特許第6227990号(P6227990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許6227990無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法
<>
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000005
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000006
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000007
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000008
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000009
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000010
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000011
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000012
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000013
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000014
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000015
  • 特許6227990-無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227990
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】無線信号伝送システム、マスタ装置、リモート装置及び伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20171030BHJP
   H04B 10/2507 20130101ALI20171030BHJP
【FI】
   H04B10/2575 120
   H04B10/2507
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-254944(P2013-254944)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-115693(P2015-115693A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】桑野 茂
(72)【発明者】
【氏名】可児 淳一
(72)【発明者】
【氏名】深田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 純
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−021693(JP,A)
【文献】 特開平11−275009(JP,A)
【文献】 特表2003−530729(JP,A)
【文献】 特開2000−152300(JP,A)
【文献】 特開2009−094572(JP,A)
【文献】 特表平8−503827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換し、光伝送路を介して接続されたリモート装置に前記下り光信号を送信するマスタ装置と、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した前記歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力するリモート装置と、
を備え
前記マスタ装置は、
デジタル電気信号を出力するデジタル無線変調回路と、
前記デジタル電気信号を予め定められた中間周波数帯域に変換するとともにサンプリングレート変換するマスタ装置側周波数変換回路と、
予め算出した歪み補償量を前記マスタ装置側周波数変換回路で変換されたデジタル電気信号に加算する予補償回路と、
前記歪み補償量が加算されたデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するマスタ装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記アナログ電気信号を光変調し、光変調した光信号を前記下り光信号として送信する光送信回路と、
を備える
ことを特徴とする無線信号伝送システム。
【請求項2】
前記マスタ装置は、
予め生成された監視制御信号をマスタ装置側周波数変換回路に出力するマスタ装置側監視制御回路をさらに備え
前記マスタ装置側周波数変換回路が、前記デジタル無線変調回路が出力したデジタル電気信号に前記監視制御信号を多重す
ことを特徴とする請求項1に記載の無線信号伝送システム。
【請求項3】
予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換し、光伝送路を介して接続されたリモート装置に前記下り光信号を送信するマスタ装置と、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した前記歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力するリモート装置と、
を備え
前記リモート装置は、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信し、アナログ電気信号に変換する光受信回路と、
