特許第6229930号(P6229930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229930セラミック中子およびその製造方法、そのセラミック中子を用いた鋳物の製造方法および鋳物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229930
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】セラミック中子およびその製造方法、そのセラミック中子を用いた鋳物の製造方法および鋳物
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20171106BHJP
   B22C 7/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B22C9/10 J
   B22C7/00 112C
   B22C7/00 113
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-187337(P2013-187337)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-54327(P2015-54327A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福島 英子
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161805(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018393(WO,A1)
【文献】 特開2013−071169(JP,A)
【文献】 米国特許第4164424(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/00− 9/10
B22C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粉末を焼結してなるセラミック中子であって、該セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さが100μm以下であり、該セラミック中子の破断面においてはセラミック粉末の粒内破壊粒子が観察される、ことを特徴とするセラミック中子。
【請求項2】
セラミック粉末とバインダとを混合して射出成形用組成物を作製する工程と、前記射出成形用組成物を射出成形してセラミック成形体を作製する工程と、前記セラミック成形体を焼結してセラミック中子を作製する工程とを含み、前記セラミック粉末に含まれる粒子の積算体積粒度分布曲線において、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が30%以下であり、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が10〜40%である、ことを特徴とするセラミック中子の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載のセラミック中子を作製する工程と、前記セラミック中子の周囲に消失性材料を被覆して消失性模型を作製する工程と、前記消失性模型の周囲に耐火物を被覆して鋳型を作製する工程と、前記鋳型内に溶融させた金属材料を充填して前記金属材料を凝固させて鋳物原形を作製する工程とを含み、前記鋳物原形から前記鋳型および前記セラミック中子を除去して中空構造を有する鋳物に形成する、ことを特徴とするセラミック中子を用いた鋳物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造を有する鋳物を鋳造する際に用いられるセラミック中子およびその製造方法、そのセラミック中子を用いた鋳物の製造方法およびその製造方法により形成された鋳物に関する。
【背景技術】
【0002】
中空構造を有する鋳物、例えばNi基耐熱合金などからなるガスタービン用ブレード(タービン翼)には、そのブレード内部に、冷却効果を高めるための複雑かつ高精度に形成された中空冷却孔を有するものがある。このようなブレードは、ロストワックス精密鋳造法などにより、形成したい中空冷却孔に対応する形状のセラミック中子を用いて製造することができる。例えば、図1に、中空構造を有するタービン翼の中空部を形成するための、翼部1とダブテール2を有するセラミック中子を示す。
【0003】
