(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る成膜装置は、第1の成膜ユニットと、第2の成膜ユニットと、第1の排気ユニットと、第2の排気ユニットとを具備する。
上記第1の成膜ユニットは、第1の成膜源を有する第1の処理室と、成膜すべき基材を支持可能な第1の支持体を有し上記第1の処理室を密閉可能な第1の扉と、を含む。
上記第2の成膜ユニットは、第2の成膜源を有する第2の処理室と、成膜すべき基材を支持可能な第2の支持体を有し上記第2の処理室を密閉可能な第2の扉と、を含む。
上記第1の排気ユニットは、第1の真空ポンプを有し、上記第1の処理室及び上記第2の処理室のいずれか一方を真空排気可能に構成される。
上記第2の排気ユニットは、上記第1の真空ポンプよりも到達真空度が高い第2の真空ポンプを有し、上記第1の処理室及び上記第2の処理室のいずれか一方を真空排気可能に構成される。
【0011】
上記成膜装置は、第1の処理室だけでなく、第2の処理室をも有する。このため、第1の処理室で基材の成膜処理をしている間に、第2の処理室で成膜された基材の搬出作業あるいは第2の処理室への基材の搬入作業を行うことが可能となる。これにより、装置の稼働率を高めて生産性の向上を図れることになる。
【0012】
また上記成膜装置は、第1の排気ユニットによって第1及び第2の処理室を粗引き排気し、第2の排気ユニットによって第1及び第2の処理室を高真空排気するように構成されている。このため、第1及び第2の排気ユニットを連動させて運転させながら第1及び第2の処理室内に交互に成膜雰囲気を形成することが可能となる。これにより処理室の増設に伴う真空ポンプの数の増加を抑えることができるとともに、装置の小型化を実現することができる。
【0013】
さらに第1及び第2の処理室でそれぞれ異なる成膜処理を実施できるため、多品種少量生産の要請にも十分に対応することが可能となる。
【0014】
上記成膜装置は、上記第1の排気ユニット及び上記第2の排気ユニットを制御可能なコントローラとをさらに具備してもよい。この場合、上記コントローラは、上記第1の処理室及び上記第2の処理室のうち一方の処理室が開放されているときは、他方の処理室を上記第2の排気ユニットによって排気させ、上記一方の処理室が密閉されたときは、上記一方の処理室を上記第1の排気ユニットによって排気させる。
これにより第2の排気ユニットが連続して運転可能となるため、成膜処理の効率が高まり、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0015】
第1の成膜源及び第2の成膜源の構成は特に限定されず、典型的には、蒸着材料を蒸発させることが可能な蒸発源を含む。これに代えて又はこれに加えて、プラズマCVDあるいはプラズマ重合のための電極や、スパッタ成膜のためのターゲットが用いられてもよい。第1及び第2の成膜源は、同一の成膜源で構成されてもよいし、異なる成膜源で構成されてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る成膜方法は、第1の処理室を第1の真空ポンプで大気圧から第1の圧力まで排気することを含む。
上記第1の処理室は、第2の真空ポンプで上記第1の圧力から、上記第1の圧力よりも低い第2の圧力までさらに排気される。
第2の処理室は、上記第1の真空ポンプで大気圧から第3の圧力まで排気される。
上記第1の処理室に収容された基材を上記第2の圧力で成膜した後、上記第1の処理室は、大気圧にベントされる。
上記第2の処理室は、上記第2の真空ポンプで上記第3の圧力から、上記第3の圧力よりも低い第4の圧力までさらに排気される。
上記第2の処理室に収容された基材を上記第4の圧力で成膜した後、上記第2の処理室は、大気圧にベントされる。
【0017】
上記成膜方法においては、第1の処理室で基材の成膜処理をしている間に、第2の処理室で成膜された基材の搬出作業あるいは第2の処理室への基材の搬入作業を行うことが可能となる。これにより、装置の稼働率を高めて生産性の向上を図れることになる。また、第1及び第2の排気ユニットを連動させて運転させるようにしているため、処理室の増設に伴う真空ポンプの数の増加を抑えつつ、第1及び第2の処理室内に交互に成膜雰囲気を形成することが可能となる。
