【文献】
PELLET, Norman et al.,Mixed-Organic-Cation Perovskite Photovoltaics for Enhanced Solar-Light Harvesting,Angewandte Chemie,2014年,Vol.53,P.3151-3157,DOI:10.1002/anie.201309361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記のペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物中、前記のシリル基を有する有機カチオンに対する前記のシリル基を有しない有機カチオンのモル比が下記式を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
19≦[シリル基を有しない有機カチオン]/[シリル基を有する有機カチオン]≦499
前記のペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物中、前記のシリル基を有する有機カチオンに対する前記のシリル基を有しない有機カチオンのモル比が下記式を満たす、請求項6に記載の光電変換素子。
49≦[シリル基を有しない有機カチオン]/[シリル基を有する有機カチオン]≦199
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、導電性支持体と、光吸収剤を含む感光層とを有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する。ここで、第一電極と第二電極が対向するとは、第一電極と第二電極が互いに接した状態で積層された形態、第一電極と第二電極とが他の層を介して積層された形態(すなわち第一電極と第二電極が他の層を挟んで互いに対向して設けられた形態)の両形態を含む意味である。
本発明の光電変換素子は好ましくは、第一電極と第二電極の間に設けられた正孔輸送層を有する。感光層および第二電極はこの順で導電性支持体上に設けられている。すなわち光電変換素子が正孔輸送層を有する場合には、感光層、正孔輸送層および第二電極はこの順で導電性支持体上に設けられていることが好ましい。
また、正孔輸送層は導電性支持体と感光層との間に設けられていてもよい。この場合、正孔輸送層、感光層および第二電極はこの順で導電性支持体上に設けられている。
光吸収剤は、後述するペロブスカイト化合物を少なくとも1種含んでいる。光吸収剤は、ペロブスカイト化合物と併せて、ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤を含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤としては、例えば金属錯体色素および有機色素が挙げられる。
【0016】
本発明において、「感光層を導電性支持体上に有する」とは、導電性支持体の表面に接して感光層を有する態様、および、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様を含む意味である。
【0017】
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層および正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状等に設けられる態様(
図1参照)、多孔質層の表面に厚く設けられる態様(
図2参照)、ブロッキング層の表面に薄く設けられる態様、ブロッキング層の表面に厚い膜状に設けられる態様(
図3参照)、電子輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(
図4参照)に設けられる態様、および、正孔輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(
図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状または分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
【0018】
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。
【0019】
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1〜
図5において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、
図1および
図2は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向および垂直方向に詰まり(堆積または密着して)、多孔質構造を形成している。
【0020】
本明細書において、単に「光電変換素子10」という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A、10B、10C、10Dおよび10Eを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に、「感光層13」という場合は、特に断らない限り、感光層13A、13Bおよび13Cを意味する。同様に、「正孔輸送層3」という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3Aおよび3Bを意味する。
【0021】
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、
図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。
図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に、後述する正孔輸送材料を含む正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11aおよび透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、多孔質層12上に感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離および電荷移動効率が向上すると推測される。
【0022】
図2に示す光電変換素子10Bは、
図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、
図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13Bおよび正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
【0023】
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、
図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成されている。
【0024】
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、
図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化またはフレキシブル化が可能になる。
【0025】
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1Eおよび第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
【0026】
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として機能する。
すなわち、光電変換素子10Aにおいて、導電性支持体11を透過して、または第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となる。
【0027】
光電変換素子10A〜10Dにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。このとき、エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となっている。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2を経て(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10において、このような、上記光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