前記光受信回路で変換したアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記マスタ装置が備える予補償回路で加算された前記デジタル電気信号の歪み補償量を検出するとともに前記歪み補償量以外の歪み量を検出し、検出した前記歪み補償量及び前記歪み量を補償する補償回路と、
前記歪み補償量及び前記歪み量を補償したデジタル電気信号を出力するリモート装置側周波数変換回路と、
前記リモート装置側周波数変換回路が出力した前記デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するリモート装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記リモート装置側デジタルアナログ変換回路で変換した前記アナログ電気信号を無線信号に変換し外部に出力する無線送信回路と、
を備える
ことを特徴とする無線信号伝送システム。
【請求項4】
記リモート装置は、
リモート装置側監視制御回路をさらに備え、
前記リモート装置側周波数変換回路が、前記マスタ装置が備えるマスタ装置側周波数変換回路で多重された監視制御信号を抽出し、抽出した前記監視制御信号を前記リモート装置側監視制御回路に出力
前記リモート装置側監視制御回路が、前記監視制御信号に応じて前記リモート装置の設定変更及び制御を行
ことを特徴とする請求項に記載の無線信号伝送システム。
【請求項5】
デジタル電気信号を出力するデジタル無線変調回路と、
前記デジタル電気信号を予め定められた中間周波数帯域に変換するとともにサンプリングレート変換するマスタ装置側周波数変換回路と、
予め算出した歪み補償量を前記マスタ装置側周波数変換回路で変換されたデジタル電気信号に加算する予補償回路と、
前記歪み補償量が加算されたデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するマスタ装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記アナログ電気信号を光変調し、光変調した下り光信号を送信する光送信回路と、
を備えることを特徴とするマスタ装置。
【請求項6】
め生成された監視制御信号を前記マスタ装置側周波数変換回路に出力するマスタ装置側監視制御回路をさらに備え、
前記マスタ装置側周波数変換回路が、前記デジタル無線変調回路で出力したデジタル電気信号に前記監視制御信号を多重する
ことを特徴とする請求項に記載のマスタ装置。
【請求項7】
マスタ装置が送信した下り光信号を受信し、アナログ電気信号に変換する光受信回路と、
前記光受信回路で変換したアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記マスタ装置が備える予補償回路で加算された前記デジタル電気信号の歪み補償量を検出するとともに前記歪み補償量以外の歪み量を検出し、検出した前記歪み補償量及び前記歪み量を補償する補償回路と、
前記歪み補償量及び前記歪み量を補償したデジタル電気信号を出力するリモート装置側周波数変換回路と、
前記リモート装置側周波数変換回路が出力した前記デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するリモート装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記リモート装置側デジタルアナログ変換回路で変換した前記アナログ電気信号を無線信号に変換し外部に出力する無線送信回路と、
を備えることを特徴とするリモート装置。
【請求項8】
モート装置側監視制御回路をさらに備え、
前記リモート装置側周波数変換回路が、前記マスタ装置が備えるマスタ装置側周波数変換回路で多重された監視制御信号を抽出し、抽出した前記監視制御信号を前記リモート装置側監視制御回路に出力し、
前記リモート装置側監視制御回路が、前記監視制御信号に応じて前記リモート装置の設定変更及び制御を行う
ことを特徴とする請求項に記載のリモート装置。
【請求項9】
マスタ装置が、予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換して、リモート装置に光伝送路を介して前記下り光信号を送信する光信号送信手順と、
前記リモート装置が、前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した歪み量に基づいて算出した歪み補償量を前記電気信号に加算して歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力する無線信号出力手順と、
を順に実行し、
前記マスタ装置は、
デジタル電気信号を出力するデジタル無線変調手順と、
前記デジタル電気信号を予め定められた中間周波数帯域に変換するとともにサンプリングレート変換するマスタ装置側周波数変換手順と、
予め算出した歪み補償量を前記マスタ装置側周波数変換手順で変換されたデジタル電気信号に加算する予補償手順と、
前記歪み補償量が加算されたデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するマスタ装置側デジタルアナログ変換手順と、
前記アナログ電気信号を光変調し、光変調した光信号を前記下り光信号として送信する光送信手順と、
を実行する
ことを特徴とする無線信号伝送システムの伝送方法。
【請求項10】
マスタ装置が、予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換して、リモート装置に光伝送路を介して前記下り光信号を送信する光信号送信手順と、
前記リモート装置が、前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した歪み量に基づいて算出した歪み補償量を前記電気信号に加算して歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力する無線信号出力手順と、
を順に実行し、
