(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、BOGにLNGを噴霧する方法では、BOGに対するLNGの量が多いと気化しないLNGを分離して除去する必要があり、BOGに対するLNGの量が多い船舶には不向きである。また、冷却されるBOGの圧力と気化するLNGの圧力差が大きいと、BOGとLNGとを直接接触させる形式の熱交換器は使用することができない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、液体燃料が気化した燃料ガスを容易に再利用するとともに、燃料ガスの圧縮により得られる熱を液体燃料の加熱に用いることができる燃料ガス供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、船舶のディーゼル機関の燃焼室内へ燃料ガスを供給するガス燃料供給装置であって、
燃料ガスおよび燃料ガスが気化する前の液体燃料を第1の圧力で貯留する与圧タンクと、
前記与圧タンク内の燃料ガスを前記第1の圧力よりも高い第2の圧力に昇圧する第1圧縮機と、
前記与圧タンク内の液体燃料を前記第2の圧力よりも高い第3の圧力に昇圧する第1液体ポンプと、
前記第1圧縮機より吐出される燃料ガスと前記第1液体ポンプより吐出される液体燃料との熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器を通過した燃料ガスを前記第3の圧力に昇圧する第2圧縮機と、
前記熱交換器を通過した液体燃料を気化させ前記第3の圧力の燃料ガスを生成する気化器と、
前記第2圧縮機より吐出される燃料ガスと前記気化器により生成された燃料ガスとを混合し前記燃焼室内へ供給する混合部と、
前記第1圧縮機、前記第2圧縮機、および前記第1液体ポンプの駆動を制御する制御部と、
を備える、ことを特徴とする。
【0010】
前記与圧タンクに供給する液体燃料を前記第1の圧力よりも低い圧力で貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンク内の液体燃料を前記第1の圧力に昇圧して前記与圧タンクに供給する第2液体ポンプと、
前記貯留タンク内で気化した燃料ガスを前記第1の圧力に昇圧して前記与圧タンクに供給する第3圧縮機とをさらに備え、
前記与圧タンクは、
前記第3圧縮機より吐出される燃料ガスを気泡として前記与圧タンク内の液体燃料の液面よりも下方から供給する気泡発生器と、
前記第2液体ポンプより吐出される液体燃料を液滴として前記液面よりも上方から供給する液滴発生器と、
を備えることが好ましい。
【0011】
前記貯留タンクには内部の圧力を計測する第1圧力計が設けられ、
前記制御部は、前記第1圧力計の計測結果に応じて前記第3圧縮機からの燃料ガスの吐出量を制御することが好ましい。
【0012】
前記与圧タンクには内部の液体燃料の液位を計測する液位計が設けられ、
前記制御部は、前記液位計の計測結果に応じて前記第2液体ポンプからの液体燃料の吐出量を制御することが好ましい。
【0013】
前記第3圧縮機と前記第1圧縮機とを短絡する第1バイパス配管と、
前記第1バイパス配管に設けられ前記制御部により開度を調節される第1バルブとをさらに備え、
前記与圧タンクには内部の温度を計測する温度計が設けられ、
前記制御部は、前記温度計の計測結果に応じて前記第1バルブの開度を調節することが好ましい。
【0014】
前記与圧タンクと前記第1圧縮機とを接続する配管と、前記第2圧縮機と前記混合部とを接続する配管とを短絡する第2バイパス配管と、
前記第2バイパス配管に設けられ前記制御部により開度を調節される第2バルブとをさらに備え、
前記与圧タンクには内部の圧力を計測する第2圧力計が設けられ、
前記制御部は、前記第2圧力計の計測結果に応じて前記第2バルブの開度を調節することが好ましい。
【0015】
前記混合部には前記燃焼室内へ供給する燃料ガスの圧力を計測する第3圧力計が設けられ、
