特許第6229618号(P6229618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229618
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】熱処理装置、熱処理方法、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20171106BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01L21/30 567
   H01L21/30 571
   H01L21/68 A
   H01L21/02 D
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-163791(P2014-163791)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-39350(P2016-39350A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】林 聖人
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰之
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 智樹
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−340286(JP,A)
【文献】 特開2006−269920(JP,A)
【文献】 特開2010−103444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の基板搬送機構によって基板の搬入出が行われる搬入出口を備えた筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板に対する熱処理が行われる加熱部と、
前記加熱部と搬入出口との間に形成され、前記筐体の外部の外気温度よりも温度が低くなる低温領域と、
前記搬入出口を介して低温領域へ向けてパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクルの進入抑制機構と、を備え
前記パーティクルの進入抑制機構は、
前記搬入出口と低温領域との間に設けられ、前記筐体内のパーティクルを捕集するための捕集面を筐体内に向けて配置されたパーティクル捕集部と、
前記捕集面の温度を、前記搬入出口から低温領域に至る雰囲気に向けて露出する部材の温度のうちの最低温度に冷却する冷却機構と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却機構により冷却される捕集面の温度は、前記筐体内の露点温度よりも高いことを特徴とする請求項に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記低温領域には、前記加熱部にて熱処理された基板が載置される載置面を備え、当該載置面に載置された基板を前記外気温度よりも低い温度に冷却するための基板冷却部が設けられ、前記捕集面は、前記搬入出口と基板冷却部との間に配置されていることを特徴とする請求項またはに記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記捕集面は、前記搬入出口の周囲に配置されていることを特徴とする請求項ないしのいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記冷却機構は、
前記パーティクル捕集部に接して設けられ、冷却面から放熱面へ向けて熱を移動させるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子に直流電力を供給すると共に、電流の流れ方向を反転させることにより、当該ペルチェ素子における前記パーティクル捕集部との接触面を冷却面と放熱面との間で切り替えるための給電部と、
前記接触面を冷却面として、前記捕集面にパーティクルを捕集するステップと、前記接触面を放熱面として、当該捕集面に捕集されたパーティクルを熱分解するステップとを実行するために、前記給電部から供給される電流の流れ方向を反転させる制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項ないしのいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項6】
外部の基板搬送機構によって基板の搬入出が行われる搬入出口を備えた筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板に対する熱処理が行われる加熱部と、
前記加熱部と搬入出口との間に形成され、前記筐体の外部の外気温度よりも温度が低くなる低温領域と、
前記搬入出口を介して低温領域へ向けてパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクルの進入抑制機構と、を備え、
前記パーティクルの進入抑制機構は、
前記搬入出口を介した前記筐体内へのパーティクルの進入を阻害する状態を形成可能な阻害部と、
前記低温領域に設けられ、基板が載置される載置面を備えた載置台と、
前記載置面の温度を、当該載置面に載置された基板を前記外気温度よりも低い温度に調節するための冷却温度と、基板の搬入出時に、当該基板を前記熱処理の温度よりも低く、且つ、外気温度以上の温度に調節するための搬入出温度と、の間で調節するための温度調節部と、
前記載置面が冷却温度の期間中は、前記阻害部によって筐体内へのパーティクルの進入を阻害するステップと、前記載置面が搬入出温度に調節されてから、前記パーティクルの進入の阻害を解除するステップとを実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
前記阻害部は、前記搬入出口を開閉するための開閉部材であり、筐体内へのパーティクルの進入を阻害するステップにて、前記開閉部材により搬入出口を閉じ、前記パーティクルの進入の阻害を解除するステップにて、前記開閉部材を移動させて搬入出口を開くことを特徴とする請求項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記加熱部は、基板が載置される載置面を備え、当該載置面に載置された基板に対して熱処理を行う熱板であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項9】
