(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリエーテルゴムが、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位、エチレンオキサイド単量体単位、およびエピハロヒドリン単量体単位を含有するものである請求項1に記載の導電性ロール用架橋性ゴム組成物。
前記含硫黄架橋剤が、硫黄およびモルホリン構造を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ロール用架橋性ゴム組成物。
前記ジスルフィド系架橋促進剤が、チウラムジスルフィド系架橋促進剤およびチアゾリルジスルフィド系架橋促進剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ロール用架橋性ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物は、ポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、液状ニトリルゴム、含硫黄架橋剤、ジスルフィド系架橋促進剤、および、平均一次粒子径が50nm以下、かつ、BET比表面積が600m
2/g以上である導電性カーボンブラックを含有することを特徴とする。
【0012】
<ポリエーテルゴム>
本発明で用いるポリエーテルゴムは、オキシラン単量体を開環重合して得られるオキシアルキレン繰り返し単位を主構造単位とするゴムであれば特に限定されない。オキシラン単量体の種類も特に限定されないが、本発明で用いるポリエーテルゴムは、固形ニトリルゴム、および液状ニトリルゴムと共架橋ができる観点より、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体に基づくビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位を含有するものが好ましい。
【0013】
ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体の具体例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル類;ブタジエンモノエポキシドなどのジエンモノエポキシド類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。これらの中でもエチレン性不飽和グリシジルエーテル類が好ましく、アリルグリシジルエーテルが特に好ましい。これらのビニル基を有する架橋性オキシラン単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明で用いるポリエーテルゴム中における、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位の含有割合は、ポリエーテルゴムの全単量体単位中、好ましくは1〜15モル%であり、より好ましくは2〜12モル%、さらに好ましくは3〜10モル%である。ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られる導電性ロール用ゴム架橋物(以下、「ゴム架橋物」と称することがある。)の圧縮永久歪み率が悪化するおそれがあり、逆に多すぎると重合反応中に、ゲル化反応などを起こし易くなって、成形加工性が低下するおそれがある。
【0015】
また、本発明で用いるポリエーテルゴムは、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位に加えて、エチレンオキサイド単量体に基づくエチレンオキサイド単量体単位を含有するものが好ましい。エチレンオキサイド単量体単位の含有割合は、ポリエーテルゴムの全単量体単位中、好ましくは40〜80モル%であり、より好ましくは45〜75モル%、さらに好ましくは50〜70モル%である。エチレンオキサイド単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなるおそれがある。一方、エチレンオキサイド単量体単位の含有割合が多すぎると、得られるゴム架橋物を導電性ロールとして用いた際に、感光体汚染が発生するおそれがある。
【0016】
また、本発明で用いるポリエーテルゴムは、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位、およびエチレンオキサイド単量体単位に加えて、エピハロヒドリン単量体に基づくエピハロヒドリン単量体単位を含有していることが好ましい。
【0017】
エピハロヒドリン単量体の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンなどが挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリンが好ましい。これらのエピハロヒドリン単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明で用いるポリエーテルゴム中における、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、ポリエーテルゴムの全単量体単位中、好ましくは5〜59モル%であり、より好ましくは13〜53モル%、さらに好ましくは20〜47モル%である。エピハロヒドリン単量体単位の含有割合が少なすぎると、得られるゴム架橋物を導電性ロールとして用いた際に、感光体汚染が発生するおそれがある。一方、含有割合が多すぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が上昇する場合がある。
【0019】
また、本発明で用いるポリエーテルゴムは、ビニル基を有する架橋性オキシラン単量体単位、エチレンオキサイド単量体単位、およびエピハロヒドリン単量体単位以外に、これらと共重合可能な単量体の単位を含有していてもよい。
【0020】
共重合可能な単量体としては、たとえば、エチレンオキサイド単量体以外のアルキレンオキサイド単量体などを用いることができる。