【0018】
上記第1〜第4の圧力は、成膜方法や成膜条件等に応じて適宜設定することが可能である。例えば、第1の圧力と第3の圧力、及び、第2の圧力と第4の圧力はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。前者の場合は、第1及び第2の処理室で同一の成膜処理を実施できるため、生産性の向上を図ることができる。一方、後者の場合は、第1及び第2の処理室で異なる成膜処理を実施できるため、多品種少量生産の要請に応えることができる。
【0019】
上記第1の処理室が上記第2の真空ポンプで排気されている間に、上記第2の処理室は上記第1の真空ポンプによって大気圧から上記第3の圧力に排気されてもよい。この場合、上記第2の処理室が上記第2の真空ポンプで排気されている間に、上記第1の処理室は上記第1の真空ポンプによって大気圧から上記第1の圧力に排気される。
これにより2つの処理室を効率よく所定の成膜圧力にまで排気することが可能となる。
【0020】
典型的には、上記第1の処理室が上記第1の圧力に排気されている間は、上記第2の処理室は上記第3の圧力に排気されず、上記第1の処理室が上記第2の圧力に排気されている間は、上記第2の処理室は上記第4の圧力に排気されない。
上記のように一台の真空ポンプで2つの処理室を同時に排気しないようにすることで、各処理室を効率よく所定の成膜圧力へ排気することが可能となる。
【0021】
上記第1の処理室及び上記第2の処理室は、大気圧にベントされている間、それぞれに設けられた扉が開放可能とされる。これにより成膜された前記基材の交換が可能となる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[成膜装置の構成]
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置の全体を概略的に示す斜視図、
図2は上記成膜装置の一方の扉が開放された状態を示す斜視図、
図3は上記成膜装置の正面図、
図4は上記成膜装置の内部構成を概略的に示す部分破断平面図である。
各図においてX軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する3軸方向を示しており、X軸及びY軸は水平方向を示している。
【0024】
本実施形態の成膜装置100は、バッチ式の成膜装置として構成され、第1の成膜ユニット21と、第2の成膜ユニット22とを有する。第1及び第2の成膜ユニット21,22は、本体10の内部に区画された第1及び第2の処理室31,32と、本体10に対して開閉可能に取り付けられた第1及び第2の扉11,12とをそれぞれ有する。
【0025】
本体10は、金属材料で構成され、略直方体形状を有し、基台10sの上に設置されている。基台10sは、本体10の底部と一体的に形成されてもよいし、本体10とは別に構成された単独の部材であってもよい。第1及び第2の扉11,12は、それぞれ金属材料で構成され、本体10の前面パネル10FにX軸方向に相互に隣接して配置されている。
【0026】
第1の扉11は、右側縁部に取り付けられたヒンジ11aを介して前面パネル10Fに固定され、左側縁部に設けられた把持部11bを操作することでZ軸に平行な軸まわりに回動するように構成されている。第2の扉12は第1の扉と軸対称に構成され、左側縁部に取り付けられたヒンジ11aを介して前面パネル10Fに固定され、右側縁部に設けられた把持部12bを操作することでZ軸に平行な軸まわりに回動するように構成されている。第1及び第2の扉11,12は相互に独立して開閉可能であるとともに(
図2参照)、観音開きの態様で両扉11,12が開放可能に構成される。
【0027】
第1及び第2の処理室31,32は、本体10の内部に形成される。第1及び第2の処理室31,32は相互に分離して形成されており、本体10の前面パネル10Fを介して装置外部へそれぞれ露出される。前面パネル10Fに対向する第1及び第2の扉11,12の内面には環状のシール部材がそれぞれ装着されており、第1の処理室31は第1の扉11によって密閉可能に構成され、第2の処理室32は第2の扉12によって密閉可能に構成される。
