(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して、前記フェノール化合物(B)を含むエポキシ樹脂硬化剤の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPC等の個人通信端末化した小型モバイル通信機器の需要が急成長している。これに伴い情報通信機器の信号帯域、コンピュータのCPU周波数はGHz帯に達し、一層の高周波化が進行しつつある。
【0003】
電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。
【0004】
誘電損失は、情報である電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なう。よってこれを抑制するために用いる絶縁体には誘電率、誘電正接の小さな材料を選定する必要がある(特許文献1)。
【0005】
上記の通信機器で使用される代表的な絶縁材料としてはエポキシ樹脂が挙げられるが、例えばプリント積層板においても当然ながらその要求性能は誘電率、誘電正接が小さく従来同様に耐熱性や接着性等の基本的性能の付与が求められている。また最近では環境対応としてハロゲンフリー難燃化が定着化しつつある。
【0006】
ハロゲンフリー難燃化手法には、反応型のリン化合物である9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド(DOPO)をエポキシ基と反応させる手法が多く報告されている。この手法においては難燃性の発現を高めるためにリン含有率を上げる必要性から、1分子中に含まれるエポキシ基数の低減を招くために硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性が悪化するといった問題があった。
【0007】
この問題に対しては、多官能エポキシ樹脂と多官能硬化剤を用いる事で架橋密度を高める改良が一般的に試みられるが、そのことにより硬化物は堅脆くなりエポキシ樹脂の持つ良好な接着力を低下させるのみでなく、同時にエポキシ基の硬化反応に伴う硬化物中に生成される水酸基濃度も高まることから誘電特性の悪化を招く重大な課題があった。
【0008】
つまりこのことは、求められる耐熱性や難燃性、接着力といった性能向上に相反する誘電特性の低減といった特性を満たす材料がないことを意味するものであり、従来のエポキシ樹脂と硬化剤の設計概念では解決が非常に困難な課題であった。
【0009】
このような困難な課題に対して、シアネートエステル化合物をエポキシ樹脂とその硬化剤系に併用する手法で改善が図れるとする技術が多く報告がされている。これら材料は誘電特性を向上させる上では有効であるが、使用量の増加に伴い硬化物が硬くなり接着性や難燃性、そして加工作業性の何れも十分に満たすことは困難であった(特許文献2)。
【0010】
もう一つの低誘電材料としてはポリフェニルエーテル樹脂とフェノール性化合物とを反応させた変性フェノール化合物を、エポキシ樹脂と併用して用いる手法も数多く報告されている。ここでの低誘電性付与材料である変性フェノール材料は、その合成に際して分解を伴う再重合により分子量が必然的に高くなり、ガラスクロスへの含浸等の作業性の低下を招くことや、また原材料が高価な点からも、汎用化しつつある通信端末機器用途への展開には非常に不向きであった(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)を必須成分とする。
【0025】
一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)において、mは繰り返し数であり、平均値は0<m<10であることが必要であり、好ましくは0.01<m<8であり、より好ましくは0.05<m<5である。m=0、即ち一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)が含まれないと低誘電特性に効果がなく、mが大きいと高粘度となる恐れがある。mが平均値で0<m<10の範囲であれば、高粘度にもならず、低誘電特性の効果を発現できる。また、フェノール性水酸基当量は特に規定がないが、1000g/eq以下が好ましく、500g/eq以下がより好ましい。フェノール性水酸基当量が大きいと分子量が大きくなるために高粘度となり、また硬化物の耐熱性が低下する恐れがある。ここで、平均値は数平均である。
【0026】
また、一般式(1)のX、Yは置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基または一般式(2)で表される基から選ばれる少なくとも1種であり、同一であってもよく異なっていてもよい。置換基を有する場合、置換基としては炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子であり、これらの炭化水素基、ハロゲン原子の具体例としては、後記する一般式(2)中のR
1と同じものが挙げられる。
一般式(2)中、R
1は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン原子であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。炭素数1〜10の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基や、シクロヘキシル基等の炭素数4〜10の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インダニル基等の炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基等の炭素数7〜10の置換基を有していてもよいアラルキル基等の置換基が挙げられ、好ましい置換基はメチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基である。
R
2は単結合または二価の基であり、ハロゲン原子及び硫黄元素、窒素元素、酸素元素等のヘテロ元素を含んでいてもよい。二価の基の具体的な例としては、−CH
2−,−C(CH
3)
2−,−CH(CH3)−,−C(CF
3)
2−,−CO−,−O−,−S−,−SO
2−,ベンジリデン基、α−メチルベンジリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基、9H−フルオレン−9−イリデン基、またはシクロヘキセニル基等が挙げられ、これらの基の芳香族骨格には更にR
1と同義の置換基を有していてもよい。好ましい二価の基としては、−CH
2−,−C(CH
3)
2−,−CO−,−O−,−S−,−SO
2−,9H−フルオレン−9−イリデン基である。
【0027】
また、一般式(1)〜(4)において、同一の記号は、特段の断りがない限り、同一の意味を有する。
【0028】
前記のフェノール化合物(B)は、まず、前記のジヒドロキシ化合物(a)と前記のハロゲン化メチル基含有化合物(b)を反応させることで得られる。
【0029】
従来より、水酸基をアルカリ金属塩としハロゲン化物との反応によるポリエーテル合成が知られており、フェノール化合物(B)を得るためのジヒドロキシ化合物(a)とハロゲン化メチル基含有化合物(b)との反応ではこのポリエーテル合成法を用いることができる。なお、一般式(1)のmはジヒドロキシ化合物(a)とハロゲン化メチル基含有化合物(b)のモル比からおよその計算が可能であり、モル比が1に近いほどmが大きくなる。しかし、両末端がヒドロキシ基となる必要があることから、(a)/(b)比は1より大きい。
