特許第6229219号(P6229219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229219接触型及び/又は非接触型スイッチ並びに装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229219
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】接触型及び/又は非接触型スイッチ並びに装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20171106BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H02N11/00 Z
   H01H35/00 U
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-559079(P2015-559079)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2015051461
(87)【国際公開番号】WO2015111596
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-11475(P2014-11475)
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-183092(P2014-183092)
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 卓司
(72)【発明者】
【氏名】安積 欣志
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−041860(JP,A)
【文献】 特開2005−259488(JP,A)
【文献】 実開昭60−021713(JP,U)
【文献】 特開2009−210765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子アクチュエータ素子、前記高分子アクチュエータ素子を変形可能に支持する支持機構、前記高分子アクチュエータ素子に変形応答可能な電圧を印加する電圧印加手段、前記高分子アクチュエータが電圧の印加により特定の変形位置にあることを検出する少なくとも1つの位置検出手段、及び、スイッチのオンとオフを切り替える制御手段を備え、前記位置検出手段がアクチュエータ素子の特定位置を検出したときの信号を前記制御手段に送り、前記制御手段がスイッチのオンとオフを切り替えるスイッチにおいて、
前記位置検出手段が少なくとも1つの受光部及び発光部を備え、前記高分子アクチュエータ素子が前記発光部と前記受光部を結ぶ光軸上にあること又はないことを前記位置検出手段で検出する、非接触型スイッチ
【請求項2】
少なくとも2つの受光部及び発光部を備える、請求項に記載のスイッチ。
【請求項3】
高分子アクチュエータ素子、前記高分子アクチュエータ素子を変形可能に支持する支持機構、前記高分子アクチュエータ素子に変形応答可能な電圧を印加する電圧印加手段、前記高分子アクチュエータが電圧の印加により特定の変形位置にあることを検出する少なくとも1つの位置検出手段、及び、スイッチのオンとオフを切り替える制御手段を備え、前記位置検出手段がアクチュエータ素子の特定位置を検出したときの信号を前記制御手段に送り、前記制御手段がスイッチのオンとオフを切り替えるスイッチにおいて、
前記位置検出手段が少なくとも1つの受光部及び発光部並びに少なくとも1つの接点を備え、前記高分子アクチュエータ素子が発光部と受光部を結ぶ光軸上にあること又はないことを前記位置検出手段で検出し、かつ、前記高分子アクチュエータ素子が前記接点と接触すること又は接触しないことを前記位置検出手段で検出する接触型及び非接触型スイッチ。
【請求項4】
高分子アクチュエータ素子が、一枚のセパレーターを二枚の導電性電極膜で挟んだバイモルフ型構造からなるアクチュエータ素子である、請求項1〜のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項5】
高分子アクチュエータ素子が、電圧を印加した際にアクチュエータ素子中をイオンが移動することにより屈曲変形するアクチュエータ素子である、請求項1〜のいずれかに記載のスイッチ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のスイッチと表示部を接続してなる表示装置であって、前記スイッチのオンとオフの切り替えにより情報を表示部において表示可能であり、前記情報が画像、音、光、振動又は熱である、表示装置。
【請求項7】
