特許第6228225号(P6228225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228225
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】メタクリル樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/26 20060101AFI20171030BHJP
   C08F 220/14 20060101ALI20171030BHJP
   C08F 2/02 20060101ALI20171030BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08F6/26
   C08F220/14
   C08F2/02
   F21S2/00 434
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-545008(P2015-545008)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2014078638
(87)【国際公開番号】WO2015064576
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-223782(P2013-223782)
(32)【優先日】2013年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】新村 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 敦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宙
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−308781(JP,A)
【文献】 特開2002−328240(JP,A)
【文献】 特開2003−128707(JP,A)
【文献】 特開平02−006505(JP,A)
【文献】 特開昭62−089710(JP,A)
【文献】 特開2000−178509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−6/28
2/00−2/60
220/00−220/70
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)重合性単量体100質量部と重合開始剤と連鎖移動剤0.2〜0.8質量部とを反応器に連続的に供給し、
(II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、未反応の重合性単量体と、重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、
(III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、
(IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを、210℃〜300℃の温度での断熱フラッシュ及び真空ベント圧力15Torr以下の二軸押出機ベントでの脱揮によって、除去することを有する、
重合性単量体から成る二量体および三量体の合計含有量が0.3質量%以下であるメタクリル樹脂組成物を製造する方法。
【請求項2】
未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体との除去が、220℃〜280℃の温度での断熱フラッシュ及び真空ベント圧力9Torr以下の二軸押出機ベントでの脱揮によって行われる、請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
メタクリル樹脂組成物に含有するメタクリル酸脂環式炭化水素エステルの量が1.0質量%以下である、請求項1または2に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
メタクリル酸脂環式炭化水素エステルが、メタクリル酸ジシクロペンタニルまたはメタクリル酸イソボルニルである、請求項1〜3のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
(I)重合性単量体100質量部と重合開始剤と連鎖移動剤0.2〜0.8質量部とを反応器へ連続的に供給し、
(II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、未反応の重合性単量体と、重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、
(III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、
(IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを、210℃〜300℃の温度での断熱フラッシュ及び真空ベント圧力15Torr以下の二軸押出機ベントでの脱揮によって、除去してメタクリル樹脂組成物を得、該メタクリル樹脂組成物をストランド状に押し出し、
(V)ストランド状に押し出されたメタクリル樹脂組成物をペレタイザーでカットすることを有する、
重合性単量体から成る二量体および三量体の合計含有量が0.3質量%以下であるメタクリル樹脂ペレットを製造する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法を実施してメタクリル樹脂ペレットを得、
(VI)該メタクリル樹脂ペレットを加熱溶融させて所望形状に成形することを有する、成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかひとつに記載の製造方法を実施してメタクリル樹脂組成物を得、
該メタクリル樹脂組成物を加熱溶融させて板状に成形することを有する、
光路長200mmのイエロインデックスが10以下である板状成形体を製造する方法。
【請求項8】
板状成形体が、その厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上のものである請求項7に記載の板状成形体の製造方法。
【請求項9】
板状成形体が、光路長3mmの波長435nmにおける透過率が90%以上である請求項7または8に記載の板状成形体の製造方法。
【請求項10】
板状成形体が導光板である請求項7〜9のいずれかひとつに記載の板状成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル樹脂組成物の製造方法に関する。より詳細に、本発明は、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃性が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、外観良好な薄肉且つ広面積の板状成形体などを製造するのに好適なメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は透明性、耐光性、表面硬度などに優れている。該メタクリル樹脂を含むメタクリル樹脂組成物を成形することによって、導光板、レンズなどの種々の光学部材を得ることができる。
【0003】
軽量かつ広面積の液晶表示装置への需要が高く、それに対応して光学部材も薄肉化および広面積化が要求されている。ところが、光学部材を薄肉化および広面積化すると、僅かな湿気や熱などによって寸法変化が起きやすくなる。かかる寸法変化に伴って光学特性が変化する。表示装置の高画質化に伴って、屈折率やレタデーションなどの光学特性に高い精度が求められている。そのため、光学部材の原料であるメタクリル樹脂組成物には、高い透明性、低い吸湿性、高い耐熱性、小さい寸法変化、高い衝撃性、良好な成形性などが強く要求される。
【0004】
光学部材用の樹脂材料として、例えば、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニルを5重量%以上含む重合性組成物を重合して得られる光学用樹脂材料が知られている(特許文献1参照)。この光学用樹脂材料を高い成形温度で成形すると着色した成形体が得られやすい。この光学用樹脂材料を230〜260℃の低温で射出成形すると、成形体が着色することは無くなる。しかし、低温射出成形では、成形体の生産性が低く、さらに得られる成形体に応力が残りやすいので熱によって寸法変化が起きやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−73705号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本油脂株式会社技術資料「有機過酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な薄肉且つ広面積の板状成形体などを製造するのに好適なメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、以下の態様を包含する発明を完成するに至った。