【0028】
第1及び第2の処理室31,32は、第1及び第2の成膜源310,320をそれぞれ有する(
図4)。成膜源310,320としては、真空蒸着のための蒸発源、プラズマCVDあるいはプラズマ重合のための電極、スパッタ成膜のためのターゲット(スパッタカソード)、各種プロセスガス(不活性ガスや反応性ガス)の導入ライン等が該当する。
【0029】
第1及び第2の成膜源310,320は各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。成膜源310,320が同一の場合、各処理室31,32で同一製品の成膜を行うことができるため、生産性の向上を図ることができる。一方、成膜源310,320が異なる場合、各処理室31,32で異なる製品の成膜を行うことができるため、例えば多品種少量生産に好適となる。
【0030】
第1及び第2の扉11,12は、処理室31,32へ装填されるワーク(基材)を支持する第1及び第2の支持体110,120をそれぞれ有する(
図2、
図4)。第1及び第2の支持体110,120はそれぞれ同一の構成を有している。
【0031】
第1の支持体110は、
図2に示すように、天板部111と、底板部112と、複数の軸部113とを有する。天板部111及び底板部112は、それぞれ同一径の円盤形状を有する。複数の軸部113は、天板部111と底板部112との間に接続され、天板部111及び底板部112の周囲に等角度間隔で配置されている。複数の軸部113各々には、それらの軸方向に沿って複数のワーク(基材)を支持するための複数の係止具が所定の間隔をおいて設けられている。
【0032】
第1及び第2の支持体110,120は、第1及び第2の扉11,12にそれぞれZ軸に平行な軸まわりに回転可能に取り付けられている。本実施形態では、天板部111及び底板部112を回転可能に支持する支持アーム114を介して、第1及び第2の支持体110,120が第1及び第2の扉11,12にそれぞれ取り付けられている(
図2)。
【0033】
第1及び第2の支持体110,120は、第1及び第2の扉11,12と一体的にヒンジ11a,12aのまわりに回動し、第1及び第2の扉11,12の閉操作によって第1及び第2の処理室31,32へそれぞれ装填される。また第1及び第2の支持体110,120は、第1及び第2の扉11,12の開操作によって第1及び第2の処理室31,32から排出される。
【0034】
本実施形態において、第1及び第2の扉11,12の前面には、前方側へ突出する部分円筒形状の膨出部11c,12cが設けられている。第1及び第2の支持体110,120は、膨出部11c,12cの内部に一部が収容されるようにして、第1及び第2の扉11,12にそれぞれ取り付けられている。したがって第1及び第2の扉11,12が閉じられたとき、膨出部11c,12cの内部空間は、第1及び第2の処理室31,32の一部として機能する。
【0035】
第1及び第2の支持体110,120は、第1及び第2の処理室31,32において回転駆動される。駆動源は、第1及び第2の扉11,12に設置されてもよいし、第1及び第2の処理室31,32内に設置されてもよい。本実施形態では、第1及び第2の処理室31,32の底面に第1及び第2の支持体110,120の底板部112と係合可能な駆動軸が設けられている。当該駆動軸は、第1及び第2の扉11,12の閉塞時に底板部112と係合するように構成され、第1及び第2の扉11,12の開放時に底板部112との係合が解除されるように構成される。
【0036】
ワークの種類は特に限定されず、基板等の平面形状のものであってもよいし、曲面等を有する立体形状のものであってもよい。本実施形態によれば、第1及び第2の支持体110,120が第1及び第2の処理室31,32において回転可能に構成されているため、複数のワークを高い均一性をもって成膜することができる。また、成膜処理は単一の膜形成に限られず、成膜方法や成膜材料が異なる複数種の薄膜の積層処理を伴ってもよい。
【0037】
成膜装置100は、排気装置40をさらに有する(
図4)。排気装置40は、本体10の内部に設置される。排気装置40は、第1及び第2の処理室31,32を大気圧から所定の真空雰囲気(真空圧)に排気することが可能に構成される。排気装置40は、第1の排気ユニット41と、第2の排気ユニット42とを有する。
