(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示す本実施形態の検査装置1は、回路基板2に形成された配線パターン間の絶縁状態の良否判定を行うためのものである。なお、実際の回路基板には複雑な配線パターンが多数形成されているが、
図1ではこれを単純化して、回路基板2に4つの単純な配線パターンP1〜P4が形成されている様子を示している。
【0018】
検査装置1は、制御部10と、定電流源11と、電圧測定部12と、リミッタ回路13と、プローブ14と、スイッチ回路15と、電流測定部16と、を備えている。
【0019】
制御部10は、演算装置としてのCPU、記憶装置としてのROMやRAM等のハードウェアを有したコンピュータである。また、制御部10は、検査装置1の各部を制御するためのプログラム等のソフトウェアを前記ROM等に保持している。制御部10は、前記ハードウェア及び前記ソフトウェアが協働することにより、検査装置1の各部を制御する。
【0020】
検査装置1は、多数のプローブ14を備えている。各プローブ14は、棒状ないし針状に形成された導電性の部材であり、回路基板2上の配線パターンP1〜P4の何れかに接触可能に構成されている。
【0021】
定電流源11は、プラス側端子とマイナス側端子を有しており、プラス側端子とマイナス側端子の間に一定の電流を供給するように構成されている。なお、定電流源11のマイナス側端子は接地されている。
【0022】
リミッタ回路13は、定電流源11のプラス側端子とマイナス側端子のあいだの電位差が所定の上限電圧以上にならないように保護するものである。
【0023】
電流測定部16は、プラス側端子とマイナス側端子を備えており、プラス側端子からマイナス側端子に流れた電流の大きさを検出するように構成されている。電流測定部16による測定結果は、制御部10に出力される。なお、電流測定部16のマイナス側端子は接地されている。
【0024】
スイッチ回路15は、各プローブ14を、定電流源11のプラス側端子に接続した状態、電流測定部16のプラス側端子に接続した状態、定電流源11にも電流測定部16にも測定していない状態、のうちの任意の状態に切り替えることができるように構成されている。スイッチ回路15は、制御部10によって制御されている。
【0025】
制御部10は、スイッチ回路15を適宜制御することにより、任意のプローブ14を定電流源11のプラス側端子に接続することができる。これにより、当該プローブ14が接触している配線パターンに対して、定電流源11からの定電流を供給できる。本明細書では、定電流源11からの定電流が供給される配線パターンを、「プラス側パターン」と呼ぶ。また、制御部10は、スイッチ回路15を適宜制御することにより、任意のプローブ14を電流測定部16のプラス側端子に接続することができる。これにより、当該プローブ14が接触している配線パターンに流れた電流を、電流測定部16によって測定できる。本明細書では、電流測定部16によって電流が測定される配線パターンを、「マイナス側パターン」と呼ぶ。
【0026】
電圧測定部12は、プラス側パターンの電圧を測定するように構成されている。電圧測定部12による測定結果は、制御部10に出力される。
【0027】
ここで、
図2を参照して、より具体的に説明する。
図2は、配線パターンP1,P2のペアを検査対象とした場合を例示している。
図2では、検査対象の配線パターンP1,P2のうち、一方の配線パターンP1をプラス側パターンとし、他方の配線パターンP2をマイナス側パターンとしている。なお、
図2においては、説明のうえで不要な構成の図示を適宜省略している。
【0028】
図2に示すように、配線パターンP1,P2のペアは、寄生容量Cを有している。従って、定電流源11がプラス側パターンP1に電流を供給することにより、寄生容量Cが充電される。これに伴って、プラス側パターンP1の電圧Vが上昇する。当該電圧Vは、電圧測定部12によって測定される。
