(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂組成物は、共役ジエンゴムの総量が5〜35重量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の総量が20〜80重量%であり、芳香族ビニル化合物の総量が10〜40重量%であり、ビニルシアン化合物の総量が0〜10重量%である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、メタクリル酸アルキルエステル化合物、アクリル酸アルキルエステル化合物、またはこれらの混合である、請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1つ以上である、請求項3または4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記ビニルシアン化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群から選択された1つ以上である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記有機酸または有機酸塩の量は、共役ジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として0.3〜5重量部である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記有機酸または有機酸塩の量は、共役ジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として0.3〜5重量部である、請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0005】
最近、産業が先進化され、生活が多様化するにつれて、製品の差別化のために、使用される素材に透明性などのような高機能性を付与する研究が多く行われている。例えば、洗濯内容物が見られる洗濯機カバー(Cover)、ホコリがどれくらいたまったか確認できる掃除機集塵機、ゲーム機のハウジング(housing)、家電製品の透明窓、事務機器の透明窓などのように、素材の透明性を新たに付与する研究が集中的に行われている。しかし、既存のこれら部品に使用されているアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(以下、「ABS」という)共重合体樹脂は、耐衝撃性、耐薬品性、加工性及び表面光沢性などの品質には優れているが、樹脂の特性上、不透明な素材であるので、透明性が要求される素材には使用上の限界を有する。
【0006】
一般的に使用されている透明樹脂としては、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリアクリロニトリル−スチレン(SAN)樹脂などが使用されている。ポリカーボネート樹脂は、衝撃強度、透明度には優れているが、加工性が悪いため、複雑な製品を作りにくい。ポリメチルメタクリレート樹脂は、優れた光学特性を有しているが、耐衝撃性と耐化学性が非常に悪い。また、ポリスチレン(PS)樹脂及びポリアクリロニトリル−スチレン(SAN)樹脂も、耐衝撃性と耐化学性が非常に悪いという問題がある。
【0007】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系(以下、「ABS」という)三元共重合体は、衝撃強度及び流動性などの物性のバランスがよくとれている樹脂であり、不透明である。米国特許第4,767,833号(特許文献1)、日本公開特許公報平11−147020号(特許文献2)、欧州特許第703,252号(特許文献3)及び日本公開特許公報平8−199008号(特許文献4)は、耐衝撃性、耐化学性、加工性などに優れたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系(ABS)樹脂にアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル化合物を導入して透明性を付与する方法を開示している。前記方法は、乳化重合で製造され、残留物が多く残っている乳化重合の特性から、最終製品が、湿熱特性の低下で高温高湿の条件下で変形が生じるという問題点があり、これによって、加湿器、洗濯機、コーヒーマシン、浄水器のように高温の水を使用する製品及び消毒が必要な子供用おもちゃなどに使用しにくいという問題があった。
【0008】
したがって、湿熱特性を改善し、色相及び透明度に優れた透明樹脂が切実に要求されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、有機酸または有機酸塩で凝集したグラフト共重合体樹脂10〜90重量%;及び非グラフト共重合体樹脂90〜10重量%を含み、湿熱特性(ΔHaze)が20以下であり、前記グラフト共重合体樹脂と前記非グラフト共重合体樹脂との屈折率の差が0.01未満であることを特徴とする。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、有機酸または有機酸塩で凝集したグラフト共重合体樹脂10〜90重量%及び非グラフト共重合体樹脂90〜10重量%、または有機酸または有機酸塩で凝集したグラフト共重合体樹脂20〜80重量%及び非グラフト共重合体樹脂80〜20重量%を含んでいてもよい。前記グラフト共重合体樹脂が10重量%未満であると、衝撃強度が低下し、90重量%を超えると、耐湿熱性が低下し、透明度が低下する。
【0021】
前記有機酸または有機酸塩は、共役ジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として、一例として、0.3〜5重量部、0.7〜4重量部、または1〜3重量部であってもよく、前記範囲内で、高温の水または高温高湿で色相や透明度の変化が少ないという効果がある。
【0022】
前記有機酸は、一例として、酢酸、ギ酸、クエン酸、酪酸、パルミチン酸及びシュウ酸からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0023】
