特許第6231017号(P6231017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231017特定の硫黄含有化合物および糖アルコールまたはポリカルボン酸を含む、ポスト化学機械研磨(ポストCMP)洗浄組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231017
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】特定の硫黄含有化合物および糖アルコールまたはポリカルボン酸を含む、ポスト化学機械研磨(ポストCMP)洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171106BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20171106BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
   H01L21/304 622Q
   H01L21/88 M
   C11D7/34
   C11D3/34
   C11D3/20
   C11D1/68
   C11D1/72
   C11D1/722
   C11D3/37
   C11D7/22
【請求項の数】17
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-555353(P2014-555353)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-512959(P2015-512959A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】IB2013050625
(87)【国際公開番号】WO2013118013
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】61/595,180
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユイチュオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン,シャム スンダール
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ミンチエ
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−194049(JP,A)
【文献】 特表2007−526647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 1/68
C11D 1/72
C11D 1/722
C11D 3/20
C11D 3/34
C11D 3/37
C11D 7/22
C11D 7/34
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)またはチオカルボニル(>C=S)基(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む少なくとも1種の化合物、
(B)エリスリトール、トレイトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物、
(C)水性媒体
を含み、及び
化合物(A)が、少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)、またはチオカルボニル(>C=S)基および少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基(式中、R、R、RおよびRは、(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む化合物である、ポスト化学機械研磨(ポストCMP)洗浄組成物
【請求項2】
(A)少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)またはチオカルボニル(>C=S)基(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む少なくとも1種の化合物、
(B)エリスリトール、トレイトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物、
(C)水性媒体
を含み、及び
(E1)(e11)5〜20個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基、および
(e12)オキシエチレンモノマー単位からなる少なくとも1つの親水基
を有する、両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性界面活性剤;
(E2)(e21)5〜20個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基、ならびに
(e22)(e221)オキシエチレンモノマー単位、および
(e222)少なくとも1種類の置換オキシアルキレンモノマー単位(この置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル−シクロアルキル、アルキル−アリール、シクロアルキル−アリールおよびアルキル−シクロアルキル−アリール基からなる群から選択される)
を含むポリオキシアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つの親水基であって、
(e22)の前記ポリオキシアルキレン基が、ランダム、交互、勾配および/またはブロック状の分布でモノマー単位(e221)および(e222)を含有する親水基
を有する、両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性界面活性剤;ならびに
(E3)両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性アルキルポリグルコシド界面活性剤
からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤(E)をさらに含む、ポスト化学機械研磨(ポストCMP)洗浄組成物
【請求項3】
化合物(A)が、少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)、またはチオカルボニル(>C=S)基および少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基(式中、R、R、RおよびRは、(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む化合物である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
化合物(A)が、チオウレアまたはその誘導体である、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項5】
化合物(A)が、少なくとも1つのチオール(−SH)もしくはチオエーテル(−SR)基を含むアミノ酸、またはこのアミノ酸の誘導体(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)である、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項6】
化合物(A)が、システイン、シスチン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、またはその誘導体である、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の金属キレート剤(D)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、クエン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、メリト酸ならびにオリゴマー性およびポリマー性ポリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の金属キレート剤(D)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の界面活性剤(E)をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
マイクロエレクトロニクスデバイスを製造するのに有用な半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するために、請求項1から9のいずれか一項に記載のポストCMP洗浄組成物を使用する方法。
【請求項11】
ポストCMP洗浄組成物が、4〜8の範囲のpH値を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
残留物および汚染物質が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含み、表面が銅含有表面である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化学機械研磨後、洗浄組成物が、
−銅を含有する、または銅からなる導電層、
−低kまたは超低k誘電体材料からなる電気絶縁性誘電層、および
−タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、ルテニウム、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、または窒化ルテニウムタングステンを含有する、またはこれらからなるバリア層
を含む半導体基板の表面から、残留物および汚染物質を除去するために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
半導体基板を、請求項1から9のいずれか一項に記載のポストCMP洗浄組成物と少なくとも1回接触させることにより、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去する工程を含む、半導体基板からマイクロエレクトロニクスデバイスを製造するための方法。
【請求項15】
洗浄組成物が、4〜8の範囲のpH値を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
残留物および汚染物質がベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含み、表面が銅含有表面である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
半導体基板が、
−銅を含有する、または銅からなる導電層、
−低kまたは超低k誘電体材料からなる電気絶縁性誘電層、および
−タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、ルテニウム、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、または窒化ルテニウムタングステンを含有する、またはこれらからなるバリア層