【0028】
光電変換素子10A〜10Dにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無およびその種類等により異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al
2O
3)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
なお、上記他の層としてのブロッキング層14が導体または半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも、電子伝導が起こる。
【0029】
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
【0030】
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、光吸収剤を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子または太陽電池について、例えば、非特許文献1を参照することができる。また、色素増感太陽電池について、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
【0031】
以下、本発明の光電変換素子および太陽電池の主たる部材および化合物の好ましい態様について、説明する。
【0032】
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、
図1〜5に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点および短絡防止の点で多孔質層12およびブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、有機材料で形成できる点で、電子輸送層15または正孔輸送層16を有することが好ましい。
【0033】
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、または、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aとこの支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
【0034】
なかでも、
図1〜
図5に示されるように、ガラスまたはプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m
2当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
【0035】
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11aおよび導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
【0036】
導電性支持体11または支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11または支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
【0037】
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13または正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子および太陽電池において、例えば感光層13または正孔輸送層3と、透明電極11bとが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
このブロッキング層は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
【0038】
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
【0039】
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
【0040】
− 多孔質層12 −
本発明において、光電変換素子10Aおよび10Bのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
【0041】
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積または密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の多微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
【0042】
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料または半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(後述する光吸収剤を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、またはカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤおよびカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
【0043】
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウムまたはタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
【0044】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
【0045】
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
【0046】
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、またはカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタンまたは酸化アルミニウムがさらに好ましい。
【0047】
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物およびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
【0048】
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.1〜100μmの範囲であり、太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
【0049】
− 電子輸送層15 −
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PCBM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
【0050】
− 正孔輸送層16 −
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。
正孔輸送層16は、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
【0051】
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、後述するペロブスカイト化合物が、光吸収剤として多孔質層12(光電変換素子10Aおよび10B)、もしくはブロッキング層14(光電変換素子10C))、電子輸送層15(光電変換素子10D)、または、正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、光吸収剤は、後述するペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上のペロブスカイト化合物を含有してもよい。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してもよく、また感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を積層してもよい。
【0052】
感光層13を導電性支持体11上に有する形態は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
【0053】