前記有機酸塩は、一例として、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酪酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酪酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、クエン酸カリウム、酪酸カリウム、パルミチン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酢酸亜鉛、ギ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酪酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛及びシュウ酸亜鉛からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0024】
前記熱可塑性樹脂組成物は、湿熱特性(ΔHaze)が20以下、15以下、または10以下が好ましく、前記範囲内で、高温の水または高温高湿で色相及び透明度の変化が小さいという効果がある。
【0025】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体樹脂と前記非グラフト共重合体樹脂との屈折率の差が0.01未満、0.007未満、または0.005未満であってもよく、前記範囲内で、透明度に優れるという効果がある。
【0026】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、共役ジエンゴムの総量が5〜35重量%または7〜30重量%であり、前記範囲内で、衝撃強度と加工性に優れ、表面にフローマークが形成されないので透明度に優れるという効果がある。
【0027】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の総量が20〜80重量%、または30〜70重量%であり、前記範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0028】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、芳香族ビニル化合物の総量が10〜40重量%、または15〜30重量%であり、前記範囲内で、透明性に優れるという効果がある。
【0029】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ビニルシアン化合物の総量が0〜10重量%、または0.1〜7重量%であってもよく、前記範囲内で、色相特性及び透明性に優れるという効果がある。
【0030】
前記グラフト共重合体樹脂は、共役ジエンゴム20〜70重量%に(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物20〜60重量%、芳香族ビニル化合物7〜30重量%及びビニルシアン化合物0〜10重量%を含むことができる。
【0031】
他の例として、前記共役ジエンゴムは、30〜65重量%または35〜59重量%であってもよく、前記範囲内で、グラフティングがよく形成されて衝撃強度などの機械的物性及び透明度に優れるという効果がある。
【0032】
他の例として、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、25〜55重量%または30〜50重量%であり、前記範囲内で、物性バランスに優れるという効果がある。
【0033】
他の例として、前記芳香族ビニル化合物は、7〜25重量%または10〜20重量%であってもよく、前記範囲内で、非グラフト共重合体との相溶性に優れるという効果がある。
【0034】
他の例として、前記ビニルシアン化合物は、0〜7重量%または0.1〜5重量%であってもよく、前記範囲内で、グラフティング中にコアギュラム(coagulum)が生成されず、色相特性に優れるので、自然色を要求する消費者のニーズを満足させるという効果がある。
【0035】
前記グラフト共重合体樹脂の透明性は、共役ジエンゴムの屈折率及びグラフトされる化合物の屈折率によって決定され、透明性を有するためには、共役ジエンゴムの屈折率と、グラフトされる化合物全体の屈折率との差が、一例として、0.01未満、0.007未満または0.005未満でなければならない。前記共役ジエンゴム及びグラフトされる化合物の屈折率は、ブタジエン1.518、メチルメタクリレート1.49、スチレン1.59、アクリロニトリル1.52、アクリル酸1.527、ポリエチレングリコールモノメタクリレート1.49〜1.52程度である。前記グラフト共重合体樹脂の屈折率(RI)は、次の数式1によって計算される。
【0037】
Wti=共重合体における各成分の重量分率(%)
RIi=共重合体の各成分の高分子の屈折率
【0038】
前記非グラフト共重合体樹脂は、一例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30〜80重量%、芳香族ビニル化合物15〜50重量%及びビニルシアン化合物0〜20重量%を含むことができる。
【0039】
更に他の例として、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、40〜75重量%または50〜70重量%であってもよく、前記範囲内で物性バランスに優れるという効果がある。
【0040】
更に他の例として、前記芳香族ビニル化合物は、20〜45重量%または25〜40重量%であり、前記範囲内で、グラフト重合体との相溶性に優れるという効果がある。
【0041】
更に他の例として、前記ビニルシアン化合物は、0〜15重量%または0.1〜10重量%であってもよく、前記範囲内で色相特性に優れるという効果がある。
【0042】
前記非グラフト共重合体樹脂の屈折率は、前記数式1によって計算され得る。
【0043】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、滑剤及び酸化防止剤をさらに含むことができる。
【0044】