【0009】
〔1〕 (I)重合性単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応器に連続的に供給し、
(II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、 未反応の重合性単量体と、 重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、
(III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、
(IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを除去することを有する、
重合性単量体から成る二量体および三量体の合計含有量が0.3質量%以下であるメタクリル樹脂組成物を製造する方法。
【0010】
〔2〕 未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体との除去が、210℃〜300℃の温度での断熱フラッシュ及び二軸押出機ベントでの脱揮によって行われる、〔1〕に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 メタクリル樹脂組成物に含有するメタクリル酸脂環式炭化水素エステルの量が1.0質量%以下である、〔1〕または〔2〕に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
〔4〕 メタクリル酸脂環式炭化水素エステルが、メタクリル酸ジシクロペンタニルまたはメタクリル酸イソボルニルである、〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
【0011】
〔5〕 (I)重合性単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応器へ連続的に供給し、
(II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、 未反応の重合性単量体と、 重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、
(III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、
(IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを除去してメタクリル樹脂組成物を得、該メタクリル樹脂組成物をストランド状に押し出し、
(V)ストランド状に押し出されたメタクリル樹脂組成物をペレタイザーでカットすることを有する、
重合性単量体から成る二量体および三量体の合計含有量が0.3質量%以下であるメタクリル樹脂ペレットを製造する方法。
【0012】
〔6〕 前記〔5〕に記載の製造方法を実施してメタクリル樹脂ペレットを得、
(VI)該メタクリル樹脂ペレットを加熱溶融させて所望形状に成形することを有する、成形体の製造方法。
〔7〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の製造方法を実施してメタクリル樹脂組成物を得、
該メタクリル樹脂組成物を加熱溶融させて板状に成形することを有する、
光路長200mmのイエロインデックスが10以下である板状成形体を製造する方法。
〔8〕 板状成形体が、その厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上のものである、〔7〕に記載の板状成形体の製造方法。
〔9〕 板状成形体が、光路長3mmの波長435nmにおける透過率が90%以上である、〔7〕または〔8〕に記載の板状成形体の製造方法。
〔10〕 板状成形体が導光板である〔7〕〜〔9〕のいずれかひとつに記載の板状成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好な薄肉且つ広面積の板状成形体などを製造するのに好適なメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを高効率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】射出成型金型における樹脂流動長さを表す図である。
図2】本発明に係る製造方法に使用される装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のメタクリル樹脂組成物の製造方法は、 (I)重合性単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応器に連続的に供給し、 (II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、未反応の重合性単量体と、重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、 (III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、 (IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを除去することを有する。
【0016】
また、本発明のメタクリル樹脂ペレットの製造方法は、 (I)重合性単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応器へ連続的に供給し、 (II)前記反応器にて、重合性単量体の一部をラジカル塊状重合させて、メタクリル酸メチルに由来する構造単位60〜90質量%、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルに由来する構造単位10〜40質量%、およびアクリル酸エステルに由来する構造単位0〜10質量%を有するメタクリル樹脂と、未反応の重合性単量体と、重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物を得、 (III)該樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送し、 (IV)前記二軸押出機にて、前記樹脂混合物から未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを除去してメタクリル樹脂組成物を得、該メタクリル樹脂組成物をストランド状に押し出し、 (V)ストランド状に押し出されたメタクリル樹脂組成物をペレタイザーでカットすることを有する。
【0017】
本発明のメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットの製造方法においては、重合性単量体として、メタクリル酸メチル(以下、単量体(I)ということがある。)、メタクリル酸脂環式炭化水素エステル(以下、単量体(II)ということがある。)、並びに必要に応じてアクリル酸エステル(以下、単量体(III)ということがある。)およびそれら以外の単量体を用いる。
【0018】
単量体(II)としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロへプチルなどのメタクリル酸単環脂肪族炭化水素エステル;メタクリル酸2−ノルボルニル、メタクリル酸2−メチル−2−ノルボルニル、メタクリル酸2−エチル−2−ノルボルニル、メタクリル酸2−イソボルニル、メタクリル酸2−メチル−2−イソボルニル、メタクリル酸2−エチル−2−イソボルニル、メタクリル酸8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル、メタクリル酸8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル、メタクリル酸8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル、メタクリル酸2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸1−アダマンチル、メタクリル酸2−フェンキル、メタクリル酸2−メチル−2−フェンキル、メタクリル酸2−エチル−2−フェンキルなどのメタクリル酸多環脂肪族炭化水素エステル;などが挙げられる。これらのうち、メタクリル酸多環脂肪族炭化水素エステルが好ましく、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(別名:メタクリル酸ジシクロペンタニル)またはメタクリル酸2−イソボルニル(メタクリル酸イソボルニル)がより好ましい。
