(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光体を含むスラリーは、質量比で、蛍光体:樹脂:溶剤=2〜40:5〜20:10〜200であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光装置の製造方法。
前記光反射粒子または光拡散粒子を含むスラリーは、質量比で、光反射粒子または光拡散粒子:樹脂:溶剤=2〜40:5〜20:10〜200であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る発光装置の製造方法および発光装置の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0014】
≪発光装置≫
はじめに、本発明の発光装置について説明する。
図1、2に示すように、発光装置100は、ここでは、基材1と、基材1上に設けられた導電部材2a,2bと、導電部材2a,2b上に設けられたバンプ3a,3bと、バンプ3a,3b上に設けられた発光素子10と、発光素子10の表面に設けられた蛍光体層40と、発光素子10の上面の辺部15に設けられた小粒子部50と、を主に備える。そして、基材1と、導電部材2a,2bとで、基板(実装基板)20を構成している。なお、本発明の構成を分かりやすく示すために、
図1では、
図2において図示している蛍光体層40および小粒子部50の図示を省略している。
以下、各構成について説明する。
【0015】
(実装基板)
図1、2に示すように、実装基板20は、発光素子10等の電子部品が実装される基板であり、ここでは、基材1と、基材1上に設けられた導電部材2a,2bと、を備える。
実装基板20(あるいは基材1)は、
図1に示すように、ここでは矩形平板状に形成されている。なお、実装基板20(あるいは基材1)のサイズや形状は特に限定されず、発光素子10の数や配列間隔等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0016】
[基材]
基材1は、導電部材2a,2bを介して発光素子10等の電子部品が実装される部材である。
基材1の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子10から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、セラミックス(Al
2O
3、AlN等)あるいは樹脂、または、金属板の表面に絶縁層を設けた部材が挙げられる。セラミックスの中でも、低温焼結セラミックス(LTCC)は光反射率を高めやすいため、好ましく用いることができる。
【0017】
[導電部材]
導電部材2a,2bは、外部と、発光素子10等の電子部品とを電気的に接続し、これら電子部品に、外部からの電流(電力)を供給するための部材である。
導電部材2a,2bの材料は、上述の基材1として用いられる材料や、発光装置100の製造方法等によって適宜選択することができる。例えば、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、または、鉄−ニッケル合金、りん青銅、鉄入り銅、モリブデン等が挙げられる。
【0018】
導電部材2a,2bは、放熱経路としての機能も有している。放熱性を高めるためには、広い面積で設けられることが好ましく、例えば、基材1の短手方向に対して(例えば、発光素子10の上面の辺a,cが伸びる方向)広い幅で設けられることが好ましい。
【0019】
[バンプ]
バンプ3a,3bは、発光素子10の電極と導電部材2a,2bとを電気的に接続する部材である。
バンプとしては、従来公知のものを用いればよく、例えば、スタッドバンプやめっきバンプが挙げられる。スタッドバンプの材質としてはAuまたはその合金がよく用いられる。めっきバンプの材質としてはAuのみ、若しくはCu、またはNiをベースに表面をAuとした積層構造が用いられる。
【0020】
[発光素子]
発光素子10は、例えば、発光面と反対側の面(
図2では成長基板13の下面)に正と負の電極パッドを有し、バンプ3a,3bを介して導電部材2a,2bと接続されて基材1上に実装されている。ここでは、半導体層11に接続されたn側電極が、バンプ3aを介して負極である導電部材2aと接続され、半導体層12に接続されたp側電極が、バンプ3b,3bを介して正極である導電部材2bと接続されている。なお、発光面とは、実装基板20に実装したときに、基材1と対向する側の面と反対側で、発光装置100の光取り出し方向側の面である。
