(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キャリア芯材と、平均粒径が300μm以上3mm以下のカーボン粒子と、前記カーボン粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径の熱可塑性樹脂とを、カーボン粒子の含有率が前記熱可塑性樹脂に対して5質量%以上7質量%以下となるように混合する混合工程と、
混合工程の後に、撹拌しながら衝撃力を与えて、キャリア芯材の表面に熱可塑性樹脂を付着させるとともに、平均粒径が300μm以上3mm以下の前記カーボン粒子を解砕しながら付着させて乾式で被覆層を形成する樹脂被覆工程と、
前記被覆層が形成されたキャリア芯材を加熱処理する加熱処理工程と
を有することを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、ゴースト現象は、感光体にトナーが移動した後(現像後)に現像ローラ上に残っている樹脂被覆キャリア(以下、単に「キャリア」と記すことがある。)の有する電荷(カウンターチャージ)によって引き起こされていることを突き止めた。すなわち、現像後のキャリアは、現像ローラから剥離され現像装置内で再びトナーと混合される必要があるところ、キャリアにカウンターチャージが発生することでキャリアと現像ローラとの間に鏡像力が生じ、現像ローラからのキャリアの剥離が難しくなり、トナー濃度の低下した現像剤が再び現像領域に搬送されることによってゴースト現象が起こる。そこで、本発明者らは、このキャリアのカウンターチャージを低減させるためには、キャリアの表面にキャリア芯材を露出させればよいことを見出し、前述のように既に提案も行っている。
【0025】
しかしながら、キャリア芯材の表面を凹凸形状としたり形状を異形化することによってキャリアの表面にキャリア芯材を露出させる手段では、キャリアの流動性の低下が懸念される。そこで、樹脂被覆キャリアの表面にキャリア芯材を露出させることなく電気抵抗を低く抑えることができないか鋭意検討を重ねた。その結果、キャリア芯材の表面を覆う被覆樹脂の電気抵抗を下げればよいのではないかとの着想をまず得た。ところが、被覆樹脂の電気抵抗を単に下げるだけでは、感光体にキャリアが付着するキャリア現像が起こりやすくなる。そこで、樹脂被覆層の表面側だけ電気抵抗を下げて、キャリアのカウンターチャージの低減を図ればよいとのさらなる着想を得て本発明をなすに至った。
【0026】
本発明では、樹脂被覆層の電気抵抗を下げるため樹脂被覆層にカーボン粒子を所定量含有させる。そして、樹脂被覆層の表面側の電気抵抗を選択的に下げるために、カーボン粒子は樹脂被覆層の表面側に主として存在させる。しかし、厚さ数μm程度の樹脂被覆層におけるカーボン粒子の存在位置を直接的に測定することは困難であるため、本発明では、電圧1000Vを印加したときの電気抵抗と絶縁破壊電圧とを測定することで、樹脂被覆層におけるカーボン粒子の存在位置の指標とした。
【0027】
図1に樹脂被覆層の断面図を示す。同図に示すように、カーボン粒子は1次粒子が複数連結した一次凝集体を形成している。カーボン粒子の1次粒子同士が接触している部分は電気抵抗は低く、1次粒子間に被覆樹脂が介在している部分は電気抵抗が高くなる。したがって、カーボン粒子が樹脂被覆層の表面側に局在していると、電圧1000Vを印加したときの電気抵抗は低くなる一方、樹脂被覆層のキャリア芯材側は大半が樹脂から構成されるため電気抵抗は高く維持され絶縁破壊電圧は所定値以上となる。
【0028】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明では、樹脂被覆層の電気抵抗を下げるため、樹脂被覆層にカーボン粒子を5質量%以上7質量%以下含有させる。前述のように、樹脂被覆層の表面側の電気抵抗を選択的に下げるために、カーボン粒子は樹脂被覆層の表面側に主として存在させる。カーボン粒子の樹脂被覆層における存在領域の制御は、キャリアの製造方法によって行うことができる。詳細は後述する。樹脂被覆層におけるカーボン粒子の含有量が5質量%未満であると、キャリアの電気抵抗が下がらずカウンターチャージの低減が図れない。一方、樹脂被覆層におけるカーボン粒子の含有量が7質量%を超えるとキャリア現像が生じやすくなる。
【0029】
顆粒状のカーボン粒子とは、カーボン一次粒子の凝集体(数十nm)がさらに凝集された状態(顆粒状)である。顆粒状のカーボン粒子は平均粒径が300μm以上3mm以下である。なお、平均粒径が数十nm以上300μm未満は粉末状のカーボン粒子としている。後述するように、本発明のキャリアの製造方法では顆粒状のカーボン粒子を解砕しながらキャリア芯材に乾式で付着させる。本発明で好適に使用する顆粒状のカーボン粒子は、大きさが1μm程度の一次凝集体をさらに凝集させて大きさが1mm〜3mm程度の顆粒状としたものである。
【0030】
本発明で使用できるカーボン粒子としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック)を始め、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、黒鉛などを挙げることができ、これらを物理的、化学的処理した物質の何れを用いてもよい。
【0031】
本発明のキャリアでは、電圧1000Vでの電気抵抗が1.0×10
12Ω・cm以下であることが重要である。キャリアの電気抵抗をこのように低くすることで、カウンターチャージが低減されてゴースト現像などの画像濃度不足が抑制される。前記電気抵抗のより好ましい上限値は3.0×10
11Ω・cmである。また、前記電気抵抗の好ましい下限値は2.0×10
11Ω・cmである。
【0032】
