特許第6228089号(P6228089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000002
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000003
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000004
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000005
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000006
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000007
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000008
  • 特許6228089-血液凝固検査チップ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228089
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】血液凝固検査チップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20171030BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20171030BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20171030BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20171030BHJP
   G01N 33/543 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   G01N33/86
   G01N33/483 C
   G01N37/00 101
   G01N21/41 101
   !G01N33/543 595
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-189764(P2014-189764)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-61677(P2016-61677A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】林 勝義
(72)【発明者】
【氏名】井上 鈴代
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 弦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸昭
(72)【発明者】
【氏名】小泉 弘
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−232137(JP,A)
【文献】 特開2014−041041(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/022169(WO,A1)
【文献】 特開2013−053959(JP,A)
【文献】 米国特許第5504011(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 21/41
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査溶液と凝固活性化溶液が導入される導入口と、前記導入口から導入された被検査溶液と凝固活性化溶液とが直列に接触しながら流れる流路と、前記流路を流れる被検査溶液と凝固活性化溶液が導出される導出口とを備えた血液凝固検査チップにおいて、
前記導入口から導入された被検査溶液と凝固活性化溶液とは、前記直列に接触した面を界面とし、この界面で凝固反応を起こしながら、前記流路を前記導出口に向かって流れ、
前記流路の底面の一部に、前記界面付近で生じる屈折率の変化を観測する領域として金薄膜が形成され、
前記流路の底面の前記屈折率の変化を観測する領域以外の領域に、生体分子が吸着し難い材料の薄膜として酸化チタン薄膜が形成されている
ことを特徴とする血液凝固検査チップ。
【請求項2】
請求項1に記載された血液凝固検査チップにおいて、
前記流路は、直線構造とされている
ことを特徴とする血液凝固検査チップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された血液凝固検査チップにおいて、
前記流路に先ず前記凝固活性化溶液が流され、続いて前記被検査溶液が流される
ことを特徴とする血液凝固検査チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液の凝固能を測定する際に用いられる血液凝固検査チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
凝固活性は、臨床検査の重要な項目であり、特にその一つの凝固活性指標であるプロトロンビン時間(血液凝固時間:PT(Prothrombin time))は、外因系の凝固因子への感度が高いと考えられており、外因系の凝固因子の欠損のスクリーニングや、肝機能の異常、さらに経口の抗凝血薬療法のモニタリングなどに用いられる指標である。
【0003】