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。例えば、感光層13の膜厚(多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚)は、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがさらに好ましく、0.2〜30μmが特に好ましい。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13Bおよび13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
【0054】
〔感光層の光吸収剤〕
感光層13は、光吸収剤として、有機カチオンと、周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンと、アニオンとを有するペロブスカイト化合物を含む。
【0055】
本発明に用いるペロブスカイト化合物を構成する上記有機カチオンは、シリル基を有する有機カチオンを含む。ペロブスカイト化合物が、その結晶構造中にシリル基を有する有機カチオンを有することにより、得られる光電変換素子の耐湿性を大きく高めることができる。その理由は定かではないが、シリル基が疎水性成分となって、水分に対するバリア作用を効果的に発現するためと推定される。このシリル基を有する有機カチオンは、下記式(1)で表されることが好ましい。
【0056】
R
13Si−L−NR
23+ 式(1)
【0057】
式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基から選ばれる基を示す。
【0058】
R
1として採り得るアルキル基は、直鎖アルキル基および分岐アルキル基を含む。このアルキル基の炭素数は、1〜18が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。このアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられる。
式(1)においては、Si原子に連結し、隣接して存在する2つのR
1は互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成された環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。
【0059】
R
1として採り得るシクロアルキル基は、その炭素数が3〜8であることが好ましい。このシクロアルキル基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0060】
R
1として採り得るアルケニル基は、直鎖アルケニル基および分岐アルケニル基を含む。このアルケニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルケニル基の好ましい具体例として、例えば、ビニル、アリル、ブテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
【0061】
R
1として採り得るアルキニル基は、直鎖アルキニル基および分岐アルキニル基を含む。このアルキニル基の炭素数は好ましくは2〜18、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜5である。このアルキニル基の好ましい具体例としては、例えば、エチニル、ブチニルおよびヘキシニルが挙げられる。
【0062】
R
1として採り得るアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基および分岐アルコキシ基を含む。アルコキシ基のアルキル部分は、上述したR
1として採り得るアルキル基と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0063】
R
1として採り得るアリール基は、その炭素数が6〜14であることが好ましい。このアリール基の好ましい具体例としては、例えば、フェニルおよびナフチルが挙げられ、フェニルがさらに好ましい。
【0064】
R
1として採りうるヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる基と、芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香環、脂肪族環やヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、5員環または6員環が好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、およびインダゾール環が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、およびキナゾリン環が挙げられる。
【0065】
R
1として採りうる脂肪族ヘテロ環基は、その炭素数が0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましい。この脂肪族ヘテロ環基の脂肪族ヘテロ環の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、オキサン環、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環等を挙げることができる。
【0066】
R
1はさらに置換基を有しても良く、この置換基の例としては、上述したR
1として採り得る置換基が挙げられる。また、R
1が有しうる置換基は、式(1)中の−L−NR
23+であることも好ましい。
【0067】
R
1は、水分に対するバリア作用をより効果的に発現する観点から、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0068】
式(1)中、R
2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基から選ばれる基を示す。
R
2として採り得るアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基は、それぞれ上記R
1として採り得るアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および脂肪族ヘテロ環基と同義であり、好ましい形態も同じである。N原子に連結し、隣接して存在する2つのR
2は互いに連結して環を形成してもよい。この場合、形成された環は、環構成原子としてヘテロ原子を有してもよい。
【0069】
R
2は、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0070】
式(1)中、Lは2価の連結基である。Lは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−O−、−S−、および−NR
L−から選ばれる2価の連結基、または、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−O−、−S−、および−NR
L−から選ばれる2価の連結基を組み合わせてなる2価の連結基が好ましい。R
Lは水素原子またはアルキル基であり、このアルキル基は、上述したR
1として採り得るアルキル基と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0071】
LまたはLの一部として採り得る上記アルキレン基は、直鎖アルキレン基および分岐アルキレン基を含む。このアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜3がさらに好ましい。このアルキレン基の好ましい具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンが挙げられる。
【0072】
LまたはLの一部として採り得る上記シクロアルキレン基は、その炭素数が3〜8であることが好ましい。このシクロアルキレン基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピレン、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレンが挙げられる。
【0073】
LまたはLの一部として採り得るアルケニレン基は、直鎖アルケニレン基および分岐アルケニレン基を含む。このアルケニレン基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、2〜10がさらに好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜3がさらに好ましい。