このようなセラミック中子としては、例えば、60〜85質量%の溶融シリカと、15〜35質量%のジルコンと、1〜5質量%のクリストバライトからなるもの(特許文献1)や、60〜80質量%の溶融シリカ粉末と、15質量%までのイットリアと、0.2質量%までのアルカリ金属とからなるもの(特許文献2)や、溶融シリカとナトリウムで安定化されたコロイダルシリカを用いてなるもの(特許文献3)が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1が開示するセラミック中子は、1500℃程度の鋳造温度でも十分な機械的強度を有し、鋳造時の顕著な寸法変化が抑制されて寸法安定性に優れ、鋳造後にセラミック中子を溶出しやすいとされている。また、特許文献2が開示するセラミック中子は、最大12MPaの室温強度と、1500℃よりもかなり高い1675℃の高温であっても、ほとんど変形しない特性を有するとされている。また、特許文献3が開示するセラミック中子は、7MPa程度の室温強度を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−245941号公報
【特許文献2】欧州特許第0179649号明細書
【特許文献3】米国特許第4093017号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によるセラミック中子を用いて、ロストワックス精密鋳造法により中空構造を有する鋳物(タービン翼)を試作したところ、幾つかの鋳物の中空構造部の前記セラミック中子に接する部分に例えば図2で示すような突起物欠陥が認められた。図2(a)で示す突起物欠陥5は、鋳物3の中空部4において、鋳物3の表面から中空部4側へ突起している。また、図2(b)で示すように、突起物欠陥5の基部6と鋳物3の表面とは大きく括れた断面形状で連結している。そのことから、鋳物の中空部に発生する突起物欠陥は、鋳造時にセラミック中子の表面から内部に溶湯(溶融金属)が浸入し(溶湯の差し込み)、粗大化して凝固したものであることが分った。詳細は後述する。
本発明は、上述した鋳物の中空部において突起物欠陥の形成防止ができるセラミック中子およびその製造方法、そのセラミック中子を用いた鋳物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の大きさが所定の長さ以下であると、上述した不具合が生じなくなることを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、セラミック粉末を焼結してなるセラミック中子であって、該セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さが100μm以下であり、該セラミック中子の破断面においてはセラミック粉末の粒内破壊粒子が観察される、セラミック中子である
【0008】
本発明に係るセラミック中子は、セラミック粉末とバインダとを混合して射出成形用組成物を作製する工程と、前記射出成形用組成物を射出成形してセラミック成形体を作製する工程と、前記セラミック成形体を焼結してセラミック中子を作製する工程とを含み、前記セラミック粉末に含まれる粒子の積算体積粒度分布曲線において、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が30%以下であり、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が10〜40%である、前記セラミック粉末を用いることにより製造することができる
【0009】
また、本発明に係るセラミック中子を用いて、中空構造を有する鋳物を形成することができる。すなわち本発明に係るセラミック中子を作製する工程と、前記セラミック中子の周囲に消失性材料を被覆して消失性模型を作製する工程と、前記消失性模型の周囲に耐火物を被覆して鋳型を作製する工程と、前記鋳型内に溶融させた金属材料を充填して前記金属材料を凝固させて鋳物原形を作製する工程とを含み、前記鋳物原形から前記鋳型および前記セラミック中子を除去して中空構造を有する鋳物に形成する
【発明の効果】
【0010】
本発明のセラミック中子の適用により、セラミック中子に接する鋳物の表面への突起物欠陥の形成を防止でき、中空部の突起物欠陥が抑制された健全な中空構造を有する鋳物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るセラミック中子の一例(外観)を示す図である。
図2】(a)は突起物欠陥の一例を示す図であり、(b)は(a)で示す突起物欠陥の基部の断面を拡大して示す図である。
図3】(a)(b)(c)ともにセラミック中子の表面に開口している空孔であって、その空孔の開口部の形状を簡易形状に近似して例示した図(写真)である。
図4】(a)(b)ともに突起物欠陥の形成概念を説明するための図である。
図5】(a)(b)ともにセラミック粉末の粒子の積算体積粒度分布曲線の一例を示す図(グラフ)である。
図6】セラミック中子の破断面において、(a)はセラミック粉末の粒内破壊の一例を示す図(写真)であり、(b)はセラミック粉末の粒界破壊の一例を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における重要な特徴は、セラミック粉末を焼結してなるセラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さが100μm以下であることである。これにより、セラミック中子に接する鋳物の表面への突起物欠陥の形成を防止することができる。よって、本発明に係るセラミック中子の適用により、中空部の突起物欠陥が抑制された健全な中空構造を有する鋳物を得ることができる。なお、本発明に係る空孔には、開口部が袋の口になって表面から内部に袋状に広がってなる空間形態を有するものや、大きな粒子が脱落して表面から内部に凹状に窪んでなる空間形態を有するものを含む。
