特許第6229596号(P6229596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229596
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】懸濁液の濃縮システムおよび濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/36 20060101AFI20171106BHJP
   A23L 2/08 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   B01D61/36
   !A23L2/08
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-117605(P2014-117605)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229154(P2015-229154A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】三輪 聡志
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−268813(JP,A)
【文献】 特開平05−237347(JP,A)
【文献】 米国特許第04952751(US,A)
【文献】 特開2005−087890(JP,A)
【文献】 特表2012−500114(JP,A)
【文献】 特開2010−094585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
A23L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性多孔質膜を挟んで原水部と凝縮部とを備え、
前記凝縮部を減圧状態に維持し、かつ前記凝縮部に冷却手段を備え、
100〔℃〕未満に加熱された懸濁液を前記原水部に導入し、該懸濁液の蒸気を前記疎水性多孔質膜に透過させて前記凝縮部で凝縮し、前記懸濁液の濃縮液を生成するとともに、
該濃縮液を回収する濃縮液回収ラインに設置され、該濃縮液回収ラインに流す前記濃縮液の流量を調整する第1のバルブと、
前記濃縮液回収ラインを流れる前記濃縮液の一部または全部を前記原水部の前記懸濁液の導入側に循環させる循環経路に設置され、該循環経路内の流量を調整する第2のバルブと、
を備え、前記原水部への前記懸濁液の供給状態の判断結果に応じて前記第1のバルブと前記第2のバルブの開閉を制御し、前記懸濁液に前記濃縮液を混合させて前記原水部に循環させることを特徴とする懸濁液の濃縮システム。
【請求項2】
前記懸濁液は、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む液体であることを特徴とする請求項1に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項3】
前記懸濁液の流路幅が1〔mm〕以上、30〔mm〕以下とし、より好ましくは3〔mm〕以上、20〔mm〕以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項4】
前記懸濁液の膜面線流速が0.01〔m/s〕以上、5〔m/s〕以下とし、より好ましくは0.05〔m/s〕以上、2〔m/s〕以下としたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項5】
さらに、前記原水部に導入する前記懸濁液を廃熱で加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項6】
前記第2のバルブの開度制御により前記懸濁液の流量を増減させて、前記原水部内に流れる前記懸濁液の膜面線流速を適正範囲に調整することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項7】
さらに、前記懸濁液から懸濁物を除く懸濁物除去手段を備え、この懸濁物除去手段で前記懸濁物が除かれた懸濁液を前記原水部に導入することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項8】
前記懸濁物除去手段がフィルターまたは遠心分離機の何れか一方または双方を含むことを特徴とする請求項7に記載の懸濁液の濃縮システム。
【請求項9】
疎水性多孔質膜を挟んで原水部と凝縮部とを設置し、前記凝縮部を減圧状態に維持し、かつ前記凝縮部に冷却手段を設置し、100〔℃〕未満に加熱された懸濁液を前記原水部に導入する工程と、
該懸濁液の蒸気を前記疎水性多孔質膜に透過させて前記凝縮部で凝縮し、前記懸濁液の濃縮液を生成する工程と、