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポスト化学機械研磨(ポストCMP)洗浄組成物および半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するためのその使用に基本的に関する。さらに、本発明は、CMP後、ベンゾトリアゾールを含む残留物および汚染物質を除去するためのポストCMP洗浄組成物の使用に関する。特に、本発明は、CMP後、導電層(例えば銅層など)、電気絶縁性誘電層(例えば、低kまたは超低k誘電体材料層など)およびバリア層(例えば、タンタル、窒化タンタル、窒化チタンまたはルテニウム層など)を含む、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するためのポストCMP洗浄組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体業界において、化学機械研磨(略してCMP)は、最先端の光量子、マイクロエレクトロメカニカル、ならびにマイクロエレクトロニクス材料およびデバイス、例えば、半導体ウエハーなどの製作において適用されている周知の技術である。
【0003】
半導体業界において使用されている材料およびデバイスの製作中に、CMPは、金属および/または酸化物表面を平坦化するために使用されている。CMPは、化学的作用および機械的作用の相互作用を利用することによって、研磨対象表面の平坦性を達成する。CMPプロセスそれ自体は、制御された圧力および温度下で、CMPスラリーの存在下で、湿った研磨パッドに対して、半導体デバイスの薄い、平坦な基板を保持および回転させることを含む。CMPスラリーは、特定のCMPプロセスおよび必要条件に対して適当な研磨材料および様々な化学添加剤を含有する。CMPプロセス後、CMPスラリーからの粒子、添加した化学物質、および反応副生成物を含む汚染物質および残留物は、研磨された基板表面上に残存したままである。CMPプロセシング後、基板上に残されたこれらの残留物は、腐食阻害剤化合物、例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)なども含まれている可能性があり、これらの化合物は、例えば、銅イオン濃度がCMP中に銅阻害剤複合体の最大溶解度を超えた場合、溶液から沈殿し、凝固して表面残留物となり得る。加えて、銅/低kまたは超低k誘電体材料を有する基板表面の研磨は、多くの場合、CMP後に表面上に沈降する、炭素を豊富に含む粒子を生成する。
【0004】
しかし、デバイス信頼性が低下すること、およびマイクロエレクトロニクスデバイスに欠陥が生じてしまうことを避けるために、すべての残留物および汚染物質は、マイクロエレクトロニクスデバイスの製作プロセスにおいてこれ以上先の工程へ進む前に除去しなければならない。
【0005】
最新技術において、糖アルコールまたはその誘導体を含むポストCMP洗浄組成物は公知であり、例えば、以下の参照において記載されている。
【0006】
US7922823B2は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板をプロセシングすることによって、所望しない材料をそこから除去する方法であって、CMP後に、マイクロエレクトロニクスデバイス基板を、以下を含む組成物:(i)アルカノールアミン、(ii)第四級アンモニウム水酸化物および(iii)特定の錯化剤(この錯化剤として、(中でも)グリセロール、ソルビトール、キシリトールを挙げることができるが、ただし、錯化剤はクエン酸を含まないことを条件とする)の有効量と接触させることを含む方法を開示している。US7922823B2において記載されている組成物APは、9%のモノエタノールアミン、5%のテトラメチル水酸化アンモニウム、3.8%のソルビトール、バランスウォーターを含有し、良好な洗浄効力を示す。
【0007】
最新技術では、ポリカルボン酸を含むポストCMP洗浄組成物が公知であり、例えば以下の参考文献に記載されている。
【0008】
US7087562B2は、1、2種類またはそれ以上の種類の脂肪族ポリカルボン酸、ならびにグリオキシル酸、アスコルビン酸、グルコース、フルクトース、ラクトース、およびマンノースからなる群から選択される1、2種類またはそれ以上の種類からなるポストCMP洗浄液組成物であって、3.0未満のpHを有する洗浄液組成物を開示している。
【0009】
US2010/0286014A1は、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種の分散剤、少なくとも1種のスルホン酸含有炭化水素、および水を含む酸性組成物であって、前記残留物および汚染物質をその上に有するマイクロエレクトロニクスデバイスから残留物および汚染物質を洗浄するのに適切な酸性組成物を開示している。例えば、組成物は、配合物A、BまたはCのうちの1つを含む:アルキルベンゼンスルホン酸、ポリアクリル酸およびメタンスルホン酸(配合物A);ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアクリル酸およびメタンスルホン酸(配合物B);またはドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアクリル酸、メタンスルホン酸、およびクエン酸(配合物C)。
【0010】
最新技術では、チオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基を含む化合物を含有するポストCMP洗浄組成物が公知であり、例えば、以下の参考文献に記載されている。
【0011】
US2005/0197266A1は、半導体ワークピースを洗浄するための組成物であって、以下を含む組成物を開示している:
(a)以下からなる群から選択される洗浄剤:(i)クエン酸アンモニウム;(ii)シュウ酸アンモニウム;(iii)アスパラギン酸;(iv)安息香酸;(v)クエン酸;(vi)システイン;(vii)グリシン;(viii)グルコン酸;(ix)グルタミン酸;(x)ヒスチジン;(xi)マレイン酸;(xii)シュウ酸;(xiii)プロピオン酸;(xiv)サリチル酸;(xv)酒石酸;(xvi)およびこれらの混合物;ならびに
(b)以下からなる群から選択される腐食阻害化合物:(i)アスコルビン酸;(ii)ベンゾトリアゾール;(iii)カフェイン酸;(iv)ケイヒ酸;(v)システイン;(vi)グルコース;(vii)イミダゾール;(viii)メルカプトチアゾリン;(ix)メルカプトエタノール;(x)メルカプトプロピオン酸;(xi)メルカプトベンゾチアゾール;(xii)メルカプトメチルイミダゾール;(xiii)タンニン酸;(xiv)チオグリセロール;(xv)チオサリチル酸;(xvi)トリアゾール;(xvii)バニリン;(xviii)バリニン酸;(xix)およびこれらの混合物。例えば、洗浄組成物は、クエン酸アンモニウム、アスコルビン酸、およびシステインを含む。
【0012】
WO2011/000694A1は、(a)少なくとも1つの第一級アミノ基および少なくとも1つのメルカプト基を有する少なくとも1種のチオアミノ酸、(b)少なくとも1種の第四級アンモニウム水酸化物、(c)少なくとも1種の特定のキレート剤および/または腐食阻害剤、ならびに(d)湿潤性があり、0℃より下の融点を有する少なくとも1種の有機溶媒を含む水性のアルカリ性洗浄組成物を開示している。例えば、洗浄組成物は、L−システイン、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下TMAHと呼ぶ)、エチレンジアミン、ならびにジエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。
【0013】
WO2011/000758A1は、(a)少なくとも1つの第二級または第三級アミノ基および少なくとも1つのメルカプト基を有する少なくとも1種のチオアミノ酸、ならびに(b)少なくとも1種の第四級アンモニウム水酸化物を含む水性アルカリ性洗浄組成物を開示している。例えば、洗浄組成物は、N−アセチルシステイン、TMAH、エチレンジアミン、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。別の実施例では,洗浄組成物は、N−アセチルシステイン、TMAH、ジエチレントリアミン、1,2,4−トリアゾール、クエン酸、および界面活性剤、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールまたはポリオキシエチレンソルビタンラウレートなどを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US7922823B2
【特許文献2】US7087562B2
【特許文献3】US2010/0286014A1
【特許文献4】US2005/0197266A1
【特許文献5】WO2011/000694A1
【特許文献6】WO2011/000758A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の1つは、銅含有マイクロエレクトロニクス基板のポストCMP洗浄プロセスに適当であり、改善された洗浄性能、特に
(i)銅含有表面の望ましくない腐食を効果的に予防すること、または
(ii)CMP工程後に残存する残留物および汚染物質を高い効率で除去すること、または
(iii)パッシベーション膜、特にベンゾトリアゾール膜を銅含有表面から高い効率で除去すること、または
(iv)4〜8などの中程度のpH範囲に適応できること、または
(v)(i)〜(iv)の組み合わせ
を示すポストCMP洗浄組成物およびポストCMP洗浄方法を提供することであった。
【0016】
さらに、本発明の目的の1つは、環境上および安全性の懸念を引き起こす可能性のある有機溶媒をまったく含有しないか、最小量でしか含有しないポストCMP洗浄組成物を提供することであった。さらに、本発明の目的の1つは、銅含有表面の表面粗さを増加させない、またはその上の欠陥を増加させないポストCMP洗浄組成物を提供することであった。最後に、しかし特に、ポストCMP洗浄プロセスは、適用するのが簡単であり、できるだけ少ない工程しか必要としないことが追求された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、
(A)少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)またはチオカルボニル(>C=S)基、(式中、Rはアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む少なくとも1種の化合物、
(B)少なくとも3つのヒドロキシル(−OH)基を含有し、いかなるカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基も含まない少なくとも1種の糖アルコール、および
(C)水性媒体
を含むポストCMP洗浄組成物が見出された。本発明のこのポストCMP洗浄組成物は、以下(Q1)または組成物(Q1)と呼ぶ。
【0018】
本発明の別の態様によると、
