特許第6228560号(P6228560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228560
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】高周波伝送線路および光回路
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   H01S5/022
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-59600(P2015-59600)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-181542(P2016-181542A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 常祐
【審査官】 島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−110201(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065517(WO,A1)
【文献】 特開2013−008887(JP,A)
【文献】 特開平03−268501(JP,A)
【文献】 特開2005−038984(JP,A)
【文献】 特開2003−078196(JP,A)
【文献】 実開平03−106767(JP,U)
【文献】 実開平02−113409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の特性インピーダンスを有する第1導体線路と、
前記第1導体線路と接続される終端抵抗と、
前記終端抵抗と接続される第2導体線路と、
前記第1導体線路、前記終端抵抗および前記第2導体線路に対して、所定の距離を隔てて対向配置されるグランド線路と、
を備え、
前記第1導体線路は、前記終端抵抗側に向かって線路幅が狭くなるテーパ形状に形成され、前記所定の特性インピーダンスよりも相対的に特性インピーダンスが低い低インピーダンス線路部を構成しており、
前記低インピーダンス線路部は、前記第1導体線路を含むインピーダンス遷移部と、前記終端抵抗を含む第1の低インピーダンス線路部と、前記第2導体線路を含む第2の低インピーダンス線路部とを含み、
前記第2の低インピーダンス線路部は、スタブとして機能し、周波数のピーキング量が調整される
ことを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項2】
前記グランド線路は、前記終端抵抗側に向かって線路幅が広くなるテーパ形状により変化することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の高周波伝送線路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高周波伝送線路を含むことを特徴とする光回路。
【請求項4】
前記光回路は直接変調DFBレーザであり、そのDFB部は信号入力用電極グランド用電極とを有し、前記信号入力用電極が前記第導体線路に接続されることを特徴とする請求項3に記載の光回路。
【請求項5】
前記グランド用電極は、前記グランド線路に接続されることを特徴とする請求項4に記載の光回路。
【請求項6】
前記信号入力用電極と前記第1導体線路との接続がフリップチップ接続であることを特徴とする請求項4に記載の光回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用途の光送信器等、高周波で動作する光デバイスの終端技術に関し、特に、直接変調DFB(Distributed Feedback:分布帰還型)レーザ(DML:Direct Modulated DFB Laser)の50オーム終端技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやIP電話、動画のダウンロードなどの利用拡大により、必要とされる通信容量が急速に高まっており、光ファイバや光通信用機器に搭載される光送信器の需要が拡大している。光送信器またはそれを構成する部品は、プラガブル(Pluggable)と呼ばれ、搭載や交換がしやすいように、仕様によるモジュール化が急速に進展している。
【0003】