【0029】
また、
図2に示すように、配線パターンP1,P2の間には、抵抗Rが存在していると考えられる。この抵抗Rは理想的には無限大であるが、実際には有限の値をとる。従って、抵抗Rには電流Irが流れ得る(
図3)。この電流Irは、マイナス側パターンP2に流れた後、電流測定部16によって測定される。
【0030】
なお、
図2及び
図3に示すように、マイナス側パターンP2には、寄生容量Cを充電するための電流が流れ得る。従って、寄生容量Cの充電中は、当該寄生容量Cを充電するための電流と、抵抗Rに流れた電流Irと、を合計した電流が電流測定部16で測定される。しかし、寄生容量Cの充電が完了した後は、当該充電のための電流は流れなくなるので、抵抗Rに流れた電流Irのみを電流測定部16によって測定することができる。
【0031】
電圧測定部12及び電流測定部16から出力される測定結果は、図略のA/D変換器によって所定のサンプリング周期でサンプリングされ、デジタルの離散的なデータとして制御部10に取得される。以下の説明において、電圧および電流に関して「測定結果」と言う場合は、上記のようにして制御部10が取得するデジタルのデータとしての測定結果を指すものとする。
【0032】
次に、本実施形態の検査装置1による回路基板の検査方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、制御部10は、回路基板に形成されている複数の配線パターンの中から、絶縁性を検査すべき配線パターンのペアを選択する(ステップS101)。制御部10は、スイッチ回路15を適宜制御することにより、検査対象として選択した配線パターンのペアの一方をプラス側パターン、他方をマイナス側パターンとする。ここでは、前述の
図2又は
図3のように、配線パターンP1をプラス側パターン、配線パターンP2をマイナス側パターンとして説明する。これにより、プラス側パターンP1に対して、定電流源11からの電流の供給が開始される(ステップS102)。また、制御部10は、プラス側パターンP1に対して電流を供給し始めてからの経過時間の計測を開始する(ステップS103)。
【0034】
ここで、プラス側パターンP1に電流を供給しはじめてからの当該プラス側パターンP1の電圧Vの時間変化について簡単に説明する。
図5から
図7は、プラス側パターンP1の電圧Vの変化を模式的に例示すグラフである。
【0035】
前述のように、プラス側パターンP1とマイナス側パターンP2のペアは、寄生容量Cを有している。プラス側パターンP1に電流が供給されることにより、前記寄生容量Cが充電される。これにより、
図5から
図7に示すように、プラス側パターンP1の電圧Vが徐々に上昇する。なお、プラス側パターンP1に電流の供給を開始する前の状態においては、寄生容量Cは完全に放電されており、当該プラス側パターンP1の電圧Vはゼロであるとする。従って
、図5から
図7においては、プラス側パターンP1の電圧Vがゼロから徐々に上昇する様子が示されている。
【0036】
前述のように、検査装置1にはリミッタ回路13が設けられており、定電流源11のプラス側端子とマイナス側端子の間の電位差が上限電圧以上とならないように保護されている。従って、
図5から
図7に示すように、プラス側パターンP1の電圧Vが上限電圧の近傍まで増大すると、リミッタ回路13が作動し始め、電圧Vの増加速度が減少し、最終的に電圧Vは上限電圧で一定となる。従って、ステップS102で電流を供給し始めてから十分な時間が経過すれば、プラス側パターンP1の電圧Vは上限電圧で安定する。また、プラス側パターンP1の電圧Vが安定すれば、マイナス側パターンP2に流れる電流も安定する。
【0037】
制御部10は、ステップS103で計測を開始した経過時間が所定の終了時間を超えるまで、プラス側パターンへP1の電流の供給を継続する(ステップS105の判断)。上記終了時間は、プラス側パターンP1の電圧と、マイナス側パターンP2に流れる電流と、が安定するのに十分な程度の時間が、予め設定されている。
