特許第6230184号(P6230184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6230184成膜装置、成膜方法及び金属酸化物薄膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230184
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及び金属酸化物薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20171106BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 49/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C23C14/34 M
   H01L27/105 448
   H01L45/00 Z
   H01L49/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-212676(P2013-212676)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-74812(P2015-74812A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(72)【発明者】
【氏名】福田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】福寿 和紀
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩
(72)【発明者】
【氏名】鄒 弘綱
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−073116(JP,A)
【文献】 特開2008−244018(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0177649(US,A1)
【文献】 特開平07−166377(JP,A)
【文献】 特表2010−514941(JP,A)
【文献】 特開昭58−216246(JP,A)
【文献】 特開2011−149091(JP,A)
【文献】 特開平11−335828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/8239
H01L 27/105
H01L 45/00
H01L 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバの内部に導入された、反応性ガスを含むプロセスガスを排気する真空ポンプを含む排気ラインと、
前記真空チャンバと前記真空ポンプとの間における前記排気ラインに接続され、前記プロセスガスを導入するためのガス導入ラインと、
前記排気ラインと前記ガス導入ラインとの接続点と前記真空チャンバとの間に配置され、前記真空ポンプによる前記真空チャンバの排気速度と前記ガス導入ラインから前記真空チャンバへ導入される前記プロセスガスの流量とを制御可能な制御弁と
を具備する成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記真空チャンバの内部に配置され、前記真空チャンバの内部を成膜室と前記排気ラインに接続される排気室とに区画する筒状の隔壁と、
前記真空チャンバの底壁部と前記隔壁との間に設けられ、前記排気室へ導入された前記プロセスガスを前記成膜室へ供給するガス流路とをさらに具備する
成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記成膜室は、前記底壁部に設置され基板支持用の支持面を有するステージと、前記真空チャンバの天板部に設置され前記ステージに対向するスパッタリング用のターゲットとを含み、
前記ガス流路は、前記支持面よりも前記底壁部側に設けられる
成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記隔壁は、前記天板部に固定される第1の端部と、前記底壁部に前記ガス流路を介して対向する第2の端部とを有する
成膜装置。
【請求項5】
排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部に導入された、反応性ガスを含むプロセスガスを真空ポンプによって排気し、
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、前記プロセスガスを前記真空ポンプによって排気しつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入し、