また、XFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)は、10ギガビット・イーサネット(10GbE)の着脱モジュールの業界標準規格の一つであり、この規格により光送信器モジュールに搭載される光源もモジュール化が進んでいる。これは、TOSA(Transmitter Optical Sub−Assembly)と呼ばれ、代表的なモジュール形態として、箱型形状のTOSAモジュールがある(非特許文献1)。
【0004】
近年、光送信器の需要が増加しているが、一方で、光送信器の性能を維持しつつ低コスト化への要求も強くなっている。毎秒100ギガビット伝送用TOSAモジュールの開発や、毎秒400ギガビットの超高速化に向けた標準化活動も活発であり、TOSAに対する高性能への要求は大きくなっている。
【0005】
典型的な箱型TOSAモジュールの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、典型的な箱型TOSAモジュール100の外観を示す図である。図2は、図1で示した筺体のモジュール内部の実装構成を示す図である。
【0006】
図1に示すように、モジュール100の筐体は、XFP準拠により、焼結セラミックまたは金属で形成されている。
【0007】
モジュール100では、筺体のテラス部101から筺体内部側に向けて貫通する変調電気信号給電用配線端子102が少なくとも一つ設けられる。テラス部101にはさらに、DC給電用配線端子も設けられている。
【0008】
図1において、モジュール100には、セラミック部103および金属部104が形成される。
【0009】
サブキャリアと呼ばれる薄板201は、筺体と離間して設置されている。サブキャリア201には、誘電体材料に金属メッキまたは蒸着することにより配線パターンが形成される。さらに、サブキャリア201には、光半導体デバイスに必要な素子、例えばレーザダイオード202、光変調器203、抵抗204およびコンデンサ205、などが搭載される。
【0010】
筺体はキャリア206と呼ばれる金属性の小板に載っており、キャリア206の下には、筺体下部に接する熱電冷却素子(TEC:Thermo−Electric Cooler)207が搭載されている。このTEC207によって、サブキャリア201上の素子で発生した熱が吸熱され、筺体下部から排熱される。省電力化と部品点数削減の観点から、TEC207を用いないTOSAの開発も行われている。
【0011】
筺体の側面には、レンズ218(レンズ218はキャリア206上に載せる)または光取り出し用窓が設けられ、天板とともに抵抗溶接などにより光半導体デバイスがパッケージ内に封止される。
【0012】
筺体外部から内部へ貫通している変調電気信号給電用配線208とサブキャリア201は、従来、ワイヤ状金線209やリボン状金線210で導通をとっている。
【0013】
図3は、TOSAモジュール100と駆動用ドライバIC301との接続例を示している。
【0014】
駆動用ドライバIC301の信号またはDC電源からの給電(不図示)は、フレキシブルプリント基板302を用いて行われるのが一般的である。
【0015】
フレキシブルプリント基板302は、柔軟性があり大きく変形させることが可能なプリント基板であり、フレキまたはFPC(Flexible Printed Circuits)とも呼ばれる。変調用電気信号の伝送またはDC給電は、フレキシブル基板302を介してTOSAモジュール100に対して行われる。
【0016】
変調用電気信号は、駆動用ドライバIC301からフレキシブル基板302を介してTOSAモジュール100に伝送される。TOSAモジュール100では、その変調用電気信号は、変調電気信号給電用配線端子102、伝送線路208、ワイヤ209,210、およびサブキャリア上の伝送線路211を介して、光半導体素子203に伝送され、さらには終端抵抗204へ伝送される。
【0017】
駆動用ドライバIC301は、出力インピーダンスが50オームで駆動波形を送出するよう設計されている。このため、伝送線路211および終端抵抗204についても、通常は50オームに設定される。こうすることでインピーダンス整合をとるのが従来技術であった。
【0018】
XFP準拠のTOSA光モジュールの動作周波数は、10GHzにまで及んでおり、電気信号は波(マイクロ波)としての振る舞いが強くなる。すなわち、インピーダンス整合しない不連続点(反射点)では、そこを起点とする反射波が発生し、反射波が駆動ドライバIC301に向かって進行してしまう。このような状況から、従来は、伝送線路211と終端抵抗204との間の不連続点(反射点)をなくすことが重要であった。
【0019】