【0021】
発光素子10としては、上面に辺部を有する形状、例えば略直方体形状で、n層とp層と発光を行う活性層とを備える半導体層を有する発光ダイオードを用いることができる。任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の発光素子10としては、ZnSe、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の発光素子10としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
【0022】
なお、蛍光物質を用いた発光装置100とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に用いられる。そして、活性層の材料やその混晶を調整することによって、発光波長を種々選択することができる。さらに、これら以外の材料からなる発光素子10を用いることもできる。なお、用いる発光素子10の成分組成や発光色、大きさ、個数等は、目的に応じて適宜選択することができる。
発光素子10は、光取り出し面側にサファイア等の透光性の基板を有することが好ましい。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子10とすることもできる。
なお、発光装置100は、青色発光素子と、黄色蛍光体とを組み合わせることで、白色LED素子とすることができる。
【0023】
なお、本発明において、発光素子10は成長基板13を有さないように構成することもできる。例えば、成長基板13上にn層、活性層およびp層からなる半導体層を成長させた後に、例えば、レーザーリフトオフ法、メートル法(MeTRe法;Mechanical Transfer using a Release layer)やケミカルリフトオフ法などにより、成長基板13を半導体層から剥離して除去するようにしてもよい。
【0024】
[蛍光体層]
蛍光体層40は、発光素子10の表面に形成された、蛍光体4を含む層であり、発光素子10の表面を被覆するものである。また、蛍光体層40は、ここでは発光素子10が載置された部位以外の基材1の上面にも形成されている。蛍光体層40は、例えば、蛍光体4と樹脂と溶剤とを混合したスラリーを塗布することで形成される。なお、蛍光体層40は樹脂等と混合されたものであってもよく、蛍光体4のみで形成されたものであってもよい。なお、
図2において、蛍光体層40は図示しない樹脂等を含んでいるものとする。蛍光体層40が樹脂を含むことで、小粒子5が辺部15に固着しやすくなる。
蛍光体層の厚みとしては、10μm〜200μm程度があげられる。
上述の通り、発光素子の辺部もしくは角部には蛍光体層となるスラリー等が付着しにくいため、蛍光体層が形成されない、もしくは厚みがその他の部分より薄く形成される。この蛍光体層が形成されない部分もしくは蛍光体層が薄い部分に後述する小粒子部が形成される。
蛍光体層40を構成する蛍光体4は、波長変換部材として発光素子10からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光部材である。
【0025】
蛍光体4の材料としては、例えばイットリウム、アルミニウムおよびガーネットを混合したYAG系蛍光体や、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等を用いることができる。例えば、青色発光素子においては、緑色乃至黄色を発光するYAG系蛍光体、LuAG系蛍光体、M
2SiO
4:Eu(MはSr,Ca,Ba等)のシリケート蛍光体との組み合わせや、更に演色性を高めるために、赤色を発光する蛍光体として、(Sr,Ca)AlSiN
3:EuのようなSCASN系蛍光体、CaAlSiN
3:EuのようなCASN系蛍光体や、SrAlSiN
3:Eu、KSF蛍光体等が所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いられる。
【0026】
蛍光体4の粒径は、小粒子部50を構成する光反射粒子または光拡散粒子(以下、適宜、小粒子という)5の粒径よりも大きいものであれば特に規定されるものではない。一例として、3〜30μmである。
【0027】
[小粒子部]
小粒子部50は、発光素子10の上面の辺部15に形成された、光反射粒子または光拡散粒子を含む部位(あるいは層)であり、発光素子10の上面の辺部15を被覆するものである。小粒子部50は、例えば、小粒子5と樹脂と溶剤とを混合したスラリーを塗布することで形成される。なお、小粒子部50は樹脂等と混合されたものであってもよく、小粒子5のみで形成されたものであってもよい。なお、