【0038】
プラス側パターンP1に定電流が供給されることにより寄生容量Cが充電され、プラス側パターンP1の電圧Vが上昇していくので、当該プラス側パターンP1と、他の配線パターンと、のあいだにスパークや部分放電が生じうる。そこで制御部10は、プラス側パターンP1と他の配線パターンの間にスパークや部分放電が発生していないか監視する(ステップS104)。制御部10は、スパーク又は部分放電が検出された場合には、回路基板を不良品と判定して(ステップS108)、フローを終了する。なお、スパークおよび部分放電の発生の検出については後述する。
【0039】
スパークや部分放電が検出されることなく終了時間が経過した場合(ステップS105の判断)、プラス側パターンP1の電圧Vと、マイナス側パターンP2に流れる電流が、それぞれ十分に安定したと考えられる。そこで制御部10は、プラス側パターンP1の電圧Vを電圧測定部12で、マイナス側パターンP2に流れる電流Irを電流測定部16で、それぞれ測定する(ステップS106)。
【0040】
続いて、制御部10は、ステップS106で測定された電圧V及び電流Irに基づいて、検査対象の配線パターンP1,P2間の抵抗R(=V/Ir)を算出するとともに、当該抵抗Rが所定の判定閾値Rref以上か否かを判定する(ステップS107)。検査対象の配線パターンP1,P2間の抵抗Rが判定閾値Rref未満だった場合、制御部10は、当該配線パターンP1,P2間の絶縁性が十分でないと判断し、回路基板を不良品と判定してフローを終了する(ステップS108)。
【0041】
一方、検査対象の配線パターンP1,P2間の抵抗Rが判定閾値Rref以上だった場合、制御部10は、当該配線パターンP1,P2間の絶縁性は良好であると判断する。この場合、制御部10は、検査が予定されている全ての配線パターンのペアについて検査が終了しているか否かを判定し(ステップS109の判断)、終了していない場合は、次の配線パターンのペアについて検査を続行する。全ての配線パターンのペアについて検査が終了していた場合、制御部は、回路基板を良品と判定して、フローを終了する(ステップS110)。
【0042】
以上の検査方法によれば、配線パターン間の絶縁性が十分に確保できてる回路基板のみを良品と判定できる。そして、検査中にスパークや部分放電が発生した回路基板は不良品として区別できるので、良品と判定された回路基板の信頼性が向上する。
【0043】
続いて、ステップS104において、スパーク及び部分放電を検出する方法について説明する。
【0044】
前述のように、ステップS104においては、プラス側パターンP1の電圧Vが徐々に上昇していく。ここでまず、検査対象の配線パターンP1,P2の間の絶縁性が十分に確保されており、かつ、当該配線パターンP1,P2の間にスパークや部分放電が発生しなかった場合(抵抗Rが理想的に無限大である場合)について考える。この場合、抵抗Rに流れる電流Irは無視できる(
図2)。従って、定電流源11が供給する電流Iは、その全てが寄生容量Cの充電に費やされる。Q=CVであるから、この場合、
ΔV=I/C × Δt ……(1)
が成り立つ。
【0045】
定電流源11は一定の電流を供給するので、電流Iは一定とみなせる。また、検査中においては、寄生容量Cも不変であると考えられる。従って、上記式(1)より、プラス側パターンP1の電圧Vの時間に対する変化率(ΔV/Δt)が、一定となることがわかる。本願明細書では、ΔV/Δtを「電圧勾配」と呼ぶ。
【0046】
図5は、検査対象の配線パターンP1,P2間に、スパークや部分放電が発生しなかった場合(上記式(1)が成り立つ場合)における、プラス側パターンP1の電圧Vの時間変化を示したグラフである。前述のように、この場合の電圧勾配が一定であるから、プラス側パターンP1の電圧Vは直線的に上昇する。
【0047】
とはいえ、電圧勾配(ΔV/Δt)を一定とみなせる範囲は限られている。例えば