前記原水部への前記懸濁液の供給状態の判断結果に応じて、前記濃縮液を回収する濃縮液回収ラインに流す前記濃縮液の流量を調整する第1のバルブと、前記原水部の前記懸濁液の導入側に前記濃縮液を循環させる循環経路に流す前記凝縮液の流量を調整する第2のバルブの開閉を制御して、前記懸濁液に前記濃縮液を混合させて前記原水部に循環させる工程と
を含むことを特徴とする懸濁液の濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む各種懸濁液を減圧下で濃縮する減圧濃縮およびこの減圧濃縮への廃熱利用などの関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料などの製造ではたとえば、果汁、スープ、エキスなどの懸濁液を濃縮する濃縮工程がある。この濃縮工程は、懸濁液中成分の乾固化や粉末化の前処理として、あるいは懸濁液の輸送費の低減や保管スペースの削減のためなどの目的で行われ、鮮度の維持や処理コストの低減など、その処理は極めて重要な工程とされる。
【0003】
果汁、スープ、エキスなどは、果実、肉、魚介類、野菜などの生物由来成分を含んでいる。この生物由来成分は高温下で長時間処理すれば、風味や香りが変質しやすい。風味や香りの変質を防ぐには、100〔℃〕未満の低温下での減圧濃縮が可能な真空蒸留法たとえば、真空エバポレーターによる方法や、常温下で圧力ろ過する膜分離法たとえば、逆浸透膜を用いる方法がある。
【0004】
このような濃縮の関連技術に関し、果実のジュース製造に真空エバポレーターを用いることが知られ(たとえば、特許文献1、特許文献2)、逆浸透膜を用いてセルロース由来糖液から糖液を濃縮することが知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平8−506733号公報
【特許文献2】特開2009−62301号公報
【特許文献3】特開2013−63076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、真空エバポレーターでは生産ラインに用いられる装備が金属製であるため、果汁、スープ、エキスなど、酸や塩類を含むいわゆる腐食性液体に対する適用性が高いとは言えない。また、加温面積や蒸発面積を大きくすれば、蒸発効率を確保できる反面、重装備で装置規模が大きく、高価になるなどの課題がある。
【0007】
一方、逆浸透膜では、膜モジュールの耐熱性が十分でないし、処理水の溶存成分濃度の内、特に塩類濃度に比例してろ過圧力を高くしなければならず、高い動力エネルギーを必要とする。
【0008】
また、この逆浸透膜では、膜表面に懸濁液成分が濃縮して付着し、膜透過液量を著しく低下させる。濃縮液粘度が高くなると、膜モジュール中の膜間にある1〔mm〕程度以下の極薄い原水流路では濃縮液が流れ難くなる。このため、数倍程度の濃縮倍率しか得られないという課題がある。
【0009】
ところで、海水の淡水化、純水製造、宇宙船内における尿からの水回収などの技術分野では原水から蒸留水を取り出す処理に膜蒸留技術を利用することが知られている。本発明者は、斯かる膜蒸留技術を懸濁液の濃縮に適用することを発案し、この膜蒸留技術を用いた懸濁液の濃縮実験を試みた。この実験で、たとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む各種懸濁液の濃縮に膜蒸留技術を用いた場合には、流路閉塞や膜細孔の詰まりなど、新たな課題を発見し、それを確認するに至った。
【0010】
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、膜蒸留技術を用いて果汁、スープ、エキスなど、各種懸濁液の濃縮を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の懸濁液の濃縮システムの一側面によれば、疎水性多孔質膜を挟んで原水部と凝縮部とを備え、前記凝縮部を減圧状態に維持し、かつ前記凝縮部に冷却手段を備え、100〔℃〕未満に加熱された懸濁液を前記原水部に導入し、該懸濁液の蒸気を前記疎水性多孔質膜に透過させて前記凝縮部で凝縮し、前記懸濁液の濃縮液を生成するとともに、該濃縮液を回収する濃縮液回収ラインに設置され、該濃縮液回収ラインに流す前記濃縮液の流量を調整する第1のバルブと、前記濃縮液回収ラインを流れる前記濃縮液の一部または全部を前記原水部の前記懸濁液の導入側に循環させる循環経路に設置され、該循環経路内の流量を調整する第2のバルブとを備え、前記原水部への前記懸濁液の供給状態の判断結果に応じて前記第1のバルブと前記第2のバルブの開閉を制御し、前記懸濁液に前記濃縮液を混合させて前記原水部に循環させる
【0012】
上記懸濁液の濃縮システムにおいて、前記懸濁液は、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む液体であってもよい。