【0074】
LまたはLの一部として採り得るアルキニレン基は、直鎖アルキニレン基および分岐アルキニレン基を含む。このアルキニレン基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、2〜10がさらに好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜4が特に好ましい。
【0075】
LまたはLの一部として採り得るアリーレン基は、その炭素数が6〜14であることが好ましい。このアリーレン基は好ましくはフェニレンまたはナフチレンであり、さらに好ましくはフェニレンである。
【0076】
LまたはLの一部として採り得るヘテロアリーレン基は、その炭素数が0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましい。このヘテロアリーレン基を構成する環としては、5員環の芳香族ヘテロ環もしくは5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環、または6員環の芳香族ヘテロ環もしくは6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環が好ましい。この5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環、並びに6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環の好ましい例は、上記R
1として採り得るヘテロアリール基で説明した5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環、並びに6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環の好ましい形態と同じである。
【0077】
なかでもLは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基であるか、または、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基およびヘテロアリーレン基から選ばれる2種以上(好ましくは2種)の基を組み合わせてなる2価の連結基が好ましい。Lはより好ましくは、アルキレン基もしくはアリーレン基であるか、または、アルキレン基およびアリーレン基を組み合わせてなる2価の連結基である。
上記式(1)で表されるシリル基を有する有機カチオンが、上記L中にアルキレン基を有する場合、このアルキレン基により上記Lと上記NR
23+とが連結していることが好ましい。すなわち、上記式(1)で表されるシリル基を有する有機カチオンが、上記L中にアルキレン基を有する場合には、この有機カチオンはR
13Si−L
1−L
2−NR
23+で表されることが好ましい。ここで、L
1は単結合、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、−O−、−S−、および−NR
L−から選ばれる2価の連結基を示し、L
2はアルキレン基を示す。R
1、R
2およびR
Lは、それぞれ上記で説明したR
1、R
2およびR
Lと同義であり、好ましい形態も同じである。また、アルキレン基L
2の好ましい形態は、上述したLとして採り得るアルキレン基の好ましい形態と同じである。
【0078】
上記のシリル基を有する有機カチオンは、上記式(1)で表される有機カチオンの他、下記式(RI)で表される有機カチオンも好ましい。
【0080】
式(RI)中、R
1およびR
2は、それぞれ上記式(1)におけるR
1およびR
2と同義であり、好ましい形態も同じである。
【0081】
以下に、本発明に用いるペロブスカイト化合物が有しうる、シリル基を有する有機カチオンの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書において、構造式中の「Bu」はブチルを、「Me」はメチルを示す。
【0085】
本発明に用いるペロブスカイト化合物を構成する上記有機カチオンは、シリル基を有する有機カチオンの他、シリル基を有しない有機カチオンを含むことが好ましい。シリル基を有しない有機カチオンは、下記式(2)で表される有機カチオンが好ましい。
【0087】
式(2)中、R
Aはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(3)で表すことができる基が好ましい。なかでも、アルキル基、下記式(3)で表すことができる基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
R
Aとして採り得るアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基は、それぞれ、上記式(1)のR
1が採り得るアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0089】
式中、X
aはNR
1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R
1bおよびR
1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。*は式(2)のN原子との結合位置を表す。
【0090】
本発明において、シリル基を有しない有機カチオンが、上記式(2)中のR
AとNH
3+とが結合してなる有機アンモニウムカチオンである場合、この有機アンモニウムカチオンは共鳴構造をとり得る。例えば、上記式(3)で表すことができる基においてX
aがNH(R
1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(3)で表すことができる基とNH
3+とが結合してなる有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。この有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(A
am)で表されるカチオンが挙げられる。なお、本明細書において、下記式(A
am)で表されるカチオンを便宜上、「R
1bC(=NH)−NH
3」と表記することがある。
【0092】
式(3)で表すことができる基において、X
aはNR
1c、酸素原子または硫黄原子を表し、NR
1cが好ましい。ここで、R
1cは、水素原子または置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R
1bは、水素原子または置換基を表し、水素原子が好ましい。R
1bとして採り得る置換基は、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が挙げられる。
R
1bおよびR
1cがそれぞれとり得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、それぞれ上記式(1)におけるR
1として採り得るアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい形態も同じである。
式(3)で表すことができる基としては、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基またはアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基およびチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CH
3C(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CH
3C(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(H
2NC(=O)−)およびチオカルバモイル基(H
2NC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R
1b−C(=NR
1c)−で表される基であり、R
1bおよびR
1cはそれぞれ水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R
1aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CH
3C(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CH
3CH
