【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 公益社団法人応用物理学会 発行日 平成25年3月11日 刊行物名 第60回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集 〔刊行物等〕 発行者名 公益社団法人応用物理学会 発行日 平成25年8月31日 刊行物 第74回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置やディスプレイ等の電子装置の分野において、大面積で高精細の導電性回路パターンが要望されている。従来、導電性回路パターンは、蒸着法、スパッタ法、又はメッキ法、塗布法等による金属薄膜の作製と、マスクやリソグラフィーによるパターン形成を組合せた方法により形成されていた。
【0003】
例えば、有機半導体装置は、薄膜を用いた大面積の電子装置を作ることが可能であり、また、製造工程に高温プロセスを必要としないのでプラスチック基板上への形成が可能であることから、大面積でフレキシブルな電子装置として有望である。その利点を生かすために、有機半導体装置に用いる導電性回路パターンの形成を、塗布により行うことが提案されている。
【0004】
また、導電性回路パターンを形成するための導電性インクとして、活性の高い銀等の金属ナノ粒子の表面を有機分子層で保護し、溶媒中に分散して得られるナノメタルインクの開発が進展している(特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、耐熱性の低いフレキシブルプリント基材でも使用できる低温焼結可能な導電性形成材料として、被覆銀超微粒子が提案されている。特許文献1では、粒子径が30nm以下で、保護分子アミンにより覆われた被覆銀超微粒子が示され、保護分子アミンとして、沸点が100℃から250℃の範囲内にある中短鎖アルキルアミンや、沸点が100℃から250℃の範囲内にある中短鎖アルキルジアミンを主成分として含むことが示されている。特許文献1では、この被覆銀超微粒子を適宜の揮発性の分散媒に分散させた分散液を用いて、スピンコート法やインクジェット法によって所望の基体上に塗布を行い、120℃以下の適宜の温度に晒すことによって、分散媒を揮発させ被覆銀超微粒子の保護膜を形成するアミンを離脱させることにより銀超微粒子が焼結し、基体上に金属銀の薄膜が形成される現象が、記載されている。この現象を利用することで、被覆銀超微粒子が適宜の分散媒に分散した分散液をインクとして、金属薄膜を所望の基体上に印刷により形成することが可能である、と記載されている。
【0006】
特許文献2では、金属アミン錯体分解法により被覆金属微粒子を製造する際に製造を円滑にすると同時に低温においても円滑に焼結が可能な被覆金属微粒子について開示されている。特許文献2には、被覆金属微粒子について、アルキルアミンを含む被膜で被覆された被覆金属微粒子であって、当該被覆には炭素数が5以下であるアルキルアミンが含まれることが好ましいこと、被覆金属微粒子における被覆の重量割合が20重量%以下であることが好ましいこと、被覆金属微粒子の平均粒径が30nm以下であることが好ましいこと、被覆金属微粒子の金属は、銀を主成分とすることが好ましいこと、銀の他に銅やニッケルであってもよいことが開示されている。
【0007】
特許文献2には、金属アミン錯体分解法により製造された被覆金属微粒子を用いて、当該被覆金属微粒子が高い割合で有機溶媒中に分散したインク状物や、バインダーと混合してペースト状物を製造し、これらを用いて低温で被覆金属微粒子の焼結をさせようとする場合、使用するアミンとしては、アルキル基の一部にアミノ基が結合したアルキルアミン、アルキルジアミン等が望ましく使用されることが開示されている。また、アミンとは、アルキルアミン、アルキルジアミン、及びその他の構造のアミンを含むものであることが開示されている。
【0008】
また、特許文献2では、被覆金属微粒子を、好ましくは重量割合30重量%以上で、有機溶媒に分散させた被覆金属微粒子分散液を、インクジェット法で金属配線パターンを形成することが記載されている。また、プラズマ処理された領域にディスペンサーにより金属配線パターンを形成することが提案されている(非特許文献2参照)。
【0009】
また、パターンの形成方法として、基材表面に表面エネルギーの異なる親水性・疎水性の表面パターニングを施し、これにより材料溶液の濡れ広がりを制御する方法が知られている。
【0010】
例えば、特許文献3には、基材の表面に、パターンを形成するための材料が優先的に堆積される表面特性を有する第1の領域と、第1の領域よりパターンを形成するための材料が堆積され難い表面特性を有する第2の領域と、を形成する工程と、基材に対してパターンを形成するための材料を供給して、第1の領域にパターンを選択的に形成する工程と、を含むパターン形成方法が開示されている。パターンを形成する材料は、直径100nm以下の、プラチナ、金、銀などの金属粒子を含む溶液であり、基材に対して液体状態で供給している。特許文献3では、基材の表面特性に選択性を付与する工程として、シランカップリング剤等を表面修飾膜として使用し、該表面修飾膜を基材上に形成し、第1の領域の表面修飾膜に光照射することにより分解除去することが示されている。また、基材に対してパターン形成材料を液体状態で付与する工程として、ミストデポジション法が示されている。