図4は、直接変調DFBレーザの構成を示す図であって、(a)は直接変調DFBレーザの実装図、(b)は直接変調DFBレーザの斜視図、(c)は直接変調DFBレーザの上面図(DFBレーザの電極422を示す。なお、図4(a)は、非特許文献2に開示されている構成を示している。
【0020】
図4に示した直接変調DFBレーザでは、50オームで設計された高周波配線(GSG)401が、ワイヤ403によって、DMLの電極422に接続され、さらに422から終端回路404に接続されている。例えばDMLの抵抗を4オームとすると、46オームの終端抵抗を接続することによって、合わせて50オームとなる
【0021】
図4(b)からわかるように、直接変調DFBレーザ400Aは、p-InP基板420上に集積される。
【0022】
DFBレーザ400Aの活性層416は、InGaAsP/InGaAsP多重量子井戸(MQW: Multi-Quantum Well)構造からなる。
【0023】
活性層416の上には、DFBを形成する回折格子と、n-InP層419があり、これがメサ状に形成されたのち、高抵抗埋込層421によって埋め込まれる。
【0024】
電極423には、ボンディングワイヤを形成するため、またはフリップチップボンディングのためのパット電極422が設けられる。直接変調DFBレーザ400Aの長さは300μmである。
【0025】
なお、図4に示した例では、高周波配線401のグランドGに接続されるp電極(p-InP基板420の下部)とシグナルSに接続される電極422は、それぞれ、DMLの異なる面にある場合を示している。
【0026】
一方、図5に示すように、グランドGとシグナルSとに接続される各電極が同一の面に設けられるDMLも知られている。
【0027】
図5(a)および(b)は、フリップチップボンディングによる高周波配線とDMLとの接続態様であって、グランドGおよびシグナルSに接続される各電極231,240が同一の面に設けられる場合について示している。図5(a)では、p−InP基板213の上に、p−コンタクト層238、p−InP237、活性層235、n−InP234およびnコンタクト層233を有し、高抵抗埋込層236により、メサが埋め込まれている。シグナルSに接続されるn電極231、およびグランドGに接続されるp電極240は、絶縁膜(例えばSiO2)232の上に形成される。すなわち、p電極240とn電極231はともに、同一の面に設けられる。
【0028】
なお、各電極231,240上には、Auバンプ215が形成され、DMLは、Auバンプ215、金錫ハンダ(バンプ)218および電極パッド217を介して、高周波配線板201と接続される。
【0029】
最近では、毎秒100ギガビットや毎秒400ギガビットといった超高速化の送信器の需要が高まりつつある。
【0030】
図6は、従来の多チャネル光送信器500の構成であって、(a)は多チャネル光送信器500の全体構成、(b)は1チャンネルの構成、(c)は4チャネルの出力の概要、を示す。なお、多チャネル光送信器500は、非特許文献3に開示されている。
【0031】
多チャネル光送信器500は、25Gb/sで動作するDMLが4つ設けられており、100Gb/sで動作するようになっている。
【0032】
図6(b)は図4(c)に対応している。
【0033】
4つのDMLからの出力光の波長はそれぞれ異なり、それをMMI(Multi−Mode Inteference)型の光カプラで合波する。合波するための光カプラとして、波長カプラや偏波カプラを使うこともある。
【0034】
図7は、4チャネルのDMLと高周波配線との接続形態を示す図であって、(a)は従来のワイヤによる接続形態、(b)は(a)の等価回路、(c)は金バンプによる接続形態、(d)は(b)の等価回路、(e)は2つの接続形態の各高周波特性、を示す。
【0035】
図7に示した4チャネルのDMLと高周波配線とをワイヤで接続するには、例えば図7(a)のような構造になる。すなわち、図7(a)において、DMLと配線板604とは、ボンディングワイヤ601によって接続される。
【0036】
図7(a)において、多チャネル光送信器600は、信号線602、DMLアレイ603、サブキャリア605、スペーサ606を備える。
【0037】
この図7(a)の多チャネル光送信器600の等価回路は、図7(b)に示すような回路になる。配線板604は、コイル(ボンディングワイヤに対応)6048を介してDMLと接続され、さらにコイル(ボンディングワイヤに対応)6049を介して終端6050と接続される。例えばDMLの抵抗が4オームのときには、46オームの終端抵抗をDMLに接続することによって、抵抗の総和は50オームとなる
