特許第6229518号(P6229518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229518
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】無線受信装置及び無線受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/14 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   H04L27/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-20888(P2014-20888)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-149575(P2015-149575A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿浩
【審査官】 谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−050546(JP,A)
【文献】 特開平10−075269(JP,A)
【文献】 特開2005−086552(JP,A)
【文献】 特開平09−130300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値デジタル変調波を無線受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記多値デジタル変調波に対して高速フーリエ変換を施し、連続する時系列スペクトラムを生成する変換手段と、
前記時系列スペクトラムにおける前記多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、信号強度が第1の閾値以上の周波数成分を出力する第1の閾値判断手段と、
前記時系列スペクトラムにおける前記多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、前記第1の閾値判断手段から第1の周波数成分に続いて第2の周波数成分が出力されたとき、それら第1及び第2の周波数成分の間の前記多値デジタル変調波に割り当てられた各周波数成分の信号強度を加算する加算手段と、
前記加算手段により加算して得られた信号強度の加算値が第2の閾値以上であるか否かを判断する第2の閾値判断手段と、
前記時系列スペクトラムの複数の周波数成分の復調データを生成する復調手段と、
前記第2の閾値判断手段により信号強度の加算値が前記第2の閾値以上であると判断されたときは前記第1の周波数成分及び前記第2の周波数成分をそれぞれ前記復調手段へ出力させ、前記信号強度の加算値が前記第2の閾値未満であると判断されたときは前記復調手段へ何も出力しない出力手段と
を備えることを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記受信手段は、搬送波周波数として割り当てられた複数の周波数のうち1つおきの周波数で送信データを伝送する多値FSK変調波を前記多値デジタル変調波として受信することを特徴とする請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
多値デジタル変調波を無線受信する受信ステップと、
前記受信ステップにより受信された前記多値デジタル変調波に対して高速フーリエ変換を施し、連続する時系列スペクトラムを生成する変換ステップと、
前記時系列スペクトラムにおける前記多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、信号強度が第1の閾値以上の周波数成分を出力する第1の閾値判断ステップと、
前記時系列スペクトラムにおける前記多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、前記第1の閾値判断ステップから第1の周波数成分に続いて第2の周波数成分が出力されたとき、それら第1及び第2の周波数成分の間の前記多値デジタル変調波に割り当てられた各周波数成分の信号強度を加算する加算ステップと、
前記加算ステップにより加算して得られた信号強度の加算値が第2の閾値以上であるか否かを判断する第2の閾値判断ステップと、
前記第2の閾値判断ステップにより信号強度の加算値が前記第2の閾値以上であると判断されたときのみ前記第1の周波数成分及び前記第2の周波数成分の復調データを生成する復調ステップと
を含むことを特徴とする無線受信方法。
【請求項4】
前記受信ステップは、搬送波周波数として割り当てられた複数の周波数のうち1つおきの周波数で送信データを伝送する多値FSK変調波を前記多値デジタル変調波として受信することを特徴とする請求項3記載の無線受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線受信装置及び無線受信方法に係り、特に多値のデジタル変調波を受信する無線受信装置及び無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型の移動体である無線通信端末は電池を動作電源とするため、特に大きな電力を必要とする無線通信を行う無線通信端末では、低消費電力化が求められている。そこで、デジタル変調された被変調波信号(デジタル変調波ともいう)を無線送受信する無線通信端末では、低消費電力化のため1シンボルの情報量を増加させて通信時間を低減するためにデータを多値化して、例えば多値のFSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)などの変調方式で変調されたデジタル変調波を送受信している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−152814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、従来の多値FSKの多値化数は4程度であり、多値化が十分ではない。