【文献】
LEE JB et al., Organ-on-a-chip technology and microfluidic whole-body models for pharmacokinetic drug toxicity screening, Biotechnol J. [online], 8(11), p.1258-1266, 2013.08.23, <Retrieved on 2017.06.23>, <URL: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/biot.201300086/abstract>
【文献】
SUGIURA S et al., Pressure-driven perfusion culture microchamber array for a parallel drug cytotoxicity assay, Biotechnol Bioeng. [online], 100(6), p.1156-1165, Epub 2008.02.19, <Retrieved on 2017.06.23>, <URL: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bit.21836/abstract>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[細胞培養装置]
以下、本発明の一実施形態である細胞培養装置10について、図面を参照して説明する。
図1および
図4に示すように、細胞培養装置10は、液体培地M1を貯留する貯留槽11と、マイクロチップ3(流路デバイス)と、第1貯留槽1と連絡用流路32との間の液体培地M1の流れを調整する第1逆止弁4と、第2貯留槽2と培養用流路31との間の液体培地M1の流れを調整する第2逆止弁5と、貯留槽1、2内を加圧可能な加圧ポンプ6(加圧手段)と、貯留槽1、2の蓋部13を押さえつけて保持するホルダ7(蓋部押圧部)と、を備えている。
【0009】
図3および
図4に示すように、貯留槽11は、液体培地M1を貯留する容器状の槽本体12と、貯留槽11の開口を開閉自在かつ気密に閉止する蓋部13とを備えている。
図5および
図6に示すように、槽本体12は、平面視矩形(詳しくは長方形)の底壁14と、底壁14の長辺である側縁部14a、14aに立設された側壁15、15と、底壁14の短辺である端縁部14b、14bに立設された端壁16、16と、側壁15、15の間に設けられた隔壁17とを備えている。
以下、一方の側壁15を第1側壁15Aといい、他方の側壁15を第2側壁15Bということがある。また、一方の端壁16を第1端壁16Aといい、他方の端壁16を第2端壁16Bということがある。
図1等において、X方向は底壁14の長手方向であり、側縁部14aの延在方向である。Y方向は底壁14に平行な面内でX方向に直交する方向であって、端縁部14bの延在方向である。Z方向はX方向およびY方向と直交する高さ方向である。
【0010】
図5および
図6に示すように、隔壁17は、一方の端壁16Aの内面から他方の端壁16Bの内面にかけて形成されており、側壁15と平行であって、側壁15と同じ高さとすることができる。
隔壁17は、底壁14、側壁15および端壁16で囲まれた内部空間18を2つの空間1a、2aに分割している。
図示例では、隔壁17は、端壁16A、16Bの幅方向(Y方向)の中央に設けられており、2つの空間1a、2aの形状および大きさは互いに等しい。
【0011】
底壁14と、側壁15Aと、端壁16、16と、隔壁17とを有し、これらに囲まれた直方体状の内部空間1aを有する構造を第1貯留槽1という。第1貯留槽1の上部開口を第1開口19aという。
底壁14と、側壁15Bと、端壁16、16と、隔壁17とを有し、これらに囲まれた直方体状の内部空間2aを有する構造を第2貯留槽2という。第2貯留槽2の上部開口を第2開口19bという。
第1および第2貯留槽1、2は、それぞれ内部空間1a、2aに液体培地M1を貯留できる。
【0012】
図1、
図5、
図6および
図8に示すように、側壁15と隔壁17との間に、1または複数の補強用の補強壁部20を設けてもよい。これによって、槽本体12の構造的な強度を高めることができる。
補強壁部20は、端壁16に平行に、端壁16から離れた位置に形成されている。