搬入出口を備えた筐体内に基板を搬入して熱処理を行う熱処理方法であって、
前記筐体内に基板を搬入する第1工程と、
前記筐体内に搬入された基板を、熱処理が行われる領域へ搬送して熱処理を行う第2工程と、
熱処理後の基板を、前記筐体の外気温度よりも低い冷却温度に冷却する第3工程と、
前記冷却温度に冷却された基板を、前記熱処理の温度よりも低く、且つ外気温度以上の搬出温度に調節する第4工程と、
前記搬出温度に調節された基板を筐体から搬出する第5工程と、
前記第3工程から第4工程に至る期間中は、前記搬入出口を介した筐体内へのパーティクルの進入を阻害する状態を形成する工程と、
前記第1工程及び第5工程の期間中は、前記パーティクルの進入の阻害を解除する工程と、を含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項10】
筐体内に搬入された基板に対して熱処理を行う熱処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項に記載された熱処理方法を実行させるようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部を備えた筐体内に基板を搬入して熱処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジストを塗布し、このレジストを所定のパターンで露光した後に現像してレジストパターンを形成する。このレジストパターンの形成にあたっては、レジストなどの各種の塗布膜の形成処理や現像処理を行う塗布、現像装置に、露光装置を接続したシステムが用いられる。
【0003】
上述の塗布、現像装置においては、ウエハの表面に塗布されたレジスト液中の溶剤を蒸発させてレジスト膜を形成する熱処理(プリベーキング)、レジスト膜の露光処理を行った後に、レジスト膜の化学反応を促進させる熱処理(ポストエクスポージャーベーキング)、またレジスト膜に現像液を供給して現像処理を行った後の熱処理(ポストベーキング)など、各種の処理の後段で、ウエハの熱処理を実行する熱処理装置が設けられている(例えば特許文献1)。
【0004】
また塗布、現像装置において、レジスト液や現像液の塗布を行う塗布装置や露光装置と各熱処理装置との間では、搬送機構(基板搬送機構)を利用してウエハの搬送が行われる。しかしながら搬送機構は、レール上を移動体が移動することなどにより金属母材が削られて発生した金属粉や、グリースなどを原因とするパーティクルの発生源でもあり、これらのパーティクルが装置内に進入するとウエハを汚染する要因となる。
この点について発明者らは、後述する理由に起因して、熱処理装置内に搬入された基板に対しては、搬送機構にて発生したパーティクルが付着し易い状態が形成されていることを見いだした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−044553号公報:段落0002、図4〜6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、熱処理が行われる基板に対するパーティクルの付着を抑制することが可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱処理装置は、外部の基板搬送機構によって基板の搬入出が行われる搬入出口を備えた筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板に対する熱処理が行われる加熱部と、
前記加熱部と搬入出口との間に形成され、前記筐体の外部の外気温度よりも温度が低くなる低温領域と、
前記搬入出口を介して低温領域へ向けてパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクルの進入抑制機構と、を備え
前記パーティクルの進入抑制機構は、
前記搬入出口と低温領域との間に設けられ、前記筐体内のパーティクルを捕集するための捕集面を筐体内に向けて配置されたパーティクル捕集部と、
前記捕集面の温度を、前記搬入出口から低温領域に至る雰囲気に向けて露出する部材の温度のうちの最低温度に冷却する冷却機構と、を備えたことを特徴とする。
例えば前記加熱部は、基板が載置される載置面を備え、当該載置面に載置された基板に対して熱処理を行う熱板により構成される。
【0008】
記の熱処理装置は、以下の構成を備えていてもよい。
(a)前記冷却機構により冷却される捕集面の温度は、前記筐体内の露点温度よりも高いこと。
(b)前記低温領域には、前記加熱部にて熱処理された基板が載置される載置面を備え、当該載置面に載置された基板を前記外気温度よりも低い温度に冷却するための基板冷却部が設けられ、前記捕集面は、前記搬入出口と基板冷却部との間に配置されていること。
(c)前記捕集面は、前記搬入出口の周囲に配置されていること。
(d)前記冷却機構は、前記パーティクル捕集部に接して設けられ、冷却面から放熱面へ向けて熱を移動させるペルチェ素子と、前記ペルチェ素子に直流電力を供給すると共に、電流の流れ方向を反転させることにより、当該ペルチェ素子における前記パーティクル捕集部との接触面を冷却面と放熱面との間で切り替えるための給電部と、前記接触面を冷却面として、前記捕集面にパーティクルを捕集するステップと、前記接触面を放熱面として、当該捕集面に捕集されたパーティクルを熱分解するステップとを実行するために、前記給電部から供給される電流の流れ方向を反転させる制御信号を出力する制御部と、を備えたこと。
【0009】
また、他の発明に係る熱処理装置は、外部の基板搬送機構によって基板の搬入出が行われる搬入出口を備えた筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板に対する熱処理が行われる加熱部と、
前記加熱部と搬入出口との間に形成され、前記筐体の外部の外気温度よりも温度が低くなる低温領域と、
前記搬入出口を介して低温領域へ向けてパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクルの進入抑制機構と、を備え、
前記パーティクルの進入抑制機構は、
記搬入出口を介した前記筐体内へのパーティクルの進入を阻害する状態を形成可能な阻害部と、
記低温領域に設けられ、基板が載置される載置面を備えた載置台と、