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属化合物薄膜を形成する
成膜方法。
【請求項6】
請求項に記載の成膜方法であって、
前記真空チャンバは、筒状の隔壁の内部に形成された成膜室と前記隔壁の外部に形成された排気室とを有し、
前記プロセスガスは、前記排気室と、前記隔壁と前記真空チャンバとの間に形成されたガス流路を介して前記成膜室へ導入される
成膜方法。
【請求項7】
排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部に導入された、酸素を含むプロセスガスを真空ポンプによって排気し、
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、前記プロセスガスを前記真空ポンプによって排気しつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入し、
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属酸化物薄膜を形成する
金属酸化物薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、膜中の酸素濃度を高精度に制御することが可能な成膜装置、成膜方法及び金属酸化物薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリには、DRAM(Dynamic Random Access Memory )などの揮発性メモリとフラッシュメモリなどの不揮発性メモリがある。不揮発性メモリとして、NAND型のフラッシュメモリ等が知られているが、さらに微細化が可能なデバイスとして、ReRAM(Resistance RAM)が注目されている。
【0003】
ReRAMは、パルス電圧を受けて抵抗値が変化する可変抵抗体を抵抗素子として利用する。この可変抵抗体は、典型的には、酸化度、すなわち抵抗率の異なる2層以上の金属酸化物層であり、これらを上下電極ではさみこんだ構造をしている。酸化度が異なる酸化物の層構造を形成する方法として、金属からなるターゲットを酸素雰囲気でスパッタする、いわゆる反応性スパッタによって金属酸化物を形成する方法が知られている。例えば特許文献1には、金属からなるターゲットを酸素雰囲気でスパッタするいわゆる反応性スパッタによって、金属酸化物層を基板上に積層する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−244018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸素の流量変化に対する金属酸化物層の抵抗率変化が大きいため、所望の抵抗率を有する金属酸化物層を基板上に均一に形成することは、一般的に困難である。例えば、ターゲット表面やシールド(防着板)表面における導入酸素の吸着等により、目的とする酸素濃度で金属酸化物層を成膜することは困難な場合が多い。特に、制御すべき酸素流量がMFC(マスフローコントローラ)では高精度に制御できない流量レベルであったり、反応性スパッタリングの遷移領域に含まれるような流量であったりすると、所望とする膜質を安定に成膜することはほぼ不可能であった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、反応性ガスの流量を高精度に制御することで目的とする膜質の薄膜を安定に成膜することができる成膜装置、成膜方法及び金属酸化物薄膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、真空チャンバと、排気ラインと、ガス導入ラインと、制御弁とを具備する。
前記排気ラインは、前記真空チャンバの内部を排気可能な真空ポンプを含む。
前記ガス導入ラインは、前記排気ラインに接続され、前記真空チャンバへ反応性ガスを含むプロセスガスを導入する。
前記制御弁は、前記排気ラインと前記ガス導入ラインとの接続点と前記真空チャンバとの間に配置され、前記真空ポンプによる前記真空チャンバの排気速度と前記ガス導入ラインから前記真空チャンバへ導入される前記プロセスガスの流量とを制御可能に構成される。
【0008】
本発明の一形態に係る成膜方法は、排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部を真空ポンプによって排気することを含む。
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、反応性ガスを含むプロセスガスが前記真空ポンプによって排気されつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入される。
