特許第6228064号(P6228064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228064
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20171030BHJP
   G02F 1/015 20060101ALI20171030BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20171030BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G02B6/42
   G02F1/015 505
   H01L31/02 C
   H01S5/022
   G02B6/122
   G02B6/26
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-75955(P2014-75955)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-197616(P2015-197616A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】中西 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 義弘
(72)【発明者】
【氏名】片寄 里美
【審査官】 下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102819(JP,A)
【文献】 特開平07−294763(JP,A)
【文献】 特開2000−089184(JP,A)
【文献】 特開2004−341147(JP,A)
【文献】 特開2009−093093(JP,A)
【文献】 特開2008−250041(JP,A)
【文献】 特開2009−222753(JP,A)
【文献】 特開2003−131052(JP,A)
【文献】 特開2010−152319(JP,A)
【文献】 特開平07−049431(JP,A)
【文献】 特開平11−014859(JP,A)
【文献】 特開2001−281507(JP,A)
【文献】 特開平10−104472(JP,A)
【文献】 特開2002−277658(JP,A)
【文献】 特開平11−064668(JP,A)
【文献】 特開平04−281406(JP,A)
【文献】 米国特許第05327517(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/26−6/27
G02B6/30−6/34
G02B6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導波路を有する第1の光導波路素子と、
第2の導波路を有する第2の光導波路素子と、
第3の導波路を有する化合物半導体素子と、
この化合物半導体素子が搭載実装されたキャリアとを備え、
前記第1の導波路の出力側と前記第3の導波路の入力側の対向する端面同士が接合され、前記第3の導波路の出力側と前記第2の導波路の入力側の対向する端面同士が接合されると共に、前記第1の光導波路素子と前記キャリアの対向する端面同士が接合され、前記キャリアと前記第2の光導波路素子の対向する端面同士が接合され
前記キャリアは、光が伝搬する方向に沿って複数個に分割され、前記キャリアの分割面は、前記化合物半導体素子を構成する結晶の劈開面と異なる角度の面となるように形成されることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項記載の光モジュールにおいて、
さらに、前記分割された複数個のキャリアを固定する基台を備えることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載の光モジュールにおいて、
前記光導波路素子と対向する前記キャリアの端面の光伝搬方向の位置と、前記光導波路素子と対向する前記化合物半導体素子の端面の光伝搬方向の位置とが同一でないことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の光モジュールにおいて、
前記接合は、光透過性の接着剤を介して行われることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の光モジュールにおいて、
前記光導波路素子は、PLC、LN導波路、石英ファイバ、プラスティックファイバ、マルチコアファイバ、ポリマー導波路、プラズモニック導波路のいずれかからなるものであることを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関し、より詳しくは化合物半導体からなる光素子と平面光導波路等からなる光導波路素子とを接続してなる光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信トラフィックの需要は着実に増大しており、幹線系の光伝送ネットワークでは1チャネル当り100Gbit/s以上の高い通信容量の実現が求められている。そのような大容量化を実現可能にするため、周波数利用効率が高く、伝送時の分散耐性が高い多値変調とデジタルコヒーレント受信を組み合わせた安価かつ小型な高速多値光変調器といった光モジュールが必要とされる。