記載置面の温度を、当該載置面に載置された基板を前記外気温度よりも低い温度に調節するための冷却温度と、基板の搬入出時に、当該基板を前記熱処理の温度よりも低く、且つ、外気温度以上の温度に調節するための搬入出温度と、の間で調節するための温度調節部と、
記載置面が冷却温度の期間中は、前記阻害部によって筐体内へのパーティクルの進入を阻害するステップと、前記載置面が搬入出温度に調節されてから、前記パーティクルの進入の阻害を解除するステップとを実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
例えば前記加熱部は、基板が載置される載置面を備え、当該載置面に載置された基板に対して熱処理を行う熱板により構成される。
このとき、前記の熱処理装置は、以下の構成を備えていてもよい。
(e)前記阻害部は、前記搬入出口を開閉するための開閉部材であり、筐体内へのパーティクルの進入を阻害するステップにて、前記開閉部材により搬入出口を閉じ、前記パーティクルの進入の阻害を解除するステップにて、前記開閉部材を移動させて搬入出口を開くこと。



【発明の効果】
【0010】
本発明は、熱処理装置の筐体内に、外気温度よりも温度の低い低温領域が形成される低温領域へ向けて、基板の搬入出口を介してパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクルの進入抑制機構を備えるので、基板の汚染を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係わる熱処理装置を備えた塗布、現像装置の平面図である。
図2】前記塗布、現像装置の縦断側面図である。
図3】前記塗布、現像装置の処理層内部の斜視図である。
図4】前記塗布、現像装置内の処理層に設けられている熱処理装置の平面図である。
図5】前記熱処理装置の縦断側面図である。
図6】前記熱処理装置に設けられているパーティクル捕集部の平面図である。
図7】前記パーティクル捕集部の縦断側面図である。
図8】前記熱処理装置の作用図である。
図9】パーティクル捕集部の第1の作用図である。
図10】パーティクル捕集部の第2の作用図である。
図11】前記熱処理装置の変形例を示す縦断側面図である。
図12】第2の実施形態に係わる熱処理装置の縦断側面図である。
図13】前記第2の熱処理装置の第1の作用図である。
図14】前記第2の熱処理装置の第2の作用図である。
図15】前記第2の熱処理装置の変形例を示す縦断側面図である。
図16】参考例に係わる実験結果を示す説明図である。
図17】実施例及び比較例に係わる実験結果を示す説明図である。
図18】実施例及び比較例に係わるウエハ表面に付着したパーティクルの粒径分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
初めに、本発明の実施の形態に係る熱処理装置2を備えた塗布、現像装置におけるウエハWに対する処理の流れを簡単に説明しておく。図1は、塗布、現像装置の横断平面図であり、図2は縦断側面図、図3は塗布、現像装置に設けられている処理層内部の斜視図である。
【0013】
図1図2に示すように、塗布、現像装置においては、処理対象のウエハWを収容したキャリア102が、キャリアブロックS1に設けられた載置台101に載置され、受け渡しアームCによってウエハWが取り出される。取り出されたウエハWは、処理ブロックS2に設けられた棚ユニットU2内の受け渡しモジュールCPL2に受け渡され、搬送機構A2によってBCT層B2に搬入され、反射防止膜が形成される。次いで、ウエハWは、棚ユニットU1の受け渡しモジュールBF2に受け渡され、受け渡しモジュールCPL3及び搬送機構A3を介してCOT層B3に搬入され、レジスト膜が形成される。
【0014】
レジスト膜形成後のウエハWは、搬送機構A3により、棚ユニットU2の受け渡しモジュールBF3に受け渡された後、例えば受け渡しモジュールBF3→受け渡しアームD→受け渡しモジュールCPL4を介して搬送機構A4に受け渡され、TCT層B4にてレジスト膜の上に反射防止膜が形成される。しかる後、ウエハWは、搬送機構A4により受け渡しモジュールTRS4に受け渡される。なおレジスト膜の上の反射防止膜を形成しない場合や、レジスト膜の下の反射防止膜を形成する代わりに、ウエハWに対して疎水化処理を行う場合もある。
【0015】
受け渡しモジュールTRS4に受け渡された反射防止膜形成後のウエハWは、さらに受け渡しモジュールCPL11に受け渡され、DEV層B1内の上部に設けられた搬送専用のシャトルアームEにより棚ユニットU3の受け渡しモジュールCPL12に搬送される。次いで、ウエハWはインターフェイスブロックS3に取り込まれ、インターフェイスアームFにより露光装置S4に搬送され、ここで露光処理が行われる。しかる後、ウエハWは、棚ユニットU3の受け渡しモジュールTRS6に載置されて処理ブロックS2に戻される。
【0016】
処理ブロックS2に戻されたウエハWは、DEV層B1内を搬送機構A1により搬送され、露光後の熱処理、現像処理が行われた後、棚ユニットU2における受け渡しアームCのアクセス範囲の受け渡し台に搬送され、受け渡しアームCを介してキャリア102に戻される。
【0017】
以上に概略動作を説明した塗布、現像装置において、反射防止膜の原料液やレジスト液、現像液をウエハWに塗布する塗布処理が行われた後、またレジスト膜が形成されたウエハWに対する露光処理が行われた後などのタイミングにて、ウエハWに対して熱処理が行われ、さらに必要に応じて冷却処理が行われる。
ここで各処理層B1〜B4に設けられた搬送機構A1〜A4は、本実施の形態の基板搬送機構に相当する。
【0018】
これらの熱処理や冷却処理は、各処理層B1〜B4に設けられ、塗布処理を実行する塗布装置に対し、ウエハWの搬送路を挟んで対向する位置に設けられた処理モジュール群U1を構成する熱処理装置2内にウエハWを搬入して実行される(例えば図1図3には、レジスト液の塗布を行う塗布装置103を備えたCOT層B3に設けられた処理モジュール群U1の例を示している)。各処理モジュール群U1内には、実施の形態に係る熱処理装置2が複数台ずつ設けられている。
【0019】
図4図5には、熱処理後のウエハWの冷却処理を行う冷却アーム(基板冷却部)21を備えた熱処理装置2の例を示している。本例の熱処理装置2は、前後方向に細長い扁平な筐体20内に、冷却アーム21と、ウエハWの熱処理を行う熱板22とを手前からこの順に並べた構成となっている。
なお、以下の各熱処理装置の全体を示した図4、5、8、11〜15においては、図面に向かって左手を手前側として説明する。