図5に示すように、プラス側パターンP1の電圧Vがゼロの付近(プラス側パターンP1に電流を供給し始めた直後)は、電圧勾配が安定していない。また
図5に示すように、電圧Vが上限電圧に近づくと、リミッタ回路13が作動するため電圧勾配が変化する。
【0048】
このように、プラス側パターンP1の電圧Vがゼロの付近、及び上限電圧の付近においては、電圧勾配を一定とみなすことができない(即ち、式(1)が成り立つとみなせない)。そこで、電圧勾配を一定とみなせる電圧Vの範囲の下限値を「第1閾値」、上限値を「第2閾値」とし、プラス側パターンP1の電圧Vが第1閾値以上第2閾値未満の範囲にある期間(電圧勾配を一定とみなせる期間)を「勾配一定期間」と呼ぶ。なお、第1閾値と第2閾値は、電圧勾配が一定とみなせる範囲(式(1)が成り立つ範囲)を適切に規定できるように予め設定しておく。
【0049】
次に、検査対象の配線パターンP1,P2の間でスパークや部分放電が生じた場合について考える。配線パターンP1,P2間でスパークや部分放電が生じると、プラス側パターンP1の電荷が、マイナス側パターンP2に流出する。この場合、配線パターンP1,P2間の抵抗Rが一時的に小さくなり、当該抵抗Rに電流Irが一時的に流れたと考えることができる(
図3)。定電流源11から供給される一定の電流Iのうち、抵抗Rを介して電流Irが流出してしまうので、寄生容量Cの充電に費やすことができる電流はI−Irとなる。
ΔV=(I−Ir)/C × Δt ……(2)
【0050】
上記式(2)より、抵抗Rに流れる電流Irが大きいほど、電圧勾配(ΔV/Δt)が小さくなることが分かる。
【0051】
図6は、検査対象の配線パターンP1,P2間に、スパークが発生した場合を示したものである。スパークが発生した場合、検査対象の配線パターンP1,P2の間の抵抗Rに、瞬間的に大きな電流Irが流れる(上記式(2)において、電流Irが瞬間的に大きくなる)。この結果、
図6に示すように、スパークが発生した瞬間にプラス側パターンP1の電圧Vが減少するとともに、電圧勾配が瞬間的にマイナスとなる。
【0052】
図7は、検査対象の配線パターンP1,P2間に、部分放電が発生した場合を示したものである。部分放電が発生した場合も、検査対象の配線パターンP1,P2の間の抵抗Rに電流Irが流れる。ただし、部分放電においては、スパークのときのような大電流は流れないので、プラス側パターンP1の電圧Vは減少しない。しかしながら、部分放電は、ある程度の期間を継続して発生する場合が多い。部分放電が継続して発生している期間中は、配線パターン間の抵抗Rに電流Irが流れるため、寄生容量Cの充電速度が遅くなる。このため、
図7に示すように、電圧Vの増加速度が小さくなる(即ち、電圧勾配が小さくなる)。
【0053】
このように、スパーク又は部分放電が生じた場合(
図6や
図7の場合)、電圧勾配が一時的に小さくなる。一方、スパーク及び部分放電が生じていない場合(
図5の場合)は、勾配一定期間における電圧勾配は一定となる。従って、勾配一定期間における電圧勾配の一定性を確認することにより、スパークや部分放電の発生を検知することが可能になる。
【0054】
なお、寄生容量Cは配線パターンごとに異なるため、電圧勾配(ΔV/Δt)の値も配線パターンごとに異なる。しかしながら、「スパークや部分放電が発生していない場合には電圧勾配が一定になる」という点では、どの配線パターンでも共通している。従って上記のように、電圧勾配が一定であるか否かに基づいてスパークや部分放電を検知することにより、配線パターンごとの寄生容量Cの違いに影響を受けず、どの配線パターンに対しても高い精度でスパーク及び部分放電を検知できる。
【0055】
そこで本実施形態の制御部10は、
図2のステップS104においては、勾配一定期間中に電圧勾配が一定である場合(
図5に示すような場合)にはスパーク及び部分放電が発生していないと判定し、電圧勾配が一定でない場合(
図6や
図7に示すような場合)にはスパーク又は部分放電が発生したと判定するように構成されている。