前記制御部は、前記第3圧力計の計測結果に応じて前記第1液体ポンプからの液体燃料の吐出量を制御することが好ましい。
また、上述のガス燃料供給装置は、
前記与圧タンクに供給する液体燃料を前記第1の圧力よりも低い圧力で貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンク内の液体燃料を前記第1の圧力に昇圧して前記与圧タンクに供給する第2液体ポンプと、をさらに備え、
前記与圧タンクには内部の液体燃料の液位を計測する液位計が設けられ、
前記制御部は、前記液位計の計測結果に応じて前記第2液体ポンプからの液体燃料の吐出量を制御する、ことが好ましい。
また、上述のガス燃料供給装置は、
前記与圧タンクに供給する液体燃料を前記第1の圧力よりも低い圧力で貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンク内で気化した燃料ガスを前記第1の圧力に昇圧して前記与圧タンクに供給する第3圧縮機と、
前記第3圧縮機と前記第1圧縮機とを短絡する第1バイパス配管と、
前記第1バイパス配管に設けられ前記制御部により開度を調節される第1バルブと、をさらに備え、
前記与圧タンクには内部の温度を計測する温度計が設けられ、
前記制御部は、前記温度計の計測結果に応じて前記第1バルブの開度を調節する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディーゼル機関の燃焼室に供給する燃焼ガスの圧力である第3の圧力よりも低い第2の圧力に昇圧した燃料ガスと、第3の圧力に昇圧した液体燃料との熱交換を行うことで、燃料ガスを冷却し、燃料ガスの体積を小さくすることで、燃料ガスの圧力を第3の圧力に昇圧するのに必要な単位量当たりの仕事を低減することができる。さらに、燃料ガスとの熱交換により液体燃料の温度を上げることで、液体燃料の気化を促進することができる。また、液体燃料が気化した燃料ガスを第1の圧力に昇圧した後、同じ第1の圧力に昇圧した液体燃料と混合することで、燃料ガスの圧力を第1の圧力に維持したまま温度を下げることができ、その後の燃料ガスの昇圧に必要な仕事を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る燃料ガス供給装置を
図1に基づいて説明する。
本実施形態の燃料ガス供給装置1は、ディーゼルエンジン90の燃焼室内へ液体燃料を気化させた燃料ガスを高圧で噴射して供給する装置である。本実施形態のディーゼルエンジン90には、例えば2ストロークサイクルの低速ディーゼルエンジンを用いることができる。
【0019】
燃料ガス供給装置1は、
図1に示すように、液体燃料タンク10と、与圧タンク20と、液体ポンプFP1、FP2と、圧縮機C1〜C3と、熱交換器HX1〜HX3と、モータM1〜M4と、ポンプP1〜P2と、バルブV1〜V3と、配管31〜38、41〜45、51〜52と、制御部60と、計器類(圧力計61〜63、液位計64、温度計65〜67)と、燃料ガス処理器80と、等を備える。燃料ガス供給装置1のこれらの構成要素は全て船舶に搭載される。
【0020】
圧縮機C1〜C3には、例えば、圧縮室内の可動部(プランジャ又はピストン)が直線交番運動をすることによって気体を吸い込み圧縮する、往復圧縮機(JIS B8341:2008)を用いることができる。この場合、圧縮機C1〜C3を駆動するモータM1〜M2の回転運動は、例えば図示しないクランク機構等により可動部の往復運動に変換される。
液体ポンプFP1、BP2には、例えば、可動部が往復運動を行う形式の往復ポンプ(JIS B8311:2002)を用いることができる。この場合、液体ポンプFP1、BP2を駆動するモータM3〜M4の回転運動は、例えば図示しないクランク機構等により可動部の往復運動に変換される。
熱交換器HX1〜HX3として、例えば、多管円筒形熱交換器(Shell and tube heat exchanger)(JIS B8249:1999)を用いることができる。
【0021】