【0021】
エチレンオキサイド単量体以外のアルキレンオキサイド単量体の具体例としては、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−イソブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサンなどの鎖状アルキレンオキシド;1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカンなどの環状アルキレンオキシド;などが挙げられる。これらの共重合可能な単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明で用いるポリエーテルゴム中における、これらの共重合可能な単量体単位の含有割合は、ポリエーテルゴムの全単量体単位中、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。これらの単量体単位の含有割合が多すぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が大きくなってしまうおそれがある。
【0023】
本発明で用いるポリエーテルゴムは、たとえば、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより、上述した各単量体を開環重合することにより得ることができる。
【0024】
重合に用いる重合触媒としては、一般のポリエーテル重合用触媒であれば、特に限定されない。重合触媒としては、たとえば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンを反応させた触媒(特公昭35−15797号公報);トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒(特公昭46−27534号公報);トリイソブチルアルミニウムにジアザビシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた触媒(特公昭56−51171号公報);アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とを反応させた触媒(特公昭43−2945号公報);有機亜鉛化合物と多価アルコールとを反応させた触媒(特公昭45−7751号公報);ジアルキル亜鉛と水とを反応させた触媒(特公昭36−3394号公報);トリブチル錫クロライドとトリブチルホスフェートとを反応させた触媒(特許第3223978号公報);などが挙げられる。
【0025】
重合溶媒としては、不活性溶媒であれば、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−へキサンなどの直鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状飽和炭化水素類;などが用いられる。これらのなかでも、溶液重合法により開環重合する場合は、ポリエーテルゴムの溶解性の観点から、芳香族炭化水素類を用いることが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0026】
重合反応温度は、20〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましい。重合様式は、回分式、半回分式、連続式などの任意の方法で行うことができる。
【0027】
ポリエーテルゴムは、ブロック共重合、ランダム共重合のいずれの共重合タイプでも構わないが、特に、単量体としてエチレンオキサイドを用いる場合は、ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキサイドの結晶性を低下させ、ゴム弾性を損ないにくいために好ましい。
【0028】
ポリエーテルゴムを溶媒から回収する方法は、常法に従い、凝固・ろ別・乾燥方法を適宜組み合わせることにより、固形状のポリエーテルゴムを得ることができる。
【0029】
本発明で用いるポリエーテルゴムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いたポリスチレン換算として、20万〜200万であることが好ましく、50万〜150万であることがより好ましい。重量平均分子量が高すぎると、ムーニー粘度が高くなり、成形加工が難しくなるおそれがある。一方、重量平均分子量が低すぎると、得られるゴム架橋物の圧縮永久歪み率が悪化するおそれがある。
【0030】
本発明で用いるポリエーテルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー粘度・ML
1+4,100℃)は、20〜120であることが好ましく、30〜100であることがより好ましい。ムーニー粘度が高すぎると、成形加工性に劣り、導電性部材用途への成形がし難くなる一方、ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械的強度が低下するおそれがある。
【0031】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、ポリエーテルゴムの含有割合は、全ゴム成分中、好ましくは19〜90重量%、より好ましくは29〜90重量%、さらに好ましくは39〜70重量%である。ポリエーテルゴムの含有割合が少なすぎると、得られるゴム架橋物の硬度および体積固有抵抗値が高くなるおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪性が低下したりするおそれがある。
【0032】
<固形ニトリルゴム>
本発明で用いる固形ニトリルゴムは、常温において固体状態を有する(常温、短時間において流動しない)エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムである。本発明で用いる固形ニトリルゴムは、JIS K6300に準拠して測定したポリマームーニー粘度(ML
