【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、経済産業省 課題解決型医療機器等開発事業(総合特区推進調整費)「我が国の内視鏡治療の世界標準化へ向けた総合型次世代医療機器の開発・改良」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、オーバーチューブの回旋能を保持したまま制限範囲内でオーバーチューブの自由な抜き挿しを可能にし、術者の意図しない範囲のオーバーチューブの抜き挿し(抜浅)を防止する、内視鏡用オーバーチューブデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内視鏡用オーバーチューブデバイスであって
患者の管腔内で回旋可能な滑らかな外表面を有し、内部に内視鏡を挿通するためのチャネルを備える、チューブ本体;
該チューブ本体の側部に周回して取り付けられたストッパリング;ならびに
該チューブ本体の側部を周回し、かつ該ストッパリングを覆うように取り付けられており、そして該チューブ本体の軸方向にスライド可能な回転ロックリングであって、
バイトブロックに接続するための接続部、および
基部から延びる該ストッパリングの近位端側で係止可能なフック、
を備える、回転ロックリング;
を備える、デバイスである。
【0010】
1つの実施形態では、上記チューブ本体は近位端に近位端側ストッパを備え、上記回転ロックリングの上記フックは、上記ストッパリングから該近位端側ストッパまでの間をスライド可能である。
【0011】
1つの実施形態では、上記チューブ本体の外表面は略円柱状である。
【0012】
1つの実施形態では、上記回転ロックリングの上記基部から延びる上記フックは板バネを構成する。
【0013】
1つの実施形態では、上記チューブ本体は、処置具を挿通するための第2チャネルを備える。
【0014】
本発明は、さらに、前記チューブ本体が、その近位端に近位端側ストッパを備えるとともに、処置具を挿通するための第2チャネルを備え、
前記近位端側ストッパは、前記処置具を挿入することで該処置具を前記第2チャネルに挿通可能な開口である処置具挿入口と、前記内視鏡を挿入することで前記内視鏡を前記チャネルに挿通可能な開口である内視鏡挿入口とを有し、
前記処置具挿入口と前記内視鏡挿入口とは、その軸どうしの間隔が近位側になるほど遠くなるように互いに傾斜するように設けられてもよい。
【0015】
また、本発明においては、前記処置具挿入口には、前記第2チャネルを通じての脱気を防止する脱気防止弁が設けられてもよい。
【0016】
また、本発明においては、前記チューブ本体が、その近位端に近位端側ストッパをさらに備え、
前記近位端側ストッパは、前記内視鏡を挿入することで前記内視鏡を前記チャネルに挿通可能な開口である内視鏡挿入口を有し、
前記内視鏡挿入口には、前記チャネルを通じての脱気を防止するための脱気防止アダプターを取り付け可能であるとともに、取り付けられた脱気防止アダプターの前記内視鏡挿入口からの脱離を防止するロック機構が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オーバーチューブの回旋能を保持したまま制限範囲内でオーバーチューブの自由な抜き挿しを可能にし、術者の意図しない範囲のオーバーチューブの抜浅を防止することができる。これにより、術者は、オーバーチューブの抜浅を何ら危惧することなく、オーバーチューブを用いてより高度かつ斬新な内視鏡処置を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0020】
<実施例1>
図1は、本発明の内視鏡用オーバーチューブデバイス100を模式的に説明するための当該デバイスの図であって、(a)はチューブ本体110にストッパリング112および近位端側ストッパ(端部カバー)120を取り付けた状態の斜視図であり、そして(b)はチューブ本体110にさらに回転ロックリング130を取り付けた状態の斜視図である。
【0021】
ここで、本明細書中に用いられる用語「内視鏡」とは、特に言及しない限り、医療用の軟性内視鏡を指して言う。このような軟性内視鏡は、柔軟な素材を用いており、内蔵される光学系として、例えば、グラスファイバーを用いたもの、CCDを用いたもの、およびLEDを用いたものがある。光源は、体外の制御装置側に配置されており、光源から発する光を光ファイバーで導いて内視鏡の先端部から照射される。本発明に使用することができる内視鏡は、例えば、光学系とは別の経路(例えば、サブルーメンまたはチャンネル)を有し、局所の洗浄、気体および/または液体の注入、薬剤散布、吸引、専用の処置具(デバイス)による処置などが可能である。また、内視鏡の先端の向きを、当業者に周知の手段を用いて手元の操作で自在に変えることができる。
【0022】