【0019】
単量体(III)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜6のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0020】
本発明においては、単量体(I)、(II)および(III)以外の単量体(以下、単量体(IV)ということがある。)を用いることができる。単量体(IV)としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0021】
単量体(I)の使用量は、全重合性単量体に対して、通常、60〜90質量%、好ましくは60〜88質量%、より好ましくは70〜86質量%、さらに好ましくは74〜86質量%である。
単量体(II)の使用量は、全重合性単量体に対して、通常、10〜40質量%、好ましくは11〜35質量%、より好ましくは12〜20質量%である。
単量体(III)の使用量は、全重合性単量体に対して、通常、10質量%以下、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜6質量%である。
単量体(IV)の使用量は、全重合性単量体に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0022】
本発明に用いられる重合性単量体、すなわち単量体(I)、単量体(II)、並びに任意成分である単量体(III)および(IV)は、それらのイエロインデックスが、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。重合性単量体のイエロインデックスが小さければ、得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを成形した場合に、着色が殆んどない成形体が高い生産効率で得られやすい。なお、イエロインデックスは、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z8722に準拠して測定した値を元にJIS K7373に準拠して算出した黄色度の値である。
【0023】
上記した重合性単量体の溶存酸素量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、特に好ましくは3ppm以下である。このような範囲の溶存酸素量にすると重合反応がスムーズに進行し、シルバーや着色の無い成形体が得られやすくなる。
【0024】
本発明において用いられる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド 、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。これらのうち、重合開始剤は、1時間半減期温度が、60〜140℃のものが好ましく、80〜120℃のものがより好ましい。また、重合開始剤は、その水素引抜き能が、20%以下のものが好ましく、10%以下のものがより好ましく、5%以下のものがさらに好ましい。具体的には、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。これら重合開始剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤の使用量や添加方法などは、目的に応じて適宜設定すればよく特に限定されない。例えば、塊状重合法に用いられる重合開始剤の使用量は、全重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.02質量部、より好ましくは0.001〜0.01質量部である。
【0025】
なお、水素引抜き能は、重合開始剤製造業者の技術資料(例えば、非特許文献1)などによって知ることができる。また、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。まず、ラジカルトラッピング剤としてのα−メチルスチレンダイマーとシクロヘキサンの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン補足生成物を定量することで求められる、理論的なラジカル断片発生量に対する水素引抜き能が高いラジカル断片の割合(モル分率)を水素引抜き能とする。
【0026】
本発明において用いられる連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;テルピノレンなどが挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンが好ましい。これら連鎖移動剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、全重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部、さらに好ましくは0.3〜0.6質量部である。
【0027】
本発明の製造方法においては、塊状重合を連続流通式で行う。連続流通式反応は、反応器に反応原料を一定流量で供給し、反応器において得られた反応生成物を含む液を一定流量で抜出し、反応原料の供給と反応生成物を含む液の抜出とをバランスさせて連続的に反応を進める方法である。
連続流通式反応に使用される反応器の典型例としては、連続流通式槽型反応器と連続流通式管型反応器がある。連続流通式槽型反応器は反応液が完全混合に近い混合状態で反応させることができる。連続流通式管型反応器は反応液が栓流(プラグフロー)に近い混合状態で反応させることができる。これら反応器は、1基以上用いてもよいし、また、異なる反応器2基以上を組み合せて用いてもよい。本発明においては、例えば、反応初期段階から中期段階までを連続流通式槽型反応器で行い、反応終期段階を連続流通式管型反応器で行うことができる。反応器は攪拌機を有していてもよく、該攪拌機は反応器の様式に応じて選択することができるが、例えば、マックスブレンド式攪拌機、中央に配した縦型回転軸の回りを回転する格子状の翼を有する攪拌機、プロペラ式攪拌機、スクリュ式攪拌機、スタティックミキサなどが挙げられ、連続流通式槽型反応器ではマックスブレンド式攪拌機を用いるのが均一混合性の点から好ましい。
【0028】
本発明において用いられる好適な反応装置は、連続流通式槽型反応器を少なくとも一つ有するものである。複数の連続流通式槽型反応器は直列に繋いでもよいし、並列に繋いでもよい。連続流通式槽型反応器を用いる場合、槽型反応器に供給する量と槽型反応器から抜き出す量とをバランスさせて、槽型反応器内の液量がほぼ一定になるようにする。槽型反応器内の液量は、槽型反応器の容積に対して、好ましくは1/4〜3/4、より好ましくは1/3〜2/3である。
【0029】
重合性単量体、重合開始剤および連鎖移動剤は、それら全てを混合し、該混合物を反応器に連続的に供給してもよいし、それらを別々に反応器に連続的に供給し反応器内で混合してもよい。本発明においては、重合性単量体、重合開始剤および連鎖移動剤の全てを混合し、該混合物を反応器に連続的に供給する方法が好ましい。
【0030】
重合性単量体、重合開始剤および連鎖移動剤の混合は、窒素ガスなどの不活性雰囲気中で行うことが好ましい。また、連続流通式反応の操業を円滑に行うために、単量体(I)、単量体(II)、重合開始剤、連鎖移動剤並びに任意成分である単量体(III)および(IV)を貯留するタンクからそれぞれ管を介して反応器の前段に設けた混合器に連続的に供給して混合し、該混合物を反応器に連続的に供給することが好ましい。該混合器はスタティックミキサなどの攪拌機を備えていることが好ましい。
【0031】
なお、懸濁重合法は、樹脂中の残存単量体の量を少なくすることができるが、安定剤、分散剤などの不純物の影響によりイエロインデックスが大きくなってしまう。セルキャスト重合法では、残存単量体が少ない板状成形体を得ることができないだけでなく、薄肉かつ広面積の板状成形体を得ることは難しく、またその板厚精度やイエロインデックスなどの品質は低く、導光板などの光学部材に用いることは困難である。
【0032】