前記リモート装置は、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信し、アナログ電気信号に変換する光受信手順と、
前記光受信手順で変換したアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換手順と、
前記マスタ装置が実行する予補償手順で加算された前記デジタル電気信号の歪み補償量を検出するとともに前記歪み補償量以外の歪み量を検出し、検出した前記歪み補償量及び前記歪み量を補償する補償手順と、
前記歪み補償量及び前記歪み量を補償したデジタル電気信号を出力するリモート装置側周波数変換手順と、
前記リモート装置側周波数変換手順で出力した前記デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するリモート装置側デジタルアナログ変換手順と、
前記リモート装置側デジタルアナログ変換手順で変換した前記アナログ電気信号を無線信号に変換し外部に出力する無線送信手順と、
を実行する
ことを特徴とする無線信号伝送システムの伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ROF(Radio over Fiber)を用いた無線信号伝送システムにおいて、高品質かつ経済的に広帯域の無線信号を伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)を始めとするセルラ構成を用いたブロードバンドワイヤレスシステムの進展が著しい。このようなセルラのブロードバンドワイヤレスシステムでは、様々な環境にいる多くのユーザに対してより広帯域なサービスを効率的に提供するため、セルサイズを縮小したスモールセル構成をとる傾向があり、カバレッジを維持するためセル数が増加する。
【0003】
多くのセルを設置するためには、基地局のサイズを縮小することが必要であり、無線基地局を無線変復調部と無線送受信部に分割した分散アンテナ構成がとられる。この場合、アンテナの近傍に設置される無線送受信部を小型化することが可能であり、効率的な設置が可能となる。
【0004】
このような分散アンテナ構成において、無線変復調部11と無線送受信部21の間で高精度に無線信号を伝送する必要があり、かつ長距離を伝送する必要もあるため、伝送路として光ファイバ伝送路14を用いたROFシステムが用いられる。ROFシステムの実現手段としては、無線信号をそのままアナログ伝送するアナログROF(図1)およびデジタル化した無線信号をデータとして伝送するデジタルROF(図2)がある。
【0005】
アナログROFでは、光インタフェース13において無線変調信号でアナログ光変復調し、無線信号を光ファイバ伝送路14上で伝送する。また、デジタルROFでは無線変調信号をデジタル化し、デジタルデータを光インタフェース13で光信号に変換し、光ファイバ伝送路14を伝送する。関連技術ではROF区間を低コストかつ高品質で伝送できることからデジタルROFを用いたCPRI(Common Public Radio Interface)(非特許文献1)を用いたシステム(図3)が広く実用に供されている。
【0006】
例えば、LTEでの20MHz帯域の2アンテナ分の無線信号を伝送するのに、2.5Gb/s帯域のCPRI回線が用いられている。なお、CPRIは独自の伝送フォーマットを用いているため、ダークファイバ等の専用の伝送媒体を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CPRI Specification V 5.0,September 2011 (“1. Introduction”, “2.1. Definitions/Nomenclature”).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LTEの発展形であるLTE−A(LTE advanced)では、より広帯域(〜100MHz)の信号の伝送が必要となるとともに、MIMO(Multi Input Multi Output)による空間での多重度が増加するため、より多くのアンテナが必要となる。
【0009】
このため、CPRIに要求される帯域も増大し、セルあたりで100Gb/s以上の帯域が必要となり、インタフェースコストやファイバコストが増大してしまう。40Gb/sや100Gb/sの高速インタフェースを用いる場合、受信感度が低下し誤り訂正符号を用いないと伝送が困難である。
【0010】
しかし、誤り訂正符号の信号処理による遅延時間はCPRIの装置に許容される遅延時間(3.5us)より大きいため、インタフェース速度を高速化することは難しい。また、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)によりファイバ数を削減することも可能であるが、将来の無線システムではさらに帯域が増大することが想定されるため、伝送容量の限界が生じてしまう。
【0011】
一方、アナログROFを用いる場合、所要帯域幅は無線信号の帯域幅であるため、伝送容量的には問題ないが、光伝送による雑音や非線形歪み等により信号品質の劣化が生じ、多チャネルや多値数の多い変調方式の適用は困難となる。また、リモート側の装置の監視制御が課題となる。
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、無線信号伝送システムにおいて、光伝送で生じる下り光信号の非線形歪ならびに波形劣化をマスタ装置が備える予補償回路及びリモート装置が備える補償回路におけるデジタル信号処理で補償することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の無線信号伝送システムでは、マスタ装置が、予め算出した歪み補償量を電気信号に加算して歪み補償を行い、歪み補償した伝送信号をリモート装置で歪み量を検出し、検出した歪み量を補償する。
【0014】
