(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄工程が、前記多孔質粒子の乾燥質量1kgに含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を、それぞれ800mmol以下とする工程である請求項5に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
前記架橋工程が、前記凝固工程を経て得られた多孔質粒子にエピクロロヒドリンを用いて架橋構造を形成する工程である請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
前記臭化リチウム水溶液中に含まれる臭化リチウムの含有量が、臭化リチウム水溶液全量に対して50質量%以上70質量%以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
前記セルロース溶液に含まれるセルロースの含有量が、セルロース溶液全量に対して1質量%以上15質量%以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
前記セルロース溶液分散物を冷却する際の冷却速度が0.2℃/分以上50℃/分以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
前記セルロース多孔質粒子を凍結乾燥させて凍結乾燥セルロース多孔質粒子を得る凍結乾燥工程を含む請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のセルロース多孔質粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
本発明のセルロース多孔質粒子の製造方法は、(I)セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解させてセルロース溶液を調製するセルロース溶液調製工程(以下、セルロース溶液調製工程と称することがある)、(II)セルロース溶液を有機分散媒中に分散させてセルロース溶液分散物を調製する分散物調製工程(以下、分散物調製工程と称することがある)、及び、(III)セルロース溶液分散物を冷却し、凝固溶媒を添加して、セルロース溶液分散物中のセルロースを凝固させて多孔質粒子を得る凝固工程(以下、セルロース凝固工程又は凝固工程と称することがある)、を含む。
以下、本発明の製造方法を、工程順に詳細に説明する。
【0021】
(I)セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解させてセルロース溶液を調製するセルロース溶液調製工程(セルロース溶液調製工程)
【0022】
[セルロース]
本発明に用いられるセルロースとしては、後述する臭化リチウム水溶液に溶解するセルロースであれば特に制限なく使用しうる。
本発明に使用しうるセルロースとしては、例えば、結晶性セルロース粉末、再生セルロース、酢酸セルロース等の置換セルロース等が挙げられる。
セルロースは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、製造されたセルロース多孔質粒子が実用上好ましいレベルの機械的強度を得るためには、セルロース溶液の調製に用いるセルロースは結晶性セルロース、又は、再生セルロースであることが好ましく、結晶性セルロースであることがより好ましい。
セルロースの平均重合度は、30以上2000以下であることが好ましい。セルロースの平均重合度が2000以下であると、セルロース溶解時の溶液の高粘化を抑制できるため好ましい。セルロースの平均重合度が30以上であることで、得られるセルロース多孔質粒子の機械的強度が実用上十分なレベルとなるため好ましい。
より好ましい重合度の範囲は40以上1500以下、さらに好ましくは50以上1000以下、特に好ましくは100以上850以下である。
【0023】