また、耐熱性を更に付与したい場合は3官能以上のヒドロキシ化合物を少量併用すると効果を発するが、硬化物が高弾性化するため接着力に影響を与えない程度が許容される。
【0030】
ジヒドロキシ化合物(a)を具体的に例示すれば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のフェニレン基含有ジヒドロキシ化合物、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−カルボニルビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ビスフェノールアセトフェノン等の2価のフェノール類が挙げられ、更に上記一般式(2)のR
1と同義の、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を置換基として有するこれらの化合物等が挙げられる。好ましくは、4−ヘキシルレゾルシノール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビフェノール、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−カルボニルビスフェノール、ビスフェノールフルオレン、テトラブロモビスフェノールAが挙げられ、より好ましくは、テトラメチルビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、テトラブロモビスフェノールAが挙げられる。
【0031】
ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を具体的に例示すれば、ビスクロロメチルベンゼン、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニル、ビスクロロメチルフルオレン等であり、更に上記一般式(2)のR
1と同義の、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を有するこれらの化合物等が挙げられる。
【0032】
フェノール化合物(B)はジヒドロキシ化合物(a)とハロゲン化メチル基含有化合物(b)を反応させて得られる。この時、ジヒドロキシ化合物(a)1.0モルに対し、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)を0.001〜1.0モルの範囲で反応させることが必要であり、好ましい範囲は0.01〜0.9モルであり、より好ましい範囲は0.05〜0.8モルであり、更に好ましい範囲は0.1〜0.7モルである。ハロゲン化メチル基含有化合物(b)が1モル以上では、反応生成物の末端基がハロゲンになるため一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)が得られない。
【0033】
ジヒドロキシ化合物(a)とハロゲン化メチル基含有化合物(b)との反応は炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に行うことができ、反応温度は20〜100℃であり、好ましくは50〜60℃であり、反応時間は1〜10時間である。20℃以下では反応が進行せず、100℃以上では親電子置換反応が起きる恐れがある。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂(A)は
、ノボラック型のエポキシ樹脂である。エポキシ基が少ない
と硬化物の耐熱性に悪影響がでる恐れがあり、エポキシ基が多いと接着性に悪影響がでる恐れがある
【0035】
また、
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂がハロゲンフリーで難燃性を必要とする場合は、0.5〜6.0質量%のリン含有率であるリン含有エポキシ樹脂を50〜100質量%含
む。リン含有率が小さい場合は、本発明のフェノール化合物(B)に難燃性の高い骨格を導入したり、或いは充填材や難燃助剤を駆使しても十分な難燃性が発揮できない恐れがある。またリン含有率が大きい場合は、難燃性は十分発揮できるが、樹脂組成物が高粘度になったり、溶剤溶解性や耐水性の悪化を招く恐れがある。また、リン供給原料にDOPOを使用した場合は、エポキシ樹脂(A)の軟化点も非常に高くなり、溶融あるいは含浸、注型といった作業性が低下する上に、エポキシ樹脂(A)自体の分子量が高まり、フェノール化合物(B)との反応性も低下するので、硬化物としての耐熱性や接着性、誘電特性の効果を発揮できない恐れがある。そのため、リン含有率は0.5〜6.0質%そのため、リン含有率は0.5〜6.0質量%の範囲に制御す
る。リン含有率が、1.0〜5.0質量%の範囲がより好ましく、2.0〜4.0質量%の範囲が更に好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂(A)の具体的な例としては、エポトートYD−128、エポトートYD−8125、エポトートYD−825GS(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポトートYDF−170、エポトートYDF−170B、エポトートYDF−8170、YDF−870GS(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、YSLV−80XY(新日鉄住金化学株式会社製テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エポトートYDC−1312(新日鉄住金化学株式会社製ヒドロキノン型エポキシ樹脂)、jER YX4000H(三菱化学株式会社製ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポトートYDPN−638、エポトートYDPN−63X(新日鉄住金株式会社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートYDCN−701(新日鉄住金化学株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1201(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、TX−0710(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、エピクロンEXA−1515(大日本化学工業株式会社製ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1355、エポトートZX−1711(新日鉄住金化学株式会社製ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、エポトートESN−155(新日鉄住金化学株式会社製β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトートESN−355、エポトートESN−375(新日鉄住金化学株式会社製ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトートESN−475V,エポトートESN−485(新日鉄住金化学株式会社製α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、EPPN−501H(日本化薬株式会社製トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、スミエポキシTMH−574(住友化学株式会社製トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、YSLV−120TE(新日鉄住金化学株式会社製ビスチオエーテル型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1684(新日鉄住金化学株式会社製レゾルシノール型エポキシ樹脂)、エピクロンHP−7200H(DIC株式会社製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、TX−0929、TX−0934、TX−1032(新日鉄住金化学株式会社製アルキレングリコール型エポキシ樹脂)、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製脂肪族環状エポキシ樹脂)、エポトートYH−434(新日鉄住金化学株式会社製ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン)、jER 