(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンテナと送信回路のマッチング回路が動体の存在によってインダクタンスが変化するインダクタンスセンサを含んで構成されたm個(m≧1)の送信機を検出対象エリアに散布し、
受信機によって前記m個の送信機から発生する電界強度を送信機ごとに識別しつつ測定し、
m個の電界強度の時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めて、その差分のヒストグラムを作成し、
作成した前記各時系列データの差分ヒストグラムを比較して前記検出対象エリア内の動体の存在有無を判断することを特徴とする動体検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーモグラフィでは炎や噴煙、蒸気など熱源が存在するエリアでは、十分な動体情報を得ることが困難である。また、プラント等で自律移動するロボットが故障やクラッキングにより暴走した状況では、熱を表面に出さないロボットの動きを把握することは困難である。よって、熱感知によらない遠隔からの動体検出装置・方法が望まれていた。
【0006】
この発明はこのような要望に答えるものであって、熱感知によらず、遠隔から検出対象エリア内の動体を検出することができるようにした動体検出装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、動体検出装置は、検出対象エリアに散布されたm個(m≧1)の送信機と、m個の送信機から発生する電界強度を送信機ごとに識別しつつ測定する受信機と、m個の電界強度の時系列データを処理する処理装置とよりなり、送信機におけるアンテナと送信回路のマッチング回路は動体の存在によって静電容量が変化する静電容量センサを含んで構成され、処理装置は時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めてその差分のヒストグラムを作成する差分ヒストグラム作成手段と、作成した各時系列データの差分ヒストグラムを比較して検出対象エリア内の動体の存在有無を判断する判断手段とを備える。
【0008】
請求項2の発明によれば、動体検出装置は、検出対象エリアに散布されたm個(m≧1)の送信機と、m個の送信機から発生する電界強度を送信機ごとに識別しつつ測定する受信機と、m個の電界強度の時系列データを処理する処理装置とよりなり、送信機におけるアンテナと送信回路のマッチング回路は動体の存在によってインダクタンスが変化するインダクタンスセンサを含んで構成され、処理装置は時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めてその差分のヒストグラムを作成する差分ヒストグラム作成手段と、作成した各時系列データの差分ヒストグラムを比較して検出対象エリア内の動体の存在有無を判断する判断手段とを備える。
【0009】
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、判断手段は、各差分ヒストグラムに対し、度数に1を加算した値の対数値に対して求めた回帰直線の度数1の軸との交点の階級値及び当てはまりの良さの指標を算出し、指標が悪い場合には動体が存在すると判断し、指標が悪くない場合には指標の良い階級値のみをしきい値として全てのしきい値の平均値と標準偏差を求め、階級値の中に平均値から標準偏差以上離れた値がある場合、動体が存在すると判断する。
【0010】
請求項4の発明では請求項1乃至3のいずれかの発明において、送信機のケースは正多面体もしくは球体に近い外形形状を有するものとされる。
【0011】
請求項5の発明によれば、動体検出方法は、アンテナと送信回路のマッチング回路が動体の存在によって静電容量が変化する静電容量センサを含んで構成されたm個(m≧1)の送信機を検出対象エリアに散布し、受信機によってm個の送信機から発生する電界強度を送信機ごとに識別しつつ測定し、m個の電界強度の時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めてその差分のヒストグラムを作成し、作成した各時系列データの差分ヒストグラムを比較して検出対象エリア内の動体の存在有無を判断する。
【0012】
請求項6の発明によれば、動体検出方法は、アンテナと送信回路のマッチング回路が動体の存在によってインダクタンスが変化するインダクタンスセンサを含んで構成されたm個(m≧1)の送信機を検出対象エリアに散布し、受信機によってm個の送信機から発生する電界強度を送信機ごとに識別しつつ測定し、m個の電界強度の時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めてその差分のヒストグラムを作成し、作成した各時系列データの差分ヒストグラムを比較して検出対象エリア内の動体の存在有無を判断する。
【0013】