さらに、本明細書において、用語「近位」は、器具および装置の操作者に近い側の器具および装置の部分をいい、そして用語「遠位」は、操作者から遠い側の器具および装置の部分をいう。このため、用語「近位端」とは、操作者から最も近い(すなわち、近位にある)端部を表し、用語「遠位端」とは、操作者から最も遠い(すなわち、遠位にある)端部を表す。「長軸方向」とは、オーバーチューブの長手方向に沿った軸中心の方向をいう。
【0023】
本発明において用いられ得る内視鏡は、目的の管腔臓器に応じて適切なサイズの内視鏡が選択される。任意の目的の管腔臓器としては、食道、胃、小腸、大腸、膣、膀胱などが挙げられる。
【0024】
本発明の内視鏡用オーバーチューブデバイス100は、
図1に示すように、チューブ本体110、ストッパリング112、回転ロックリング130を備える。
【0025】
本発明においてチューブ本体110は、内部に内視鏡を挿通するためのチャネル134が形成された管状部材である。その形状は、外表面が患者の管腔内で回旋可能なように表面が滑らかに形成されている限り特に限定されないが、略円柱状であれば、管腔内で回転させた場合の患者の負担が最も少なくなるので好ましい。
【0026】
チューブ本体110の外径もオーバーチューブデバイス100を挿入すべき管腔に過度の負担を与えない限り特に限定されず、最適な範囲も挿入すべき管腔の種類や患者の年齢により異なるため一該には言えないが、例えば成人男性の消化器官を対象とする場合には、好ましくは20mm以下、より好ましくは18mm以下、さらに好ましくは15〜18mmの外径であり得る。
【0027】
チューブ本体110の素材は、適切な可撓性、摩擦の少なさ(潤滑性)、強度、カラム剛性などを有し、医療器具に通常用いられる素材であれば特に限定されない。このような医療器具に用いられるポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、シリコーンおよびポリウレタンなどの軟質樹脂が挙げられる。摩擦がより少ない観点から、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0028】
チューブ本体110の内部には、
図1に示すように、チャネル134が形成される。その直径は内視鏡を挿通することができる程度であれば特に限定されない。1つの実施形態では、内視鏡の直径が11.8mm径である場合、チャネル134の直径は、好ましくは12mm以上であり、例えば、極細径の内視鏡として5mm径のものが使用される場合、チャネル134の直径は5mmより若干大きいものが採用される。本発明において、チャネル134には、近位端から内視鏡が挿入され、遠位端から内視鏡の遠位端先端部が突出可能である。
【0029】
また、チューブ本体110は、手術手技の多様化を可能にするため、処置具を挿通することができるように構成された第2チャネル114を備えることが好ましい。なお、第2チャネル114は、患者への負担を最小限にするため、
図1に示すように、チューブ本体110の外側に突出させず、チャネル134側に突出させて設けることが好ましいが、患者の管腔を傷つけない範囲で外側に突出させることもできる。なお、
図1〜4に示した例において、第2チャネル114はチャネル134と略平行に延びているが、これに限定されず、例えば第2チャネル114をチャネル134の長軸方向を中心軸とする螺旋状に設けてもよい。
【0030】
第2チャネル114の直径は、処置具を挿通可能なサイズであれば特に限定されず、使用する処置具に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは2.8mm〜3mmである。本発明において、第2チャネル114は、通常、近位端から処置具が挿入され、遠位端から処置具を突出させるようにして使用される。また、第2チャネル114はチャネル134とは独立した管腔であるので、チャネル134に挿通される内視鏡とは独立して、種々の処置具を挿通することができる。
【0031】
チューブ本体110の近位端には、内視鏡、処置具などの器具の挿通操作を行いやすくするために、例えば
図2に示すように、チューブ本体110を構成する軟質樹脂よりも硬い樹脂からなるハンドリングコネクタ150を設けることが好ましい。ハンドリングコネクタ150の形状および構造は特に限定されず、従来の内視鏡用オーバーチューブデバイスに通常使用されて得るハンドリングコネクタの形状および構造をいずれも好適に使用することができる。
【0032】
なお、
図2に示した例においては、ハンドリングコネクタ150の近位端には開口部152および鉗子口118が設けられている。チューブ本体110の近位端はハンドリングコネクタ150の開口部152と連通する遠位端に接着されており、開口部152から挿入した内視鏡がチューブ本体110の遠位端から突出させるように構成されている。第2チャネル114の近位端はハンドリングコネクタ150の開口部152とは中心間で25mm離れたハンドリングコネクタ150の鉗子口118に接着されており、鉗子口118から挿入した処置具が第2チャネル114の遠位端から突出されるように構成される。
