(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)で表される化合物が、イソシアヌレートと一価アルコールのアルキレンオキサイド付加物との反応物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘性調整剤。
【背景技術】
【0002】
塗料用、インキ用、接着剤用及び粘着剤用等に用いられる樹脂エマルション(以下、樹脂エマルションとは溶媒に樹脂成分のみ含有した液体を指す)には、各種添加剤が加えられており、一般的に、液体の粘度と粘性を調整する粘性調整剤もその一つとして添加される場合が多い。これら用途の樹脂エマルション組成物(以下、樹脂エマルション組成物とは、樹脂エマルションに各種添加剤が含有している液体を指す)は、噴霧器で吹き付ける際の作業性向上の観点から、高シェア時には低粘度が、低シェア時には高粘度が求められる。なぜなら、噴霧器で吹き付ける際には低粘度の方が噴霧しやすく、噴霧して対象に付着した際には高粘度の方が「タレ」の問題が生じにくいからである。一般に、こうした粘性はチクソトロピック性と呼ばれる。ゆえに、用いる樹脂エマルション組成物にチクソトロピック性の粘性が得られないと、上記用途の作業性低下や製品外観の悪化に繋がる。
【0003】
既存のよく使用されている粘性調整剤の代表的なものとして、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の天然系粘性調製剤、ポリアクリル酸やポリアクリル酸含有コポリマー等のアルカリ増粘型粘性調製剤、また、イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物を反応させた、いわゆるウレタン型粘性調製剤等が挙げられる(例えば、特許文献1〜3を参照)。しかしながら、上記既存の粘性調整剤にはそれぞれ長所もあれば短所もあり、十分な性能を持ち併せているとは言い難い。
【0004】
例えば、天然系粘性調整剤やアルカリ増粘型粘性調整剤に関しては、これらを樹脂エマルション等の水系樹脂に添加すると、水系樹脂に対してチクソトロピック性の粘性を与えるが、水系樹脂を塗膜にした場合に、塗膜の耐水性が悪化するといった短所を持つ。また、ウレタン型粘性調整剤に関しては、これを樹脂エマルション等の水系樹脂に添加すると、水系樹脂を塗膜にした場合の耐水性は良好であるが、一般的には水系樹脂に対してレベリング性の粘性を与え、チクソトロピック性の粘性は得られない。よってこれまでは、天然系粘性調整剤やアルカリ増粘型粘性調整剤と、ウレタン型粘性調整剤は併用されることが多く、互いの欠点を補う形で使用されてきた。
【0005】
近年、ウレタン型粘性調整剤の中には、これまでの短所を改善した、樹脂エマルション等に対してチクソトロピック性の粘性を与えるものが開発されてきている(例えば、特許文献4を参照)。しかしながら、従来品に比べ性能は向上しているものの、その効果が十分でない場合がある。特に、低シェア時の粘度が十分でないと上述のように水系樹脂の塗膜形成時に液だれ等不都合が生じるため、更なる高い低シェア粘度を提供する粘性調整剤が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の粘性調整剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0015】
(式中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して炭素数4〜16の二価の炭化水素基を表わし、R
4〜R
6は、それぞれ独立して炭素数12〜36の炭化水素基を表わし、x〜zは、それぞれ独立して10〜500の数を表わし、A
1〜A
3はそれぞれ独立して炭素数2〜4の二価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0016】
一般式(1)で表される化合物のR
1〜R
3は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の二価の炭化水素基を表わし、具体的には炭素数4〜16の脂肪族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜16の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基は、炭素数4〜16の範囲内であればいずれでも良いが、後に記載する一般式(3)で表されるジイソシアネート化合物から、2つのイソシアネート基を除いた基であることが好ましい。これについては、後に記載するジイソシアネート化合物の記載において詳しく説明する。
なお、本明細書中で表す「二価」とは、結合する箇所を二つ有することを表し、例えば、「二価の炭化水素基」とは、結合する箇所を二つ有する炭化水素基を表す。
【0017】
一般式(1)で表される化合物は、公知の合成方法であればどのような方法を用いて合成しても問題ないが、イソシアヌレートと一価アルコールのAO付加物(AOとは、アルキレンオキサイドの略)を原料に用い、合成する方法が、簡便かつ安価であり、好ましい。当該合成法において、イソシアヌレートもまた、公知の合成方法であればどのような方法を用いて合成しても問題ないが、ジイソシアネートの三量体として得る方法が簡便かつ安価であり、好ましい。本発明の粘性調整剤の好ましい原料として用いるイソシアヌレートは下記一般式(2)で表される化合物であり、そのイソシアヌレートの好ましい原料となるジイソシアネートは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0019】
(式中、R
1〜R
3は、それぞれ独立して炭素数4〜16の二価の炭化水素基を表わす。)
【0021】
(式中、Qは、それぞれ独立して二価の炭素数4〜16の炭化水素基を表わす。)
【0022】