【0038】
第1の排気ユニット41は、第1の真空ポンプP1を有し、第1の処理室31及び第2の処理室32のいずれか一方を真空排気可能に構成される。第2の排気ユニット42は、第1の真空ポンプP1よりも到達真空度が高い第2の真空ポンプP2を有し、第1の処理室31及び第2の処理室32のいずれか一方を真空排気可能に構成される。
【0039】
第1の真空ポンプP1は、例えばロータリポンプ(油回転真空ポンプ)等のような低・中真空排気用ポンプで構成される。一方、第2の真空ポンプP2は、例えばターボ分子ポンプ、油拡散ポンプ、クライオポンプ等のような高真空排気用ポンプで構成される。第1及び第2の真空ポンプP1,P2はそれぞれ、単一のポンプで構成されてもよいし、複数のポンプを組み合わせた複合ポンプで構成されてもよい。
【0040】
図4に示すように、第1の排気ユニット41は、第1の処理室31と第1の真空ポンプP1との間に配置された開閉弁V11と、第2の処理室32と第1の真空ポンプP1との間に配置された開閉弁V12とを有する。一方、第2の排気ユニット42は、第1の処理室31と第2の真空ポンプP2との間に配置された開閉弁V21と、第2の処理室32と第2の真空ポンプP2との間に配置された開閉弁V22とを有する。開閉弁V11,V12,V21,V22は、典型的には、ON/OFF弁で構成される。
【0041】
成膜装置100は、第1の排気ユニット41及び第2の排気ユニット42を制御可能なコントローラ50をさらに有する。コントローラ50は、本体10の内部に設置される。コントローラ50は、第1の処理室31及び第2の処理室32のうち一方の処理室が開放されているときは、他方の処理室を第2の排気ユニット42によって排気させ、上記一方の処理室が密閉されたときは、上記一方の処理室を第1の排気ユニット41によって排気させる。
【0042】
コントローラ50は、CPU/MPU、ROM、RAM等を有するコンピュータで構成され、ROM等にあらかじめ格納された制御プラグラムに基づいて、成膜装置100全体の制御、例えば、第1及び第2の真空ポンプP1,P2の駆動、第1及び第2の成膜源310,320の駆動、開閉弁V11,V12,V21,V22の開閉、第1及び第2の処理室31,32のベント処理等を個別に制御する。
【0043】
成膜装置100はさらに、第1及び第2の処理室31,32の圧力をそれぞれ検出するための圧力センサ61,62を有し、これら圧力センサ61,62の出力がコントローラ50へ入力されるように構成されている。さらに第1及び第2の処理室31,32には、内部を大気圧に戻すためのベントバルブがそれぞれ設けられている。当該ベントバルブは、コントローラ50により開閉制御可能に構成される。
【0044】
[成膜装置の動作]
次に、本実施形態の成膜装置100の典型的な動作を説明する。
図5A〜
図5Dは、成膜装置100の動作を説明する概略工程図である。
【0045】
なお各図において、開閉弁V11,V12,V21,V22の各々に付した「ON」及び「OFF」の表記は、当該弁の開閉状態を示しており、「ON」は「開」を、「OFF」は「閉」をそれぞれ示している。また第1及び第2の真空ポンプP1,P2は常時駆動されているものとする。
【0046】
図5Aは、第1の処理室31が大気状態、第2の処理室32が高真空状態にあることを示している。開閉弁V22は「ON」状態、開閉弁V11,V12,V21はそれぞれ「OFF」状態にある。
【0047】
第1の扉11は開放され、第1の処理室31は大気にベントされている。その間、作業者又は移載ロボットにより、第1の支持体110に成膜するべき複数のワーク(基材)がセットされる。作業終了後、第1の扉11が閉塞され、第1の支持体110が第1の収容室31に収容される。
【0048】
一方、第2の処理室32は第2の扉12により密閉されており、成膜するべき複数のワークがセットされた第2の支持体120を収容している。そして第2の処理室32は、開閉弁V22を介して第2の真空ポンプP2(第2の排気ユニット)により所定の成膜圧力(例えば、6×10
−3Pa)にまで排気される。