液体燃料タンク10(貯留タンク)は、ディーゼルエンジン90に供給される燃料ガスが気化される前の液体燃料を貯留する。液体燃料として、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等を用いることができる。以下の説明では、液体燃料としてLNGを用いる場合を例に挙げて説明する。
【0022】
液体燃料タンク10内の圧力は、例えば約0.1MPa(大気圧)である。液体燃料がLNGである場合、その温度は約−160℃である。なお、液体燃料タンク10内で液体燃料が気化(ボイルオフ)することで生じる燃料ガスにより、液体燃料タンク10内の圧力は上昇しうる。
液体燃料タンク10の上端には配管31が、下端には配管41が接続されている。
圧力計61(第1圧力計)は、液体燃料タンク10に設けられている。圧力計61は、液体燃料タンク10内の圧力を計測し、計測信号を制御部60に出力する。
配管31の上流側端部は液体燃料タンク10の上端に接続され、下流側端部は圧縮機C1に接続されている。液体燃料タンク10内で液体燃料が気化した燃料ガス(ボイルオフガス、BOG)は、配管31を介して圧縮機C1に供給される。液体燃料タンク10内の液体燃料がLNGである場合、液体燃料タンク10内で液体燃料が気化した燃料ガスの温度は約−130℃である。
【0023】
圧縮機C1(第3圧縮機)の上流側は配管31と、下流側は配管32と接続されている。圧縮機C1はモータM1により駆動され、配管31を介して供給される燃料ガスを、液体燃料タンク10内の圧力よりも高い所定の圧力(第1の圧力)に昇圧し、配管32に供給する。圧縮機C1による昇圧後の燃料ガスの圧力(第1の圧力)は、例えば約1MPa以上である。このとき、昇圧後の燃料ガスの温度は約−10℃に上昇する。
【0024】
モータM1は制御部60により制御される。液体燃料タンク10内の圧力に応じて圧縮機C1による燃料ガスの吐出量を調節することで、液体燃料タンク10内の圧力を一定に保つことができる。圧縮機C1による燃料ガスの吐出量は、例えば制御部60がモータM1の回転数を制御することで調節することができる。
【0025】
配管32の上流側端部は圧縮機C1に接続され、下流側端部は与圧タンク20に接続されている。配管32は、圧縮機C1により昇圧された燃料ガスを与圧タンク20内に供給する。なお、与圧タンク20内に供給される燃料ガスの圧力や流量を調整するオリフィス39が配管32に設けられていてもよい。
配管33の上流側端部は配管32の途中に接続され、下流側端部は燃料ガス処理器80に接続されている。配管33は配管32内の余剰の燃料ガスを燃料ガス処理器80に供給する。配管33にはバルブV3が設けられている。バルブV3は配管33を介して燃料ガス処理器80に供給される燃料ガスの流量を調節する。バルブV3の開度は制御部60により制御される。燃料ガス処理器80は、例えば燃料ガスを燃焼させることで蒸気タービンを回転させる火力発電機や、燃料ガスの燃焼熱により後述する熱媒体を加熱する加熱器である。
【0026】
与圧タンク20には配管32、34、42、43が接続されている。与圧タンク20には、圧力計62、液位計64、温度計65が設けられている。与圧タンク20内では、配管32により供給される燃料ガスと、配管42により供給される液体燃料とが混合される。
与圧タンク20は直接接触式の熱交換器を兼ねており、配管32により供給される燃料ガスと、配管42により供給される液体燃料とが内部で直接接触し、燃料ガスと液体燃料との間で熱交換が行われる。このため、圧縮機C1により圧縮されることで温度が上昇した燃料ガスは、液体燃料と混合されることで冷却され、燃料ガスの一部が再液化する。例えば、与圧タンク20内で燃料ガスの温度が約−100℃まで下がり、与圧タンク20内の液体燃料の温度が約−130℃まで上昇すると仮定すると、圧縮機C1から吐出された燃料ガスの約半分が液化する。
【0027】
ここで、与圧タンク20の構造について詳細に説明する。