セルロースの平均重合度は、特開平6−298999号公報段落番号〔0032〕に記載の方法で測定することができる。より具体的には、B.DALBE,A.PEGUY等の「CELLULOSE CHEMISTRY AND TECHNOLOGY」Vlo.24、No.3、P327−331(1990年)に記載の方法に準じて測定することができる。即ち、この文献に記載の測定方法において、N−メチルモルフォリン−N−オキシドの水和物と、ジメチルスルホキシドと、没食子酸プロピルとを、それぞれ重量比で100/150/1の割合で混合した溶剤を、セルロースを溶解する溶媒として用い、セルロースを0.2g/100mL〜0.8g/100mLの濃度に溶解し、得られたセルロース溶液の固有粘度をウベローデ型希釈粘度計を用いて、温度34℃において測定し、下記の粘度式(1)によってセルロースの重合度を決定した。
粘度式(1) [η]=1.99×(DP)v
0.79
粘度式(1)において、[η]は固有粘度を表し、(DP)vはセルロースの重合度を表す。
【0024】
セルロースは市販品を使用してもよい。市販品を使用する場合には、カタログに記載の平均重合度を参照することができる。
本発明に使用しうるセルロースの市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、セオラス(登録商標)PH101(商品名:平均重合度220)、その他セオラスのPHグレード各種、KGグレード各種、UFグレード各種、日本製紙(株)製、KC−フロックW−400G(商品名:平均重合度350)、KC−フロックW−300G(商品名:平均重合度370)、KC−フロックW−200G(商品名:平均重合度510)、KC−フロックW−100G(商品名:平均重合度720)、KC−フロックW−50G(商品名:平均重合度820)、サルファイトパルプNDPT(商品名:平均重合度1000)等が挙げられる。
【0025】
[臭化リチウム水溶液]
臭化リチウム水溶液は、臭化リチウムを水に溶解して調製する。溶媒として用いる水は、不純物が少ないという観点から、イオン交換水、純水等を使用することが好ましい。
臭化リチウム水溶液に含まれる臭化リチウムの含有量は、臭化リチウム水溶液全量に対して50質量%〜70質量%であることが好ましく、54質量%〜69質量%であることがより好ましく、55質量%〜68質量%であることがさらに好ましい。
臭化リチウムの含有量が50質量%以上であることで、セルロースの溶解性が良好となり、70質量%以下であることで、臭化リチウム結晶が十分に溶解し、不溶物の残存、臭化リチウム結晶の析出等が抑制される。
臭化リチウム水溶液の調製は、必要に応じて撹拌しながら、水に臭化リチウムを溶解させることで行なわれる。臭化リチウム水溶液の調製は、室温(25℃)で行なってもよく、所望により0℃〜80℃程度で実施してもよい。
【0026】
[セルロース溶液の調製]
得られた臭化リチウム水溶液に、セルロースを溶解して、セルロースの臭化リチウム水溶液による溶解液(以下、セルロース溶液と称することがある)を調製する。
セルロースを臭化リチウム水溶液に溶解させる際には、臭化リチウム水溶液を80℃〜150℃に加温し、必要に応じて撹拌しながら、セルロースを溶解させればよい。溶解させる場合の温度としては、85℃〜140℃の範囲であることがより好ましく、90℃〜130℃の範囲であることがより好ましい。
セルロース溶液の調製に用いる臭化リチウム水溶液は、セルロースの溶解性に優れるため、例えば、チオシアン酸カルシウム法によりセルロース溶液を調製した時よりもセルロースの溶解速度がより大きく、溶解に必要な加熱時間が短くなる。従って、セルロース溶液の調製工程における加熱に起因するセルロースの着色が低減されることも本発明の利点の一つである。
また、臭化リチウム水溶液を用いてセルロースを溶解させて得られるセルロース溶液の粘度が、チオシアン酸カルシウム法で得たセルロース溶液に比較して低い。このため、本発明の製造方法は、以下に詳述する分散物調製工程において形成されるセルロース粒子の粒径、及び多孔質粒子における空隙の制御が容易に行えるという利点をも有する。
【0027】
セルロース溶液調製工程において調製されたセルロース溶液全量に対するセルロースの含有量は、1質量%〜15質量%の範囲であることが好ましく、1.5質量%〜12質量%であることがより好ましく、2質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
セルロース溶液中のセルロースの含有量が1質量%以上であることで、セルロース溶液の粘度が適切に維持され、流動性が良好であり、次工程における分散物の調製に際して、異形粒子が発生し難い。また、セルロース溶液中のセルロースの含有量が15質量%以下であることで、セルロース溶液の粘度が適切に維持され、取り扱いが良好となる。