【0020】
筐体20の前面には、各搬送機構A1〜A4に設けられた搬送アーム104によりウエハWの搬入出が行われる搬入出口201が開口しており、この搬入出口201に臨む位置に冷却アーム21が設けられている。
冷却アーム21は、その上面にウエハWを載置可能な円板であり、その内部には冷却水などの冷媒を通流させるための不図示の冷媒流路が形成されている。
【0021】
図4に示すように冷却アーム21には、搬送アーム104に設けられ、ウエハWを下面側から支持する支持爪105を通過させるための切り欠き部211を備えている。そして搬入出口201に対向する位置(待機位置)にて待機している冷却アーム21に対し、筐体20内に進入した搬送アーム104を上下に交差させることにより、これら搬送アーム104と冷却アーム21との間でのウエハWの受け渡しが行われる。
また、冷却アーム21には、熱板22側に設けられている後述の昇降ピン222との干渉を避けるためのスリット212が形成されている。
【0022】
図5に示すように冷却アーム21は、上下方向に伸びる支持部213によって手前側の基端部が支持され、この支持部213は、冷却アーム21の下方側に配置された移動機構214に連結されている。そして移動機構214を作動させることにより、冷却アーム21は搬送アーム104との間でウエハWの受け渡しを行う既述の待機位置と、熱板22との間でウエハWの受け渡しを行う搬入位置との間を移動する。
【0023】
図5には、モータによって正転方向または逆転方向に回転自在に構成されたボールネジに前記支持部213を連結して冷却アーム21を移動させる移動機構214を構成した例を示しているが、移動機構214の具体的構成はこの例に限定されるものではない。
また図5に示すように、冷却アーム21が配置され、ウエハWが搬送される空間と、冷却アーム21の移動機構214が設けられた空間とは、仕切板215によって上下に区画されている。
【0024】
冷却プレートが配置されている領域の後方側には、ウエハWの熱処理を実行する熱板22と、熱板22を上方側から覆って、当該熱板22との間にウエハWの熱処理が行われる処理空間を形成する熱板カバー221と、冷却アーム21と熱板22との間でウエハWの受け渡しを行う際に用いられる昇降ピン222とが設けられている。
【0025】
本例の熱処理装置2において、昇降ピン222は熱板22の中心を囲むようにして、互いに間隔を開けて3箇所に配置されている。また、各昇降ピン222は、上下方向に伸びるように設けられ、共通の昇降機構223に接続されている。この昇降機構223を作動させることにより、昇降ピン222は熱板22の下方側の退避位置と、ウエハWの受け渡しが行われる、熱板22の上方側の受け渡し位置との間を昇降することができる。
【0026】
また、熱板カバー221の側壁面には、待機位置側から冷却アーム21を進入させるための搬入出口224が設けられている。さらに、熱板22を挟んで搬入出口224に対向する処理空間の後端側には、当該処理空間内を排気するための不図示の排気口が設けられている。
熱板22や熱板カバー221は、本実施の形態の加熱部を構成している。
【0027】
以上に説明したように、熱処理装置2の筐体20内には、ウエハWを例えば23℃まで冷却する冷却アーム21と、ウエハWを100℃以上の温度に加熱する熱板22を収容した熱板カバー221とが手前からこの順に配置されている。このため筐体20内には、これら冷却アーム21や熱板カバー221の影響を受け、位置に応じて温度が異なる雰囲気が形成される。
【0028】
即ち図8に温度分布図を併記して示すように、冷却アーム21の周囲には冷却アーム21によって冷却された雰囲気が形成され(図8の温度分布図に示す領域C)、熱板カバー221の周囲には熱板22の放熱によって加熱された雰囲気が形成される(同温度分布図の領域D)。一方、搬送アーム104が進入する搬入出口201よりも外側の筐体20の外部(外気温度)は、ウエハWの強制冷却を行う冷却アーム21の周囲よりも高い温度雰囲気(例えば30℃)となっている(同温度分布図の領域A)。
【0029】
従って本例の熱処理装置2の筐体20内においては、搬入出口201と熱板カバー221との間に、外気温度よりも温度の低い低温領域Cが形成されていることとなる。
一方で既述のように、搬送アーム104を備えるウエハWの搬送機構A1〜A4は、塗布、現像装置内における主要なパーティクルの発生源の一つとなっている。このようにパーティクルの発生源へ向けて開口する搬入出口201を備えた筐体20内に低温領域Cが存在すると、ウエハWの搬送路で発生したパーティクルが筐体20内に引き込まれ、ウエハWの汚染を引き起こす要因の一つとなることを発明者らは見出した。
【0030】
即ち、相対的に温度の高い領域Aと、低温領域Cとが隣り合って形成されている場合に、温度の高い領域Aで発生したパーティクルは、熱泳動の影響を受け、搬入出口201を介して低温領域Cへと進入する。熱泳動とは、パーティクルに衝突する気体の運動エネルギーの差に起因して、温度の高い領域Aから低温領域Cへとパーティクルが移動する現象である。熱泳動は、重力の影響が小さい(沈降しにくい)1nm以上1μm以下の小さなパーティクルに対して比較的大きな影響を及ぼす。
【0031】
低温領域Cに進入したパーティクルは、最も温度の低い冷却アーム21の表面に付着して、ウエハWの裏面を汚染する要因となる。また冷却アーム21上にウエハWが保持されている場合には、冷却アーム21によって冷却されているウエハWの表面にパーティクルが付着して当該面を汚染する。
後述の参考例に係る実験結果に示すように、発明者らは低温領域Cの形成に伴って生じる熱泳動の影響により、熱処理装置2内に配置されたウエハWの汚染状態が有意に変化することを見出した。
【0032】
本実施の形態に係る熱処理装置2は、上述の熱泳動に起因する低温領域Cへのパーティクルの進入を抑制するための進入抑制機構を備えている。
図4図7に示すように、進入抑制機構は、搬入出口201から冷却アーム21(低温領域C)に至る雰囲気に向けて露出する部材の温度のうちの最低温度に冷却され、筐体20内に進入したパーティクルを捕集するための捕集面を備えた捕集板311と、この捕集板311の温度調節を行うためのペルチェ素子312と、ペルチェ素子312に対して電力を供給する給電部32と、を備えている。捕集板311及びペルチェ素子312は本実施の形態のパーティクル捕集部31を構成している。
【0033】