図示例では、側壁15Aと隔壁17との間、および側壁15Bと隔壁17との間に、それぞれX方向に間隔をおいて2つの補強壁部20が形成されている。
側壁15Aと隔壁17との間の補強壁部20(第1貯留槽1内の補強壁部20)を補強壁部20Aといい、側壁15Bと隔壁17との間の補強壁部20(第2貯留槽2内の補強壁部20)を補強壁部20Bという。
【0013】
第1貯留槽1は、補強壁部20によってX方向に並ぶ3つの空間に区画されている。これらの空間をそれぞれ第1〜第3区画27a〜27cという。
第1〜第3区画27a〜27c内の底壁14には、それぞれ、導入用流路33に通じる導出口36(36a〜36c)と、連絡用流路32(32a〜32c)に通じる導入口38(38a〜38c)とが形成されている。
【0014】
第2貯留槽2は、補強壁部20によってX方向に3つの空間に区画されている。これらの空間をそれぞれ第1〜第3区画28a〜28cという。
第1〜第3区画28a〜28c内の底壁14には、それぞれ、導出用流路34(34a〜34c)に通じる導入口37(37a〜37c)と、連絡用流路32(32a〜32c)に通じる導出口39(39a〜39c)とが形成されている。
【0015】
補強壁部20は、側壁15、端壁16および隔壁17に比べて低く形成することができる。側壁15、端壁16および隔壁17の上部には補強壁部20がないため、第1貯留槽1の上部において、第1〜第3区画27a〜27cは互いに連通している。このため、これら第1〜第3区画27a〜27c内を均圧化できる。
同様に、第2貯留槽2の上部において、第1〜第3区画28a〜28cは互いに連通しているため、これら第1〜第3区画28a〜28c内を均圧化できる。
【0016】
図4および
図7に示すように、蓋部13は、矩形の板状体とすることができる。図示例の蓋部13は、長さ寸法(X方向の寸法)および幅寸法(Y方向の寸法)が底壁14とほぼ同じである。
蓋部13の下面13a(
図7参照)は、側壁15、端壁16および隔壁17の上縁部15c、16c、17c(
図4参照)に隙間なく当接して貯留槽1、2の開口19a、19bを気密に閉止することができる。
蓋部13が開口19a、19bを気密に閉止する構造としては、蓋部13の下面13aが直接、上縁部15c、16c、17cに当接する構造であってもよいし、パッキン(図示略)を介して上縁部15c、16c、17cに当接する構造であってもよい。
【0017】
図4に示すように、蓋部13の端縁部13b、13bの上面13cには、端縁部13b、13bの全長にわたってそれぞれ切欠き21、21が形成されている。切欠き21、21が形成された部分は薄肉部22、22となっている。切欠き21、21によって形成された段部23には、後述する押圧バー42が係止可能である。
【0018】
図7に示すように、蓋部13の下面13aには、下面13aと上縁部15c、16c、17cとの間に設けられるパッキン(図示略)を係止する係止凸部24a、24bを設けてもよい。
係止凸部24a、24bの形状は、これらの外周縁に係止するパッキン(図示略)が、それぞれ第1開口19aおよび第2開口19bを包囲可能となるように定められる。
係止凸部24a、24bの下面には、第1開口19aおよび第2開口19bに入り込むことができる嵌合凸部25a、25bを形成してもよい。嵌合凸部25a、25bを形成することによって、蓋部13を槽本体12に対して位置合わせするのが容易となる。
【0019】
蓋部13には、第1貯留槽1および第2貯留槽2内に気体を送入し、貯留槽1、2内の圧力を高めるための第1および第2の気体供給孔26a、26bを形成することができる。
第1の気体供給孔26aは、一端26a1が蓋部13の一方の側面13dに開口し、他端26a2が係止凸部24aの下面に開口しているため、第1の気体供給孔26aを通して内部空間1aに気体を送入できる。
第2の気体供給孔26bは、一端26b1が蓋部13の側面13dに開口し、他端26b2が係止凸部24bの下面に開口しているため、第2の気体供給孔26bを通して内部空間2aに気体を送入できる。
【0020】
槽本体12および蓋部13は、例えば樹脂(プラスチック)、ガラス等が使用できる。培養用流路31内の培養細胞を光学的に観察することが容易であることから、前記材料は透明材料であることが好ましく、具体的には樹脂およびガラスが好ましい。