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属化合物薄膜が形成される。
【0009】
本発明の一形態に係る金属酸化物薄膜の製造方法は、排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部を真空ポンプによって排気することを含む。
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、酸素を含むプロセスガスが前記真空ポンプによって排気されつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入される。
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属酸化物薄膜が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子の一構成例を示す概略断面図である。
図2】上記抵抗変化素子のオン電流値と低抵抗金属酸化物層の酸素組成比との関係を示す実験結果である。
図3】上記抵抗変化素子の電流−電圧特性を示す実験結果であり、(A)は酸素組成比が1のとき、(B)は酸素組成比が1.5のときをそれぞれ示す。
図4】上記抵抗変化素子のスイッチング特性を示す実験結果であり、(A)は酸素組成比が1のとき、(B)は酸素組成比が1.5のときをそれぞれ示す。
図5】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略側断面図である。
図6図5における[A]−[A]線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る成膜装置は、真空チャンバと、排気ラインと、ガス導入ラインと、制御弁とを具備する。
前記排気ラインは、前記真空チャンバの内部を排気可能な真空ポンプを含む。
前記ガス導入ラインは、前記排気ラインに接続され、前記真空チャンバへ反応性ガスを含むプロセスガスを導入する。
前記制御弁は、前記排気ラインと前記ガス導入ラインとの接続点と前記真空チャンバとの間に配置され、前記真空ポンプによる前記真空チャンバの排気速度と前記ガス導入ラインから前記真空チャンバへ導入される前記プロセスガスの流量とを制御可能に構成される。
【0012】
上記成膜装置においては、排気バルブとして機能する上記制御バルブを介してプロセスガスを真空チャンバ内へ導入可能に構成される。このとき導入されたプロセスガスの大部分は真空ポンプにより排気されることになるが、制御バルブの開度、プロセスガスの導入量等を最適化することで、真空チャンバ内へ拡散するプロセスガスの量を微細に制御することが可能となる。これにより反応性ガスの流量を高精度に制御して目的とする膜質の薄膜を安定に成膜することが可能となる。
【0013】
上記成膜装置は、筒状の隔壁と、ガス流路とをさらに具備してもよい。
上記隔壁は、前記真空チャンバの内部に配置され、前記真空チャンバの内部を成膜室と前記排気ラインに接続される排気室とに区画する。
上記ガス流路は、前記真空チャンバの底壁部と前記隔壁との間に設けられ、前記排気室へ導入された前記プロセスガスを前記成膜室へ供給する。
上記構成によれば、成膜室を区画する隔壁が筒状に形成されているため、排気室から成膜室へプロセスガスが等方的に供給される。これにより基板上における反応性ガスの濃度分布のばらつきが抑えられ、所望の膜特性を有する金属化合物層を基板面内に均一に形成することが可能となる。
【0014】
反応性ガスとしては、酸素、窒素、炭素を含むガスが適用可能であり、目的とする金属化合物層の種類や膜特性に応じて適宜選択される。例えば、金属酸化物層を成膜する場合には反応性ガスとして酸素を用いることができ、添加する酸素量に応じて、金属酸化物層の抵抗率を調整することができる。プロセスガスとしては、上記各種の反応性ガスとスパッタ用ガスのアルゴン等の希ガスとの混合ガスを用いることができる。
【0015】
前記成膜室は、前記底壁部に設置され基板支持用の支持面を有するステージと、前記天板部に設置され前記ステージに対向するスパッタリング用のターゲットとを含んでもよい。この場合、前記ガス流路は、前記支持面よりも前記底壁部側に設けられる。
これにより、ターゲットに対してより離れた位置からプロセスガスを成膜室へ供給することが可能となるため、ターゲット表面の酸化度等のばらつきを低減でき、スパッタ成膜される金属化合物層の面内均一性をより高めることができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る成膜方法は、排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部を真空ポンプによって排気することを含む。