なお、図7(b)のDML4046において、Rnクラッド6041、Cパッド6042、Cアクティブ6043、Rアクティブ6044、Rpクラッド6045およびアクティブレイヤ(活性層)6047が示されている。
【0038】
上述したRnクラッド6041は図4(b)に示したクラッド層419の抵抗に、Cパッド6042は図4(b)に示したパッド422の容量に、Cアクティブ6043は図4(b)に示した活性層416の容量に、それぞれ対応する。また、Rアクティブ6044は図4(b)に示した活性層416の抵抗に、Rpクラッド6045は図4(b)に示した基板420の抵抗に、それぞれ対応する。
【0039】
なお、DMLの動作帯域をあげるために、上述したボンディングワイヤを使用せずに、図5に示したフリップチップボンディングによって、DMLの電極607と配線板604とを金バンプ(図5に示した例では、Auバンプ215)で直接接続する方法がある。 図7(c)は図5と同様のフリップチップボンディングの接続態様であり、図7(d)はその接続態様の等価回路である。
【0040】
図7(c)において、DMLと配線板614とは、金バンプ613によって接続される。
【0041】
図7(c)において、多チャネル光送信器600Aは、上層信号線610、下層信号線611、RFビア612、高周波回路板614、サブキャリア615を備える。
【0042】
図7(d)において、配線板614は、DML6046Aを経由して終端6050Aに接続される。
【0043】
なお、図7(d)において、アクティブレイヤ(活性層)6047Aが示されている。
【0044】
上述したフリップチップボンディングは、実装基板上にチップを実装する方法の1つであり、チップ表面と基板とを電気的に接続する際、ワイヤボンディングのようにワイヤによって接続するのではなく、アレイ状に並んだ金バンプによって接続する。これによりワイヤボンディングに比べてチップと信号線との間の距離を短く出来るため、配線が短くなる。このため、図7(e)に示すように、フリップチップボンディングの場合の高周波特性は、ワイヤボンディングの場合よりも良くなると考えられる。
【0045】
これは、フリップチップボンディングの場合は、周波数が増加するにつれ高周波特性が徐々に劣化していくのに対し、ワイヤボンディングの場合は、ワイヤボンディングで周波数がピーキングを持ち、さらに高周波側では急速に高周波特性が劣化する傾向にあるからである。
【0046】
寄生インダクタンスを減らすことで、高周波特性を改善することを重要視している。
【0047】
上述した配線板は、例えば図8(a)のようなマイクロストリップラインで形成される。図8(a)の誘電体基板において、長さがWの上面導体701aは伝送線路になり、下面導体701bはGNDになる。導体701a,701b間には、誘電体702が形成される。
【0048】
伝送線路の特性インピーダンスは、図8(b)に示すように、基板の比誘電率、厚さ、導体の厚さおよび幅などによって決まる。比誘電率の高い基板を使用すれば、回路を小型化することができる。一般に、次のような基板材料が使われることが知られている。ガラスエポキシ基板(比誘電率 εr=4.8)、テフロン基板(比誘電率 εr=2.6)、セラミック基板(比誘電率 εr=10.0)。
【0049】
配線板は、例えば図8(c)のようなコプレーナ・ラインで形成される。図8(a)では、厚さ=h、比誘電率=εr の誘電体基板の片面を導体面とし、その導体面に幅=Sの2本のスロットが間隔Wで設けられている。誘電体基板は通常、両側の導体面がGND、中央の導体がシグナルという、いわゆるGSG構造となる。図8(d)は、w/h=1.0の配線板におけるs/hの値に応じた特性インピーダンスを示してある。
【0050】
図9は、フリップチップボンディングを用いた従来のDMLの終端回路パターン800の概略を示している。
【0051】
図9(a)に示す回路パターン800において、DML804に信号を送るための高周波線路Sも、終端抵抗803の直前の高周波線路801も同じ50オーム設計である。図9(a)は、DMLの信号用電極も、GND電極Gも同一面にある場合の例を示しており、DMLの信号用電極は配線板の高周波線路Sに、DMLのGND電極は配線板のグランド線路Gに、それぞれフリップチップボンディングされる。
【0052】
50オームの終端抵抗803は、チップ抵抗を配線板に半田づけしてもいいし、配線板に作りこんでもいい。配線板に作りこむ場合、終端抵抗803も50オームになるように設定する。終端抵抗803は、寄生容量を少なくするため、なるべく短くなるようにする。終端抵抗803とその右側のグランド線路Gとの間には隙間を設けずに両者を直結して、寄生成分が含まないようにする。
【0053】