図2は与圧タンク20の概略図である。配管32は与圧タンク20の上部から与圧タンク20内に入り、与圧タンク20内において液体燃料の液面Lよりも下まで延在し、液体燃料の液面Lよりも下方に設けられた気泡発生器21に接続されている。気泡発生器21は水平方向に配置された多数の孔22を有し、配管32より供給された燃料ガスを多数の孔22より液体燃料の内部へ気泡23として放出する。燃料ガスを気泡23として液体燃料の内部へ放出することで、燃料ガスと液体燃料との接触面積が増大し、燃料ガスと液体燃料との熱交換を効率的に行うことができる。また、気泡23によって燃料ガスおよび液体燃料が攪拌されるため、与圧タンク20内の温度を均一にすることができる。
【0028】
配管34は与圧タンク20の上部から与圧タンク20内に入り、配管34の下端は与圧タンク20内の液体燃料の液面Lよりも高い位置に配置されている。与圧タンク20内の液面Lよりも上部の空間は燃料ガスで満たされており、与圧タンク20内の燃料ガスは配管34により排出される。
【0029】
配管42は、与圧タンク20の上部から与圧タンク20内に入り、与圧タンク20内において液体燃料の液面Lよりも上方に設けられた液滴発生器24に接続されている。液滴発生器24は水平方向に配置された多数の孔25を有し、配管42より供給された液体燃料を多数の孔25より液滴26として液体燃料の液面Lに向けて滴下させる。与圧タンク20内の液面Lよりも上方の空間は燃料ガスで満たされており、この空間において液体燃料の液滴26を滴下させることで、燃料ガスと液体燃料との接触面積が増大し、燃料ガスと液体燃料との熱交換を効率的に行うことができる。また、液滴26によって燃料ガスおよび液体燃料が攪拌されるため、与圧タンク20内の温度を均一にすることができる。
【0030】
配管43は与圧タンク20の下部から与圧タンク20内に入り、配管43の上端は与圧タンク20内の液体燃料の液面Lよりも低い位置に配置されている。与圧タンク20内の液体燃料は配管43により排出される。
【0031】
図1に戻り、圧力計62(第2圧力計)は与圧タンク20内の圧力を計測し、計測信号を制御部60に出力する。与圧タンク20内の圧力に応じて制御部60がバルブV2の開度を調節することで、後述するように与圧タンク20内の圧力が上昇しすぎることを防ぐことができる。
【0032】
液位計64は与圧タンク20内の液体燃料の液位(液面Lの高さ)を計測し、計測信号を制御部60に出力する。与圧タンク20内の液体燃料の液位に応じてモータM3の駆動を制御することで、与圧タンク20内の液体燃料の液位を調整することができる。例えば、液位が下降したときは、モータM3の回転数を上昇させることで、液位が基準位置となるまで下降させることができる。一方、液位が上昇した場合は、モータM3の回転数を低下させることで、液位を基準位置まで下降させることができる。なお、モータM4の回転が停止しているときは、モータM3を回転させると液位が上昇するため、モータM3の回転を停止させる。
温度計65は与圧タンク20内の温度を計測し、計測信号を制御部60に出力する。与圧タンク20内の温度に応じて制御部60がバルブV1の開度を調節することで、与圧タンク20に供給される燃料ガスの量を調節し、与圧タンク20内の温度を調節することができる。
【0033】
配管34の上流側端部は与圧タンク20の上端部に接続され、下流側端部は圧縮機C2に接続されている。
配管35(第1バイパス配管)の上流側端部は配管32に接続され、下流側端部は配管34に接続されている。配管35にはバルブV1が設けられており、バルブV1の開度は制御部60により制御される。与圧タンク20の温度に応じて制御部60はバルブV1の開度を調節する。バルブV1が開いているとき、配管32と配管34とが配管35により接続され、配管32内の燃料ガスは与圧タンク20を経由せずに配管34に供給される。すなわち、バルブV1が開いているとき、圧縮機C1と圧縮機C2とが配管35により短絡され、圧縮機C1により昇圧された燃料ガスは与圧タンク20を経ずに配管35を経由して圧縮機C2に直接供給される。