(A)少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)またはチオカルボニル(>C=S)基、(式中、Rはアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む少なくとも1種の化合物、
(L)少なくとも1種のオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含むポストCMP洗浄組成物が見出された。本発明のこのポストCMP洗浄組成物は、以下(Q2)または組成物(Q2)と呼ぶ。
【0019】
(Q1)および/または(Q2)は以下一般的に(Q)または組成物(Q)と呼ぶ。
【0020】
さらに、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造に対して有用な、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するための組成物(Q)の使用が見出された。
【0021】
さらに、半導体基板を、組成物(Q)と少なくとも1回接触させることにより、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去する工程を含む、半導体基板からマイクロエレクトロニクスデバイスを製造するための方法が見出された。本発明のこの方法は、以下方法(P)と呼ぶ。
【0022】
好ましい実施形態は、特許請求の範囲および明細書において説明されている。好ましい実施形態の組み合わせは本発明の範囲内であることは理解されている。
【発明の効果】
【0023】
上記に考察された従来の技術を考慮して、本発明の根底にある目的が、組成物(Q)および方法(P)により解決できることは、当業者にとって驚くべきことであり、予想することができなかった。
【0024】
特に驚くべきことには、組成物(Q)および方法(P)は、電気デバイス、特に、半導体集積回路(IC)、より好ましくは、LSI(大規模集積)またはVLSI(超大規模集積)を有するICを製作するのに有用な基板のポストプロセシングに見事に適していたことであった。さらに驚くべきことには、組成物(Q)および方法(P)は、中でも表面処理、めっき前処理洗浄、ポストエッチング洗浄および/またはポストCMP洗浄工程を含めた高精度の製作法に最も見事に適していた。組成物(Q)および方法(P)は、上述の洗浄工程、特に半導体ウエハーのポストCMP洗浄、特に銅ダマシンまたはデュアルダマシンプロセスによるLSIまたはVLSIを有するICの製作を行うのに特に最もよく適している。
【0025】
基板の表面処理、堆積、プレーティング、エッチングおよびCMP中に(特にCMP中に)生成されるすべての種類の残留物および汚染物質を、組成物(Q)および方法(P)は、最も効率的に除去し、電気デバイスおよび光学デバイス、特にICの機能に有害な影響を及ぼす恐れがある、またはこれらの意図する機能を無効にしてしまう恐れさえある残留物および汚染物質が、基板、特にICに含まれないことを確実にした。特に、ダマシン構造における銅金属化のスクラッチング、エッチングおよび粗化は、組成物(Q)および方法(P)により防止された。さらに、パッシベーション膜、特にベンゾトリアゾール膜もまた、組成物(Q)および方法(P)により銅含有表面から完全に除去された。さらに、銅含有表面の腐食は、組成物(Q)および方法(P)により防止された。最後に、しかし特に、組成物(Q)および方法(P)は、中程度のpH範囲、例えば、4〜8などで適用可能であった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
マイクロエレクトロニクスデバイスを製造するのに有用な半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するために組成物(Q)が使用される。前記残留物および汚染物質は、これらに限定されないが、研磨粒子、処理残留物、金属酸化物(銅酸化物を含む)、金属イオン、塩、パッシベーション膜、および擦り取られたまたは分解した低kまたは超低k誘電体材料を含めた、任意の残留物および汚染物質であることができる。前記残留物および汚染物質は好ましくは、パッシベーション膜を含み、より好ましくはNヘテロ環式化合物を含み、最も好ましくはジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、またはその誘導体を含み、特に好ましくはベンゾトリアゾール、またはその誘導体を含み、例えばベンゾトリアゾールを含む。特に、(Q)は、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含めた残留物および汚染物質を、CMP後、半導体基板の銅含有表面から除去するために使用される。例えば、(Q)は、ベンゾトリアゾールを含むパッシベーション膜を、CMP後、半導体基板の銅含有表面から除去するために使用される。
【0027】
好ましくは、組成物(Q)は、CMP後、マイクロエレクトロニクスデバイスを製造するのに有用な半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去するために使用される。より好ましくは、組成物(Q)は、CMP工程において前記表面が研磨された後で、前記表面から残留物および汚染物質を除去するために使用される。
【0028】
前記半導体基板は、好ましくは、導電層、電気絶縁性誘電層およびバリア層を含み、より好ましくは、
−銅を含有する、または銅からなる導電層、
−低kまたは超低k誘電体材料からなる電気絶縁性誘電層、および
−タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、ルテニウム、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、または窒化ルテニウムタングステンを含有する、またはこれらからなるバリア層
を含む。
【0029】
組成物(Q)は、有利なことには、他の目的のために使用することができるが、特に方法(P)によく適している。
【0030】
マイクロエレクトロニクスデバイスは、方法(P)により半導体基板から製造することができ、この方法(P)は、半導体基板を組成物(Q)と少なくとも1回接触させることにより、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去する工程を含む。前記残留物および汚染物質は、好ましくはパッシベーション膜を含み、より好ましくは、Nヘテロ環式化合物を含み、最も好ましくは、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、またはその誘導体を含み、特に好ましくはベンゾトリアゾール、またはその誘導体を含み、例えばベンゾトリアゾールを含む。特に、(P)は、半導体基板を(Q)と少なくとも1回接触させることにより、半導体基板の銅含有表面からベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含む残留物および汚染物質を除去する工程を含む。
【0031】
好ましくは、方法(P)は、CMP後、半導体基板を組成物(Q)と少なくとも1回接触させることにより、半導体基板の表面から残留物および汚染物質を除去する工程を含む。より好ましくは、方法(P)は、半導体基板の表面がCMP工程で研磨された後に、半導体基板を組成物(Q)と少なくとも1回接触させることにより、前記表面から残留物および汚染物質を除去する工程を含む。
【0032】
方法(P)は、ポストCMP洗浄ばかりでなく、フォトレジストストリッピングおよびポストエッチングの残留物除去にも使用することができる。しかし、方法(P)は、上に記載された半導体基板のポストCMP洗浄においてその特定の利点を示す。
【0033】
組成物(Q)は、少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)またはチオカルボニル(>C=S)基(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む、少なくとも1種の化合物(A)を含む。好ましくは、組成物(Q)は1種の化合物(A)を含む。
【0034】
一般的に、化合物(A)は、組成物(Q)中に異なる量で含有することができ、(A)の量または濃度は、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に従い調節することができる。(A)の量は、好ましくは、組成物(Q)の総質量に対して、1.5質量パーセント(以下「質量%」と呼ぶ)以下、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下、特に0.07質量%以下、例えば0.05質量%以下である。(A)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、好ましくは少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.004質量%、特に少なくとも0.01質量%、例えば少なくとも0.03質量%である。
【0035】
好ましくは、化合物(A)は、
(A1)少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)、またはチオカルボニル(>C=S)基および
(A2)少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基、
(式中、R、R、RおよびRは、(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
を含む化合物である。(A2)部分に対して、一般的にアミノ基、−NHおよび−NHRがさらに好ましく、アミノ基−NHが最も好ましい。
【0036】
一実施形態によると、化合物(A)は、好ましくは、
(A1)少なくとも1つのチオカルボニル(>C=S)基および
(A2)少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基、
(式中、R、RおよびRは、(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
を含む化合物である。より好ましくは、(A)は、
(A1)1つのチオカルボニル(>C=S)基、および
(A2)少なくとも2つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基
を含む化合物である。最も好ましくは、(A)はチオウレアまたはその誘導体である。特に、(A)はチオウレアである。
【0037】
別の実施形態によると、化合物(A)は、好ましくは、
(A1)少なくとも1つのチオール(−SH)、またはチオエーテル(−SR)基、および
(A2)少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基
(式中、R、R、RおよびRは、(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)、