1+4,100℃)が、通常、15以上のものであり、好ましくは15〜150、より好ましくは30〜100である。
【0033】
本発明で用いる固形ニトリルゴムは、通常、エチレン性不飽和ニトリル単量体と、共役ジエン単量体と、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他の単量体と、を共重合することにより得られる。
【0034】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−メチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。固形ニトリルゴム中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは15〜40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合がこの範囲にあると、得られるゴム架橋物は低硬度となる。
【0035】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。固形ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%である。
【0036】
共重合可能な他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびその無水物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸アミル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジメチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の完全アルキルエステル;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分アルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等のエチレン性不飽和モノカルボン酸のモノアミド;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノスチレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、酢酸アリルなどが挙げられる。これら共重合可能な他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。共重合可能な他の単量体の単位の含有割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0037】
本発明で用いる固形ニトリルゴムとしては、エチレン性不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリルを用い、共役ジエン単量体として1,3−ブタジエンを用い、必要に応じてこれらと共重合可能な単量体を用いることで得られる、固形アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0038】
固形ニトリルゴムの製造方法としては、特に限定されず、公知の乳化重合法などにより製造することができる。重合後、凝固、乾燥を経て、固形ニトリルゴムが得られる。なお、得られる固形ニトリルゴムは、ゴム中の炭素−炭素不飽和結合部分に水素を付加した水添ニトリルゴムであってもよい。
【0039】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、固形ニトリルゴムの含有割合は、全ゴム成分中、好ましくは9〜80重量%、より好ましくは9〜70重量%、さらに好ましくは29〜60重量%である。固形ニトリルゴムの含有割合が少なすぎると、得られるゴム架橋物の硬度が高くなるおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなるおそれがある。
【0040】
<液状ニトリルゴム>
本発明で用いる液状ニトリルゴムは、常温において液体状態を有する(常温、短時間において流動性を有する)エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合ゴムであり、その重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いたポリスチレン換算として、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは3,000〜30,000、さらに好ましくは3,000〜15,000のものである。また、本発明で用いる液状ニトリルゴムは、JIS K6300に準拠して測定したポリマームーニー粘度(ML
1+4,100℃)が、通常、1以下、あるいは、ムーニー粘度測定不可能なものである。
【0041】
本発明で用いる液状ニトリルゴムは、通常、エチレン性不飽和ニトリル単量体と、共役ジエン単量体と、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他の単量体と、を共重合することにより得られる。
【0042】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、上述した固形ニトリルゴムと同様のものを用いることができるが、なかでも、アクリロニトリルが好適である。エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。液状ニトリルゴム中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは15〜50重量%である。
【0043】
共役ジエン単量体としては、たとえば、上述した固形ニトリルゴムと同様のものを用いることができるが、なかでも、1,3−ブタジエンが好適である。共役ジエン単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。液状ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%である。
