【文献】
Journal of Organometallic Chemistry,2006年,Vol. 691,621-628
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造ロット毎の収率の変化が少なく、しかも高い収率でセレノール類を製造できる方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高い収率で、しかも製造ロット毎の収率の変化が少なく、セレノール類を製造する方法について、種々検討を行ったところ、以下のような知見を得るに至った。即ち、セレノマグネシウムハロゲン化物、及びセレノール類は非常に酸化されやすく、酸化源に接触すると速やかにジセレニド化する。従って、セレノール類の収率を高めるためには、セレノマグネシウムハロゲン化物、セレノール類の酸化を抑制することが重要である。前述の非特許文献1の方法ではセレン添加後の反応液を氷水に注ぐが、このとき、残存グリニャール試薬やセレノマグネシウムハロゲン化物により反応液は塩基性となっている。塩基性条件下では酸化反応が進行しやすいため、ジセレニド化防止に望ましくない条件である。そのためセレノール類の収率が安定しない結果となってしまう。
【0008】
そして、本発明者らは、更に鋭意検討を重ねることにより、グリニャール試薬とセレンを反応させることによりセレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得て、この反応液を酸性溶液中に滴下することによって、セレノマグネシウムハロゲン化物、及びセレノール類の酸化が防止され、高い収率でセレノール類が得られることを見出した。また、このような製造方法を採用することにより、製造ロット毎のセレノール類の収率の変化が小さく、安定的にセレノール類を製造できることも見出した。本発明はこのような知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様のセレノール類の製造方法を提供する。
項1. 下記工程1及び2を含むセレノール類の製造方法:
工程1:下記一般式(1)で表わされるグリニャール試薬と、
【化1】
[一般式(1)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を示し、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す]
セレンとを反応させることにより、下記一般式(2)で表わされるセレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得る工程
【化2】
[式中、R、Xは前記と同じ];及び
工程2:前記工程1で得られた反応液を酸性溶液中へ滴下することにより、下記一般式(3)で表わされるセレノール類を生成する工程
【化3】
[式中、Rは前記と同じ]。
項2. 前記一般式(1)において、Rがアリール基である、項1に記載の製造方法。
項3. 前記一般式(1)において、Rがフェニル基又はp−トリル基であり、Xが塩素原子又は臭素原子である、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 前記工程1において、グリニャール試薬1molに対して、セレンが0.5〜10.0molの割合で使用される、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 前記酸性溶液に含まれる酸が無機酸である、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 前記酸性溶液に含まれる溶媒が、水、酸を溶解可能な有機溶媒、又はこれらの混合物である、項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 前記工程1において、グリニャール試薬とセレンとの反応が−30〜30℃で行われる、項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
項8. 前記工程2において、工程1で使用したグリニャール試薬1molに対して、前記酸性溶液に含まれる酸が0.5〜10.0molである、項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い収率でセレノール類の製造を行うことができる。また、本発明の製造方法によれば、セレノマグネシウムハロゲン化物やセレノール類の酸化を防止でき、製造ロット毎のセレノール類の収率のバラツキを抑制できる。従って、本発明の製造方法によれば、高い収率で安定的にセレノール類を製造することができ、セレノール類の商業的製造において実用性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のセレノール類の製造方法は、下記工程1及び2を含むことを特徴とする。
工程1:一般式(1)で表わされるグリニャール試薬とセレンとを反応させることにより、一般式(2)で表わされるセレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得る工程;及び
工程2:前記工程1で得られた反応液を酸性溶液中へ滴下し、一般式(3)で表わされるセレノール類を生成する工程。
以下、本発明の製造方法について、工程毎に説明する。
【0012】
工程1
本工程1では、下記一般式(1)で表わされるグリニャール試薬とセレンとを反応させることにより、セレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得る。
【化4】
【0013】
前記一般式(1)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を示す。
【0014】
前記アルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよい。また、アルキル基の炭素数については、特に限定されないが、例えば、1〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜8が挙げられる。アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、ネオヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ネオオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、好ましくはn−ブチル基、n−ペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0015】