一般式(3)で表されるジイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、及びデカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、2,6−ナフタレンジイソシアネート(2,6−NDI)、2,7−ナフタレンジイソシアネート(2,7−NDI)、2,2'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、及びジフェニルジメチルメタン−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添メタキシリレンジイソシアネート、水添パラキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;ビフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェニルジイソシアネート等のビフェニルジイソシアネートが挙げられる。一般式(2)で表されるイソシアヌレートは、一般式(3)で表される上記記載のジイソシアネートから得られるものであり、一般式(3)のQが一般式(2)及び一般式(1)のR
1〜R
3に対応する。これらの炭化水素基R
1〜R
3は、炭素数4〜16の範囲内であればいずれでも良いが、前述した通り、上記に例示したジイソシアネート化合物から、2つのイソシアネート基を除いた基であることが好ましい。
【0023】
R
1〜R
3はそれぞれ独立した基であり、上記記載のジイソシアネートであれば、どれを組み合わせて出来たイソシアヌレートであっても問題はないが、製造が容易なことから、同一のジイソシアネートの三量体として得たイソシアヌレートである方が好ましい。ジイソシアネートの中でも、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添メタキシリレンジイソシアネート、水添パラキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)が更に好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が最も好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される化合物のA
1〜A
3は、一般式(1)で表される化合物を合成する際に用いる原料である一価アルコールのAO付加物由来の基であり、炭素数2〜4の二価の脂肪族炭化水素基を表す。例えば、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1,1−ジメチルメチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、プロピルメチレン基及びイソプロピルメチレン基等が挙げられ、A
1〜A
3はそれぞれ独立した基となる。中でも、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1,1−ジメチルメチレン基、ブチレン基基が好ましく、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基がより好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0025】
一般式(1)で表される化合物のx〜zは、一般式(1)で表される化合物を合成する際に用いる原料である一価アルコールのAO付加物の、AOの付加重合度を表し、10〜500の間の、それぞれ独立した数である。また、x,y,zは異なる数であっても問題はないが、製造が容易なことから、同一の数である方が好ましく、10未満であるとエマルション等に溶解しない場合があり、500を超えると高い低シェア粘度効果が得られない。x〜zは、30〜350の数が好ましく、50〜300の数がより好ましく、50〜200が更に好ましい。
【0026】
ここで、一般式(1)で表される化合物のx個のA
1は、同一でも、異なっていてもよく、異なる場合は2種類以上であれば、ブロック重合、ランダム重合のいずれでも良い。y個のA
2及びz個のA
3にも同様のことが言え、また、x個のA
1、y個のA
2及びz個のA
3はそれぞれ独立しており、同一の組成であっても、異なっていても良い。この中でも、エチレン基の含有率が低いものほど樹脂エマルションへの溶解が困難になる場合があるため、x個のA
1、y個のA
2及びz個のA
3の全合計のうち、エチレン基が50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、95mol%以上が更に好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物のR
4〜R
6は、一般式(1)で表される化合物を合成する際に用いる原料である一価アルコールのAO付加物のアルコール由来の基であり、炭素数12〜36の炭化水素基を表わし、具体的には、炭素数12〜36の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を表す。こうした基として、飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ドデシル基、イソドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、2級テトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、2級ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、2級ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、2級オクタデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、2級ノナデシル基、イコシル基、イソイコシル基、2級イコシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、2級エイコシル基、ヘンイコシル基、イソヘンイコシル基、2級ヘンイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、2級ドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、2級トリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、2級テトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、2級ペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