を含む化合物である。より好ましくは、(A)は、少なくとも1つのチオール(−SH)またはチオエーテル(−SR)基を含むアミノ酸、またはこのアミノ酸の誘導体(式中、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)である。最も好ましくは、(A)は、少なくとも1つのチオール(−SH)基を含むアミノ酸またはこのアミノ酸の誘導体である。特に、(A)は、1つのチオール(−SH)基を含むアミノ酸またはこのアミノ酸の誘導体である。特に好ましくは、(A)は、システイン、シスチン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、またはその誘導体である。例えば、(A)はシステインまたはN−アセチルシステインである。
【0038】
は、一般的に、任意の置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であることができる。Rは、好ましくはアルキル、より好ましくは非置換アルキル、最も好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C10アルキル、例えばC〜Cアルキルである。
【0039】
は、一般的に、任意の置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であることができる。Rは、好ましくはアルキル、より好ましくは非置換アルキル、最も好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C10アルキル、例えばC〜Cアルキルである。
【0040】
は、一般的に、任意の置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であることができる。Rは、好ましくはアルキル、より好ましくは非置換アルキル、最も好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C10アルキル、例えばC〜Cアルキルである。
【0041】
は、一般的に、任意の置換または非置換のアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基であることができる。Rは、好ましくはアルキル、より好ましくは非置換アルキル、最も好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C10アルキル、例えばC〜Cアルキルである。
【0042】
組成物(Q1)は、少なくとも3つのヒドロキシル(−OH)基を含有し、いかなるカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基も含まない少なくとも1種の糖アルコールを含む。組成物(Q2)は、少なくとも3つのヒドロキシル(−OH)基を含有し、いかなるカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基も含まない少なくとも1種の糖アルコールを場合によってさらに含むことができる。
【0043】
一般的に、前記糖アルコール(B)は、組成物(Q)中に異なる量で含有することができ、(B)の量または濃度は、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に従い調節することができる。好ましくは、(B)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば0.06質量%以下である。好ましくは、(B)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0005質量%であり、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.007質量%、特に少なくとも0.02質量%、例えば少なくとも0.04質量%である。
【0044】
一般的に、糖アルコールは、水素化した形態の炭水化物であり、そのカルボニル基またはアセタール基は、第一級または第二級ヒドロキシル基へと還元される。
【0045】
前記糖アルコール(B)は、好ましくは少なくとも4つのヒドロキシル(−OH)基、より好ましくは4〜18個のヒドロキシル(−OH)基、最も好ましくは4〜9つのヒドロキシル(−OH)基、特に4〜6つのヒドロキシル(−OH)基、例えば4つのヒドロキシル(−OH)基を含有する。
【0046】
一般的に、前記糖アルコール(B)中に含有されているヒドロキシル(−OH)基は、任意の種類のヒドロキシル(−OH)基であることができる。好ましくは、前記ヒドロキシル(−OH)基は、水性媒体中で基本的に解離性のないようなヒドロキシル(−OH)基であり、より好ましくは、前記ヒドロキシル(−OH)基は、水性媒体中で解離性のないようなヒドロキシル(−OH)基である。
【0047】
一般的に、前記糖アルコール(B)は、飽和した糖アルコールであることができ、すなわち、いかなるC−C二重結合または三重結合も含まない糖アルコール、または不飽和糖アルコール、すなわち、少なくとも1つのC−C二重結合または三重結合を含む糖アルコールであることができる。好ましくは、(B)は飽和した糖アルコールである。より好ましくは、(B)は、少なくとも4つのヒドロキシル(−OH)基を含有する飽和した糖アルコールである。
【0048】
一般的に、前記糖アルコール(B)は、置換または非置換の糖アルコールであることができ、好ましくは、O−置換(すなわち、糖アルコールの酸素原子のうちの少なくとも1個の上で置換されている)または非置換の糖アルコールであり、より好ましくはモノ−O−置換(すなわち、糖アルコールの酸素原子の1個の上で置換されている)または非置換の糖アルコールであり、最も好ましくは非置換の糖アルコールである。モノ−O−置換の糖アルコール(B)に対する例として、イソマルト、マルチトール、またはラクチトールがあり、非置換の糖アルコール(B)に対する例として、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イジトール、またはイノシトールがある。
【0049】
好ましくは、前記糖アルコール(B)は、
(B1)テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール、ヘプチトール、およびオクチトールからなる群から選択されるアルジトール、またはそのダイマーもしくはオリゴマー、または
(B2)シクリトール、またはそのダイマーもしくはオリゴマー、または
(B3)ペンタエリトリトール、またはそのダイマーもしくはオリゴマー、
またはこれらの混合物である。より好ましくは、(B)は(B1)である。最も好ましくは、(B)はテトリトール、ペンチトール、もしくはヘキシトール、またはこれらの混合物である。特に好ましくは、(B)はエリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イジトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物である。最も特に好ましくは、(B)は、エリスリトール、トレイトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、もしくはその立体異性体またはこれらの混合物である。特に、(B)はエリスリトール、トレイトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物である。例えば、(B)はエリスリトールである。
【0050】
前記糖アルコール(B)が(B2)である実施形態では、(B2)は、より好ましくはO−置換または非置換のイノシトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物であり、(B2)は、最も好ましくは非置換のイノシトール、もしくはその立体異性体、またはこれらの混合物であり、(B2)は、例えばイノシトールである。
【0051】
本発明によると、組成物(Q)は水性媒体(C)を含有する。(C)は、1種類の水性媒体、または異なる種類の水性媒体の混合物であることができる。
【0052】
一般的に、水性媒体(C)は、水を含有する任意の媒体であることができる。好ましくは、水性媒体(C)は、水と、水に対して混和性のある有機溶媒(例えば、アルコール、好ましくはC〜Cアルコール、またはアルキレングリコール誘導体)との混合物である。より好ましくは、水性媒体(C)は水である。最も好ましくは、水性媒体(C)は脱イオン水である。
【0053】
(C)以外の構成成分の量が全部で組成物(Q)のy質量%である場合、(C)の量は、組成物(Q)の(100−y)質量%である。
【0054】
組成物(Q)は、少なくとも1種の金属キレート剤(D)、好ましくは1種の金属キレート剤(D)を場合によってさらに含有することができる。一般的に、ポストCMP洗浄組成物に使用される金属キレート剤は、特定の金属イオンと共に可溶性の複合体分子を形成し、イオンを不活化することによって、これらが通常他の元素またはイオンと反応して、沈殿物または薄片を生成できないようにする化学化合物である。
【0055】
一般的に、前記金属キレート剤(D)は、組成物(Q)中に異なる量で含有することができ、(D)の量または濃度は、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に従い調節することができる。好ましくは、(D)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば、0.06質量%以下である。好ましくは、(D)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.007質量%、特に少なくとも0.02質量%、例えば、少なくとも0.04質量%である。
【0056】
好ましくは、金属キレート剤(D)は、少なくとも2つのカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基を含む化合物である。より好ましくは、(D)は、少なくとも3つのカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基を含む化合物である。最も好ましくは、金属キレート剤(D)は、
(D1)プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、
(D2)クエン酸、
(D3)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、
(D4)ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタカルボン酸、
(D5)トリメリト酸、
(D6)トリメシン酸、
(D7)ピロメリト酸、
(D8)メリト酸、および
(D9)オリゴマー性およびポリマー性ポリカルボン酸
からなる群から選択される。
【0057】
特に好ましくは、(D)は、(D1)、(D2)、(D3)、(D4)、(D5)、(D6)、(D7)および(D8)からなる群から選択される。特に、(D)は、(D1)、(D2)、(D3)および(D4)からなる群から選択される。例えば,金属キレート剤(D)はクエン酸(D2)である。
【0058】