【0011】
また、特許文献4では、フッ素樹脂重合膜を基板表面に形成した上にパターン化した紫外線を照射し、フッ素樹脂膜を物理的に除去することにより親撥パターンを作製し、このパターン上に導電性材料溶液を塗布することにより導電性回路パターンを形成する技術が提案されている。
【0012】
また、非特許文献3では、熱酸化シリコン基板を自己組織化単分子膜処理することにより撥水性表面とした上で、UV光照射により親水パターン領域を形成し、その後、パターン内部に、有機半導体を溶解させたインクと析出を促進するインクの2種類のインクを、インクジェット法により、親水部分をはみ出さないように滴下する技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のパターン形成のための塗布工程は、レジスト膜を基板上に設けてリソグラフィー工程を必要とするため、工程が複雑化したり、多数の工程による基板品質・回路素子の劣化が無視できないという問題がある。
【0016】
従来技術の特許文献1、2や非特許文献1に示されたような、保護分子アミンにより覆われた被覆金属超微粒子を分散媒に分散させた分散液(インク)を用いて、導電性パターンを形成しようとすると、インクとしての安定性(高分散性)と、塗布後の低温凝集/融着性(低焼成温度)という、二つの相反する要請を両立させることが重要な課題である。
【0017】
特許文献1や2では、スピンコート法やインクジェット法によって所望の基体上に塗布を行うことが示されているが、これらの方法では、金属超微粒子の凝集や付着膜厚が不十分なため、望まれる導電性が実現できないという問題がある。
【0018】
金属ナノ粒子の印刷方法として、インクジェット印刷、反転印刷、μコンタクト印刷等が考えられるが、これらは、工程数が多かったり、特殊な装置の開発を必要とするので、より簡便な方法が工業的に望まれる。また、これらの印刷方法では、さらに、大面積・高精細の金属配線パターンを製造することが難しかった。
【0019】
また、特許文献3に示されたような基板表面上に表面エネルギーの異なる親水・撥水パターンを形成する方法では、高精細な導電性パターンを形成しようとすれば、パターンの各部位に必要な微量なインクの供給が必要になるため、プロセスが複雑化するなどの問題が生じる。高精細になるほど、インク液滴の表面エネルギーが支配的になり、基板表面の表面エネルギー差のみで、自発的にパターン形成することはできなくなるためである。
【0020】
また、非特許文献3は、パターン領域内部のみに有機単結晶薄膜を形成して有機半導体パターンを形成するものであるので、親撥パターンを利用しているが、親水領域のみにインクを供給する必要があり、また、パターン一つ一つを順番に作製していく必要があるという問題がある。
【0021】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、本発明は、保護分子アミンにより覆われた被覆銀超微粒子を分散媒に分散させた分散液(インク)を用いて、導電性パターンを形成する方法を提供することを目的とする。また、本発明の方法によって、導電性が高く、高精細な導電性パターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
【0023】
本発明の導電性パターンの形成方法は、基体上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域に照射した後、粒子表面が有機分子層で保護された金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、前記基体上に塗布することにより、前記パターン領域に前記インクを付着・凝集させることを特徴とする。前記有機分子層は、アルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含むことが好ましい。
【0024】
前記塗布は、前記基体との間隙又は接触部に前記インクが保持される塗布部材によることが好ましい。前記塗布はブレードによる塗布であることが好ましい。例えば、前記インクは塗布部材のスリット状の排出口機構から前記基体に供給されるようにできる。前記塗布はロールによる塗布であることが好ましい。前記絶縁膜は、フッ素系樹脂であることが好ましい。前記紫外線を照射した後のパターン領域は、前記絶縁膜の光化学反応によるラジカルが生成した反応性表面であることが好ましい。
【0025】
また、紫外線は、波長が10nm以上250nm以下の紫外線であることが好ましい。また、ブレードによる掃引は、基板に対するブレードの相対的な掃引速度が、10mm/sec以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、紫外線照射された領域のみにインクが付着し、その他の領域にはインクが付着しないので、塗布と同時に導電性パターンが形成できる。そのため、極めて簡易な印刷方法により、高精細で導電性の優れた導電性回路パターンを形成できる。本発明の方法によれば、最小配線幅5μm以下、解像度200ppi以上の導電性回路パターンを、高歩留まりで製造できる。本発明によれば、最小線幅0.2μmピッチの高精細導電性回路パターンが塗布法のみにより作製することが可能となる。