【0003】
この光モジュールを実現する技術の一つに、アクティブ素子であるニオブ酸リチウム(LN:LiNbO3、Lithium niobate)変調素子とパッシブ素子である平面光導波路(PLC:Planer Lightwave Circuit)の導波路端面とを接続して光変調器を構成するPLC−LN直接接続技術がある。
【0004】
PLCは、光の分岐やフィルタリングが可能な素子であるが、光を電気的に制御することができないパッシブ素子の代表的なもので、光合分波器、光フィルタ、アレイ導波路格子、偏波カプラといった複雑な回路を実現できる一方、高速の光変調を行うことはできない。
これに対して、LN素子は、光を電気的に制御できるアクティブ素子であり、高い電気光学効果を持つ高速な変調器として実用化されている。
【0005】
PLCとLN素子の両者の特徴を生かすため、図10(A)、図10(B)に示すように複雑な回路を全てPLCに任せ、LN素子は直線の位相変調器アレイのみに用いて、PLCとLN素子の両者を集積する技術がPLC−LN直接接続技術である(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0006】
図10(A)、図10(B)はPLC−LN直接接続技術を使った光モジュールとして、100Gbit/sデジタルコヒーレント伝送用偏波多重(PDM:Polarization Division Multiplexing)−QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器の構成を説明する図である。
【0007】
PDM−QPSK変調器では、図10(A)に示すように、左側から垂直方向のTM偏光で入力した光は光分波器100によって2つに分岐され、分岐した2つの光はそれぞれQPSK変調器101,102で変調される。QPSK変調器101,102は、それぞれ光分波器と、位相変調器と、光合波器とから構成される。QPSK変調器101によって変調された光は、偏波回転器(HWP:半波長板)103により偏波が水平方向に回転される。
【0008】
そして、HWP103を通過した光とQPSK変調器102によって変調された光とは、偏波ビームコンバイナ(PBC:Polarization Beam Combiner)104によって合波され、図10(A)の右側に出力されることになる。このように、PDM−QPSK変調器では、偏波多重やQPSK変調を用いることにより、LN素子を変調する速度を、伝送速度の100Gbit/sの約4分の1にすることができ、LN素子を駆動する駆動電気回路の負担を軽くすることができると共に、伝送中での光分散や非線形効果による劣化を大幅に低減することができる。
【0009】
図10(A)に示したPDM−QPSK変調器は、実際には図10(B)に示す構成のようにPLC−LN直接接続技術を使って実現されるものである。より詳しくは、PDM−QPSK変調器は、PLCからなる入力側の回路200と、LN素子からなる直線の位相変調器アレイ201と、PLCからなる出力側の回路202とを直接接続したものである。
【0010】
直接接続技術は、図11に示すように、PLC300とLN素子301の導波路端面を直接接続する。すなわち、LN素子301の導波路端面を光学研磨した後に、導波路端面に無反射コートを施し、その上でLN素子301の導波路端面とPLC300の導波路端面とをアクティブアライメントにより調芯して、紫外線(UV)硬化接着剤によって固定する。
【0011】
上記のようにPLC−LN直接接続技術を使うことにより、安価な光モジュールを実現することができる。しかし、LN位相変調器は素子長が長く、例えば15mm〜30mmの長さが必要になるので、光モジュールの小型化には不向きである。
より小型化が可能な位相変調器として、InPやGaAsに代表される化合物半導体からなる位相変調器がある。これらの化合物半導体からなる位相変調器では、例えば1.5mmの素子長となり、LN位相変調器に比べて小型な光モジュールを実現することができる。
【0012】
しかしながら、化合物半導体は一般に薄く脆いことから、応力に弱く、直接接続技術をそのままでは適用できないという問題があった。端面が光学研磨されるLN素子の基板厚が例えば500ミクロン程度であるのに対して、劈開により形成される端面を有する化合物半導体の基板厚は150ミクロン程度である。化合物半導体の基板厚が薄い理由は、一般に化合物半導体が劈開面と呼ばれる原子間結合の弱い結晶面を有しているためで、この面に対して応力を加えて劈開すると分子レベル平滑な端面が得られることを利用して基板を製作しているためである。
【0013】
InPやGaAsに代表される閃亜鉛結晶構造を持った化合物半導体基板では、オリエンテーションフラットを基準にした角度が0度の面、45度の面、90度の面が劈開面であることが広く知られている。つまり、InPやGaAsは少しの応力を加えただけで、劈開面で割れるものであり、このような化合物半導体の物性が化合物半導体素子とPLCとの直接接続が困難な理由となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】美野真司他,「PLC−LNハイブリッド集積技術を用いた高速多値光変調器」,NTT技術ジャーナル2011.3,pp.57−61