【0033】
本発明においては、
図1の(a)および
図3の(a)に示すように、上記チューブ本体110の側部に周回してストッパリング112が取り付けられる。ストッパリング112の形状は、チューブ本体110に周回して取り付けることができる限り特に限定されないが、後述の回転ロックリング130がチューブ本体110に対してスムースに回動することができるように、少なくとも外周が円形であることが好ましい。
【0034】
図3に示した例においては、ストッパリング112は2つの部材からなり、雄雌の爪で互いにフックし合う構造を持ち、チューブ本体へ接着される。なお、ストッパリング112は後述の回転ロックリング130をチューブ本体110に沿ってスライドさせる際に、遠位側の終点を定めるための部材である。したがって、ストッパリング112は内視鏡の使用中に動かないようにチューブ本体110に密着し、しっかりと位置が固定されるようにするのが好ましい。
【0035】
ストッパリング112を取り付ける位置については、患者の体格や行う手術手技の術式によって異なるため一概には言えないが、一般的な成人男性の食道ESD手術の場合には、回転ロックリングのスライド可動域が、例えば50mm〜100mmとなるように設定され得る。
【0036】
本発明においては、
図1に示されるように、チューブ本体110の側部を周回し、かつストッパリング112を覆うように回転ロックリング130が取り付けられる。この回転ロックリング130は、
図2に示すように、チューブ本体110の軸方向にスライドさせることができる。
【0037】
回転ロックリング130の大きさは特に限定されないが、回転ロックリング130をスライドさせてもストッパリング112が回転ロックリング130の下からはみ出さない程度とするのが好ましい。1つの実施形態では、例えば、回転ロックリング130のスライド可動域が100mmである場合、回転ロックリング130の全長をそれより少し長い110mm程度に設定され得る。
【0038】
回転ロックリング130の内径についても、チューブ本体110およびストッパリング112の周りでスムースに回転することができる程度であれば特に限定されない。
図1〜
図4に示した実施形態においては、例えば、チューブ本体110の径が19mmであり、ストッパリング112の外径が22.3mm、回転ロックリング130の内径が23.6mmに設定されており、これにより回転ロックリング130はチューブ本体110の周りで好適に回転することができる。
【0039】
本発明における回転ロックリング130は、バイトブロックとの接続部136(
図1参照)と、フック138(
図2および
図4参照)を備えている。
【0040】
回転ロックリング130に設けられるバイトブロックとの接続部136の形状および構造は特に限定されない。本発明の効果を損なわない限り、この種のオーバーチューブデバイスに使用できる接続部136が、本発明においても全て好適に使用することができる。
【0041】
本発明において、フック138は回転ロックリング130の基部から延設されており、先端部分がストッパリングの近位端側で係止可能とされる。このように構成されているので、回転ロックリング130がチューブ本体110上で遠位端側にスライドする際、この回転ロックリング130がスライド可動域の遠位端に達したときに、フック138の先端側がストッパリング112と衝合し、それ以上遠位端側に回転ロックリング130がスライドすることを防止可能となる。
【0042】
本発明においてフック138は板バネであってもよい。この場合、回転ロックリング130をチューブ本体110の遠位端側から挿入すれば、フック138先端の斜面がストッパリング112に当接して上側に反り返り、ストッパリング112を乗り越える。これにより、フック138がストッパリング112の近位端側で係止されるので、回転ロックリング130の取り付けが容易になる。なお、板バネ状のフック138はストッパリング112を一度越えると元の形状に戻るので、チューブ本体110を元の遠位端側に引き抜くことができなくなる。
【0043】
本発明においては、チューブ本体110の近位端に近位端側ストッパ120が設けられていてもよい。近位端側ストッパ120を設ければ、回転ロックリング130がチューブ本体110の近位端側から抜け落ちるのを防止することができる。近位端側ストッパ120の形状は、回転ロックリング130の抜け落ちを防止できる限り、特に限定されない。あるいは、近位端側ストッパ120が回転ロックリング130の抜け落ちを防止以外の機能を有していてもよい。例えば、