【0013】
上記懸濁液の濃縮システムにおいて、前記懸濁液の流路幅が1〔mm〕以上、30〔mm〕以下とし、より好ましくは3〔mm〕以上、20〔mm〕以下としてもよい。
【0014】
上記懸濁液の濃縮システムにおいて、前記懸濁液の膜面線流速が0.01〔m/s〕以上、5〔m/s〕以下とし、より好ましくは0.05〔m/s〕以上、2〔m/s〕以下としてもよい。
【0015】
上記懸濁液の濃縮システムでは、さらに、前記原水部に導入する前記懸濁液を廃熱で加熱する加熱手段を備えてもよい。
【0016】
上記懸濁液の濃縮システムでは、前記第2のバルブの開度制御により前記懸濁液の流量を増減させて、前記原水部内に流れる前記懸濁液の膜面線流速を適正範囲に調整してよい。
【0017】
上記懸濁液の濃縮システムにおいて、さらに、前記懸濁液から懸濁物を除く懸濁物除去手段を備え、この懸濁物除去手段で前記懸濁物が除かれた懸濁液を前記原水部に導入してもよい。
【0018】
上記懸濁液の濃縮システムにおいて、前記懸濁物除去手段がフィルターまたは遠心分離機の何れか一方または双方を含んでもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の懸濁液の濃縮方法の一側面によれば、疎水性多孔質膜を挟んで原水部と凝縮部とを設置し、前記凝縮部を減圧状態に維持し、かつ前記凝縮部に冷却手段を設置し、100〔℃〕未満に加熱された懸濁液を前記原水部に導入する工程と、該懸濁液の蒸気を前記疎水性多孔質膜に透過させて前記凝縮部で凝縮し、前記懸濁液の濃縮液を生成する工程と、前記原水部への前記懸濁液の供給状態の判断結果に応じて、前記濃縮液を回収する濃縮液回収ラインに流す前記濃縮液の流量を調整する第1のバルブと、前記原水部の前記懸濁液の導入側に前記濃縮液を循環させる循環経路に流す前記凝縮液の流量を調整する第2のバルブの開閉を制御して、前記懸濁液に前記濃縮液を混合させて前記原水部に循環させる工程とを含んでいる。

【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0021】
(1) 膜蒸留技術を用いることにより、果汁、スープ、エキスなど、繊維分や粒子を含む懸濁液を濃縮することができる。
【0022】
(2) 果汁、スープ、エキスなどの懸濁液を100〔℃〕未満の低温加熱、冷却および減圧で懸濁液からの蒸気の発生を促し、疎水性多孔質膜に対する蒸気の透過を促進させて濃縮でき、果汁、スープ、エキスなどの懸濁液の成分劣化や風味の変化を防止できる。
【0023】
(3) 果汁、スープ、エキスなど、繊維分や粒子を含む懸濁液による流路閉塞や目詰まりなどの不都合を回避でき、効率的な懸濁液濃縮を実現できる。
【0024】
(4) 果汁、スープ、エキスなど、繊維分や粒子を含む懸濁液の濃縮を膜蒸留技術を適用すれば、果汁、スープ、エキスなどの懸濁液の処理が鮮度維持などから高温加熱を回避するので、廃熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0025】
(5) 膜蒸留技術に廃熱エネルギーを適用すれば、廃熱エネルギーの有効利用と、懸濁液の濃縮システムの普及を高めることができ、一層の省エネルギー化や省コスト化を図ることができ、環境保全や産業活性化にも貢献できる。
【0026】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施の形態に係る濃縮システムの一例を示す図である。
図2】膜蒸留装置の一例を示す図である。
図3】膜蒸留装置における懸濁液の流路幅および膜面線流速を説明するための図である。
図4】懸濁液濃縮の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第2の実施の形態に係る濃縮システムの一例を示す図である。
図6】第3の実施の形態に係る濃縮システムの一例を示す図である。
図7】第4の実施の形態に係る濃縮システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施の形態〕
【0029】
<濃縮システム>
【0030】
図1は、第1の実施の形態に係る濃縮システムを示している。図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0031】
この濃縮システム2には膜蒸留装置4が備えられ、この膜蒸留装置4には原水ライン6が接続されている。この原水ライン6から膜蒸留装置4に導入される原水はたとえば、懸濁液8であり、この懸濁液8はたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む液体である。
【0032】