図2において、小粒子部50は図示しない樹脂等を含んでいるものとする。小粒子部50が樹脂を含むことで、小粒子5が辺部15に固着しやすくなる。
【0028】
ここで、発光素子10の上面の辺部15とは、
図1に示すように、発光素子10の上面Aの4辺(a,b,c,d)の部分およびその近傍をいう。すなわち、発光素子10の上面Aと、発光素子10の4つの側面(例えば側面B)の接続部分およびその近傍であり、発光素子10の上面視における発光素子10の辺の部分およびその近傍(辺を含む部分)をいう。辺部の範囲は特に規定されるものではなく、例えば、発光素子10の上面Aの4辺(a,b,c,d)の部分およびその近傍において蛍光体層40が形成されない、あるいは、他の部位に比べて薄く形成されてしまう部位をいう。
具体的には、例えば、1つの辺(例えば辺a)から、上面Aにおいて対向する辺(ここでは辺c)や側面Bにおいて対向する辺(ここでは辺e)の方向(図中の矢印の方向)に、それぞれ辺の長さの0.1%〜10%程度の範囲や、発光素子10の角の周囲において、辺の長さの0.1%〜10%程度の範囲をいう。
【0029】
前記した背景技術の項目で説明したとおり、スプレー法により発光素子10の表面に蛍光体層40を形成すると、発光素子10の上面の辺部15については、その素子形状から蛍光体層40の厚みが薄くなってしまう。あるいは、辺部15において蛍光体層40が形成されない部位が生じてしまう。そのため、この辺部15に小粒子部50を設けない場合、発光素子10の上面の辺部15から光抜けがおきる可能性がある。しかし、本発明の発光装置100は、発光素子10の辺部15に小粒子部50を備えているため、辺部15からの光抜けを低減することができる。そのため、発光装置100は、配光性が十分に優れたものとなる。
【0030】
なお、前記したような、蛍光体層40が形成されない、あるいは、他の部位に比べて薄く形成されてしまうという問題は、特に発光素子10の上面の角部において顕著となる。しかしながら、本発明においては、この角部においても小粒子部50を形成させることができるため、角部からの光抜けを低減することができる。なお、角部とは、発光素子10の上面の四隅の角の部分およびその近傍をいい、辺部15に含まれるものである。
【0031】
小粒子部50を構成する小粒子5は、蛍光体層40の蛍光体4より粒径が小さな光反射粒子または光拡散粒子からなる部材である。光反射粒子は、発光素子10からの光の少なくとも一部を反射させる部材である。また、光拡散粒子は、光を拡散させるものであり、発光素子10からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる部材である。
【0032】
光反射粒子としては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、BaSO
4、MgO等が挙げられる。光反射粒子は、これらのうちの少なくとも一種を用いればよい。
光拡散粒子としては、例えば、BaTiO
3、TiO
2、SiO
2、Al
2O
3、AlN等が挙げられる。光拡散粒子は、これらのうちの少なくとも一種を用いればよい。
【0033】
小粒子5の粒径は蛍光体4の粒径よりも小さければ特に規定されるものではない。一例として、0.005〜3μmである。
小粒子5の粒径を蛍光体4の粒径よりも小さいものとするのは、蛍光体4の粒径と同じ、あるいは蛍光体4の粒径よりも大きいと、小粒子5が発光素子10の上面の辺部15に付着しづらく、小粒子部50の形成が困難となるためである。
【0034】
なお、蛍光体4および小粒子5において、ここでの粒径とは、平均粒径ではなく、各粒径の大きさを意味する。また、粒径の測定方法は、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察や、光散乱法等で測定することが出来る。
【0035】
小粒子部50は、発光素子10の上面の辺部15に形成されていればよく、例えば、薄く形成された蛍光体層40の上面に小粒子部50が形成された2層構造や、小粒子部50の上面に蛍光体層40が形成された2層ないし複数層の構造が挙げられる。あるいは、蛍光体層40がほとんどあるいは全く形成されておらず、小粒子部50のみが形成された1層構造等とすることができる。
また、小粒子5は、発光素子10の上面の辺(辺a,b,c,d)の部位が一番濃く、この辺から離れるにしたがって薄くなる形態となってもよい。すなわち、発光素子10の上面の一辺から上面や側面における対向する他辺の方向(