【非特許文献2】山田貴他,「PLC−LN接続を用いた高速変調モジュール」,信学技報IEICE Technical Report,OPE2005−8,pp.1−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上述べたように、LN位相変調器は素子長が長いため、このLN位相変調器とPLCを接続して光モジュールを製作しようとすると、光モジュールの小型化ができないという課題があった。一方で化合物半導体は、応力に弱く、PLCとの直接接続技術を適用できないという課題があった。以上の課題は、光変調器だけでなく、化合物半導体素子を使用した光モジュール全般において存在する。
【0016】
本発明は、上記の点に鑑みて発明されたものであり、より小型かつ安価な光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光モジュールは、第1の導波路を有する第1の光導波路素子と、第2の導波路を有する第2の光導波路素子と、第3の導波路を有する化合物半導体素子と、この化合物半導体素子が搭載実装されたキャリアとを備え、前記第1の導波路の出力側と前記第3の導波路の入力側の対向する端面同士が接合され、前記第3の導波路の出力側と前記第2の導波路の入力側の対向する端面同士が接合されると共に、前記第1の光導波路素子と前記キャリアの対向する端面同士が接合され、前記キャリアと前記第2の光導波路素子の対向する端面同士が接合され、前記キャリアは、光が伝搬する方向に沿って複数個に分割され、前記キャリアの分割面は、前記化合物半導体素子を構成する結晶の劈開面と異なる角度の面となるように形成されることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の光モジュールの1構成例は、さらに、前記分割された複数個のキャリアを固定する基台を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記光導波路素子と対向する前記キャリアの端面の光伝搬方向の位置と、前記光導波路素子と対向する前記化合物半導体素子の端面の光伝搬方向の位置とが同一でないことを特徴とするものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記接合は、光透過性の接着剤を介して行われる。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記光導波路素子は、PLC、LN導波路、石英ファイバ、プラスティックファイバ、マルチコアファイバ、ポリマー導波路、プラズモニック導波路のいずれかからなるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、化合物半導体素子をキャリアに搭載し、光導波路素子の第1の導波路と化合物半導体素子の第2の導波路の対向する端面同士を接合すると共に、光導波路素子とキャリアの対向する端面同士を接合することにより、化合物半導体素子の応力耐性を向上させることができ、光導波路素子と化合物半導体素子の接続が可能になる。その結果、本発明では、小型かつ安価な光モジュールを実現することができる。
【0020】
また、本発明では、化合物半導体素子をキャリアに搭載し、第1の光導波路素子における第1の導波路の出力側と化合物半導体素子における第3の導波路の入力側の対向する端面同士を接合し、化合物半導体素子における第3の導波路の出力側と第2の光導波路素子における第2の導波路の入力側の対向する端面同士を接合すると共に、第1の光導波路素子とキャリアの対向する端面同士を接合し、キャリアと第2の光導波路素子の対向する端面同士を接合することにより、化合物半導体素子の応力耐性を向上させることができ、光導波路素子と化合物半導体素子の接続が可能になる。その結果、本発明では、小型かつ安価な光モジュールを実現することができる。
【0021】
また、本発明では、キャリアを、光が伝搬する方向に沿って複数個に分割することにより、第1の光導波路素子側のキャリアの端面と第2の光導波路素子側のキャリアの端面との距離を化合物半導体素子の素子長に合わせることができる。
【0022】
また、本発明では、キャリアの分割面を、化合物半導体素子を構成する結晶の劈開面と異なる角度の面となるように形成することにより、化合物半導体素子が破損する可能性を低減することができる。
【0023】
また、本発明では、分割された複数個のキャリアを固定する基台を設けることにより、キャリアを補強することができる。
【0024】
また、本発明では、光導波路素子と対向するキャリアの端面の光伝搬方向の位置と、光導波路素子と対向する化合物半導体素子の端面の光伝搬方向の位置とをずらすことにより、光導波路素子と化合物半導体素子の接続強度および接続損が最適となるように設計・実装をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図4】本発明の第3の実施の形態においてキャリアに化合物半導体素子を搭載する方法を説明する断面図である。
図5】本発明の第4の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図6】本発明の第5の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図7】本発明の第5の実施の形態に係る光モジュールの別の構成を示す断面図および下面図である。