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、反応性ガスを含むプロセスガスが前記真空ポンプによって排気されつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入される。
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属化合物薄膜が形成される。
【0017】
上記成膜方法によれば、制御バルブの開度、プロセスガスの導入量等を最適化することで、真空チャンバ内へ拡散するプロセスガスの量を微細に制御することが可能となる。これにより反応性ガスの流量を高精度に制御して目的とする膜質の薄膜を安定に成膜することが可能となる。
【0018】
前記真空チャンバは、筒状の隔壁の内部に形成された成膜室と前記隔壁の外部に形成された排気室とを有しもよい。この場合、前記プロセスガスは、前記排気室と、前記隔壁と前記真空チャンバとの間に形成されたガス流路を介して前記成膜室へ導入される。
排気室から成膜室へプロセスガスを等方的に供給されるため、基板上における反応性ガスの濃度分布のばらつきが抑えられ、所望の膜特性を有する金属化合物層を基板面内に均一に形成することが可能となる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る金属酸化物薄膜の製造方法は、排気速度を制御可能な制御弁を介して、真空チャンバの内部を真空ポンプによって排気することを含む。
前記制御弁と前記真空ポンプとの間に接続されたガス導入ラインを介して、酸素を含むプロセスガスが前記真空ポンプによって排気されつつ、前記制御弁を介して前記真空チャンバの内部へ導入される。
前記真空チャンバ内で金属製ターゲットを前記プロセスガスのプラズマでスパッタすることで、基板上に金属酸化物薄膜が形成される。
【0020】
上記金属酸化物薄膜の製造方法によれば、制御バルブの開度、プロセスガスの導入量等を最適化することで、真空チャンバ内へ拡散するプロセスガスの量を微細に制御することが可能となる。これにより酸素流量を高精度に制御して目的とする抵抗率を有する金属酸化物薄膜を安定に成膜することが可能となる。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗変化素子の一構成例を示す概略断面図である。本実施形態では、抵抗変化素子を構成する金属酸化物層の成膜に用いられる成膜装置およびその成膜方法を例に挙げて説明する。
【0023】
[抵抗変化素子]
まず、抵抗変化素子の概略構成について説明する。図1に示すように、抵抗変化素子1は、基板2、下部電極層3、第1の金属酸化物層4、第2の金属酸化物層5および上部電極層6を有する。
【0024】
基板2は、例えばシリコン基板で構成されるが、これに限られず、ガラス基板等の他の基板材料が用いられてもよい。
【0025】
下部電極層3は、基板2上に形成され、本実施形態ではPt(白金)で形成される。なお、材料はこれに限定されず、例えばHf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)などの遷移金属、あるいはこれらの合金(TaSi、WSi、TiSiなどのシリコン合金、TaN、WN、TiN、TiAlNなどの窒素化合物、TaCなどの炭素合金等)等を用いることができる。
【0026】
第1の金属酸化物層4は、下部電極層3上に形成される。第2の金属酸化物層5は、第1の金属酸化物層4の上に形成される。第1及び第2の金属酸化物層4,5を構成する金属酸化物は特に限定されず、例えば、ZrOx、HfOx、TiOx、AlOx、SiOx,FeOx、NiOx、CoOx、MnOx、SnOx、ZnOx、VOx、WOx、CuOx等の遷移金属の二元系の酸化物等を用いることができる。本実施形態では、第1及び第2の金属酸化物層4,5は、それぞれ、TaOxで構成される。
【0027】
ここで、第1の金属酸化物層4を構成するTaOxは、第2の金属酸化物層5を構成するTaOxよりも酸化度が低く、酸素欠損を多数含む酸化物であり、その抵抗率は、例えば、1Ωcmより大きく106Ωcm以下である。一方、第2の金属酸化物層5を構成するTaOxは、化学量論組成に近い酸化物であり、その抵抗率は、例えば、106Ωcmより大きい値である。
【0028】
第1及び第2の金属酸化物層4,5は、それぞれ同じ金属からなる酸化物で構成される場合に限られず、それぞれ異なる金属からなる酸化物で構成されてもよい。第1及び第2の金属酸化物層4,5の成膜方法は、本実施形態では反応性スパッタ法が採用される。スパッタ方式は特に限定されず、DCスパッタ、パルスDCスパッタ、RFスパッタ等の適宜の方式が採用可能である。
【0029】