前記熱可塑性樹脂組成物は、透明度(Haze)が、一例として、2.0以下、または1.5〜1.8であってもよく、前記範囲内で透明度に優れるという効果がある。
【0045】
また、本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、有機酸または有機酸塩で凝集したグラフト共重合体樹脂を製造するステップ;及び製造されたグラフト共重合体樹脂10〜90重量%と非グラフト共重合体樹脂90〜10重量%を混合するステップ;を含み、前記有機酸または有機酸塩で凝集したグラフト共重合体樹脂を製造するステップは、共役ジエンゴム20〜70重量%に(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物20〜60重量%、芳香族ビニル化合物7〜30重量%及びビニルシアン化合物0〜10重量%を乳化グラフト重合するステップ;及び前記乳化グラフト重合が終了した後、有機酸または有機酸塩を投入してグラフト共重合体樹脂を凝集させるステップ;を含む。
【0046】
前記グラフト共重合体樹脂は、一例として、乳化重合によって製造することができ、各成分は、一括投入したり、全体又は一部を連続的、段階的、または順次に投入することができる。
【0047】
前記グラフト共重合体の乳化重合に使用される乳化剤としては、一例として、アルキルアリールスルホン酸塩、アルカリメチルアルキル硫酸塩、スルホン化アルキルエステル塩、アルキル(アルケニル)カルボン酸塩、及びアルキル(アルケニル)コハク酸塩からなる群から選択された1種以上である。
【0048】
前記グラフト共重合体は、重合後に凝集剤で凝集した後、脱水及び乾燥を経てパウダー状に作ることができる。
【0049】
前記凝集方法は、特に制限されず、凝集剤などを先に投入し、ラテックスを後で投入するバッチ(batch)凝集方法、凝集剤とラテックスを連続的に投入する連続凝集方法、または機械的なせん断(Shear)を加えて凝集する方法(Mechanical Coagulation)、緩速凝集(Slow coagulation)などがある。
【0050】
前記凝集後、中和剤でグラフト重合体のpHを高めることができ、前記中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはこれらの混合を使用することができる。
【0051】
前記非グラフト共重合体樹脂は、一例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30〜80重量%、芳香族ビニル化合物15〜50重量%及びビニルシアン化合物0〜20重量%を含んで溶液または塊状重合するステップを含んで製造されてもよい。
【0052】
前記非グラフト共重合体樹脂は、一例として、グラフト共重合体樹脂との屈折率の差が0.01 未満 、0.007 未満, または0.005未満であり、前記範囲内で透明度に優れるという効果がある。
【0053】
前記共役ジエンゴムは、二重結合と単一結合が交互に配列された構造である共役化合物の重合体であって、一例として、ブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(NBR)、エチレン−プロピレン共重合体(EPDM)、及びこれらから誘導された重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ブタジエン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、またはこれらの混合が好ましい。
【0054】
前記共役ジエンゴムは、一例として、粒径が800〜4,000Åであり、ゲル含量が60〜95%であり、膨潤指数が12〜40であってもよい。
【0055】
他の例として、前記共役ジエンゴムは、粒径が1,500〜3,500Åであり、ゲル含量が70〜90%であり、膨潤指数が20〜30であってもよく、前記範囲内で、衝撃強度及び加工性に優れるという効果がある。
【0056】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、一例として、メタクリル酸アルキルエステル化合物、アクリル酸アルキルエステル化合物、またはこれらの混合であってもよい。
【0057】
他の例として、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、一例として、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸 2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル及び(メタ)アクリル酸ラウリルエステルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、メチルメタクリレートである。
【0058】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、スチレンである。
【0059】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0060】
また、本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によって製造されることを特徴とする。
【0061】
また、本記載の成形品は、前記の熱可塑性樹脂組成物から製造されることを特徴とする。
【0062】
前記成形品は、一例として、加湿器の部品、洗濯機の部品、コーヒーマシンの部品、浄水器の部品またはおもちゃであってもよい。
【0063】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であるということは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0064】
[実施例]
グラフト共重合体の製造例A−1