【0027】
本発明によれば、ブレードやロール等の塗布部材から供給されるインクは反応性表面領域にのみ選択的に付着・凝集するので、インクを基板上から除去する必要がなく、無駄になるインクがない。ブレードやロール等を基体に対して相対的に移動する塗布によるので、大面積の導電性回路パターンの形成に適している。例えば、最小で1ミリリットル以下のナノメタルインクを使用した場合に約1メートル四方の基板表面に導電性回路パターンを印刷塗布により形成できるので、無駄になるインクがなく、生産効率がよい。
【0028】
本発明によれば、ブレードを掃引したり、ロールを相対的に移動する速度をゆっくりした一定低速度で行うことにより、均一な膜厚を作製することができる。また、インクの濃度を変えることにより、膜厚を制御して、所望の膜厚にすることができる。塗布工程において、掃引速度等の相対移動速度、環境(温度、湿度等)を最適化して制御することにより、所望の精細度を有する導電性回路パターンを形成することができる。本発明によれば、金属ナノ粒子インクを構成する金属の体積抵抗率の3倍以上60倍以下程度の低い体積抵抗率、即ち優れた高導電性を有する導電性パターンが得られる。また、本発明による導電性パターンは、金属ナノ粒子作製条件を最適化することにより、金属ナノ粒子インクを構成する金属の体積抵抗率の3倍以下のきわめて低い体積抵抗率を実現することが可能となる。
【0029】
従来は、アルカンチオール基を保護分子とする金属ナノ粒子をインクとして使用することが一般的であったが、チオール基と金属部との結合力が強いため、保護分子が金属に強く結合し溶媒中に分散しやすいという欠点があった。これに対して、本発明では金属ナノ粒子の保護分子として、金属部との結合がより弱いアミンを用いるので、塗布時に金属ナノ粒子の付着・凝集が生起されて、高精細の導電性パターンが形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0032】
本発明は、基板上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域のみに照射した後、有機分子被覆層を有する金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、塗布部材に付着させて、該塗布部材を基板上で相対移動することにより、導電性パターンを形成する方法である。本発明によれば、塗布部材を基体に対して相対的に移動させることにより、該塗布部材のインクが前記パターン領域に付着・凝集する一方で、前記パターン領域以外の領域にはインクが付着しない状態が生起される。本発明では、粒子表面が、アルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散したインクを使用することが好ましい。
【0033】
基板に一定の間隙をもって対向する塗布部材を装備し、塗布に必要な量のインクを供給し、基板を一定速度で搬送させるか、又は塗布部材を基板に平行に移動させるとよい。塗布部材としては、ブレード形状やロール形状等があり、基板と一定の間隙をもって対向する塗布部材であって該間隙にインクが通過又は保持できる構造であることが好ましい。例えばブレードコータやロールコータでは、基板との間に生じる線状の間隙に、インクが毛細管現象等により存在し通過する。また、前記基体と明らかに間隙を形成する場合に限らず、接触部に前記インクが保持される塗布部材でもよい。より具体的には、ブレードコータ、ロールコータ、スリットコータ、ダイコータ、スロットダイコータ、キャピラリコータ等が挙げられる。また、塗布部材にインクを供給する構造として、スリット等を備える構造を備えてもよい。
【0034】
本発明では、基板に一定の間隙をもって対向する塗布部材又は基板と接触部をする塗布部材を、基板と平行に相対移動させることにより、前記基体との間隙又は接触部に通過又は保持されるインクが、前記パターン領域に付着・凝集する一方で、前記パターン領域以外の領域にはインクが付着しない状態が生起される。
【0035】
本発明では、紫外線を照射された絶縁膜のパターン領域は、その表面が光化学反応により反応性表面となっている。ここで反応性表面とは、紫外線照射にともなうパーフルオロ樹脂等の絶縁膜の光化学反応によって絶縁膜表面にラジカル基を生じ、金属ナノ粒子インクの付着・凝集を促進しやすい状態になっていることをいう。このようにして生成したラジカル基が、アルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層の離脱を促進し、各粒子の金属どうしの付着・凝集(融着・凝集)を促進する。このようにして得られた金属ナノ粒子インクの凝集体は、基板に強く付着した状態となっている。一方、特許文献3において記載されている表面エネルギーの差を利用した親撥パターンを用いた場合には、金属ナノ粒子と基板表面との間に付着・凝集は生じないため、高精細パターンの形成が困難なだけでなく、乾燥後に得られた金属ナノ粒子の凝集体は容易に基板表面から剥離してしまう。このため、高精細な導電性パターン技術として利用することは困難である。