原水ライン6にはたとえば、懸濁液8の加熱手段の一例として熱交換部10が設置されている。熱交換部10は工場廃熱など、廃熱源で加熱された熱媒HMの熱を懸濁液8に熱交換する。これにより、懸濁液8はたとえば、数十〔℃〕から100〔℃〕未満の低温度に加熱されて膜蒸留装置4に供給することができる。懸濁液8の加熱に工場廃熱などの廃熱を利用でき、各種の廃熱の有効利用が図られる。
【0033】
この膜蒸留装置4は懸濁液8を膜蒸留により濃縮し、濃縮液12と凝縮水14に分離する。濃縮液12は濃縮液回収ライン16に導かれ、凝縮水14は凝縮水排出ライン18に導かれる。
【0034】
濃縮液回収ライン16には第1のバルブ20−1が設置され、このバルブ20−1を開くことにより、濃縮液12が膜蒸留装置4から取り出される。この濃縮液回収ライン16と原水ライン6との間には濃縮液循環ライン22が接続され、この濃縮液循環ライン22には第2のバルブ20−2が備えられる。濃縮液循環ライン22は、濃縮液12を原水側に循環させる循環経路の一例である。
【0035】
原水ライン6から供給される原水量が少ない場合には、バルブ20−2を開き、濃縮液12を原水側の懸濁液8に戻して混合し、膜蒸留装置4に循環させればよい。
【0036】
<膜蒸留装置4>
【0037】
図2は、膜蒸留装置4の一例を示している。この膜蒸留装置4は低温廃熱を利用する懸濁液8の加熱と、疎水性多孔質膜を通過させた懸濁液8の蒸気を減圧および低温条件下で蒸留または濃縮する膜蒸留技術を用いる。
【0038】
この膜蒸留装置4には疎水性多孔質膜24が備えられ、この疎水性多孔質膜24を挟んで原水室26と凝縮室28が備えられる。原水室26は懸濁液8を導入する原水部の一例であり、凝縮室28は疎水性多孔質膜24を通過した蒸気を凝縮する凝縮部の一例である。
【0039】
疎水性多孔質膜24は原水室26に導入された懸濁液8の蒸気のみを選択的に通過させる手段の一例である。この疎水性多孔質膜24にはたとえば、フッ素樹脂製多孔質膜が使用される。このフッ素樹脂製多孔質膜は耐熱性に優れる。この疎水性多孔質膜24では懸濁液8の蒸気30のみを透過させ、膜透過蒸気量に対する懸濁液8の浸透圧や粘度の影響を受けにくく、蒸気透過性が高く、懸濁液濃縮を効率的に行える。
【0040】
凝縮室28には減圧装置32が接続され、凝縮室28の壁面には冷却部34が備えられている。凝縮室28とともに原水室26が減圧装置32により減圧されて減圧状態に維持され、冷却部34は接触する蒸気30を凝縮する程度の温度に冷却されている。減圧下に維持された凝縮室28には、疎水性多孔質膜24を通過した蒸気30が引き込まれる。蒸気30は凝縮室28の冷却部34に触れ、凝縮する。つまり冷却部34では蒸気30が結露状態で凝縮水14を生ずる。
【0041】
この場合、凝縮室28が減圧状態に維持されるので、蒸気30を引き込む機能だけでなく、懸濁液8の沸点をより降下させる機能を有する。これにより、懸濁液8から生じる蒸気30が顕著となり、疎水性多孔質膜24を透過する蒸気量が増大する。この結果、凝縮室28に入った蒸気30が冷却部34に接触して減圧条件下で凝縮し凝縮水14となる。つまり、懸濁液8から多くの蒸気30が凝縮して凝縮水14に変換されるので、原水室26の懸濁液8が効率的に濃縮される。したがって、原水室26から多くの濃縮液12が生成され、濃縮液回収ライン16に回収される。
【0042】
この膜濃縮において、懸濁液8を濃縮し、濃縮液12を得る上で、懸濁液8の流路幅および膜面線流速は極めて重要である。流路幅は、懸濁液8を通過させるに有効な流路径などの大きさである。これに対し、膜面線流速は、懸濁液8の流量を装置内の有効断面積で割った値で与えられる線速度であり、見かけ上、懸濁液8の速度である。具体的には、疎水性多孔質膜24の膜面に平行な懸濁液8の平均流速である。
【0043】
図3は、一例としてこの膜蒸留装置4中の懸濁液8の流れを示す。図3において、疎水性多孔質膜24面から、疎水性多孔質膜24面の対面にある原水室26面までの距離が、流路幅Wである。また、原水室26断面積で懸濁液8の流量を割った値が、膜面線流速Vである。原水である懸濁液8は、膜蒸留装置4を流れながら、濃縮されるため、原水に含まれる懸濁物および溶解成分濃度Pが高くなるため、原水室26の流路35を流れにくくなる。Qは懸濁物および溶解成分濃度Pの推移を示している。この懸濁物および溶解成分濃度Pが高くなると、流路閉塞や膜細孔の詰まりなどを生じるという課題がある。斯かる課題を解決すべく、鋭意検討の結果、懸濁液8の流路幅Wおよび膜面線流速Vを原水水質に合わせて、適性範囲に調整すれば、これらの課題を解決できることが見出された。すなわち、懸濁液8の流路幅Wおよび膜面線流速Vは、原水水質たとえば、懸濁物質の形状や柔らかさや濃度また溶存成分により異なり、具体的にはたとえば、糖分やアミノ酸やタンパク質などの種類や濃度により異なるので、その適正範囲は濃縮試験により確認することが好ましい。この濃縮試験により、本用途での斯かる適正範囲は概ね、次の通りである。