2C(=NH)−)等が挙げられる。中でも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(3)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR
1bがアミノ基でR
1cが水素原子である構造(−C(=NH)NH
2)を有する。
【0093】
本発明に用いるペロブスカイト化合物の結晶構造中、シリル基を有する有機カチオンに対するシリル基を有しない有機カチオンのモル比は、下記数式(i)を満たすことが好ましく、数式(ii)を満たすことがより好ましく、数式(iii)を満たすことがさらに好ましい。
【0094】
数式(i)
4≦[シリル基を有しない有機カチオン]/[シリル基を有する有機カチオン]≦999
【0095】
数式(ii)
19≦[シリル基を有しない有機カチオン]/[シリル基を有する有機カチオン]≦499
【0096】
数式(iii)
49≦[シリル基を有しない有機カチオン]/[シリル基を有する有機カチオン]≦199
【0097】
シリル基を有する有機カチオンに対するシリル基を有しない有機カチオンのモル比が上記式を満たすことにより、光電変換素子の耐湿性をより高めることができる。
【0098】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、その結晶構造中に、周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンを有する。周期表第一族元素以外の金属原子としては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)等の金属原子が挙げられ、なかでもPb原子、Cu原子、Ge原子およびSn原子からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Pb原子またはSn原子がさらに好ましく、Pb原子であることが特に好ましい。本発明に用いるペロブスカイト化合物は、その結晶構造中に周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンを1種有してもよく、2種以上の有してもよい。周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンを2種以上有する場合には、Pb原子およびSn原子の2種を有することが好ましい。ペロブスカイト化合物が周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンを2種以上有する場合、これら2種以上のカチオンの存在比率は特に限定されない。
【0099】
本発明に用いるペロブスカイト化合物を構成するアニオンは、単原子アニオンであってもよく、多原子アニオンでもよい。単原子アニオンとしてはハロゲン原子のアニオンが挙げられる。また、多原子アニオンの好ましい例としては、NCS
−、NCO
−、HO
−、NO
3−およびCOO
−が挙げられる。なかでも、ペロブスカイト化合物を構成するアニオンはハロゲン原子のアニオンであることが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、臭素原子またはヨウ素原子が好ましい。
本発明に用いるペロブスカイト化合物を構成するアニオンは、1種のアニオンであってもよく、2種以上のアニオンであってもよい。ペロブスカイト化合物を構成するアニオンが1種の場合、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。また、ペロブスカイト化合物を構成するアニオンが2種以上の場合、2種以上のハロゲン原子のアニオンを有する形態が好ましく、なかでも塩素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンの2種を有する形態がより好ましい。ペロブスカイト化合物が2種以上のアニオンを有する場合、その割合に特に制限はない。
【0100】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、その構造中に、周期表第一族元素のカチオンを有してもよい。この周期表第一族元素のカチオンとしては、リチウムイオン(Li
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)およびセシウムイオン(Cs
+)が好ましく、なかでもCs
+がより好ましい。
【0101】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有する。本発明に用いるペロブスカイト化合物は下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
【0102】
A
aM
mX
x 式(I)
式中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子またはアニオン性原子群を表す。
aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
本明細書において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンとして存在する有機基を意味し、アニオン性原子とは、ペロブスカイト型結晶構造において単原子アニオンとして存在する原子を意味し、アニオン性原子群とは、ペロブスカイト型結晶構造において多原子アニオンとして存在する原子群を意味する。
【0103】
式(I)において、周期表第一族元素Aは、ペロブスカイト型結晶構造中においてカチオンとして存在する。
式(I)において、カチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造中において上述した有機カチオンとして存在する。
式(I)において、金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造中において、上述した周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンとして存在している。
式(I)において、アニオン性原子Xは、ペロブスカイト型結晶構造中において、上述した単原子アニオンとして存在する。
式(I)において、アニオン性原子群Xは、ペロブスカイト型結晶構造中において、上述した多原子アニオンとして存在する。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物において、Aの少なくとも一部は、シリル基を有するカチオン性有機基である。
【0104】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記式(I)中のaが1のペロブスカイト化合物と、aが2のペロブスカイト化合物との混合物であってもよい。
【0105】
ペロブスカイト化合物は、MX
2とAXとから合成することができる。例えば、上記非特許文献1を参照してペロブスカイト化合物を合成することができる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),6050−6051も適宜に参照し、ペロブスカイト化合物を合成することができる。
【0106】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト化合物を構成するカチオンの総モル量に対し、上記式(1)で表される有機カチオン、上記式(RI)で表される有機カチオン、上記式(2)で表される有機カチオン、および周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンの合計モル量の割合が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましい。また、本発明に用いるペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト化合物を構成するアニオンの総モル量に対し、ハロゲン原子のアニオンの合計モル量の割合が、90〜100モル%であることが好ましく、95〜100モル%であることがより好ましく、98〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0107】
光吸収剤の使用量は、多孔質層12またはブロッキング層14の表面のうち光が入射する表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
【0108】
感光層13中、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常は1〜100質量%である。
【0109】