樹脂としては、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリビニルピリジン系樹脂(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET))、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
なかでも、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)は、高い透明性を有するため好ましい。
【0021】
貯留槽11は、槽本体12と、槽本体12の開口19a、19bを開閉自在に閉止する蓋部13とを備えた構造であるため、液体培地M1や洗浄液を貯留槽1、2に注入または排出する作業が容易になる。
【0022】
図1および
図8に示すように、マイクロチップ3は、細胞を培養する培養用流路31(31a〜31c)、第1貯留槽1と第2貯留槽2との間を連絡する連絡用流路32(32a〜32c)、第1貯留槽1内の液体培地M1を培養用流路31に導く導入用流路33(33a〜33c)、および、培養用流路31内の液体培地M1を第2貯留槽2に導く導出用流路34(34a〜34c)が形成されている。
【0023】
図8に示すように、培養用流路31は、3つの培養用流路31a〜31cを有する。培養用流路31a〜31cは、互いにX方向に位置を違えて形成されている。
培養用流路31a〜31cは、それぞれ、Y方向に沿って直線的に延在する直線部31dと、折返し部31eとが繰り返される蛇行構造となっている。
【0024】
培養用流路31a〜31cの一端部31fは、それぞれ導入用流路33a〜33cによって、第1貯留槽1の第1〜第3区画27a〜27cの導出口36(36a〜36c)に通じている。このため、培養用流路31a〜31cは、導入用流路33a〜33cを介して第1貯留槽1に接続されている。
培養用流路31a〜31cの他端部31gは、それぞれ導出用流路34a〜34cによって、第2貯留槽2の第1〜第3区画28a〜28cの導入口37(37a〜37c)に通じている。このため、培養用流路31a〜31cは、導出用流路34a〜34cを介して第2貯留槽2に接続されている。
なお、培養用流路31a〜31cの一端部31fは、直接、第1貯留槽1の導出口36に接続されていてもよい。他端部31gは、直接、第2貯留槽2の導入口37に接続されていてもよい。
【0025】
培養用流路31は、マイクロチップ3の内部に形成された細胞培養用の流路であって、幅W1は、例えば幅0.1〜5mmとすることができる。
培養用流路31の断面積は、例えば0.1mm
2〜10mm
2とすることができる。
培養用流路31は、ここに示したマイクロチップ3の構成に限られない。培養用流路の形状や大きさや数、流路の幅、深さ、経路、数等は、細胞培養装置の用途などに応じて適宜設計することができる。
【0026】
連絡用流路32は、3つの連絡用流路32a〜32cを有する。連絡用流路32a〜32cは、互いにX方向に位置を違えて形成されている。
連絡用流路32a〜32cの一端部は、それぞれ第1貯留槽1の第1〜第3区画27a〜27cの導入口38(38a〜38c)に通じている。
連絡用流路32a〜32cの他端部は、それぞれ第2貯留槽2の第1〜第3区画28a〜28cの導出口39(39a〜39c)に通じている。
このため、連絡用流路32a〜32cは、第1貯留槽1と第2貯留槽2とを連通する流路である。
【0027】
マイクロチップ3は、例えば、流路31〜34となる溝状凹部を有する基板に天板を重ね合わせることにより作製することができる。
基板および天板の材料は特に制限されず、例えば樹脂(プラスチック)、ガラス等が使用できる。培養細胞を光学的に観察することが容易であることから、前記材料は透明材料であることが好ましく、具体的には樹脂およびガラスが好ましい。
樹脂としては、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリビニルピリジン系樹脂(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET))、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
なかでも、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)は、高い透明性を有するため好ましい。
【0028】