【0044】
そして、この膜蒸留装置4では、懸濁液8の流路幅Wがたとえば、1〔mm〕以上、30〔mm〕以下であればよく、より好ましくは3〔mm〕以上、20〔mm〕以下とする。また、懸濁液8の膜面線流速Vはたとえば、0.01〔m/s〕以上、5〔m/s〕以下とし、より好ましくは0.05〔m/s〕以上、2〔m/s〕とすればよい。
【0045】
斯かる値は、発明者による工夫や濃縮実験によって確認したものであり、懸濁液8の濃縮に膜蒸留技術を用いた場合に既述の課題を解決したものである。したがって、斯かる条件を設定すれば、懸濁液8に含まれる繊維成分や粗大な粒子による疎水性多孔質膜24の流路閉塞を防止でき、蒸気透過機能が損なわれることがなく、懸濁液8の濃縮効率を高めることができることが確認された。
【0046】
この場合、懸濁液8の膜面線流速Vが懸濁液8の濃縮効率に関係する。そこで、原水ライン6からの懸濁液8の供給原水量が少ない場合には、バルブ20−2を開き、バルブ20−1を絞って通過量を減ずることにより、濃縮液12を原水ライン6側に戻し、懸濁液8に濃縮液12を加えた加算液を原水として膜蒸留装置4に循環させる。これにより、原水室26に流れる懸濁液8の循環量を調整でき、膜面線流速を高めることができるとともに、所定の値に制御できる。この場合、後述の原水室26の入口に濃縮液12を戻して原水室26に循環させてもよい。
【0047】
また、原水ライン6からの懸濁液8の供給原水量が多い場合にはたとえば、バルブ20−2を開き、原水ライン6側の懸濁液8に濃縮液回収ライン16から濃縮液12を加えて膜蒸留装置4に循環させることも可能である。
【0048】
図4は、懸濁液8の濃縮の処理手順を示している。この処理手順は、本発明の懸濁液の濃縮方法の一例である。
【0049】
この処理手順では、懸濁液8の濃縮に際し、膜蒸留装置4の凝縮室28を減圧するとともに、冷却部34を低温状態に維持する(S11)。
【0050】
原水ライン6に流れる懸濁液8を熱交換部10で熱交換により低温加熱する(S12)。この低温加熱は、たとえば、数十〔℃〕から100〔℃〕未満の温度に懸濁液8を加熱する。
【0051】
加熱された懸濁液8から生じた蒸気30を原水室26から疎水性多孔質膜24を通して凝縮室28に流す(S13)。
【0052】
疎水性多孔質膜24を通過した蒸気30は凝縮室28の冷却部34により冷やされて凝縮し、凝縮水14となって凝縮水排出ライン18から排出される(S14)。
【0053】
そして、原水室26に供給される懸濁液8の原水供給量が適正かを判断する(S15)。原水供給量が適正であれば(S15のYES)、原水室26で濃縮された濃縮液12を濃縮液回収ライン16から送出する(S16)。これにより、懸濁液8の濃縮液12が回収される。
【0054】
原水供給量が少なければ(S15のNO)、バルブ20−2を開き、濃縮液12を濃縮液循環ライン22に流し、原水ライン6の懸濁液8に戻し、濃縮液12で増量された原水=懸濁液8+濃縮液12を原水室26に供給し(S17)、S13以下の処理を行う。これにより、同様に濃縮液12が回収される。
【0055】
<第1の実施の形態の効果>
【0056】
(1) 以上説明したように、膜蒸留技術を用いることにより、繊維分や粒子を含む懸濁液8を膜蒸留技術により濃縮することができる。
【0057】
(2) 第1の実施の形態では、既述の課題を解決でき、従来の真空エバポレーターによる方法や膜分離法にはない優れた濃縮機能が得られる。
【0058】
(3) 第1の実施の形態から明らかなように、海水淡水化や純水製造や宇宙船内での尿からの水回収などに限定的に用いられていた膜蒸留技術を懸濁液8の濃縮に適用でき、上記課題を克服し、懸濁液8を効率的に濃縮でき、濃縮液12を回収できる。
【0059】
(4) 第1の実施の形態では、熱交換部10に通流させる熱媒HMは、廃熱源から得られる廃熱エネルギーを利用して加熱している。この熱媒HMの熱を熱交換して懸濁液8を低温加熱しているので、廃熱エネルギーの膜蒸留技術への適用など、その有効利用を拡大することができ、一層の省エネルギー化や省コスト化を図ることができ、環境保全や産業活性化に貢献することができる。
【0060】
(5) 疎水性多孔質膜24を含む原水室26および凝縮室28の内部が減圧されているので、この減圧下では低温加熱された懸濁液8の沸点が下がることにより、懸濁液8の水分からの蒸発が促進される。このような減圧下による処理であるため、懸濁液8の加熱温度は100〔℃〕未満の比較的低い温度の加熱でよく、懸濁液8の加熱に工場廃熱などの各種の廃熱を熱源として有効に利用できる。
【0061】