また、本発明のキャリアでは、絶縁破壊電圧は1200V以上であることも重要である。絶縁破壊電圧が1200V未満であるとキャリアが感光体に付着するキャリア現像が生じて画質の低下を招く。より好ましい絶縁破壊電圧は1400V以上である。
【0033】
本発明で使用するキャリア芯材の組成に特に限定はないが、磁気特性や耐久性、軽量性などの観点からはフェライト粒子が好ましい、フェライト粒子としては、例えば、一般式M
XFe
3−XO
4(但し、MはMg,Mn,Cu,Zn,Niなどの金属,0<X<1)で表される組成の粒子が挙げられる。Sr、Ti,Caも含まれていてもよい。これらの中でもMnフェライト粒子及びMnMgフェライト粒子が好適に使用される。
【0034】
本発明で使用するキャリア芯材の粒径に特に限定はないが、体積平均粒子径で10μm以上50μm以下の範囲が好ましく、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
【0035】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂は熱可塑性樹脂であれば従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。なお、本発明におけるキャリア芯材表面への密着性の点で(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が特に好ましい。
【0036】
また、後述する乾式被覆法によってキャリア芯材の表面を樹脂被覆する場合には、使用する被覆樹脂の性状としては平均粒径が数百μm程度の粉末状であるのが望ましい。
【0037】
キャリア芯材を樹脂被覆する方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法、乾式被覆法等を用いることができる。これらの中でも、一回の処理で樹脂被覆層の表面側にカーボン粒子を局在させ得る点で乾式被覆法が好ましい。本発明の係るキャリアの製造方法について以下説明する。
【0038】
(キャリアの製造方法)
本発明に係るキャリアの製造方法では、乾式でキャリア芯材の表面に樹脂被覆層を形成可能であることと、カーボン粒子を樹脂被覆層の表面側に局在させ得ることが特徴な効果である。
【0039】
まず、混合工程として、キャリア芯材と、粉末状の熱可塑性樹脂と、顆粒状のカーボン粒子とを混合する。ここで、熱可塑性樹脂は平均粒径が百μm程度、カーボン粒子は平均粒径が300μm以上3mm以下の二次凝集体である顆粒状のものを使用する。すなわち、熱可塑性樹脂の平均粒径はカーボン粒子(二次凝集体)の平均粒径よりも小さくなるようにする。
【0040】
次に、樹脂被覆工程として、撹拌しながら衝撃力を与えて、キャリア芯材の表面に熱可塑性樹脂及びカーボン粒子を付着させる。キャリア芯材表面への付着は粒径が小さいほど起こりやすい。樹脂被覆工程の初期段階では、熱可塑性樹脂の平均粒径の方が顆粒状のカーボン粒子の平均粒径よりも小さいので、キャリア芯材の表面には熱可塑性樹脂が優先的に付着する。そして、撹拌や衝撃力によってカーボン粒子が熱可塑性樹脂と同等あるいはそれ以下の平均粒径まで解砕されると、熱可塑性樹脂と共にカーボン粒子がキャリア芯材の表面に付着し始める。キャリア芯材表面に付着した熱可塑性樹脂は衝撃力によって固着し樹脂被覆層を形成するようになる。
【0041】
平均粒径が300μm以上3mm以下の顆粒状のカーボン粒子を用いると、キャリア芯材の表面に付着し始める時期が熱可塑性樹脂よりも遅くなる結果、キャリア芯材の表面に形成される樹脂被覆層においてカーボン粒子は表面側に多く存在するようになる。
図2に、本発明の製造方法で作製したキャリアの部分断面SEM写真の模写図を示す。
図2において、斜線部がキャリア芯材、グレー部が樹脂被覆層、黒点部がカーボン粒子(カーボンブラック)である。この図から理解されるように、カーボン粒子は樹脂被覆層において表面側に主として存在している。
【0042】
樹脂被覆層におけるカーボン粒子の存在領域の制御は、熱可塑性樹脂の平均粒径に対する顆粒状のカーボン粒子の平均粒径、樹脂被覆工程に用いる混合撹拌装置の混合撹拌速度などにより行うことができる。例えば、熱可塑性樹脂の平均粒径に対して顆粒状のカーボン粒子の平均粒径が大きいほど、顆粒状のカーボン粒子の解砕に時間を要し、キャリア芯材にカーボン粒子が付着し始めるのが遅くなり、カーボン粒子は樹脂被覆層のより表面側に存在するようになる。
【0043】
次いで、加熱処理工程として、前記樹脂被覆層が形成されたキャリア芯材を加熱処理する。樹脂被覆層が形成されたキャリア芯材を加熱処理することで、熱可塑性樹脂の剥がれによって生じるキャリア現像を抑制することができる。加熱処理前は熱可塑性樹脂粉末同士が物理的に付着している状態であるが、加熱処理を行うことで熱可塑性樹脂粉末が溶融状態となり隣接する熱可塑性樹脂粉末同士と接合した状態となり樹脂被覆層の強度が向上する。
【0044】
加熱処理工程は撹拌下において行うのが好ましく、樹脂被覆工程から加熱処理工程へは連続して行うことができる。すなわち、撹拌によって樹脂被覆を行った後、そのまま撹拌を続けながら昇温して加熱処理を行ってもよい。もちろん、樹脂被覆工程と加熱処理工程とを不連続としても構わない。例えば、樹脂被覆処理が完了したキャリアを混合撹拌装置から取り出し、再び熱可塑性樹脂及びカーボン粒子と混合させた後、加熱処理を行うようにしてもよい。
【0045】
加熱処理工程における加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂の溶融温度以上であるのが望ましく、通常、90℃以上140℃以下の範囲が好ましい。また加熱処理時間は、30分以上300分以下の範囲が好ましい。