【0056】
続いて、電圧勾配の一定性を判定するための制御部10の構成について、より詳しく説明する。
【0057】
本実施形態の制御部10は、正常時の電圧勾配を算出する正常時電圧勾配算出部20としての機能を有している。なお、本明細書において「正常時」とは、スパークや部分放電が生じていない状態を指す。
【0058】
本実施形態の正常時電圧勾配算出部20は、電圧Vが比較的小さいときにおける当該電圧Vの測定結果に基づいて、正常時の電圧勾配を算出するように構成されている。これは、プラス側パターンP1の電圧Vが小さければ小さいほど、当該プラス側パターンP1と他の配線パターンとの間でスパークや部分放電が生じる可能性が低いためである。即ち、プラス側パターンP1の電圧Vが十分に小さいときは、「正常時」とみなすことができる。ただし前述のように、プラス側パターンP1の電圧Vがゼロの近傍では、電圧勾配が不安定である。従って、プラス側パターンP1の電圧Vが極端に小さいとき(電圧Vがゼロに近いとき)には、当該電圧Vの測定結果に基づいて正常時の電圧勾配を正確に求めることができない。
【0059】
そこで正常時電圧勾配算出部20は、プラス側パターンP1の電圧Vが、第1閾値以上で、かつ所定の電圧勾配算出閾値未満の範囲にある期間(
図5から
図7において「電圧勾配算出期間」とされた期間)中に取得された電圧Vの測定結果に基づいて、正常時の電圧勾配を求める。正常時の電圧勾配を求めるためには、電圧勾配算出期間中に、電圧Vの測定結果を最低でも2点取得できれば良い。なお、閾値間の大小関係は、電圧ゼロ < 第1閾値 < 電圧勾配算出閾値 < 第2閾値 < 上限電圧、となっている。
【0060】
さて、正常時(スパークや部分放電が生じていない状態)であれば、電圧勾配ΔV/Δtは一定となるはずである。従って、正常時であると仮定すれば(電圧勾配が一定であると仮定すれば)、正常時電圧勾配算出部20が算出した「正常時の」電圧勾配に基づいて、任意の時間tにおける電圧Vを推算することが可能である。本実施形態の制御部10は、電圧勾配が一定であるとの仮定のもとで、正常時の電圧勾配に基づいて、各時間tにおけるプラス側パターンの電圧Vを推算する電圧推算部21としての機能を有している。電圧推算部21が求めた電圧Vの推算値を、
図5から
図7に2点鎖線の直線で示す。
【0061】
本実施形態の制御部10は、勾配一定期間中における電圧Vの測定結果と、電圧推算部21による電圧Vの推算値と、を比較することにより、勾配一定期間中の電圧勾配が一定か否かを判定する判定部22としての機能を有している。
【0062】
例えば
図5に示すように、勾配一定期間中における電圧Vの測定結果(
図5に円形のシンボルで示す)と、電圧推算部21による電圧Vの推算値(2点鎖線の直線で示す)と、が一致している場合、勾配一定期間中において電圧勾配は一定とみなせる。そこで、本実施形態の判定部22は、勾配一定期間中における電圧Vの測定結果と、電圧推算部21による電圧Vの推算値と、が一致(又は略一致)している場合、勾配一定期間中の電圧勾配は一定であると判定する。なお本実施形態では、電圧Vの測定結果と、電圧Vの推算値と、の差が所定の判定閾値[V]未満である場合に、両者が一致(又は略一致)していると判定する。
【0063】
一方、例えば
図5や
図6に示すように、勾配一定期間中における電圧Vの測定結果(円形のシンボル)と、電圧推算部21による電圧Vの推算値(2点鎖線の直線)と、が乖離している場合、判定部22は、勾配一定期間中に電圧勾配が変化した(電圧勾配が一定ではない)と判定する。なお本実施形態では、電圧Vの測定結果と、電圧Vの推算値と、の差が前記判定閾値[V]以上である場合に、両者が乖離していると判定する。
【0064】
前述のように、スパークや部分放電が発生していなければ、勾配一定期間中の電圧勾配は一定である。そこで判定部22は、勾配一定期間中の電圧勾配が一定であると判定した場合には、検査対象の配線パターンにスパーク及び部分放電は発生していない、と判定する。即ち、この場合は、