【0034】
圧縮機C2(第1圧縮機)の上流側は配管34に接続され、下流側は配管36に接続されている。圧縮機C2は配管34より供給される燃料ガスを、与圧タンク20内の圧力よりも高い所定の圧力(第2の圧力)に昇圧し、配管36に供給する。圧縮機C2による昇圧後の圧力(第2の圧力)は、例えば約10MPaである。圧縮機C2から吐出される燃料ガスの温度は、例えば約60℃に上昇する。
【0035】
なお、与圧タンク20内で燃料ガスが液体燃料と混合されることにより、燃料ガスの温度が低下しているため、圧縮機C2に供給される燃料ガスの単位モル数当たりの体積は減少しており、圧縮機C2に供給される燃料ガスの単位体積当たりのモル数が増加している。一定体積の燃料ガスを第1の圧力から第2の圧力に昇圧するために圧縮機C2が行う仕事(単位:ジュール)は一定であるため、燃料ガスの単位体積当たりのモル数が増加することで、燃料ガスを第1の圧力から第2の圧力に昇圧するのに必要な、単位モル数当たりの仕事を低減させることができる。
【0036】
配管36の上流側端部は圧縮機C2と接続され、下流側端部は圧縮機C3と接続されている。配管36は配管44とともに熱交換器HX1内を通過している。熱交換器HX1は、熱交換の効率の観点から、配管36を流れる燃料ガスの流れと配管44を流れる液体燃料の流れとが反対方向となる対向流式であることが好ましい。
熱交換器HX1内では配管36を通過する燃料ガスと配管44を通過する液体燃料との間で熱交換が行われ、燃料ガスは冷却される。例えば、圧縮機C2から吐出される燃料ガスは、熱交換器HX1内の配管36を通過することで約−30℃に冷却される。
【0037】
圧縮機C3(第2圧縮機)の上流側は配管36に接続され、下流側は配管37に接続されている。圧縮機C3は配管36より供給される燃料ガスを、圧縮機C2による昇圧後の圧力よりも高い所定の圧力(第3の圧力)に昇圧し、配管37に供給する。圧縮機C3による昇圧後の圧力(第3の圧力)は、例えば約30MPaである。圧縮機C3から吐出される燃料ガスの温度は、例えば約30℃に上昇する。
圧縮機C2および圧縮機C3は、モータM2により駆動される。モータM2は制御部60により、例えば一定回転数に制御される。
【0038】
配管37の上流側端部は圧縮機C3に接続され、下流側端部は配管44とともに配管45と接続されている。配管37は圧縮機C3により昇圧された燃料ガスを配管45に供給する。
また、配管37は配管51とともに熱交換器HX2内を通過している。熱交換器HX2内では配管37を通過する燃料ガスと配管51を通過する熱媒体との間で熱交換が行われ、配管37を通過する燃料ガスが加熱される。配管51を通過する熱媒体として、例えば温めた水や海水を用いることができる。熱媒体の加熱には、例えば燃料ガス処理器80における燃料ガスの燃焼熱を用いることができる。配管51を通過する熱媒体はポンプP1により供給され、制御部60がポンプP1を制御することで配管51を通過する熱媒体の流量は制御される。
【0039】
配管37の熱交換器HX2よりも下流側には、温度計66が設けられている。温度計66は熱交換器HX2による熱交換が行われた後の配管37内の燃料ガスの温度を計測し、計測信号を制御部60に出力する。制御部60が温度計66の温度に応じて熱媒体の温度やポンプP1による熱媒体の流量を制御することで、配管37から配管45に供給される燃料ガスの温度を調整することができる。
【0040】
配管38(第2バイパス配管)の上流側端部は配管34に接続され、下流側端部は配管37に接続されている。配管38にはバルブV2が設けられており、バルブV2の開度は制御部60により制御される。与圧タンク20内の圧力に応じて制御部60はバルブV2の開度を調節する。バルブV2が開いているとき、配管34内の燃料ガスは圧縮機C2、C3および配管36を経由せずに配管37に供給される。すなわち、バルブV2が開いているとき、配管38により与圧タンク20と配管45とが短絡され、与圧タンク20内の燃料ガスは圧縮機C2、C3を経ずに配管45に直接排出される。このため、与圧タンク20内の圧力に応じてバルブV2の開度を調節するバルブV2の開度を調節することで、与圧タンク20内の圧力を調節することができ、与圧タンク20内の圧力が異常に上昇することを防ぐことができる。