本実施形態の抵抗変化素子1において、第1の金属酸化物層4は、第2の金属酸化物層5よりも酸化度が低いため、第2の金属酸化物層5よりも低い抵抗率を有する。ここで、上部電極層6に負電圧、下部電極層3に正電圧をそれぞれ加えると、高抵抗である第2の金属酸化物層5中の酸素イオン(O2−)が低抵抗である第1の金属酸化物層4中に拡散し、第2の金属酸化物層5の抵抗が低下する(低抵抗状態)。一方、下部電極層3に負電圧、上部電極層6に正電圧をそれぞれ加えると、第1の金属酸化物層4から第2の金属酸化物層5へ酸素イオン(O2−)が拡散し、再び第2の金属酸化物層5の酸化度が高まり、抵抗が高くなる(高抵抗状態)。
【0030】
すなわち、第2の金属酸化物層5は、下部電極層3及び上部電極層6間の電圧を制御することにより、低抵抗状態と高抵抗状態とを可逆的にスイッチングする。さらに、低抵抗状態および高抵抗状態は、電圧が印加されていなくても保持されるため、抵抗変化素子1は不揮発性メモリ素子として利用可能となる。
【0031】
抵抗変化素子(ReRAM)は、次世代メモリ候補の一つであり、高速動作かつ低消費電力の面で近年最も期待されている。そこで抵抗変化素子においては、そのスイッチング動作中(低抵抗状態もしくは低抵抗状態へ遷移したとき)に流れるオン電流は小さい方が、低消費電力になるとともに一度に大量の素子を起動させることができるので、高集積なメモリが期待される。また、スイッチングを繰り返すことで、酸素イオンが拡散するなどの理由により、電気特性が徐々に劣化することがわかり、デバイスの量産化に向けて、信頼性の観点から改善するべき課題があった。
【0032】
本実施形態では、酸素欠乏している金属酸化物層(第1の金属酸化物層4)の酸素組成を制御することで、上記課題を解決した。すなわち、第1の金属酸化物層4の金属成分に対する酸素組成比をRoxy(O/Ta)とすると、1.2≦Roxy≦1.8とすることで、デバイスの低電流化および信頼性の向上を実現することができる。
【0033】
図2に、オン電流における第1の金属酸化物層4の酸素組成比(O/Ta;Roxy)の依存性を示す。Roxyが高くなるほどオン電流値が低下することがわかる。そして、Roxyが1.2未満の場合、オン電流値が1mAを超え、Roxyが1.8を超える場合、オン電流値が10μAを大きく下回り、読み出し時のノイズに埋もれてしまったり、オン/オフ抵抗比(低抵抗と高抵抗との差)が小さくなることで読み出しミスが生じたりする可能性がある。したがって、デバイスの低電流化と、読み出しミスの発生を防止できる好適な酸素組成比は、1.2以上1.8以下である。
【0034】
図3(A)は、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)が1のときの抵抗変化素子のI−V特性を示す一実験結果である。図3(B)は、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)が1.5のときの抵抗変化素子のI−V特性を示す一実験結果である。Roxy=1のときのオン電流値に対して、Roxy=1.5のときのオン電流値が2桁程度低下することが確認された。
【0035】
図4(A)は、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)が1のときの抵抗変化素子のスイッチング特性を示す一実験結果である。図3(B)は、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)が1.5のときの抵抗変化素子のスイッチング特性を示す一実験結果である。図中、横軸はスイッチングの繰り返し回数、縦軸は0.5V印加時の抵抗値であり、黒丸はオン状態、すなわちオン電流が流れるときの抵抗値、白丸はオフ状態、すなわちオフ電流が流れるときの抵抗値をそれぞれ示す。Roxy=1のときはスイッチングを繰り返すことで高抵抗状態が低抵抗化していくのに対して、Roxy=1.5のときは高抵抗状態にバラツキはあるものの、一定以上のオン/オフ電流比を維持しつつ1010回以上ものスイッチングを実現できることが確認された。
【0036】
以上のように、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)を制御することで、素子の低消費電力化を実現でき、これにより一度に大量の素子を起動できることからデバイスの高集積化を図ることが可能となる。また、第1の金属酸化物層4の酸素組成比(Roxy)を制御することで、素子のスイッチング耐久性を向上させ、これによりデバイスの信頼性を高めることができる。
【0037】
本実施形態において、第1及び第2の金属酸化物層4,5は、Ta金属ターゲットを酸素雰囲気中でスパッタする、反応性スパッタリング法で成膜される。膜中の酸素濃度は、典型的には、成膜室に導入される酸素の流量で制御される。