【0013】
セラミック中子になるセラミック成形体は、その内部に空孔が形成されていることがある。比較的大きな空孔が、セラミック成形体の表面近傍に形成されていた場合、脱脂や焼結の過程においてその空孔が表面に開口し、セラミック中子の表面に空孔の開口部が形成されてしまうことがある。このようにしてセラミック中子の表面に開口した空孔は、その空孔の周囲を形成している殻やその殻近傍の焼結組織が、相対密度の局所的な低下により脆弱な多孔質組織に形成されやすい。
【0014】
また、このような空孔の開口部は、その周縁が多様な形状や粒径をもつ多数個のセラミック粉末が焼結された結合組織で形成されているため、その周縁形状は単純ではない。つまり、セラミック粉末個々の粒子形状や大きさが異なることから、空孔の開口部の周縁は様々な形状をなしている。この点を考慮し、本発明者は、空孔の開口部の周縁形状を、例えば、円形状、楕円形状、三角形や長方形のような多角形状、細長い針形状などに近似できると考えた。
【0015】
そこで、本発明に係るセラミック中子については、表面に開口している空孔の開口部の形状を近似し、例えば、その開口部が円形状に近似できるならばその直径、楕円形状ならばその長径、三角形状ならばその最長の辺、長方形状や五角形以上の多角形状ならばその最長の対角線、針形状ならばその針長さを、その開口部の最大長さと定義する。
【0016】
図3に、セラミック中子の表面に開口している空孔の一例を示す。図3(a)に示す空孔11は、例えば長方形状を適用して近似し、その対角線を開口部の最大長さに対応させることができる。同様に、図3(b)に示す空孔12は、例えば三角形状を適用して近似し、その斜辺もしくは高さを開口部の最大長さに対応させることができる。また、図3(c)に示す空孔13は、例えば楕円形状を適用して近似し、その長径を開口部の最大長さに対応させることができる。
【0017】
また、実際に、多数の突起物欠陥を詳細に分析したところ、突起物欠陥の基部(鋳物の正常部分との境界領域となる大きく括れた部分)において、その断面輪郭上で最も離れた位置になる2点の離間距離が、上述した図2(b)で示す基部6のように、いずれも100μmを超えていることが判明した。
【0018】
このような基部が大きく括れた形状を有する突起物欠陥は、図4で示すような過程で形成されると考えられる。例えば、表面近傍に空孔8が存在し、その空孔8に連通する開口部が表面に存在するセラミック中子を仮定する。このセラミック中子を内包する鋳型を用いた鋳造において、図4中に二点鎖線で示すセラミック中子の表面9に連通する空孔8の開口部に溶湯10が至ったとき、その開口部が所定以上の長さで開口していた場合、図4(a)で示すように、溶湯10はその開口部から空孔8内に浸入する(溶湯10の差し込み)。
【0019】
さらに、空孔8に浸入した溶湯10は、空孔8の殻になっている比較的脆弱な多孔質組織の焼結結合を離断し、元々の空孔8の容積を拡大しながら図4(b)で示すようにその空孔に充満し、やがて凝固して粗大な凝固物となる。すなわち、比較的大きな開口部を有する空孔に浸入した溶湯の粗大な凝固物が、鋳物の中空部の表面に図2で示すように形成される突起物欠陥であることが分った。
【0020】
実際にセラミック中子を作製して鋳造を試みた。その結果、表面に開口している空孔の開口部の最大長さが100μmを超える開口が観察されなかったセラミック中子を用いた場合は、中空部の突起物欠陥が抑制された健全な鋳物を得ることができた。すなわち、セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さが100μm以下であることにより、空孔への溶湯の差し込みが防止され、突起物欠陥の形成が防止できるセラミック中子になることが分った。
【0021】
また、セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さは、溶湯の差し込み防止の観点からは、小さいほど好ましい。これは、鋳造時、鋳造方案や注湯条件によっては、溶湯がセラミック中子の表面に真っ向から衝突したり、溶湯がセラミック中子の表面を激しく擦過したりするため、溶湯と接触する開口部の最大長さが大き過ぎると、溶湯との接触によって空孔を形成している殻や開口部の周縁が大きく崩壊してしまうからである。従って、空孔の開口部の最大長さは小さいほど好ましく、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。
【0022】
上述した本発明に係るセラミック中子は、セラミック粉末とバインダとを混合して射出成形用組成物を作製する工程と、前記射出成形用組成物を射出成形してセラミック成形体を作製する工程と、前記セラミック成形体を焼結してセラミック中子を作製する工程とを含み、前記セラミック粉末に含まれる粒子の積算体積粒度分布曲線において、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が30%以下である、前記セラミック粉末を用いる製造方法により形成することができる。