金属キレート剤(D)が(D9)である実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた場合、(D9)の質量平均分子量は、好ましくは20,000ダルトン未満、より好ましくは15,000ダルトン未満、最も好ましくは10,000ダルトン未満、特に5,000ダルトン未満、好ましくは500ダルトン超、より好ましくは1,000ダルトン超、最も好ましくは2,000ダルトン超、特に2,500ダルトン超である。(D9)は、ホモポリマー、すなわち、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸(好ましくはポリアクリル酸)のホモポリマーまたはコポリマーであることができる。前記コポリマーは、基本的に任意の適切な他のモノマー単位、好ましくは少なくとも1つのカルボン酸基を含むモノマー単位、特に、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸または無水マレイン酸から誘導されるモノマー単位を含有してもよい。最も好ましくは、前記コポリマーはマレイン酸/アクリル酸コポリマーである。例えば、前記コポリマーはSokalan(登録商標)CP 12 Sである。
【0059】
オリゴマー性ポリカルボン酸は、少なくとも7つのカルボン酸基を有するポリカルボン酸である。ポリマー性ポリカルボン酸は、少なくとも30個のカルボン酸基を有するポリカルボン酸である。
【0060】
組成物(Q2)は、少なくとも1種のオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸(L)を含む。
【0061】
一般的に、オリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸(L)は、組成物(Q)中に異なる量で含有することができ、(L)の量または濃度は、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に従い調節することができる。好ましくは、(L)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば、0.06質量%以下である。好ましくは、(L)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.007質量%、特に少なくとも0.02質量%、例えば少なくとも0.04質量%である。
【0062】
(L)は、少なくとも7つ、好ましくは少なくとも9つ、より好ましくは少なくとも12個、最も好ましくは少なくとも16個、特に好ましくは少なくとも20個、特に少なくとも25個、例えば少なくとも30個のカルボン酸基を有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸である。
【0063】
(L)は、好ましくは、アクリル酸および/またはメタクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸であり、より好ましくは、アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸である。ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた場合、(L)の質量平均分子量は、好ましくは20,000ダルトン未満、より好ましくは15,000ダルトン未満、最も好ましくは10,000ダルトン未満、特に5,000ダルトン未満、および好ましくは500ダルトン超、より好ましくは1,000ダルトン超、最も好ましくは2,000ダルトン超、特に2,500ダルトン超である。(L)は、ホモポリマー、すなわち、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸(好ましくはポリアクリル酸)のホモポリマーまたはコポリマーであることができる。より好ましくは、(L)は、アクリル酸モノマー単位を含有するコポリマーである。アクリル酸モノマー単位を含有する前記コポリマーは、基本的に任意の適切な他のモノマー単位、好ましくは少なくとも1つのカルボン酸基を含むモノマー単位、特に、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸または無水マレイン酸から誘導されるモノマー単位を含有してもよい。最も好ましくは、前記コポリマーはマレイン酸/アクリル酸コポリマーである。例えば、前記コポリマーはSokalan(登録商標)CP 12 Sである。
【0064】
組成物(Q)は、少なくとも1種の界面活性剤(E)、好ましくは1種の界面活性剤(E)、より好ましくは、水溶性または水分散性(好ましくは水溶性)の両親媒性非イオン性界面活性剤(E1)、(E2)および(E3)の群から選択される1種の界面活性剤(E)を場合によってさらに含有することができる。
【0065】
一般的に、ポストCMP洗浄組成物に使用される界面活性剤は、液体の表面張力、2種の液体の間の界面張力、液体と固形の間の界面張力を低減する表面活性化合物である。
【0066】
一般的に、前記界面活性剤(E)は、組成物(Q)中に異なる量で含有することができ、(E)の量または濃度は、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に従い調節することができる。好ましくは、(E)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下、特に0.5質量%以下、例えば、0.3質量%以下である。好ましくは、(E)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、最も好ましくは少なくとも0.01質量%、特に少なくとも0.05質量%、例えば少なくとも0.1質量%である。
【0067】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E1)は、少なくとも1つの疎水基(e11)を含む。これは、(E1)が、2つ以上の疎水基(e11)、例えば、2、3つまたはそれ以上の基(e11)を有することができることを意味し、これらの疎水基は、本明細書中以下に記載されている少なくとも1つの親水基(e12)により互いに分離されている。
【0068】
疎水基(e11)は、5〜20個、好ましくは7〜16個および、最も好ましくは8〜15個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される。
【0069】
好ましくは、分枝のアルキル基(e11)は、平均して、1〜5、好ましくは1〜4および、最も好ましくは、1〜3の分枝の程度を有する。
【0070】
適切な分枝のアルキル基(e11)は、イソペンタン、ネオペンタンならびに分枝のヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、ノナデカンおよびエイコサン異性体から誘導される。
【0071】
最も好ましくは、分枝のアルキル基(e11)は、8〜15個、好ましくは、10個の炭素原子を有するGuerbet−アルコールから誘導される(Rompp Online 2011年、「Guerbet−Reaktion」を参照せよ)。
【0072】
(E1)は、少なくとも1つの親水基(e12)を含む。これは、(E1)が、2つ以上の基(e12)、例えば、2、3つまたはそれ以上の基(e12)を含有することができることを意味し、これらの基は疎水基(e11)により互いに分離されている。
【0073】
親水基(e12)はオキシエチレンモノマー単位からなる。親水基(e12)の重合度は、幅広く異なることができ、したがって、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、使用および方法の特定の必要条件に適応することができる。好ましくは、エトキシ化度は、4〜20、より好ましくは6〜16、最も好ましくは、7〜8の範囲である。
【0074】
(E1)は、異なるブロック状一般的構造を有することができる。このような一般的なブロック状構造の例は、以下の通りである:
−e11−e12、
−e11−e12−e11、
−e12−e11−e12、
−e12−e11−e12−e11、
−e11−e12−e11−e12−e11、および
−e12−e11−e12−e11−e12。
【0075】
最も好ましくは、ブロック状一般的構造e11−e12が使用される。
【0076】
好ましくは、(E1)の質量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーで求めた場合、300〜800ダルトン、好ましくは400〜750ダルトンおよび、最も好ましくは、400〜600ダルトンの範囲である。
【0077】
好ましくは、親水性−親油性のバランス(HLB)値は、8〜16、好ましくは9〜15、最も好ましくは、11〜14の範囲である。
【0078】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E1)は慣例的な、公知の材料であり、BASF SEから商標Lutensol(登録商標)で入手可能である。(E1)は、特にLutensol(登録商標)XP80またはLutensol(登録商標)XP70、例えばLutensol(登録商標)XP80である。
【0079】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E2)はまた、少なくとも1つの疎水基(e21)および少なくとも1つの親水基(e22)を含む。
【0080】
これは、両親媒性の非イオン性界面活性剤(E2)が、疎水基(e21)により互いに分離されている、2つ以上の基(e22)、例えば、2、3つもしくはそれ以上の基(e22)を含有するか、または(E2)が、疎水基(e21)により互いに分離されている、2つ以上の基(e22)、例えば、2、3つもしくはそれ以上の基(e22)を含有することを意味する。
【0081】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E2)は、異なるブロック状の一般的構造を有することができる。このような一般的ブロック状構造の例は以下の通りである:
−e21−e22、
−e21−e22−e21、
−e22−e21−e22、
−e22−e21−e22−e21、
−e21−e22−e21−e22−e21、および
−e22−e21−e22−e21−e22。
【0082】
最も好ましくは、ブロック状一般的構造e21−e22が使用される。
【0083】
好ましくは、上記に記載されている疎水基(e11)が疎水基(e21)として使用される。
【0084】
親水基(e22)は、オキシエチレンモノマー単位(e221)を含む。
【0085】
さらに、親水基(e22)は、少なくとも1種類の置換されているオキシアルキレンモノマー単位(e222)を含み、この置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル−シクロアルキル、アルキル−アリール、シクロアルキル−アリールおよびアルキル−シクロアルキル−アリール基からなる群から選択される。
【0086】
好ましくは、オキシアルキレンモノマー単位(e222)は、置換オキシランから誘導され、この置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル−シクロアルキル、アルキル−アリール、シクロアルキル−アリールおよびアルキル−シクロアルキル−アリール基からなる群から選択される。
