル12の外縁とプラス電極13との隙間Lが切削水35で満たされると共に、チャックテーブル12の外縁とマイナス電極14との隙間Lが切削水35で満たされる。よって、プラス電極13とマイナス電極14とが切削水35の層を通じて電気的に接続される。
【0023】
プラス電極13及びマイナス電極14が電源部15によって通電されると、マイナスに帯電した切削水35中の不純物36がプラス電極13に向かって電気泳動する。これにより、ウエーハWの表面31に在る切削水35中の不純物36がプラス電極13に吸着され、ウエーハWに対する不純物36の付着が防止される。なお、ここでは、ウエーハWが切削ブレード25でハーフカットされる構成について説明したが、ウエーハWが表面31から保護テープTまで切り込まれてフルカットされてもよい。この場合、保護テープTの切削屑もマイナスに帯電されるため、プラス電極13に付着させることができる。
【0024】
また、本実施の形態では、チャックテーブル12が矢印方向に切削送りされるため、切削ブレード25がプラス電極13側からマイナス電極14側にウエーハWに対して相対的に動かされている。さらに、切削ブレード25の前方、すなわちマイナス電極14側からプラス電極13側に向けて切削水35が供給されている。よって、切削ブレード25の後方で生じた不純物36は切削水35に巻き込まれてプラス電極13側に流されている。このように切削ブレード25の後方にプラス電極13を配置することで、マイナスに帯電した不純物36をプラス電極13に付着させ易くして、ウエーハWの表面31から効率的に切削水35中の不純物36を除去している。
【0025】
以上のように、第1の実施の形態に係る切削装置1によれば、ウエーハWの表面31に供給された切削水35には、ウエーハWの切削時に生じた不純物36がマイナスに帯電された状態で含まれている。このため、プラス電極13とマイナス電極14とを切削水35を介して通電することで、不純物36がプラス電極側に引き寄せられてプラス電極13に付着され、ウエーハWの表面31に対する不純物36の付着が防止される。また、強い水流を必要しないため、切削によって小片化された場合でも、チップが水流によって飛ばされることがない。
【0026】
次に、図4を参照して、第2の実施の形態に係る切削装置1について説明する。図4は、第2の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。なお、第2の実施の形態は、チャックテーブルの周囲にプラス電極を配設して、チャックテーブルにマイナス電極を配設した点で第1の実施の形態と相違している。したがって、主に相違点について詳細に説明する。また、図4において、説明の便宜上、第1の実施の形態と同一の名称については同一の符号を付して説明する。
【0027】
図4に示すように、第2の実施の形態に係る切削装置1では、環状のプラス電極13がチャックテーブル12を囲繞して配設され、チャックテーブル12自体がマイナス電極14になっている。また、プラス電極13とチャックテーブル12の外縁との間には、切削水35を排出すると共に、排出時の切削水35によって満たされる程度の隙間Lが設けられている。切削水供給手段17から切削水35が供給されながら、高速回転する切削ブレード25に対してチャックテーブル12上のウエーハWが切削送りされる。これにより、切削ブレード25によってウエーハWが切削されて、分割予定ラインに沿ってウエーハWがハーフカットされる。
【0028】
このとき、プラス電極13とチャックテーブル12(マイナス電極14)とが切削水35の層を通じて電気的に接続される。プラス電極13及びマイナス電極14が電源部15によって通電されると、切削時に生じた切削水35中のマイナス帯電した不純物36が電気泳動してプラス電極13に吸着される。また、チャックテーブル12がマイナス電極14になっているため、切削水35中のマイナスに帯電した不純物36がチャックテーブル12に付着することが防止される。なお、ウエーハWが切削ブレード25でハーフカットされる構成に限らず、フルカットされてもよい。保護テープTの切削屑もマイナスに帯電されるため、プラス電極13に付着させることができる。
【0029】
以上のように、第2の実施の形態に係る切削装置1では、プラス電極13とチャックテーブル12(マイナス電極14)とを切削水35を介して通電することで、不純物36をプラス電極13に付着させてウエーハWの表面31に対する不純物36の付着を防止できる。また、チャックテーブル12に対する切削水35中の不純物36の付着が抑制されるため、チャックテーブル12からウエーハWに不純物36が付着することを防止できる。また、プラス電極13がチャックテーブル12の全周に亘って配設されているため、切削水35中の不純物36を効果的に除去することができる。
【0030】
次に、図5を参照して、第3の実施の形態に係る切削装置について説明する。図5は、第3の実施の形態に係る切削装置による切削加工の説明図である。なお、第3の実施の形態は、チャックテーブルの周囲にプラス電極を配設して、チャックテーブル及び切削手段にマイナス電極を配設した点で第1の実施の形態と相違している。したがって、主に相違点について詳細に説明する。また、図5において、説明の便宜上、第1の実施の形態と同一の名称については同一の符号を付して説明する。
【0031】