重合反応器内の温度は、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。重合反応器内の温度がこのような範囲にあると、得られる成形体のイエロインデックスを低くすることが容易である。重合反応器における平均滞留時間は、反応器の規模に依って異なるが、好ましく0.5〜4時間、より好ましくは1〜3時間である。平均滞留時間が短すぎると重合開始剤の必要量が増える傾向がある。また重合開始剤の増量により重合反応の制御が難しくなるとともに、分子量の制御が困難になる傾向がある。一方、平均滞留時間が長すぎると反応が定常状態になるまでに時間を要し、生産性が低下する傾向がある。なお、重合は窒素ガスなど不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0033】
この塊状重合によって、メタクリル樹脂と、未反応の重合性単量体と、重合性単量体から成る二量体若しくは三量体とを含有する樹脂混合物が得られる。
【0034】
最終段の反応器から樹脂混合物を抜き出すとき、重合性単量体の重合転化率は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは50〜65質量%にする。なお、重合転化率が高すぎると粘度上昇のために大きな攪拌動力が必要となる傾向がある。重合転化率が低すぎると脱揮不十分となりやすく、得られたメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを成形した場合に、成形体にシルバーなどの外観不良を起こす傾向がある。
【0035】
前記樹脂混合物に含有されるメタクリル樹脂は、単量体(I)に由来する構造単位60〜90質量%、単量体(II)に由来する構造単位10〜40質量%、および単量体(III)に由来する構造単位0〜10質量%を有するもの、好ましくは単量体(I)に由来する構造単位74〜86質量%、単量体(II)に由来する構造単位12〜20質量%、および単量体(III)に由来する構造単位2〜6質量%を有するものである。
【0036】
前記樹脂混合物に含有されるメタクリル樹脂は、その重量平均分子量が、好ましくは35,000〜100,000、より好ましくは40,000〜90,000、さらに好ましくは45,000〜80,000、最も好ましくは60,000〜80,000である。重量平均分子量が35,000よりも小さいとメタクリル樹脂組成物から成る成形体の耐衝撃性や靭性が不十分となる傾向になり、100,000より大きいとメタクリル樹脂組成物の成形性が不十分となる傾向になる。
【0037】
前記樹脂混合物に含有されるメタクリル樹脂は、その重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量:以下、この比を分子量分布と表記することがある。)が、好ましくは1.7〜2.6、より好ましくは1.7〜2.3、さらに好ましくは1.7〜2.0である。メタクリル樹脂の分子量分布が小さいとメタクリル樹脂組成物の成形性が低下傾向になる。分子量分布が大きいと樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下傾向になり、脆くなりやすい。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。また、メタクリル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0038】
前記樹脂混合物に含有されるメタクリル樹脂は、そのガラス転移温度が、好ましくは100〜140℃、より好ましくは105〜135℃、さらに好ましくは110〜130℃である。ガラス転移温度が低いと耐熱性などが低下する傾向がある。ガラス転移温度が高いと成形性などが低下する傾向がある。
【0039】
前記樹脂混合物に含有される二量体若しくは三量体は、重合工程及び/または重合後の加熱工程などにより生成する、同一の若しくは相異なる2つ若しくは3つの重合性単量体に由来する構造単位からなる化合物である。二量体若しくは三量体の具体例としては、メタクリル酸メチルからなる二量体若しくは三量体、アクリル酸エステルからなる二量体若しくは三量体、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルからなる二量体若しくは三量体、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとからなる二量体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる二量体、アクリル酸エステルとメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる二量体、二つのメタクリル酸メチルと一つのアクリル酸エステルとからなる三量体、一つのメタクリル酸メチルと二つのアクリル酸エステルとからなる三量体、二つのメタクリル酸メチルと一つのメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる三量体、一つのメタクリル酸メチルと二つのメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる三量体、二つのアクリル酸エステルと一つのメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる三量体、一つのアクリル酸エステルと二つのメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる三量体、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとメタクリル酸脂環式炭化水素エステルとからなる三量体などが挙げられる。
【0040】
前記樹脂混合物を、前記重合反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送する。移送された樹脂混合物は二軸押出機入口において、好ましくは平衡フラッシュまたは断熱フラッシュ、好ましくは断熱フラッシュさせる。断熱フラッシュは、好ましくは210〜300℃、より好ましくは220〜280℃、さらに好ましくは230〜260℃の温度で行う。フラッシュ直前の樹脂混合物の圧力は、好ましくは1.5〜3.0MPa、より好ましくは2.0〜2.5MPaである。1.5MPa未満ではフラッシュが不十分となり、残存単量体が多くなる傾向がある。逆に3.0MPaを超えると安定生産を得難くなる傾向がある。フラッシュによって蒸発した揮発分(未反応の重合性単量体と重合性単量体から成る二量体若しくは三量体)は、通常、リアベントから排出させるが、他のベントから排出させてもよい。
【0041】
続いて、二軸押出機に導入された樹脂混合物はスクリュで練られることによって揮発分が蒸発除去される。除去された揮発分はベントから排出される。本発明に用いられる二軸押出機に備わるベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは重合体流入部より下流側に少なくとも1個設ける。なお、真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。該真空ベントにおける圧力が上記範囲内にあれば、脱揮効率がよく、残存単量体を少なくすることができる。
【0042】
前記二軸押出機のスクリュは、同方向二軸スクリュであることが好ましい。単軸の場合に比べ、樹脂に与えるせん断エネルギーが大きく、表面更新の程度が大きいことから脱揮を効率良く行えるため、残存単量体を少なくできる。またそのスクリュ構成はスクリュ全長に対して5%以上の混練セグメント部位を有していることが好ましい。混練セグメントとしては、ロータセグメント、正送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、ミキシングギアなどが挙げられる。
【0043】
前記二軸押出機のシリンダ加熱温度は、210〜300℃が好ましく、220〜280℃がより好ましく、230〜260℃がさらに好ましい。210℃未満では脱揮に時間を要し、脱揮不十分になりやすい。脱揮が不十分なときには成形体にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。逆に300℃を超えると、前述の二量体および三量体の生成が多くなるばかりでなく、末端二重結合量が多くなり、熱安定性を確保する事が困難となる。
【0044】
任意工程であるフラッシュ蒸発と、それに続く工程であるベント付き二軸押出機による脱揮によってメタクリル樹脂組成物を得ることができる。得られたメタクリル樹脂組成物は、公知の方法で、ペレットや粉末などにすることができる。