【0038】
しかしながら、酸素の流量変化に対する金属酸化物層の抵抗率変化が大きいため、所望の抵抗率を有する金属酸化物層を基板上に均一に形成することは、一般的に困難である。例えば、ターゲット表面やシールド(防着板)表面における導入酸素の吸着等により、目的とする酸素濃度で金属酸化物層を成膜することは困難な場合が多い。特に、制御すべき酸素流量が、MFC(マスフローコントローラ)では高精度に制御できない流量レベルであったり、反応性スパッタリングの遷移領域に含まれるような流量であったりすると、所望とする膜質を安定に成膜することはほぼ不可能であった。
【0039】
そこで本実施形態では、図5及び図6に示す成膜装置を用いて、第1及び第2の金属酸化物層4,5が形成される。以下、成膜装置の詳細について説明する。
【0040】
[成膜装置]
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る成膜装置を示す概略構成図であり、図5は側断面図、図6図5における[A]−[A]線方向断面図である。本実施形態の成膜装置100は、例えば、抵抗変化素子1の製造工程において第1及び第2の金属酸化物層4,5を成膜するためのスパッタ装置として構成される。
【0041】
成膜装置100は、真空チャンバ10を有する。真空チャンバ10は、アルミニウム、ステンレス等の金属材料で形成され、グランド電位に接続される。真空チャンバ10は、底壁部11と、天板部12と、側壁部13とを有し、内部を所定の真空雰囲気に維持可能に構成される。
【0042】
真空チャンバ10の内部には、基板Wを支持するための支持面31を有するステージ30と、金属ターゲット41(本実施形態では、Taターゲット)を含むターゲットユニット40とがそれぞれ配置される。ステージ30は真空チャンバ10の底壁部11に設けられ、ターゲットユニット40は真空チャンバ10の天板部12に設けられる。ステージ30とターゲットユニット40とは相互に対向するようにそれぞれ配置される。
【0043】
ステージ30には、支持面31に基板Wを静電的あるいは機械的に保持するためのチャッキング機構や、基板Wを所定温度に加熱または冷却するための温調ユニット等が備えられていてもよい。
【0044】
ターゲットユニット40は、ターゲット41を支持するバッキングプレートやターゲット41の表面に磁場を形成する磁気回路等が含まれてもよい。ターゲットユニット40はバッキングプレートに所定の電力(直流、交流又は高周波)を供給するための電力源に接続される。電力源は、ターゲットユニット40の一部として構成されてもよいし、ターゲットユニット40とは別に構成されてもよい。
【0045】
成膜装置100は、真空チャンバ10の内部を成膜室101と排気室102とに区画する筒状の隔壁20を有する。本実施形態において隔壁20は、天板部12に固定される第1の端部21と、底壁部11に対向する第2の端部22とを有する、例えばアルミニウム又はステンレス鋼製の金属板で構成される。
【0046】
隔壁20は、ステージ30およびターゲットユニット40を内部に収容できる大きさの円筒形状を有し、その隔壁20の内部に成膜室101を形成する。成膜室101にはさらに、ステージ30とターゲットユニット40との間の領域の周囲を囲むように円筒形状の防着板23が設置されている。
【0047】
隔壁20の外部には排気室102が形成される。成膜室101及び排気室102を含む真空チャンバ10の内部は、真空チャンバ10に接続された排気ライン50によって所定の真空圧力にまで排気される。排気ライン50は、排気バルブ51と、排気バルブ51を介して排気室102に接続される真空ポンプ52とを含む。排気バルブ51は、開度が調整可能な流量制御弁で構成される。真空ポンプ52には例えばターボ分子ポンプが用いられ、必要に応じて補助ポンプが追加的に接続される。
【0048】
成膜装置100は、成膜用のプロセスガスを導入するためのガス導入ライン60を有する。ガス導入ライン60は、排気ライン50に接続されており、さらに詳しくは、排気バルブ51と真空ポンプ52との間に接続される。
【0049】
すなわち排気バルブ51は、排気ライン50とガス導入ライン60との接続点Jと真空チャンバ10との間に配置された制御バルブとして機能する。排気バルブ51は、真空ポンプ52による真空チャンバ10(排気室102)の排気速度と、ガス導入ライン60から真空チャンバ10(排気室102)へ導入されるプロセスガスの流量とを制御可能に構成される。
【0050】
本実施形態では、プロセスガスとして、スパッタ用ガスのアルゴンガスと反応性ガスである酸素との混合ガスが用いられる。ガス導入ライン60は、メインバルブ61と、メインバルブを介して排気ライン50にそれぞれ接続されるアルゴン導入ライン62aおよび酸素導入ライン62bとを含む。これらの導入ライン62a,62bは、複数のバルブおよびマスフローコントローラ、ガス源等を含む。