溝状凹部を有する基板は、レプリカモールディング法によって形成することができる。溝状凹部を形成するには、RIE(Reactive Ion Etching)、レーザー加工、NC加工、光造形加工、射出成型加工、ナノインプリント加工などを採用してもよい。
【0029】
図1および
図8に示すように、第1逆止弁4は、底壁14に、それぞれ導入口38(38a〜38c)を閉止可能に設置されている。
具体的には、第1逆止弁4は、第1貯留槽1の第1〜第3区画27a〜27c内の底壁14上に、導入口38(38a〜38c)を開閉できるように設置される。
図1および
図2に示すように、第1逆止弁4は、連絡用流路32(32a〜32c)から第1貯留槽1への液体培地M1の流れを許容し、かつ第1貯留槽1から連絡用流路32(32a〜32c)への液体培地M1の流れを阻止する。
【0030】
図1および
図8に示すように、第2逆止弁5は、底壁14に、それぞれ導入口37(37a〜37c)を閉止可能に設置されている。
具体的には、第2逆止弁5は、第2貯留槽2の第1〜第3区画28a〜28c内の底壁14上に、導入口37(37a〜37c)を開閉できるように設置される。
図1および
図2に示すように、第2逆止弁5は、導出用流路34(34a〜34c)から第2貯留槽2への液体培地M1の流れを許容し、第2貯留槽2から導出用流路34(34a〜34c)への液体培地M1の流れを阻止する。
なお、第1および第2逆止弁4、5は、底壁14に設けてもよいが、マイクロチップ3に設けてもよい。
【0031】
図3および
図4に示すように、ホルダ7は、槽本体12を支持する基体部41と、基体部41に支持された槽本体12に向けて蓋部13を押圧する一対の押圧バー42(押圧部材)とを有する。
図4に示すように、基体部41は、略矩形(詳しくは略長方形)の薄板状の底板部43と、底板部43の上面に高さ方向に突出して形成された厚肉部44とを有する。
【0032】
厚肉部44は、底板部43の1つの側縁部43aに形成された側縁凸部44aと、底板部43の2つの端縁部43b、43bに形成された端縁凸部44b、44bとを有する。
側縁凸部44aおよび端縁凸部44b、44bは、それぞれ底板部43の側縁部43aおよび端縁部43b、43bに沿って形成されている。
端縁凸部44b、44bの両端面には、それぞれ押圧バー42の端部が挿入される挿入穴44cが形成されている。
厚肉部44によって囲まれた内部空間は、槽本体12の下部およびマイクロチップ3の一部を収容する収容凹部45となっている。
基体部41は、金属や樹脂で構成することができる。
【0033】
図3および
図4に示すように、押圧バー42は、例えば金属などで構成されており、中央部には、蓋部13を押圧するための凸状曲げ部45が形成されている。凸状曲げ部45は、端縁凸部44bに近づく方向に凸状に曲げられて形成されている。
押圧バー42は、両端部を厚肉部44の挿入穴44cに挿入した状態で、この挿入部分を支点として、端縁凸部44bに沿う中心軸の軸周り方向に回動可能となっている。
図3に示すように、押圧バー42は、凸状曲げ部45を蓋部13の切欠き21内に配置し、段部23に係止させることができる。これによって、蓋部13を槽本体12に対して押圧し、貯留槽11を確実に密封状態とすることができる。
【0034】
図1に示すように、加圧ポンプ6は、第1および第2の送気経路46a、46bにより第1貯留槽1および第2貯留槽2に接続され、貯留槽1、2に気体(例えば空気)を供給して貯留槽1、2内を加圧できる。
送気経路46a、46bは、例えば貯留槽11の蓋部13の気体供給孔26a、26bの一端26a1、26b1に接続することができる。
【0035】
[細胞培養方法]
次に、細胞培養装置10を用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
本発明において培養する細胞は、特に限定されず、例えばヒトを含む動物由来の細胞、植物由来の細胞、微生物由来の細胞等を目的に応じて使用できるが、特に好適な細胞の例として、血管内皮細胞がある。
【0036】
培養に用いられる液体培地としては、特に限定されないが、血管内皮細胞を培養する場合は血管内皮細胞専用の培地がより好ましい。市販されている血管内皮細胞用の培地としては、Endothelial cell basal medium (HuMedia-EG2) (商品名)(クラボウ社製)、 EGM-2 BulletKit(商品名)(Lonza社製)等が挙げられる。