前記アルケニル基は、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数については、特に限定されないが、例えば2〜12、好ましくは3〜10、更に好ましくは4〜8のものが挙げられる。アルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチルアリル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、1−ドデセニル基、2−ドデセニル基、3−ドデセニル基、4−ドデセニル基、5−ドデセニル基、6−ドデセニル基、8−ドデセニル基、9−ドデセニル基、10−ドデセニル基、11−ドデセニル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらのアルケニル基の中でも、好ましくは1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基が挙げられる。
【0016】
前記アルキニル基は、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数については、特に限定されないが、例えば2〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜8のものが挙げられる。アルキニル基としては、具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−3−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、2−メチル−4−ヘプチニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、3−ヘプチニル基、4−ヘプチニル基、5−ヘプチニル基、6−ヘプチニル基、1−オクチニル基、2−オクチニル基、3−オクチニル基、4−オクチニル基、5−オクチニル基、6−オクチニル基、7−オクチニル基、1−ノニニル基、2−ノニニル基、3−ノニニル基、4−ノニニル基、5−ノニニル基、6−ノニニル基、7−ノニニル基、8−ノニニル基、1−デシニル基、2−デシニル基、3−デシニル基、4−デシニル基、5−デシニル基、6−デシニル基、7−デシニル基、7−デシニル基、8−デシニル基、9−デシニル基、1−ウンデシニル基、2−ウンデシニル基、3−ウンデシニル基、4−ウンデシニル基、5−ウンデシニル基、6−ウンデシニル基、7−ウンデシニル基、8−ウンデシニル基、9−ウンデシニル基、10−ウンデシニル基、1−ドデシル基、2−ドデシル基、3−ドデシル基、4−ドデシル基、5−ドデシル基、6−ドデシル基、7−ドデシル基、8−ドデシル基、9−ドデシル基、10−ドデシル基、11−ドデシル基などが挙げられる。これらのアルキニル基の中でも、好ましくは1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−オクチニル基が挙げられる。
【0017】
前記アリール基の炭素数については、特に制限されないが、例えば6〜14、好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜10が挙げられる。アリール基としては、具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−キシリル基、m−キシリル基、p−キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。これらのアリール基の中でも、好ましくはフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基が挙げられる。
【0018】
前記アラルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば7〜15、好ましくは7〜13、更に好ましくは7〜11のものが挙げられる。アラルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。これらのアラルキル基の中でも、好ましくはベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0019】
前記複素環基の炭素数については、特に制限されないが、例えば3〜14、好ましくは3〜10のものが挙げられる。また、複素環基のヘテロ原子数としては、特に制限されないが、例えば1〜4、好ましくは1〜2が挙げられる。複素環基として、具体的には、チエニル基、フラニル基、ピロニル基、インドリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、プリニル基等が挙げられる。これらのアラルキル基の中でも、好ましくはチエニル基、チアゾリル基が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)において、Rとしては、好ましくはアリール基、更に好ましくはフェニル基、p−トリル基が挙げられる。
【0021】
前記一般式(1)中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であればよいが、好ましくは塩素原子又は臭素原子が挙げられる。
【0022】
本発明で使用されるグリニャール試薬として、より好適には、前記一般式(1)中、Rがアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、複素環基であり、且つXが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であるものが例示される。また、Rがアリール基であり、且つXが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であるものがより好ましいものとして挙げられ、Rがフェニル基又はp−トリル基であり、Xが塩素原子又は臭素原子であるものが更に好ましいものとして挙げられる。更に、Rがp−トリル基であり、Xが臭素原子であるもの(即ち、p−トリルマグネシウムブロミド)が本発明において特に好適なグリニャール試薬として挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)で表わされるグリニャール試薬の調製方法については、特に制限されず、公知のいずれの方法によって調製してもよい。グリニャール試薬の調製方法として、例えば、ジエチルエーテル等の極性溶媒中で、マグネシウムとハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、p−ブロモトルエン)を用い、30〜50℃に加熱してグリニャール反応を行う方法が挙げられる。また、グリニャール試薬は、市販品を使用してもよい。
【0024】