なお、DMLのGND電極が信号用電極の反対側(裏面)にある場合には、図9(b)のように、信号用電極と配線板の高周波線路801とだけがフリップチップボンディングされる。この場合、裏面の電極およびグランドは、ボンディングワイヤ、または、ビアなどの方法で接続される。
【0054】
図10および図11は、DMLのGND電極が信号用電極の反対側(裏面)にある場合のDMLのGND電極とグランドとのビア接続形態を示している。図10および図11に示した接続形態は、図9(b)の回路パターン800に対応している。
【0055】
図10において、Auバンプ813によって、高周波配線板830とサブキャリア820上のDML804とが接続される。また、Auバンプ815によって、高周波配線板830と配線引き回し用の高周波配線板831とが接続される。図10の接続例では、電流パスIは、フリップチップボンディング813→DML804の底面→サブキャリア820→高周波配線板831という経路になる。
【0056】
図11に示すように、DML804のシグナルSにフリップチップボンディング813が施され、サブキャリア820上には、例えば半田によってDML804が搭載される。一般に、DML804の厚みは150μm程度であり、高周波配線板831よりも薄くなるので、サブキャリア820には図11に示すような段差が設けられる。
【0057】
なお、図11において、2つのAu電極816a,816bは接続されている。
【0058】
Au電極816bと高周波配線板830のグランドGとはビア833によって接続され、2つの高周波配線板830,831はフリップチップボンディング815によって接続される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0059】
【非特許文献1】Dongchurl Kim et.al., “Design and Fabrication of a Transmitter Optical Subassembly in 10-Gb/s Small-Form-Factor Pluggable Transceiver”, IEEE JORNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS. VOL. 12,No.4, JULY/AUGUST 2006, pp776-782
【非特許文献2】Chengzhi Xu, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 24, NO. 22, 2012
【非特許文献3】Shigeru Kanazawa, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 32, NO. 1, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0060】
図9に示す構造のように、伝送線路801と終端抵抗803とをそれぞれ50オームに設定することでインピーダンス整合をとる高周波伝送線路は従来から存在するものの、直接変調DFBレーザを含むインピーダンス整合が考慮されておらず、周波数特性を向上させる高周波伝送線路が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0061】
上記の課題を解決するための高周波伝送線路は、所定の特性インピーダンスを有する第1導体線路と、前記第1導体線路と接続される終端抵抗と、前記終端抵抗と接続される第2導体線路と、前記第1導体線路、前記終端抵抗および前記第2導体線路に対して、所定の距離を隔てて対向配置されるグランド線路と、 を備え、前記第1導体線路は、前記終端抵抗側に向かって線路幅が狭くなるテーパ形状に形成され、前記所定の特性インピーダンスよりも相対的に特性インピーダンスが低い低インピーダンス線路部を構成しており、前記低インピーダンス線路部は、前記第1導体線路を含むインピーダンス遷移部と、前記終端抵抗を含む第1の低インピーダンス線路部と、前記第2導体線路を含む第2の低インピーダンス線路部とを含み、前記第2の低インピーダンス線路部は、スタブとして機能し、周波数のピーキング量が調整されるように形成される。
【0062】
ここで、前記グランド線路は、前記終端抵抗側に向かって線路幅が広くなるテーパ形状により変化するようにしてもよい。
【0063】
上記の課題を解決するための光回路は、前記高周波伝送線路を含む。ここで、前記光回路は直接変調DFBレーザであり、そのDFB部は信号入力用電極グランド用電極とを有し、前記信号入力用電極が前記第導体線路に接続されるようにしてもよい。