630(三菱化学株式会社製アミノフェノール型エポキシ樹脂)、エポトートFX−289B、エポトートFX−305、TX−0932A(新日鉄住金化学株式会社製リン含有エポキシ樹脂)、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上を併用して使用してもよい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤成分として前記の一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)を必須としているが、本発明の目的を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂硬化剤を併用することもできる。
【0038】
併用できる他のエポキシ樹脂硬化剤を具体的に例示すれば、フェノール硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン類等の2価のフェノール類、トリヒドロキシナフタレン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、ジシクロペンタジエンとフェノール類から得られる共縮合系のフェノール類、クレゾール類とホルムアルデヒドとアルコキシ基置換ナフタレン類から得られる共縮合系のフェノール類、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から得られるフェノールアラルキル系のフェノール類、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から得られるビフェニルアラルキル系のフェノール類、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル系のフェノール類等が挙げられる。
その他のエポキシ樹脂硬化剤としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びそれらとトリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩であるイミダゾール塩類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物及びそれらとフェノール類、フェノールノボラック樹脂類等との塩類3フッ化硼素とアミン類、エーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウムまたはヨードニウム塩等が挙げられる。
【0039】
これらのエポキシ樹脂硬化剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、一般式(1)で表されるフェノール化合物(B)と他のエポキシ樹脂硬化剤の合計に対して、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは40質量%未満であり、更に好ましくは25質量%未満である。
【0040】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して、フェノール化合物(B)を含むエポキシ樹脂硬化剤の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲が好ましく、0.5〜1.1モルがより好ましく、0.7〜1.0モルが更に好ましい。エポキシ基に対してエポキシ樹脂硬化剤が少なくても、多くても、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。なお、エポキシ樹脂硬化剤の活性水素基とは、エポキシ基と反応する官能基を示し、具体的には、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。硬化促進剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)100質量部に対して0.02〜5.0質量部が必要に応じて用いられる。これら硬化促進剤を選択的に用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間の短縮することができる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることができる有機溶剤としては、特に規定するものではないが、具体的に例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲でエポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を配合してもよい。具体的に例示すれば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニル化合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルホルマール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じてフィラーを用いることができる。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、水酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機フィラーが挙げられるが、有機系または無機系の耐湿顔料、鱗片状顔料等顔料等を配合してもよい。一般的無機充填剤を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填剤や、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー等の有機充填剤等を配合することができる。
【0045】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、難燃剤、揺変性付与材、流動性向上剤等の添加剤を配合してもよい。揺変性付与材としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げ類ことができる。更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を配合できる。