また、送信情報量が少ない場合は最低2シンボルのFSK信号を送信することとなるが、この場合に信号対雑音比(S/N)が低い伝送路で無線送信された上記FSK信号を正確に受信することは困難である。なぜなら、特に微弱無線規格を採用したセンサーネットワークを構成する信号強度が微弱な無線通信端末から無線送信された多値FSK信号を受信する無線受信装置においては、S/Nが低い伝送路を介して受信した受信信号中に含まれるノイズ成分を、受信FSK信号が単純な2シンボルの場合は、割り当てられた本来の2つの周波数のうち送信周波数でない他方の周波数として誤検出する可能性が極めて高いからである。
【0005】
この問題は送受信する電文の通信時間を短縮することで無線通信端末の消費電力を低減するために、送信するFSK信号中に誤り検出符号を含まず、電文そのものだけを無線送信する無線通信システムに用いられる無線受信装置において特に影響が大きい。これはFSK信号のみならず、多値の位相偏移変調(PSK:Phase Shift Keying)や多値の振幅偏移変調(ASK:Amplitude Shift Keying)などの単一搬送波を用いた他のデジタル変調方式の多値デジタル変調波についても同様である。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、送信情報量が少ない場合でもノイズ成分の影響を受けることなく多値デジタル変調波を正確に受信復調する無線受信装置及び無線受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の無線受信装置は、多値デジタル変調波を無線受信する受信手段と、受信手段により受信された多値デジタル変調波に対して高速フーリエ変換を施し、連続する時系列スペクトラムを生成する変換手段と、時系列スペクトラムにおける多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、信号強度が第1の閾値以上の周波数成分を出力する第1の閾値判断手段と、時系列スペクトラムにおける多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、第1の閾値判断手段から第1の周波数成分に続いて第2の周波数成分が出力されたとき、それら第1及び第2の周波数成分の間の多値デジタル変調波に割り当てられた各周波数成分の信号強度を加算する加算手段と、加算手段により加算して得られた信号強度の加算値が第2の閾値以上であるか否かを判断する第2の閾値判断手段と、時系列スペクトラムの複数の周波数成分の復調データを生成する復調手段と、第2の閾値判断手段により信号強度の加算値が第2の閾値以上であると判断されたときは第1の周波数成分及び第2の周波数成分をそれぞれ復調手段へ出力させ、信号強度の加算値が第2の閾値未満であると判断されたときは復調手段へ何も出力しない出力手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明の無線受信方法は、多値デジタル変調波を無線受信する受信ステップと、受信ステップにより受信された多値デジタル変調波に対して高速フーリエ変換を施し、連続する時系列スペクトラムを生成する変換ステップと、時系列スペクトラムにおける多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、信号強度が第1の閾値以上の周波数成分を出力する第1の閾値判断ステップと、時系列スペクトラムにおける多値デジタル変調波に割り当てられた複数の周波数成分のうち、第1の閾値判断ステップから第1の周波数成分に続いて第2の周波数成分が出力されたとき、それら第1及び第2の周波数成分の間の多値デジタル変調波に割り当てられた各周波数成分の信号強度を加算する加算ステップと、加算ステップにより加算して得られた信号強度の加算値が第2の閾値以上であるか否かを判断する第2の閾値判断ステップと、第2の閾値判断ステップにより信号強度の加算値が第2の閾値以上であると判断されたときのみ第1の周波数成分及び第2の周波数成分の復調データを生成する復調ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信多値変調波のS/Nが低く、かつ、多値変調波のシンボル数が小さな場合であっても、受信多値変調波の信号成分とノイズとを区別して信号成分だけを正確に復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の無線受信装置の一実施の形態の全体ブロック図である。
図2図1中のアナログフロントエンドの一例のブロック図である。
図3図1中のデジタル処理モジュールの一実施形態の概略ブロック図である。
図4図1中のデジタル処理モジュールの一実施形態に詳細ブロック図である。
図5】受信FSK変調波の一例のフォーマットを示す図である。
図6】本発明の特徴の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態の無線受信装置は、一例として322MHz以下の周波数を用いて無線通信を行う、微弱電波規格を採用したセンサネットワークシステムで用いられる。このセンサネットワークシステムは、例えば可搬型の無線送信端末においてセンサから得た情報を多値FSK変調して無線送信し、ネットワークを介して無線送信された多値FSK変調波を本実施形態の無線受信装置により受信して復調するシステムである。このセンサネットワークシステムでは、無線送信端末は電池を動作電源とする可搬型であり、できるだけ消費電力を低減することが要求されるのに対し、無線受信装置は電池を動作電源としない非可搬型で消費電力の低減は無線送信端末にくらべて厳しく要求はされない。