図4図5に示すようにパーティクル捕集部31の一部は、搬入出口201が形成された筐体20の側壁の内壁面側に設けられている。さらにパーティクル捕集部31は、冷却アーム21を収容する筐体20内の空間を手前側から見たとき、当該空間を構成する天井壁と左右両側壁の内壁面側、及び前記空間の底面を構成する仕切板215の上面側に、冷却アーム21の基端部位をドーナツ状に囲むように形成されている。これらの四面において、パーティクル捕集部31は、搬入出口201が形成されている内壁面側の位置から、奥手側へ向けて1cm〜数cm程度の領域に亘って設けられている。
【0034】
図6には、筐体20の側壁の内壁面に、搬入出口201の周囲を囲むようにして形成されたパーティクル捕集部31の構成例を示している。パーティクル捕集部31の捕集板311は、アルミニウムやステンレススチールなどの熱伝導性の高い金属製の薄板により構成され、一方側の面を筐体20内の空間に向けて配置されている。筐体20内に向けて露出している捕集板311の一面が、筐体20内に進入したパーティクルを捕集する捕集面となる。
【0035】
図6図7に記載のように、捕集板311の他方側の面には、複数のペルチェ素子312が設けられ、捕集板311はこれらのペルチェ素子312を介して筐体20の内壁面に固定されている。ペルチェ素子312は、種類の異なる金属を張り合わせて構成され、所定の方向へ流れるように直流電流を供給したとき、冷却面から放熱面へ向けて熱を移動させることが可能な素子である。図6に示すように、複数のペルチェ素子312は、互いに直列に連結されて給電部32に接続されている。これらのペルチェ素子312は、所定の方向に直流電流を流したときに形成される冷却面の向きが互いに同じ方向を向くように配置されている。
【0036】
給電部32は、出力を変更可能に構成された直流電源321と、この直流電源321から供給される直流電流の流れ方向を切り替える切替スイッチ322a、332bとを備えている。
【0037】
さらに図5に示すように、筐体20内の空間には、露点計41のプローブが挿入され、筐体20内の雰囲気の露点温度を検出することができる。露点計41を用いて検出した露点温度は、パーティクルの捕集面の温度設定の際に参照される。例えば前記捕集面の設定温度は、冷却アーム21の温度(23℃)よりも低温であり、且つ、筐体20内の露点温度よりも高い温度に設定される。また当該捕集面の温度は、捕集板311に設けられた不図示の温度検出部による温度検出結果に基づいて、直流電源321から供給される電力を増減させることにより調節される。
【0038】
以上に説明した構成を備える熱処理装置2は制御部4に接続されている。制御部4は不図示のCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には熱処理装置2内におけるウエハWの搬送や熱処理、冷却処理の設定温度や処理時間に関するステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0039】
次いで、上述の熱処理装置2の作用について図8図10を参照しながら説明する。
塗布、現像装置内の他の装置にて、先行する処理(レジスト液や現像液などの塗布処理や露光処理)が行われたウエハWが搬送アーム104によって搬送されてくるとき、冷却アーム21は待機位置にて待機している。
【0040】
この際、給電部32は、ペルチェ素子312における捕集板311との接触面が冷却面となる方向へと直流電流が流れるように切替スイッチ322a、322bの接点が切り替えられている。そして、露点計41により筐体20内の露点温度を検出した結果を参照してパーティクルの捕集面の設定温度を決定し、前記捕集面の温度が設定温度(例えば10〜20℃の範囲内の温度)となるようにペルチェ素子312へ供給される電力が調節される。
【0041】
各ペルチェ素子312に電力が供給されると、捕集板311側の冷却面から筐体20側の放熱面向けて熱が移動し、パーティクルの捕集面の温度が設定温度近傍の温度に調節される。一方で、ペルチェ素子312から熱を受け取る筐体20は、捕集板311と比較して十分に熱容量が大きく、また各処理層B1〜B4内の空間に熱を放熱する放熱面積も広い。このため、パーティクル捕集部31から熱を受け取ったことに起因する筐体20の温度上昇が、筐体20内に進入したパーティクルの挙動に与える影響は無視できるほど小さい。
【0042】
捕集板311におけるパーティクルの捕集面の温度が調節されると、当該捕集面の温度低下の影響を受け、搬入出口201と低温領域Cとの間には、低温領域Cよりもさらに温度の低い領域Bが形成される。以下、当該領域Bを「捕集領域B」という。
なお既述のようにパーティクルの捕集面の温度は筐体20内の露点よりも高い温度に設定されているので、捕集面表面の結露が抑えられ、結露水の発生や滴下による動力機器や電気機器への影響はほとんどない。
【0043】
図8に示すように、搬入出口201と低温領域Cとの間に、さらに温度の低い捕集領域Bが形成されることにより、搬送機構A1〜A4にて発生したパーティクルが搬入出口201を介して筐体20内に進入したとしても、捕集領域B内にパーティクルがトラップされるように熱泳動の力が作用する。
【0044】
即ち、捕集領域Bの温度は、低温領域Cの温度よりも相対的に低いので、これらの領域に跨って存在するパーティクルに対しては、低温領域Cから捕集領域Bへ向けて熱泳動の力が作用する。このため、搬入出口201から進入したパーティクルは、捕集領域Bに留まる。またウエハWの搬入動作に伴って発生した気流に随伴するなどして、低温領域Cまでパーティクルが進入したとしても、当該パーティクルは捕集領域Bへと押し返される方向に泳動する。
【0045】
さらに図9に示すように、捕集領域内B内の雰囲気には、捕集板311の捕集面に近づくほど温度が低下する温度分布が形成されている。このため、捕集領域Bに進入したパーティクルPは前記捕集面へ向けて泳動し、捕集面に接触して捕集される。
以上に説明したパーティクル捕集部31の作用により、冷却アーム21が待機している待機位置(低温領域C)に対しては、外部からのパーティクルの進入が抑えられ、比較的清浄な状態に維持されている。
【0046】
ウエハWの処理の説明に戻ると、待機位置にて待機している冷却アーム21の上方に、ウエハWを保持した搬送アーム104が進入した後、下方側に降下して冷却アーム21側にウエハWが受け渡される。しかる後、冷却アーム21が搬入出口224を介して処理空間内に進入すると、昇降ピン222が上昇して冷却アーム21から昇降ピン222へとウエハWが受け渡される。そして、待機位置へと冷却アーム21が退却し、昇降ピン222を降下させると熱板22上にウエハWが載置され、ウエハWの熱処理が実行される。