図1の矢印方向)に向かうにしたがって薄くなる形態となってもよい。
以上説明した発光素子10、蛍光体層40、小粒子部50は、樹脂等の封止部材で封止されることが好ましい。
【0036】
以上説明した本発明の発光装置100によれば、発光装置100を駆動したときに、発光素子10からあらゆる方向に進む光のうち、上方へ進む光は、発光装置100の上方の外部に取り出される。また、下方や横方向等に進む光は、基材1の表面、導電部材2a,2b、あるいはレジスト膜で反射・散乱して、発光装置100の上方の外部に取り出されることになる。また、発光素子10の上面の辺部15からの光抜けを低減することができ、色むらの発生を低減することができる。
【0037】
≪発光装置の製造方法≫
次に、本発明に係る発光装置の製造方法について、
図1〜3を参照しながら説明する。
【0038】
<第1の製造方法>
本発明に係る発光装置100の第1の製造方法は、蛍光体層形成工程と、小粒子部形成工程と、を含み、この順に行う。また、ここでは、蛍光体層形成工程の前に、基板準備工程およびダイボンディング工程を含み、この順に行う。
以下、各工程について説明する。なお、発光装置の各部材の詳細については、前記した発光装置で説明したとおりであるので、ここでは、適宜説明を省略する。
【0039】
<基板準備工程>
基板準備工程は、導電部材2a,2bを備えた基板(実装基板)20を準備する工程であり、例えば、基材1上に導電部材2a,2bを形成する工程である。導電部材2a,2bの形成は従来公知の方法で行えばよく、例えば、めっき、蒸着、基材1への貼り付け等によって形成する。基材1への貼り付けの場合は、基材1と導電部材2a,2bとは、樹脂等の接着剤で接着させることができる。導電部材2a,2bは、導電部材2a,2bの材料を基材1の一面に形成した後に、エッチング等で成形してもよい。
【0040】
<ダイボンディング工程>
ダイボンディング工程は、実装基板20上に発光素子10を実装する工程である。このダイボンディング工程では、導電部材2a,2bの上面に発光素子10を実装する。
発光素子10の実装方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法で行えばよい。例えばAu―Sn、Sn−Ag−Cu等の半田や、導電部材を含有したエポキシ樹脂等により、発光素子10と導電部材2a,2bとを接合すればよい。
【0041】
なお、本実施形態では、バンプ3aを介して、半導体層11に接続されたn側電極と導電部材2aとを接続し、バンプ3b,3bを介して、半導体層12に接続されたp側電極と導電部材2bとを接続するフリップチップで実装する。具体的には、バンプ3a,3bは、超音波接合により発光素子10の電極パッドおよび導電部材2a,2bに接着する。
【0042】
<蛍光体層形成工程>
蛍光体層形成工程は、発光素子10の表面に、蛍光体4を含む蛍光体層40を形成する工程である。
蛍光体層40を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー法、電気沈着(電着)法、静電塗装法、遠心沈降法等を用いることができる。しかしながら、蛍光体層40を形成する方法としては、スプレー法を用いることが好ましい。スプレー法を用いれば、発光素子10の周りに略均一な厚さに蛍光体層40を形成することができる。なお、発光素子10の上面の辺部15については、小粒子部50を設けるため、従来技術において問題だった発光素子10の上面の辺部15からの光抜けを低減することができる。
【0043】
また、スプレー法としては、パルス式のスプレー法(以下、適宜、パルススプレー法という)を用いることが好ましい。パルススプレー法は、蛍光体4や小粒子5等の粒子が混合された樹脂を、空気圧により間欠吐出(パルス式にスプレー)し、均一な粒子層を形成する技術である。
通常のスプレー法である連続塗布の場合は、塗布量が多くなって材料が飛散しやすいため、ノズル速度を速くする必要がある。一方、パルススプレー法は間欠吐出なので、単位時間当たりの塗布量が少なくノズルをゆっくり動かすことができ、発光素子10の側面や極小空間にも塗布液を塗りやすい。
【0044】
また、パルススプレー法は、(1)ターゲット塗布面に凹凸があっても均等に膜形成が可能である、(2)塗布液の付着性が高く、発光素子の辺部や側面にも塗布がしやすい、(3)微量の塗布による色調補正(色調を測定しながら塗布)が可能である、(4)蛍光体や小粒子の種類を選ばず、部材選択性が広い、(5)高光質、色調の安定に優れた塗膜を形成できる(例えば、製造された発光装置の色バラつきの範囲を色調マクアダム2step(マクアダム3step内であれば、実質、色バラつきがない発光装置を量産することができる)に抑えることが可能である)などの利点を有する。