図8】本発明の第6の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図である。
図9】本発明の第6の実施の形態に係る光モジュールの具体的な構成を示す断面図および平面図である。
図10】従来の光変調器の構成を示す図である。
図11】従来のPLC−LN直接接続の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、図面を基に本発明の実施の形態を説明する。図1(A)〜図1(C)は本発明の第1の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)は光導波路素子と化合物半導体素子とを分解した断面図、図1(B)は光導波路素子と化合物半導体素子とを接続した光モジュールの断面図、図1(C)は図1(B)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0027】
図1(A)に示すように、本実施の形態の光モジュールは、導波路1を有する光導波路素子2と、導波路3を有する化合物半導体素子4の2つを要素とする。本実施の形態では、例えば図1(A)〜図1(C)の左側から光が入射し、右側から光が出射するので、図1(A)〜図1(C)の左右方向が光伝搬方向となる。
【0028】
化合物半導体素子4は、例えばInPからなる板状の半導体受光素子であり、その厚さは150ミクロンである。化合物半導体素子4の端面は劈開によって形成され、無反射コートが形成される。
光導波路素子2は、例えばPLCであり、シリコン(Si)基板上に石英ガラス(SiO2)を堆積してコアとクラッドを形成することで、平面回路上に導波路1を有する光回路を実現したものである。
【0029】
化合物半導体素子4は、単体では薄く脆いので、そのまま光導波路素子2と直接接合したのでは割れてしまったり、端面が壊れてしまったりする可能性が高くなる。そこで、図1(A)のように化合物半導体素子4をハンダ、銀ペースト、もしくは接着剤等を使って板状のキャリア5に搭載し固定する。キャリア5は、例えば厚さ500ミクロンのSiからなる。
【0030】
図1(B)に示すように、キャリア5に搭載した化合物半導体素子4の導波路3と光導波路素子2の導波路1とを突き当てるように調芯し、最適の位置で紫外線(UV)硬化樹脂からなる光透過性の接着剤6によって化合物半導体素子4と光導波路素子2とを接合する。このとき、光導波路素子2と化合物半導体素子4とを接合するだけでなく、光導波路素子2とキャリア5も接着剤6によって接合するようにする。
【0031】
光導波路素子2の導波路1と化合物半導体素子4の導波路3の調芯には、アクティブアライメントを用いる。つまり、導波路1から光を入射したときに受光素子である化合物半導体素子4の受光レベルが最大となるよう、光導波路素子2と化合物半導体素子4とを最適な位置に合わせるようにすればよい。また、仮に化合物半導体素子4が受光素子ではなく半導体レーザであった場合は、半導体レーザからの発光が導波路1に入る光量が最大となるよう、光導波路素子2と化合物半導体素子4とを最適な位置に合わせるようにすればよい。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態では、化合物半導体素子4をキャリア5に実装し、光導波路素子2とキャリア5とを接続することで、化合物半導体素子4の応力耐性を向上させることができ、光導波路素子2と化合物半導体素子4の直接接続が可能になる。その結果、本実施の形態では、小型かつ安価な光モジュールを実現することができる。
【0033】
なお、上記では、化合物半導体素子4をInPの半導体受光素子、または半導体レーザとして説明したが、これに限定されるものではなく、GaAsやAlGaAs、InGaAs、InGaAsP、InGaAlAs等、光を伝搬する化合物半導体材料であればどんな組成のものでも化合物半導体素子4に適用することが可能である。
【0034】
また、化合物半導体素子4の機能としても半導体受光素子や半導体レーザに限定されるものではなく、LED、電界吸収型変調器集積半導体レーザ、マッハ・ツェンダ変調器集積半導体レーザ、受光素子集積半導体レーザ等、少なくとも片方の端面から光を入力もしくは出力するものであればどんなものでも化合物半導体素子4として用いることができる。また、化合物半導体素子4は、1つであっても構わないし、水平方向(図1(A)、図1(B)の紙面に垂直な方向、図1(C)の紙面に平行な方向)に複数の半導体素子が並ぶアレイであっても構わない。
【0035】
また、光導波路素子2は、PLC導波路からなるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、LN導波路、石英ファイバ、プラスティックファイバ、マルチコアファイバ、ポリマー導波路、プラズモニック導波路等、十分な強度を有したうえで、光を伝搬する導波路構造を取れるものであればどんなものでも光導波路素子2として用いることができる。また、光導波路素子2は、1つであっても構わないし、複数の半導体素子がアレイ状に並ぶ化合物半導体素子4に対応してアレイ状に複数の導波路1が並ぶ構造でも構わない。
【0036】