【0049】
図5Bは、第1の処理室31が低真空状態、第2の処理室32が成膜処理中の状態にあることを示している。開閉弁V11,V22はそれぞれ「ON」状態、開閉弁V12,V21はそれぞれ「OFF」状態にある。
【0050】
第1の処理室31は、第2の処理室32が第2の真空ポンプP2(第2の排気ユニット42)で排気されている間に、開閉弁V11を介して第1の真空ポンプP1(第1の排気ユニット41)によって大気圧から第1の圧力(例えば、10Pa)にまで粗引き排気される。第1の処理室31が上記第1の圧力に達したときは、開閉弁V11は「OFF」状態に、開閉弁V21は「ON」状態にそれぞれ切り替えられる(
図5C参照)。
【0051】
ここで、開閉弁V11は、第1の扉11が閉塞された後に「OFF」状態から「ON」状態へ切り替えられる。当該開閉弁の状態変化は、作業者による処理開始入力操作や、第1の扉11の閉塞状態を検出する扉スイッチの出力等に基づいて、コントローラ50によって実行される。また、上述の開閉弁V11,V21の状態変化は、圧力センサ61の出力に基づいて第1の処理室31が上記第1の圧力に達したことをコントローラ50が検出した後に、コントローラ50により実行される。
【0052】
一方、第2の処理室32においては、第2の支持体120に支持された複数のワークに対して所定の成膜処理が実施される。成膜処理は、圧力センサ62の出力に基づいて第2の処理室32が上記成膜圧力に達したことをコントローラ50が検出した後に実行される。成膜処理は、コントローラ50により制御され、第2の支持体120をその軸心のまわりに一定速度で回転させながら、第2の成膜源320を駆動する。
【0053】
成膜処理が所定時間実施された後、コントローラ50は、開閉弁V22を「ON」状態から「OFF」状態へ切り替え、第2の処理室32を大気にベントする処理を実行する。
【0054】
図5Cは、第1の処理室31が高真空状態、第2の処理室32が大気状態にあることを示している。開閉弁V21は「ON」状態、開閉弁V11,V12,V22はそれぞれ「OFF」状態にある。
【0055】
第1の処理室31は、開閉弁V21を介して第2の真空ポンプP2(第2の排気ユニット)により、上記第1の圧力よりも低い第2の圧力(上記成膜圧力に相当)にまでさらに排気される。第1の処理室31が第2の圧力に達した後、第1の支持体110に支持された複数のワークに対して成膜処理が実施される。
【0056】
一方、第2の処理室32においては、成膜処理が終了し、大気圧にベントされた状態で、第2の扉12が開放される。そして、作業者又は移載ロボットによって、第2の支持体120から成膜済のワークと未処理のワークが入れ替えられる。第2の支持体120に対するワークの入れ替えが完了した後、第2の扉12が閉塞される。
【0057】
図5Dは、第1の処理室31が成膜処理中の状態、第2の処理室32が低真空状態にあることを示している。開閉弁V21,V12はそれぞれ「ON」状態、開閉弁V11,V22はそれぞれ「OFF」状態にある。
【0058】
第1の処理室31においては、第1の支持体110に支持された複数のワークに対して所定の成膜処理が実施される。成膜処理は、圧力センサ61の出力に基づいて第1の処理室31が上記成膜圧力に達したことをコントローラ50が検出した後に実行される。成膜処理は、コントローラ50により制御され、第1の支持体110をその軸心のまわりに一定速度で回転させながら、第1の成膜源310を駆動する。
【0059】
成膜処理が所定時間実施された後、コントローラ50は、開閉弁V21を「ON」状態から「OFF」状態へ切り替え、第1の処理室31を大気にベントする処理を実行する。
【0060】
一方、第2の処理室32は、第1の処理室31が第2の真空ポンプP2(第2の排気ユニット42)で排気されている間に、開閉弁V12を介して第1の真空ポンプP1(第1の排気ユニット41)によって大気圧から第3の圧力(例えば、10Pa)にまで粗引き排気される。第2の処理室32が上記第3の圧力に達したときは、開閉弁V12は「OFF」状態に、開閉弁V22は「ON」状態にそれぞれ切り替えられ、上記第3の圧力よりも低い第4の圧力(上記成膜圧力に相当)までさらに排気される(
図5A参照)。