【0045】
本発明においては、得られたメタクリル樹脂組成物を、前記二軸押出機からストランド状に押し出し、ペレタイザーでカットすることによってメタクリル樹脂ペレットにすることが好ましい。ストランド状にするために押出成形機先端部にダイスプレートが通常用いられる。ストランドは、その断面が、円形、楕円形、四角形などであることができる。ストランドの太さは、所望の樹脂ペレットサイズにできるものであれば、特に制限されない。
【0046】
溶融されたメタクリル樹脂組成物をダイスプレートに供給する前に、ポリマーフィルターで濾過を行うことが好ましい。ポリマーフィルターを押出成形機先端部に備え付けることで異物を効果的に除去することができる。ポリマーフィルターは、濾過精度が、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上3μm以下である。
【0047】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂ペレットの形状は、特に限定されない。例えば、円柱形、角柱形などが挙げられる。メタクリル樹脂ペレットのサイズは、用途に応じて異なるが、例えば、幅4mm以下、厚さ4mm以下および長さ5mm以下のもの、幅3mm以下、厚さ3mm以下および長さ4mm以下のものなどが挙げられる。ストランドは、カット不良品(長い樹脂片)、切り屑(樹脂粉)などができるだけ発生しない温度にてカットを行うことが好ましい。該温度はメタクリル樹脂のガラス転移温度を考慮して適宜設定される。ストランドを冷やす方法としては、空冷法、水冷法、冷媒冷却法、ミスト冷却法などが挙げられる。
【0048】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットに含まれるメタクリル樹脂の量は、メタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレット全体に対して、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
【0049】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットに含まれるメタクリル樹脂は、単量体(I)に由来する構造単位60〜90質量%、単量体(II)に由来する構造単位10〜40質量%、および単量体(III)に由来する構造単位0〜10質量%を有するもの、好ましくは単量体(I)に由来する構造単位74〜86質量%、単量体(II)に由来する構造単位12〜20質量%、および単量体(III)に由来する構造単位2〜6質量%を有するものである。
【0050】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットに含まれるメタクリル樹脂は、その重量平均分子量が、好ましくは35,000〜100,000、より好ましくは40,000〜90,000、さらに好ましくは45,000〜80,000、最も好ましくは60,000〜80,000である。重量平均分子量が35,000よりも小さいとメタクリル樹脂組成物から成る成形体の耐衝撃性や靭性が不十分となる傾向になり、100,000より大きいとメタクリル樹脂組成物の成形性が不十分となる傾向になる。
【0051】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットに含まれるメタクリル樹脂は、その重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量:以下、この比を分子量分布と表記することがある。)が、好ましくは1.7〜2.6、より好ましくは1.7〜2.3、さらに好ましくは1.7〜2.0である。メタクリル樹脂の分子量分布が小さいとメタクリル樹脂組成物の成形性が低下傾向になる。分子量分布が大きいと樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下傾向になり、脆くなりやすい。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。また、メタクリル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0052】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットに含まれるメタクリル樹脂は、そのガラス転移温度が、好ましくは100〜140℃、より好ましくは105〜135℃、さらに好ましくは110〜130℃である。ガラス転移温度が低いと耐熱性などが低下する傾向がある。ガラス転移温度が高いと成形性などが低下する傾向がある。
【0053】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは、前述の二量体および三量体の合計含有量が、0.3質量%以下、好ましくは0.25質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。二量体および三量体の合計含有量が少ないほど、イエロインデックスが小さい、透明な成形体を得やすい。なお、このような二量体および三量体はガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
【0054】
また、本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは、230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが、好ましくは5〜35g/10分、より好ましくは8〜30g/10分、さらに好ましくは10〜25g/10分である。なお、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレートの値である。
【0055】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルの含有量が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下、もっとも好ましくは0.4質量%以下である。メタクリル酸脂環式炭化水素エステルの含有量が上記範囲にあることで、イエロインデックスが小さく、シルバーや表面汚れなどの外観不良がない成形体が得やすくなる。なお、メタクリル酸脂環式炭化水素エステルの含有量はガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
【0056】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは、これから得られる成形体の寸法変化を抑制する観点から、飽和吸水率が1.6質量%以下であることが好ましく、1.4質量%以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、飽和吸水率は3日間以上真空乾燥した成形体の質量と、該成形体を温度60℃、湿度90%の条件下で300時間放置した後の質量との質量増加率として測定した値である。
【0057】
本発明の方法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットには、その他必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。該添加剤の配合量は、メタクリル樹脂に対して、それぞれ、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。添加剤の配合量が多すぎると、成形体にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。
添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、無機充填剤、無機繊維または有機繊維、鉱物油軟化剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、着色剤、艶消し剤、光拡散剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体、粘着剤、粘着付与剤、可塑剤、発泡剤などが挙げられる。
【0058】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用またはチオエーテル系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
【0059】