セレン化反応を行う際に用いられるセレンの使用量は、特に制限されるものではないが、グリニャール試薬1.0molに対して、0.5〜10.0molが好ましく、0.8〜2.0molであることがより好ましい。セレンの使用量をこのような範囲で設定することにより、より一層効率的にセレノール類を得ることができる。即ち、グリニャール試薬1.0molに対してセレンの使用量が0.5mol以上であれば反応系中に残存する未反応グリニャール試薬の量を低減させることができ、望ましくない副反応が進行することもなく経済的である。また、グリニャール試薬1.0molに対してセレンの使用量を10.0mol以下とすることによって、使用量に見合う効果が得られることから経済的な利点がある。
【0025】
また、セレン化反応において使用される溶媒は、特に制限されるものではなく、グリニャール試薬を調製した際に使用された溶媒をそのまま用いることもでき、反応を阻害しないものであれば異なる溶媒を添加しても良い。セレン化反応において使用可能な溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0026】
セレン化反応における溶媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表されるグリニャール試薬1.0molに対し、100〜1500gが好ましく、200〜700gがより好ましい。
【0027】
セレン化反応は、グリニャール試薬中にセレンを滴下することにより行われる。グリニャール試薬に対するセレンの滴下速度については、反応槽の大きさ、グリニャール試薬の使用量等を勘案して、後述する反応温度を維持できる範囲で適宜設定すればよい。
【0028】
セレン化反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは−50〜120℃、より好ましくは−30〜50℃が挙げられる。このような範囲で反応温度を設定することにより、更に効率的且つ高収率でセレノール類を得ることができる。即ち、反応温度が−50℃以上であればセレン化反応の進行が良好であり、120℃以下であれば副反応の進行が抑制されることから、セレノール類の収率を更に向上させることができる。
【0029】
反応系中に酸化源が入ることを防止するため、本工程1は、通常、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0030】
斯して、グリニャール試薬とセレンを反応させることにより、下記一般式(2)で表わされるセレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液が得られる。得られた反応液は、後述する工程2に供される。
【化5】
[式中、R、Xは前記と同じ]。
【0031】
工程2
本工程2では、前記工程1で得られた反応液を酸性溶液中へ滴下することにより、目的物であるセレノール類を生成する。
【0032】
本工程2において使用される酸性溶液の酸の種類は、特に限定されず、有機酸であっても、無機酸であってもよい。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;リン酸、酢酸、炭酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸の中でも、好ましくは無機酸、更に好ましくは塩酸が挙げられる。またこれらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、酸の使用量としては、特に限定されないが、前記工程1で使用したグリニャール試薬1molに対する酸の使用量として、例えば0.5〜100mol、好ましくは1〜10molが挙げられる。酸性溶液中の酸の使用量を前記範囲とすることにより、セレノマグネシウムハロゲン化物の酸化が抑制され、セレノール類の収率をより一層向上させることができる。即ち、グリニャール試薬1molに対して、酸の使用量が0.5mol以上であれば、セレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を滴下した後でも酸性溶液のpHが塩基性に傾くおそれがなく、反応を円滑に進め得る程度の酸性域に溶液を保持することができ、セレノマグネシウムハロゲン化物の酸化反応を効果的に抑制することができる。また、酸の使用量が100mol以下であれば使用量に見合った効果を得ることができ、経済的である。
【0034】
上記の酸は、溶媒に溶解して酸性溶液として使用される。本工程2においては、プロトン豊富な溶液中へ反応液を滴下することによってセレノール類の合成及び酸化防止を同時に実現するという観点より、前述の酸を溶解してプロトン豊富な溶液を調製することが可能な溶媒を用いればよい。このような溶媒として、例えば、水、前述の酸を溶解可能な有機溶媒、これらの混合物が挙げられる。より具体的には、水;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒;これらの混合物が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
上記溶媒の使用量については、特に制限はされないが、酸性溶液中にプロトンが高濃度で存在させることにより、セレノール類の収率をより高め、製造ロット毎の収率の変化を一層効果的に抑制するという観点から、グリニャール試薬100質量部に対して、50〜5000質量部、好ましくは80〜3000質量部が挙げられる。
【0036】
酸性溶液に対する前記工程1で得られた反応液の滴下速度については、特に制限されないが、反応槽の大きさ、酸性溶液の量等を勘案し、後述する酸性溶液の温度を維持できる範囲で適宜設定すればよい。
【0037】
前記工程1で得られた反応液を滴下する際の酸性溶液の温度は、特に制限されるものではないが、−50〜120℃が好ましく、−30〜50℃であればより好ましい。このような温度範囲に調整することにより、より効率的に反応を進行させることができる。即ち、−50℃以上であれば反応の進行が停滞するおそれがなく、120℃以下であれば副反応を生じるおそれもない。
【0038】
反応系中に酸化源が入ることを防止するため、本工程2は、通常、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0039】
反応液を滴下する際には、必要に応じて撹拌を行ってもよい。更に、反応液の滴下後に目的物の収率を更に高めるためにインキュベートを行ってもよく、インキュベートの間撹拌を行ってもよい。インキュベートの時間は特に限定されないが、通常0.1〜24時間、好ましくは1〜8時間が挙げられる。
【0040】
斯して得られた反応液には、目的物である下記一般式(3)で表わされるセレノール類が生成している。
【化6】
[式中、Rは前記と同じ]。
【0041】