【0046】
加熱処理工程後キャリアを冷却し、必要により磁力選別機にかけて非磁性粒子を除去する。
【0047】
樹脂被覆層の層厚としては特に限定はないが、通常、0.5μm以上2.0μm以下の範囲が好ましい。
【0048】
乾式で樹脂被覆層を形成するのに用いる撹拌装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー(カワタ社製)、ハイブリタイザー(奈良機械社製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック社製)、V型混合機、タンブラーミキサーなどが挙げられる。
【0049】
以上説明したキャリア芯材表面の乾式による樹脂被覆処理は複数回に分けて行ってもよい。例えば、前半の樹脂被覆処理では被覆樹脂に対するカーボン粒子の配合量を少なくし、後半の樹脂被覆処理では被覆樹脂に対するカーボン粒子の配合量を多くすると、形成される樹脂被覆層はカーボン粒子が表面側に多く存在するようになる。より現実的には、1回目の樹脂被覆処理ではカーボン粒子を配合せず熱可塑性樹脂だけをキャリア芯材表面に付着させる。そして2回目の樹脂被覆処理でカーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混合してキャリア芯材表面に付着させる。このような2段階の樹脂被覆処理によれば、カーボン粒子は確実に表面側にだけ存在するようになる。
【0050】
キャリアの平均粒径は、一般に、体積平均粒径で10μm以上50μm以下の範囲が好ましい。
【0051】
キャリアの最大高さRzは1.3μm未満であるのが好ましい。キャリアの最高高さRzが1.3μm以上であると、キャリアの流動性が低下する虞があるからである。より好ましい粒子の最高高さRzは1.1μm以下である。
【0052】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%〜15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0053】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0054】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm以上15μm以下の範囲が好ましく、7μm以上12μm以下の範囲がより好ましい。
【0055】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0057】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。
図3に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。
図3に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0058】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0059】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N
1、搬送磁極S
1、剥離磁極N
2、汲み上げ磁極N
3、ブレード磁極S
2の5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極N
3の磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0060】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5〜5kVの範囲が好ましく、周波数は1〜10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0061】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極S
1によって装置内部に搬送され、剥離電極N
2によって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。本発明のキャリアを用いた現像剤では、剥離電極N
2による現像ローラ3からの剥離が円滑に行われる。そして汲み上げ極N
3によって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。これにより、画像濃度ムラが防止される。
【0062】
なお、
図3に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0064】
(キャリア芯材の製造)
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)17.13kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)6.69kgを純水6.2kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを156g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を148g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を電気炉に投入し1150℃まで4.5時間かけて昇温し、1150℃で3時間保持し、その後室温まで8時間かけて冷却した。昇温時、保持時及び冷却時の酸素濃度は5000ppmとした。
得られた焼成物を振動ふるいで分級することにより体積平均粒径40.0μmの球状のキャリア芯材を得た。
【0065】