(6) 原水室26に供給される懸濁液8が少ない場合には、濃縮液12を原水室26の入口または原水ライン6に循環させて原水室26に対する原水供給量を増量させることができ、原水室26における懸濁液8の膜面線流速を高め、しかも、懸濁液濃縮や疎水性多孔質膜24に対する蒸気通過に適正な膜面線流速に制御でき、懸濁液8の効率的な膜濃縮を行うことができる。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
【0063】
この濃縮システム2は図5に示すように、膜蒸留装置4の前処理側に懸濁物除去手段の一例であるメッシュフィルター36を備え、メッシュフィルター36による透過処理を膜蒸留装置4の膜蒸留処理に組み合わせてもよい。図5において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0064】
この濃縮システム2では、膜蒸留装置4の前段に設置されたメッシュフィルター36に原水ライン6から懸濁液8が供給される。メッシュフィルター36のろ過で、懸濁液8から得られるろ液38が懸濁液ライン40により膜蒸留装置4に導入される。濃縮液回収ライン16と懸濁液ライン40との間には濃縮液循環ライン22−1、濃縮液回収ライン16と原水ライン6の間には濃縮液循環ライン22−2が備えられ、濃縮液循環ライン22−1には既述のバルブ20−2、濃縮液循環ライン22−2にはバルブ20−3が備えられている。
【0065】
メッシュフィルター36には膜蒸留装置4と同様に濃縮液回収ライン42が設けられ、この濃縮液回収ライン42にはバルブ20−4が備えられる。この濃縮液回収ライン42と原水ライン6との間には濃縮液循環ライン22−3が備えられ、この濃縮液循環ライン22−3にはバルブ20−5が設置される。
【0066】
この実施の形態によれば、懸濁液8がメッシュフィルター36でろ過され、メッシュフィルター36から得られたろ液38を膜蒸留装置4に供給することができ、ろ液38から濃縮した濃縮液12が膜蒸留装置4で回収される。
【0067】
このようなメッシュフィルター36を前置した処理では、メッシュフィルター36のろ過により、原水である懸濁液8から数〔%〕〜数十〔%〕程度の懸濁物を除去できる。この懸濁物の除去により、膜蒸留装置4では懸濁物による流路閉塞や膜細孔の詰まりなどの影響を軽減できる。
【0068】
この場合、メッシュフィルター36の目開きは、原水の懸濁液8に含まれる懸濁物などの懸濁成分のサイズによって選定すればよい。懸濁液8にたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む懸濁液を想定したメッシュフィルター36の目開きではたとえば、10〔μm〕以上、数〔mm〕以下であればよく、より好ましくは50〔μm〕以上、2000〔μm〕程度であればよいが、いずれにしても懸濁物の除去を想定すれば、そのサイズによって目開きを選定すればよい。
【0069】
この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に原水ライン6に熱交換部10を備え、廃熱で加熱された熱媒HMの熱を懸濁液8に熱交換し、低温加熱された懸濁液8を原水室26に導入すればよい。
【0070】
<第2の実施の形態の効果>
【0071】
(1) このようにメッシュフィルター36を併用すれば、高濃度で懸濁物を含む懸濁液8や、粗大な固形物を高濃度で含有する懸濁液8の濃縮を効率よく行うことができる。
【0072】
(2) メッシュフィルター36で得られる濃縮液をメッシュフィルター36の入口側の原水の懸濁液8に戻して懸濁液8として循環させれば、懸濁液8からの濃縮液12の回収率を高めることができる。
【0073】
〔第3の実施の形態〕
【0074】
この濃縮システム2ではメッシュフィルター36に代え、図6に示すように、遠心分離機44を組み合わせてシステムを構成してもよい。図6において、図5と同一部分には同一符号を付してある。
【0075】
この濃縮システム2では、膜蒸留装置4の前段に懸濁物除去手段の一例として遠心分離機44が設置され、この遠心分離機44に原水ライン6から懸濁液8が供給される。遠心分離機44で懸濁液8から分離された透過液46は懸濁液ライン40により膜蒸留装置4に導入される。その他の構成は、図5と同一であるのでその説明を割愛する。
【0076】
この実施の形態によれば、懸濁液8に遠心分離機44で前処理が施され、遠心分離機44で得られた透過液46を膜蒸留装置4に供給することができ、透過液46から濃縮した濃縮液12が膜蒸留装置4で回収される。
【0077】
このような遠心分離機44で前処理すれば、遠心分離機44を透過させることにより、原水である懸濁液8から数〔%〕〜数十〔%〕程度の懸濁物を除去できる。この懸濁物の除去により、遠心分離機44によっても、膜蒸留装置4では懸濁物による影響を軽減できる。
【0078】