【0045】
次に、
図3を参照して、パルス式のスプレー装置(パルススプレー装置)の概略について説明する。
図3に示すように、パルススプレー装置30は、スラリーSLを貯蔵するシリンジ31,32と、シリンジ31,32同士を連結する配管33と、スラリーSLを射出するスプレーノズル34と、を主に備える。
【0046】
シリンジ31,32内部には、蛍光体や小粒子等の粒子と樹脂と溶剤とが混合されたスラリーSLが貯蔵されている。また、シリンジ31,32には、エアを送り込むためのエアーコンプレッサ(図示省略)が接続されており、これにより、シリンジ31,32内部には、圧縮気体31b,32bが所定圧に保たれている。
また、シリンジ31,32内部には、スラリーSLと圧縮気体31b,32bとの間にブランジャー31a,32aが設けられている。ブランジャー31a,32aは、スラリーSLと圧縮気体31b,32bを隔てさせるので、圧縮気体31b,32bのスラリーSLへの溶解を低減することができる。
スプレーノズル34には、液体通路としての配管33が接続されている。スプレーノズル34には、エアを送り込むためのエアーコンプレッサ(図示省略)が接続されている。スプレーノズル34は角度調整も可能であり、載置台70に対して傾斜させることができるようになっている。
【0047】
スプレーを行う際には、まず、スプレーノズル34の吐出弁を閉じた状態で、エアコンプレッサからシリンジ31に所定の圧力でエアを送り込む。このエアの送入により、シリンジ31内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管33を介して、シリンジ32に向けて圧送される。その後、同様に、シリンジ32に所定の圧力でエアを送り込むと、シリンジ32内部に充填されたスラリーSLが加圧され、流通路である配管33を介して、シリンジ31に向けて圧送される。これを繰り返すことで、スラリーSLがシリンジ31、32間を移動しながら攪拌される。これにより、比重の大きい粒子の沈降を抑止することができ、粒子がスラリーSL中で分散した状態を保持することができる。
【0048】
そして、スラリーSLを塗布する場合には、スプレーノズル34の吐出弁を開け、エアコンプレッサからスプレーノズル34に所定の圧力で間欠的にエアを送り込む。このエアが送り込まれている時に、エアコンプレッサとスプレーノズル34の間に設けられたバルブを開くことによって、スラリーSLを間欠吐出することができる。これにより、スプレーノズル34の先端から、エアとともにスラリーSLが間欠的に噴射され、発光素子10にスプレー(符号SL)される。
【0049】
以下、
図3を参照してパルススプレー法を用いた蛍光体層の形成方法について説明する。
まず、蛍光体を混合させたスラリー(蛍光体スラリー)を用意する。蛍光体スラリーは、蛍光体と樹脂と溶剤とを混合させたものを用いることができ、例えば、蛍光体とシリコーン樹脂とn-ヘプタンとを混合したものである。蛍光体スラリーの調合比は、質量比で、蛍光体:樹脂:溶剤=2〜40:5〜20:10〜200とすることが好ましい。
このような調合比であれば、よりスプレーがしやすく、また、発光素子に蛍光体が均一に付着しやすくなる。なお、パルススプレー法以外のスプレー法においても、このような調合比を好適に適用できる。
次に、十分に攪拌混合させた蛍光体スラリーをパルススプレー装置30のシリンジ31,32に投入する。そして、蛍光体スラリーをシリンジ31、32間で移動させて攪拌し、パルススプレーにより塗布する。その際、蛍光体スラリーを発光素子10の上面および側面にできるだけ均等に塗布できるように、スプレーノズル34を移動させながら塗布する。
【0050】
<小粒子部形成工程>
小粒子部形成工程は、蛍光体層40が形成された発光素子10の上面の辺部15に、蛍光体4より粒径が小さな光反射性粒子または光拡散粒子を含む小粒子部50を形成する工程である。
小粒子部50を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー法、電気沈着(電着)法、静電塗装法、遠心沈降法等を用いることができる。しかしながら、小粒子部50を形成する方法としては、スプレー法を用いることが好ましい。スプレー法を用いれば、簡便に、発光素子10の上面の辺部15に小粒子部50を形成することがでる。