【0044】
共重合可能な他の単量体としては、たとえば、上述した固形ニトリルゴムと同様のものを用いることができる。共重合可能な他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。共重合可能な他の単量体の単位の含有割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0045】
本発明で用いる液状ニトリルゴムとしては、エチレン性不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリルを用い、共役ジエン単量体として1,3−ブタジエンを用い、必要に応じてこれらと共重合可能な単量体を用いることで得られる、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0046】
液状ニトリルゴムの製造方法としては、特に限定されず、公知の乳化重合などにより製造することができる。重合時には、分子量を比較的低いものに調整するために、連鎖移動剤などの分子量調整剤を適宜使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタンなどを挙げることができる。なお、重合後、液状ニトリルゴムの炭素−炭素不飽和結合部分に水素を付加してもよい。
【0047】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、液状ニトリルゴムの含有割合は、全ゴム成分中、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。液状ニトリルゴムの含有割合が少なすぎると、得られるゴム架橋物の硬度が高くなるおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪性が低下したりするおそれがある。
【0048】
さらに、本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物は、ゴム成分として、本発明の効果を損なわない範囲において、所望により、上述したポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、および液状ニトリルゴム以外のその他のゴムを含有していてもよい。その他のゴムとしては、たとえば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。その他のゴムを含有する場合における、これらのゴムは、1種単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0049】
<含硫黄架橋剤>
本発明で用いる含硫黄架橋剤としては、硫黄原子を含有し、上述したゴム成分を架橋可能なものであれば特に限定されないが、ゴム成分としてのポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、および液状ニトリルゴムの共架橋ができる観点より、硫黄およびモルホリン構造を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくともひとつの含硫黄化合物であることが好ましい。硫黄の具体例としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、および高分散性硫黄などが挙げられる。モルホリン構造を有する含硫黄化合物としては、たとえば、下記一般式(1)で表される、モルホリン環および硫黄原子を含有する化合物などが挙げられる。これらの含硫黄架橋剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化2】
(上記一般式(1)中、Y
1は、硫黄原子を含有する2価の基である。)
【0050】
なお、上記一般式(1)中、Y
1は、硫黄原子を含有し、かつ、2つのモルホリン構造を連結する基であれば、特に限定されないが、モルホリン構造を有する含硫黄化合物としては、Y
1が、硫黄原子を含有する特定の2価の基である、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【化3】
【化4】
【0051】
上記一般式(2)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、化学的な単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは、化学的な単結合または炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくは、化学的な単結合であり、R
1、R
2のいずれも化学的な単結合であることが特に好ましい。すなわち、上記一般式(2)で表される化合物のなかでも、下記一般式(4)で表される化合物が特に好ましい。また、上記一般式(2)(および下記一般式(4))中、nは、1〜5のいずれかの整数であり、2〜4の整数であることが好ましく、n=2であることが特に好ましい。
【化5】
【0052】
また、上記一般式(3)中、R
3、R
4は、それぞれ独立に、化学的な単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは、化学的な単結合または炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくは、化学的な単結合であり、R
3、R
4のいずれも化学的な単結合であることが特に好ましい。また、上記一般式(3)中、mは、1〜5のいずれかの整数であり、1または2であることが好ましく、m=1であることが特に好ましい。すなわち、上記一般式(3)で表される化合物のなかでも、下記式(5)で表される化合物が特に好ましい。
【化6】
【0053】
モルホリン構造を有する含硫黄化合物の具体例としては、4,4’−ジチオジモルホリン(上記一般式(4)において、n=2である化合物)、4,4’−テトラチオジモルホリン(上記一般式(4)において、n=4である化合物)、モルホリノジチオ蟻酸4−モルホリニル(上記式(5)で表される化合物)などが挙げられ、これらのなかでも、4,4’−ジチオジモルホリンが特に好ましい。