【0064】
前記グランド用電極は、前記グランド線路に接続されるようにしてもよい。
【0065】
前記信号入力用電極と前記第1導体線路との接続がフリップチップ接続としてもよい。

【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、高周波特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】典型的な箱型TOSAモジュール100の外観を示す図である。
図2図1で示した筺体のモジュール内部の実装構成を示す図である。
図3】TOSAモジュールと駆動用ドライバICとの接続態様を示す図である。
図4】直接変調DFBレーザの構成を示す図である。
図5】フリップチップボンディングによる高周波配線とDMLとの接続態様を示す図である。
図6】従来の多チャネル光送信器の構成を示す図である。
図7】従来の多チャネル光送信器において、DMLの電極と配線板との接続態様、等価回路および高周波特性を示す図である。
図8】従来の高周波誘電板において、その構成、誘電率に応じた特性インピーダンスを示す図である。
図9】フリップチップボンディングを用いた従来のDMLの終端回路パターンの概略を示す図である。
図10】DMLのGND電極が信号用電極の裏面にある場合のDMLのGND電極とグランドとの接続形態を示す斜視図である。
図11図10の接続形態を示す断面図である。
図12】本発明の実施形態の高周波伝送線路の構成例を示す図である。
図13】高周波伝送線路の一例を示す斜視図である。
図14】高周波伝送線路と接続されるDMLレーザチップの一例を示す斜視図である。
図15】直接変調DFBレーザチップと高周波配線板との組み合わせ例を示す斜視図である。
図16図15の等価回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明の高周波伝送線路1の実施形態について説明する。この高周波伝送線路1は、直接変調DFBレーザのDFB部に信号を伝送するように構成される。
【0069】
[高周波伝送線路の構成]
まず、高周波伝送線路1の構成について、図12および図13を参照して説明する。図12は、本実施形態の高周波伝送線路1Bの構成例について、従来の高周波伝送線路と関連付けて示す図であって、(a)は高周波伝送線路1Bの回路パターン1B、(b)は従来の回路パターン800B、を示す。図13は、高周波伝送路1Bの斜視図である。
【0070】
図12(a)に示すように、高周波伝送線路1Bは、第1導体線路11aと、この第1導体線路11aと接続される終端抵抗14と、終端抵抗14と接続される第2導体線路15aと、第1導体線路11a、終端抵抗14および第2導体線路15aに対して、所定の距離を隔てて対向配置されるグランド線路12a,12bとを備える。
【0071】
導体線路11a,15aは、例えば高周波配線板である。第1導体線路11aの特性インピーダンスは、例えば50Ωに設定され、第2導体線路15aは、例えば50Ωよりも低い値に設定される。
【0072】
なお、第2導体線路15aは、対応するグランド線路12a,12bとの組み合わせによって、図13に示す第2の低インピーダンス線路部423Aを構成する。この第2の低インピーダンス線路部423Aは、スタブとして機能し、これにより、周波数のピーキング量が調整されるようになっている。
【0073】
DFB部17は、第2導体線路15aとグランド線路12bとの間に接続される。この実施形態では、DFB部17の信号用電極およびグランド用電極はともにDFB部17の同一面に構成されるようになっているので、DFB部17の信号用電極は導体線路15aに、DFB部17のグランド電極はグランド線路12bに、それぞれフリップチップボンディングされる。フリップチップボンディングの接続形態は例えば図5で示したものと同じである。
【0074】
図12(a)において、第1導体線路11aは、終端抵抗14側の端面において、内側に曲がる折り曲げ形状16c,16dを有する。図12(a)の例では、折り曲げ形状16c,16dは、例えば、線路幅が狭くなるテーパ形状となっている。
【0075】
グランド線路12a,12bは、上述した各折り曲げ形状16c,16dに対応する位置において、第1導体線路11a側に曲がる折り曲げ形状16b,16aを有する。図12(a)の例では、折り曲げ形状16a,16bは、例えば、GND幅が広くなるテーパ形状となっている。
【0076】
これにより、折り曲げ形状16a〜16dの部分の特性インピーダンスは、終端抵抗14側に向かって、50Ωよりも小さくなるように変化する。この部分は、図13に示すインピーダンス遷移部421Aを構成する。