【0051】
また、スプレー法としては、パルススプレー法を用いることが好ましい。パルススプレー法については前記したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0052】
以下、
図3を参照してパルススプレー法を用いた小粒子部の形成方法について説明する。
まず、小粒子を混合させたスラリー(小粒子スラリー)を用意する。小粒子は、光反射粒子または光拡散粒子と樹脂と溶剤とを混合させたものを用いることができ、例えば、光反射粒子または光拡散粒子とシリコーン樹脂とn-ヘプタンとを混合したものである。小粒子スラリーの調合比は、質量比で、光反射粒子または光拡散粒子:樹脂:溶剤=2〜40:5〜20:10〜200とすることが好ましい。
このような調合比であれば、よりスプレーがしやすく、また、発光素子の上面の辺部に小粒子が均一に付着しやすくなる。なお、パルススプレー法以外のスプレー法においても、このような調合比を好適に適用できる。
次に、十分に攪拌混合させた小粒子スラリーをパルススプレー装置30のシリンジ31,32に投入する。そして、小粒子スラリーをシリンジ31、32間で移動させて攪拌し、パルススプレーにより塗布する。その際、小粒子スラリーを発光素子10の上面の辺部15にできるだけ均等に塗布できるように、スプレーノズル34を移動させながら塗布する。
【0053】
具体的には、スプレーノズル34の角度を通常は載置台70に対して(実装基板20に対して)垂直とするのに対し、本工程では小粒子5を発光素子10の上面の辺部15にだけ吹きつけるため、スプレーノズル34を斜めにする。また、できるだけ発光素子10に近付けて塗布することで、発光素子10の上面の辺部15以外にはできるだけ塗布しないようにする。
このようにして、発光素子10の上面の辺部15に小粒子部50を形成させることで、発光素子10の上面の辺部15から光が抜けるという課題を解決することができる。
【0054】
<第2の製造方法>
本発明に係る発光装置100の第2の製造方法は、小粒子部形成工程と、蛍光体層形成工程と、を含み、この順に行う。また、ここでは、小粒子部形成工程の前に、基板準備工程およびダイボンディング工程を含み、この順に行う。
第2の製造方法は、小粒子部形成工程と、蛍光体層形成工程と、をこの順に行う以外は第1の製造方法と同様であるため、ここでは、小粒子部形成工程、蛍光体層形成工程について説明する。
【0055】
<小粒子部形成工程>
小粒子部形成工程は、発光素子10の上面の辺部15に、光反射粒子または光拡散粒子を含む小粒子部50を形成する工程である。
本工程では、蛍光体層40を形成する前に小粒子部50を形成すること以外については、第1の製造方法における小粒子部形成工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0056】
<蛍光体層形成工程>
蛍光体層形成工程は、小粒子部50が形成された発光素子10の表面に、光反射粒子または光拡散粒子より粒径が大きな蛍光体4を含む蛍光体層40を形成する工程である。
本工程では、小粒子部50を形成した後に蛍光体層40を形成すること以外については、第1の製造方法における蛍光体層形成工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0057】
第2の製造方法では、発光装置100は、蛍光体層40を形成する前に小粒子部50を形成するため、発光素子10の上面の辺部15において、発光素子10からの光が遮光または拡散される。これとともに、発光装置100は、発光素子10の上面の辺部15が小粒子部50により丸みを帯びた形状となるため、小粒子部50に付着する蛍光体層40が均等に付着しやすくなる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
すなわち、前記に示す発光装置の製造方法や発光装置の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法や発光装置を例示するものであって、本発明は、前記の製造方法や形態に限定するものではない。また、特許請求の範囲に示される部材等を、実施の形態の部材に特定するものではない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0059】