【0054】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、含硫黄架橋剤の配合量は、全ゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜7重量部がより好ましく、0.3〜5重量部がさらに好ましい。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋速度が遅くなり、得られるゴム架橋物の生産性が低下したり、ゴム架橋物を研磨して使用する場合に研磨性が低下したりするおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の硬度が高くなったり、架橋剤がブルームしたりする可能性がある。
【0055】
<ジスルフィド系架橋促進剤>
本発明で用いるジスルフィド系架橋促進剤としては、ジスルフィド構造(−S−S−)を有し、含硫黄架橋剤と組み合わせることで架橋促進剤として作用するものであれば特に限定されないが、チウラムジスルフィド系架橋促進剤およびチアゾリルジスルフィド系架橋促進剤から選ばれる少なくともひとつのジスルフィド系架橋促進剤であることが好ましい。チウラムジスルフィド系架橋促進剤および/またはチアゾリルジスルフィド系架橋促進剤を用いることにより、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が適切に低くなる。チウラムジスルフィド系架橋促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンタメチレンチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどが挙げられる。チアゾリルジスルフィド系架橋促進剤の具体例としては、ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられる。これらのジスルフィド系架橋促進剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、テトラエチルチウラムジスルフィド、およびジベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0056】
また、本発明においては、架橋促進剤として、ジスルフィド系架橋促進剤を配合すればよいが、ジスルフィド系架橋促進剤以外の架橋促進剤、すなわち、ジスルフィド構造を有しない架橋促進剤を併用した場合には、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなる傾向にあるため、ジスルフィド系架橋促進剤以外の架橋促進剤を使用しないことが望ましい。
【0057】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、ジスルフィド系架橋促進剤の配合量は、全ゴム成分100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。ジスルフィド系架橋促進剤の配合量が多すぎると、架橋速度が早くなりすぎたり、得られるゴム架橋物の表面にブルームしたりするおそれがある。一方、少なすぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなるおそれがある。
【0058】
<導電性カーボンブラック>
本発明で用いる導電性カーボンブラックは、平均一次粒子径が50nm以下であり、かつ、BET比表面積が600m
2/g以上である導電性を示す炭素材料である。このような導電性カーボンブラックを、上述した各成分と組み合わせて用いることで、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値を適切に低くすることができる。
【0059】
本発明で用いる導電性カーボンブラックは、平均一次粒子径が50nm以下であり、好ましくは45nm以下、より好ましくは40nm以下である。平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、通常、10nm以上である。平均一次粒子径が50nm超であると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなり、導電性ロール用途、特に、帯電ロール用途に適さないものとなってしまう。
【0060】
また、本発明で用いる導電性カーボンブラックは、平均一次粒子径が上記範囲にあることに加えて、BET比表面積が600m
2/g以上であり、好ましくは650m
2/g以上、より好ましくは700m
2/g以上である。BET比表面積の上限は特に限定されないが、通常、1,600m
2/g以下である。BET比表面積が600m
2/g未満であると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなり、導電性ロール用途、特に、帯電ロール用途に適さないものとなってしまう。
【0061】
本発明で用いる導電性カーボンブラックとしては、平均一次粒子径およびBET比表面積が上記範囲である導電性のものであればよく、特に限定されないが、体積固有抵抗値をより低くすることができるという観点より、一次粒子が中空のシェル状の粒子であり、一次粒子の空隙率が50%以上であり、かつ、このような一次粒子が二次凝集しているものが好適である。本発明で用いる導電性カーボンブラックの具体例としては、「ケッチェンブラックEC」、「ケッチェンブラックEC300」、「ケッチェンブラックEC600JD」(以上、ライオン社製)などが挙げられる。
【0062】