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、第一電極と第二電極との間に正孔輸送層3を有することが好ましい。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層である。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
【0110】
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、特に限定されないが、CuI、CuNCS等の無機材料、および、特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
【0111】
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。
【0112】
本発明において、多孔質層12を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.1〜200μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、0.2〜5μmがさらに好ましい。
【0113】
<電子輸送層4>
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、感光層13Cと第二電極2との間に電子輸送層4を有している。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、および、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
【0114】
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
【0115】
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料および伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
【0116】
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
【0117】
<その他の構成>
本発明では、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14等に代えて、または、ブロッキング層14等とともに、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
【0118】
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば
図1〜
図5に示されるように、外部回路6を設けて構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)および第二電極2に接続される外部回路は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
【0119】
<<光電変換素子および太陽電池の製造方法>>
本発明の光電変換素子および太陽電池は、公知の製造方法、例えば非特許文献1等に記載の方法に準拠して、製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
【0120】
導電性支持体11の表面に、所望により、ブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも一つを形成する。
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質またはその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法またはスプレー熱分解法等によって、形成できる。
【0121】
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面またはブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
【0122】
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚および塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m
2当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
【0123】
電子輸送層15または正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3または電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
【0124】
次いで、感光層13を設ける。
感光層13を設ける方法は、湿式法および乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、吸収剤を含有する光吸収剤溶液に接触させる方法が好ましい。この方法においては、まず、感光層13を形成するための光吸収剤溶液を調製する。光吸収剤溶液は、上記ペロブスカイト化合物の原料であるMX
2とAXとを含有する。ここで、A、MおよびXは上記式(I)のA、MおよびXと同義である。この光吸収剤溶液において、MX
2とAXとのモル比は目的に応じて適宜に調整される。光吸収剤としてペロブスカイト化合物を形成する場合、AXとMX
2とのモル比は、1:1〜10:1であることが好ましい。この光吸収剤溶液は、AXとMX
2とを所定のモル比で混合した後に好ましくは加熱することにより、調製できる。この形成液は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、60〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒または分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤溶液を、その表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16のいずれかの層)の表面に接触させる。具体的には、光吸収剤溶液を塗布または浸漬することが好ましい。これにより、ペロブスカイト化合物が多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16の表面に形成される。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤溶液を乾燥させる場合、上記乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
さらに、上記AXを含有するAX溶液と、上記MX
2を含有するMX
2溶液とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法も挙げられる。この方法では、いずれの溶液を先に塗布してもよいが、好ましくはMX
2溶液を先に塗布する。この方法におけAXとMX
2とのモル比、塗布条件および乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX溶液および上記MX
2溶液の塗布に代えて、AXまたはMX
2を、蒸着させることもできる。
さらに他の方法として、上記光吸収剤溶液の溶剤を除去した化合物または混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記AXおよび上記MX
2を、同時または順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これにより、光吸収剤が形成され、感光層13となる。
【0125】
このようにして設けられた感光層13上に、好ましくは、正孔輸送層3または電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、および多孔質層12を有しかつ空隙がある場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.01〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
【0126】
正孔輸送層3または電子輸送層4を形成した後に、第二電極2を形成して、光電変換素子および太陽電池が製造される。
【0127】
各層の膜厚は、各分散液または溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13Bおよび13Cを設ける場合には、光吸収剤溶液を複数回塗布、乾燥すればよい。