【0051】
成膜室101と排気室102とは、ガス流路80を介して相互に連通している。ガス流路80は、真空チャンバ10の側壁13と隔壁20の外周面との間に形成された環状の通路部81と、通路部81に連通し隔壁20の周囲に形成された流路部82とを含む。
【0052】
本実施形態において流路部82は、複数の孔で構成されるが、隔壁20の全周にわたって形成された円弧状のスリット等で構成されてもよい。また流路部82としては、隔壁20の第2の端部22と真空チャンバ10の底壁部11との間の環状の隙間で構成されてもよい。上記孔、スリットあるいは隙間の大きさ(幅あるいは高さ)は特に限定されず、例えば、0.1mm〜1mm程度に設定される。
【0053】
流路部82の形成位置は特に限定されないが、ターゲット41からより離れた位置に流路部82が設けられることで、流路部82を介して成膜室101へ供給される反応性ガス(酸素)によるターゲット41の表面反応(酸化)を抑制することができる。本実施形態では、流路部82は、ステージ30の支持面31よりも真空チャンバ10の底壁部11側に設けられる。
【0054】
成膜装置100は、コントローラ70をさらに有する。コントローラ70は、典型的にはコンピュータで構成され、ターゲットユニット40、排気ライン50(排気バルブ51、真空ポンプ52)、ガス導入ライン60等の動作を制御する。
【0055】
[成膜方法]
次に、本実施形態に係る成膜方法について成膜装置100の一動作例とともに説明する。
【0056】
まず、ステージ30の支持面31に基板Wが載置される。ここでは基板Wとして、下部電極層3が上面に形成された基板2(図1)が用いられる。次に、コントローラ70は排気ライン50を駆動し、隔壁20の内部に形成された成膜室101と隔壁20の外部に形成された排気室102とをそれぞれ所定の減圧雰囲気に真空排気する。成膜室101は、ガス流路80および排気室102を介して排気ライン50により排気される。
【0057】
成膜室101および排気室102が所定の真空圧力に到達した後、コントローラ70はガス導入ライン60を駆動し、排気バルブ51を介して排気室102へプロセスガスを導入する。
【0058】
この際、真空ポンプ52は継続して駆動されている。したがって導入されたプロセスガスの大部分は真空ポンプ52により排気されることになるが、排気ライン50を介してプロセスガスが排気室102内へ拡散し得るように、排気バルブ51の開度、プロセスガスの導入量等を設定される。これにより排気室102内へ拡散するプロセスガスの量を微細に制御しつつ、排気室102へ所定流量のプロセスガスを導入することができる。
【0059】
例えば、真空ポンプ52の排気速度を800L/sec、排気バルブ51の開度を4〜16%に設定することで、1.0sccmのガス導入量の設定に対して、排気室102内へ約0.1〜0.40sccmの流量のプロセスガスが導入可能である。例えば、排気バルブ51の開度を10%とし、ガス導入量を1.0sccmに設定したとき、排気室102内へ約0.25sccmのプロセスガスが導入可能である。
【0060】
本実施形態においてプロセスガスとしては、アルゴンと酸素の混合ガスが用いられる。アルゴンと酸素との混合比は特に限定されず、成膜するべき金属酸化物層の抵抗率によって酸素の添加量が調整される。上述のように成膜装置100は、図1に示した抵抗変化素子1における第1,第2の金属酸化物層4,5の成膜に用いられる。
【0061】
本実施形態では、第1の金属酸化物層4の成膜時には、酸素組成比(Roxy)が1.2以上1.8以下であるタンタル酸化物を成膜できる酸素流量(第1の流量)に設定され、第2の金属酸化物5の成膜時には、化学量論組成のタンタル酸化物を成膜できる酸素流量(第2の流量)に設定される。第1および第2の流量は、酸素導入ライン62bにより設定され、酸素導入ライン62bによる流量設定は、コントローラ70により制御される。
【0062】
第1の流量の例として、酸素組成比(Roxy)が1.2、1.5及び1.8のときの酸素流量はそれぞれ10.0sccm、10.2sccm及び10.4sccmである。一方、第2の流量は、例えば、15sccmである。なお、図示しない化学量論組成のタンタル酸化物からなるターゲットを備え、例えば酸素流量10sccmで第2の金属酸化物層を形成してもよい。
【0063】
排気室102へ導入されたプロセスガスは、ガス流路80を介して成膜室101へ供給される。排気室102へのプロセスガスの導入により、成膜室101は排気室102よりも低圧となる。この状態を維持して、排気室102に導入されたプロセスガスは、真空チャンバ10と隔壁20との間に形成されたガス流路80(通路部81、流路部82)を介して成膜室101へ等方的に拡散する。