本発明の導電性ロール用の架橋性ゴム組成物中における、導電性カーボンブラックの配合量は、全ゴム成分100重量部に対して、3〜10重量部が好ましく、4〜9重量部がより好ましく、5〜8重量部がさらに好ましい。導電性カーボンブラックの配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が高くなり過ぎてしまうおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の硬度が高くなってしまうおそれがある。
【0063】
<その他の配合剤>
また、本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物には、上記した各成分に加えて、架橋促進助剤を配合してもよい。
【0064】
架橋促進助剤としては、たとえば酸化亜鉛およびステアリン酸などが挙げられる。
架橋促進助剤の配合量は、全ゴム成分100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。架橋促進助剤の配合量が上記範囲であると、架橋が十分に進行し、得られるゴム架橋物の機械的特性が優れる。
【0065】
さらに、本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物には、上述した各成分以外に、公知のゴムに通常配合されるその他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、特に限定されないが、たとえば、補強剤;受酸剤;老化防止剤;紫外線吸収剤;耐光安定剤;粘着付与剤;界面活性剤;電解質物質;着色剤(染料・顔料);難燃剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0066】
本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物は、上述したポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、液状ニトリルゴム、含硫黄架橋剤、ジスルフィド系架橋促進剤、および、導電性カーボンブラック、ならびに、必要に応じて用いられる各添加剤およびその他のゴムを、所望の方法により調合、混練することにより調製することができる。たとえば、ゴム成分としてのポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、および液状ニトリルゴムを混合し、得られたゴム混合物に、含硫黄架橋剤およびジスルフィド系架橋促進剤を除く各成分を混練した後、得られた混練物に含硫黄架橋剤およびジスルフィド系架橋促進剤を混練することで、本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物を得ることができる。調合、混練などに際しては、たとえば、ニーダー、バンバリー、オープンロール、カレンダーロール、押出機など任意の混練成形機を一つあるいは複数組み合わせて用いて混練成形してもよい。ゴム混練物と、含硫黄架橋剤およびジスルフィド系架橋促進剤を除く添加剤との混練温度は、20〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましく、その混練時間は、30秒〜30分が好ましく、また、得られた混練物と、含硫黄架橋剤およびジスルフィド系架橋促進剤との混合温度は、100℃以下が好ましく、0〜80℃がより好ましく、その混練時間は30秒〜20分が好ましい。
【0067】
また、本発明において、ゴム成分としてのポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、および液状ニトリルゴムを混合する際には、まず、溶媒に溶解しているポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとを溶媒中で混合し、次いで、スチームストリッピングなどにより凝固させることで、ポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの固形状の混合物を得て、得られた固形状の混合物に、固形ニトリルゴムを固形状態にて混合・混練する方法を採用してもよい。特に、このような方法によれば、得られるゴム架橋物を画像形成装置などに使用される導電性ロール用途に用いた場合における、感光体汚染性を低減することができる。
【0068】
<導電性ロール用ゴム架橋物>
本発明の導電性ロール用ゴム架橋物は、上述した本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
【0069】
本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物を架橋する方法は、特に限定されないが、成形と架橋を同時に行っても、成形後に架橋してもよい。成形時の温度は、20〜200℃が好ましく、40〜180℃がより好ましい。架橋時の加熱温度は、130〜200℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。架橋時の温度が低すぎると、架橋時間が長時間必要となったり、得られるゴム架橋物の架橋密度が低くなったりするおそれがある。一方、架橋時の温度が高すぎると、成形不良となるおそれがある。架橋時間は、架橋方法、架橋温度、形状などにより異なるが、1分以上、5時間以下の範囲が架橋密度と生産効率の面から好ましい。加熱方法としては、プレス加熱、オーブン加熱、蒸気加熱、熱風加熱、およびマイクロ波加熱などの方法を適宜選択すればよい。
【0070】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、100〜220℃が好ましく、130〜210℃がより好ましい。加熱時間は、30分〜5時間が好ましい。
【0071】
このようにして得られる本発明の導電性ロール用ゴム架橋物は、上述した本発明の導電性ロール用架橋性ゴム組成物を用いて得られるものであるため、低硬度であり、体積固有抵抗値が低く、かつ、耐圧縮永久歪性に優れたものである。そのため、本発明の導電性ロール用ゴム架橋物は、このような特性を活かして、プリンタ、電子写真複写機、およびファクシミリ装置などの画像形成装置などに使用される導電性ロール、具体的には、帯電ロール、トナー供給ロール、現像ロール、および転写ロールなどとして好適に用いることができ、本発明のゴム架橋物は、体積固有抵抗値が、温度23℃、湿度50%とした測定環境にて、印加電圧を10Vとし、電圧印加開始から30秒後の値において、好ましくは、1×10