【0028】
(II)セルロース溶液を有機分散媒中に分散させてセルロース溶液分散物を調製する分散物調製工程(分散物調製工程)
分散物調製工程では、(I)セルロース溶液調製工程で得られたセルロース溶液を有機分散媒に添加して、分散法により、有機分散媒中に球状のセルロース溶液が分散されたセルロース溶液分散物を調製する。本明細書では、セルロース溶液を分散相とする分散物において、有機分散媒を含み、連続相を形成する成分を「分散媒」と称する。分散媒は、後述する有機分散媒を含み、所望により界面活性剤、分散剤等を含んでいてもよい。
分散法により球状のセルロース溶液分散物を得る方法としては、例えば、分散媒にセルロース溶液を添加し、撹拌等の操作により乳化処理、分散処理等を行なう方法が挙げられる。乳化処理、分散処理等は、以下に詳述する如く、常法により行なうことができる。
【0029】
[分散媒]
分散物調製工程において、分散物の調製に用いられる分散媒は、セルロース溶液と相溶性の低い有機分散媒、詳細には、セルロース溶液に含まれる溶媒と相溶性の低い有機分散媒から選択される有機分散媒を含有する。
セルロース溶液の分散相をより均一にするという観点から、セルロース溶液を添加する分散媒は、有機分散媒に加え、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。
セルロース溶液と相溶性の低い有機分散媒としては、室温(25℃)で液状であり、前工程で得られたセルロース溶液と任意の割合で撹拌、混合し、室温(25℃)にて5分間静置した後、目視にて相分離が確認される有機溶剤及び油性成分から選ばれる1種以上の有機分散媒が好ましい。
セルロース溶液と相溶性の低い有機分散媒を用いることで、分散処理を行なう際、分散媒中において、セルロース溶液が球状に分散した分散相が形成される。
有機分散媒としては、ジクロロベンゼン、ジクロロエタン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の親油性有機溶媒;中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等の食用油;オリーブ油、ひまし油、なたね油、からしな油、パーム油、ヤシ油、スクワラン等の天然油;イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルドデカノール等の炭素数4〜36のアルキル基を有するアルコール;トリオクタン酸グリセリル等の炭素数4〜60のエステル、その他、流動パラフィン、シリコーン油、動物油、鉱物油等が挙げられ、なかでも、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、オリーブ油、ひまし油、なたね油、シリコーン油、トリオクタン酸グリセリル及び流動パラフィンからなる群より選択される1種以上の有機分散媒が好ましく、適度な粘度を有し、分散状態をより安定化することができるという観点から、流動パラフィン、オリーブ油等がより好ましい。
【0030】
[界面活性剤]
分散物調製工程において界面活性剤を用いる場合の界面活性剤としては、既述の有機溶剤及び油性成分から選ばれる1種以上の有機分散媒を含有する分散媒とし、セルロース溶液を分散相とする分散物を調製する際に、分散相の安定化に寄与しうる親水基、疎水基の割合を持った界面活性剤を選択すればよい。
本発明に用いうる界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ソルビタンラウレート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタンパルミテート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。なお、上記界面活性剤の名称において( )内の数値は、ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の連結数を表す。
【0031】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル等のモノグリセリン酸エステル、グリセリン酢酸エステルポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸の種類、グリセリンの重合数等を制御することにより、親水性界面活性剤、又は、疎水性界面活性剤とすることができる。