この場合、遠心分離機44の目開きは、原水の懸濁液8に含まれる懸濁物などの懸濁成分のサイズによって選定すればよい。懸濁液8にたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む懸濁液を想定した遠心分離機44においても、その目開きではたとえば、10〔μm〕以上、数〔mm〕以下であればよく、より好ましくは50〔μm〕以上、2000〔μm〕程度であればよいが、いずれにしても懸濁物の除去を想定すれば、そのサイズによって目開きを選定すればよい。
【0079】
また、遠心分離機44の遠心力は、原水である懸濁液8の性状に合わせて調整すればよく、懸濁液8にたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む懸濁液を想定すれば、最大値として4000〔G〕ないし5000〔G〕以下とし、より好ましくは数百〔G〕から3000〔G〕であればよいが、いずれにしても懸濁物の除去を想定し、遠心力を選定すればよい。
【0080】
この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に原水ライン6に熱交換部10を備え、廃熱で加熱された熱媒HMの熱を懸濁液8に熱交換し、低温加熱された懸濁液8を原水室26に導入すればよい。
【0081】
<第3の実施の形態の効果>
【0082】
(1) このように遠心分離機44を併用すれば、高濃度で懸濁物を含む懸濁液8や、粗大な固形物を高濃度で含有する懸濁液8の濃縮を効率よく行うことができる。
【0083】
(2) 遠心分離機44で得られる濃縮液を遠心分離機44の入口側の原水の懸濁液8に戻して懸濁液8として循環させれば、第2の実施の形態と同様に、懸濁液8からの濃縮液12の回収率を高めることができる。
【0084】
〔第4の実施の形態〕
【0085】
この濃縮システム2は図7に示すように、メッシュフィルター36および遠心分離機44を組み合わせてシステムを構成してもよい。図7において、図5または図6と同一部分には同一符号を付してある。
【0086】
この濃縮システム2では、膜蒸留装置4の前段に遠心分離機44が設置され、この遠心分離機44の前段にメッシュフィルター36が設置されている。第1の原水ライン6−1から原水である懸濁液8が供給され、第2の原水ライン6−2には同様に懸濁液8が供給される。
【0087】
メッシュフィルター36のろ過で、懸濁液8から分離されたろ液は、既述の濃縮液12としてバルブ20−6を開くことにより、濃縮液ライン48−1から回収される。また、この濃縮液12はバルブ20−7を開くことにより濃縮液ライン48−2から懸濁液ライン40に導かれ、遠心分離機44の透過液とともに膜蒸留装置4の原水室26に導入される。この場合、メッシュフィルター36で得られる濃縮液12の回収または膜蒸留装置4への供給はバルブ20−6、20−7の開度によって調整することができる。また、バルブ20−7を開き、バルブ20−6を閉じれば、メッシュフィルター36のろ過で得られたろ液38を懸濁液ライン40のみに加えることができる。
【0088】
メッシュフィルター36では懸濁液8のろ過によって濃縮残渣50が得られ、この濃縮残渣50が濃縮残渣回収ライン52から回収される。この場合、懸濁液8に多くの懸濁物が含まれる場合には、メッシュフィルター36のろ過でその懸濁物を濃縮残渣50として懸濁液8から除き、この懸濁液8を膜蒸留装置4に導入でき、膜蒸留装置4に対する懸濁物の影響を回避でき、効率的な濃縮が行える。
【0089】
遠心分離機44では、懸濁液8から濃縮液12が分離され、バルブ20−4を開くことにより濃縮液回収ライン42から回収される。また、この濃縮液12は濃縮液循環ライン54からバルブ20−5を開くことによりメッシュフィルター36に供給され、メッシュフィルター36内の懸濁液8に混合させることができる。
【0090】
このように、膜蒸留装置4とメッシュフィルター36および遠心分離機44を組み合わせることにより、懸濁液8から濃縮液12を回収するとともに、凝縮水14および濃縮残渣50を取り出すことができる。
【0091】
この実施の形態においても、懸濁液8にたとえば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む懸濁液を想定したメッシュフィルター36または遠心分離機44においても、その目開きではたとえば、10〔μm〕以上、数〔mm〕以下であればよく、より好ましくは50〔μm〕以上、2000〔μm〕程度であればよいが、いずれにしても懸濁物の除去を想定すれば、そのサイズによって目開きを選定すればよい。また、遠心分離機44の遠心力については、第3の実施の形態と同様に設定すればよい。
【0092】