【0128】
上述の各分散液および溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0129】
光電変換素子および太陽電池の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、スルフィド溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)もしくはジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
【0130】
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート、スクリーン印刷、浸漬法等が好ましい。
【0131】
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1および第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
【0132】
<<組成物>>
本発明の組成物は、下記式(1a)で表される化合物と、ハロゲン化金属とを含有してなる。
R
13Si−L−NR
23Hal 式(1a)
式中、R
1、R
2およびLは、それぞれ上記式(1)におけるR
1、R
2およびLと同義であり、好ましい形態も同じである。Halはハロゲン原子(好ましくはヨウ素原子、塩素原子、または臭素原子)を示す。
本発明の組成物は、上記式(1a)で表される化合物を1種含むものであってもよく、2種以上含んでもよい。
【0133】
本発明の組成物に含まれる上記ハロゲン化金属としては、上述した、本発明に用いるペロブスカイト化合物が有する、周期表第一族元素以外の金属原子Mのハロゲン化物(すなわち、M(Hal)
2で表される化合物、Halはハロゲン原子を示す。)を挙げることができ、より好ましくはPbのハロゲン化物およびSnのハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPbのヨウ素化物もしくは塩素化物、およびSnのヨウ素化物もしくは塩素化物から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはPbI
2およびSnI
2から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の組成物は、固形(紛体、粒状等)であってもよく、溶液であってもよい。本発明の組成物が溶液である場合、用いる媒体としては有機溶媒が好ましい。この有機溶媒に特に制限はなく、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、またはこれらのうち2種以上の溶媒の混合溶媒が挙げられる。本発明の組成物に用いうる有機溶媒は、より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒である。
【0134】
本発明の組成物は、上記式(1a)で表される化合物とハロゲン化金属の他に、さらに他の成分を含んでもよい。本発明の組成物は、この他の成分として、R
A−NH
3Halで表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい(R
Aは上記式(2)におけるR
Aと同義であり、好ましい形態も同じである。Halはハロゲン原子を示し、好ましくはヨウ素原子、塩素原子または臭素原子である)。R
A−NH
3Halは、CH
3NH
3HalまたはCH
3CH
2NH
3Halであることがより好ましい。
【0135】
本発明の組成物中、上記式(1a)で表される化合物の含有量aとハロゲン化金属の含有量bのモル比は、0.001≦a/b≦10が好ましく、0.01≦a/b≦10がより好ましく、0.01≦a/b≦3がさらに好ましい。
また、本発明の組成物がR
A−NH
3Halを含有する場合、本発明の組成物中、上記式(1a)で表される化合物の含有量aとR
A−NH
3Halの含有量cのモル比は、4≦c/a≦999が好ましく、19≦c/a≦499がより好ましく、49≦c/a≦199が特に好ましい。
【0136】
また、本発明の組成物が、上記式(1a)で表される化合物と上記R
A−NH
3Halとを含有する場合、本発明の組成物中、ハロゲン化金属の含有量bと、上記式(1a)で表される化合物の含有量aと上記R
A−NH
3Halの含有量cとの合計のモル比は、1≦(a+c)/b≦10が好ましく、1≦(a+c)/b≦5がより好ましい。
【0137】
また、本発明の組成物は、上記他の成分として、周期表第一族元素のハロゲン化物を含有してもよい。
【0138】
本発明の組成物は、本発明の光電変換素子の感光層の形成において、上述したMX
2とAXの供給源として好適に用いることができる。本発明の組成物が紛体、粒状等である場合、本発明の組成物を溶媒に溶解して適切な濃度の溶液を調製し、必要によりろ過、精製等を実施した後、上述した光吸収剤溶液として用いることができる。また、本発明の組成物が溶液である場合には、そのまま、あるいは濃縮、希釈、ろ過、精製等した後、上述した光吸収剤溶液として用いることができる。
すなわち本発明の組成物は、本発明の光電変換素子の製造において、感光層の形成に好適に用いることができる。
【0139】
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0140】
実施例、比較例
[光電変換素子(試料No.101)の製造]
以下に示す手順により、
図1に示される光電変換素子10Aを製造した。なお、感光層13の膜厚が大きい場合は、
図2に示される光電変換素子10Bに対応することになる。
【0141】
<導電性支持体11の作製>
ガラス基板(支持体11a、厚さ2.2mm)上にフッ素ドープされたSnO
2導電膜(透明電極11b)を形成し、導電性支持体11を作製した。
【0142】
<ブロッキング層用溶液の調製>
チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02Mのブロッキング層用溶液を調製した。
【0143】
<ブロッキング層14の形成>
調製した0.02Mのブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、導電性支持体11のSnO
2導電膜上に酸化チタンからなるブロッキング層14(膜厚50nm)を形成した。
【0144】
<酸化チタンペーストの調製>
酸化チタン(アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸およびテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
【0145】
<多孔質層12の形成>
調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成した。この酸化チタンペーストの塗布および焼成を再度繰り返した。なお、1回目の焼成を130℃で1時間行い、2回目の焼成を500℃で1時間行った。得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl
4水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、TiO
2からなる多孔質層12(膜厚250nm)を形成した。
【0146】
<感光層13Aの形成>
(CH
3NH
3Iの合成)
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と、57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CH
3NH
3Iの粗体を得た。得られたCH
3NH
3Iの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CH
3NH
3Iを得た。
(化合物(a1)の合成)
下記合成スキームに示すように、化合物(a1)を合成した。
【0147】
【化7】
(化合物(a2)の合成)
上記で合成した化合物(a1)の10%エタノール溶液(117g)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(23g)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮により溶媒を除去した後、さらに60℃で24時間減圧乾燥し下記化合物(a2)を得た。
(光吸収剤溶液Aの調製)
次いで、精製CH
3NH
3Iと化合物(a2)とPbI