前記表示部が、ディスプレイ、スピーカー、音源チップ、光源、振動源又は熱源である、請求項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記スイッチに使用される高分子アクチュエータ素子が、電圧を印加した際にアクチュエータ素子中をイオンが移動することにより屈曲変形するアクチュエータ素子である、請求項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年1月24日に出願された日本国出願第2014-011475号明細書、および2014年9月9日に出願された日本国出願第2014-183092号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、接触型及び/又は非接触型スイッチ並びに装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、スイッチとしては、MEMS 等に用いられる有機、無機のピエゾ素子を用いたものが良く知られているが、一般に、圧電特性を持たせるために、高温で加工したり、分極処理(ポーリング)をする必要がある。また、ピエゾ素子そのものの動きにより、スイッチングさせる場合、1000 ボルト近い高電圧を印加しても、アクチュエータの変形量が〜10μm程度と小さく、そのため、比較的大きな変位(数百マイクロメートル〜ミリメートルスケール)によるスイッチングは困難である。
【0004】
光源を利用した非接触型スイッチとしては液晶を用いた光偏光スイッチなどがあるが、液晶を駆動するためには、液晶を駆動させるアクティブマトリクスを設計したり、その中に液晶を入れたりする必要がある。
【0005】
接触型スイッチと非接触型スイッチは、例えば特許文献1に記載されるように別個のスイッチエレメントとして設けられており、接触型スイッチは操作の部の回転により制御され、非接触型スイッチは、スライダを動かすことにより光を透過又は遮断し、それによりスイッチのオンとオフの切り替えを行っている。
【0006】
従来の接触型又は非接触型のスイッチは、各々のスイッチエレメントが必要であり、かつ、その切り替えを速やかに行うことはできなかった。
【0007】
特許文献2は、アクチュエータを用いたスイッチを開示し、アクチュエータがキーを押し上げ、接点と接触すると押し上げられたキーを照光するように構成されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2は、非接触型のスイッチについての開示はなく、アクチュエータは単一の接点と接触するのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-22852
【特許文献2】特開2010-41860
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、オンとオフの切り替えを速やかに行うことができる接触型及び/又は非接触型スイッチ、並びに、該スイッチを用いた装置を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、複数の接続先を切り替えることができるスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のスイッチ及び表示装置を提供するものである。
項1. 高分子アクチュエータ素子、前記高分子アクチュエータ素子を変形可能に支持する支持機構、前記高分子アクチュエータ素子に変形応答可能な電圧を印加する電圧印加手段、前記高分子アクチュエータが電圧の印加により特定の変形位置にあることを検出する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの位置検出手段、及び、スイッチのオンとオフを切り替える制御手段を備え、前記位置検出手段がアクチュエータ素子の特定位置を検出したときの信号を前記制御手段に送り、前記制御手段がスイッチのオンとオフを切り替える、スイッチ。
項2. 前記位置検出手段が少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの受光部及び発光部を備え、前記高分子アクチュエータ素子が前記発光部と前記受光部を結ぶ光軸上にあること又はないことを前記位置検出手段で検出する非接触型スイッチである、項1に記載のスイッチ。
項3. 前記位置検出手段が前記高分子アクチュエータ素子の変形応答により接触可能な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの接点を備え、前記高分子アクチュエータ素子が前記接点と接触すること又は接触しないことを前記位置検出手段で検出する接触型スイッチである、項1に記載のスイッチ。
項4. 前記位置検出手段が少なくとも1つの受光部及び発光部並びに少なくとも1つの接点を備え、前記高分子アクチュエータ素子が発光部と受光部を結ぶ光軸上にあること又はないことを前記位置検出手段で検出し、かつ、前記高分子アクチュエータ素子が前記接点と接触すること又は接触しないことを前記位置検出手段で検出する接触型及び非接触型スイッチである、項1に記載のスイッチ。
項5. 高分子アクチュエータ素子が、一枚のセパレーターを二枚の導電性電極膜で挟んだバイモルフ型構造からなるアクチュエータ素子である、項1〜4のいずれかに記載のスイッチ。
項6. 高分子アクチュエータ素子が、電圧を印加した際にアクチュエータ素子中をイオンが移動することにより屈曲変形するアクチュエータ素子である、項1〜4のいずれかに記載のスイッチ。
項7. 項1〜6のいずれかに記載のスイッチと表示部を接続してなる表示装置であって、前記スイッチのオンとオフの切り替えにより情報を表示部において表示可能であり、前記情報が画像、音、光、振動又は熱である、表示装置。
項8. 前記表示部が、ディスプレイ、スピーカー、音源チップ、光源、振動源又は熱源である、項7に記載の表示装置。