【0087】
オキシランの置換基は、好ましくは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、5〜10個の炭素原子をスピロ環式、環外および/またはアニーリングされた構成の中に有するシクロアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、6〜20個の炭素原子を有するアルキル−シクロアルキル基、7〜20個の炭素原子を有するアルキル−アリール基、11〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル−アリール基、および12〜30個の炭素原子を有するアルキル−シクロアルキル−アリール基からなる群から選択される。
【0088】
適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルである。適切なシクロアルキル基の例は、シクロペンチル、およびシクロヘキシルである。適切なアリール基の例はフェニルおよび1−および2−ナフチルである。
【0089】
特に好ましい置換オキシランに対する例として、メチルオキシラン(プロピレンオキシド)およびエチルオキシラン(ブチレンオキシド)がある。
【0090】
好ましくは、親水基(e22)は、モノマー単位(e221)および(e222)からなる。
【0091】
ポリオキシアルキレン基は、ランダム、交互、勾配および/またはブロック状の分布でモノマー単位(e221)および(e222)を含有する。これは、1つの親水基(e22)が1種類の分布しか有することができない、すなわち、
−ランダム:…−e221−e221−e222−e221−e222−e222−e222−e221−e222−…;
−交互:…−e221−e222−e221−e222−e221−…;
−勾配:…e221−e221−e221−e222−e221−e221−e222−e222−e221−e222−e222−e222−…;または
−ブロック状:…−e221−e221−e221−e221−e222−e222−e222−e222−…
を意味する。
【0092】
または、親水基(e22)は、少なくとも2種類の分布、例えば、ランダム分布を有するオリゴマー性もしくはポリマー性セグメントおよび交互の分布を有するオリゴマー性もしくはポリマー性セグメントを含有することができる。
【0093】
好ましくは、親水基(e22)は、1種類の分布しか有していない。最も好ましくは、分布はランダムまたはブロック状である。
【0094】
オキシエチレンモノマー単位(e221)とオキシアルキレンモノマー単位(e222)とのモル比は、幅広く異なることができ、したがって、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、方法および使用の特定の必要条件に対して調節することができる。好ましくは、モル比(e221):(e222)は、100:1〜1:1、より好ましくは、60:1〜1.5:1、最も好ましくは、50:1〜1.5:1である。
【0095】
また、オリゴマー性またはポリマー性ポリオキシアルキレン基(e22)の重合度も、幅広く異なることができ、したがって、最も有利なことには、本発明の所与の組成物、方法および使用の特定の必要条件に対して調節することができる。好ましくは、重合度は、5〜100、好ましくは5〜90、最も好ましくは、5〜80の範囲である。
【0096】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E2)は慣例的な、公知の材料であり、BASF SEから商標Plurafac(商標)で、またはDowから商標Triton(商標)で市販されている。
【0097】
両親媒性の非イオン性界面活性剤(E3)はアルキルポリグルコシド(APG)である。APGは、好ましくは、平均重合度1〜5、好ましくは1.2〜1.5を有する。好ましくは、APGのアルキル基は、8〜16個の炭素原子、最も好ましくは、12〜14個の炭素原子を有する。APGは慣例的な、公知の材料であり、Cognisから商標Glucopon(商標)で入手可能である。
【0098】
好ましくは、界面活性剤(E)は、
(E1)(e11)5〜20個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基、および
(e12)オキシエチレンモノマー単位からなる少なくとも1つの親水基
を有する、両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性界面活性剤;
(E2)(e21)5〜20個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基、ならびに
(e22)(e221)オキシエチレンモノマー単位、および
(e222)少なくとも1種類の置換オキシアルキレンモノマー単位(この置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル−シクロアルキル、アルキル−アリール、シクロアルキル−アリールおよびアルキル−シクロアルキル−アリール基からなる群から選択される)
を含むポリオキシアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つの親水基であって、
(e22)の前記ポリオキシアルキレン基が、ランダム、交互、勾配および/またはブロック状の分布で、モノマー単位(e221)および(e222)を含有する親水基
を有する、両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性界面活性剤;ならびに
(E3)両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性アルキルポリグルコシド界面活性剤
からなる群から選択される。
【0099】
より好ましくは、界面活性剤(E)は、
(E1)(e11)5〜20個の炭素原子を有する分枝のアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基、および
(e12)オキシエチレンモノマー単位からなる少なくとも1つの親水基
を有する、両親媒性非イオン性の水溶性または水分散性界面活性剤である。
【0100】
組成物(Q)および方法(P)の特性、例えば、一般的には洗浄性能、およびパッシベーション膜の除去効率などは、対応する組成物のpHに依存し得る。組成物(Q)のpH値は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも4、特に少なくとも5、例えば少なくとも5.5である。組成物(Q)のpH値は、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは9以下、特に好ましくは8以下、特に7以下、例えば6.5以下である。
【0101】
組成物(Q)は、少なくとも1つのpH調整剤(G)を場合によってさらに含有することができる。一般的に、pH調整剤(G)は、そのpH値を要求される値に調節するために組成物(Q)に添加される化合物である。好ましくは、組成物(Q)は、少なくとも1種のpH調整剤(G)を含有する。好ましいpH調整剤(G)は、無機酸、カルボン酸、アミン塩基、アルカリ水酸化物、水酸化テトラアルキルアンモニウムを含めた水酸化アンモニウムである。特に、pH調整剤(G)は硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムである。例えば、pH調整剤(G)は硝酸、または水酸化カリウムである。
【0102】
存在する場合、pH調整剤(G)は、異なる量で含有することができる。存在する場合、(G)の量は好ましくは、組成物(Q)の総質量に対して、10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば0.05質量%以下である。存在する場合、(G)の量は、好ましくは、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、最も好ましくは少なくとも0.025質量%、特に少なくとも0.1質量%、例えば少なくとも0.4質量%である。
【0103】
組成物(Q)はまた、必要に応じて、これらに限定されないが、安定剤、減摩剤、殺生物剤、または保存剤などを含めた様々な他の添加剤を含有することができる。前記の他の添加剤は、例えばポストCMP洗浄組成物に一般的に使用されているものであり、したがって当業者には公知である。このような添加は、例えば、ポストCMP洗浄組成物を安定化させ、またはクリーニング性能を改善することができる。
【0104】
存在する場合、前記の他の添加剤は、異なる量で含有することができる。好ましくは、前記の他の添加剤の総量は、組成物(Q)の総質量に対して、10質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下である。好ましくは、前記の他の添加剤の総量は、組成物(Q)の総質量に対して、少なくとも0.0001質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.008質量%、特に少なくとも0.05質量%、例えば少なくとも0.3質量%である。
【0105】
以下の好ましい実施形態(PE1)〜(PE32)に関して、
(A−i)は、「少なくとも1つのチオール(−SH)、チオエーテル(−SR)、またはチオカルボニル(>C=S)基および少なくとも1つのアミノ(−NH、−NHR、または−NR)基(式中、R、R、RおよびRは(互いに独立して)アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)を含む化合物」を表す;
(A−ii)は、「システイン、シスチン、グルタチオン、N−アセチルシステイン、またはその誘導体」を表す;
(B−i)は、「少なくとも4個のヒドロキシル(−OH)基を含有し、いかなるカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO−)基も含まない飽和した糖アルコール」を表す;
(B−ii)は、「エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イジトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、イノシトールもしくはその立体異性体、またはこれらの混合物」を表す;
(D−i)は、「プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、クエン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、メリト酸およびオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸からなる群から選択される金属キレート剤」を表す。
(L−i)は、「(i)および(ii)を含有するコポリマーである、オリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸:
(i)アクリル酸モノマー単位、および