【0047】
その後、所定時間が経過し、ウエハWの熱処理が完了したら、昇降ピン222が上昇し、冷却アーム21が処理空間内に進入して昇降ピン222から冷却アーム21へとウエハWが受け渡される。次いで冷却アーム21が待機位置まで移動し、冷却アーム21上にて所定の冷却温度(例えば23℃)までウエハWが冷却される。
【0048】
この期間中においても、冷却アーム21上のウエハWの温度は捕集領域Bの温度よりも高いので、筐体20内に進入したパーティクルが熱泳動によってウエハWに向けて移動する現象の発生が抑えられる。
そして冷却アーム21上のウエハWの温度が冷却温度となったら、冷却アーム21の下方側へ搬送アーム104が進入し、搬入時とは反対の手順で冷却アーム21から搬送アーム104へウエハWが受け渡されて熱処理装置2からウエハWが搬出され、当該熱処理装置2における熱処理を終える。
【0049】
捕集板311の捕集面に捕集されたパーティクルは、例えば数週間〜数年に一度といった間隔で清掃される。このとき図10に示すように、パーティクルの捕集時とは反対の方向に切替スイッチ322a、322bの接点を切り替え、ペルチェ素子312における捕集板311との接触面を放熱面に切り替えてもよい。例えば捕集面の温度が100℃程度となるように直流電源321の出力を調節すると、捕集面に捕集されているパーティクルPのうち、グリース由来のパーティクルPなどが分解、蒸発して、捕集面から除去される。
【0050】
前記捕集面の清掃は、定期的に行う場合に限定されない。例えばマイクロバランス(微量天秤)を構成する水晶振動子やSAW(Surface Acoustic Wave)共振子を前記捕集面に設けてもよい。この場合には、マイクロバランス表面へのパーティクルの堆積に起因して、マイクロバランスを流れる電流が変化する質量付加効果を利用して、清掃を行うタイミングを決定することができる。
【0051】
本実施の形態に係る熱処理装置2によれば以下の効果がある。熱処理装置2の筐体20内に、外気温度よりも温度の低い低温領域Cへ向けてパーティクルが進入することを抑えるためのパーティクル捕集部31が設けられているので、熱泳動に起因する、低温領域Cに配置された冷却アーム21やこの冷却アーム21に保持されたウエハWの汚染を抑制することができる。
【0052】
ここでパーティクル捕集部31は、搬入出口201が形成されている筐体20の側壁近傍位置に設ける場合に限定されない。例えば、筐体20内を上下に区画する仕切板215全体をペルチェ素子312によって冷却する構成を採用してもよい。搬入出口201を介して筐体20内に進入したパーティクルは、当該搬入出口201の近傍領域にて捕集面に捕集される。このため、冷却アーム21が待機している領域の下方側の仕切板215を冷却したとしても、当該領域へ向けて熱泳動によりパーティクルを引き込む可能性は小さく、冷却アーム21の汚染を引き起こすおそれは少ない。
【0053】
また、搬入出口201の付近にパーティクル捕集部31を配置してパーティクルを捕集することにより、筐体20内に搬入されたウエハWへのパーティクルの付着を抑える手法は、冷却アーム21を備えた熱処理装置2に適用する場合に限定されない。
図11は、冷却アーム21を備えていない熱処理装置2aにパーティクル捕集部31を設けた例を示している。なお、以下に説明する各実施形態の説明図において、図1図10を用いて説明したものと共通の構成要素には、これらの図で用いたものと同じ符号を付してある。
【0054】
図11に示す熱処理装置2aは、筐体20に設けられた搬入出口201に臨む位置に熱板22が設けられ、搬送アーム104によって搬入されたウエハWは、昇降ピン222に直接、載置される。また、ウエハWを受け取った昇降ピン222は、熱板22の上面から予め設定された高さ距離だけ離れた位置にてウエハWの降下を停止させ、この位置にて予備加熱などの熱処理を行う。
【0055】
当該熱処理装置2aのように、ウエハWの温度を複数段階に分けて熱処理を行う場合には、ウエハWを熱板22上に直接載置して熱処理を行う場合に比べてウエハWの昇温速度が緩やかになる。この結果、図11に併記したように、ウエハWの温度が他の領域の温度に比べて低くなる上下方の温度分布が形成される(図には、ウエハWの中心を上下方向に貫通するZ-Z’間の温度分布を示してある)。このような温度分布が形成されている期間中に、搬入出口201を介して筐体20内にパーティクルが進入すると、相対的に温度が低い、ウエハWの近傍の低温領域に向けて熱泳動によりパーティクルが移動し、ウエハWを汚染するおそれがある。
【0056】
そこで図11に示す熱処理装置2aは、図4図5に示した熱処理装置2と同様に、搬入出口201の近傍にパーティクル捕集部31を配置することにより、ウエハWが保持されている領域Dよりも低温の捕集領域Bを形成している。この結果、図8を用いて説明した熱処理装置2と同様の作用により、捕集領域Bにパーティクルをトラップして、段階的に温度が上昇するウエハWの汚染を抑えることができる。
【0057】
次いで図12図14を参照しながら第2の実施形態に係る熱処理装置2bの構成、作用について説明する。
第2の実施形態に係る熱処理装置2bは、既述のパーティクル捕集部31に替えて、搬入出口201を開閉自在なシャッター202が設けられている点と、ウエハWの載置台を成す冷却アーム21に、ウエハWの載置面の温度調節部を構成するペルチェ素子216が設けられている点とが、図4図5に示す第1の実施形態に係る熱処理装置2と異なっている。
【0058】
ペルチェ素子216は、出力が可変に構成された直流電源321と、この直流電源321から供給される直流電力の流れ方向を切り替える切替スイッチ322a、332bとを備えた給電部32に接続されている。この結果、ペルチェ素子216は、冷却アーム21の載置面に載置されたウエハWの温度を、熱板22にて実施される熱処理の温度よりも低く、且つ、外気温度よりも高い搬入出温度T1(図13)と、前記外気温度よりも低い冷却温度T2(図14)との間で昇降することができる。なお、搬入出温度T1は、外気温度と同じ温度としてもよい。
また、搬入出口201を開閉するシャッター202は、筐体20内へのパーティクルの進入を阻害する状態を形成する阻害部を構成している。
【0059】