、2級ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基、2級ヘプタコシル基、オクタコシル基、イソオクタコシル基、2級オクタコシル基、ノナコシル基、イソノナコシル基、2級ノナコシル基、トリアコンチル基、イソトリアコンチル基、2級トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、イソヘントリアコンチル基、2級ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、イソドトリアコンチル基、2級ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、イソトリトリアコンチル基、2級トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、イソテトラトリアコンチル基、2級テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、イソペンタトリアコンチル基、2級ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、イソヘキサトリアコンチル基及び2級ヘキサトリアコンチル基等が挙げられ、2位分岐アルキル基としては、例えば、2−ヘキシルドデシル基、2−オクチルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基及び2−ヘキサデシルエイコシル基等が挙げられる。
【0028】
また、不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ドデセニル基、イソドデセニル基、2級ドデセニル基、トリデセニル基、イソトリデセニル基、2級トリデセニル基、テトラデセニル基、イソテトラデセニル基、2級テトラデセニル基、ペンタデセニル基、イソペンタデセニル基、2級ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、イソヘキサデセニル基、2級ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、イソヘプタデセニル基、2級ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、2級オクタデセニル基、ノナデセニル基、イソノナデセニル基、2級ノナデセニル基、イコセニル基、イソイコセニル基、2級イコセニル基、エイコセニル基、イソエイコセニル基、2級エイコセニル基、ヘンイコセニル基、イソヘンイコセニル基、2級ヘンイコセニル基、ヘンエイコセニル基、イソヘンエイコセニル基、2級ヘンエイコセニル基、ドコセニル基、イソドコセニル基、2級ドコセニル基、トリコセニル基、イソトリコセニル基、2級トリコセニル基、テトラコセニル基、イソテトラコセニル基、2級テトラコセニル基、ペンタコセニル基、イソペンタコセニル基、2級イソペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、イソヘキサコセニル基、2級ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、イソヘプタコセニル基、2級ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、イソオクタコセニル基、2級オクタコセニル基、ノナコセニル基、イソノナコセニル基、2級ノナコセニル基、トリアコンテニル基、イソトリアコンテニル基、2級トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、イソヘントリアコンテニル基、2級ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、イソドトリアコンテニル基、2級ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、イソトリトリアコンテニル基、2級トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、イソテトラトリアコンテニル基、2級テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、イソペンタトリアコンテニル基、2級ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、イソヘキサトリアコンテニル基及び2級ヘキサトリアコンテニル基等が挙げられる。
【0029】
芳香族炭化水素基には、単純芳香環からなる芳香族炭化水素基及び複素環からなる多環芳香族炭化水素基の両方が包含され、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基及びナフチル基等の一置換体又は二置換体が挙げられる。この芳香族炭化水素基の一置換体又は二置換体が置換基として有していてもよい炭化水素基としては、芳香族炭化水素基の一置換体又は二置換体全体としての全炭素数が12〜36であれば、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても問題はない。
【0030】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブテニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基及びシクロヘキセニル基等の一置換体又は二置換体が挙げられる。この単環性脂環式炭化水素基の一置換体又は二置換体が置換基として有していてもよい炭化水素基としては、単環性脂環式炭化水素基の一置換体又は二置換体全体としての全炭素数が12〜36であれば、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても問題はない。
【0031】
一般式(1)で表される化合物のR
4〜R
6は、それぞれ独立した基であり、異なっていても同一であっても良いが、製造が簡便なことから同一である方が好ましい。また、R
4〜R
6の炭化水素基中の全炭素数が12以下であると、高い低シェア粘度が得られない場合があり、36を超えると原料の入手が比較的困難となる。R
4〜R