従来、血液凝固時間の測定には、かくはん抵抗方式、光散乱方式、熱伝導方式、水晶振動子方式などの方法が発明されているが、一般にかくはん抵抗方式と光散乱方式が多く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
かくはん抵抗方式は、サンプルを活性化剤と一緒に導入してフィンで攪拌し、攪拌の抵抗の上昇から血液凝固時間を測定する方法である。
【0005】
光散乱方式は、試験用容器内で、血漿に凝固活性化を促す成分を含む試薬を混合し、容器に対し光を入射させ、その散乱光の光量変化を測定して血液凝固時間を測定する方法である。散乱光量から血液凝固時間を得る方法としては、散乱光量をそのまま利用する方法、散乱光量の微分値を利用する方法、散乱光量がある一定値に達するまでの時間を求める方法がある。
【0006】
最近では、屈折率変化を用いて血液の凝固能を測定する手法も提案されている。この屈折率変化を用いて血液の凝固能を測定する手法では、マイクロ流路内における異なる地点の屈折率変化と時間、溶液の移動距離から流速を算出し、その流速が血漿の凝固活性度の違いにより変化することを利用して血液凝固を検査する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0007】
また、従来の血液凝固検査は、血液凝固カスケードの最終生成物であるフィブリンによる物理的、光学的変化を捉えることにより行われてきたが、近年ではフィブリンと同時に生成される低屈折率成分の屈折率と血液の凝固能との間に相関があることが報告されている(例えば、非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−232137号公報
【特許文献2】特開2013−053959号公報
【特許文献3】特開2013−053960号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Inoue et al.,「SUB-SECOND DETERMINATION OF BIOGENIC PROTEIN POLYMERIZATION ACTIVITY USING FLOW INDUCED REFRACTIVE INDEX “VALLEY”」,Micro TAS 2013,pp.230-232.年10月発表)
【非特許文献2】Hayashi et al.,「POLYMERIZATION OF BIOLOGICAL MOLECULES IN A MICROCHANNEL GENERATES BOTH HIGH AND LOW-REFRACTIVE INDEX INGREDIENTS」,Micro TAS 2013,pp.898-900.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
屈折率変化を用いて血液の凝固能を測定する手法では、マイクロ流路内における異なる地点の屈折率変化と時間、溶液の移動距離から流速を算出し、その流速が血漿の凝固活性度の違いにより変化することを利用して血液凝固を検査する。この検査では、マイクロ流路を備える血液凝固検査チップを用い、流路に血漿と凝固試薬(凝固活性化剤)を流しながら、表面プラズモン共鳴(SPR)測定法で屈折率の変化を観測する。
【0011】
従来の血液凝固検査チップにおいては、流路に先ず凝固活性化溶液として凝固試薬を流し、次に被検査溶液として血漿を流し、流路内で血漿と凝固試薬とを直列に接触させ、その血漿と凝固試薬とが接触した面を界面とし、この界面で凝固反応を生じさせていた。そして、その界面付近で生じる屈折率の変化をSPR測定法で観測していた。
【0012】
SPR測定法で屈折率の変化を観測する場合、一般に流路の底面の全体を金薄膜としたガラス等の基板を用いるが、金薄膜上には血漿中に含まれるフィブリノゲン等の生体分子もしくは凝固反応による生成物であるフィブリンが吸着しやすく、これにより界面付近で生じる屈折率の変化を観測する領域(センシング部分)が汚染され、感度が変化して行くという問題があった。特に、血漿と凝固試薬とが最初に接する流路の入口付近では、凝固物による送液不良が起こりやすい。このような理由から、従来の血液凝固検査チップでは、血液の凝固能の測定を繰り返し行ううちに、測定精度が低下してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、センシング部分や流路内の汚染を抑制し、測定精度の低下を抑えることができる血液凝固検査チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明は、被検査溶液と凝固活性化溶液が導入される導入口と、導入口から導入された被検査溶液と凝固活性化溶液とが直列に接触しながら流れる流路と、流路を流れる被検査溶液と凝固活性化溶液が導出される導出口とを備えた血液凝固検査チップにおいて、導入口から導入された被検査溶液と凝固活性化溶液とは、直列に接触した面を界面とし、この界面で凝固反応を起こしながら、流路を導出口に向かって流れ、流路の底面の一部に、界面付近で生じる屈折率の変化を観測する領域として金薄膜が形成され、流路の底面の屈折率の変化を観測する領域以外の領域に、生体分子が吸着し難い材料の薄膜として酸化チタン薄膜が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明において、流路の底面の屈折率の変化を観測する領域以外の領域には、フィブリノゲン等の生体分子が吸着し難い材料の薄膜を形成するようにする。本発明では、例えば、被検査溶液を血漿とし、凝固活性化溶液を凝固試薬とするが、この場合、流路の底面に吸着する生体分子や凝固物の量が減り、流路の底面に積層される生体分子や凝固物の厚みが薄くなる。これにより、流路内の汚染が抑制されると共に、屈折率の変化を観測する領域(センシング部分)の汚染が抑制され、繰り返し血液の凝固能の測定を行っても、精度が安定した測定結果を得ることが可能となる。