上記構成を備えた熱処理装置2bの作用について説明すると、処理対象のウエハWを保持した搬送アーム104を進入させるタイミング(第1工程)においては、ペルチェ素子216により冷却アーム21の温度を搬入出温度T1まで上昇させてからシャッター202を開く(図13)。このとき、冷却アーム21が待機している領域C’は、外気温度よりも高い温度となっているので、熱泳動に起因するパーティクルの進入が抑えられる。
【0060】
次いで、図14に示すようにシャッター202によって搬入出口201を閉じてから、ペルチェ素子216により冷却アーム21の温度を冷却温度T2まで低下させる(図14)。そして、冷却アーム21を熱板カバー221内へ進入させ、図4図5図8を用いて説明した熱処理装置2と同様の手順にて熱板22にウエハWを受け渡し、熱処理を実行する(第2工程)。
【0061】
熱処理を終えたら、冷却アーム21にウエハWを受け取り、ウエハWの冷却を行う(第3工程)。これらの期間中、外気温度よりも低い温度に冷却された冷却アーム21の待機位置は低温領域Cとなるが、搬入出口201はシャッター202によって閉じられているので、パーティクルの進入は阻害され、ウエハWの汚染を防止できる。
【0062】
次いで、冷却温度までウエハWが冷却されたら、再度、搬入出温度T1まで冷却アーム21の温度を上昇させる(図13、第4工程)。こうして、領域C’が外気温度よりも高い温度雰囲気となってからシャッター202を移動させて、搬入出口201を開き、搬送アーム104を進入させて熱処理後のウエハWを搬出する(第5工程)。この動作においても、冷却アーム21と搬送アーム104との間でのウエハWの受け渡しが行われる領域C’は、外気温度よりも高い温度となっているので、熱泳動に起因するパーティクルの進入が抑えられる。
【0063】
以上に説明した第2の実施形態に係る熱処理装置2aの動作をまとめると、冷却アーム21が冷却温度T2の期間中は、シャッター202によって搬入出口201を閉じ、筐体20内へのパーティクルの進入を阻害する状態が形成される。そして、冷却アーム21が搬入出温度T1に調節されてから、搬入出口201を開くことにより、シャッター202によって筐体20内へのパーティクルの進入を阻害する状態が解除される。しかしながら当該期間中は、筐体20内に低温領域が形成されていないので、熱泳動に起因するパーティクルの進入が抑えられる。
【0064】
ここで、冷却アーム21の温度を冷却温度T2まで低下させるタイミングは、必ずしも熱板22へのウエハWの搬送前に限定されない。例えばウエハWを熱板22に受け渡した後、熱処理が終わるまで待機している期間中(遅くとも熱処理後のウエハWの冷却を開始するまで)に冷却アーム21の温度を冷却温度T2まで低下させてもよい。この場合に、搬入出口201はシャッター202を閉じるタイミングは、冷却アーム21の温度を低下させるタイミングに合わせて行ってもよいし、既述の例と同様にウエハWを筐体20内に搬入した後、予防的にシャッター202を閉じておいてもよい。
【0065】
また、筐体20内へのパーティクルの進入を阻害する状態を形成する阻害部は、搬入出口201の開閉を行うシャッター202によって構成する場合に限定されない。
例えば図15に示すように、搬入出口201と低温領域Cとの間に、外気温度よりも高温の高温領域Eを形成するための、ヒーターなどからなる昇温部33を設けてもよい。この昇温部33を用いて、冷却アーム21が冷却温度T2となっている期間中(低温領域Cが形成されている期間中)は、搬入出口201と低温領域Cとの間に高温領域Eを形成する(図15の温度分布図中の実線参照)。これにより、搬入出口201付近のパーティクルに作用する熱泳動の方向が筐体20から外部へと向かう方向となり、筐体20内へのパーティクルの進入が阻害される。
【0066】
一方で、冷却アーム21が搬入出温度T1となっている期間中は、昇温部33による昇温をオフにして、領域E’の温度調節を行わない(図15の温度分布図中の破線参照)。これにより、外部から筐体20内への熱泳動によるパーティクルの進入を抑制しつつ、冷却アーム21上で冷却した搬入出口201に通過させる際のウエハWの不要な温度上昇を避けることができる。
【0067】
ここで、図4図8に示したパーティクル捕集部31や図13図14に示した冷却アーム21の温度調節部を構成する手段は、ペルチェ素子312、216を用いる例に限定されるものではない。例えば、温度調節流体の流路を設け、冷媒と熱媒とを切り替えて供給してもよい。
さらに、ウエハWの熱処理を実行する加熱部は、熱板22を用いる場合に限定されない。例えばランプ加熱などを用いて熱処理を行ってもよい。
【0068】
さらに、冷却アーム21が、搬入出温度T1と冷却温度T2との間で温度を昇降する温度調節部を備えることは必須の要件ではなく、常時、冷却温度となっていてもよい。この場合には、冷却アーム21よりも上方側の位置と、下方側の位置との間を昇降する昇降ピン(不図示)などを用いてウエハWを搬入出温度T1に調節することができる。
【0069】
例えば、シャッター202が開かれた搬入出口201から搬送アーム104を進入させて、ウエハWを搬入する際、冷却アーム21よりも上方側の位置に昇降ピンを待機させておき、この昇降ピンにウエハWを受け渡す(第1工程)。このとき、昇降ピンに保持されたウエハWの下方側の冷却アーム21は、冷却温度T2に温度調節されているが、ウエハWは冷却アーム21から離れた位置に保持されているので、冷却温度までは温度が低下しない。
【0070】
さらにここで、図8を用いて説明したように、熱板22の放熱が発生する筐体20内では、冷却アーム21から離れた高さ位置にて、ウエハWの温度を外気温度以上の温度に維持することができる場合がある。搬送アーム104と昇降ピンとの間でのウエハWの受け渡しが行われる高さ位置は、このような高さ位置に設定される。
【0071】
しかる後、搬送アーム104の退出後、シャッター202を閉じ、昇降ピンを降下させて冷却アーム21にウエハWを受け渡す。この結果、ウエハWの温度は冷却温度まで低下するが、シャッター202が閉じられているので、パーティクルの進入が阻害され、低温領域C上のウエハWの汚染を防止できる。
【0072】
次いで冷却アーム21が熱板22にウエハWを受け渡し、ウエハWに対する熱処処理が実行される(第2工程)。熱処理を終えたウエハWは、冷却アーム21に受け渡され、冷却温度T2に冷却される(第3工程)。これらの期間中にもシャッター202は閉じられているので、冷却温度T2で待機している冷却アーム21や熱処理後に冷却アーム21上で冷却されるウエハWへのパーティクルの付着が抑えられる。
【0073】