【0023】
粒径が比較的大きい粉末(粗粉末)は、セラミック成形体においては複数の粗粉末が互いに支え合って気泡やバインダの内包構造を形成しやすく、脱脂工程および焼結工程を経たセラミック中子において、前記内包構造に起因する空孔構造が形成されることがある。このような空孔構造に伴う空孔は大きな容積になることがあり、大きな容積の空孔がセラミック成形体の表面近傍に存在した場合はセラミック中子の表面に大きな開口長さをもつ開口部を形成しやすい。また、粒径の大きい粗粉末の累積百分率が低減するほど、小さい空孔が形成されやすくなる。
【0024】
具体的には、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が30%を超えるようになると、相対的に粒径が比較的小さい粉末(微粉末)の累積百分率が低減し、気泡やバインダの内包構造を埋めるために必要な微粉末が低減する。従って、気泡やバインダの内包構造に起因して容積が大きな空孔が形成され、セラミック中子に形成される開口部の開口長さが50μmを超えて形成される可能性が高まる。
【0025】
なお、上述した粒子の積算体積粒度分布曲線は、粉末全体の中に特定の粒子径以下の粒子の量が全体の何%含まれるかを表わした積算分布曲線であり、横軸を粒径(粒子径)とし、縦軸をその粒径以下の粒子の量を累積百分率で表した値としている。本発明においては「レーザ回折・散乱法」に基づいて、具体的には、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(日機装株式会社製粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000)を使用して得られる体積基準の粒度分布である。なお、同様にして平均粒径も得られ、累積百分率で50%の時の粒径が平均粒径とされる。
【0026】
本発明に用いられるセラミック中子は、前記セラミック中子の破断面において、セラミック粉末の粒内破壊粒子が観察されることが好ましい。セラミック中子が粒界破壊ではなく粒内破壊を起こすのは、それだけ焼結によりセラミック粉末同士の結合強度が高いからである。セラミックス粉末同士の結合強度が高ければ、それだけ空孔に浸入した溶湯がその空孔の周囲を形成している殻やその殻近傍のセラミック粉末の結合を離断し難くできるため、溶湯による開口部の周縁破壊や空孔容積の拡大を防止できる。よって、外圧に対して粒界破壊よりも粒内破壊を起こすセラミック中子が、鋳物への突起物欠陥の形成防止のために好ましい。
【0027】
セラミック粉末が粒内破壊を起こすほどの焼結結合組織を有するセラミック中子を形成するには、セラミック粉末に含まれる粒子の積算体積分布曲線において、上述したように粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率を30%以下とした上で、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率を10〜40%とすることが好ましい。より微細な粒径が5μm以下の微粉末は、射出成形用組成物を射出成形してセラミック成形体を作製する際に、複数の粗粉末が近接して形成される気泡やバインダの内包構造を埋める作用効果を得やすい。そのため、セラミック成形体を焼結する際に、気泡やバインダの内包構造に起因する空孔の容積をより小さく形成することができる。よって、微粉末を好適に含むセラミック粉末を用いることにより、セラミック中子に形成される開口部の開口長さを100μm以下に形成しやすく、また、高い機械的強度を有する強固な焼結結合組織を形成しやすい。
【0028】
上述した粒径の比較的小さい粉末(微粉末)による気泡やバインダの内包構造を埋める作用効果を重視する場合は、粒径がより小さい微粉末を多く含むことが好ましい。しかしながら、セラミック中子の溶出性や収縮に係る寸法精度の劣化防止を重視する場合は、微細過ぎる粉末の含有は抑制することが好ましく、特に粒径が1μm以下の微粉末の累積百分率は5%未満に抑制することが好ましい。粒径が1μm以下の微粉末の累積百分率が5%未満であると、セラミック中子のアルカリ水溶液等での溶出性や外形寸法のばらつきを、より好ましいものにできる。なお、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が40%が超える場合は、セラミック中子の溶出性や収縮に係る寸法精度に留意すべきである。
【0029】
また、本発明に係るセラミック中子は、焼結体としての相対密度が60%以上であることが好ましい。当該相対密度が60%以上であると、セラミック中子に必要とされる常温や高温での実用上の機械的強度が高まるとともに、セラミック中子の表面に開口している空孔の開口部の最大長さを小さく形成されやすい。なお、本発明でいう相対密度は、JIS−Z2500で定義される相対密度と同義であって、実態となるセラミック中子の質量をその寸法から求めた体積で除した実態密度と、セラミック中子の焼結組織中においてセラミック粉末を構成する各種粉末、例えばシリカ(SiO)、ジルコン(ZrSiO)、アルミナ(Al)などが、それぞれ独立して存在しているものと仮定し、これらの理論上の密度を用いて使用原料の混合組成から求めた理論密度との比であり、すなわち実態密度を理論密度で除した値を百分率で表した値である。