具体的には、本発明に係る無線信号伝送システムは
予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換し、光伝送路を介して接続されたリモート装置に前記下り光信号を送信するマスタ装置と、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した前記歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力するリモート装置と、を備える。
【0015】
本発明に係る無線信号伝送システムでは、
前記マスタ装置は、
予め生成された監視制御信号をマスタ装置側周波数変換回路に出力するマスタ装置側監視制御回路と、
前記マスタ装置が備えるデジタル無線変調回路が出力したデジタル電気信号に、前記監視制御信号を多重するマスタ装置側周波数変換回路と、をさらに備え、
前記リモート装置は、
前記マスタ装置側周波数変換回路で多重された前記監視制御信号を抽出し、抽出した前記監視制御信号をリモート装置側監視制御回路に出力するリモート装置側周波数変換回路と、
前記監視制御信号に応じて前記リモート装置の設定変更及び制御を行う前記リモート装置側監視制御回路と、をさらに備えてもよい。
【0016】
本発明に係る無線信号伝送システムでは、
前記マスタ装置側監視制御回路は、
前記デジタル無線変調回路が出力したデジタル電気信号に基準クロックを多重し、
前記リモート装置側周波数変換回路は、
前記マスタ装置側監視制御回路で多重された前記基準クロックを抽出し、前記基準クロックに応じて前記リモート装置内の基準クロックと周波数同期してもよい。
【0017】
具体的には、本発明に係るマスタ装置は
デジタル電気信号を出力するデジタル無線変調回路と、
前記デジタル電気信号を予め定められた中間周波数帯域に変換するとともにサンプリングレート変換するマスタ装置側周波数変換回路と、
予め算出した歪み補償量を前記マスタ装置側周波数変換回路で変換されたデジタル電気信号に加算する予補償回路と、
前記歪み補償量が加算されたデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するマスタ装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記アナログ電気信号を光変調し、光変調した下り光信号を送信する光送信回路と、を備える。
【0018】
本発明に係るマスタ装置では、
予め生成された監視制御信号を前記マスタ装置側周波数変換回路に出力するマスタ装置側監視制御回路をさらに備え、
前記マスタ装置側周波数変換回路が、前記デジタル無線変調回路で出力したデジタル電気信号に前記監視制御信号を多重してもよい。
【0019】
具体的には、本発明に係るリモート装置は
マスタ装置が送信した下り光信号を受信し、アナログ電気信号に変換する光受信回路と、
前記光受信回路で変換したアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記マスタ装置が備える予補償回路で加算された前記デジタル電気信号の歪み補償量を検出するとともに前記歪み補償量以外の歪み量を検出し、検出した前記歪み補償量及び前記歪み量を補償する補償回路と、
前記歪み補償量及び前記歪み量を補償したデジタル電気信号を出力するリモート装置側周波数変換回路と、
前記リモート装置側周波数変換回路が出力した前記デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換するリモート装置側デジタルアナログ変換回路と、
前記リモート装置側デジタルアナログ変換回路で変換した前記アナログ電気信号を無線信号に変換し外部に出力する無線送信回路と、を備える。
【0020】
本発明に係るリモート装置では、
リモート装置側監視制御回路をさらに備え、
前記リモート装置側周波数変換回路が、前記マスタ装置が備えるマスタ装置側周波数変換回路で多重された監視制御信号を抽出し、抽出した前記監視制御信号を前記リモート装置側監視制御回路に出力し、
前記リモート装置側監視制御回路が、前記監視制御信号に応じて前記リモート装置の設定変更及び制御してもよい。
【0021】
具体的には、本発明に係る無線信号伝送システムの伝送方法は、
予め算出した歪み補償量を電気信号に加算し、加算した前記電気信号を下り光信号に変換して、マスタ装置からリモート装置に光伝送路を介して前記下り光信号を送信する光信号送信手順と、
前記マスタ装置が送信した前記下り光信号を前記リモート装置で受信するとともに、受信した前記下り光信号を電気信号に変換し、前記電気信号の歪み量を検出し、検出した歪み量に基づいて算出した歪み補償量を前記電気信号に加算して歪み量を補償し、補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力する無線信号出力手順と、を順に有する。
【0022】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ROFを用いた無線信号伝送システムにおいて、高品質かつ経済的に広帯域の無線信号を伝送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】関連技術におけるアナログROFの一例を示す。
図2】関連技術におけるデジタルROFの一例を示す。
図3】関連技術におけるCPRIシステムの一例を示す。
図4】本実施形態に係る無線信号伝送システムの構成の一例を示す。
図5】本実施形態に係る予補償回路の構成の一例を示す。
図6】本実施形態に係る補償回路の構成の一例を示す。
図7】本実施形態に係るリモート装置の構成の一例を示す。
図8】本実施形態に係るマスタ装置の周波数変換の一例を示す。
図9】本実施形態に係るリモート装置での周波数変換の一例を示す。
図10】本実施形態に係るリモート装置での周波数変換の一例を示す。
図11】本実施形態に係るリモート装置での基準クロック抽出の一例を示す。