項9. 前記スイッチに使用される高分子アクチュエータ素子が、電圧を印加した際にアクチュエータ素子中をイオンが移動することにより屈曲変形するアクチュエータ素子である、項7に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高分子アクチュエータ素子の大きな変形量の屈曲変形を利用することで速やかに複数の接続先を切り替えることができ、アクチュエータ素子を取替えたり、素子の配置を変えたりすることなく同時に接触型と非接触型のオンとオフの切り替えを行うことができる。すなわち、接触型あるいは非接触型スイッチ回路により表示部において複数の情報を同時に制御可能となる。本発明のスイッチは、接触式モードでも非接触式モードでも良く、接触型と非接触型の両方のモードを備えたハイブリッド型で、複数経路の切り替えを可能とするものでも良い。
【0014】
高分子アクチュエータは、印加する電圧あるいは電圧の周波数により変位量を制御できるので、可変量スイッチとして有用である。変位量によって接続先(接点)が(複数の接続先に)変化するので、多点によるスイッチングが可能である。
【0015】
高分子アクチュエータは、〜3V 程度の低電圧で、印加する駆動電圧もしくは駆動電圧の周波数を制御することによりマイクロメートル〜ミリメートルの大きな変位(数百マイクロメートル〜ミリメートルスケール)によるスイッチングが可能である。これにより外部接点とスイッチング素子となるアクチュエータ素子の取り付け位置の自由度が大きくなり、デバイス設計が行い易くなる。
【0016】
本発明の非接触型スイッチでは、光路内に適当な角度で高分子アクチュエータを外部電極により挟むだけで光スイッチが構築できる。また、メカニカルなシャッターに比べ、摩耗等の心配もないのでデバイス内の磨耗による汚染も心配ない。
【0017】
本発明のスイッチは、小型化、薄膜化が容易であり、携帯用小型機器に広く使用することができ、例えばMEMS、スマートフォンなどの小型の電子機器のスイッチに使用することができる。高分子アクチュエータ素子は変形量を大きくすることができるので、接触型のスイッチの場合、複数の接点を設けることで、及び、非接触型のスイッチの場合、複数の受光部を設けることで複数の接続先の切り替えを容易に行うことができる。また、接点と受光部を両方設けることで、接触型と非接触型のスイッチにより複数の接続先の切り替えを行うことができる。
【0018】
本発明のスイッチは、表示装置と組み合わせることもできる。さらに光シャッターなどの光学機器に使用することもできる。
【0019】
本発明の高分子アクチュエータ素子は、無機物に比べ軽量であり、原料の分散液を型に流して乾燥するだけで、電極膜および電解質膜が作成でき、それらを加熱(70℃)圧着するだけで簡単にアクチュエータを作製できる。
【0020】
本発明で使用する高分子アクチュエータの電極膜そのものが導電率が比較的高いので、アクチュエータの表面に金等の集電体をつけなくても外部接点との導通をとることができる。接触型スイッチがアクチュエータ素子と接点だけで作製できるのは、本発明品に電極表面に十分導電性の高いCNTを用いていること、その電極自身が接点になりうることがメリットである。無機の材料では、その物自身に導電性がないので、このようなことはできない。また、無機に比べ生産性が良い。変形量が大きいことも特徴である。
【0021】
本発明では、アクチュエータの駆動が基本的には化学反応を伴わないので、他の高分子アクチュエータである導電性高分子アクチュエータ(駆動原理が酸化還元反応)に比べて長寿命である。本発明のアクチュエータは変位量の再現性が良い。本発明の高分子アクチュエータは、電極に金などの貴金属を化学めっきする必要がなく、生産コスト、プロセス上、量産化に有利である。
【0022】
<接触型と非接触型のハイブリッド型スイッチ>
本発明では、接触型と非接触型が一つのアクチュエータで制御でき、例えば、ある駆動電圧の変動では、アクチュエータの変形量が小さく本発明中の光信号のみを遮断したりすることにより、光信号を制御する部分につながったデバイスのみがON/OFF(制御)され、接触型のスイッチは駆動せず、その部分につながったデバイスはON/OFF(制御)されない。そこで、駆動電圧の変動周波数もしくは駆動電圧値を変えることにより、変位量が大きくなると、非接触部分だけでなく接触部分に接続されたデバイスもON/OFFが可能になる。
【0023】
あるいは、駆動電圧の条件次第では、接触型の部分、非接触型の部分に接続された両方のデバイスを個別に(同じ電圧変動(周波数)で)駆動(制御)可能である。
【0024】
1つの実施形態では、本発明のスイッチはアクチュエータを取り付ける電極部分が回転可能であり、回転させることにより接触型のみのスイッチングあるいは接触型、非接触型の両方のスイッチングが切り替え可能である。また、接触型の接点は任意に素子との距離を調整可能(接点との接触条件を調整可能)である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の表示装置を示す。
図2A】本発明の表示装置の他の好ましい実施形態を示す。図中の矢印Xは、アクチュエータを取付けている治具が回転する様子を示す。
図2B図2Aに示す本発明の表示装置の他の好ましい実施形態の、電極部の拡大図を示す。
図3】本発明のスイッチの他の好ましい実施形態を示す。このスイッチは複数の接点もしくは受光部を備え、アクチュエータの変位量に応じて複数の接続先を切り替え可能とするスイッチである。接触式スイッチでは、アクチュエータ素子の導電性を利用して、基点Tと接点A〜Dの接続先がその変位量に応じて変化する。非接触式では、アクチュエータ素子の変位量に応じて、受光部に届く光路を遮断する位置が変化する