6は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、2位分岐アルキル基又は2級アルキル基であることがより好ましく、炭素数が24〜32であることが更に好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物を合成する際に使用する原料である一価アルコールのAO付加物は、上記記載したR
4OH、R
5OH及びR
6OHに、前述したAOをそれぞれx、y及びz個付加重合させた化合物であり、これら化合物の分子量は、生成物の水酸基価(OHV)測定値から算出され、分子量として500〜30,000が好ましい。中でも、2,000〜15,000が好ましく、3,000〜8,000がより好ましい。
【0033】
本発明の樹脂エマルション組成物は、本発明の粘性調整剤を、水性系における樹脂エマルション(ラテックス)、あるいは分散体(サスペンション、ディスパージョン)等に含有させたものである。樹脂エマルションの樹脂成分として具体例に、酢酸ビニル系、アクリル系、スチレン系、ハロゲン化オレフィン系樹脂等が挙げられる。酢酸ビニル系として、酢酸ビニル単独の他、例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/ベオバ、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0034】
アクリル系として、例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N―ジメチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
スチレン系として、スチレン単独の他、例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン化オレフィン系として、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル及び塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。又、その他のエマルションとしては、例えば、ウレタン樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルジション、フッ素樹脂エマルション、SBRエマルション、SBエマルション、ABSエマルション、NBRエマルション、CRエマルション、VPエマルション、BRエマルション、MBRエマルション及びIRエマルション等が挙げられる。
【0037】
本発明で使用する樹脂エマルションは、上記に挙げた樹脂成分の固形分が樹脂エマルションの30〜80質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。30質量%以下若しくは80質量%以上であると本発明の粘性調整剤を配合した際、増粘・ゲル化効果が得られない場合がある。
【0038】
樹脂エマルションは、一般的に、アニオン、カチオン又は非イオン型の乳化剤を1種又は2種以上使用し、モノマーと水を乳化及び乳化重合して調整することができる。乳化剤の添加量は特に規定されないが、モノマー100質量部に対して約0.1〜6質量部が好ましい。過硫酸塩型の開始剤を使用する場合は、乳化剤は不要な場合もある。一般的に、これらの樹脂エマルションの平均分子量は特に規定されないが、約10万〜1500万が好ましく、50万〜1000万がより好ましい。
【0039】
本発明の粘性調整剤は、水に溶解あるいは分散して粘性調整効果を示し、その添加量は特に規定されないが、通常添加量は樹脂エマルション、分散体全体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.02〜5質量部がより好ましい。使用方法としては直接樹脂エマルション、分散体等に配合しても良く、また配合前に適当な粘度になるよう水あるいは溶剤で希釈してから配合することもできる。例えば、本発明の粘性調整剤を塗料用樹脂エマルションに対して使用する場合は、作業しやすくするため、本発明の粘性調整剤を水、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール等の1種又は2種以上の混合溶媒で希釈してから混練工程に添加してもよく、またその他いずれの工程に添加してもよい。
【0040】
なお、本発明の粘性調整剤を適当な粘度になるよう水あるいは溶剤で希釈してから樹脂エマルジョンに配合する場合、樹脂固形分100質量部に対して本発明の粘性調整剤が0.01〜34質量部になるよう配合することが好ましく、0.03〜13質量部になるよう配合することが更に好ましい。
【0041】
本発明の粘性調整剤は非イオン性であることから、アルカリ性である樹脂エマルションに対しても有効である。それらは消泡剤、顔料分散剤及び他の界面活性剤と同時に添加することが可能である。
【0042】
また、本発明の樹脂エマルション組成物は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防菌剤、殺虫殺菌剤、分散剤、消泡剤、消臭剤、香料、増量剤、染料及び顔料等を含有また混合してもよい。本発明の粘性調整剤が有効なその他の水性系用途には、紙、革及び繊維等用塗装剤、洗浄剤、接着剤、ワックス、磨き剤、化粧品、洗面用化粧品、医薬品及び農薬等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。
(化合物Aの合成方法)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量500mlの4つ口フラスコに、1molの2−テトラデシルオクタデカノールに150molのEOを反応させた化合物(Mw=7074)を342.2g(0.0484mol)、ジブチルヒドロキシトルエンを0.22g(全固形分の0.06wt%)仕込み、減圧下(1.3kPa以下)にて120から130℃で2時間脱水した。ついで75から80℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体であるヘキサメチレンジイソシアヌレート(Mw=505)を7.8g(0.0154mol)加え、窒素気流下80〜90℃ にて2時間反応させ、反応生成物を得た。これを化合物Aとする(R
1〜R
3:C
6H
12、R
4〜R
6:iC
32H
65、A
1〜A
3:C
2H