グラフト共重合体は、乳化重合法で製造したゲル含量70%、平均粒径が0.3μmであるゴムラテックス50重量%(固形分基準)に、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム乳化剤1.0重量部、メチルメタクリレート35重量%、スチレン12重量%、アクリロニトリル3重量%、第3級ドデシルメルカプタン0.5重量部、エチレンジアミン四酢酸0.05重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.1重量部、硫化第一鉄0.001重量部、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド0.2重量部を、75℃で5時間の間連続的に投入して反応させた。反応後、80℃に昇温した後、1時間熟成させ、反応を終了した後、凝集剤として酢酸3重量部を使用して凝集し、脱水、乾燥を経て、グラフト共重合体の粉末を得た。得られたグラフト共重合体の屈折率は1.516であった(共役ジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の重量%で表示し、残りの物質の投入量に対しては、共役ジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総重量100重量部を基準として表示した)。
【0065】
グラフト共重合体の製造例A−2
前記製造例A−1において、凝集剤としてギ酸1.0重量部、ギ酸ナトリウム1.0重量部を使用したこと以外は、前記製造例A−1と同一の条件下で重合を行うことで、グラフト共重合体の粉末を得た。前記グラフト共重合体の屈折率は1.516であった。
【0066】
グラフト共重合体の製造例A−3
前記製造例A−1において、メチルメタクリレート27.8重量%、スチレン19.2重量%を使用したこと以外は、前記製造例A−1と同一の条件下で重合を行うことで、グラフト共重合体の粉末を得た。前記グラフト共重合体の屈折率は1.53であった。
【0067】
グラフト共重合体の製造例A−4
前記製造例A−1において、凝集剤として硫酸2重量部を使用したこと以外は、前記製造例A−1と同一の条件下で重合を行うことで、グラフト共重合体の粉末を得た。前記グラフト共重合体の屈折率は1.516であった。
【0068】
グラフト共重合体の製造例A−5
前記製造例A−1において、凝集剤として塩化カルシウム2重量部を使用したこと以外は、前記製造例A−1と同一の条件下で重合を行うことで、グラフト共重合体の粉末を得た。前記グラフト共重合体の屈折率は1.516であった。
【0069】
非グラフト共重合体の製造例B−1
メチルメタクリレート70.4重量%、スチレン24.6重量%、アクリロニトリル5重量%に、溶媒としてトルエン30重量部及び分子量調節剤としてジーターシャリードデシルメルカプタン0.15重量部を混合して、平均反応時間が3時間になるように反応槽に連続的に投入し、反応温度を148℃に維持した。反応槽から排出された重合液は、予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体は揮発させ、ポリマーの温度が210℃に維持されるようにして、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて共重合体樹脂をペレット状に加工した。製造された非グラフト共重合体樹脂の屈折率は1.516であった((メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の重量%で表示し、残りの物質の投入量に対しては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の総重量100重量部を基準として表示した)。
【0070】
非グラフト共重合体の製造例B−2
前記製造例B−1において、メチルメタクリレート45重量%、スチレン50重量%及びアクリロニトリル5重量%を使用したこと以外は、前記製造例B−1と同一の条件下で製造した。製造された非グラフト重合体の屈折率は1.542であった。
【0071】
実施例1〜2及び比較例1〜4
前記製造例A−1〜製造例A−5で製造されたグラフト共重合体(A)及び製造例B−1〜B−2で製造された非グラフト共重合体(B)を下記の表1の通りに混合し、滑剤0.3重量部及び酸化防止剤0.2重量部を投入して、220℃のシリンダー温度で2軸押出混練機を用いてペレット状に製造した。このペレットを射出して試片を製造した。
【0072】
[試験例]
前記実施例1〜2及び比較例1〜4で製造された試片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示す。
【0073】
*平均粒径:ダイナミックレーザーライトスキャタリング法でNicomp 370HPL機器(米国、Nicomp社)を用いて測定した。
【0074】
*ゲル含量及び膨潤指数:ゴムラテックスを希酸または金属塩を使用して凝固させた後、洗浄し、60℃の真空オーブンで24時間乾燥した後、得られたゴム塊をはさみで細かく切った後、1gのゴム切片をトルエン100gに入れ、48時間の間、室温の暗室で保管した後、ゾルとゲルに分離し、下記の数式2、3によってゲル含量と膨潤指数を測定した。
【0077】
*屈折率の測定:共重合体の屈折率は、約0.2mmの厚さに薄く伸ばした後、25℃でアッベ屈折計で測定した。
【0078】
*透明度(Haze Value):ASTM1003に準拠して透明度を測定した。
【0079】
*色相(b値):Hunter Lab社のcolor Quest IIを用いてb値(yellowness)を測定した。
【0080】
*湿熱特性(湿熱後の透明度;△Haze):試片を70℃、90%湿度条件のOvenに入れ、1週間保管した後の透明度(Haze Value)を測定した。湿熱の前の透明度と湿熱後の透明度との差を△Hazeで計算した。
【0081】
△Haze=Haze(70℃、90%湿度で1週間保管した後)−Haze(湿熱の前)
【0084】
前記表2に示したように、本記載による実施例1及び実施例2は、湿熱特性、色相及び透明性に優れている。一方、比較例1及び4は、グラフト共重合体と非グラフト共重合体との屈折率の差がそれぞれ0.014及び0.026であって、透明度が低下した。グラフト重合体の凝集剤として硫酸を使用した比較例2は、湿熱特性及び色相が劣悪となり、グラフト重合体の凝集剤として塩化カルシウムを使用した比較例3は、透明性及び湿熱特性がいずれも劣悪となった。