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、高分子アクチュエータ素子は、電圧の印加により変形応答するものであれば特に限定されないが、好ましくは一枚のセパレーターを二枚の導電性電極膜で挟んだバイモルフ型構造(三層構造)からなるアクチュエータ素子が挙げられるが、三層以上(例えば五層構造)のアクチュエータ素子も本発明に包含される。セパレーターは絶縁体であってもよいが、イオン移動が可能なセパレーターが好ましい。セパレーターがイオン移動可能であれば、高分子アクチュエータ素子中をイオンが移動することができる。セパレーターは、変形可能であればよく、例えばポリマーとイオン液体、或いはポリマーと導電性フィラーなどを含むものが挙げられる。ポリマーとしては、イオン液体と組み合わせる場合、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]などの水素原子を有するフッ素化オレフィンとパーフッ素化オレフィンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの水素原子を有するフッ素化オレフィンのホモポリマー、パーフルオロスルホン酸(Nafion,ナフィオン)、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(poly-HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリ(メタ)アクリレート類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)等が好ましく、導電性フィラーと組み合わせる場合、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴムなどが好ましく例示される。導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラックなどの炭素粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、金粒子や銀粒子などの金属粒子が挙げられる。イオン液体としては、下記の一般式(I)〜(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン、第4級アンモニウムイオン)と、アニオン(X)より成るものが挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
上記の式(I)〜(IV)において、Rは直鎖又は分枝を有するC〜C12アルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基を示し、式(I)においてRは直鎖又は分枝を有するC〜Cアルキル基または水素原子を示す。式(I)において、RとRは同一ではないことが好ましい。式(III)および(IV)において、xはそれぞれ1〜4の整数である。
【0029】
直鎖又は分枝を有するC〜C12アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの基が挙げられる。炭素数は好ましくは1〜8,より好ましくは1〜6である。
【0030】
直鎖又は分枝を有するC〜Cアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルが挙げられる。
【0031】
エーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、CH2OCH3、(CH2)p(OCH2CH2)qOR2(ここで、pは1〜4の整数、qは1〜4の整数、R2はCH3又はC2H5を表す)が挙げられる。
【0032】
アニオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)、BF3CF3-、BF3C2F5-、BF3C3F7-、BF3C4F9-、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF3SO2)2N-)、過塩素酸イオン(ClO4-)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン(CF3SO2)3C-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)、ジシアンアミドイオン((CN)2N-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、有機カルボン酸イオンおよびハロゲンイオンが例示できる。
【0033】
これらのうち、イオン液体としては、例えば、カチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、[N(CH3)(CH3)(C2H5)(C2H4OC2H4OCH3)]+、アニオンがハロゲンイオン、テトラフルオロホウ酸イオンのものが、具体的に例示できる。なお、カチオン及び/又はアニオンを2種以上使用し、融点をさらに下げることも可能である。
【0034】
ただし、これらの組み合わせに限らず、イオン液体であって、導電率が0.1Sm-1以上のものであれば、使用可能である。
【0035】