また、本実施の形態では、キャリア5は、シリコンからなるものとして説明したが、これに限定されるものではない。銅やアルミの金属ブロック、またはコバールのような合金ブロックやセラミックのブロック等、光導波路素子2との直接接続に耐えるだけの強度があり、かつ所望の形状に加工できればどんな材料のものでもキャリア5として用いることができる。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2(A)〜図2(C)は本発明の第2の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)〜図1(C)と同様の構成には同一の符号を付してある。図2(A)は光導波路素子と化合物半導体素子とを分解した断面図、図2(B)は光導波路素子と化合物半導体素子とを接続した光モジュールの断面図、図2(C)は図2(B)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0038】
図2(A)に示すように、本実施の形態の光モジュールは、導波路1を有する光導波路素子2と、導波路3を有する化合物半導体素子4aと、導波路7を有する光導波路素子8の3つを要素とする。本実施の形態では、例えば図2(A)〜図2(C)の左側から光が入射し、右側から光が出射するので、図2(A)〜図2(C)の左右方向が光伝搬方向となる。
【0039】
化合物半導体素子4aは、例えばInP基板上に形成された板状の半導体位相変調器であり、その厚さは150ミクロンである。化合物半導体素子4aの端面は劈開によって形成され、無反射コートが形成される。この化合物半導体素子4aは、左右の端面から光が出る両端面素子である。化合物半導体素子4aは単体では薄く脆いので、第1の実施の形態と同様に、化合物半導体素子4aをハンダ、銀ペースト、もしくは接着剤等を使ってキャリア5に搭載する。
【0040】
図2(B)に示すように、キャリア5に搭載した化合物半導体素子4aの導波路3と光導波路素子2の導波路1とを突き当てるように調芯し、最適の位置で紫外線硬化樹脂からなる光透過性の接着剤6によって化合物半導体素子4aと光導波路素子2とを接合する。このとき、光導波路素子2とキャリア5も接着剤6によって接合する。さらに、化合物半導体素子4aの導波路3と光導波路素子8の導波路7とを突き当てるように調芯し、最適の位置で紫外線硬化樹脂からなる光透過性の接着剤9によって化合物半導体素子4aと光導波路素子2とを接合する。このとき、キャリア5と光導波路素子8も接着剤9によって接合する。
【0041】
光導波路素子2の導波路1と化合物半導体素子4aの導波路3の調芯、および化合物半導体素子4aの導波路3と光導波路素子8の導波路7の調芯には、アクティブアライメントを用いる。半導体位相変調器(化合物半導体素子4a)は受光器として用いることができる。つまり、導波路1から光を入射したときに受光器である化合物半導体素子4aの受光レベルが最大となるよう、光導波路素子2と化合物半導体素子4aとを最適な位置に合わせるようにする。光導波路素子8についても同様で、導波路7から光を入射したときに化合物半導体素子4aの受光レベルが最大となるよう、化合物半導体素子4aと光導波路素子8とを最適な位置に合わせるようにすればよい。
【0042】
また、仮に化合物半導体素子4aが半導体位相変調器ではなく半導体増幅器であった場合は、半導体増幅器である化合物半導体素子4aからの発光が導波路1に入る光量が最大となるよう、光導波路素子2と化合物半導体素子4aとを最適な位置に合わせるようにすればよい。光導波路素子8についても同様で、半導体増幅器である化合物半導体素子4aからの発光が導波路7に入る光量が最大となるよう、化合物半導体素子4aと光導波路素子8とを最適な位置に合わせるようにすればよい。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態では、化合物半導体素子4aをキャリア5に実装し、光導波路素子2,8とキャリア5とを接続することで、化合物半導体素子4aの応力耐性を向上させることができ、光導波路素子2,8と化合物半導体素子4aの直接接続が可能になる。その結果、本実施の形態では、小型かつ安価な光モジュールを実現することができる。本実施の形態と第1の実施の形態との相違点は、化合物半導体素子の片端面のみ光導波路素子を直接接続する片端実装でなく、化合物半導体素子の両端面に光導波路素子を直接接続する両端実装になっていることである。
【0044】
なお、上記では、化合物半導体素子4aを半導体位相変調器、または半導体増幅器として説明したが、これに限定されるものではなく、強度変調器、偏波変調器、波長変換器等、左右の端面に導波路を持つものであればどんなものでも化合物半導体素子4aとして用いることができる。
【0045】
また、化合物半導体素子4aは、1つであっても構わないし、水平方向(図2(A)、図2(B)の紙面に垂直な方向、図2(C)の紙面に平行な方向)に複数の半導体素子が並ぶアレイであっても構わない。光導波路素子2,8は、1つずつであっても構わないし、複数の半導体素子がアレイ状に並ぶ化合物半導体素子4aに対応してアレイ状に複数の導波路1,7が並ぶ構造でも構わない。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3(A)、図3(B)は本発明の第3の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)と同様の構成には同一の符号を付してある。図3(A)は光モジュールの断面図、図3(B)は図3(A)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0047】