図1〜3に示される実施例では、前述のハンドリングコネクタ150を覆う端部カバーの遠位端側が近位端側ストッパ120として機能している。なお、
図1〜3に示される実施例において、近位端側ストッパ(端部カバー)120は、ハンドリングコネクタ150の近位端に設けられたストッパ116を挟んで該カバーをハンドリングコネクタ150に挿し込み、爪でフックして固定されている。
【0044】
本発明の内視鏡用オーバーチューブデバイスは、上記のように構成されているので、回転ロックリング130がバイトブロックを介して患者の口に固定されている状態においてチューブ本体110を旋回させたり、前後に抜き挿ししたりすることが可能である。さらに、ストッパリング112と近位端側ストッパ120により、術者が意図しない範囲での抜き挿しを防止することができる。
【0045】
すなわち、チューブ本体110を患者の口の奥に押し込めば、回転ロックリング130がチューブ本体110上の近位端側に相対的に移動するが、限界まで押し込めば、近位端側ストッパ120の遠位端と回転ロックリング130の近位端が衝合する(
図2の(a))。これにより、チューブ本体110はそれ以上患者の口には押し込むことができなくなる。
【0046】
また、チューブ本体110を患者の口から引き抜けば、回転ロックリング130がチューブ本体110上の遠位端側に相対的に移動するが、限界まで引き抜けば、ストッパリング112の近位端と回転ロックリング130のフック138が衝合する(
図2の(b))。これにより、チューブ本体110はそれ以上患者の口から引き抜くことができなくなる。
【0047】
本発明では、内視鏡用オーバーチューブ自体を回旋させることにより、内視鏡を回旋させることなく(内視鏡視野を一定にしたままで)オーバーチューブの第2チャネルに挿通される処置具を回転運動させることができ、さらに制限範囲内でのオーバーチューブの自由な抜き差しを可能にし、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)など、手術手技の多様化を可能にする。
【0048】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2においては、ハンドリングコネクタ150の近位端に設けられた鉗子口を、開口部152に対して傾斜させた例について説明する。
【0049】
図5には、本実施例における内視鏡用オーバーチューブデバイス200について図示する。
図5(a)は、回転ロックリング130がチューブ本体110の近位端側に相対的に移動した場合、
図5(b)は、回転ロックリング130がチューブ本体110の遠位端側に相対的に移動した場合の側面図である。
【0050】
本実施例と実施例1とは、本実施例におけるハンドリングコネクタ250の鉗子口218が傾斜して備えられている点で異なる。
図6には、内視鏡用オーバーチューブデバイス200の断面図を示す。
図6(a)は、回転ロックリング130がチューブ本体110の近位端側に相対的に移動した場合、
図6(b)は、回転ロックリング130がチューブ本体110の遠位端側に相対的に移動した場合の断面図である。
【0051】
図6(a)及び(b)に示すように、本実施例においては、鉗子口218は、内視鏡が挿入される開口部252に対して、近位側に行くに従って鉗子口218の軸と開口部252の軸が離れるように、互いに約20度傾斜している。これによれば、開口部252から内視鏡用オーバーチューブデバイス200に内視鏡を挿入し、且つ、鉗子口218から鉗子などの処置具を挿入した場合にも、その操作部どうしの距離を確保することができ、両者が干渉することを防止できる。その結果、内視鏡および処置具のより円滑な挿抜が可能となり、内視鏡処置の作業効率を上昇させることが可能である。
【0052】
なお、本実施例では鉗子口218の開口部252に対する傾斜角は約20度となっているが、この角度は約20度に限られない。近位端側ストッパ220及びハンドリングコネクタ250の大きさ、開口部252に挿入する内視鏡の大きさ、鉗子口218から挿入する処置具の大きさに応じて適宜変更することが可能である。例えば、5度〜75度であってもよいし、より望ましくは、10度から40度であってもよい。両者の傾斜角をこれらの範囲に設定することで、より確実に、内視鏡処置の作業効率を上昇させることが可能である。
【0053】
また、本実施例においては、鉗子口218には、脱気防止弁218aが設けられている。この脱気防止弁218aは、鉗子口218に被せられるキャップにおける、鉗子口218の開口に相当する部分に弾性体による弁を設けた構造を有している。そして、鉗子口218に処置具が挿入されていない状態では、鉗子口218全体の気密性を維持し、鉗子口218に処置具が挿入されている状態では、鉗子口218と、処置具の間の隙間の気密性を維持する。これにより、送気により患者体内に供給した気体が、第2チャンネル114及び鉗子口218を介して漏れることを抑制できる。