【0030】
本発明に用いられるセラミック粉末は、セラミック中子の機械的強度や外形寸法バラツキの制御性、アルカリ水溶液などに対する溶出性などを考慮し、例えば、シリカ粉末(SiO)、アルミナ粉末(Al)、ジルコン粉末(ZrSiO)などから選択して用いることができる。また、単一組成でなるセラミック粉末でも、複数組成からなるセラミック粉末の混合粉でもよい。例えば、シリカ粉末(SiO)を用いる場合は、シリカ粉末100質量%中に非結晶性シリカ(溶融シリカ)粉末を90質量%以上含む粉末組成は好ましく、より好ましくは前記シリカ粉末の全量が非結晶性シリカ粉末である粉末組成である。また、セラミック粉末の混合粉を用いる場合は、前記シリカ粉末に、アルミナ粉末を0.1〜15.0質量%、ジルコン粉末を0.5〜35.0質量%を混合したセラミック粉末が好ましい。
【0031】
また、上述した単一組成でなるセラミック粉末や複数組成からなるセラミック粉末の混合粉に、カリウムまたはナトリウムのうち少なくとも1種を0.005〜0.1質量%含むことも好ましい。カリウムまたはナトリウムのうち少なくとも1種を0.005〜0.1質量%含むことにより、セラミック中子の高温域の機械的特性の向上や、セラミック中子の緻密化を促進する焼結助剤としての働きが期待できる。
【実施例】
【0032】
本発明に係るセラミック中子およびその製造方法について、具体例を挙げて説明する。ただし、本発明の範囲をここに述べる具体例に限定するものではない。
(セラミック粉末)
本発明に用いられるセラミック粉末として、溶融シリカ粉末(SiO)にアルミナ粉末(Al)およびジルコン粉末(ZrSiO)を混合し、また、カリウム分およびナトリウム分を合計0.1質量%以下となるように水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを用いて調整し、2種類の混合粉(図5(a)中に「サンプルA」「サンプルB」で示す。)を準備した。また、比較のため、従来技術で用いられる全量を溶融シリカ粉末(SiO)としたセラミック粉末(図5(b)中に「サンプルC」で示す。)も準備した。
【0033】
図5(a)に、本発明に用いられる2種類の前記混合粉(セラミック粉末)の粒子の積算体積粒度分布曲線を示す。サンプルA、Bで示す2種類の混合粉は、ジルコン粉末(ZrSiO)の含有量が異なる。混合粉の組成としては、サンプルAはAlが1mol%(1.5質量%)、ZrSiOが7mol%(18.6質量%)、残部SiOで、サンプルBはAlが1mol%(1.4質量%)、ZrSiOが11mol%(27.2質量%)、残部SiOである。粒子の構成としては、サンプルAは、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が19%、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が28%、より微細な粒径が1μm以下の微粉末の累積百分率は2%未満であり、サンプルBは、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が21%、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が27%、より微細な粒径が1μm以下の微粉末の累積百分率は2%未満であることが分る。
【0034】
図5(b)に、従来技術で用いられるセラミック粉末の粒子の積算体積粒度分布曲線を示す。サンプルCで示す単一組成(溶融シリカ粉末)でなるセラミック粉末は、粒子の構成としては、粒径が50μmを超える粗粉末の累積百分率が40%、粒径が5μm以下の微粉末の累積百分率が12%、より微細な粒径が1μm以下の微粉末の累積百分率は1%未満(ほぼ0%)であることが分る。
【0035】
(射出成形用組成物)
本発明に用いられるセラミック成形体に形成する射出成形用組成物A、Bと、比較のための従来技術で用いられるセラミック成形体に形成する射出成形用組成物Cとを、各セラミック粉末(サンプルA、B、C)とバインダとを混合して作製した。具体的には、サンプルA、B、Cをそれぞれ68体積%とし、バインダとしてはパラフィンおよびスチレン系熱可塑性エラストマーからなるものを32体積%とし、これらを混合攪拌機を用いて十分に混合し、それぞれの射出成形用組成物A、B、Cを得た。
【0036】
(セラミック成形体)
図1で示すセラミック中子の形状に対応するキャビティを有する金型を使用し、本発明に用いられるセラミック成形体A、Bと、従来技術で用いられるセラミック成形体Cとを作製した。具体的には、それぞれの射出成形用組成物A、B、Cを金型内へ7MPa程度の圧力で射出し、そのまま金型内で射出成形用組成物A、B、Cを固化させ、その後に金型から離型し、それぞれのセラミック成形体A、B、Cを得た。
【0037】
(セラミック中子)