セパレーターは、薄膜状、シート状などの変形しやすい形状が好ましい。高分子アクチュエータ素子は、一枚のセパレーターを二枚の導電性電極膜で挟んだ構造のものが好ましい。導電性電極膜の材料としては金、白金、パラジウムなどの金属、導電性ポリマーを使用してもよいが、好ましくは、導電性材料とポリマーとイオン液体から構成される導電性電極膜を使用するのがよい。導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリピロール、 ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)などが挙げられる。導電性材料としては、カーボンブラックなどの炭素粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバーなどが挙げられ、好ましくはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーが挙げられる。ポリマー及びイオン液体は、前記のものが使用できる。
【0036】
高分子アクチュエータ素子の導電性電極膜の外側には、さらに金属の薄膜を形成し、接点との接触時の通電を促進してもよい。
【0037】
高分子アクチュエータ素子は、公知の方法により製造することができる。
【0038】
前記高分子アクチュエータ素子を変形可能に支持する支持機構は、図1に示すように高分子アクチュエータ素子の下端を固定するものであってもよく、図2A及びB(以下、本明細書において「図2」という場合がある。)に示すように高分子アクチュエータ素子を回転可能に支持するものであってもよい。高分子アクチュエータ素子は、下端が固定されて、上端(自由端)がマイクロメートル〜ミリメートルの変位を行う。変位量は上端(自由端)で大きく、下端(固定端)では変位しない。なお、高分子アクチュエータ素子の固定は端部(下端)が好ましいが、端部でなくてもよい。
【0039】
高分子アクチュエータ素子を屈曲変形するために印加する電圧としては、特に限定されないが、1つの実施形態では〜3Vの直流電圧が挙げられる。電圧印加手段としては、直流電源、交流電源を挙げることができる。交流電圧を加えると変位の方向が短い周期で変化し、それによりスイッチのオンとオフの切り替えが頻繁に行われ得る。高分子アクチュエータ素子の応答周波数としては、特に限定されないが、例えば0.1〜100Hz程度が挙げられる。アクチュエータに印加する電圧あるいは周波数を制御することにより、マイクロメートル〜ミリメートルの変位をコントロール可能である。印加する電圧を調節することで、複数の接点及び/又は受光部と高分子アクチュエータ素子による接続先の切り替えを行うことができる。
【0040】
本発明の高分子アクチュエータ素子の位置検出手段は、(i)少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの接点あるいは(ii)発光部と受光部の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの組み合わせから構成される。位置検出手段を少なくとも2つ(複数)有し、多点で高分子アクチュエータ素子の位置を検出することが好ましい。
【0041】
高分子アクチュエータ素子は、それ自体導電性であるので、接点と接触したことを電気的に検出し、スイッチのオン・オフの切り替えを制御手段により行うことができる。位置検出手段が接点の場合、接触式モードのスイッチとなる。位置検出手段が発光部と受光部の組み合わせからなる場合、高分子アクチュエータ素子の変位により光路が遮られたことを受光部で検出することができ、この場合は非接触式モードのスイッチとなる。
【0042】
接点或いは受光部は図2及び3に示されるように複数であってもよく、複数の場合、接続先の切り替えを容易に行うことができる。
【0043】
本発明において接点としては、アクチュエータが接触できる限り任意の形状であってもよいが、好ましくは導電性の突起物が挙げられ、より好ましくは金属製である。
【0044】
本発明において発光部2としては、特に限定されないが、例えば半導体レーザ(LD)、発光ダイオード(LED)などが挙げられ、受光部5としては、特に限定されないが、例えばCCDやCMOSイメージセンサーが挙げられる。発光部2は、図2に示すように位置を移動可能に構成してもよい。発光部の位置を移動させることにより検出される高分子アクチュエータの変位(位置)を変えることができる。或いは、光路に設けたレンズ等を動かして発光部からの光の光路を変更してもよい。
【0045】
受光部5は、1つであっても複数であってもよい。図1は受光部5が1つの場合を例示し、図2,3は、受光部5が複数ある例を示し、図2では発光部2を移動させて光路を変えることで異なる受光部2により高分子アクチュエータ素子が光を遮る位置を検出してスイッチングを行うことができる。図3は本発明の別の実施形態を示し、アクチュエータ素子の変位量に応じて、受光部に届く光路を遮断する位置が変化する。複数の受光部を設ける場合、非接触式モードにおいて接続先の切り替えを行うことができる。
【0046】
高分子アクチュエータ素子が接点と接触したとき、或いは受光部への光が遮られた場合、その電気信号は制御手段(例えばCPU)に送られ、スイッチのオン・オフの切り替えが行われる。
【0047】
本発明のスイッチは、表示部と接続して表示装置を構成してもよい。
【0048】