【0054】
ここで、上述した鉗子口218の場合と同様に、本発明のハンドリングコネクタ250の開口部252においても、内視鏡とオーバーチューブ本体110のチャネル134を介して、送気した気体が逆流し、開口部252から外部に漏れてしまう虞がある。
【0055】
これに対し、本発明では、開口部252に、脱気防止アダプター160を取り付け可能としている。脱気防止アダプター160の外観については例えば
図7に示す様である。
図7(a)〜(c)は、脱気防止アダプターの側面図、
図7(d)は、脱気防止アダプターの平面図である。
図7(a)に示すように、脱気防止アダプター160は、先端部164、アダプター本体162、キャップ部166と径が徐々に大きくなるような円筒形が組み合わされた形状を有する。
【0056】
また、脱気防止アダプター160は、
図7(d)に示すように、内視鏡を挿入可能な開口である挿入孔162aを有するとともに、その際に、挿入孔162aの内壁と内視鏡の外形との間の隙間を気密に保つ機能を備える弁体162bが挿入孔162aの内部に設けられている。
【0057】
また、脱気防止アダプター160は、アダプター本体162の側面に、活栓本体168と、活栓本体168の上部に回動可能に設けられた切替レバー168aを有している。この切替レバー168aを回動させることにより、活栓本体168の開栓状態と閉栓状態とを切替ることが可能であり、これによって手術中の患者への気体の送気または脱気を適宜選択することが可能となっている。
【0058】
この脱気防止アダプター160を開口部252に取り付ける際には、先端部164に設けられた2箇所の凸部164a、164bが、開口部252に設けられた2箇所の凹部252a、252b(後述)に合うように、先端部164を開口部252に挿入する。そして、その後、脱気防止アダプター160を回転させることで、凸部164a、164bを、開口部252の内壁に設けられた凹溝252c(後述)に沿って移動させる。このことにより、軸方向に引っ張っただけでは、脱気防止アダプター160が開口部252から抜けないような構造となっている。
【0059】
次に、ハンドリングコネクタ250の近位端に設けられたストッパ116の作用について
図8を用いて説明する。
図8(a)には、ストッパ116をOFFとした場合の、ハンドリングコネクタ250の開口部252付近の状態を示す。
図8(b)には、ストッパ116をONとした場合の、ハンドリングコネクタ250の開口部252付近の状態を示す。
図8(a)から分かるように、ストッパ116をOFFした状態では、ロック部材116aが、凹部252aから退避しており、凹溝252cと凹部252aとの連結を許容している。
【0060】
この状態では、開口部252に取り付けた脱気防止アダプター160が、例えば内視鏡の回転に伴って回転してしまうと、凸部164aが凹溝252cから凹部252aに移行し、さらに軸方向にも移動してしまう場合がある。その結果、脱気防止アダプター160が開口部252から脱離してしまう虞がある。
【0061】
それに対し、
図8(b)に示すように、ストッパ116を近位側にスライドさせてONした状態では、ロック部材116aが突出し凹部252aと凹溝252cとの間を遮断する。これにより、凸部164aと凹溝252cとが係合している状態で、脱気防止アダプター160に回転力あるいは軸方向の力が作用したとしても、凸部164aが凹溝252cから凹部252aに移行し、さらに軸方向にも移動してしまうことを防止できる。その結果、脱気防止アダプター160の開口部252からの脱離を防止することが可能となる。
【0062】
以上、説明したように、本実施例においては、鉗子口218は開口部252に対して、近位側に行くに従って鉗子口218の軸と開口部252の軸が離れるように傾斜している。よって、内視鏡および処置具のより円滑な挿抜が可能となり、内視鏡処置の作業効率を上昇させることが可能である。
【0063】
また、本実施例においては、鉗子口218には、脱気防止弁218aが設けられている。これにより、送気により患者体内に供給した気体が、第2チャンネル114及び鉗子口218を介して漏れることを抑制できる。
【0064】
さらに、本実施例においては、ハンドリングコネクタ250の近位端にストッパ116が設けられている。これにより、ストッパ116をONした状態では、脱気防止アダプター160の開口部252からの脱離を防止することが可能となる。
【0065】
なお、本実施例において、鉗子口118及び218は、処置具挿入口に相当する。また、開口部152及び252は、内視鏡挿入口に相当する。さらに、本実施例において、ロック機構は、ストッパ116及びロック部材116aを含んで構成される。