工程2を実施することにより得られた反応液から、有機層と分離し、有機層から溶媒を留去することにより、セレノール類が回収される。また、必要に応じて、晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィ等の従来公知の方法により単離することにより、精製されたセレノール類を得ることもできる。
【0042】
斯して得られたセレノール類は、従来セレノール類が使用されている各種分野において同様に利用され得る。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。全ての操作は窒素雰囲気下で実施した。
【0044】
[製造例1]
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた3L容の四つ口フラスコにマグネシウム194.5g(8.00mol)とジエチルエーテル601.6gを仕込んだ。p−ブロモトルエン1368.2g(8.00mol)をジエチルエーテル600.0gに溶解させたp−ブロモトルエン溶液を調製し、そのうちの10分の1の量を前述の四つ口フラスコに添加した。オイルバスを用いて反応液を40℃にまで加熱し、グリニャール反応を開始させた。その後、残りのp−ブロモトルエン溶液を滴下した後、1時間反応を行って、p−トリルマグネシウムブロミド溶液2764.4g(純分1547.1g、7.92mol)を取得した。
【0045】
[実施例1]
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに製造例1で得られたp−トリルマグネシウムブロミド溶液174.5g(純分97.6g、0.50mol)を仕込み、反応液を0℃まで冷却した後、セレン粉末47.4g(0.50mol)を0〜10℃の範囲を保ちながら添加し、セレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得た。攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに35質量%の塩酸83.3g(0.80mol)と純水200.8gの混合液(pH1未満)を仕込み、得られた反応液の全量を0〜30℃の範囲を出ないように滴下した後、約1時間撹拌を続けることによりインキュベートし、有機層を回収した。
【0046】
回収された有機層についてガスクロマトグラフィーの絶対検量線法による分析を実施したが、p−トリルセレノールの酸化物質であるジ−p−トリルジセレニドは検出されなかった。また、回収有機層の低沸点成分を留去し、その後、減圧蒸留によりp−トリルセレノールの無色固体73.7g(0.43mol)を取得した。収率はグリニャール試薬に対して86.1%であった。なお、取得した固体がp−トリルセレノールであることは、融点が47℃であることから判断した。
【0047】
[実施例2]
実施例1と同条件でp−トリルセレノールを4回製造した結果、収率はグリニャール試薬に対して85.7%、86.3%、85.3%、85.8%であった。即ち、本結果から、本発明の製造方法によれば、製造ロット毎に収率のバラツキがなく、高収率で安定にp−トリルセレノールを製造できることが確認された。
【0048】
[比較例1]
非特許文献1に記載される製造方法に従って、p−トリルセレノールの合成を行った。攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた300mL容の四つ口フラスコに製造例1で得られたp−トリルマグネシウムブロミド溶液172.8g(純分97.7g、0.50mol)を仕込み、反応液を40℃まで昇温し、ゆるやかに還流させた。その後、加熱をとめ、セレン粉末47.4g(0.50mol)を、反応熱によって還流状態を保つように添加し、セレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得た。攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた1L容の四つ口フラスコに砕いた氷600gをはかりとり、そこに得られた反応液の全量を添加した。その後、35質量%塩酸88.5g(0.85mol)水溶液を0〜30℃の範囲を出ないように滴下した後、約1時間撹拌を続けることによりインキュベートし、有機層を回収した。
【0049】
回収された有機層をガスクロマトグラフィーの絶対検量線法による分析を実施したところ、ジ−p−トリルジセレニドが0.07mol生成していることがわかった。次いで、回収された有機層の低沸点成分を留去し、その後、減圧蒸留によりp−トリルセレノールの無色固体51.3g(0.30mol)を取得した。収率はグリニャール試薬に対して60.1%であった。取得した固体がp−トリルセレノールであることは、融点が47℃であることから判断した。
【0050】
[製造例2]
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた3L容の四つ口フラスコにマグネシウム194.5g(8.00mol)とジエチルエーテル600.2gを仕込んだ。モノクロロベンゼン900.2g(8.00mol)をジエチルエーテル600.8gに溶解させたモノクロロベンゼン溶液を調製し、そのうちの10分の1の量を前述の四つ口フラスコに添加した。オイルバスを用いて反応液を40℃にまで加熱し、グリニャール反応を開始させた。その後、残りのモノクロロベンゼン溶液を滴下した後、6時間反応を行って、フェニルマグネシウムクロリド溶液2101.1g(純分1029.2g、7.52mol)を取得した。
【0051】
[実施例3]
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに製造例2で得られたフェニルマグネシウムクロリド溶液140.1g(純分68.4g、0.50mol)を仕込み、反応液を0℃まで冷却した後、セレン粉末47.4g(0.50mol)を0〜10℃の範囲を保ちながら添加し、セレノマグネシウムハロゲン化物を含む反応液を得た。攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに35質量%の塩酸83.3g(0.80mol)と純水200.8gの混合液(pH1未満)を仕込み、得られた反応液の全量を0〜30℃の範囲を出ないように滴下した後、約1時間撹拌を続けることによりインキュベートし、有機層を回収した。
【0052】
回収された有機層についてガスクロマトグラフィーの絶対検量線法による分析を実施したが、ベンゼンセレノールの酸化物質であるジフェニルジセレニドは検出されなかった。また、回収有機層の低沸点成分を留去し、その後、減圧蒸留によりベンゼンセレノールの無色液体68.4g(0.44mol)を取得した。収率はグリニャール試薬に対して85.8%であった。なお、取得した液体がベンゼンセレノールであることは、沸点が79℃(25mmHg)であることから判断した。