分散物調製工程に用いることのできる界面活性剤のなかでも、分散粒子の粒子径制御がより容易となるという観点から、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル等がより好ましい。
分散物調製工程において、界面活性剤は、分散媒に予め適量添加して用いることが好ましい。
【0032】
界面活性剤の含有量としては、分散媒全量に対して、0.01質量%〜10質量%の範囲とすることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲がよりに好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲がさらに好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内にあることによって、セルロース溶液の均一な粒子径を持つ液滴を形成することが容易となる。また、界面活性剤の含有量が上記範囲であることで、界面活性剤の添加による効果が十分に得られ、分散相の凝集発生が抑制される。
また、分散物の調製に際しては、分散媒に、界面活性剤に加え、例えば、エチルセルロース等の界面活性剤以外の公知の分散剤を溶解して使用することができる。分散媒がエチルセルロース等の分散剤を含有することにより、分散媒の粘度を目的に応じて変えることができる。従って、分散媒の粘度を調整することにより、セルロース溶液の分散粒子の粒径をより容易に所望の値に制御することができる。
【0033】
[液比率]
分散物調製工程における、セルロース溶液により形成される分散相と分散媒との体積比は、乳化処理等の分散処理操作を行なう際に、セルロース溶液を分散相とする分散物を形成し得る範囲であれば、特に限定はされない。分散相(セルロース溶液)と分散媒との体積比(分散相/分散媒)は、1.0以下であることで、異形粒子の発生が抑制されるため好ましい。分散相と分散媒との体積比は、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
【0034】
[分散物の調製]
分散物を調製する方法としては、公知の方法を任意に選択して適用することができる。分散物の調製に用いる方法としては、セルロース溶液と分散媒とを混合し、得られた混合物に剪断力を付加して分散させる方法が挙げられる。剪断力を付加する方法としては、プロペラ型撹拌機あるいはタービン型撹拌機等のミキサーを用いる方法、コロイドミルを用いる法、ホモジナイザーを用いる法、超音波を照射する方法等が挙げられる。
分散物中の球状セルロース分散相の粒径は、分散物の調製条件、例えば、用いる分散装置、剪断力の付加条件、分散物の調製時における温度、分散時間等の各種条件を常法により制御することで、制御することができる。
例えば、一般的には、付加する剪断力を上げること、分散物調製時の温度を上げること、分散時間を長くすること、等により分散相の粒径は小さくなる傾向がある。
【0035】
[温度]
分散物調製工程における温度条件は、セルロースの熱分解が生じない温度であれば特に限定されない。均一な分散物を効率よく調製しうるという観点からは、セルロース溶液分散物の温度は80℃〜150℃の範囲であることが好ましく、85℃〜140℃であることがより好ましく、90℃〜130℃であることがさらに好ましい。
分散物の調製は、必要に応じて界面活性剤、分散剤等を予め含有させた分散媒を、加熱して上記温度範囲とした後、セルロース溶液を添加して行なうことが好ましい。
分散物調製工程においては、工程の終了まで、分散媒を上記温度範囲に維持することが好ましい。
【0036】
[分散時間]
分散時間は、用いる分散装置、目的とする分散相の粒径により適宜調整される。例えば、分散物の調製にミキサーを用いる場合、分散時間は、回転速度100rpm〜2000rpmの撹拌条件にて、1分間〜60分間の範囲とすることが好ましい。
【0037】
分散物調製工程において調製されたセルロース溶液により形成される分散相の粒径は、セルロース多孔質粒子の用途により適宜選択される。分散物の調製において形成される分散相の粒径が、得られるセルロース多孔質粒子の粒径を決定することになる。セルロース多孔質粒子の好ましい粒径については後述するが、分散物調製工程においては目的とするセルロース多孔質粒子の粒径に適合する粒径の分散相を得ることができる分散条件を選択することが好ましい。