6.0Ω・cm以下と低いものであることから、帯電ロール用途に好適である。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0073】
[ムーニー粘度]
ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、JIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0074】
[硬度]
架橋性ゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、次いで、温度150℃、4時間の条件にて二次架橋することで、直径29mm、高さ12.7mmの円柱状のゴム架橋物を得た。そして、得られた円柱状のゴム架橋物を用いて、JIS K6253に従い、タイプAデュロメータを使用し、硬度を測定した。
【0075】
[体積固有抵抗値(23℃、50%RH)]
架橋性ゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、次いで、温度150℃、4時間の条件にて二次架橋することで、縦15cm、横15cm、厚さ2mmのシート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物を用いて、JIS K6271の2重リング電極法に準拠し、温度23℃、湿度50%とし、印加電圧10Vの条件にて、電圧の印加を開始してから30秒後の値を測定した。体積固有抵抗値は、数値が小さいほど、導電性に優れている。
【0076】
[圧縮永久歪み率]
架橋性ゴム組成物を温度170℃、20分間のプレスによって成形、架橋し、次いで、温度150℃、4時間の条件にて二次架橋することで、直径29mm、高さ12.7mmの円柱状のゴム架橋物を得た。そして、JIS K6262に従い、得られた架橋物を25%圧縮させた状態で、温度70℃の環境下に22時間置いた後、圧縮を解放して圧縮永久歪み率を測定した。圧縮永久歪み率は、数値が小さいほど変形しにくい材料となり優れる。
【0077】
〔製造例1、触媒溶液の調製〕
密栓した耐圧ガラスボトルを窒素置換して、トルエン184.8部およびトリイソブチルアルミニウム55.2部を仕込み、ガラスボトルを氷水に浸漬して冷却した後、ジエチルエーテル103.1部をガラスボトルに添加し、攪拌した。次いで、ガラスボトルに、氷水による冷却を継続しながら、リン酸8.18部を添加し、さらに攪拌した。この際、トリイソブチルアルミニウムとリン酸との反応により、ガラスボトルの内圧が上昇するので、適時脱圧を実施した。次いで、ガラスボトルに1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のギ酸塩8.27部を添加し、最後に、60℃の温水浴内で1時間熟成反応させることにより、触媒溶液を得た。
【0078】
〔製造例2、ポリエーテルゴムの製造〕
オートクレーブに、エピクロロヒドリン212.4部、アリルグリシジルエーテル26.2部、エチレンオキサイド18.4部、およびトルエン2053.8部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら内溶液を70℃に昇温し、上記にて調製した触媒溶液を10部添加して、反応を開始した。次いで、反応開始直後から、エチレンオキサイド123.0部をトルエン287.0部に溶解した溶液を、5時間かけて等速度で連続添加した。同時に、上記にて調製した触媒溶液を、30分毎に7部ずつ、5時間にわたり添加した。その後、反応系に水15部を添加し、攪拌することにより反応を終了させ、さらに老化防止剤としての4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)5重量%トルエン溶液38部を添加し攪拌した。続いて、スチームストリッピングを実施してトルエンを除去し、上澄み水を除去後、60℃で15時間真空乾燥することで、361.0部のポリエーテルゴムを得た。得られたポリエーテルゴムのムーニー粘度は45であった。また、
1H−NMR分析の結果、得られたポリエーテルゴムの単量体組成比は、エチレンオキサイド単量体単位56モル%、エピクロロヒドリン単量体単位40モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位4モル%を含有するものであることが確認できた。
【0079】
〔実施例1〕
攪拌羽を備える撹拌容器に、製造例2にて得られたポリエーテルゴム100部、およびアセトン900部を投入し、23℃にて、12時間撹拌することで、ポリエーテルゴムの10重量%アセトン溶液を得た。そして、上記とは別の撹拌容器に、得られたポリエーテルゴムの10重量%アセトン溶液900部(ポリエーテルゴム換算で90部)と、液状ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム(アクリロニトリル29.5重量%)、製品名「Nipol 1312」、日本ゼオン社製)10部とを投入し、40℃にて、2時間撹拌することで、ポリエーテルゴムおよび液状ニトリルゴムが共に溶解混合されたアセトン溶液であるゴム溶液を得た。次いで、得られたポリエーテルゴムおよび液状ニトリルゴムのアセトン溶液であるゴム溶液について、スチームストリッピングを実施し、その後、スラリーからろ別することにより得られたゴム成分を、60℃で15時間真空乾燥することで、100部の、ポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの混合物(ポリエーテルゴム:液状ニトリルゴム=90:10(重量比))を得た。
【0080】