(実施例1)
前記作製したキャリア芯材2500g、スチレン−アクリル樹脂粉末(平均粒径:100μm)88.75g、顆粒状カーボンブラック(平均粒径:2.2mm、一次凝集体の平均粒径:1μm、一次粒子の平均粒径:50nm)4.4gをハイスピードミキサー(深江パウテック社製)に投入し、100rpmで10分間混合した。その後、樹脂被覆工程として、撹拌羽根の回転数を495rpmに上げ15分間撹拌した。次いで、加熱処理工程として撹拌羽根の回転数を維持しながら温度を105℃に昇温し50分間保持した。次に、撹拌羽根の回転数を維持しながら冷却速度5℃/minで50℃まで冷却した。その後、磁選処理しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
顆粒状カーボンブラックの添加量を5.3gに変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
顆粒状カーボンブラックの添加量を5.8gに変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
(
参考例)
顆粒状カーボンブラックの添加量を6.2gに変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
カーボンブラックを添加しない以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
顆粒状カーボンブラックの添加量を3.1gに変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0071】
(比較例3)
顆粒状カーボンブラックの添加量を6.7gに変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0072】
(比較例4)
顆粒状カーボンブラックの代わりに粉末状カーボンブラック(平均粒径:30μm、一次凝集体の平均粒径:1μm、一次粒子の平均粒径:50nm)4.4gを添加した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0073】
(比較例5)
顆粒状カーボンブラックの代わりに粉末状カーボンブラック(平均粒径:30μm、一次凝集体の平均粒径:1μm、一次粒子の平均粒径:50nm)6.2gを添加した以外は実施例1と同様にしてキャリア芯材表面を樹脂被覆しキャリアを得た。
得られたキャリアの電気特性、磁気特性、粉体特性、印刷特性を下記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0074】
(被覆樹脂中のカーボン粒子の含有量)
有機溶剤(メチルエチルケトン)40gに対してキャリア1gをガラス製の試験管に入れ、撹拌ローターを用いて10分間撹拌して被覆樹脂層を溶解させた。キャリア芯材が溶液に混入しないようするため磁石を用いてキャリア芯材を試験管の底面に固定化した後、カーボンフィラーが分散した懸濁液を分取した。既知のカーボン濃度の標準液から吸光度に対するカーボン濃度の検量線を作成し、懸濁液の吸光度を測定することでカーボン量Aを求めた。また、被覆樹脂層を溶解させた後のキャリア芯材を十分乾燥させ、溶解操作における重量減少分を被覆樹脂量Bとした。樹脂中のカーボン量は樹脂量Bに対するカーボン量Aの比率から算出した。
【0075】
(電気抵抗)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mm
2の磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に1000Vの直流電圧を印加し、キャリアを流れる電流値を4端子法により測定した。その電流値と、電極間距離2mmおよび断面積240mm
2からキャリアの電気抵抗を算出した。
電気抵抗値=実測抵抗値×断面積(240mm
2)÷電極間距離(2mm)
【0076】
(絶縁破壊電圧,BD)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が1mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mm
2の磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に直流電圧を50V〜2000Vまで50Vごとに段階的に印加して行き、抵抗値が10
4Ω・cm未満となった電圧を絶縁破壊電圧とした。
【0077】
(帯電量)
キャリア9.5g、市販のフルカラー機のトナー0.5gを100mlの栓付きガラス瓶に入れ、25℃、50%の環境下で12時間放置して調湿する。調湿したキャリアとトナーを振とう機((株)ヤヨイ製、NEW−YS型、条件;200回/分、角度60°)で30分間、振とう、混合する。混合したキャリアとトナーを200mg計量し、測定装置(日本パイオテク(株)製、STC−1−C1型、条件;吸引圧力5.0kPa、吸引用メッシュ500meshのSUS網)で帯電量を評価する。同一のサンプルを2回評価し、その帯電量の平均値を帯電量とした。
【0078】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10
4A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、残留磁化σ
r、保磁力Hc及び79.58×10
3A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ
1k(Am
2/kg)をそれぞれ測定した。
【0079】
(見掛密度,AD)