【0036】
なお、ここで、付着・凝集、又は、融着・凝集とは、金属ナノ粒子が、基板(絶縁膜)に、付着(融着)しながら凝集していく状態をさしている。
【0037】
本発明の実施の形態は、主に次の工程からなる。
(1)基体上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域のみに照射する紫外線照射工程。
(2)粒子表面がアルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインク(以下、金属ナノ粒子インクともいう。)を、前記基体上に塗布する工程。
【0038】
本発明の実施の形態を、
図1及び2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す概略図である。
図1(1)のように、基板上に形成された絶縁膜3に対して、紫外線をパターン領域のみに照射することにより、パターン領域を反応性表面4にする。
図1(2)のように、基板5に成膜された絶縁膜3上に塗布部材を相対移動させてインクを塗布する。
図1(2)では、インク2を付着させたブレード1を掃引速度Vで矢印方向に掃引する様子を示している。その結果、
図1(3)のように、反応性表面であるパターン領域に導電性パターン6が形成される。
【0039】
図2は、本発明の実施の形態をブレードコート法の例で詳しく説明するための斜視図である。
図2は、ブレード1を掃引する様子を表す。
図2(1)のように、絶縁膜3が成膜された基板5上であって、反応性表面4のパターン領域が形成されている基板上に、ブレード1を接触させ、その接触部の中央に被覆金属ナノ粒子を含むインクを滴下すると毛管現象により濡れ広がる。
図2(2)のように、インク2がブレード1に濡れ拡がった後、ブレード1を基板表面上に沿って掃引させる。
図2(3)のように、ブレード1が掃引されると、反応性表面のパターン領域のみに金属ナノ粒子含有インクが付着・凝集されて、導電性回路パターンが形成される。本実施の形態で形成された導電性回路パターンは、金属ナノ粒子を構成する金属からなるので、高精細金属配線が作製できる。
【0040】
(紫外線照射工程)
本発明の紫外線照射工程において、反応性表面を形成するための光化学反応の紫外線波長範囲は、下限が10nmで、上限が250nmであることが好ましい。例えば、CとFの結合エネルギーが大体、490kJ/mol程度であることから波長244nm以下であれば十分に乖離すると考えられるためである。例えば、真空紫外線(VUV)であることが好ましい。真空紫外線は波長が10nmから200nm程度の範囲の紫外線を指す。また、波長の下限は100nmがより好ましい。また、照射のパワーは、10〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。
【0041】
インクの付着・凝集は、絶縁膜を構成するパーフルオロ樹脂等のフッ素系樹脂表面に形成されるラジカル基を介して起こるため、反応性表面のパターン精細度は、フォトマスクの精細度と紫外線波長による回折限界によって決まる。そのため、数十秒以内のVUV光照射により絶縁膜上に最小線幅0.2マイクロメートルピッチの反応性表面のパターン領域を作製することが可能である。
【0042】
基板に形成された絶縁膜上に、パターン領域以外を覆うフォトマスクを密着して、紫外線照射を行うことができる。あるいは、ビーム径を絞った紫外線レーザー光を基板上で掃引することによりパターン形成を行ってもよい。また、フォトマスクを密着させないでパターン化された平行紫外線を基板に照射するようにしてもよい。
【0043】
基体として、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレンのような耐熱性の低いプラスチック基板や、ポリカーボネートのような耐熱性の高いプラスチック基板、シリコン基板、ガラス基板等を用いる。フレキシブルな電子装置を製造する場合は、プラスチック基板が好ましい。また、フッ素樹脂を含浸させたパルプ基板でもよい。
【0044】
絶縁膜は、フッ素系樹脂を用いることができる。絶縁膜の表面は、凹凸のない滑らかな表面であることが好ましい。絶縁膜は、紫外線を照射することにより光化学反応ラジカルが生じる必要があるので、反応性ラジカルを生じるフッ素系樹脂等のポリマー絶縁材料が好ましい。
【0045】
フッ素系樹脂として、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカンやパーフルオロアルキルエーテル環構造を有するフッ素系樹脂などを用いることができる。
【0046】
より具体的には、絶縁膜に用いるフッ素系樹脂として、パーフルオロ樹脂が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル環構造を有するフッ素系樹脂が好ましい。例えば、パーフルオロ(3ブテニルビニルエーテル)重合体(旭硝子CYTOP(登録商標))、パーフルオロジメチルジオキソール−テトラフルオロエチレン共重合体(テフロン(登録商標)AF)が挙げられる。