図12】本実施形態に係るリモート装置での周波数同期の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る、無線信号伝送システムは、光伝送路を介して接続されたマスタ装置及びリモート装置を備える。マスタ装置は、リモート装置に対し下り光信号を送信し、リモート装置が受信する。また、無線信号伝送システムにおける下り光信号の伝送方法は、マスタ装置が行う光信号送信手順と、リモート装置が行う無線信号出力手順と、を順に有する。光信号送信手順では、マスタ装置が歪み補償量を電気信号に加算し電気信号を下り光信号に変換してリモート装置に送信する。リモート装置における無線信号出力手順では、受信した下り光信号を電気信号に変換し、電気信号の歪みを検出し、検出した歪みに基づいて算出した歪み補償量を電気信号に加算して波形歪を補償した電気信号を無線信号に変換して外部に出力する。
【0027】
図4に本発明の第1の実施形態を示す。本実施形態は、デジタル無線変調回路52、予補償回路54、マスタ装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路53、マスタ装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路55、光送信回路56および監視制御回路57とから構成されるマスタ装置51と、光受信回路62、アナログデジタル変換回路63、補償回路64、リモート装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路65、リモート装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路66、無線送信回路67および監視制御回路68とから構成されるリモート装置61と、マスタ装置51とリモート装置61を接続する光伝送路58とから構成される。
【0028】
マスタ装置51のデジタル無線変調回路52で出力したデジタル電気信号であるデジタル無線変調信号は、マスタ装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路53で適当な中間周波数帯にデジタル周波数変換ならびにサンプリングレート変換された後、予補償回路54で歪を歪み補償量として与えた後に、マスタ装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路55でアナログ電気信号に変換され、光送信回路56から光変調信号し、下り光信号としてリモート装置61に出力される。
【0029】
マスタ装置51から送信された光変調信号である下り光信号は、光伝送路58を伝送され、リモート装置61へと入力される。リモート装置61では、受信された光変調信号を光受信回路62で電気信号に変換し、アナログデジタル変換回路63でデジタル電気信号に変換される。
【0030】
デジタル電気信号は補償回路64で歪み量が補正された後、リモート装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路65でサンプリングレート変換ならびにデジタル周波数変換された後にリモート装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路66でアナログ電気信号に変換され、無線送信回路67に入力され、無線信号として外部へ出力される。
【0031】
このように、光伝送方法としてはアナログのROFを用いているが、光伝送で生じる非線形歪ならびに波形劣化を予補償回路54または補償回路64でのデジタル信号処理で補償することにより、高精度に無線信号を伝送することが可能となる。本実施形態においてデジタル無線変調回路52から出力されるデジタル無線信号は、同相、直交成分に分離されたベースバンド信号および中間周波数帯信号のどちらでも構わない。
【0032】
予補償回路54は図5のように構成され、リモート装置61の補償回路64で検出される波形歪である歪み量を補正するように、歪演算部71で入力信号に対して演算され、演算された歪み補償量を加算部72が、デジタル無線変調回路が出力した信号に加算する。波形歪の要因としては、マスタ装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路55の非線形歪、光送信回路56の非線形歪、光伝送路58での非線形歪、光受信回路62の非線形歪、およびアナログデジタル変換回路63の非線形歪がある。また、予補償回路54の出力から補償回路64の入力間の伝達関数に応じた波形予等化も予補償回路54に等化器73を配備し行う。
【0033】
伝達関数は、光送信回路56の伝達関数、光伝送路58の伝達関数および光受信回路62の伝達関数の積となる。補償回路64では、予補償回路54と同様に図6に示すように、歪み量の検出および伝達関数の測定を行うとともに、マスタ装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路55およびアナログデジタル変換回路63のビット数等によって予補償回路54で補償しきれない歪の補償を行うとともに波形等化を行う。
【0034】
なお、補償回路64で検出される歪や波形劣化が無線信号の品質にほとんど影響を与えない場合には、予補償回路54および補償回路64のどちらか一方の歪補償および波形等化機能を削除し、回路を簡単化することが可能である。
【0035】
このように予補償回路54と補償回路64で歪補償を行うことにより、大部分の歪み量は予補償回路54で補償され、補償回路64で補償する歪み量は小さくなるため、リモート装置61の補償回路64の回路規模の簡易化ならびに高精度な補償が可能となる。
【0036】
波形歪の検出については、リモート装置61の補償回路64に歪演算部76を具備し、信号帯域外に出力される高次歪成分を検出することや特定周波数成分の位相回転を検出することで実現できる。具体的には、歪演算部76で入力信号に対して演算され、演算された歪を歪補償量として、加算部77が信号に加算する。また、等化器78は、各入力間の伝達関数に応じた波形予等化を行う。