図4のステップS104の判断において「No」となる。
【0065】
一方、判定部22は、勾配一定期間中の電圧勾配が一定ではないと判定した場合には、検査対象の配線パターンにスパーク又は部分放電が発生した、と判定する。即ち、この場合は、
図4のステップS104の判断において「Yes」となる。
【0066】
以上で説明したように、本実施形態の検査装置1は、定電流源11と、電圧測定部12と、正常時電圧勾配算出部20と、判定部22と、を備えている。定電流源11は、検査対象の配線パターンに一定の電流を供給する。電圧測定部12は、配線パターンの電圧Vを測定する。正常時電圧勾配算出部20は、電圧Vの測定結果のうち、所定の電圧勾配算出閾値未満の測定結果に基づいて正常時の電圧勾配を求める。判定部22は、電圧Vの測定結果のうち、第1閾値以上第2閾値未満の範囲内の測定結果(勾配一定期間中の測定結果)と、前記正常時の電圧勾配に基づく電圧の推算値と、を比較することにより、前記電圧勾配が一定であるか否かを判定する。そして、判定部22は、電圧勾配が一定であるか否かに基づいて、回路基板の良否を判定している。
【0067】
以上のように構成された本実施形態の検査装置1によれば、従来から検出可能であったスパーク(
図5)に加えて、従来は検出することが難しかった部分放電(
図6)の発生も検出できる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
上記実施形態では、スパーク又は部分放電が一回でも生じた場合は不良品と判断するように構成されているが、数回のスパーク(又は部分放電)を許容するようにしても良い。
【0070】
従来の手法(特許文献1)では、部分放電の発生を検出することはできないが、スパークの発生を検出することは可能である。このため、従来の手法と、本願発明の手法を組み合わせることにより、スパークの発生と、部分放電の発生を、区別して検出することができる。そこで、スパークが発生した場合と、部分放電が発生した場合とで、必要に応じて処理を異ならせることもできる。
【0071】
上記実施形態では、電圧Vの測定結果と、電圧Vの推算値と、の差が所定の判定閾値[V]未満である場合に、両者が一致(又は略一致)していると判定しているが、電圧Vの測定結果と推算値が一致していると判定する条件はこれに限らない。例えば、電圧Vの測定結果と、電圧Vの推算値と、のズレが所定の割合[%]の範囲内に収まっている場合に、両者が一致(又は略一致)していると判定しても良い。
【0072】
上記実施形態では、正常時の電圧勾配を電圧Vに基づいて求める構成であるが、当該正常時の電圧勾配は規定の値とすることもできる。しかしながら、正常時の電圧勾配は、配線パターンごとに異なる。また、個体差などの影響があるため、実際の配線パターンにおける正常時の電圧勾配は、回路基板ごとに微妙に異なることが考えられる。このため、各配線パターンの正常時の電圧勾配を予め正確に規定しておくことは難しい。この点、上記施形態では、検査対象の配線パターンごとに、電圧Vの測定値に基づいて、正常時の電圧勾配を求める構成である。このように、実際の測定値に基づいて正常時の電圧勾配を求めるので、配線パターンごとに正常時の電圧勾配を正確に求めることができる。そして、このようにして求めた正常時の電圧勾配に基づいてスパーク及び部分放電を検出することにより、配線パターンごとの電圧勾配の違いに影響を受けず、どの配線パターンについてもスパーク及び部分放電を精度良く検出できる。
【0073】
上記実施形態では、正常時の電圧勾配に基づいて電圧Vの推算値を求め、当該推算値と、電圧Vの測定結果と、を比較することにより電圧勾配の一定性を確認している。しかしながら、電圧勾配の一定性を確認する方法はこれに限らず、適宜の方法を採用できる。例えば、電圧Vの最新の測定結果が得られるたびに、1つ前の測定結果との差に基づいて最新の電圧勾配を求め、当該電圧勾配の変化を監視するように構成しても良い。