【0047】
(塗布工程)
本実施の形態で用いる被覆金属ナノ粒子には、アルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを、含む有機分子層を、保護層として備える金属微粒子を用いる。被覆金属ナノ粒子の被覆部分は、多数のアルキルアミン分子がアミノ基の配位結合により金属ナノ粒子に接合し、そのアルキル基部分が金属ナノ粒子表面で凝集することにより形成されているものと考えられる。このため、被覆部分の重量割合は、主に使用するアルキルアミンの分子量を調整することにより調整することができる。
【0048】
本実施の形態では、被覆金属ナノ粒子を有機溶剤中に分散させたインク状の分散液とすることにより、被覆金属ナノ粒子の被覆が除去されにくい状態で保存・使用することが望ましい。
【0049】
被覆金属ナノ粒子として被覆銀ナノ粒子を用いる場合は、銀を主成分として他の金属元素を含有する金属ナノ粒子でもよい。また、被覆金属ナノ粒子として銀に替えて銅やニッケルを用いてもよい。本発明の被覆金属ナノ粒子は、ナノサイズと一般に呼ばれるサイズ(1μm未満)であり、平均粒径が10nm以上で100nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下である。
【0050】
本実施の形態の被覆金属ナノ粒子のアルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層は、具体的には次のものが挙げられる。
【0051】
中短鎖アルキルジアミンは、特に、その構造に制限がないが、少なくとも1つのアミノ基が一級アミノ基であるRNH
2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR
1R
2NH(R
1、R
2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。中短鎖アルキルジアミンとしては、錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆金属ナノ粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
中短鎖アルキルアミンは、特に、その構造に制限がないが、一級アミノ基であるRNH
2(Rは炭化水素鎖)または二級アミノ基であるR
1R
2NH(R
1、R
2は炭化水素鎖で同じであっても異なっていてもよい)であることが望ましい。また、中短鎖アルキルアミンとしては、錯化合物の熱分解温度を考慮すれば100℃以上の沸点であること、また、得られた被覆金属超微粒子の低温焼結性を考慮すれば、250℃以下の沸点であることが考慮される。例えば、2−エトキシエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ドデシルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない
【0053】
長鎖・中鎖のアルキルアミンとしては、例えば、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン等のアルキルアミンである。なお、炭素数が6以上の長鎖・中鎖のアルキルアミンであれば、適宜、目的に応じて使用することができる。
【0054】
短鎖のアルキルアミンとしては、例えば、アミルアミン、2−エトキシエチルアミン、4−メトキシブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0055】
本実施の形態で用いるインクは、被覆金属ナノ粒子と有機溶媒とからなる。インクの有機溶媒は、テトラクロロメタン、ベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン、オクタン、テトラリン、メシチレン、ブタノール、メタノール等を用いる。また、インクの濃度は、被覆金属ナノ粒子成分がインク全重量に対して、重量%で30%以上60%以下であることが好ましい。
【0056】
金属ナノ粒子インクの濃度を制御することにより、作製する配線パターンの厚みを15〜100nmの範囲で制御することが可能である。特に30〜90nmの範囲で最適なパターン再現性が得られる。
【0057】
ブレードやロール等の塗布部材と基板との接触部に毛管現象により広がる部分は、常に塗布部材の端部で規定された形状、すなわち一定幅の直線状であるため、反応性表面となったパターンの線幅や形状が変わっても、塗布されるインクの膜厚はインクの濃度により規定される。そのため、本発明のブレードやロール等の塗布部材による塗布によれば、反応性表面のパターンにおいて、その線幅や形状が変わっても、膜厚変動が少なく一定の膜厚が印刷される。
【0058】
ブレードやロール等の塗布部材による塗布は、公知の塗布装置を利用することができる。導電性パターンを高歩留まりで実現するには、ブレード等塗布部材の基板に対する相対的な掃引速度は、上限が10mm/secであることが好ましい。これより速いと、パターンに十分インクが付着しないことが生じたりして歩留まりが悪くなる。また、掃引速度の下限は、特にないが生産効率から実用的には0.01mm/sec程度である。掃引する速度により、反応性表面のパターン領域を覆うインクの被覆面積が変化するので、適宜最適化することが好ましい。例えば、2mm/secにすると、フォトマスクの設計値と印刷されたパターンのズレが最小になったので、0.1mm/sec以上5mm/sec以下がさらに好ましい。