そして、バンバリーミキサーに、上記にて得られたポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの混合物60部、固形ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム、製品名「Nipol DN401LL」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル18重量%)40部、導電性カーボンブラック(製品名「ケッチェンブラックEC300」、ライオン社製、平均一次粒子径:40nm、BET比表面積:800m
2/g)7部、架橋促進助剤としてのステアリン酸1部、および同じく架橋促進助剤としての酸化亜鉛(製品名「ZnO#1」、正同化学社製)5部を投入し50℃で5分間混練後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールに、この混練物と、含硫黄架橋剤としての4,4−ジチオジモルホリン(製品名「バルノックR」、大内新興化学工業社製)2部、ジスルフィド系架橋促進剤としてのテトラエチルチウラムジスルフィド(製品名「ノクセラーTET」、大内新興化学工業社製)1部、および同じくジスルフィド系架橋促進剤としてのジベンゾチアゾリルジスルフィド(製品名「ノクセラーDM−P」、大内新興化学工業社製)1.5部を投入し、10分間混練することで、架橋性ゴム組成物を得た。そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、上記方法にしたがい、体積固有抵抗値、硬度および圧縮永久歪み率の各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例2〕
含硫黄架橋剤としての4,4−ジチオジモルホリンの配合量を2部から1部に変更し、かつ、含硫黄架橋剤として、硫黄(製品名「サルファックスPMC」、鶴見化学工業社製)0.25部をさらに配合した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例3〕
ジスルフィド系架橋促進剤としてのテトラエチルチウラムジスルフィドを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
〔実施例4〕
ジスルフィド系架橋促進剤としてのジベンゾチアゾリルジスルフィドを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
〔比較例1〕
導電性カーボンブラック(製品名「ケッチェンブラックEC300」、ライオン社製)7部の代わりに、カーボンブラック(製品名「旭#35」、旭カーボン社製、平均一次粒子径:78nm、BET比表面積:24m
2/g)7部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
〔比較例2〕
カーボンブラック(製品名「旭#35」、旭カーボン社製)の配合量を7部から30部に変更した以外は、比較例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
〔比較例3〕
ゴム成分としてのポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの混合物60部の代わりに、バンバリーミキサーに、製造例2にて得られたポリエーテルゴム95部と液状ニトリルゴム5部とを直接投入し、かつ、ゴム成分としての固形ニトリルゴムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。すなわち、比較例3においては、ゴム成分としては、固形ニトリルゴムを配合せず、ポリエーテルゴムおよび液状ニトリルゴムのみを配合した。結果を表1に示す。
【0087】
〔比較例4〕
ゴム成分としてのポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの混合物60部の代わりに、バンバリーミキサーに、液状ニトリルゴム5部を直接投入し、かつ、ゴム成分としての固形ニトリルゴムの配合量を40部から95部に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。すなわち、比較例4においては、ゴム成分としては、ポリエーテルゴムを配合せず、液状ニトリルゴムおよび固形ニトリルゴムのみを配合した。結果を表1に示す。
【0088】
〔比較例5〕
ゴム成分としてのポリエーテルゴムと液状ニトリルゴムとの混合物60部の代わりに、バンバリーミキサーに、製造例2にて得られたポリエーテルゴム60部を直接投入した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に各測定・評価を行った。すなわち、比較例5においては、ゴム成分としては、液状ニトリルゴムを配合せず、ポリエーテルゴムおよび固形ニトリルゴムのみを配合した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示すように、ポリエーテルゴム、固形ニトリルゴム、液状ニトリルゴム、含硫黄架橋剤、ジスルフィド系架橋促進剤、および、所定の導電性カーボンブラック(平均一次粒子径が50nm以下、かつ、BET比表面積が600m
2/g以上)を含有する架橋性ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、低硬度であり、体積固有抵抗値および圧縮永久歪み率も低く、導電性ロール用途として優れたものであった(実施例1〜4)。
【0091】
一方、所定の導電性カーボンブラックの代わりに、一次粒子径が50nm超、BET比表面積が600m
2/g未満であるカーボンブラックを用いた場合には、配合量の多少にかかわらず、得られるゴム架橋物は、体積固有抵抗値が高くなる結果となり、さらには、配合量を30部と多くした場合には、硬度が高くなる結果となった(比較例1,2)。
また、3種のゴム成分のうち、固形ニトリルゴムを配合しなかった場合には、得られるゴム架橋物は、硬度が高くなる結果となった(比較例3)。
さらに、3種のゴム成分のうち、ポリエーテルゴムまたは液状ニトリルゴムを配合しなかった場合には、得られるゴム架橋物は、硬度および体積固有抵抗値が高くなる結果となった(比較例4,5)。