分散相の粒径は、既述の物理的な分散物の調製条件の他、例えば、分散物の調製時に用いられる界面活性剤の種類及び量、分散剤の種類及び量等によって、常法により制御することが可能である。
分散相の粒径は、下記の冷却工程後、分散相がゲル化して形状が安定した状態で、常温において光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0038】
(III)セルロース溶液分散物を冷却し、凝固溶媒を添加して、セルロース溶液分散物中のセルロースを凝固させる工程(セルロース凝固工程)
セルロース凝固工程により得られる多孔質粒子は、セルロース溶液分散物の分散相に溶解して含まれるセルロースが、凝固溶媒と接触することにより凝固して形成された多孔質構造を有する粒子であり、得られた粒子中には不純物が残存する。以下では、セルロース凝固工程により得られた、不純物が粒子内に残存する多孔質粒子を、適宜「未精製の多孔質粒子」と称する。
【0039】
[冷却]
セルロース凝固工程では、既述の分散物調製工程において、好ましい態様によれば、80℃〜150℃の温度にて調製されたセルロース溶液分散物を冷却することにより、分散相に含まれるセルロースのゲル化を行う。
以下に詳述する如く、分散物の温度が0℃〜80℃の範囲となるまで冷却を行なうことが好ましい。
目的とする温度までの冷却時間が長くなると、分散相の形状が変化することに起因して異形粒子が発生したり、ゲル状となったセルロース粒子が着色したりすることが懸念される。冷却時間が短すぎると、機械的強度の大きな粒子が得られなくなる。
既述の観点から、目的に応じて、冷却速度を制御することが好ましい。具体的には、冷却速度は0.2℃/分〜50℃/分であることが好ましく、0.5℃/分〜20℃/分であることがより好ましく、1.0℃/分〜10℃/分であることがさらに好ましい。
得られるセルロース粒子中のセルロースの結晶化度は、冷却速度を調節することにより制御できる。例えば、冷却速度を大きくすることで、結晶化度を低くすることができ、冷却速度を小さくすることで、結晶化度を高くすることができる。
結晶化度が低く抑えられることで、異方性の少ない粒子を得ることができ、結晶化度を高くすることで、機械的強度に優れた粒子を得ることができる。
【0040】
既述の分散相/分散媒の好ましい体積比と温度条件にて、分散物を調製した後、分散物を冷却する際の冷却速度を上記好ましい冷却速度とし、冷却する際に、一定の撹拌速度、例えば、100rpm〜2000rpmで分散物の撹拌を継続することで、分散されて形成されたセルロース溶液からなる分散相がゲル化し、均一な粒径であり、真球に近い粒子が形成される。
なお、上記撹拌速度は一例であり、使用する分散媒の種類、セルロース原料、セルロース溶液の濃度及び粘度、撹拌機における撹拌羽根の形状及びサイズ、反応容器の種類等によって撹拌条件は適宜選択される。さらに、目的とするセルロース多孔質粒子の粒子径、結晶化度に応じて、冷却速度、撹拌条件等は適宜選択される。
【0041】
[凝固]
ジクロロベンゼンの如く、水を含むセルロース溶液と相溶性が低いか、或は、相溶性がない有機分散媒を含む分散媒は、セルロース溶液と相分離を起こすことなく均一に混合されたり、セルロース溶液と相溶したりすることがない。このため、分散物調製工程において形成され、その後、冷却によりゲル化された臭化リチウム水溶液を含む分散物に凝固溶媒を添加して、分散相中のセルロースを凝固させ、分散相から臭化リチウムを分離除去する。
凝固溶媒としては、臭化リチウム塩を溶解しうる溶媒を用いる。
凝固溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;テトラヒドロフラン等のエーテル;及び水等が好ましい。
凝固溶媒は単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
冷却された分散物が0℃〜80℃程度の温度となった後、分散物と凝固溶媒とを接触させることで、分散相中のセルロースが凝固し、セルロースが再生される。