また、懸濁液8中の懸濁物質の濃度や性状によって、メッシュフィルター36または遠心分離機44に代え精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いてもよく、これらをメッシュフィルター36または遠心分離機44のいずれか一方または双方と組み合わせて用いてもよい。
【0093】
この第4の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に原水ライン6に熱交換部10を備え、廃熱で加熱された熱媒HMの熱を懸濁液8に熱交換し、低温加熱された懸濁液8を原水室26に導入すればよい。
【0094】
<第4の実施の形態の効果>
【0095】
(1) このようにメッシュフィルター36および遠心分離機44を併用すれば、高濃度で懸濁物を含む懸濁液8や、粗大な固形物を高濃度で含有する懸濁液8から固形物などを取り除き、懸濁液8の濃縮をより効率よく行うことができる。
【0096】
(2) メッシュフィルター36および遠心分離機44で得られる濃縮液をメッシュフィルター36の入口側の原水の懸濁液8に戻して懸濁液8として循環させれば、第2または第3の実施の形態の効果を超える、懸濁液8からの濃縮液12の回収率をより高めることができる。
【実施例】
【0097】
<実施例1>
【0098】
この実施例では、温州ミカンを搾汁後に篩別し、この液体からパルプ懸濁物を40〔%〕程度除去したものを原水とし、これを既述の懸濁液8とした。この懸濁液8を屈折率計で測定したところ、原水糖度は9〔%〕であった。
【0099】
この懸濁液8を既述の膜蒸留装置4で、原水流路幅5〔mm〕、膜面線流速0.5〔m/s〕に設定して膜蒸留濃縮を実施した。
【0100】
この実施例によれば、原水流路の閉塞は確認されなかった。濃縮液を屈折率計で測定したところ、糖度52〔%〕まで濃縮できた。
【0101】
<実施例2>
【0102】
この実施例2では実施例1と同様の懸濁液8を用いた。すなわち、温州ミカンを搾汁後、篩別し、パルプ懸濁物を40〔%〕程度除去したものを原水とし、これを懸濁液8とした。この懸濁液8の原水糖度は9〔%〕である。
【0103】
そして、この実施例2では、原水流路幅0.5〔mm〕、膜面線流速5〔m/s〕で設定し、膜蒸留濃縮を実施した。
【0104】
この実施例2では、原水流路に閉塞が生じたものの、濃縮液を屈折率計で測定したところ、糖度10.5〔%〕まで濃縮できたものの、既述の実施例1の糖度に達しなかった。つまり、原水流路幅0.5〔mm〕、膜面線流速5〔m/s〕が濃縮効率に影響を与えており、懸濁液8の流路幅や膜面線流速を調整し、懸濁液8の導入量を制御することにより、濃縮濃度が得られることが確認された。
【0105】
〔他の実施の形態〕
【0106】
(1) 上記実施の形態では疎水性多孔質膜24に隣接して凝縮室28を設置したが、この凝縮室28を疎水性多孔質膜24から離間した位置に配置し、疎水性多孔質膜24を通過させた蒸気30を凝縮室28に導いて凝縮する構成としてもよい。
【0107】
(2) 上記実施の形態では原水ライン6に熱交換部10を備え、廃熱を熱媒HMで熱交換部10に導き、懸濁液8に熱交換しているが、熱交換部10は既述のように膜蒸留装置4側に設置してもよいし、廃熱源側に設置してもよい。つまり、廃熱源側に備えた熱交換部に原水ライン6により導いた懸濁液を廃熱により熱交換し、懸濁液8を低温加熱する構成であってもよい。
【0108】
(3) 懸濁液8から膜濃縮によって得られた凝縮水14は、工業用水や飲料などの用途に用いてもよい。
【0109】
以上説明したように、懸濁液の濃縮システムおよび濃縮方法の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の懸濁液の濃縮システムおよび濃縮方法によれば、果汁、スープ、エキスなど、生物由来成分を含む懸濁液を膜濃縮により効率よく濃縮することができ、膜濃縮および廃熱利用技術として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
2 濃縮システム
4 膜蒸留装置
6 原水ライン
6−1 第1の原水ライン
6−2 第2の原水ライン
8 懸濁液
10 熱交換部
12 濃縮液
14 凝縮水
16 濃縮液回収ライン
18 凝縮水排出ライン
20−1 第1のバルブ
20−2 第2のバルブ
20−3、20−4、20−5、20−6、20−7 バルブ
22、22−1、22−2、22−3 濃縮液循環ライン
24 疎水性多孔質膜
26 原水室
28 凝縮室
30 蒸気
32 減圧装置
34 冷却部
35 流路
36 メッシュフィルター
38 ろ液
40 懸濁液ライン
42 濃縮液回収ライン
44 遠心分離機
46 透過液
48−1、48−2 懸濁液ライン
50 濃縮残渣
52 濃縮残渣回収ライン
54 濃縮液循環ライン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7