【0012】
なお、本実施の形態が適用される微弱電波規格は、例えば無線設備から3mの距離での電界強度が、322MHz以下の周波数領域では500μV/m以下であり、322MHz〜10GHzの周波数領域では35μV/m以下であり、110GHz〜150GHzの周波数領域では周波数が高くなるほど35μV/mから500μV/mまで直線的に増加する線分で示される電界強度以下の強度であり、150GHz以上の周波数領域では500μV/m以下に規定された、無線局の免許不要な規格である。
【0013】
図1は、本発明の無線受信装置の一実施の形態の全体ブロック図を示す。図1において、無線受信装置10は、受信アンテナ11で受信したRF信号帯の多値FSK変調波を高周波受信処理して受信FSK変調波のデジタル信号を出力するアナログフロントエンド12と、アナログフロントエンド12から出力されたデジタル信号に基づいて、受信信号が多値FSK変調波であるかノイズであるかを判定し、FSK変調波と判定したデジタル信号を出力するデジタル処理モジュール13と、デジタル処理モジュール13から出力されたデジタル信号を処理して受信FSK変調波の情報内容を解析する処理装置14とから構成される。処理装置14は、パーソナルコンピュータなどから構成されている。
【0014】
本実施形態の無線受信装置10は、デジタル処理モジュール13の構成に特徴があり、アナログフロントエンド12及び処理装置14は公知の構成である。すなわち、アナログフロントエンド12は図2のブロック図に示す一般的な構成とされている。図2において、アナログフロントエンド12は、受信アンテナ11で受信された受信信号中の不要周波数成分をフィルタ121により除去して、受信信号中の高周波帯の多値FSK変調波のみを低雑音増幅器(LNA)122で増幅してダウンコンバータ123へ供給して、所定の中間周波数(IF)帯の受信多値FSK変調波に周波数変換する。次に、アナログフロントエンド12は、ダウンコンバータ123から出力されたIF帯の多値FSK変調波をIFアンプ124で所要のレベルまで増幅した後、低域フィルタ(LPF)125で不要周波数成分を除去し、信号周波数成分のみ取り出してAD変換器(ADC)126に供給してデジタル信号に変換させる。このようにして、アナログフロントエンド12は、受信信号から受信多値FSK変調波のデジタル信号を生成してデジタル処理モジュール13へ出力する。
【0015】
図3は、デジタル処理モジュール13の一実施形態の概略ブロック図、図4は、デジタル処理モジュール13の一実施形態の詳細ブロック図を示す。図3に示すように、デジタル処理モジュール13は、アナログフロントエンド12から出力された受信デジタル信号が受信多値FSK変調波の信号成分であるかノイズであるかを判定する信号判定部131と、信号判定部131により信号成分であると判定されたデジタル信号の復調を行い復調データを出力するデコード部132とから構成されている。信号判定部131は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などの半導体集積回路で構成されている。また、デコード部132は、MCU(Micro Controller Unit)などのコンピュータで構成されている。なお、FSK変調波の多値化数は、無線受信装置10の周波数分解能によって定まる値の1/2より少なく設定される。これは無線受信装置10で隣り合う周波数に信号がきて周波数遷移時の信号が取得できなくならないようにするためである。
【0016】
ここで、本実施形態の無線受信装置10は、前述したようにデジタル処理モジュール13の構成に特徴があり、その中でも図4のブロック図に示す信号判定部131の構成に特徴がある。図4に示すように、信号判定部131は、高速フーリエ変換器(FFT:Fast Fourier Transform)1311、第1の閾値判断部1312、信号強度加算部1313、第2の閾値判断部1314、ゲート部1315から構成されている。ゲート部1315は出力がデコード部132を構成するデコーダ1321に入力される。
【0017】
次に、図4の信号判定部131の動作について説明する。FFT1311は、図5に示すように識別符号である4ビットのID21と10ビットのデータ22とからなるフォーマットで送信された多値FSK変調波を受信し、アナログフロントエンド12によりデジタル化された受信信号を公知の高速フーリエ変換(FFT)して、時系列の連続的なスペクトルを生成する。
【0018】
第1の閾値判断部1312は、FFT1311から供給される連続的なスペクトラムに基づいて、受信FSK変調波の各周波数成分のうち第1の閾値(例えば50)以上のスペクトル強度(以下信号強度ともいう)の周波数成分をゲート部1315へ出力するとともに、受信FSK変調波の各周波数成分のうち第1の閾値以上の信号強度の周波数成分を信号強度加算器1313へ通知する。信号強度加算器1313は、FFT1311から供給される連続的なスペクトルに基づいて、第1の閾値判断部1312から通知された信号強度の周波数成分の間の周波数成分の信号強度を加算する。
【0019】
例えば、256値FSK変調波を受信する場合、FFT1311で得られる受信FSK変調波のスペクトルの周波数成分が256値のデータに応じてF1〜F256まであり、それらの信号強度が図4に示すものである場合、第1の閾値判断部1312は周波数成分F2、F6の信号強度がそれぞれ「50」以上の「100」であるので、それらの周波数成分F2及びF6を出力するとともに、周波数成分F2及びF6を信号強度加算部1313へ通知する。信号強度加算部1313は、FFT1311から供給される連続的なスペクトルに基づいて、第1の閾値判断部1312から通知された信号強度の周波数成分F2及びF6の間の周波数成分F3、F4及びF5の各信号強度「25」を加算して「75」の加算結果を得る。