例えば、導電部材2a,2bの表面には、導電部材2a,2bにおける光反射の効率を向上させる金属部材を設けてもよい。金属部材の材料としては、特に限定されないが、例えば、銀のみ、あるいは、銀と、銅、金、ロジウム等の高反射率の金属との合金、または、これら、銀や各合金を用いた多層膜等を用いることができる。金属部材を設ける方法としては、めっき法、スパッタ法、蒸着法、薄膜を接合させる方法等を用いることができる。
【0060】
また、基材1および/または導電部材2a,2bの表面に、導電部材2a,2bを保護するレジスト膜を設けても良い。レジスト膜は、光反射率を高める反射膜であることが好ましい。このような材料としては、酸化チタンを含有するシリコーン樹脂等の白色の絶縁性の材料を用いることができる。レジスト膜の形成は、印刷法を好適に用いることができる。
【0061】
また、発光装置100は、基材1の上面と発光素子10との間に図示しないアンダーフィルを備えていてもよい。アンダーフィルを設けることにより、光取り出し効率等の光学特性や、発光装置100の放熱性が向上し、発光素子10と基材1との熱膨張や機械的な応力を緩和させることができる。そのため、発光装置100の信頼性を向上させることができる。アンダーフィルの材料は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂である。
【0062】
その他、前記した実施形態では、発光装置100は、基材1、導電部材2a,2b、およびバンプ3a,3bを備える構成としたが、基材1、導電部材2a,2b、およびバンプ3a,3bを備えない状態のものを発光装置としてもよい。すなわち、基材1、導電部材2a,2b、およびバンプ3a,3bを備えない状態で、発光素子に蛍光体層および小粒子部を設けてもよい。また、実装基板は、導電部材2a,2bのみで構成されていてもよい。
【0063】
また、発光装置の製造方法については、第1の製造方法の小粒子部形成工程において、発光素子の上面の辺部が露出するようにマスクし、露出した辺部に小粒子部を形成してもよい。
以下、
図4、5を参照してマスクを用いてスプレーにより小粒子部を形成する方法について説明する。
【0064】
図4(a)〜(c)に示すように、実装基板20上に複数の発光素子10を実装した基板E(ここでは、蛍光体層が形成されているものとする)(
図4(a))と、発光素子辺部吹き用マスクF(以下、適宜、マスクFという)(
図4(b))とを準備する。マスクFには、発光素子10の上面の辺部の位置に応じて溝部(開口)Gが設けられている。溝部Gの幅は、小粒子部を形成させる所望の範囲に応じて適宜調整すればよい。そして、マスクFの溝部Gが発光素子10の上面の辺部(図示上、発光素子10の上面の上下の辺部)に位置するように、基板EにマスクFを載せる(
図4(c))。
【0065】
そして、
図5に示すように、まず、図示上、マスクFの左端の溝部Gから露出した発光素子10の上面の辺部に、マスクFの上方からスプレーすることにより小粒子スラリーを塗布する。これにより小粒子部50を形成する。次に、スプレーノズル34を右に移動し(図中、矢印方向)、図示上、マスクFの左から2番目の溝部Gから露出した発光素子10の上面の辺部にスプレーする。この操作を順次行い、全ての発光素子10の上面の上下の辺部(
図4参照)に小粒子部50を形成する。さらに、マスクFを90°回転させて、発光素子10の上面の左右の辺部(
図4参照)をマスクFの溝部Gから露出させる。そして、前記操作と同様にして、スプレーにより小粒子スラリーを塗布し、全ての発光素子10の上面の左右の辺部に小粒子部50を形成する。このような方法とすることで、発光素子10の上面の辺部の所望の範囲にのみ、簡便に小粒子部50を形成することができる。
【0066】
また、第2の製造方法の小粒子部形成工程において、発光素子の上面の辺部が露出するようにマスクし、露出した辺部に小粒子部を形成してもよい。このマスクを用いてスプレーにより小粒子部を形成する方法については、前記した第1の製造方法についてのマスクFを用いてスプレーにより小粒子部を形成する方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
なお、マスクを用いた小粒子部の形成方法として、前記ではスプレーを用いた方法について説明したが、スプレーを用いない方法において、マスクを用いた方法としてもよい。
【0067】
その他、発光装置の製造方法においては、本発明を行うにあたり、前記各工程の間あるいは前後に、前記した工程以外の工程を含めてもよい。例えば、基材を洗浄する基材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、バンプや発光素子の実装位置を調整する実装位置調整工程等、他の工程を含めてもよい。