【0064】
一方、コントローラ70は、ターゲットユニット40を制御することで成膜室101内にプロセスガスのプラズマを形成する。プラズマ中のアルゴンイオンはターゲット41をスパッタし、ターゲット41から飛び出したスパッタ粒子は酸素と反応し、生成された酸化タンタル粒子は基板Wの表面に堆積する。これにより基板W上にタンタル酸化物(TaOx)層が成膜される。
【0065】
コントローラ70は、排気バルブ51の流量制御により、成膜対象を第1の金属酸化物層4から第2の金属酸化物層5へ切り替える。本実施形態では、酸素流量が上記第1の流量に設定されることで第1の金属酸化物層4が成膜され、酸素流量が上記第2の流量に設定されることで第2の金属酸化物層5が成膜される。これにより同一の真空チャンバ10において抵抗率が相互に異なる第1の金属酸化物層4と第2の金属酸化物層との連続成膜が可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0066】
以上のように本実施形態においては、排気バルブ51を介してプロセスガスを真空チャンバ10内へ導入可能に構成されているため、排気バルブ51に対するプロセスガスのコンダクタンスや排気ライン50の排気速度等に応じた量のプロセスガスが真空チャンバ10内に導入される。これにより微細な流量制御を高精度に実現することができる。したがって反応性ガスの流量を高精度に制御して目的とする抵抗率を有する薄膜を安定に成膜することが可能となる。
【0067】
また本実施形態においては、成膜室101と排気室102との間の圧力差を利用して、プロセスガスがガス流路80を介して排気室102から成膜室101へ供給される。このとき隔壁20が筒状に形成されているため、排気室102から成膜室101へプロセスガスが等方的に供給される。これにより基板W上におけるプロセスガス中の酸素の濃度分布のばらつきが抑えられ、所望の膜特性を有する金属化合物層を基板Wの面内に均一に形成することが可能となる。
【0068】
さらに本実施形態においては、隔壁20と真空チャンバ10の底壁部11との間に形成された流路部82を介してプロセスガスが成膜室101へ供給されるように構成される。これにより、真空チャンバ10の天板部12に設置されたターゲット41に対してより離れた位置からプロセスガスを成膜室101へ供給することが可能となるため、プロセスガス中の酸素との接触によるターゲット41の酸化が抑制される。これによりターゲット41表面の酸化度のばらつきを低減でき、スパッタ成膜される金属酸化物層の抵抗率の面内均一性を高めることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
例えば以上の実施形態に係る抵抗変化素子1においては、第1の金属酸化物層4の酸素組成が化学量論量よりも少なく、第2の金属酸化物層5の酸素組成が化学量論量となるように構成されたが、これに代えて、第1の金属酸化物層4の酸素組成が化学量論量、第2の金属酸化物層5の酸素組成が化学量論量よりも少なく構成されてもよい。
【0071】
また以上の実施形態では、プロセスガスに添加される反応性ガスに酸素を用いたが、反応性ガスの種類は目的とする金属化合物層の種類や膜特性に応じて適宜選定可能であり、例えば金属窒化物層を形成する場合には窒素を含むガス(例えばアンモニア)が選択され、金属炭化物層を形成する場合には炭素を含むガス(例えばメタン)が選択可能である。
【0072】
また以上の実施形態では、成膜室101と排気室102とを区画する隔壁20を備えた成膜装置100を例に挙げて説明したが、隔壁20は必要に応じて省略されてもよい。
【0073】
また以上の実施形態では、それぞれ単一の排気ライン50およびガス導入ライン60を備えた成膜装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、排気ライン50及び/又はガス導入ライン60は複数設けられてもよい。
【0074】
さらに以上の実施形態では、成膜装置としてスパッタ装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、CVD装置や真空蒸着装置など、反応性ガスを含むプロセスガスを用いて真空中で成膜する各種成膜装置および成膜方法にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…抵抗変化素子
4,5…金属酸化物層
10…真空チャンバ
20…隔壁
30…ステージ
40…ターゲットユニット
50…排気ライン
51…排気バルブ
52…真空ポンプ
60…ガス導入ライン
70…コントローラ
80…ガス流路
81…通路部
82…流路部
100…成膜装置
101…成膜室
102…排気室
図1
図2
図3
図4
図5
図6