【0046】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られるプリプレグについて説明する。シート状基材としては、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布または不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明のエポキシ樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば前記の基材を、前記のエポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
【0047】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる接着シートについて説明する。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどのエポキシ樹脂組成物に溶解しないキャリアフィルム上に、本発明のエポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥してシート状に成型する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で樹脂シートが形成されるものである。この時エポキシ樹脂組成物を塗布するシートにはあらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくと、成型された接着シートを容易に剥離することができる。ここで接着シートの厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁を有する絶縁接着シートとなるが、エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることができる。
【0048】
次に、本発明のプリプレグや絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一枚または複数枚積層し、片側または両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば温度を160〜220℃、圧力を49.0〜490.3N/cm
2(5〜50kgf/cm
2)、加熱時間を40〜240分間にそれぞれ設定することができる。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面または両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板にエポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を前記のエポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができるものである。またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚または複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができるものである。
【0049】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低誘電特性、耐熱性、低吸湿性等の点で優れたものとなる。この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮形成、トランスファー形成等の方法により、成型加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜250℃の範囲である。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物とその組成物を使用して得られたプリプレグ、接着シート、積層板、封止剤、注型物、硬化物は、優れた低誘電特性、耐熱性、低吸湿性、接着性に優れた特性を示すものであった。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例において、特に断りがない限り、部は「質量部」を表し、%は「質量%」を表す。
【0052】
(1)エポキシ当量の測定
JIS K 7236規格に準拠して測定した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸−酢酸溶液を用いた。
【0053】
(2)リン含有率の測定
試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、リン原子含有率を%で表した。なお、エポキシ樹脂組成物の測定の試料にはBステージ樹脂粉を用いた。
【0054】
(3)フェノール性水酸基当量の測定
試料に4%のメタノールを含むTHFを加え、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを加えて、紫外可視分光光度計を用いて波長400nmから250nm間の吸光度を測定し、フェノール性水酸基を水酸基1当量当たりの試料のg数として求めた。
【0055】
(4)吸水率の測定
JIS C 6481に準処し、23℃下における24時間浸水前後の重量変化により測定を行った
【0056】
(5)比誘電率及び誘電正接の測定
空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))によって、1GHzの値を測定した。
【0057】
(6)接着力の測定
JIS K 6854−1に準拠し、島津製作所製オートグラフにて、25℃雰囲気下、50mm/minにより測定した。
【0058】
(7)耐水性の測定
耐水性の指標としてPCT後ハンダ耐熱を測定した。JIS C 6481に準じて作製した試験片を121℃、0.2MPaのオートクレーブ中に3時間処理した後、260℃のハンダ浴中につけて、20分以上膨れやはがれが生じなかったものを○とし、10分以内に膨れやはがれが生じたものを×とし、それ以外を△と評価した。
【0059】
(8)T−288試験
IPC TM−650に準じた方法により測定を行った。
【0060】
(9)ガラス転移温度の測定
JIS K 7121、示差走査熱量測定に準拠して測定した。SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定し、2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)より求めた。
【0061】
(10)難燃性の測定
銅張積層板から銅箔部分をエッチング液に浸漬することで除去し、洗浄と乾燥を行った後に、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を用いて、UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)の試験法(V法)に準じて着火して燃焼時間の測定を行った。評価はV−0,V−1,V−2で記した。但し、完全に燃焼したものは、「燃焼」と記した。
【0062】