冷却された分散物の温度は、0℃〜80℃の範囲であることが好ましく、1℃〜70℃の範囲であることがより好ましく、2℃〜60℃の範囲であることがさらに好ましい。冷却後の分散物の温度を上記範囲とすることで、良好な形状の球状凝固粒子が形成され、製造に要する時間も適切な範囲となる。
【0042】
セルロースの凝固工程では、分散相から臭化リチウムを除去してセルロースを再生させるため、既述の、分散物に凝固溶媒を添加する方法の他、分散物をそのまま凝固溶媒中に注いで、静かに撹拌する方法によりセルロースの凝固を行ってもよい。また、例えば、デカンテーション、ろ過等の手段により分散媒の大部分を除去した後に、分取した分散相を凝固溶媒中に注いで静かに撹拌することによりセルロースの凝固を行なう方法、凝固溶媒を用いて分散媒が除去された分散相を分取し、分散相を洗浄して多孔質粒子を得る方法等をとることもできる。
分散相から臭化リチウムを除去する処理を、以下では、脱塩処理と称することがある。
凝固溶媒をデカンテーション、ろ過等により除去して得られた多孔質粒子は、分散媒、凝固溶媒等の有機溶媒、臭化リチウム塩、及び、所望により用いられる界面活性剤以外の分散剤、界面活性剤等の不純物を含む粒子である。
セルロースが凝固する際には、セルロース溶液からなる分散相の粒子形状が大きく変わることなく、セルロースが凝固して多孔質粒子が形成される。従って、本発明の製造方法では、分散物中の分散相の粒径を制御することにより、得られるセルロース多孔質粒子の粒径を制御することができる。
得られるセルロース多孔質粒子の大きさは、例えば、分散物の調製時における各種条件、分散物と凝固溶媒との接触時における撹拌条件、分散物の調製時に用いられる界面活性剤の種類、分散物の調製時に用いられる界面活性剤以外の分散剤の種類等によって、常法により制御することが可能である。
【0043】
本発明の製造方法は、腐食性のあるチオシアン酸カルシウム等の化合物を使用する必要がない。また、本発明の製造方法によれば、セルロース自体をけん化する等のセルロース自体を変性する工程を含まない方法により、比表面積の大きいセルロース多孔質粒子を、所望の粒径で、簡便に効率よく製造することができるという利点を有する。
【0044】
(IV)付加的な任意の工程
本発明のセルロース多孔質粒子の製造方法は、既述の各工程に加え、さらに、以下に例示する如き付加的な任意の工程を有していてもよい。
任意の工程としては、凝固工程後に未精製の多孔質粒子を洗浄して不純物を除去する洗浄工程、多孔質粒子に架橋構造を形成し、粒子強度を向上させたセルロース多孔質粒子を得る架橋工程、洗浄工程及び架橋工程の少なくともいずれかを経て得られた湿潤状態のセルロース多孔質粒子を十分に乾燥させるための凍結乾燥工程等が挙げられる。
【0045】
(IV−1)洗浄工程
本発明においては、前記凝固工程を経て得られた多孔質粒子を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。
洗浄工程は、凝固工程を経て得られた未精製の多孔質粒子を、水、水性溶媒等を含む洗浄液により洗浄して不純物を除去し、精製されたセルロース多孔質粒子を得る工程である。
凝固工程を経て得られた未精製の多孔質粒子中には、セルロース溶液の調製に使用された臭化リチウムに由来する臭化物イオン、リチウムイオン、さらに分散相の形成に使用された溶剤等の種々の不純物が含まれている。
また、多孔質粒子に、後述する架橋工程を行なった後は、多孔質粒子中には、架橋剤、界面活性剤、溶剤等の種々の不純物が含まれる。
このため、多孔質粒子に対して洗浄工程を実施して不純物を除去することが好ましい。
後述する架橋工程を行なう場合には、洗浄工程は、架橋工程の前及び後の少なくともいずれかに行なうことができる。
架橋工程における架橋反応効率を向上させる観点からは、架橋工程の前に洗浄工程を実施することが好ましい。また、架橋工程の前及び後に洗浄工程を行なうことがより好ましい。
【0046】
洗浄工程に用いる洗浄液は、水、メタノール、エタノール等の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することができる。洗浄液の主成分としては、水、エタノール、及び水とエタノールとの混合物が好ましく、水がより好ましい。
洗浄液には、目的に応じて、さらに界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