リン系酸化防止剤(またはチオエーテル系酸化防止剤)とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤(またはチオエーテル系酸化防止剤)/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、好ましくは1/5〜2/1、より好ましくは1/2〜1/1である。
【0060】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などが挙げられる。
【0061】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)などが挙げられる。
【0062】
チオエーテル系酸化防止剤としては、2,2−ビス{(3−ドデシルチオ−1−オクソプロポキシ)メチル}プロパン−1,3−ジイルビス(3−ドデシルチオプロピオネート)(ADEKA社製;商品名:アデカスタブAO−412S)、ヂトリデシル3,3’−チオジプロピオネート(ADEKA社製;商品名:アデカスタブAO−503)などが挙げられる。
【0063】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できる化合物である。例えば、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが挙げられる。
【0064】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、アニリド類が好ましい。
【0065】
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN234)などが挙げられる。
アニリド類としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などが挙げられる。
これら紫外線吸収剤の中でも、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類が特に好ましい。
【0066】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。例えば、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0067】
離型剤は、成形体を金型から離型し易くする機能を有する化合物である。例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらのうち、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、好ましくは2.5/1〜3.5/1、より好ましくは2.8/1〜3.2/1である。
【0068】
高分子加工助剤は、メタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる。高分子加工助剤は、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子であることが好ましい。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎるとメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットの溶融流動性の低下を招きやすい。
【0069】
耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;ゴム粒子を複数包含した改質剤などが挙げられる。
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
鉱物油軟化剤は、成形加工時の流動性を向上させるために使用される。例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどが挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。
【0070】
また、本発明の製法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体と混合して用いることができる。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メタクリル酸メチル−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0071】
本発明の製法によって得られるメタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを、射出成形(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)、圧縮成形、押出成形、真空成形、ブロー成形、インフレーション成形、カレンダ成形などの方法で加熱溶融成形することによって各種成形体を得ることができる。
【0072】
メタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットは成形の前に乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥法、除湿乾燥法、減圧乾燥法または低酸素乾燥法などが挙げられる。成形前の乾燥によって含有水分量を減らすと、シルバーなどの成形不良を減らすことができる。
【0073】
また、成形の前に、メタクリル樹脂ペレットからカット不良品および樹脂粉を取り除くことが好ましい。カット不良品は、ストランドをカットし損ねた結果として得られる長い樹脂片などである。樹脂粉は、ストランドをカットする際に発生する切り屑やペレットどうしが擦れてできる粉末などである。カット不良品および樹脂粉を取り除く方法は特に限定されない。例えば、遠心分離法、篩い分け法などが挙げられる。
【0074】
さらに、メタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットを成形機のホッパーへ移送する場合は、メタクリル樹脂組成物またはメタクリル樹脂ペレットの温度を、例えば、70℃以上に維持することが好ましい。温度を高くして移送すると、移送している間の吸湿やペレットどうしの擦れによる樹脂粉の生成を抑制できることがある。
【0075】
本発明の方法によれば板状成形体を効率的に得ることができる。該板状成形体は、厚さに対する樹脂流動長さの比が380以上のものであることが好ましい。また、該板状成形体は、厚さが1mm以下であることが好ましい。なお、樹脂流動長さは射出成形金型のゲートとゲートから最も離れた金型内壁との間の距離である。フィルムゲートにおける樹脂流動長さは、射出成形金型のスプルゥの取り付け部からゲートに対して引いた垂線の足(ゲートとの交点)、と該交点から最も離れた金型内壁との間の距離である(図1参照)。板状成形体を得るための金型のゲートはフィルムゲートであることが好ましい。フィルムゲートは切削機で切断し、ルータ等で仕上げ処理を行う。液晶表示装置に用いられる導光板を得るための金型では、光源を設置する予定の無い端面にゲートを設けることが好ましい。
【0076】
本発明の方法によって得られる板状成形体は、光路長200mmのイエロインデックス(YI)が、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。なお、イエロインデックスは、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z8722に準拠して測定した値を元にJIS K7373に準拠して算出した値である。
【0077】
本発明によって得られる板状成形体は、光路長3mmの波長435nmにおける透過率が、好ましくは90%以上、より好ましくは90.5%以上、さらに好ましくは91%以上である。
【0078】
板状成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。この中で、板状成形体は、導光板に好適である。
【0079】