【0059】
塗布工程では、掃引速度の他、温度や湿度を最適化することにより、導電性パターンの膜厚や導電性を制御することができる。塗布工程は、15以上40℃以下の室温で実施することが好ましい。
【0060】
本発明の方法によれば、金属物性値の60倍程度以下の抵抗率に収まる導電配線パターンが作製できる。特に、25℃で印刷することにより配線パターンの設計値再現性が最適となる。
【0061】
塗布工程では、湿度は10〜80%の範囲で塗布することが好ましい。20%以上40%以下であることがより好ましく、特に30%で印刷することにより、配線パターンの設計値再現性が最適となる。
【0062】
本発明によれば、ブレードやロール等の塗布部材と基板の間で生じる毛管現象によるインクの広がりを保ちながら印刷するため、使用インクが少なくて済み、最小で1ミリリットルの金属ナノ粒子インクを使用した場合に約1メートル四方の基板表面に導電性回路パターンを印刷塗布により形成できる。
【0063】
なお、塗布工程の後に、100℃以下、あるいは80℃以下、で熱処理を行ってもよい。製造する電子装置によっては、熱処理の温度が他の層などの性能に悪影響を及ぼす場合があるため、熱処理をしないことが望ましい場合もある。
【0064】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の導電性回路パターンの形成方法について、図を参照して以下説明する。本実施の形態では、
図1及び
図2について説明したように、導電性回路パターンを形成する。本実施の形態は、(1)基板上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域のみに照射する紫外線照射工程と、(2)粒子表面がアルキルアミンもしくはアルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、ブレードに付着させて前記基板上を掃引する塗布工程とからなる。以下、実施例を示して説明する。
【0065】
(実施例1)
基板(ガラス板)の上に、非晶質性パーフルオロ樹脂(CYTOP(登録商標))を、スピンコート法により、2000rpm、20secで塗布した後、ホットプレート80℃で10分加熱後、さらにオーブンで150℃60分加熱して製膜した。製膜された非晶質パーフルオロ樹脂膜は、絶縁性を有し、透明性を有し、膜厚は1ミクロンであった。絶縁膜の形成されている基板上に、所望のパターンを有するフォトマスクを基板に密着し、VUV光(波長172nm)をパワー11mW/cm
-2で20秒照射した。紫外線照射された絶縁膜のパターン領域は、反応性表面となっている。パターンは、線幅5μm、200ppiとした。
【0066】
次に、シュウ酸架橋銀アルキルアミン錯体熱分解法で作製した銀ナノインクを準備する。銀ナノ粒子のサイズは10〜30nmで、被覆の保護層は、アルキルジアミンを使用した。絶縁膜の一部に紫外線照射されたパターン領域を有する基板に、ブレードを接触させ、その接触部の中央に銀ナノ粒子インクを滴下し(
図2(1))、インクが毛管現象により濡れ拡がった(
図2(2))後、ブレードを基板表面上に沿って掃引した。掃引速度は2mm/secで行った。掃引時の温度は25℃、湿度は30%であった。ブレードが掃引された基板上には、反応性表面のパターン領域のみに銀ナノインクが付着・凝集した(
図2(3))。塗布後、インクを自然乾燥させた。形成された導電パターンは、線幅6μm、長さ500μm、膜厚0.0322μmであった。導電パターンの抵抗は1303Ωで、体積抵抗率は5.00×10
-5Ωcmであった。
【0067】
(実施例2〜6)
パターン領域の線幅を、実施例1とは異なる線幅で設計した。その他は実施例1と同様の条件で、導電性回路パターンを形成した。表1に、各実施例をまとめて表す。
【0069】
各実施例で得られた銀の導電性回路パターンの体積抵抗率は、4.46E−06〜8.10E−05程度であり、銀のバルクの体積抵抗率1.47E−6Ωcmと対比してみると、銀のバルク状態の3から55倍程度以下の体積抵抗率であり、優れた高導電性を有していることがわかる。実施例1乃至3は、同じ濃度のインクを使用し、実施例4乃至6は、インク濃度を40から55%に変えてコートしている。そのため、実施例1乃至3は、同じ膜厚となり、実施例4乃至6は、膜厚がインク濃度に応じて厚くなっている。
【0070】
(実施例7)
実施例1と同様に導電パターンを形成した。VUV光(波長172nm)を、強度11mW/cm
-2で20秒照射した。紫外線照射された絶縁膜のパターン領域は、反応性表面となっている。使用したフォトマスクは、設計値が200ppiで、線幅5μmのパターンを用いた。ブレードによる掃引工程を、掃引速度2mm/secの低速度で行った。ここで、掃引工程における温度の条件を変えて、温度による影響を調べた。