【0041】
配管41の上流側端部は液体燃料タンク10と接続され、下流側タンクは液体ポンプFP1と接続されている。液体燃料タンク10内の液体燃料は、配管41を介して液体ポンプFP1に供給される。
【0042】
液体ポンプFP1(第2液体ポンプ)の上流側は配管41に接続され、下流側は配管42に接続されている。液体ポンプFP1は配管41より供給される液体の圧力を、第1の圧力に上昇させ、配管42に供給する。液体ポンプFP1はモータM3により駆動され、モータM3は制御部60により制御される。
配管42の上流側端部は液体ポンプFP1と接続され、下流側端部は与圧タンク20と接続されている。配管42は液体ポンプFP1により圧力を上昇させた液体燃料を与圧タンク20に供給する。
【0043】
配管43の上流側端部は与圧タンク20の下端に接続され、下流側端部は液体ポンプFP2に接続されている。配管43は与圧タンク20内の液体燃料を液体ポンプFP2に供給する。
液体ポンプFP2(第1液体ポンプ)の上流側は配管43に接続され、下流側は配管44に接続されている。液体ポンプFP2は配管43から供給される、第1の圧力の液体燃料の圧力を第3の圧力に上昇させ、配管44に供給する。液体ポンプFP2はモータM4により駆動され、モータM4は制御部60により制御される。
【0044】
配管44の上流側端部は液体ポンプFP2に接続され、下流側端部は配管45に接続されている。配管44は配管36とともに熱交換器HX1を通過している。配管44を通過する液体燃料は、熱交換器HX1内で配管36を通過する燃料ガスとの間で熱交換が行われ、液体燃料は加熱される。例えば、液体燃料は熱交換器HX1において約−30℃まで加熱される。
【0045】
また、配管44は、熱交換器HX1よりも下流側で、配管52とともに熱交換器HX3を通過している。配管44を通過する液体燃料は、熱交換器HX3内で配管52を通過する熱媒体との間で熱交換が行われ、液体燃料は加熱される。熱交換器HX1、HX3において加熱されることで、配管44内の液体燃料は完全に気化し、燃料ガスとなる。すなわち、熱交換器HX3は気化器として機能する。
配管52を通過する熱媒体として、例えば温めた水や海水を用いることができる。熱媒体の加熱には、例えば燃料ガス処理器80における燃料ガスの燃焼熱を用いることができる。配管52を通過する熱媒体はポンプP2により供給され、制御部60がポンプP2を制御することで配管52を通過する熱媒体の流量は制御される。
【0046】
配管44の熱交換器HX3よりも下流側には、温度計67が設けられている。温度計67は熱交換器HX3による熱交換が行われた後の配管44内の燃料ガスの温度を計測し、計測信号を制御部60に出力する。制御部60が温度計67の温度に応じて熱媒体の温度やポンプP2による熱媒体の流量を制御することで、配管44において完全に液体燃料を燃料ガスに気化させ、配管45に供給される燃料ガスの温度を調整することができる。
【0047】
配管45(混合部)の上流側端部は配管37および配管44に接続され、下流側端部はディーゼルエンジン90の燃焼室に接続されている。配管37から供給される第3の圧力の燃料ガスと、配管44から供給される第3の圧力の燃料ガスは配管45において混合され、ディーゼルエンジン90の燃焼室に供給される。
配管45には、圧力計63(第3圧力計)が設けられている。圧力計63は、配管45内部の燃料ガスの圧力を計測し、計測信号を制御部60に出力する。配管45内の圧力に応じて制御部60がモータM4の回転数を調節し、液体ポンプFP2からの液体燃料の吐出量を制御することで、配管45内の燃料ガスの圧力を一定に保つことができる。