合成例1(フェノール化合物(B1)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを806部と水酸化カリウムを201.7部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン(以下、TMBPS)を550部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)として4,4’−ビスクロロメチルビフェニル(以下、BCMB)を4.5部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを488部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを1290部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B1)526部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は156g/eqであった。
【0063】
合成例2(フェノール化合物(B2)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを367部と水酸化カリウムを91.7部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを250部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを61.5部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを360部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを685部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B2)279部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は250g/eqであった。
【0064】
合成例3(フェノール化合物(B3)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを323部と水酸化カリウムを80.7部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを220部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを90.2部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを401部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを663部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B3)261部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は432g/eqであった。
【0065】
合成例4(フェノール化合物(B4)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを293部と水酸化カリウムを73.3部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを114.8部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを441部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを657部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B4)253部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は702g/eqであった。
【0066】
合成例5(フェノール化合物(B5)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを293部と水酸化カリウムを73.3部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを123部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを460部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを670部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B5)230部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は1018g/eqであった。
【0067】
合成例6(フェノール化合物(B6)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを293部と水酸化カリウムを73.3部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPSを200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてビスクロロメチルベンゼン(P−キシリレンジクロリド:PXDC)を57.2部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを307部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを544部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B6)215部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は399g/eqであった。
【0068】
合成例7(フェノール化合物(B7)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを438部と水酸化カリウムを109.6部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてテトラメチルビスフェノールF(以下、TMBPF)を250部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてPXDCを51.2部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを265部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを653部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B7)266部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は213g/eqであった。
【0069】
合成例8(フェノール化合物(B8)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを257部と水酸化カリウムを64.1部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてビスフェノールフルオレン(以下、BPFL)を200部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)としてBCMBを71.7部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを378部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを585部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B8)203部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は484g/eqであった。