2を、モル比で99.8:0.2:50とし、ジメチルホルムアミド(DMF)中、60℃で12時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Aを調製した。
【0148】
調製した光吸収剤溶液Aをスピンコート法(2000rpmで60秒)により多孔質層12の上に塗布し、塗布した光吸収剤溶液Aをホットプレートにより100℃で90分間乾燥して、ペロブスカイト化合物を有する感光層13Aとしての感光層A(膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む))を形成した。
このようにして、第一電極1を作製した。
【0149】
<正孔輸送材料溶液の調製>
正孔輸送材料としてのSpiro−OMeTAD(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液(37.5μL)と、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合し、正孔輸送材料溶液を調製した。
【0150】
<正孔輸送層3の形成>
次いで、正孔輸送材料溶液を、スピンコート法により、第一電極1の感光層13上に塗布し、塗布した正孔輸送材料溶液を乾燥して、正孔輸送層3(膜厚0.1μm)を形成した。
【0151】
<第二電極2の作製>
蒸着法により金(膜厚0.1μm)を正孔輸送層3上に蒸着して、第二電極2を作製した。
このようにして、試料No.101の光電変換素子10を製造した。
【0152】
[光電変換素子(試料No.102〜104)の製造]
上述した試料No.101の光電変換素子の製造における、<感光層13Aの形成>において、精製CH
3NH
3Iと化合物(a2)との混合モル比を下表に示すとおりに変更したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.102〜104の光電変換素子10を製造した。なお、精製CH
3NH
3Iと化合物(a2)の総量と、PbI
2との混合モル比は、試料No.101の製造と同様に2:1とした。
【0153】
[光電変換素子(試料No.105)の製造]
上述した試料No.101の光電変換素子の製造における、<感光層13Aの形成>において、メチルアミンをエチルアミンに変更し、且つ、精製CH
3CH
2NH
3Iと化合物(a2)とPbI
2のモル比を98:2:50としたこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.105の光電変換素子10を製造した。
【0154】
[光電変換素子(試料No.106〜133)の製造]
上述した試料No.101の光電変換素子の製造における、<感光層13Aの形成>において、化合物(a1)に代えて化合物(b1)、(g1)、(s1)、(w1)、(x1)、(y1)、(z1)、(aa1)、(bb1)、(cc1)または(dd1)を用いることにより、下記化合物(b2)、(g2)、(s2)、(w2)、(x2)、(y2)、(z2)、(aa2)、(bb2)、(cc2)または(dd2)をそれぞれ得、これらの化合物と精製CH
3NH
3Iとの混合モル比を下表に示すとおりとしたこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.106〜133の各光電変換素子10を製造した。なお、精製CH
3NH
3Iと化合物(b2)、(g2)、(s2)、(w2)、(x2)、(y2)、(z2)、(aa2)、(bb2)、(cc2)または(dd2)との総量と、PbI
2との混合モル比は、試料No.101の製造と同様に2:1とした。
【0155】
【化8】
【0156】
【化9】
【0157】
[光電変換素子(試料No.201)の製造]
上述した試料No.101の光電変換素子の製造における<感光層13Aの形成>を下記の通りとしたこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.201の光電変換素子10を製造した。
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CH
3NH
3Iの粗体を得た。得られたCH
3NH
3Iの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CH
3NH
3Iを得た。
次いで、精製CH
3NH
3IとPbI
2を、モル比で2:1とし、γ−ブチロラクトン中、60℃で12時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Bを調製した。
【0158】
調製した光吸収剤溶液Bをスピンコート法(2000rpmで60秒、続けて3000rpmで60秒)により多孔質層12の上に塗布し、塗布した光吸収剤溶液Bをホットプレートにより100℃で40分間乾燥して、ペロブスカイト化合物を有する感光層13Aとしての感光層A(膜厚600nm(多孔質層12の膜厚500nmを含む))を形成した。
【0159】
[光電変換素子(試料No.202)の製造]
上述した試料No.201の光電変換素子の製造における、<感光層13Aの形成>において、メチルアミンを、メチルアミンとエチルアミンの混合物(メチルアミン/エチルアミン=9(モル比)とし、光吸収剤溶液Bの調製に際して、CH
3NH
3I:CH
3CH
2NH
3I:PbI
2=1.8:0.2:1(モル比)として混合したこと以外は、試料No.201の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.202の光電変換素子10を製造した。
【0160】
[耐湿性の評価]
<初期の光電変換効率の測定>
光電変換効率を以下のようにして評価した。
各試料No.の光電変換素子を3検体ずつ製造した。3検体それぞれについて、電池特性試験を行って、光電変換効率(η/%)を測定した。そして、それら3検体の平均値を各試料No.の光電変換素子の初期の光電変換効率(η/%)とした。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/m
2の擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η/%)を求めた。
【0161】
<耐湿性の評価>
光電変換素子の耐湿性を以下のようにして評価した。
各試料No.の3検体それぞれを、温度25℃、湿度60%RHの恒温恒湿槽に24時間保存してから、上記と同様にして電池特性試験を行って、光電変換効率(η/%)を測定した。3検体の平均値を各試料No.の光電変換素子の、保存後の光電変換効率(η/%)とした。
光電変換素子の耐湿性は、下記式によって算出される光電変換効率の低下率から下記評価基準に沿って評価した。
低下率(%)=100−{100×(保存後の光電変換効率)/(初期の光電変換効率)}
− 耐湿性評価基準 −
A: 低下率が25%未満
B: 低下率が25%以上29%未満
C: 低下率が29%以上33%未満
D: 低下率が33%以上37%未満
E: 低下率が37%以上
耐湿性評価基準において、〔A〕、〔B〕、〔C〕、および〔D〕が合格レベルであり、好ましくは〔A〕、〔B〕、および〔C〕であり、より好ましくは〔A〕である。一方、〔E〕は低下率が大きく、本発明の合格レベル(要求レベル)に到達しない。
結果を下記表1に示す。
なお、下記表1に示される[A2]/[A1]は、ペロブスカイト化合物を構成するシリル基を有する有機カチオンに対するシリル基を有しない有機カチオンのモル比に相当する。
【0162】
【表1】
【0163】
上記表1に示されるように、光吸収剤中のペロブスカイト化合物が、その結晶構造中にシリル基を有する有機カチオンを含まない場合、光電変換素子は、高湿条件下において光電変換効率が大きく低下する結果となった。
これに対し、光吸収剤中のペロブスカイト化合物が、その結晶構造中にシリル基を有する有機カチオンを含む場合、光電変換素子は上記高湿条件下においても光電変換効率が低下しにくく、耐湿性に優れることがわかった。
【0164】
以上の結果から、本発明の光電変換素子ないし太陽電池が、優れた耐湿性を示すことがわかる。
【0165】
本発明をその実施態様および図面とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0166】
本願は、2015年3月6日に日本国で特許出願された特願2015−045167および2016年1月22日に日本国で特許出願された特願2016−010695に基づく優先権を主張するものであり、これらはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。