【0020】
ゲート部1315は通常はゲート「開」状態にあり、第1の閾値判断部1312から出力された周波数成分をデコード部132へ出力させるが、第2の閾値判断部1314が、信号強度加算部1313から供給される加算結果が第2の閾値未満であると判断したときは、第2の閾値判断部1314によりゲート「閉」状態に制御されて、第1の閾値判断部1312から出力された周波数成分のデコード部132への出力を遮断する。従って、図4の例では信号強度加算器1313の加算結果が「75」であるので、第2の閾値判断部1314は、第1の閾値判断部1312から出力された周波数成分F2とF6をそれぞれデコード部132へ出力させて復調させる。しかし、信号強度加算器1313の加算結果が図4の例と異なり「50」未満であるときは、周波数成分F2及びF6はノイズであると判断し、デコード部132へ出力せず、デコード部132は何もしないため、誤検出成分の復調を未然に防止することができる。
【0021】
上記の動作は次の理由に基づくものである。無線受信装置10にて受信された256値FSK変調波が例えば周波数成分F2及びF6の2値からなるとき、図6に示すように、時刻t1でF2からF6へ遷移した場合、FFT1311は所定値以上の信号強度の本来の受信周波数成分F2と所定値以上の信号強度の本来の受信周波数成分F6を出力する。
【0022】
ここで、受信多値FSK変調波のS/Nが低い場合は、受信信号中にノイズが重畳しており、そのノイズには周波数遷移はなく、周波数スペクトル中の信号強度の高い周波数成分がランダムにかつ瞬間的にしか発生しない。つまり、ノイズの場合、ランダムに周波数スペクトルが強い瞬間が存在する。このため、ノイズの場合は周波数成分F2が検出されている状態において、時刻t1でたまたま周波数成分F6と同じ周波数のノイズが検出されたとしても、周波数成分F2とF6との間の遷移中の周波数成分F3〜F5の信号強度の加算値は第2の閾値以上とはならない。一方、信号成分(電文)の場合は、周波数成分F2とF6との間の遷移中のFSK変調波として割り当てられた周波数成分F3〜F5はそれぞれ小レベルであるが継続的に存在する。
【0023】
従って、第2の閾値判断部1314により、信号強度が所定値以上の2つの受信周波数成分の間のFSK変調に割り当てられた各周波数成分の信号強度を信号強度加算部1313により加算した場合、ノイズのときはその加算結果が第2の閾値未満であるのに対し、信号成分(電文)のときはその加算結果が第2の閾値以上となる。これにより、受信多値FSK変調波のS/Nが低く、かつ、256値FSK変調波のシンボル数が「2」(使用チャンネル数2)のような小さな場合であっても、時刻t1の周波数遷移がノイズによるものか、信号成分(電文)によるものかを信号強度加算部1313の加算結果により正確に区別することができる。従って、本実施形態の無線受信装置10によれば、受信256値FSK変調波のS/Nが低く、かつ、256値FSK変調波のシンボル数が「2」のような小さな場合であっても、受信多値FSK変調波を正確に復調することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、上記のように多値FSK変調波に割り当てられた各周波数成分のうち送信された周波数成分以外の周波数遷移時の周波数成分を取得する必要があるので、隣り合う周波数成分で送信されると周波数遷移時の周波数を取得することができない。このため、受信側では送信側の2倍の周波数分解能を持っている必要があり、受信側で識別できる複数の周波数チャンネルの半分を使用して送信する必要がある。例えば、図4のように256値FSK変調波を受信する場合は、送信側は例えばF2、F4、F6、F8、・・・F256の1つおきの各周波数に割り当てられた128個の周波数チャンネルのみを使用して送信する。
【0025】
すなわち、周波数受信装置は256値FSK変調波を受信する構成である場合、送信データはそのうち一つおきの128個の周波数チャンネルを使用して送信されるので、送信する周波数チャンネルは7ビットで識別できる。よって、送信データは7ビットで伝送される。従って、送信される1回の256値FSK変調波の送信フォーマットは図5に示したようにID21及びデータ22からなる計14ビットであるが、これにより各7ビットの2つのデータを送信する(IDもデータとして用いる)。
【0026】
なお、本実施の形態の無線受信装置が使用される微弱無線規格を採用した無線センサネットワークシステムでは、送信側の無線センサ端末は、多くの場合送信データ量が少なく、遅くとも数ミリ秒で終了するため、同じ帯域を用いている他の無線センサ端末での電波の衝突が起こりにくい。また、微弱無線規格は電波強度のみが規定されており、占有する周波数帯域には制限が無く、電波法で問題となることはない。
【0027】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば多値化数は258に限定されるものではなく、また多値PSKや多値ASKなどの単一搬送波を用いた他のデジタル変調方式の多値デジタル変調波を無線受信する無線受信装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 無線受信装置
11 受信アンテナ
12 アナログフロントエンド
13 デジタル処理モジュール
14 処理装置
131 信号判定部
132 デコード部
1311 高速フーリエ変換器(FFT:Fast Fourier Transform)
1312 第1の閾値判断部
1313 信号強度加算部
1314 第2の閾値判断部
1315 ゲート部
1321 デコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6