そしてウエハWが冷却温度まで冷却されたら、昇降ピンを上昇させてウエハWを受け取った後、ウエハWの温度が搬入出温度(搬出温度)T1となるまで冷却アーム21の上方位置で待機する(第4工程)。ウエハWが搬入出温度となってからシャッター202を開き、搬送アーム104が熱処理後のウエハWを受け取って搬出する(第5工程)。ウエハWが搬入出温度となってからシャッター202を開くことにより、熱泳動に起因するウエハWの汚染を防止できる。
ウエハWが搬出された後は、次のウエハWが搬入されるまでシャッター202を開いておいてもよいし、常時、冷却されている冷却アーム21の汚染を防止する趣旨で、シャッター202を閉じてもよい。
【0074】
また、図4図11を用いて説明した第1の実施形態に係る熱処理装置2、2aのパーティクル捕集部31や、図12図15を用いて説明した第2の実施形態に係る熱処理装置2b、2cの阻害部を成すシャッター202、昇温部33、冷却アーム21の温度調節部を成すペルチェ素子216は、共通の熱処理装置に設けてもよい。
【0075】
さらには、搬送機構A1〜A4のレールなどのパーティクルの発生源に対して、発生源の周囲の領域に直接、パーティクル捕集部を設け、発生源付近にてパーティクルを捕集することにより、熱処理装置2、2a〜2c内へのパーティクルの進入を抑制してもよい。
【実施例】
【0076】
(実験1)
ウエハWを保持する温度の違いにより、ウエハWに付着するパーティクル数の変化を調べた。
A.実験条件
ウエハWの搬送機構Aが設けられた搬送路に向けて開口する搬入出口201を備えた筐体20内にウエハWを配置し、異なる温度条件下でウエハWを保持した。そして共通の処理層B内に設けられている他の処理装置へ、搬送機構Aを用いたウエハW(筐体20内に配置したウエハWとは別のウエハWである)の搬送を60時間行った後、パーティクルカウンターにより、各ウエハWに付着しているパーティクル数を計測した。
(参考例1−1) 外気温度(30℃)に対してウエハWの温度を−9℃低下させて(21℃)保持した場合のパーティクルの付着数を計測した。
(参考例1−2) 外気温とほぼ同程度(30.5℃)の温度でウエハWを保持した点以外は、参考例1−1と同様の条件下で実験を行った。
【0077】
B.実験結果
参考例1−1の実験結果を図16(a)に示し、参考例1−2の実験結果を図16(b)に示す。図16(a)、(b)を比較すると、ウエハWを冷却した参考例1−1のウエハWの方が多数のパーティクルが付着しており、熱泳動の影響でパーティクルの付着数が増加することが確認できた。
【0078】
また、参考例1−1の例において、ウエハWに付着したパーティクルの成分分析を行ったところ、グリースに起因するパーティクルが最も多く、次いでアルミニウムの金属粉が多かった。金属粉は、搬送機構Aのレール上を移動体が移動することなどにより金属母材が削られて発生したものと考えられる。また、グリースに起因するパーティクルは、捕集板311の捕集面に堆積した場合であっても、図10に示した加熱法により、分解、蒸発させて除去することができる。
【0079】
(実験2)
図5に示すように、筐体20内に、搬入出口201から見て冷却アーム21及び熱板22がこの順に配置された熱処理装置2にて、パーティクル捕集部31を設けた場合と、設けなかった場合とにおけるウエハWに付着するパーティクル数の違いを調べた。
A.実験条件
熱処理装置2内の冷却アーム21上にウエハWを載置し、搬送路側にて搬送機構AによるウエハW(筐体20内に配置したウエハWとは別のウエハWである)の搬送動作を60時間行った後、パーティクルカウンターにより、各ウエハWに付着しているパーティクル数を計測した。実験中、外気温度は30℃、冷却アーム21上の温度は23℃(外気温度−7℃)、熱板カバー221の周囲の温度は50℃に維持した。
(実施例2−1) 図4に砂状のハッチを付して示した領域の仕切板215の上面に、搬入出口201側から見て左右方向の幅30cm、前後方向の奥行が1cmのパーティクル捕集部31を設けて実験を行った。パーティクル捕集部31(捕集面)の温度は21℃(外気温度−9℃)に調節した。
(比較例2−1) パーティクル捕集部31を設けなかった点以外は、実施例2−1と同様の条件で実験を行った。
【0080】
B.実験結果
実施例2−1の実験結果を図17(a)に示し、比較例2−1の実験結果を図17(b)に示す。図16の場合と同様に、各図中の円はウエハWの外縁を示し、パーティクルの付着位置をドットで示してある。また、図18の棒グラフは、各グラフの下方に示した粒径以上の直径を有するパーティクルの積算の付着数を表示してある(実施例2−1は白抜きの棒グラフ、比較例2−1は斜線ハッチを付した棒グラフで示してある)。
【0081】
図17(a)、(b)を比較すると、一見して、パーティクル捕集部31を設けた実施例2−1の方が、ウエハWに対するパーティクルの付着数が少ないことが分かる。また、これらの図に向かって下部側が搬入出口201に対向する領域であり、比較例2−1によればウエハW面内の前記搬入出口201に対向する領域に集中的にパーティクルが付着していることが観察できる。図18によれば、実施例2−1における直径50nm以上のパーティクルの付着数は521個であるのに対し、比較例2−1の場合は、1974個であって、約3倍もの付着数の違いが発生した。この付着数の差は、粒径が大きくなるに従って小さくなり、1μm以上の粒径範囲では、ウエハWに付着したパーティクル数の差は誤差範囲内であり、ほとんど差異はなかった。
【0082】
これらのことから、筐体20内にパーティクル捕集部31を設けることにより、冷却アーム21に保持されたウエハWへのパーティクルの付着を抑制する効果が発揮され、この効果は、粒径の小さい範囲にて顕著に表れることが確認された。また比較例2−1のウエハW面内におけるパーティクルの付着分布から、筐体20に設けられた搬入出口201がパーティクルの主要な進入源であり、搬入出口201にパーティクルの進入抑制機構(本実験ではパーティクル捕集部31)を設けることにより、ウエハWへのパーティクルの付着を効果的に抑制できることも確認された。
【符号の説明】
【0083】
P パーティクル
W ウエハ
104 搬送アーム
2、2a〜2c
熱処理装置
20 筐体
201 搬入出口
202 シャッター
21 冷却アーム
216 ペルチェ素子
22 熱板
31 パーティクル捕集部
312 ペルチェ素子
32 給電部
33 昇温部
322a、322b
切替スイッチ
4 制御部
41 露点計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18