キャリアの見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0080】
(流動度,FR)
キャリアの流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0081】
(最大山谷深さRz)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK−X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにキャリアを固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。キャリアを固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせキャリア表面の3次元形状を得た。なお、キャリア表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたキャリア表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100〜35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として一辺の長さが15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
キャリアは略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
また、解析に用いるキャリアの平均粒子径については32〜34μmに限定した。このように測定対象となるキャリアの平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。
【0082】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0083】
以上説明した最大高さRzの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0084】
(現像剤の作製)
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。
【0085】
(実機評価)
図3に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入し、初期、1k印刷後、10k印刷後にそれぞれ評価用画像を各3枚印刷し、ゴースト現像、画像濃度、キャリア現像を下記の手順及び基準で評価した。
【0086】
ゴースト現像
前記評価機による評価用画像3枚について1枚当たり5カ所の濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC−6D)を用いて測定し下記基準で評価した。
「○」:濃度の濃淡差の最大が0.3未満あり、濃度ムラが視認できない。
「×」:濃度の濃淡差の最大が0.3以上であり、濃度ムラが視認でき使用できない。
【0087】
画像濃度
前記評価機による評価用画像3枚について1枚当たり5カ所の明度をカラーメーター(日本電色工業製ZE2000)を用いて測定し平均値をもって下記基準で評価した。
「○」:54未満
「×」:54以上
【0088】
キャリア現像
前記評価機によって白紙画像の現像を実施し、画像部における当該キャリアの個数によって、下記基準で評価した。
「○」:29個以下
「×」:30個以上
【0089】
【表1】
【0090】
顆粒状のカーボンブラックを用い、その含有量を5.0質量%から7.0質量%まで段階的に増やして作製した実施例1〜
3のキャリアでは、電圧1000Vでの電気抵抗及び絶縁破壊電圧はカーボンブラックの含有量を増やすほど低下したが、いずれもが本発明の規定範囲を満足し、印刷特性評価においてゴースト現像及びキャリア現像は生じることがなく、画像濃度も良好であった。
【0091】
これに対して、カーボンブラックを樹脂被覆層に含有しなかった比較例1のキャリアでは、電圧1000Vでの電気抵抗が高くゴースト現像が発生した。また、比較例2のキャリアでも、カーボンブラックの含有量が3.5質量%と少なかったため、電圧1000Vでの電気抵抗が高くゴースト現像が発生した。また画像濃度も低かった。
【0092】
比較例3のキャリアでは、カーボンブラックの含有量が7.5質量%と多かったため、絶縁破壊電圧が400Vと極端に低くなり、電圧1000Vでの電気抵抗は測定不能であった。また、印刷特性評価ではキャリア現像が発生した。
【0093】
比較例4は、顆粒状のカーボンブラックを用いた実施例1に対する比較として粉末状のカーボンブラックを用いた場合であって、比較例4のキャリアでは、カーボンブラックが樹脂被覆層に均一分散したためカーボンブラックの含有用が不足し、電圧1000Vでの電気抵抗が1.0×10
14Ω・cmと高くなりすぎてゴースト現像が発生し画像濃度が低下した。
【0094】
比較例5は、比較例4よりも粉末状のカーボンブラックの含有量を多くした場合である。比較例5のキャリアでは、比較例4のキャリアよりも電圧1000Vでの電気抵抗は低くなったものの7.0×10
12Ω・cmと依然として高く、絶縁破壊電圧は1100Vと低くなり過ぎた。このため、印刷特性評価ではゴースト現像及びキャリア現像が発生した。
【課題】流動性の低下やキャリア現像を生じさせることなく電気抵抗を低く抑えることができ、ゴースト現象といった画像濃度不足を生じさせることのない樹脂被覆キャリアを提供する。
【解決手段】キャリア芯材の表面が熱可塑性樹脂で被覆されている樹脂被覆キャリアであって、樹脂被覆層にカーボン粒子が被覆樹脂に対して5質量%以上7質量%以下含有され、絶縁破壊電圧が1200V以上であり、電圧1000Vでの電気抵抗が1.0×10