図2に示した第2の実施の形態の構成では、化合物半導体素子4aの素子長とキャリア5の素子長をほぼ同一にする必要がある。しかし、化合物半導体素子4aの素子長とキャリア5の素子長を同一の長さに揃えることは、実際には非常に困難である。通常、化合物半導体の劈開面を得るにはダイヤモンドスクライバ等で化合物半導体の一部に溝を形成し、この溝に応力をかけることで劈開を行う。しかし、化合物半導体に溝を形成する際に、片端で5ミクロン程度、両端で10ミクロン程度の誤差が生じるため、図2に示した構成では化合物半導体素子4aの素子長とキャリア5の素子長をほぼ同一にするのは困難である。
【0048】
そこで、光伝搬方向(図3(A)、図3(B)左右方向)に沿ってキャリアを分割することで、化合物半導体素子4aの両端の接続面A,Bにおいて、化合物半導体素子4aの端面とキャリアの端面を揃えるようにしたのが本実施の形態の構成である。図3において、キャリアは5aと5bの2つに分割されている。2つのキャリア5aと5bの隙間10は任意に調整することができ、それによってキャリア5aの光導波路素子2側の端面とキャリア5bの光導波路素子8側の端面との距離を化合物半導体素子4aの素子長に合わせることができる。
【0049】
図3に示した本実施の形態の構造を得るには2つの方法がある。1つの方法は、図4(A)のようにキャリア5aの光導波路素子2側の端面と化合物半導体素子4aの光導波路素子2側の端面とを揃えるようにしてキャリア5a上に化合物半導体素子4aを搭載して固定した後に、図4(B)のように、キャリア5bの光導波路素子8側の端面と化合物半導体素子4aの光導波路素子8側の端面とを揃えるようにしてキャリア5b上に化合物半導体素子4aを搭載して固定する方法である。
【0050】
別の方法は、図4(C)のようにキャリア5aの光導波路素子2側の端面とキャリア5bの光導波路素子8側の端面との距離が化合物半導体素子4aの素子長と一致するようにしてキャリア5a,5bを基台11上に搭載して固定した後、図4(D)のようにキャリア5a,5b上に化合物半導体素子4aを搭載して固定する方法である。基台11は、Si、Cu、コバール、セラミック等、十分な強度を有していればどのような材料からなるものでも構わない。
【0051】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図5(A)、図5(B)は本発明の第4の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)、図3(B)と同様の構成には同一の符号を付してある。図5(A)は光モジュールの断面図、図5(B)は図5(A)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0052】
図3に示した第3の実施の形態で問題となるのは、キャリア5が存在しない隙間10の部分で化合物半導体素子4aが全体を支える形になってしまうことである。化合物半導体素子4aは脆いので、キャリア5a,5bに応力がかかった場合に化合物半導体素子4aが割れる可能性がある。前述のように化合物半導体は劈開面という割れやすい方位を有する。
【0053】
そこで、キャリアの分割面を化合物半導体素子4aの劈開面(オリエンテーションフラットを基準にした角度が0度の面、45度の面、90度の面)とは異なる角度の面とすることで、キャリアに応力がかかった場合においても化合物半導体素子4aが割れないようにしたのが本実施の形態の構成である。
【0054】
第3の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、キャリアは5cと5dの2つに分割されているが、キャリアの分割面(2つのキャリアの向かい合う端面、すなわちキャリア5cの右側端面とキャリア5dの左側端面)は、化合物半導体素子4aの劈開面(化合物半導体素子4aの両端面)と異なる角度の面となるように形成されている。このようにして、本実施の形態では、化合物半導体素子4aが破損する可能性を低減することができる。
なお、第3、第4の実施の形態では、キャリアを2つに分割しているが、3つ以上に分割してもよい。
【0055】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図6(A)、図6(B)は本発明の第5の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)、図3(B)と同様の構成には同一の符号を付してある。図6(A)は光モジュールの断面図、図6(B)は図6(A)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0056】
上記の説明では、キャリアの端面と化合物半導体素子の端面とを揃えるようにしている。一般に接着強度は、接着面の距離が短い方が強固であり、キャリアと光導波路素子との距離は短い方がよい。しかしながら、導波路接続損の観点で見た場合、距離が短い方が接続損が小さくなるとは限らないことから、化合物半導体素子と光導波路素子の距離は任意に設定できる方が望ましい。