【0016】
生体分子が吸着し難い材料としては、チタン及びチタン合金、コバルト−クロム合金などが挙げられるが、本発明では、屈折率の変化を観測する領域を金薄膜とし、屈折率の変化を観測する領域以外の領域に酸化チタン薄膜を形成するようにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流路の底面の屈折率の変化を観測する領域以外の領域に生体分子が吸着し難い材料の薄膜を形成するようにしたので、流路の底面に吸着する生体分子の量が減り、流路の底面に積層される生体分子や凝固物の厚みが薄くなり、センシング部分や流路内の汚染を抑制して、測定精度の低下を抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の原理を説明する図である。
図2】本発明の原理において血漿と凝固試薬とが直列に接触しながら流れて行く様子を示す図である。
図3】本発明の原理において流路の底面の一部に屈折率の変化を観測する領域を形成した状態を示す図である。
図4】実施の形態の血液凝固検査チップを構成する流路基板を示す図である。
図5】実施の形態の血液凝固検査チップを構成する測定用基板を示す図である。
図6】流路基板と測定用基板とを組み合わせた状態を示す側断面図である。
図7】実施の形態の血液凝固検査チップにおいて血漿と凝固試薬とが直列に接触しながら流れて行く様子を示す図である。
図8】血漿と凝固試薬を血液凝固検査チップの流路内に導入したときの時間に対する屈折率変化の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔発明の原理〕
本発明において、血液凝固検査チップは、被検査溶液と凝固活性化溶液が導入される導入口と、この導入口から導入された被検査溶液と凝固活性化溶液とが直列に接触しながら流れる流路と、この流路を流れる被検査溶液と凝固活性化溶液が導出される導出口とを備えている。
【0020】
この構成において、本発明では、流路の底面の一部に、被検査溶液と凝固活性化溶液との接触面を界面とし、この界面付近で生じる屈折率の変化を観測する領域を形成し、この流路の底面の屈折率の変化を観測する領域以外の領域に、生体分子が吸着し難い材料の薄膜を形成する。
【0021】
例えば、図1に示すように、チップ1に導入口2と導出口3を設け、この導入口2と導出口3とを直線構造の流路(直線流路)4でつなぐ。そして、導出口3と吸引ポンプ5との間をチューブ6で接続し、吸引ポンプ5を用いて流路4内を吸引した状態で、導入口2から先ず凝固活性化溶液として凝固試薬7を導入し、続いて被検査溶液として血漿8を導入する。
【0022】
すると、導入口2から導入された凝固試薬7と血漿8は、流路4内を直列に接触しながら流れる(図2参照)。図2において、9は血漿8と凝固試薬7との接触面(界面)である。
【0023】
この場合、血漿8と凝固試薬7とは界面9で接触するため、界面9で凝固反応が起こる。すなわち、血漿8と凝固試薬7とは、直列に接触した面を界面9とし、この界面9で凝固反応を起こしながら、流路4を導出口3に向かって流れて行く。そこで、図3に示すように、流路4の底面の一部に、界面9付近で生じる屈折率の変化を観測する領域をセンシング部分10として形成するようにし、このセンシング部分10で観測される屈折率の変化をもとに血漿8の凝固能を決定する。すなわち、血漿8の凝固能は、屈折率変化が大きい場合に高い。この屈折率変化をもとに血漿8の凝固能を血液の凝固能として決定する。
【0024】
また、流路4の底面の全部を金薄膜とした場合、この金薄膜上に血漿8中に含まれるフィブリノゲン等の生体分子もしくは凝固反応による生成物であるフィブリンが吸着しやすく、これによりセンシング部分10が汚染され、感度が変化して行くという虞がある。また、血漿8と凝固試薬7とが最初に接する流路4の入口付近では、凝固物による送液不良が起こりやすい。
【0025】
そこで、流路4の底面のセンシング部分10以外の領域に、生体分子が吸着し難い材料の薄膜として例えば酸化チタン薄膜11を形成する。これにより、流路4の底面に吸着する生体分子の量が減り、流路4の底面に積層される生体分子や凝固物の厚みが薄くなり、流路4内の汚染が抑制されると共に、センシング部分10の汚染が抑制される。このセンシング部分10や流路4内の汚染の抑制により、繰り返し血液の凝固能の測定を行っても、精度が安定した測定結果を得ることができるようになる。
【0026】
なお、屈折率の変化を検出する検出器としては、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)測定装置を用いる。SPR測定装置は、LED等の光源と偏光板、集光レンズ、CCDカメラから構成されている。
【0027】
〔実施の形態〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図4は本実施の形態の血液凝固検査チップを構成する流路基板を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A線断面図である。
【0028】