請求項7の発明では請求項5又は6の発明において、動体の存在有無の判断処理は、各差分ヒストグラムに対し、度数に1を加算した値の対数値に対して求めた回帰直線の度数1の軸との交点の階級値及び当てはまりの良さの指標を算出し、指標が悪い場合には動体が存在すると判断し、指標が悪くない場合には指標の良い階級値のみをしきい値として全てのしきい値の平均値と標準偏差を求め、階級値の中に平均値から標準偏差以上離れた値がある場合、動体が存在すると判断する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、送信機におけるアンテナと送信回路のマッチング回路は動体の存在によってインピーダンス整合状態が変化するものとなっており、このインピーダンス整合状態の変化によりアンテナから放射される電磁界は大きく変化するものとなっている。
【0015】
従って、送信機から発生する電界強度を測定することにより、遠隔から検出対象エリア内の動体の存在を検出することができ、かつ検出対象エリアに炎や噴煙、蒸気などの熱源が存在する場合や熱を表面に出さない移動体であっても動体の存在を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0018】
図1はこの発明による動体検出装置の一実施例の構成概要を示したものであり、動体検出装置はm個(m≧1)の送信機20と受信機30と情報送信手段35と処理装置40とによって構成されている。
【0019】
m個の送信機20は検出対象エリア50に散布され、受信機30はm個の送信機20から発生する電界強度を送信機20ごとに識別しつつ測定する。受信機30は情報送信手段35を介して処理装置40に接続されており、処理装置40はm個の電界強度の時系列データを処理して検出対象エリア50内の動体の存在有無を検出する。
【0020】
動体の存在有無の検出対象となる検出対象エリア50は火災や噴煙、倒壊現場など、さらには人質を盾にした立て籠もり現場、自律移動ロボットが暴走したプラント内などであって、送信機20はこのような現場に例えば散弾銃のような出射装置で打ち込むことによって、あるいは空中から投下することによって散布される。
【0021】
送信機20はこのように散布されるため、散布の際の衝撃に耐える強度、さらには耐熱性を有するものとされ、また例えば瓦礫の隙間を転がって落ちて行き易い程度に小さいものとされる。この点で送信機20のケースは正多面体もしくは球体に近い外形形状を有することが好ましい。
【0022】
図2(a)は送信機20の機能構成を示したものであり、送信機20はアンテナ21と、送信回路22と、アンテナ21と送信回路22のマッチング(インピーダンス整合)を担うマッチング回路23とによって構成されている。送信回路22は例えば300MHz帯微弱無線用ICや400MHz帯特定小電力IC等の送受信用システムLSIによって構成され、フラッシュメモリなどのメモリ22aを具備するものとなっている。メモリ22aには送信機20に固有のID情報が保存されている。
【0023】
マッチング回路23はコイル23aと静電容量センサ23bによって構成されている。静電容量センサ23bは物体の存在により物体に反応して静電容量が変化する素子である。例えば、物体が近傍に存在しない状態でアンテナ21と送信回路22はマッチング回路23によってインピーダンス整合が取れているようにする。
【0024】
このような送信機20を用いることにより、例えば送信機20の近傍に人やロボットが存在している場合、さらに人やロボットに動きがある場合、静電容量センサ23bの静電容量が変化し、これによりインピーダンス整合状態が変化する。よって、アンテナ21から放射される電磁界は大きく変化するため、受信機30で測定される電界強度が大きく変化することになる。
【0025】
上述した静電容量センサ23bには例えば下記のURLに記載されているような静電容量センサを用いることができる。
<URL>https://www.semiconportal.com/archive/editorial/technology/chips/120518-startups.html
【0026】
図2(b)は送信機の他の構成例を示したものであり、この
図2(b)に示した送信機20’は
図2(a)に示した送信機20とマッチング回路が異なるものとなっている。送信機20’のマッチング回路24はインダクタンスセンサ24aとコンデンサ24bによって構成されている。インダクタンスセンサ24aは物体の存在により物体に反応してインダクタンスが変化する素子であり、送信機20に替えてこのような構成の送信機20’を用いることもでき、送信機20と同様、人(動体)が近傍に存在すれば、アンテナ21から放射される電磁界は大きく変化する。
【0027】
次に、処理装置40の構成について説明する。
【0028】
処理装置40は入力手段41と設定手段42と情報蓄積手段43と差分ヒストグラム作成手段44と判断手段45と出力手段46と制御手段47とタイマ48とを備えている。
【0029】