【0070】
合成例9(フェノール化合物(B9)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノールを219部と水酸化カリウムを54.8部仕込み撹拌し、これにジヒドロキシ化合物(a)としてTMBPFを125部投入し、アルカリ金属塩とした。その後、ハロゲン化メチル基含有化合物(b)として1,5−ビスクロロメチルナフタレン (以下BCMN)を55部と溶剤としてビス(2−メトキシエチル)エーテルを201部投入し、撹拌しながら75℃まで昇温させ、2時間反応した。
反応終了後、濾過により生成した塩を除き、50mmHgの減圧下100℃まで昇温しメタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル全量を留去したのち、トルエンを393部仕込み溶解した。リン酸で中和分液した後、更に水洗分液を2回繰り返した後、トルエンを留去して淡黄色固形状のフェノール化合物(B9)142部を得た。得られたフェノール化合物のフェノール性水酸基当量は370g/eqであった。
【0071】
合成例10(エポキシ樹脂(A3)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにYDPN−638(新日鉄住金化学株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量=177g/eq)を359部と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA:三光株式会社製)141部を160℃で4時間反応させ、リン含有エポキシ樹脂(A2)を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は370g/eq、リン含有率=4.0%であった。
【0072】
合成例11(エポキシ樹脂(A6)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにHCAを67部、1,4−ナフトキノンを48部、及びトルエンを142部入れて、75℃で30分間撹拌した後、110℃で90分間脱水反応させた後にESN−485(新日鉄住金化学株式会社製、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量=296g/eq)518部を加えた後、昇温してトルエンの除去を行った。その後、触媒としてトリフェニルホスフィン(TPP)を0.01部加えて、160℃で4時間反応させ、リン含有エポキシ樹脂(A5)を得た。得られたエポキシ樹脂の当量は551g/eq、リン含有率=1.5%であった
【0073】
合成例12(エポキシ樹脂(A7)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにHCAを70部、1,4−ナフトキノンを25部、及びトルエンを148部入れて、75℃で30分間撹拌した後、110℃で90分間脱水反応させた後にNC−7700(日本化薬株式会社製、βナフトールクレゾール縮合型エポキシ樹脂、エポキシ当量=222g/eq)540部を加えた後、昇温してトルエンの除去を行った。その後、触媒としてTPPを0.01部加えて、160℃で4時間反応させ、リン含有エポキシ樹脂(A6)を得た。得られたエポキシ樹脂の当量はエポキシ当量372=g/eq、リン含有率=1.5%であった。
【0074】
実施例及び比較例で使用した、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤は以下の通りである。
【0075】
エポキシ樹脂(A)
(A1):YDPN−638(新日鉄住金化学株式会社製、フェノールノボラックエポキシ樹脂、エポキシ当量=177g/eq)
(A2):ESN−485(新日鉄住金化学株式会社製、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量=296g/eq)
(A3):合成例10のエポキシ樹脂
(A4):TX−0821(新日鉄住金化学株式会社製、リン含有エポキシ樹脂、エポキシ当量=536g/eq、リン含有率=3.0%)
(A5):TX−1106B(新日鉄住金化学株式会社製、リン含有エポキシ樹脂、エポキシ当量=385g/eq、リン含有率=2.5%)
(A6):合成例11のエポキシ樹脂
(A7):合成例12のエポキシ樹脂
【0076】
硬化剤(B)
(B1):合成例1のフェノール化合物
(B2):合成例2のフェノール化合物
(B3):合成例3のフェノール化合物
(B4):合成例4のフェノール化合物
(B5):合成例5のフェノール化合物
(B6):合成例6のフェノール化合物
(B7):合成例7のフェノール化合物
(B8):合成例8のフェノール化合物
(B9):合成例9のフェノール化合物
(B10):ショウノールBRG−557(昭和電工株式会社製、フェノールノボラック樹脂、フェノール性水酸基当量=105g/eq、軟化点=86℃)
(B11):TH−2500(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型フェノール樹脂、フェノール性水酸基当量=240g/eq、軟化点=82℃)
(B12):ジシアンジアミド(DICY、活性水素当量=21g/eq)
【0077】
硬化促進剤
(C1):キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)
【0078】
実施例1〜12、及び比較例1〜2
表1に示す配合処方により加熱したエポキシ樹脂(A)に硬化剤(B)を120℃に加熱しながら、撹拌し均一化してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物は同温度下で減圧脱泡した後、硬化促進剤を投入して丁寧に気泡を巻き込まないように均一化して金型に注型し、熱風循環オーブン中にて、150℃で2時間、次いで、180℃で3時間硬化して硬化物を得た。得られた注型硬化物の評価結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例13〜18、及び比較例3〜8
表2に示す配合処方によりエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤、及び溶剤を配合し、不揮発分が50%のエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤は予めメチルエチルケトン(MEK)に溶解して使用した。得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡株式会社製、IPC規格の2116)に含浸させた後、その含浸クロスを熱風循環オーブン中にて、150℃で7分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。得られたプリプレグの一方は積層成形用にプリプレグ4枚と銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。もう一方は誘電特性測定用に樹脂単独硬化物成形を目的として、プリプレグ数枚の粉砕から得られた約10gのBステージ樹脂粉を用いて、テフロン枠型を使用して同一の真空プレス硬化条件により2mm厚の樹脂板を得た。これら得られた成形物の評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】