【0077】
また、テーパにより線路幅が変化した各線路11a,12a,12bおよび終端抵抗14によって、図13に示す第1の低インピーダンス線路部422Aを構成する。図13に示す第2の低インピーダンス線路部423Aは、終端抵抗14に隣接する線路15aおよびそれに対応するグランド線路12a,12bによって構成される。
【0078】
一方、図12(b)に示すように、従来の回路パターン800は、DFB部805に信号を送るための高周波線路801bと、2つのグランド線路801a,801bとを備える。この場合、終端抵抗803aも、DFB部と接続する高周波線路801bも同じ50オーム設計である。
【0079】
次に、この高周波伝送線路1Bと組み合わせられるDFBレーザについて、図14を参照して説明する。図14は、DFBレーザ20の一例を示す斜視図である。
【0080】
図14に示すように、DFBレーザ20は、DFBレーザ電極21と、金バンプ22と、レーザチップ24と、サブキャリア25とを備える。
【0081】
図15は、高周波伝送線路1BとDFBレーザ20とが組み合わせられた光回路の一例を示す斜視図である。
【0082】
この例では、高周波伝送線路1Bは、金バンプ22を介して、図14に示したDFBレーザ20と接続されるようになっている。
【0083】
なお図15では、DFBレーザ20と高周波伝送路1Bが直角に交わるような形態になっているが、DFBレーザ20と高周波伝送路1Bが同一方向から重なり合うに配置しても構わない。特にDFBレーザ20が単体でなく、アレイ構造の場合には、DFBレーザ20と高周波伝送路1Bとを同一方向に配置するのが好ましい。
【0084】
なお、図15に示す回路要素41A,421A,422A,423Aはそれぞれ、図13に示した50Ω線路41a,インピーダンス遷移部421A,第1の低インピーダンス線路部422Aと、第2の低インピーダンス線路部423Aに対応する。
【0085】
図16は、高周波伝送線路1の等価回路40である。
【0086】
この等価回路40は、50Ω線路41Aと、インピーダンス調整部42Aとを備える。インピーダンス調整部421Aは、50Ω線路41Aと直列接続され、インピーダンスが50Ωよりも低くなっていくインピーダンス遷移部421Aと、インピーダンスが相対的に低い第1の低インピーダンス線路(終端抵抗を含む)422Aと、インピーダンスが50Ωよりも相対的に低い第2の低インピーダンス線路423Aとを有する。DFB部424Aの一端は、第2の低インピーダンス線路423Aに接続され、DFB部424Aの他端は接地される。この第2の低インピーダンス線路部423Aは、スタブとして機能し、これにより、周波数のピーキング量が調整され、高周波帯の周波数特性が向上するようになっている。
【0087】
なお、図16に示す回路要素41A,421A,422A,423Aはそれぞれ、図13に示した50Ω線路41A,インピーダンス遷移部421A,第1の低インピーダンス線路部422Aと、第2の低インピーダンス線路部423Aに対応する。
【0088】
以上、実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は実施形態に限られるものではなく、変更するようにしてもよい。
【0089】
例えば、DFB部17は、導体線路11aとグランド線路12bとの間に接続される場合について説明した。しかしながら、DFB部17の信号用電極とグランド用電極とが異なる面に構成される場合も考えられる。かかる場合、高周波伝送線路では、DFB部の信号用電極およびグランド電極がともに、第1導体線路11aでフリップチップボンディングされるようにしてもよい。
【0090】
上述した折り曲げ形状(テーパ形状)16a〜16dは、特性インピーダンスが例えば50Ωより高くなるものであればよく、他の様々な代替の形状によっても実施することができる。例えば、かかる形状として、段階的に、または曲面状に連続的に、変化するようにしてもよい。
【0091】
図12に示したものにおいて、テーパ形状は、第1導体線路11aのみに形成し、グランド線路12a,12bは形成しないようにしてもよい。
【0092】
上記実施形態および変形例等は、任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,1A 高周波伝送線路
11a 第1導体線路
12a,12b グランド線路
16a〜16d 折り曲げ形状(テーパ形状)
14 終端抵抗
15a 第2導体線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16