【0061】
ここで、開閉弁V12は、第2の扉12が閉塞された後に「OFF」状態から「ON」状態へ切り替えられる。当該開閉弁の状態変化は、作業者による処理開始入力操作や、第2の扉12の閉塞状態を検出する扉スイッチの出力等に基づいて、コントローラ50によって実行される。また、上述の開閉弁V12,V22の状態変化は、圧力センサ62の出力に基づいて第2の処理室32が第3の圧力に達したことをコントローラ50が検出した後に、コントローラにより実行される。
【0062】
以上の動作を繰り返し実行することにより、第1の処理室31及び第2の処理室32において交互に成膜処理が実施される。
【0063】
本実施形態によれば、第1の処理室31でワーク(基材)の成膜処理をしている間に、第2の処理室32で成膜されたワークの搬出作業あるいは第2の処理室32へのワークの搬入作業を行うことが可能となる。これにより、装置の稼働率を高めて生産性の向上を図れることになる。
【0064】
また、第1及び第2の扉11,12の開閉操作によって、各処理室31,32へ複数のワークを一括的に装填できるとともに、各処理室31,32から一括的に複数のワークを排出することができる。これによりバッチ処理の効率化を図ることができ、生産性の向上に大きく貢献することが可能となる。
【0065】
また、第1の排気ユニット41によって第1及び第2の処理室31,32を粗引き排気し、第2の排気ユニット42によって第1及び第2の処理室31,32を高真空排気するように構成されている。このため、第1及び第2の排気ユニット41,42を連動させて運転させながら第1及び第2の処理室31,32内に交互に成膜雰囲気を形成することが可能となる。これにより処理室の増設に伴う真空ポンプの数の増加を抑えることができるとともに、装置の小型化を実現することができる。
【0066】
この際、第1の処理室31が上記第1の圧力に排気されている間は、第2の処理室32は上記第3の圧力に排気されず、第1の処理室31が上記第2の圧力に排気されている間は、第2の処理室32は上記第4の圧力に排気されない。このように一台の真空ポンプで2つの処理室を同時に排気しないようにすることで、各処理室を効率よく所定の成膜圧力へ排気することが可能となる。
【0067】
さらに本実施形態においては、第1の処理室31及び第2の処理室32のうち一方の処理室が開放されているときは、他方の処理室は、第2の排気ユニット42によって排気され、上記一方の処理室が密閉されたときは、上記一方の処理室は、第1の排気ユニット41によって排気される。これにより第2の排気ユニット42が連続して運転可能となるため、成膜処理の効率が高まり、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0068】
さらに本実施形態によれば、第1及び第2の成膜ユニット21,22、第1及び第2の排気ユニット41,42、コントローラ50等が共通の基台10s上に配置されているため、成膜装置の小型化、省スペース化を図ることができる。
【0069】
そして、第1及び第2の排気ユニット41,42は、それぞれ、第1及び第2の処理室31,32のいずれか一方を真空排気可能に構成されているため、第1及び第2の真空ポンプP1,P2は、1つの処理室を排気できるのに十分な性能を有していれば足りる。これにより、第1及び第2の排気ユニット41,42を、排気速度あるいは排気容量の小さい真空ポンプで構成することが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
例えば以上の実施形態では、第1及び第2の処理室31,32において、第1の排気ユニット41から第2の排気ユニット42への切り替えの基準となる圧力(第1の圧力、第3の圧力)と、成膜開始の圧力(第2の圧力、第4の圧力)とをそれぞれ同一の圧力としたが、これに限られない。すなわち、上記第1及び第3の圧力、上記第2及び第4の圧力は、それぞれ相互に異なっていてもよい。これにより各処理室31,32において成膜すべき基材の種類に応じた最適な成膜条件、成膜方法を採択できるため、第1及び第2の処理室31,32でそれぞれ異なる成膜処理を実施でき、例えば、多品種少量生産の要請にも十分に対応することが可能となる。