板状成形体を面状光源素子の一つである導光板として用いる場合は、融着、接着、コーティング、印刷、射出成形、レーザー光による加工などの公知の手法によって、導光のための凹凸形状を板背面に形成してもよい。板端面から入射した光を、前記凹凸形状において反射、屈折などさせて、板正面に出射させることができる。凹凸形状としては、真円や楕円状のドットパターン、矩形やV溝のようなライン状パターン、半球レンズ状の凹凸、シボパターン等が挙げられる。これら凹凸形状は導光板の大きさや厚みにより最適な構造が異なるため一概には規定できないが、幅が1〜600μm、長さが2〜1200μm、高さまたは深さが1〜500μm、隣接する凹凸形状の間隔は2〜10000μmが好ましい。凹凸形状が大きすぎると目視により視認され、ディスプレイの品位が低下する、また小さすぎると加工が困難であり、生産性の低下してしまう。また隣接する凹凸形状の間隔が2μmより狭いと隣接する凹凸を独立して成形することが困難となり、成形不良が生じやすくなる。10000μmより広いと凹凸部の個数を増やすことが出来ない。凹凸部が光を出射させる機能を有しているため、凹凸部の個数制限は、導光板端面から入射した光のうち有効に出射する光の割合である、利用率の制限を生じてしまう。これら凹凸形状は一枚の導光板内で同一形状でもよいし、異なる形状を組み合わせて形成してもよいし、同一形状でサイズの異なるパターンを配置してもよい。さらに導光板の端面に隣接して配置される光源との距離に応じて、凹凸の間隔、大きさを変調してもよい。
【0080】
また、凹凸形状の形成に替えて白色反射材を導光板背面に印刷してもよい。白色反射材の大きさは、500μm〜5000μmであることが好ましい。500μmより小さいと既存のスクリーン印刷等での白色反射材の印刷が困難になる。5000μmより大きいと拡散シート等を通してみた場合でも白色反射材が視認され、ディスプレイの品位が低下してしまう。また反射材の間隔は1000〜5000μmが好ましい。間隔が1000μmより狭いとスクリーン印刷等で隣接する白色反射材が重なり合い不良を発生する。5000μより広いと拡散シート等を通してみた場合でも白色反射材間の暗部が視認され、ディスプレイの品位が低下してしまう。さらに導光板の端面に隣接して配置される光源との距離に応じて、白色反射材の間隔、大きさを変調してもよい。また導光板の光が出射する面(板正面)にもプリズムや円弧状のライン状凸部を同様の手段により形成してもよい。バックライトとして使用する場合には、導光板の背面側に反射シート、導光板の正面側に拡散シートおよび/またはプリズムシートを適宜配置してもよい。
【0081】
本発明の成形品を各種ディスプレイの前面板として用いることができる。係る前面板は、樹脂組成物を加熱溶融させ押出成形、射出成形、などの一般的な成形方法により得ることが可能である。
前記前面板が用いられるディスプレイ装置は、特に限定されず、例えば、大画面テレビや広告用ディスプレイなどの大型ディスプレイ装置;携帯電話やスマートフォンのような中小型ディスプレイ装置などが挙げられる。
さらに前記前面板は、平面状に限られず曲面形状を有しても良い。前記曲面形状は一方向に湾曲した形状であってもよいし、複数の方向に湾曲した形状であっても良い。前記前面板を曲面形状とするために、前記板状成形体は、フレキシブル特性を有してもよいし、予め所望の曲面形状に成形されていてもよい。
【0082】
また、本発明の成形品は、表面にスプレーコートやディップコートなどの方法でハードコートした状態で前記した種々の用途に用いてもよい。ハードコートすることで表面の鉛筆硬度が高くなり傷つき難くなる。またハードコート以外に、アンチグレア層やアンチリフレクション層、電磁波や紫外線や近赤外線等をカットする層等の機能層を設けてもよい。
本発明の成形品は、他の機能フィルムや機能シートと接着層や粘着層を介して積層してもよく、フィルムインサート成形により積層してもよい。前記機能フィルムや機能シートとしては、導光板や拡散板、飛散防止フィルム、透明導電フィルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0084】
実施例および比較例で得られたメタクリル樹脂組成物の物性および板状成形体の特性は以下の方法によって実施した。
【0085】
(重合転化率、含有揮発分)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 INERT CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、下記分析条件にて分析を行い、それに基づいて算出した。
<分析条件>
injection温度:250℃
detector温度:250℃
カラム温度条件:
初期温度 :60℃
初期温度保持時間:5分間
昇温速度 :10℃/分
最高温度 :250℃
最高温度保持時間:10分間
【0086】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn))
重量平均分子量(Mw)および分子量分布はGPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:0.35ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0087】
(メルトフローレート)
実施例および比較例で得られたメタクリル樹脂組成物のメルトフローレートを、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
【0088】
(飽和吸水率)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を、シリンダ温度280℃、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形して、長さ290mm、幅100mm、厚さ2mmの試験片を得た。温度50℃、5mmHgの条件下において3日間試験片を真空乾燥させ、絶乾時の試験片の質量W0を測定した。その後、絶乾試験片を温度60℃、湿度90%の条件下で300時間放置した。その後、試験片の質量W1を測定した。下式により飽和吸水率(%)を算出した。
飽和吸水率(%)={W1−W0}/W0×100
【0089】
(板状成形体の外観)
実施例および比較例で作製した板状成形体の外観を肉眼で観察した。表面汚れ、割れなどの外観不良の有無で評価した。
A: 良好
B: 表面汚れ有り
C: 割れ有り
【0090】
(イエロインデックス)
実施例および比較例で用いた単量体混合物のイエロインデックスを、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z−8722に準拠して測定した値を元にJIS K7373に準拠して算出した。
実施例および比較例で作製した板状成形体から長さ200mmの試験片をそれぞれ切り出し、これら試験片の光路長200mmのイエロインデックスを、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE−2000を用い、JIS Z−8722に準拠して測定した値を元にJIS K7373に準拠して算出した。
【0091】
(光線透過率)
実施例および比較例で作製した板状成形体から光路長200mmの試験片および光路長3mmの試験片をそれぞれ切り出し、波長435nmの光の光路長200mmおよび光路長3mmにおける透過率をそれぞれ測定した。
【0092】
(寸法変化率)
実施例および比較例で作製した板状成形体を60℃の恒温器に入れて大気中で4時間放置した。恒温器から板状成形体を取り出して、長さ方向の寸法を測定した。恒温器に入れる前の長さ方向の寸法(205mm)からの寸法変化率を算出した。
【0093】
(板状成形体の耐衝撃性)
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、実施例1〜3および比較例1〜6で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物をシリンダ温度230℃、金型温度65℃、成形サイクル0.5分で射出成形して、または比較例8で得られた板状成形体を切り出して、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製し、ISO179−1に準拠し、ノッチ無しのシャルピー衝撃強度を測定した。
【0094】
以下、メタクリル酸ジシクロペンタニルをTCDMA、メタクリル酸イソボルニルをIBXMA、メタクリル酸メチルをMMA、アクリル酸メチルをMA、n−オクチルメルカプタンをn−OM、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)をAIBNと表記する。
【0095】
実施例1
攪拌機および採取管付オートクレーブに、精製されたMMA78質量部、TCDMA20質量部、およびMA2質量部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物のイエロインデックスは0.9であった。単量体混合物に重合開始剤(AIBN、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.006質量部および連鎖移動剤(n−OM)0.37質量部を加え溶解させて原料液を得た。窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