図5に示すように、第3の実施の形態に係る切削装置1では、環状のプラス電極13がチャックテーブル12を囲繞して配設され、チャックテーブル12自体及び切削手段16自体がマイナス電極14になっている。また、プラス電極13とチャックテーブル12の外縁との間には、切削水35(図3参照)を排出すると共に、排出時の切削水35によって満たされる程度の隙間Lが設けられている。切削水供給手段17から切削水35が供給されながら、高速回転する切削ブレード25に対してチャックテーブル12上のウエーハWが切削送りされる。これにより、切削ブレード25によってウエーハWが切削されて、分割予定ラインに沿ってウエーハWがハーフカットされる。
【0032】
このとき、プラス電極13とチャックテーブル12(マイナス電極14)とが切削水35の層を通じて電気的に接続され、プラス電極13と切削手段16(マイナス電極14)とが切削水35の層を通じて電気的に接続される。プラス電極13及びマイナス電極14が電源部15によって通電されると、切削時に生じた切削水35中のマイナス帯電した不純物36(図3参照)が電気泳動してプラス電極13に吸着される。なお、ウエーハWが切削ブレード25でハーフカットされる構成に限らず、フルカットされてもよい。保護テープTの切削屑もマイナスに帯電されるため、プラス電極13に付着させることができる。
【0033】
以上のように、第3の実施の形態に係る切削装置1では、プラス電極13とチャックテーブル12(マイナス電極14)が切削水35を介して通電され、プラス電極13と切削手段16(マイナス電極14)とが切削水35を介して通電される。これにより、不純物36をプラス電極13に付着させてウエーハWの表面31に対する不純物36の付着を防止できる。また、チャックテーブル12及び切削手段16に対する切削水35中の不純物36の付着が抑制されるため、チャックテーブル12や切削手段16からウエーハWに不純物36が付着することを防止できる。また、プラス電極13がチャックテーブル12の全周に亘って配設されているため、切削水35中の不純物36を効果的に除去することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
例えば、上記した各実施の形態において、切削水35中の不純物36をプラス電極13に付着させる構成としたが、この構成に限定されない。切削対象であるウエーハWや保護テープTの材質に応じて、マイナス電極14に付着させる構成にしてもよい。なお、不純物36の帯電状態は、切削ブレード25の材質、切削対象の材質に応じて変化する。
【0036】
また、上記した各実施の形態では、プラス電極13とマイナス電極14とが固定されたが、プラス電極13とマイナス電極14とが切り替え可能に構成されてもよい。例えば、図2に示す第1の実施の形態では、不純物36の帯電状態や切削送り方向(切削ブレード25の回転方向)に応じてプラス電極13とマイナス電極14とを切り替えることで、切削水35中の不純物36を効果的に除去することができる。また、図4及び図5に示す第2、第3の実施の形態では、不純物36の帯電状態に応じてプラス電極13とマイナス電極14とを切り替えることで、チャックテーブル12や切削手段16への不純物36の付着を抑えつつ、切削水35中の不純物36を効果的に除去することができる。
【0037】
また、上記した第1の実施の形態では、プラス電極13及びマイナス電極14が円弧状に形成されたが、この構成に限定されない。プラス電極13及びマイナス電極14は、チャックテーブル12の外縁に対して、切削水35によって満たされる程度の隙間Lを空けて配設されていればよく、特に形状は限定されない。また、プラス電極13及びマイナス電極14でチャックテーブル12を囲繞する構成にしたが、プラス電極13及びマイナス電極14でチャックテーブル12を部分的に囲繞する構成にしてもよい。
【0038】
また、上記した第2、第3の実施の形態では、プラス電極13が環状に形成されたが、この構成に限定されない。プラス電極13は、チャックテーブル12の外縁に対して、切削水35によって満たされる程度の隙間Lを空けて配設されていればよく、特に形状は限定されない。また、プラス電極13でチャックテーブル12を囲繞する構成にしたが、プラス電極13及びマイナス電極14でチャックテーブル12を部分的に囲繞する構成にしてもよい。
【0039】
また、上記した第3の実施の形態では、チャックテーブル12及び切削ブレード25にマイナス電極14を配設する構成としたが、切削ブレード25にのみマイナス電極14を配設する構成にしてもよい。
【0040】
また、上記した各実施の形態に関わらず、プラス電極13及びマイナス電極14は、切削水供給手段17からウエーハWの表面31に供給された切削水35によって電気的に接続されるように配設されれば、どのように配設されてもよい。また、切削時において、切削水35はウエーハWの全面に存在する必要はなく、少なくともプラス電極13とマイナス電極14を接続するように存在していればよい。また、切削装置1は、単一のプラス電極13及びマイナス電極14を備える構成に限らず、複数のプラス電極13及びマイナス電極14を備える構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、切削水の流量を増加させることなく、ウエーハの表面に対する切削水中の不純物の付着を効果的に防止できるという効果を有し、特に、半導体ウエーハを切削する切削装置に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 切削装置
12 チャックテーブル
13 プラス電極
14 マイナス電極
15 電源部
16 切削手段
17 切削水供給手段
25 切削ブレード
31 ウエーハの表面
35 切削水
36 不純物
W ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5