表示部1としては、画像、音声/音、光、振動、熱などの情報によりスイッチのオン・オフを「表示」できるものであればよく、例えば画像を表示するディスプレイ、音声または警告音などの音により表示するスピーカー、音源チップ(例えばCPUなどの音源)、光により表示する発光ダイオード(LED)などの発光素子、振動により表示するバイブレータ、熱により表示するヒーターなどが挙げられる。
【0049】
高分子アクチュエータ素子は、例えば端部で基板上に変形可能に、かつ、発光部と受光部を結ぶ光軸上或いはその近傍に支持機構により取り付けられる。高分子アクチュエータ素子が光軸上に取り付けられたときには、高分子アクチュエータ素子により光が遮断されて受光部に到達しないが、高分子アクチュエータ素子の変形応答に伴い光が受光部に到達するようになる。高分子アクチュエータ素子にカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバーなどの黒色材料が含まれる場合、高分子アクチュエータ素子が黒くなり光を吸収するため、光の吸収による遮断が効率的に行われる。高分子アクチュエータ素子が一定の周波数で左右に振動する場合、光の通過と遮断が繰り返され、それにより光が受光部へ到達し若しくは到達しなくなり、スイッチのオンとオフが頻繁に繰り返されることになる。高分子アクチュエータ素子が光軸の近傍に取り付けられたときには、高分子アクチュエータ素子の駆動前には光が遮断され、光は受光部に到達しないが、高分子アクチュエータが変形すると光が通過して受光部で検出される。本発明の非接触型スイッチでは、電圧の印加による高分子アクチュエータ素子の変形によりスイッチがオンになると、このスイッチに接続された表示部により表示される。表示は、画像により行うことが好ましいが、人間が知覚できる限り警告音や音声、発光などにより行われてもよい。高分子アクチュエータ素子の変形が連続的に行われてスイッチのオン・オフが繰り返されると、表示装置による表示は間欠的に行われることになる。
【0050】
本発明の接触型スイッチでは、高分子アクチュエータ素子の片側或いは両側(好ましくは両側)に接点が設けられ、高分子アクチュエータ素子の変形に伴い高分子アクチュエータ素子と接点が接触し、また離れる(非接触)ことでスイッチのオン・オフの切り替えが行われる。発光部と受光部、さらに接点を組み合わせて配置し、高分子アクチュエータ素子の変形応答に伴い、接点との接触と発光部から受光部への光の到達又は遮断が行われるようにすることで、接触型スイッチ及び非接触型スイッチを1つの高分子アクチュエータ素子でオン・オフ制御することができる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態を図1,2を用いて説明する。
【0052】
図1には、本発明の表示装置7が示されている、この表示装置は、発光部2と受光部5
、高分子アクチュエータ素子3、接点4、高分子アクチュエータの支持機構、表示部としてのディスプレイ1を備え、高分子アクチュエータ素子3は光軸6上に固定されている。高分子アクチュエータ素子3に交流電圧を印加すると、高分子アクチュエータ素子3は左右3’、3’に変位し、それに伴い接触型スイッチ、非接触型スイッチの両方が異なるタイミングでオンとオフの切り替えが行われる。高分子アクチュエータ素子3の周波数を速くすると振幅が小さくなり、高分子アクチュエータ素子は3’まで変位せず、この場合、接触型スイッチは常にオフの状態となり、非接触型スイッチのみでオン・オフの切り替えが行われる。しかし、接点4は動かすことが可能であり、周波数が速くなって高分子アクチュエータ素子の変形振幅が小さくなる場合でも、接点を可動させることにより再び接触型スイッチとしてオン・オフを切り替えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、高分子アクチュエータ素子の屈曲変形を利用した接触型および非接触型スイッチおよびそのスイッチ回路を搭載した装置として有用である。本発明のスイッチは従来のピエゾアクチュエータを用いたスイッチに比べ、〜3V程度の低電圧で高速に大変位することが可能であることから接触型のスイッチと非接触型のスイッチを1つのアクチュエータ素子で同時に制御できる。
【0054】
また、本発明では、高分子アクチュエータの電極膜自身が導電性であるため、特別な集電体をアクチュエータの表面にコートすることなく、外部接点とアクチュエータが接触するだけでスイッチングができる点が挙げられる。さらに、変形の共振点を利用すれば、100Hz程度まで応答することができ、高速のスイッチングデバイスとして応用できる。
【0055】
また、LED 等の光源を利用したセンサと組合せることにより、アクチュエータが光源の光路を遮蔽することにより、非接触にもスイッチングできる。この接触型、非接触型のスイッチ機構を同じ装置で、素子を交換したり、素子の配置を変えたりすることなく切り替えることができる点も本発明の特徴であり、接触型、非接触型スイッチ回路により異なるデバイスを同時に制御できる可能性がある。
【0056】
本発明の具体的な応用分野としては、表示出力(音声出力)の発信周波数を変化させる、光信号の発信を制御するスイッチ、おもちゃなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
1 表示部
2 発光部
3 高分子アクチュエータ素子
3’変形時の高分子アクチュエータ素子の位置
4 接点
5 受光部
6 光軸
7 表示装置
A 接点
B 接点
C 接点
D 接点
A’受光部
B’受光部
C’受光部
D’受光部
T 基点
図1
図2A
図2B
図3