【0037】
リモート装置61のデジタルアナログ変換以降の無線送信回路67での歪について、図7に示すように、無線送信回路67が出力したデジタルアナログ電気信号をアナログデジタル変換し、歪検出部69のデジタル信号処理で歪を検出し、リモート装置61の補償回路64で予補償することで実現可能である。
【0038】
本実施形態でのマスタ装置51の周波数変換回路53でのデジタル周波数変換は、デジタル無線変調信号に式(1)で示すように周波数fの搬送波を乗算することにより実現される(図8)。fには、マスタ装置側デジタルアナログ変換回路として機能するデジタルアナログ変換回路55のサンプリング周波数Fの1/2より低い周波数が用いられる。また、デジタル無線変調信号のサンプリング周波数は、デジタルアナログ変換回路55のサンプリング周波数に変換される。
【数1】
【0039】
本実施形態のリモート装置61のリモート装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路65のデジタル周波数変換は、アナログデジタル変換された電気信号からデジタルフィルタでデジタル無線変調信号成分を抽出した後、式(2)で示される周波数fの搬送波を乗算することで実現される。
【数2】
【0040】
ここで、周波数fを次式で与えられる周波数に選ぶと、式(3)で示される。
【数3】
【0041】
デジタルアナログ変換されたアナログ電気信号のN番目の高調波成分を無線送信回路67のバンドパスフィルタで抽出することにより無線周波数の信号となる(図9)。上式において、fは無線搬送波周波数、Nはf/Fを超えない最大の整数である。
【0042】
高調波成分の電力はNが大きくなると減衰していくため、より柔軟に無線搬送波周波数を設定する場合、fを中間周波数として、無線送信回路67のミキサで周波数fの局部発振と混合し、さらに別の周波数に変換することも可能である(図10)。
【0043】
このように周波数変換を行う場合、無線周波数の搬送波周波数精度がサンプリング周波数精度に依存するため、マスタ装置51とリモート装置61間で周波数を正確に合わせておく必要がある。マスタ装置51のマスタ装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路53で基準クロックを重畳し、リモート装置61のリモート装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路53で基準クロックを抽出し、デジタルアナログ変換することにより基準クロックを転送することが可能である。
【0044】
初期状態においてリモート装置61のサンプリング周波数がマスタ装置51に対してずれている場合においても、リモート装置61側のサンプリングクロックでアナログデジタル変換とデジタルアナログ変換を行うため、周波数誤差の影響を受けずに基準クロックを再生することができる(図11)。
【0045】
このため、図12に示すように、抽出された基準クロックにリモート装置の基準クロックを位相同期ループ(PLL70:Phase−Locked Loop)で同期させることにより、マスタ装置51とリモート装置61の間で周波数同期をとることができ、無線周波数を安定に出力することができる。
【0046】
また、マスタ装置51の基準クロックを安定なクロックとし、リモート装置61のPLL70のループフィルタを狭帯域なフィルタとすることにより、サンプリングクロックのジッタが低減され、高精度な無線信号を出力することが可能となる。
【0047】
本実施形態の光送受信回路の帯域幅は、マスタ装置51のデジタルアナログ変換回路出力55での無線信号が透過できる帯域幅があれば十分である。例えば、LTE−Aのキャリアアグリゲーションで100MHzの帯域が必要な場合、fを100MHz程度としても200MHz程度の帯域があれば十分であり、汎用の通信用半導体レーザを光源とした直接変調で送信可能である。
【0048】
また、光受信回路62についても数百MHz帯域の廉価な部品の使用が可能である。デジタルアナログ変換およびアナログデジタル変換のサンプリング周波数については最大でも500MHz程度であるため、低価格で14ビット以上の高精度な部品が使用可能である。
【0049】
リモート装置61の監視制御信号は、マスタ装置51のマスタ装置側監視制御回路として機能する監視制御回路57から周波数変換回路53において無線変調信号に多重されて光伝送路58を伝送され、リモート装置61のリモート装置側周波数変換回路として機能する周波数変換回路65で無線変調信号と分離されて監視制御回路68に入力される。
【0050】
本実施形態で転送する監視制御情報としては、リモート装置61の設定・制御に関する情報、無線信号に関する情報、補償回路64に関する情報等がある。データレートとしては100kb/s〜1Mb/s程度あれば十分であり、適当な搬送波周波数で位相変調等を行い、マスタ装置51からリモート装置61まで転送する。低速度であるため、信号電力を抑えることができ、無線信号への干渉は十分低いレベルにまで低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
11、31:無線変復調部
12、32:無線変復調回路
13、15、33、35:光インタフェース
14、34:光ファイバ伝送路
16、36:無線送受信回路
21、41:無線送受信部
51:マスタ装置
52:デジタル無線変調回路
53、65:周波数変換回路
54:予補償回路
55、66:デジタルアナログ変換回路
56:光送信回路
57、68:監視制御回路
58:光伝送路
61:リモート装置
62:光受信回路
63:アナログデジタル変換回路
64:補償回路
67:無線送信回路
69:歪検出部
70:PLL
71、76:歪演算部
72、77:加算部
73、78:等化器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12