(ii)フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸または無水マレイン酸から誘導されるモノマー単位」を表す。
【0106】
好ましい実施形態(PE1)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(B)(B−i)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0107】
別の好ましい実施形態(PE2)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(B)(B−ii)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0108】
別の好ましい実施形態(PE3)によると、組成物(Q)は、
(A)チオウレア、またはその誘導体、
(B)(B−i)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0109】
別の好ましい実施形態(PE4)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0110】
別の好ましい実施形態(PE5)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、および
(C)水性媒体
を含み、組成物(Q)は、4〜8のpH値を有する。
【0111】
別の好ましい実施形態(PE6)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−ii)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0112】
別の好ましい実施形態(PE7)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、および
(D)(D−i)
を含む。
【0113】
別の好ましい実施形態(PE8)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、および
(D)(D−i)
を含む。
【0114】
別の好ましい実施形態(PE9)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、および
(D)クエン酸
を含む。
【0115】
別の好ましい実施形態(PE10)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、および
(D)アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸
を含む。
【0116】
別の好ましい実施形態(PE11)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、および
(D)マレイン酸/アクリル酸コポリマー
を含む。
【0117】
別の好ましい実施形態(PE12)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−ii)、
(C)水性媒体、および
(D)(D−i)
を含む。
【0118】
別の好ましい実施形態(PE13)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、
(D)金属キレート剤、および
(E)界面活性剤
を含む。
【0119】
別の好ましい実施形態(PE14)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、
(D)金属キレート剤、および
(E)水溶性または水分散性の両親媒性非イオン性界面活性剤
を含む。
【0120】
別の好ましい実施形態(PE15)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、
(D)金属キレート剤としての、少なくとも3つのカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基を含む化合物、および
(E)界面活性剤
を含み、この組成物(Q)は4〜8のpH値を有する。
【0121】
別の好ましい実施形態(PE16)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(B)(B−i)、
(C)水性媒体、
(D)金属キレート剤、および
(E)界面活性剤
を含み、(A)、(B)、(D)の量は、(互いに独立して)、組成物(Q)の総質量に対して、それぞれ、0.001質量%〜0.5質量%の範囲であり、(E)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、0.005質量%〜2質量%の範囲である。
【0122】
好ましい実施形態(PE17)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)アクリル酸モノマー単位を含有する、オリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0123】
好ましい実施形態(PE18)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)少なくとも20個のカルボン酸基を有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0124】
好ましい実施形態(PE19)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)(L−i)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0125】
好ましい実施形態(PE20)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)マレイン酸/アクリル酸コポリマーである、オリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0126】
好ましい実施形態(PE21)によると、組成物(Q)は、
(A)チオウレアまたはその誘導体、
(L)アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0127】
好ましい実施形態(PE22)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0128】
好ましい実施形態(PE23)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)少なくとも20個のカルボン酸基を有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、および
(C)水性媒体
を含む。
【0129】
好ましい実施形態(PE24)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)(L−i)、および
(C)水性媒体
を含む。
【0130】
好ましい実施形態(PE25)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)マレイン酸/アクリル酸コポリマー、および
(C)水性媒体
を含む。
【0131】
好ましい実施形態(PE26)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0132】
好ましい実施形態(PE27)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)アクリル酸モノマー単位を含有するオリゴマー性またはポリマー性ポリカルボン酸、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0133】
好ましい実施形態(PE28)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)(L−i)、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0134】
好ましい実施形態(PE29)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)(L−i)、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0135】
好ましい実施形態(PE30)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−i)、
(L)マレイン酸/アクリル酸コポリマー、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0136】
好ましい実施形態(PE31)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)マレイン酸/アクリル酸コポリマー、
(C)水性媒体、および
(E)両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0137】
好ましい実施形態(PE32)によると、組成物(Q)は、
(A)(A−ii)、
(L)(L−i)、
(C)水性媒体、および
(E)水溶性または水分散性両親媒性の非イオン性界面活性剤
を含み、(A)および(L)の量は、(互いに独立して)、組成物(Q)の総質量に対して、それぞれ0.001質量%〜0.5質量%の範囲であり、(E)の量は、組成物(Q)の総質量に対して、0.005質量%〜2質量%の範囲である。
【0138】
組成物(Q)の調製は、いかなる特殊性も示さないが、上に記載された成分(A)および(B)、ならびに場合によって、(D)および/または(E)および/または他の添加剤を、水性媒体(C)、特に脱イオン水、最も好ましくは、超純水中に溶解または分散させることによって行うことができる。この目的のために、慣例的および標準的な混合プロセスならびに混合装置、例えば、撹拌槽、インライン溶解機、高剪断インペラ、超音波混合器、ホモジナイザーノズルまたはカウンターフローミキサーなどを使用することができる。
【0139】
多種多様の従来の洗浄ツールおよび方法を、方法(P)のために、またはポストCMP洗浄工程における組成物(Q)の適用のために使用することができる。これらの洗浄ツールは、メガソニック洗剤、ブラシ洗剤およびこれらの組み合わせを含む。通常、ブラシは、ソフトなおよび多孔質のポリビニルアルコール材料で作られている。ブラシは、プロセシングツールの製造者に応じて異なる形状を有することができる。最も一般的な形状は、ローラー、ディスクおよび鉛筆型である。
【0140】
半導体基板を組成物(Q)と接触させた後、半導体基板を組成物から除去し、乾燥させる。乾燥工程は、例えば、米国特許出願第2009/02191873A1号、ページ4、段落[0022]に記載されている通りに行うことができる。
【0141】
組成物(Q)および方法(P)の洗浄または除去性能、すなわち、残留物および汚染物質の除去の程度は、様々な方法に従い求めることができる。好ましくは、性能は、未処理の半導体表面を、組成物(Q)および方法(P)で処理したそれぞれの半導体表面と比較することにより評価する。この目的を達成するために、走査型電子顕微鏡法(SCM)および/または原子間力顕微鏡法(AFM)を行うことができ、それぞれの処理済みおよび未処理の半導体表面から得た画像を互いに比較することができる。