脱脂炉を使用し、常温から目標温度(240℃程度)までの昇温過程で、それぞれのセラミック成形体A、B、Cからバインダを除去(低温脱脂)し、目標温度到達後は特段の温度保持を行うことなく降温した。その際、昇温速度を調整し、バインダの除去量が低温脱脂前後の質量比で80〜90%の範囲になるようにしたので、低温脱脂後のセラミック成形体(半脱脂成形体A、B、C)の取扱いには不都合がなかった。次いで、焼結炉を使用し、常温から目標温度(580℃程度)までの昇温過程および目標温度到達後の温度保持(5h程度)で、それぞれの半脱脂成形体A、B、Cに残存するバインダを除去(高温脱脂)した。そして、そのまま継続して1300℃程度の温度で2h程度保持し、前記高温脱脂工程を経たセラミック粉末(サンプルA、B、C)でなる各々を焼結させ、それぞれ複数のセラミック中子A、B、Cを得た。
【0038】
上述した製造工程を経て作製したセラミック中子Aのグループおよびセラミック中子Bのグループは、いずれも相対密度が68〜72%で焼結されていた。また、セラミック中子Cのグループは、いずれも相対密度が58〜62%で焼結されていた。セラミック中子A、B、Cの各グループについて、拡大鏡を使用して観察可能な全表面を観察し、さらに空孔の開口が疑われた箇所は大きな倍率で詳細に観察した。その結果、セラミック中子Aのグループおよびセラミック中子Bの各グループについては、空孔の開口部の最大長さが100μmを超える大きな開口部は確認されず、図3(a)や図3(b)で示す最大長さが比較的小さな開口部が幾つか確認された。一方、セラミック中子Cの各グループについては、図3(c)で示す最大長さが100μmを超える比較的大きな開口部や、これよりも大きな開口部も幾つか確認された。
【0039】
また、セラミック中子Aの各グループおよびセラミック中子Cの各グループから任意に選択したセラミック中子(「セラミック中子A’」「セラミック中子C’」とする。)を曲げ破断させ、観察可能な破断面を顕微鏡で観察した。図6(a)に、セラミック中子A’の破断面の一例を示し、図6(b)に、セラミック中子C’の破断面の一例を示す。図6(a)で示すセラミック中子A’の破断面には、少なくとも3箇所に粒内破壊粒子14が明確に観察された。一方、図6(b)で示すセラミック中子C’の破断面には、大きな空孔16の周辺に粒界破壊を起こしたセラミック粉末の粒界破壊粒子15が明確に観察された。従って、従来技術に係るセラミック中子は鋳物に突起物欠陥を形成しやすいことからして、セラミック粉末の焼結された結合組織の機械的強度が比較的低い粒界破壊を起こすセラミック中子は突起物欠陥を形成しやすいと推測できる。
【0040】
上述したように、表面に最大長さが100μmを超える開口部が確認されなかったセラミック中子A、Bの各グループと、表面に最大長さが100μmを超える開口部が確認されたセラミック中子Cのグループとから、それぞれ任意に同じ個数選択し、ロストワックス鋳造法を適用し、実際に鋳物を鋳造した。具体的には、それぞれのセラミック中子A、B、Cの周囲に200℃以下で溶融されるワックス系の消失性材料を被覆して消失性模型を作製し、さらに前記消失性模型の周囲に耐火物を積層被覆して鋳型A、B、Cを作製した。そして、それぞれの鋳型A、B、Cを加熱して1500℃程度に保持した状態で、それぞれの鋳型A、B、C内に溶融させた金属材料を同じ鋳造条件で充填して前記金属材料を凝固させて鋳物原形A、B、Cを作製した。その後、それぞれの鋳物原形A、B、Cから鋳型(耐火物)を解砕して除去し、さらに、アルカリ水溶液を用いて鋳物原形A、B、Cからセラミック中子A、B、Cを溶出して除去した。
【0041】
上述した手順により、複数の中空構造を有する鋳物A、B、Cを得ることができた。得られた鋳物A、B、Cを適宜切断し、セラミック中子A、B、Cが接していた中空部を露出し、目視や拡大鏡を使用して中空部の全鋳肌を観察した。その結果、本発明に係るセラミック中子Aのグループおよびセラミック中子Bのグループを用いて作製した鋳物Aのグループおよび鋳物Bの各グループにおいては、いずれの鋳物の中空部にも突起物欠陥と認定されるような突起物は確認されなかった。一方、従来技術で用いられるセラミック中子Cのグループを用いて作製した鋳物Cのグループにおいては、幾つかの鋳物の中空部に図2で示す突起物欠陥と認定される突起物が確認された。
【0042】
以上より、本発明に係るセラミック中子A、Bの有効性、およびそのセラミック中子A、Bの製造方法の有効性が確認できた。また、本発明に係るセラミック中子A、Bを用いた鋳物A、Bの製造方法の有効性、およびそのセラミック中子A、Bを用いた鋳物A、Bの製造方法により形成された鋳物が、その中空部の突起物欠陥が抑制された健全な中空構造を有する鋳物であることが確認できた。
【符号の説明】
【0043】
1.翼部
2.ダブテール
3.鋳物
4.中空部
5.突起物欠陥
6.基部
7.セラミック粉末
8.空孔
9.セラミック中子の表面
10.溶湯
11.長方形状
12.三角形状
13.楕円形状
14.粒内破壊粒子
15.粒界破壊粒子
16.空孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6