【0037】
(予備工程)
培養用流路31に細胞を接着させるために細胞間基質(ECM)が必要である場合は、この予備工程を実施することが好ましい。
図1に示すように、第1貯留槽1に、細胞間基質(ECM)を含有する液(ECM含有液)を充てんし、加圧ポンプ6からの気体供給により第1貯留槽1を加圧することによって、ECM含有液を導入用流路33から培養用流路31に導入し、所定時間放置する。
第1貯留槽1に気体を送り込み、この気体を培養用流路31に送入することによって、ECM含有液を培養用流路31から除去し、導出用流路34を通して第2貯留槽2に導入し、排出する。
次いで、同様の手法により、PBS(リン酸緩衝溶液)で貯留槽1、2および流路31〜34を洗浄する。
なお、細胞間基質(ECM)がなくても培養用流路31への十分な細胞の接着強度が得られる場合には、この予備工程はなくてもよい。
【0038】
(細胞接着工程)
第1貯留槽1に細胞懸濁液を充てんし、加圧ポンプ6からの気体供給により第1貯留槽1に気体を送入することによって、細胞懸濁液を導入用流路33から培養用流路31に導入し、所定時間静置して細胞を培養用流路31の内面に接着させる。
【0039】
(細胞培養工程)
(第1サブ工程)
図1に示すように、液体培地M1を第1貯留槽1に充てんする。
加圧ポンプ6を稼働させ、第1送気経路46aを通して第1貯留槽1に気体(例えば空気)を供給して第1貯留槽1内を加圧する。この際、第2貯留槽2は、気体供給孔26bを通して大気に開放しておくことが好ましい。
第1貯留槽1内の圧力上昇によって、第1貯留槽1内の液体培地M1は、導出口36、導入用流路33を通って培養用流路31に導入され、培養用流路31内を流通する。液体培地M1は、導出用流路34を通って第2貯留槽2に導入される。
導入口38には第1逆止弁4が設けられているため、液体培地M1が第1貯留槽1から連絡用流路32に流入することはない。
【0040】
(第2サブ工程)
加圧ポンプ6による第1貯留槽1への気体供給を停止するとともに、加圧ポンプ6によって、第2送気経路46bを通して第2貯留槽2に気体を供給して第2貯留槽2内を加圧する。この際、第1貯留槽1は、気体供給孔26aを通して大気に開放しておくことが好ましい。
第2貯留槽2内の圧力上昇によって、第2貯留槽2内の液体培地M1は、導出口39、連絡用流路32を通って第1貯留槽1に導入される。
導入口37には第2逆止弁5が設けられているため、液体培地M1が第2貯留槽2から導出用流路34に流入することはない。
第2サブ工程では、液体培地M1が第1貯留槽1に導入されるため、十分量の液体培地M1が第1貯留槽1内に確保される。
【0041】
第1および第2サブ工程を繰り返すことによって、液体培地M1を培養用流路31に循環させることができる。このため、剪断力が加えられる環境下で細胞の培養を行うことができる。
細胞に与えられる剪断応力(ずり応力)は、例えば1〜100dyn/cm
2となる。
【0042】
第1サブ工程と第2サブ工程との間には、貯留槽1、2の両方を大気に開放する第3のサブ工程を設けてもよい。これによって、各流路の寸法が設計値から外れている場合でも、貯留槽1、2の液体培地M1の貯留量の偏りを是正できる。
【0043】
細胞培養装置10では、構造が簡単であるため、コストを抑制するとともに、操作を容易にすることができる。よって、容易な操作で細胞に剪断力を加えつつ培養を行うことができる。
また、液体培地M1を第1貯留槽1と培養用流路31と第2貯留槽2との間で循環使用するため、液体培地M1の使用量を削減でき、かつ無菌的操作も容易になる。このため、複数の試験を並列的に行うのが容易となり、創薬スクリーニング等において効率の高い試験が可能である。
【0044】
細胞培養装置10では、マイクロチップ3に流路31〜34がそれぞれ複数(図示例では3つ)形成されているため、複数の試験を並列的に行うことができる。また、第1貯留槽1および第2貯留槽2は共通であるため、装置構成は簡略である。
【0045】
上述の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
例えば、
図8等に示す細胞培養装置10のマイクロチップ3では、培養用流路31、連絡用流路32、導入用流路33、および導出用流路34は、それぞれ3つ形成されているが、各流路の数は3に限らず、1または2でもよいし、4以上であってもよい。