受信機30で送信機20ごとに識別しつつ測定された電界強度は入力手段41に入力され、入力された電界強度は情報蓄積手段43に時系列データとして蓄積される。差分ヒストグラム作成手段44は送信機20ごとの時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの差分を順次求めて、求めた差分のヒストグラムを作成する。判断手段45は作成された送信機20ごとの時系列データの差分ヒストグラムを比較して、検出対象エリア50内の動体の存在有無を判断する。
【0030】
検出対象エリア50内の動体検出を開始するにあたり、登録、設定すべき事項は設定手段42によって登録、設定される。判断手段45によって判断された結果は出力手段46によって出力される。出力手段46による出力はスピーカによる音声や表示画面上への表示等とされる。制御手段47は処理装置40全体の動作を制御する。
【0031】
図3はこの動体検出装置が使用される状況の一例として、ビルが倒壊した災害現場での瓦礫下の生存者探索を模式的に示したものであり、エリア1〜3は瓦礫下の検出対象エリアを示す。
図3中、送信機20には送信機番号として1〜12を付与している。番号1〜4の送信機20はエリア1に散布され、番号5〜8の送信機20はエリア2に散布されている。また番号9〜12の送信機20はエリア3に散布されている。
【0032】
受信機30は
図3では3台異なる場所に設置されている。受信機30の設置位置、現場の状況によっては、1台の受信機30では良好に受信できない場合もあるため、このように複数の受信機30を場所を変えて設置するのが好ましい。処理装置40としては、
図3に示したようにパーソナルコンピュータを処理装置40として機能させることができる。
【0033】
処理装置40の差分ヒストグラム作成手段44は前述したように、送信機20ごとの電界強度の時系列データそれぞれに対して単位時間当たりの電界強度の差分を求め、その差分のヒストグラムを作成する。
図4(a)〜(d)は
図3におけるエリア2に散布された番号5〜8の送信機20からの電界強度の差分ヒストグラムを例示したものである。
【0034】
単位時間当たりの電界強度の差分は送信機20の近傍に動体が存在せず、かつ電波の伝搬環境が安定している場合、小さくなり、差分の小さな値ほど出現回数が多くなる傾向にある。送信機番号5,7,8の差分ヒストグラムは
図4(a),(c),(d)に示したように、この傾向を示しており、差分の小さな領域の山ほど高く(出現回数が多く)、グラフは単調減少になっている。
【0035】
これに対し、番号6の送信機20の近傍には
図3に示したように人が存在しており、人の存在、動きによって電界強度が大きく変化するため、差分の大きな値の出現回数が増加し、単調減少のグラフではなくなる。
図4(b)に示した送信機番号6の差分ヒストグラムはまさにこの状態となっており、送信機番号5,7,8の差分ヒストグラムとは明らかに異なったものとなっている。
【0036】
ここで、検出対象エリアに散布した各送信機20からの電界強度の差分ヒストグラムを比較することにより、検出対象エリア全体に起きている環境変動なのか、特定の送信機20からの電界強度だけが変動しているのか見分けることができ、後者の場合には動体が存在していると解釈する。
図4(a)〜(d)に示したような差分ヒストグラムが得られた場合、エリア2には人(動体)が存在していると判断され、エリア2に生存者がいることがわかる。
【0037】
図5は処理装置40における動体検出処理フローの一例を示したものであり、以下、
図5に示したフローチャートに沿って処理フローを詳細に説明する。
【0038】
まず、最初に、送信機20を散布するエリア数Na、エリア番号i=1〜Naを登録し(ステップS1)、各エリアに散布する送信機番号を登録する(ステップS2)。次に、電界強度データ取得の単位時間tを設定し、計算に使用する差分ヒストグラムを作成する時間枠T(tの整数倍)を設定する(ステップS3)。単位時間tは例えば1秒とし、時間枠Tは1分〜5分程度とする。
【0039】
次に、電界強度の差分値記録用としてT時間分の配列Sijを確保する(ステップS4)。jはエリアiに散布した送信機20の番号とし、ここではj=1〜Niとする。Niはエリアiに散布した送信機数である。次に、差分ヒストグラム作成用の階級値の度数を初期化する(ステップS5)。
【0040】
動体検出はエリア番号i=1からNaまでエリア毎に行われる。
【0041】
i=1,j=1とし、さらにfij=0とする(ステップS6〜S8)。fijは後述するように、回帰直線の当てはまりの良さの指標の良否を示すフラグであり、ステップS8ではfij=0とし、フラグを初期化する。
【0042】
送信機jから信号が届くかどうか、即ち電界強度を測定できるかどうかを確認する(ステップS9)。信号が届いている場合、電界強度のデータを取得する(ステップS10)。そして前回の電界強度のデータからの差分を計算する(ステップS11)。ここで前回データとはエリアi、送信機jの前回のデータのことである。なお、前回データがない場合は差分を0とする。
【0043】