【0057】
そこで、光導波路素子と対向するキャリアの端面の光伝搬方向(図6(A)、図6(B)左右方向)の位置と、光導波路素子と対向する化合物半導体素子の端面の光伝搬方向の位置とをずらすことで、光導波路素子と化合物半導体素子の接続強度および接続損が最適となるように設計・実装をすることが可能となる。
【0058】
図6(A)、図6(B)はキャリア5aの光導波路素子2側の端面とキャリア5bの光導波路素子8側の端面との距離よりも化合物半導体素子4aの素子長を短くした例を示している。一般に化合物半導体素子の端面は弱いので、光導波路素子と化合物半導体素子の直接接続の工程中に、誤って化合物半導体素子の端面を光導波路素子とぶつけてしまうと化合物半導体素子が壊れてしまう。
【0059】
図6(A)、図6(B)のようにキャリア5aの光導波路素子2側の端面とキャリア5bの光導波路素子8側の端面との距離よりも化合物半導体素子4aをやや短く(例えば2〜5ミクロン)設定することで、化合物半導体素子4aの端面を壊すことによる光モジュールの歩留りの劣化を減少させることができる。また、光導波路素子2,8との接続損が最小となる位置に化合物半導体素子4aを設置することも可能である。
【0060】
図7(A)、図7(B)は本実施の形態の光モジュールの別の構成を示す断面図および下面図であり、図7(A)は光モジュールの断面図、図7(B)は図7(A)の光モジュールを下から見た下面図である。
接着剤6,9の厚みによっては、キャリア5aの光導波路素子2側の端面とキャリア5bの光導波路素子8側の端面との距離よりも化合物半導体素子4aを長くした方が接続損失を減少させることができる。この場合には図7(A)、図7(B)に示した光モジュールの構成になる。
【0061】
なお、本実施の形態では、光導波路素子と対向するキャリアの端面の光伝搬方向の位置と、光導波路素子と対向する化合物半導体素子の端面の光伝搬方向の位置とをずらす構成を第3の実施の形態に適用しているが、第4の実施の形態に適用してもよいことは言うまでもない。また、このような本実施の形態の構成を第1、第2の実施の形態に適用してもよい。
【0062】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図8(A)、図8(B)は本発明の第6の実施の形態に係る光モジュールの構成を示す断面図および下面図であり、図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)、図3(B)と同様の構成には同一の符号を付してある。図8(A)は光モジュールの断面図、図8(B)は図8(A)の光モジュールを下から見た下面図である。
【0063】
上記の第1〜第5の実施の形態では、化合物半導体素子の幅とキャリアの幅を同一としてきた。しかし、実際に光モジュールの実装工程の観点から鑑みた場合、強度が弱い化合物半導体素子を把持し実装することは避けた方が望ましい。
【0064】
そこで、図8(A)、図8(B)のように、キャリア5a,5bの幅(図8(B)の上下方向の寸法)を化合物半導体素子4aに比べ大きく設計することで、キャリア5a,5bのみを図示しない基台によって把持し実装することが可能となり、実装工程が簡便となり望ましい。
【0065】
図9(A)、図9(B)は本実施の形態の光モジュールの具体的な構成を示す断面図および平面図であり、図9(A)は光モジュールの断面図、図9(B)は図9(A)の光モジュールを上から見た平面図である。化合物半導体素子4aの幅よりもキャリア5c,5dの幅を広げることで、図9(A)、図9(B)に示すように、キャリア5c,5d上に、化合物半導体素子4aを動作させるのに必要な電気配線12a,12bを具備することが可能となる。この図9(A)、図9(B)に示した光モジュールの構成が本発明の最適な構成となる。
【0066】
上記のようにキャリア5c,5d上には電気配線12a,12bが形成され、化合物半導体素子4a上には電気配線13a,13bが形成されている。電気配線12a,12bと電気配線13a,13bとは、ワイヤ14a,14bにより接続される。全体の電気配線は等長化されている。図9(A)、図9(B)に示した光モジュールの例では、化合物半導体素子4aとして2アレイのInPの位相変調器を使用し、光導波路素子2として1入力2出力のPLC光カプラを使用し、光導波路素子8として2入力1出力のPLC光カプラを使用することで、全体としてマッハ・ツェンダ変調器を構成している。マッハ・ツェンダ変調器では、電気配線12a,12bに加える電気信号により透過光強度を変化させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、複数の光素子を集積化する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,3,7…導波路、2,8…光導波路素子、4,4a…化合物半導体素子、5,5a,5b,5c,5d…キャリア、6,9…接着剤、10…隙間、11…基台、12a,12b,13a,13b…電気配線、14a,14b…ワイヤ。
図1
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