【0142】
実施例および比較例
Ludox(登録商標)TM50は、HO中50質量%懸濁液の形態のコロイド状シリカであり、Sigma−Aldrichから購入している。
【0143】
Lutensol(登録商標)XP80は、BASF SEから提供される分枝の両親媒性の非イオン性界面活性剤である。これは、C10−Guerbetアルコールおよびエチレンオキシドをベースとするアルキルポリエチレングリコールエーテルである。
【0144】
Sokalan(登録商標)CP 12 Sは、BASF SEから提供されるポリマー性ポリカルボン酸である。これはマレイン酸/アクリル酸コポリマーである。
【0145】
「浸漬試験」は、電気化学的プレーティング銅クーポンを使用して行った。以下の手順の中で、シリカスラリーは、pH4で0.5質量%のLudox(登録商標)TM50から構成された。試料クーポンを最初に0.02質量%のHNO中に35秒浸漬させ、脱イオン水ですすぎ、その後シリカスラリー中に5分浸漬させ、次いで脱イオン水で15秒すすいだ。次いで、各クーポンを対象の界面活性剤溶液中に2分間浸漬させ、脱イオン水で15秒すすいだ。クーポンをつるして、周囲条件下で風乾させた。乾燥したクーポンは、残存するシリカ研磨剤の証拠について、走査型電子顕微鏡法(SEM)で評価した。乾燥したクーポンを比較した。
【0146】
JEOL 7400高分解能電界放射型走査電子顕微鏡を、加速電位15kVおよび拡大率50,000で使用して、SEM画像を記録した。
【0147】
pH電極(Schott、ブルーライン、pH0〜14/−5…100℃/3モル/L塩化ナトリウム)を用いてpH値を測定する。
【0148】
接触角の測定
処理済みおよび未処理の銅ウエハー表面上の脱イオン水(脱イオン水は以下「DIW」と呼ぶ)に対する接触角を求めた。いかなる処理もしていない電気化学的プレーティング銅のウエハー銅表面は、約80°のDIW接触角を有し、これは、銅表面上に有機の残留物吸着が存在したことを意味している。銅クーポンを、0.02質量%のHNO中に35秒間浸し、DIWですすいで新しい表面を得た。新しい銅表面は、約50°のDIW接触角を有し、これは表面が相対的に親水性であることを示唆している。次いで、HNOで前処理した銅クーポンを0.2質量%のベンゾトリアゾール溶液(ベンゾトリアゾールは以下「BTA」と呼ぶ)中に5分間浸し、DIWですすぎ、圧縮空気乾燥した。Cu−BTA表面は、約89°のDIW接触角を有し、これは表面が相対的に疎水性であったことを示唆している(すなわち、ノンウェッティング)。Cu−BTA表面を、表Aに列挙した様々な組成物中に5分間浸漬させ、DIWで15秒間すすぎ、続いて1分間圧縮空気乾燥し、その後DIWの接触角を直ちに求めた。比較のため同じ組成物で処理した新しい銅表面上でのDIWの接触角も求めた。試験した表面を以下の表Aにおいて要約する。
【0149】
【表1】
【0150】
クエン酸、セリン、尿素で処理したCu−BTA表面が、約64°、75°、67°の接触角を有することが見て取れ、それぞれ、処理された表面が依然として相対的に疎水性であったことを示唆している。対照的に、クエン酸、セリン、ウレアで処理した新しいCu表面は、41°、46°、38°の接触角を有し、それぞれの処理表面が親水性であったことを意味する。しかし、システイン処理したCu−BTA表面と新しいCu表面の両表面は約34°および32°のDIW接触角を有する。興味深いことに、アセチル−システイン処理したCu−BTA表面は、43°のDIW接触角を有し、これは、アセチル−システイン処理した新しい銅表面と同じである。同様に、チオ尿素処理したCu−BTA表面は、約63°のDIW接触角を有し、これは、チオウレア処理した新しい銅表面上のDIW接触角に近い。結果は、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基を含む化合物を含有する組成物で処理した後、Cu−BTAおよび新しい銅表面は、ほとんど同じDIW接触角を有することを例示している。
【0151】
銅表面上のBTA膜の洗浄効率のTafelプロット測定
Cu表面上のBTA膜の洗浄効率をTafelプロット測定により評価した。新しいCuウエハークーポンを、天然のpH5.8を有する0.2%BTA溶液中に15分間浸し、DIWですすぎ、続いて圧縮空気乾燥した。Ag/AgCl基準電極に対して、作用電極として、BTA処理した銅クーポンを、測定用に様々な組成物中に浸した。比較のため新しい銅クーポンもまた、測定用に様々な組成物中に浸漬させた。異なる溶液中の基板の腐食電位および腐食電流を以下の表Bに要約する。
【0152】
【表2】
【0153】
DIW pH6中0.2質量%BTAで処理した銅の腐食電流は0.018μA/cmであることが見て取れ、これは、同じ溶液中の新しい銅の腐食電流よりもずっと低く、Cu表面上のBTA膜の高いパッシベーション効率を示唆している。キレート剤として、クエン酸およびセリン中の新しい銅の腐食電流は、ブランク溶液(DIW pH6)中の銅の腐食電流よりもずっと高い。しかし、クエン酸およびセリン中のCu−BTA表面の腐食電流は、同じ溶液中のCu表面の腐食電流より低いが、ブランク溶液中のCu−BTA表面よりも相対的に高い。一方、Cu−BTAの腐食電位はCu表面より高く、これは、クエン酸およびセリンがいくらかの量のBTA層を除去することができたが、BTA膜は依然として銅表面上に存在したことを意味している。対照的に、アセチル−システイン、システイン、およびチオウレア溶液中のCu−BTAの腐食電流は、同じ溶液中のCu表面の腐食電流とほとんど等しく、Cu−BTA膜が溶液で完全に除去されたことを示唆している。別の態様では、BTA除去効率は、単にCu−BTAおよびCu表面の腐食電位および腐食電流を測定するだけで予測することができる。
【0154】
銅表面上のBTA膜の洗浄効率のXPS測定
Cu基板上のBTA除去のための配合物の効率を評価した。ウエハークーポンを0.02質量%のHNOで35秒間前処理し、DIWですすぎ、続いて圧縮空気乾燥した。次いで、クーポンを0.2質量%のBTA溶液中に5分間浸漬させ、続いてDIWですすぎ、圧縮空気乾燥した。その後、BTA処理した銅クーポンを様々な配合物中にpH6で5分間浸漬させ、DIWですすぎ、続いて圧縮空気乾燥した。BTA処理済みおよび未処理の試料を比較のために分析した。55°の角度でX線光電子分光法(XPS)を使用して分析を行った。表Cは、BTAおよび未処理の試料に対する、異なる組成物溶液中でのBTA除去結果を含む。
【0155】
【表3】
【0156】
窒素と銅の比は、銅表面上に残存するBTAの量を示す。予想されたように、クエン酸およびセリンはBTAのいくつかの層を除去することができたが、BTAが依然としてウエハー表面上に残された。対照的に、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基(例えばアセチル−システイン、システイン、およびチオウレア)を含む化合物は、高いBTA除去効率を有する。
【0157】
浸漬試験シリーズNo.1
表Dに列挙した異なる配合物の相対的な洗浄性能を評価するために試験を行った。銅クーポンを0.02質量%のHNO中に35秒浸漬させ、DIWですすぎ、続いて圧縮空気乾燥した。クーポンを0.2質量%のBTA中に5分間浸漬させ、DIWですすぎ、その後、Cu−BTA表面を、0.5質量%のLudox(登録商標)TM 50中にpH4で5分間浸した。その後、クーポンを洗浄組成物中に2分間浸し、続いてDIWですすぎ、風乾した。対照試料Zは、0.2質量%のBTA中に5分間浸漬させ、DIWですすいだクーポンであり、その後、このクーポンのCu−BTA表面を、0.5質量%のLudox(登録商標)TM 50中にpH4で5分間浸した。対照試料Zはいずれの洗浄処理の対象としなかった。SEM分析結果は図1に要約されている。
【0158】
図1の結果は、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基を含む化合物なしで洗浄した銅表面は、おそらくCu表面上に吸着されたBTAの存在により、かなりの数のシリカ粒子を表面上に依然として有したことを示している。対照的に、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基(例えばシステインまたはN−アセチルシステイン)を含む化合物を含有する組成物で銅を洗浄した場合、シリカ粒子の数が劇的に低減した。
【0159】
【表4】
【0160】
洗浄組成物S32およびS33は改善された洗浄性能を示す。
【0161】
浸漬試験シリーズNo.2
異なるpH条件で、様々な洗浄組成物の洗浄性能を評価するために試験を行った。これらの試験組成物を表Eに記述された通りに調製した。すべての組成物は、KOHまたはHNOで希釈することによって調節した。以下の手順に従い電気化学的プレーティング銅ウエハーを使用して、調製した洗浄組成物を評価した。シリカ粒子、H、BTAを含有するバリアスラリーでウエハーを研磨した。その後、研磨したウエハーを切断してクーポンにした。銅クーポンを洗浄組成物中に5分間浸漬させ、次いでDI水で15秒すすぎ、続いて1分間圧縮空気乾燥した。残存するシリカ研磨剤およびBTAパッシベーション層の証拠について、乾燥クーポンを走査型電子顕微鏡法(SEM)で評価した。比較のため、洗浄処理なしの研磨クーポンもSEMで評価した(対照試料Y)。結果を図2および3に示す。
【0162】
図2および3の結果は、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基(例えばN−アセチルシステイン)を含む化合物を含有する洗浄組成物で銅表面を洗浄した場合、シリカ粒子が完全に除去されたことを示している。対照的に、シリカ粒子は、このような化合物を含有しない洗浄組成物では、ほとんど洗浄されなかった。結果は、バリアCMPプロセス後、銅表面最上部にBTAパッシベーション層が存在し、これが洗浄プロセス中にシリカ粒子の除去を抑制することを示している。また、結果は、少なくとも1つのチオール、チオエーテルまたはチオカルボニル基(例えばN−アセチルシステイン)を含む化合物を含有する組成物が、pH3、6および10.5で良好な性能を有することを実証している。したがって、本発明のポストCMP洗浄組成物は、酸性、中性およびアルカリ性の条件での適用に適している。
【0163】
【表5】
【0164】
洗浄組成物S35、S36、S37、S44、S45およびS46は、改善された洗浄性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0165】
図1】洗浄組成物S31、S32、S33、S34を使用した浸漬試験シリーズNo.1のSEM分析結果ならびに対照試料ZのSEM分析結果を示す図である。
図2】洗浄組成物S35、S36、S37、S38、S39、S40を使用した浸漬試験シリーズNo.2のSEM分析結果ならびに対照試料YのSEM分析結果を示す図である。
図3】洗浄組成物S41、S42、S43、S44、S45、およびS46を使用した、浸漬試験シリーズNo.2のSEM分析結果を示す図である。
図1
図2
図3