前記原料液を、オートクレーブから、温度140℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように、一定流量で供給して、塊状重合させた。反応器の採取管より反応液を分取し、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、重合転化率は57質量%であった。
【0096】
反応器から排出される液を250℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に一定流量で供給し、押出機入口で断熱フラッシュさせた。断熱フラッシュによって蒸発した揮発分(単量体、二量体、三量体など)をオープンベントから排出させた。断熱フラッシュで二軸押出機に導入された液はスクリュで練られ、それによって該液から揮発分を蒸発させ、蒸発した揮発分を二軸押出機ベントから排出させた。前記断熱フラッシュと二軸押出機ベントでの脱揮により得られた溶融状態のメタクリル樹脂組成物は二軸押出機出口からストランド状に押し出された。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。TCDMAの含有量は0.4質量%であった。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の物性を測定した。
【0097】
上記ペレット状のメタクリル樹脂組成物を、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE−180DU−HP)を使用し、シリンダ温度280℃、金型温度75℃、成形サイクル1分で射出成形して、長さ205mm、幅160mm、厚さ0.5mmの板状成形体を製造した。厚さに対する樹脂流動長さ(190mm)の比が380である。
得られた板状成形体の特性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0098】
実施例2
MMAの量を73質量部に、TCDMAの量を23質量部に、MAの量を4質量部に、n−OMの量を0.33質量部に変え、樹脂製造条件を表1に示した値に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0099】
実施例3
MMAの量を83質量部に、TCDMAの量を15質量部に、MAの量を2質量部に、n−OMの量を0.38質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0100】
実施例4
TCDMAをIBXMAに変え、n−OMの量を0.36質量部に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0101】
比較例1〜4
表1および2に示す合成条件および樹脂製造条件に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。これらのペレット状のメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に成形し、特性を測定した。これらの結果を表1および2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
比較例5
表2に示す合成条件および樹脂製造条件に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
このペレット状のメタクリル樹脂組成物を270℃に制御された二軸押出機に一定速度で供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分が分離除去されて、樹脂成分がストランド状に押し出された。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た(リペレット)。TCDMAの含有量は0.7質量%であった。リペレットされたメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0105】
比較例6
表2に示す合成条件および樹脂製造条件に変えた以外は実施例1と同じ手法によって、ペレット状メタクリル樹脂組成物を得た。
このペレット状メタクリル樹脂組成物20質量部とトルエン80質量部の溶液を調製し、該溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿させ、粉末状のメタクリル樹脂組成物を得た。
該粉末状のメタクリル樹脂組成物を230℃に制御された単軸押出機に一定速度で供給し、押し出されたストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た(リペレット)。TCDMAの含有量は0.2質量%であった。リペレットされたメタクリル樹脂組成物の物性を実施例1と同じ手法で測定した。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0106】
比較例7
MMA83質量部、TCDMA15質量部、およびMA2質量部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物のイエロインデックスは0.9であった。単量体混合物に重合開始剤(AIBN、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部、および0.4質量部の連鎖移動剤(n−OM)を加え、溶解させて原料液を得た。
100質量部のイオン交換水、0.03質量部の硫酸ナトリウムおよび0.46質量部の懸濁分散剤を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、420質量部の前記混合液と210質量部の前記原料液を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状の微粒子が分散した分散液を得た。
得られた分散液を濾過し、微粒子をイオン交換水で洗浄したのち、80℃で4時間、100Paで減圧乾燥し、ビーズ状の共重合体を得た。
得られた共重合体を230℃に制御された単軸押出機に供給して、未反応単量体などの揮発成分を分離除去し、次いで樹脂成分を押出成形してストランドにした。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様に板状成形体を作製し、特性を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0107】
比較例8
MMA73質量部、TCDMA25質量部、およびMA2質量部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物のイエロインデックスは0.9であった。単量体混合物に重合開始剤(AIBN、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
かかる原料液を、撥水処理したガラス板(厚さ10mm、30cm角)2枚と塩化ビニル樹脂製ガスケットより構成されるガラスセルに注入し、760mmHgにて3分間脱気した。このガラスセルを70℃にて2時間、次いで120℃にて2時間、重合させ、ガラス板を取り除くことにより、厚さ0.5mmの板状成形体を作製したところ、取り出し時に板状成形体が割れ、またその板厚精度は低かった。
上記と同様の重合条件にて厚さ2mmおよび4mmの板状成形体を作製し、得られた板状成形体からそれぞれ光線透過率評価用に長さ290mm、幅100mm、厚さ2mmの試験片および耐衝撃性評価用に長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を切り出して、樹脂組成物の物性および板状成形体の特性の評価を行った。得られた板状成形体は、非常に高分子量体であるため溶媒に溶解せず、膨潤するのみであった。そのため、分子量の測定はできなかった。推定重量平均分子量は100万g/mol以上である。これらの結果を表2に示す。
【0108】
以上の結果が示すとおり、本発明に係る板状成形体は、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、且つ外観良好である。
【符号の説明】
【0109】
1 スプルゥ; 2 ランナー; 3 ゲート;
4 樹脂流動長さ;

21 反応器; 11 MMAタンク; 12 MAタンク;
13 n−OMタンク; 14 開始剤MMA溶液タンク;
18 窒素ガス混合器; 23 ベント付押出機;
22 加熱用熱交換器; P ペレット状樹脂組成物
図1
図2