洗浄液に用いられる水には特に制限はないが、不純物が少ないという観点から、蒸留水、イオン交換水、純水等が好ましい。
洗浄工程における洗浄方法は公知の方法を制限なく適用することができる。洗浄方法としては、例えば、多孔質粒子を洗浄液と接触させて洗浄し、その後、洗浄されたセルロース多孔質粒子と洗浄液とを分離する方法、液透過性の容器内に配置した多孔質粒子に洗浄液を連続的に供給して洗浄する方法等が挙げられる。
多孔質粒子を洗浄液と接触させて洗浄する場合、洗浄液を撹拌する操作を行なってもよい。また、洗浄液を換えて2回以上行なってもよい。多孔質粒子を洗浄液と接触させて洗浄する場合、使用する洗浄液の量は、多孔質粒子と十分に接触する量であることが、洗浄性がより良好となるという観点から好ましい。
洗浄工程を経て不純物が除去されたセルロース多孔質粒子は、そのまま各種の用途に使用することができる。
【0047】
(IV−2)架橋工程
本発明の製造方法により得られるセルロース多孔質粒子の強度をさらに高めるため、本発明の製造方法は、得られたセルロースの多孔質粒子に対し、架橋剤を用いてセルロースに架橋構造を形成させる架橋工程をさらに有していてもよい。
架橋構造を有するセルロース多孔質粒子は特に強度に優れているため、高線速下や高圧力下の使用にも好適である。
架橋工程で用いられる架橋剤、及び架橋反応条件に特に制限はなく、得られるセルロース多孔質粒子に必要な強度を付与する条件を考慮して、公知の技術を用いて行うことができる。
架橋工程に用いうる架橋剤としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリン等のハロヒドリン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能性ポリエポキシドを挙げることができる。なかでも、セルロース多孔質粒子の強度がより向上するという観点から、架橋剤としてエピクロロヒドリンを用いることが好ましい。
【0048】
架橋工程は、凝固工程で得られた多孔質粒子を、架橋剤を含むアルカリ性水溶液もしくは有機溶媒に接触させ、0℃〜90℃の温度範囲で、1時間〜24時間、十分に反応させる方法により行うことができる。
架橋剤の含有量には特に制限はないが、多孔質粒子1容量部に対して、0.1容量部〜10容量部の範囲であることが好ましい。また、反応効率を高めるため、架橋剤を含有するアルカリ性水溶液もしくは有機溶媒に水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を含有させることが望ましい。
多孔質粒子に対し、架橋工程を実施することで、多孔質粒子を構成するセルロースが架橋構造を形成し、その結果、架橋工程を経て得られたセルロース多孔質粒子は、多孔質粒子を洗浄して得られたセルロース多孔質粒子に比較して、強度がより向上する。
【0049】
既述の架橋工程の実施に先だって、凝固工程で得られた多孔質粒子を洗浄液で洗浄する既述の洗浄工程を行なうことが好ましい。
多孔質粒子中には、臭化リチウムに由来する臭化物イオン、リチウムイオン、さらに溶剤等の種々の不純物が含まれている。
本発明者らの検討によれば、架橋工程時に、多孔質粒子中に臭化物イオン、リチウムイオン等が残存すると、セルロース分子同士の凝集、及び、架橋剤によるセルロース同士の架橋構造の形成が阻害される懸念があることがわかった。一方、リチウムイオン、臭化物イオン等の残存量が少ないことで、セルロース分子同士の凝集が強固となり、強固な架橋構造が形成され、得られたセルロース多孔質粒子はより良好な機械的強度を発現できると考えられる。
従って、機械的強度のより高いセルロース多孔質粒子を得る観点から、凝固工程の後、架橋工程の前に、既述の洗浄工程を行なって多孔質粒子中の不純物を除去した後、架橋工程を実施することが好ましい。
架橋工程の前に行なわれる洗浄工程に用いる洗浄液は、水を含むことが好ましい。洗浄液には、水に加えて親水性溶剤及び界面活性剤等から選ばれる1種以上の成分を含むことができる。なかでも、洗浄液としては、蒸留水、イオン交換水、純水等から選ばれる水であることが好ましい。
【0050】