図3に形成した導電パターンの光学顕微鏡写真を示す。
図3(1)は、温度30℃の場合、(2)は温度7℃の場合である。
図3(1)では、フォトマスクのパターンに対応した導電性回路パターンからなる電極金属配線パターンが高精細に形成されていることが分かる。
図3(2)では、配線が一部つながってしまったり、一部欠けている様子が分かる。このことから、導電性回路パターンを高精細で形成するには、温度15℃以上で、温度40℃以下であることが好ましい。なお、この条件は、掃引速度、湿度などが異なると最適温度が変わるので、掃引速度、湿度、温度、インクの濃度に応じて、適宜最適化することが好ましい。
【0071】
(実施例8)
実施例1と同様に導電パターンを形成した。
図4(2)に、本実施例で形成した導電パターン、即ちブレードコート膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。平均粒子径約10〜30nmの、粒子サイズの揃った銀粒子が均一に高密度で付着していることが分かる。
【0072】
(比較例1)
粒子表面が、アルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを、含む有機分子層で保護された銀ナノ粒子を、溶媒中に分散したインクを、スピンコートすることにより、導電膜を形成した。
図4(1)に、スピンコートによる導電膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。得られたスピンコート膜は、銀粒子が不均一であり、一部に亀裂もあることが分かる。
【0073】
図4(1)と(2)を比較すると、本実施の形態のブレードコート膜はスピンコート膜に比べて、銀ナノ粒子の粒が揃い、一様な膜が得られ、導電性が向上することがわかる。
【0074】
ラマンスペクトル測定をしたところ、反応性表面は、紫外線照射によって、前記ポリマー層の光化学反応によるラジカル生成を介して生成したカルボン酸(カルボキシ基)のCOOを有する表面になり、金属ナノ粒子層との界面でカルボン酸金属塩を形成していた。
【0075】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態で示した導電性パターンの形成方法を用いて、半導体装置を製造する方法である。シリコン基板に、上述の実施例と同様に、非晶質性パーフルオロ樹脂(CYTOP(登録商標))をスピンコート法により製膜する。半導体装置の電極(ドレイン、ソース)を形成するためのパターンを有するフォトマスクを、絶縁膜上に設けて、VUV光を照射する。粒子表面がアルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された銀ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、ブレードに付着させて前記基板上を掃引して、電極パターンを形成する。基板上の絶縁膜及び電極上に、有機半導体層(ペンタセンなど)を形成する。その他の工程は知られている有機トランジスタ装置の製造工程と同様に行う。
【0076】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の導電性回路パターンの形成方法について、
図1、
図2、
図5(1)及び
図6(1)を参照して以下説明する。本実施の形態では、第1実施の形態と異なり、
図1の塗布部材として、キャピラリーコータ21を用いて塗布したことが特徴である。
図5(1)は、本実施の形態のキャピラリーコーティングを説明する模式図である。絶縁膜の一部に紫外線照射されたパターン領域を有する基板面17(塗布面ともいう。)に、キャピラリーコータ21をほぼ接触させ、その接触部にキャピラリーコータ21に設けられたキャピラリー(スリット部)から金属ナノ粒子インク12を供給し(
図5(1))、インクが、キャピラリーコータ21と基板面17とが対向する間隙部に毛管現象により濡れ拡がった後、キャピラリーコータ21を基板表面上に沿って相対的に掃引する。
図5中の太い矢印はコータ或いは基板面との相対的移動方向を示している。キャピラリーコータと同様、スロットコータ、スリットコータ、ダイコータ、スロットダイコータ等を用いてもよい。
【0077】
本実施の形態は、(1)基体上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域のみに照射する紫外線照射工程と、(2)粒子表面がアルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、前記基体上をキャピラリーコータにより塗布する工程とからなる。
以下、実施例を示して説明する。
【0078】
(実施例9)
実施例1と同様に、基板(ガラス板)の上に、非晶質性パーフルオロ樹脂(CYTOP(登録商標))をスピンコート法により塗布した後、加熱して製膜した。製膜された非晶質パーフルオロ樹脂膜は、絶縁性を有し、透明性を有し、膜厚は1ミクロンから1ミクロン以下であった。絶縁膜の形成されている基板上に、所望のパターンを有するフォトマスクを基板に密着し、VUV光(波長172nm)をパワー11mW/cm