この流路基板201はポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて作製されており、その下面に導入口202と導出口203とをつなぐ直線構造の流路(直線流路)204が形成されている。
【0029】
なお、流路204の高さhは50μm、幅wは0.5mmとされている。また、導入口202および導出口203は、流路基板201の上面に開口している。
【0030】
図5は本実施の形態の血液凝固検査チップを構成する測定用基板であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)におけるB−B線断面図である。
【0031】
この測定用基板205の材質はガラス(BK7)とされている。測定用基板205の上面には、流路基板201に形成されている流路204に対応する位置に、その平面形状を流路204の平面形状と同じとした金属薄膜208が形成されている。金属薄膜208は金薄膜206と酸化チタン薄膜207とから構成されている。
【0032】
金薄膜206は、凝固試薬と血漿との界面付近で生じる屈折率の変化を観測する領域(センシング部分(SPR観測領域))として、流路204の平面形状に対応する領域の一部に形成されており、酸化チタン薄膜207は、流路204の平面形状に対応する領域のSPR観測領域を除く全ての領域に形成されている。
【0033】
図6は流路基板201と測定用基板205とを組み合わせた状態を示す側断面図である。本実施の形態の血液凝固検査チップ200は、図4に示した流路基板201と図5に示した測定用基板205とを、反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマで処理した後に、流路204の平面形状と金属薄膜208の平面形状とが合致するように貼り合わせて作製される。
【0034】
この血液凝固検査チップ200は、血液凝固検査装置の主要部品として用いられ、SPR測定装置に設置される。また、導出口203には内径が1mmのチューブが接続され、このチューブには吸引ポンプが接続される。また、血漿や凝固試薬を血液凝固検査チップ200に分注するための分注装置が設けられる。この血液凝固検査装置の構成については図示していない。
【0035】
〔血液凝固検査〕
血液凝固検査チップ200を用いて血液凝固検査を行う場合、吸引ポンプを動作させ、続いてあらかじめ導入口202に凝固試薬を滴下し、流路204内で吸引ポンプによる圧力と毛細管力が釣り合い、凝固試薬が静止した状態で、血漿を導入口202に滴下する。
【0036】
すると、2つの溶液は、図7に示すように、直列に接触した状態で、流路204内を導出口203に向かって流れて行く。なお、図7において、301は血漿であり、302は凝固試薬である。また、303は血漿301と凝固試薬302との界面である。304はSPRを観測するラインであり、SPRを観測するライン304が流路204を跨ぐように、血液凝固検査チップ200はマウントされている。
【0037】
図8に血漿と凝固試薬を血液凝固検査チップ200の流路204内に導入したときの時間に対する屈折率変化の様子を示す。図8の横軸は時間を示しており、縦軸はSPR観測点での屈折率変化を示している。図8のn1は凝固試薬の屈折率であり、n2は血漿の屈折率である。n4の屈折率が得られたのは凝固活性率が86%の血漿を用いた場合である。
【0038】
しかし、流路204の底面の金属薄膜208をすべて金薄膜とした場合、血漿の屈折率はn3となり、SPR観測領域のみを金薄膜とした場合に比べて観測される屈折率が増加することがわかった。これはSPR観測領域の金薄膜上により多くの凝固物の付着等が起こったためである。
【0039】
金薄膜表面の汚染は血漿中に含まれる成分の吸着および凝固物の付着によると考えられるが、本実施の形態のように金薄膜206が形成されているSPR観測領域以外の部分に生体分子の吸着を抑制する酸化チタン薄膜207を形成することで、流路204の底面に吸着する生体分子や凝固物の量が減り、流路204の底面に積層される生体分子や凝固物の厚みが薄くなる。これにより、流路204内の汚染が抑制されると共に、SPR観測領域上の金薄膜206の汚染が抑制され、繰り返し血液の凝固能の測定を行っても、精度が安定した測定結果を得ることが可能となる。
【0040】
なお、流路204の底面の金薄膜206を除く領域に酸化チタン薄膜207を形成する代わりに、金薄膜206上にフィブリノゲン等の吸着を抑制することのできる生体適合性の高いポリマーを修飾するようにしてもよい。
【0041】
また、流路204の底面の金薄膜206を除く領域に酸化チタン薄膜207を形成せず、ガラス基板のままとすることも考えられるが、金薄膜206を除く領域に酸化チタン薄膜207を形成して積極的に生体分子が吸着し難くすることによって、より大きな効果を得ることができる。
【0042】
また、上述した実施の形態では、被検査溶液を血漿とし、血漿の凝固能を血液の凝固能として測定するようにしたが、被検査溶液は血漿に限定されるものではない。
【0043】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…チップ、2…導入口、3…導出口、4…流路、7…凝固試薬、8…血漿、9…界面、10…センシング部分、11…酸化チタン薄膜、200…血液凝固検査チップ、201…流路基板、202…導入口、203…導出口、204…流路(直線流路)、205…測定用基板、206…金薄膜(センシング部分(SPR観測領域))、207…酸化チタン薄膜、208…金属薄膜、301…血漿、302…凝固試薬、303…界面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8