差分計算後、今回の電界強度のデータを前回の電界強度のデータとして保存する(ステップS12)。測定開始からの経過時間が時間枠T以下かどうかを判断し(ステップS13)、時間枠T以下の場合には差分の値を配列Sijに記録する(ステップS14)。そして、ステップS15の処理、ステップS16の判断により、番号1からNiまでの全ての送信機に対してステップS9〜S14を実行する。なお、ステップS9で送信機jから信号がないと判断した場合はステップS15に進む。
【0044】
ステップS13での判断で経過時間が時間枠Tを超えた場合、配列Sijの一番古い記録領域に差分の値を上書きする(ステップS17)。そして、配列Sijに記録されている差分の値が属する階級値の度数をカウントして差分ヒストグラムを作成する(ステップS18)。次に、作成した差分ヒストグラムの度数に1を加算した値の対数値に対して回帰直線を求め、回帰直線の度数1の軸との交点の階級値Uj及び回帰直線の当てはまりの良さの指標を算出する(ステップS19)。当てはまりの良さの指標としては相関係数やカイ自乗を用いることができる。
【0045】
当てはまりの良さの指標が良いかどうかを判断し(ステップS20)、良い場合には当てはまりの良さの指標の良否を示すフラグfijを、fij=1として(ステップS21)、ステップS19で算出した階級値Ujをしきい値Tjとする(ステップS22)。そして、ステップS15に進む。一方、ステップS20で当てはまりの良さの指標が良くないと判断した場合、具体的に言えば相関係数だと0に近く、カイ自乗だと1以上の場合、fij=2とし(ステップS23)、階級値Ujをしきい値Tjとせず、ステップS15に進む。
【0046】
なお、ステップS18で差分ヒストグラムを作成する際、階級の幅が狭すぎると、度数が1以上の階級値の後に度数が0になる階級値が連続して現れるといった現象が生じうる。これは階級値となる電界強度がある単位でデジタル化されているためで、その差分も当然、デジタル化した値を単位とした値になるためであって、この単位よりも小さな幅に階級の幅を設定すると、上述のような現象が生じる。このような現象が生じた状態で回帰直線を求めると、度数が0の直線に近いような回帰直線になり、結果としてステップS22におけるしきい値Tjが不当に低く見積もられてしまうことになる。
【0047】
この問題を回避するために、
・ステップS18における差分ヒストグラムの作成においては、電界強度データの最小分解能より階級の幅を大きくする
・ステップS19においては、度数が0になる階級値は回帰直線を求めるための対象データから除外する
といった2つの対策を採る。
【0048】
次に、ステップS16でjがNiを超えたと判断した場合について説明する。
【0049】
この場合、まず、fij=2がj=1,2,…,Niで1つもないかどうかを判断する(ステップS24)。fij=2が1つもなければ、次にfij=1が1つでもあるか、言い換えればしきい値Tjが1つでも定義されているかを判断し(ステップS25)、しきい値Tjが1つでも定義されていれば、j=1,2,…,Niの範囲でしきい値Tjが定義できているものだけを用いて、しきい値Tjの平均値Aと標準偏差σを算出する(ステップS26)。そして、階級値Ujの中に平均値Aから標準偏差σ以上離れた値があるか否かを判断し(ステップS27)、ある場合、動体がエリアiに存在すると判断し、その旨を通知する(ステップS28)。通知は音声や表示画面上への表示によって行われる。なお、ステップS24での判断でfij=2が1つでもあった場合はステップS28に進み、エリアiでの動体の存在を通知する。
【0050】
動体存在通知後はステップS29に進み、ステップS29の処理、ステップS30の判断により、エリア番号i=1からNaまで全てのエリアに対してエリア毎に動体の存在有無を検出する。なお、ステップS27で平均値Aから標準偏差σ以上離れた階級値Ujがないと判断した場合はステップS29に進む。また、ステップS30でiがNaを超えたと判断した場合はステップS31に進み、時間が単位時間t進むのを待ち、単位時間t経過したら、上述したステップS6〜S30を、つまり全てのエリアの動体検出を繰り返し行う。
【0051】
このようにして送信機20を散布した検出対象エリア全てに対してエリア毎に動体の存在有無が検出される。なお、上述した例では、平均値Aから標準偏差σ以上離れた階級値Ujがある場合、動体が存在すると判断しているが、この判断基準は状況に応じて変えてもよく、例えば標準偏差σの2倍以上、あるいは3倍以上、平均値Aから離れた階級値Ujがある場合に動体が存在すると判断してもよい。
【0052】
以上、この発明による動体検出装置及び方法の実施例について説明したが、この発明によれば、目視できず、サーモグラフィを用いることができない状況であっても、遠隔から検出対象エリア内に物体が存在するか否かを検出することができ、例えば炎や噴煙、蒸気などの熱源が存在する災害現場等での生存者の探索やプラント内で暴走する自律移動ロボットの所在把握の用途において極めて有用なものとなる。