-2で20〜80秒照射した。紫外線照射された絶縁膜のパターン領域は、反応性表面となっている。パターンは、2つの正方形部分及びこれらを接続する直線部分からなり、設計値として線幅5μm、200ppiとした。
【0079】
次に、実施例1と同様の銀ナノインクを準備した。銀ナノ粒子のサイズは10〜30nmで、被覆の保護層は、アルキルジアミンを使用した。絶縁膜の一部に紫外線照射されたパターン領域を有する基板に、キャピラリーコータのキャピラリー(スリット部)に銀ナノ粒子インクを供給することにより毛管現象で広がったインクを少し加圧することにより盛り上がるインクの部分を接触させ、その接触部にコータに設けられたキャピラリー(スリット部)から銀ナノ粒子インクを連続的に供給しつつ(
図5(1))、インクが、キャピラリーコータと基板とが対向する間隙部に毛管現象により濡れ拡がっている状態のまま、キャピラリーコータを基板表面上に沿って掃引した。掃引速度は2mm/secで行った。掃引時の温度は25℃、湿度は30〜40%であった。キャピラリーコータが掃引された基板上には、反応性表面のパターン領域のみに銀ナノインクが付着・凝集した(
図2(3)参照)。塗布後、インクを自然乾燥させた。形成された導電パターンは、線幅6μmであった。
【0080】
図6(1)に、本実施の形態の導電性回路パターンの光学顕微鏡写真を示す。
図6(1)では、白い部分が導電性回路パターンである。フォトマスクのパターンに対応した導電性回路パターン(2つの正方形部分及びこれらを接続する直線部分)からなる電極金属配線パターンが高精細に形成されていることが分かる。
【0081】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態の導電性回路パターンの形成方法について、
図1、
図2、
図5(2)及び
図6(2)を参照して以下説明する。本実施の形態では、第1実施の形態と異なり、
図1の塗布部材として、ロール31を用いて塗布したことが特徴である。
図5(2)は本実施の形態のロール塗布を説明する模式図である。絶縁膜の一部に紫外線照射されたパターン領域を有する基板面17に、ロール31をほぼ接触させ、その接触部に金属ナノ粒子インク12を供給し(
図5(2))、インクが、ロール31と基板面17とが対向する間隙部(もしくは接触部)に毛管現象により濡れ拡がった状態で、回転するロール31により基板表面上にインクを塗布する。ロールへのインクの供給は従来公知の方法を用いることができる。
【0082】
本実施の形態は、(1)基体上に形成された絶縁膜に対して、紫外線をパターン領域のみに照射する紫外線照射工程と、(2)粒子表面がアルキルアミン、アルキルジアミン、若しくはその他の構造のアミンを含む有機分子層で保護された金属ナノ粒子を溶媒中に分散したインクを、前記基体上にロールにより塗布する工程とからなる。
以下、実施例を示して説明する。
【0083】
(実施例10)
実施例1と同様に、基板(ガラス板)の上に、非晶質性パーフルオロ樹脂(CYTOP(登録商標))をスピンコート法により塗布した後、加熱して製膜した。製膜された非晶質パーフルオロ樹脂膜は、絶縁性を有し、透明性を有し、膜厚は1ミクロンであった。絶縁膜の形成されている基板上に、所望のパターンを有するフォトマスクを基板に密着し、VUV光(波長172nm)をパワー11mW/cm
-2で20〜80秒照射した。紫外線照射された絶縁膜のパターン領域は、反応性表面となっている。パターンは、2つの正方形部分及びこれらを接続する直線部分からなり、設計値として線幅5μm、200ppiとした。
【0084】
次に、実施例1と同様の銀ナノインクを準備した。銀ナノ粒子のサイズは10〜30nmで、被覆の保護層は、アルキルジアミンを使用した。絶縁膜の一部に紫外線照射されたパターン領域を有する基板に、ロールをほぼ接触させ、その接触部に銀ナノ粒子インクを供給し(
図5(2))、インクが、ロールと基板とが対向する接触部に毛管現象により濡れ拡がった後、回転するローラにより基板表面上にインクを塗布した。基板上には、反応性表面のパターン領域のみに銀ナノインクが付着・凝集した(
図2(3)参照)。塗布後、インクを自然乾燥させた。形成された導電パターンは、線幅6μmであった。
【0085】
図6(2)に、本実施の形態の導電性回路パターンの光学顕微鏡写真を示す。
図6(2)では、白い部分が導電性回路パターンである。フォトマスクのパターンに対応した導電性回路パターン(2つの正方形部分及びこれらを接続する直線部分)からなる電極金属配線パターンが高精細に形成されていることが分かる。
【0086】
以上、上述の実施例ではパターンの線幅(実測)が6μmの例が最小であるが、設計するフォトマスクの線幅をさらに細くすれば、導電性回路パターンとして最小線幅0.2マイクロメートルの高精細導電性回路を塗布法のみにより完成させることができる。
【0087】
本発明の導電性パターンは、半導体装置に限らず、従来の電子装置の電極や配線パターンに用いることができ、例えば、高精細で高導電性が望まれるフレキシブルディスプレイ装置やアクティブバックプレーン装置等に適する。
【0088】
なお、上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。