例えば、ディーゼルエンジン90の回転数が低下すると、ディーゼルエンジン90に供給される燃料ガスの量が低下するため、配管45内の圧力が上昇する。この場合、燃料ガスの消費量に応じてモータM4の回転数を低下させることで、配管45内の圧力を低下させ、一定の圧力に維持することができる。
【0048】
なお、さらにディーゼルエンジン90の回転数が低下し、ディーゼルエンジン90が停止すると、モータM4の回転が停止する。この場合、与圧タンク20内の液位が上昇することを防ぐためにモータM3の回転が停止される。
このとき、与圧タンク20内で液体燃料が気化(ボイルオフ)することで生じる燃料ガスにより、与圧タンク20内の圧力は上昇しうる。この場合、バルブV1、V3の開度を調節することで、余剰のボイルオフガスを燃料ガス処理器80により処理することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、圧縮機C2が第2の圧力に昇圧した燃料ガスと、液体ポンプFP2が第3の圧力に昇圧した液体燃料との熱交換を行うことで、燃料ガスを冷却し燃料ガスの体積を小さくし、単位体積当たりのモル数を増加させることができ、燃料ガスの昇圧に必要な単位モル数当たりの仕事を低減することができる。さらに、燃料ガスとの熱交換により液体燃料の温度を上げることで、液体燃料の気化を促進することができる。また、圧縮機C1により第1の圧力に昇圧した燃料ガスと、液体ポンプFP1により第1の圧力に昇圧した液体燃料とを与圧タンク20において混合することで、燃料ガスの圧力を第1の圧力に維持したまま冷却することができ、その後の燃料ガスの昇圧に必要な仕事を低減することができる。
【0050】
また、与圧タンク20内の液体燃料の液面Lよりも下方から圧縮機C1より吐出される燃料ガスを気泡23として供給するとともに、液面Lよりも上方から液体ポンプFP1より吐出される液体燃料を液滴26として供給することで、燃料ガスと液体燃料との接触面積が増大し、燃料ガスと液体燃料との熱交換を効率的に行うことができる。
【0051】
また、液体燃料タンク10の内部の圧力を圧力計61により計測し、制御部60が圧力計61の計測結果に応じて圧縮機C1からの燃料ガスの吐出量を制御することで、液体燃料タンク10内の圧力を一定に保つことができる。
【0052】
また、与圧タンク20の内部の液体燃料の液位を液位計64により計測し、制御部60が液位計64の計測結果に応じて液体ポンプFP1からの液体燃料の吐出量を制御することで、与圧タンク20内の液体燃料の液位を調整することができる。
【0053】
また、圧縮機C1と圧縮機C2とを短絡する配管35にバルブV1が設けられ、与圧タンク20の内部の温度を温度計65により計測し、与圧タンク20内の温度に応じて制御部60がバルブV1の開度を調節することで、与圧タンク20に供給される燃料ガスの量を調節し、与圧タンク20内の温度を調節することができる。
【0054】
また、与圧タンク20の内部の圧力を圧力計62により計測し、与圧タンク20内の圧力に応じて制御部60がバルブV2の開度を調節することで、与圧タンク20内の燃料ガスが圧縮機C2、C3を経ずに配管45に直接排出されるため、与圧タンク20内の圧力が上昇しすぎることを防ぐことができる。
【0055】
また、燃焼室内へ供給する燃料ガスの圧力を計測する圧力計63を配管45に設け、制御部60が圧力計63の計測結果に応じて液体ポンプFP2からの液体燃料の吐出量を制御することで、配管45内の燃料ガスの圧力を一定に保つことができる。
【0056】
なお、上記説明においては、液体燃料がLNGである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、LPG等の液体燃料を用いてもよい。また、本実施形態においては、燃料ガスを圧縮機C1〜C3により3段階で圧縮したが、本発明はこれに限らず、4段階以上で圧縮してもよい。
また、上記説明における温度、圧力は一例であり、本発明はこれに限られるものではない。