4、x〜z:150)。
化合物B〜Eは、化合物Aと同様の方法で、原料及び仕込み量を変えて製造したものであり、各化合物を製造する際に使用した原料とその仕込み量を表1に詳細に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(比較品I)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量500mlの4つ口フラスコに、1モルの2−テトラデシルオクタデカノール(iC32−OH)の150EO付加物340.5g(Mw=7074、0.0481mol)とジブチルヒドロキシトルエン0.22g(全固形分の0.06wt%)を仕込み、減圧下(1.3kPa以下)にて120から130℃で2時間脱水した。その後トリメチロールプロパン(TMP)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト型三官能型トリイソシアネート9.3g(Mw=639、0.0146mol)を加え、窒素気流下80〜90℃ にて2時間反応させ、得られた反応生成物を比較例Iとした。
【0046】
(比較品II)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量200mlの4つ口フラスコに、重量平均分子量10,000のポリオキシエチレングリコール100g(0.01モル)、2−オクチルドデシルアルコールのエチレンオキシド30モル付加物32.4g(0.02モル)を仕込み、そこへヘキサメチレンジイソシアネート3.4g(0.02モル)を加え、80〜90℃で3時間反応させた。得られたウレタン型粘性調整剤を比較例IIとした。
【0047】
(比較品III)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量500mlの4つ口フラスコに、重量平均分子量20,000のポリオキシエチレングリコール186.0g(0.009モル)、C12−14二級アルコ―ルのエチレンオキシド12モル付加物13.1g(0.018モル)を仕込み、そこへヘキサメチレンジイソシアネート3.0g(0.018モル)を加え、75〜85℃で2時間反応させた。得られたウレタン型粘性調整剤を比較例IIIとした。
【0048】
< 酢酸ビニルエマルションでの評価 >
化合物A〜C、比較品I及びIIを、酢酸ビニルエマルションに添加し、エマルションでの評価を行った。測定サンプルは、酢酸ビニルエマルション100質量部に対し、化合物A〜C、比較品I及びIIを表2に記載の添加量加え調製している。
まず、粘度測定を行い、Ti値を算出し各粘性調整剤のチクソトロピック性を調査した。結果を表2に示す。なお、粘度の大きさ(測定範囲)によって粘度計で使用するローターの種類が異なるため、各サンプルで使用したローターの種類も表2に示した。使用した酢酸ビニルエマルションは、日本合成化学工業株式会社のモビニール504N(樹脂固形分44質量%)である。
粘度測定条件
測定機器:B8H型粘度計(東京計器株式会社製)
測定温度:25℃
【0049】
【表2】
【0050】
ここで、Ti値について説明する。Ti値とは、これまで多くの特許文献において、チクソトロピック性を表すために使用されてきた指標であり、低シェアでの粘度が大きく、高シェアでの粘度が小さいほど大きい値を示し、チクソトロピック性が高いことを示す。しかしながらこの指標は、低シェアでの違いが見えにくく、高い低シェア粘度を持つ粘性調整剤か判断する指標として用いるにはその効果が見えにくい(表2の結果参照)。また、上記測定方法では高粘度であると測定が困難となる。そのため、実施例2では上記方法での粘度の測定は不可能であったが、実施例2では実施できないことを意味するわけではない(
図2参照)。
【0051】
そこで、次に、粘度とせん断速度の関係を表す粘性カーブを見ることで、低シェアでの粘度の高低を確認した。結果を
図1、2に示す。
図1は酢酸ビニルエマルション(水を含む)100質量部に対して粘性調整剤を1質量部添加したデータ、
図2は酢酸ビニルエマルション(水を含む)100質量部に対して粘性調整剤を2質量部添加したデータを示している。
粘性カーブ測定条件
測定機器:レオメータPhysica MCR301(AntonPaar 社製)
測定治具:CP50−1
測定温度:25℃
【0052】
結果、従来から粘性調整剤として使用されている比較品I、比較品IIに比べ、本発明のイソシアヌレートタイプの三官能型粘性調整剤(化合物A〜C)酢酸ビニルエマルションでの評価において、高い低シェア粘度を示すことがわかった。
【0053】
< アクリルエマルションでの評価 >
次に、化合物B、D及びE、比較品IIIを、アクリルエマルションに添加し、アクリルエマルションでの評価を行った。測定サンプルは、アクリルエマルション100質量部に対し、化合物B、D及びE、比較品IIIを表3に記載の添加量加え調製している。
まず酢酸ビニルエマルションでの評価と同様に、粘度の測定を行い、Ti値を算出し、各粘性調整剤のチクソトロピック性を調査した。結果を表3に示す。粘度によって各サンプルの使用ローターが異なり、それについても表3に示した。使用したアクリルエマルションは、日本合成化学工業株式会社のモビニール727(樹脂固形分50質量%)である。
粘度測定条件
測定機器:B8H型粘度計(東京計器株式会社製)
測定温度:25℃
【0054】
【表3】
【0055】
しかし、酢酸ビニルエマルションの評価において前述したとおり、Ti値は高い低シェア粘度を持つ粘性調整剤か判断する指標として用いるにはその効果が見えにくく、これはアクリルエマルションでも同様のことが言える。
そこで引き続き、粘度とせん断速度の関係を表す粘性カーブの測定を行った。結果を
図3に示す。
図3はアクリルエマルション(水を含む)100質量部に対して粘性調整剤を0.4質量部添加したデータを示している。
粘性カーブ測定条件
測定機器:レオメータPhysica MCR301(AntonPaar 社製)
測定治具:CP50−1
測定温度:25℃
【0056】
結果、従来から粘性調整剤として使用されている比較品IIIに比べ、本発明のイソシアヌレートタイプの三官能型粘性調整剤(化合物B、D、E)は、アクリルエマルションでの評価において、高い低シェア粘度を示すことがわかった。
以上の結果より、本発明品は、低シェア時高粘度となるこれまでにない粘性調整剤と言える。