架橋工程に先立つ洗浄工程では、多孔質粒子に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンのそれぞれが多孔質粒子の乾燥質量1kg当たり2000mmol以下となるまで洗浄することが、架橋構造の形成効率をより向上させる観点から好ましい。リチウムイオン及び臭化物イオンは、それぞれ多孔質粒子の乾燥質量1kg当たり、1000mmol以下であることがより好ましく、800mmol以下であることがさらに好ましく、200mmol以下であることが特に好ましい。
架橋工程前の多孔質粒子中に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量の測定対象である乾燥した多孔質粒子は、以下のようにして得ることができる。
凝固工程を経て得られた湿潤状態の多孔質粒子にエタノール等の溶媒を接触させ、エタノール等で溶媒置換した後、エタノールをさらにt−ブタノールで溶媒置換し、その後、−18℃以下にて凍結し、常法により凍結乾燥を行なって得た乾燥した多孔質粒子を得ることができる。得られた乾燥した多孔質粒子を試料としてリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を測定する。
【0051】
多孔質粒子中の残存リチウムイオンの測定は、ICP発光分光分析装置(Optima 7300 DV、パーキンエルマー社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なうことができる。測定は、乾燥した多孔質粒子を酸(硝酸の70質量%水溶液)で溶液化し、溶液に含まれるリチウムイオンを定量し、多孔質粒子の乾燥質量1kg当たりのリチウムイオン含有量を算出する。
多孔質粒子中の残存臭化物イオンの測定は、燃焼式ハロゲン分析装置(AQF−100、三菱化学アナリテック社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なうことができる。乾燥した多孔質粒子を燃焼させ、発生した臭素を吸収液(過酸化水素水)に吸収させた。臭化物イオンの定量はイオンクロマトグラフ(ICS−1500、ダイオネクス社製)を用いて行ない、多孔質粒子の乾燥質量1kg当たりの臭化物イオン含有量を算出する。
【0052】
架橋工程に先立つ洗浄工程では、測定されたリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量がそれぞれ2000mmol以下となるように洗浄することが好ましいことは既述の通りである。洗浄方法には特に制限はなく、目的とするリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量低減が達成できる限り、公知の洗浄方法を任意に適用することができる。
洗浄工程としては、例えば、十分な量の水を含む洗浄液により水洗を1回行なってもよく、洗浄液を換えて2回以上行なってもよい。
洗浄工程における水洗の回数、用いる洗浄剤の量、洗浄条件等は、必要とするセルロース多孔質粒子の強度、目的とする不純物含有量の低減量を勘案して適宜決定することができる。
【0053】
架橋工程の後に、既述の洗浄工程をさらに行なって、架橋構造を形成したセルロース多孔質粒子中に残存する架橋剤、溶媒等の不純物を除去することが好ましい。
【0054】
(IV−3)凍結乾燥工程
得られたセルロース多孔質粒子から粒子内に残存する洗浄液、溶媒等の液状成分を除去し、乾燥したセルロース多孔質粒子を得るため、セルロース多孔質粒子を凍結乾燥して凍結乾燥セルロース多孔質粒子を得る凍結乾燥工程をさらに実施してもよい。
凍結乾燥工程は、まず、湿潤状態のセルロース多孔質粒子にエタノール等を接触させ、セルロース多孔質粒子に含まれる水分等をエタノール等で溶媒置換した後、エタノールをさらにt−ブタノールで溶媒置換する処理を行なう溶媒置換工程と、溶媒置換工程後のセルロース多孔質粒子を、−18℃以下にて凍結し、常法により凍結乾燥を行なう凍結乾燥工程を含むことができる。
所望により凍結乾燥工程を行なうことで、水、有機溶剤等の液状成分を含まない乾燥したセルロース多孔質粒子を得ることができる。
後述するように、セルロース多孔質粒子の比表面積、細孔径等を測定する場合には、凍結乾燥したセルロース多孔質粒子を用いることが好ましい。
【0055】
[セルロース多孔質粒子]
本発明のセルロース多孔質粒子は、既述の本発明のセルロース多孔質粒子の製造方法により得られたセルロース多孔質粒子である。
本発明のセルロース多孔質粒子は、均一な球状であり、球状の分散相中に凝固工程を経て再生されたセルロースを含む多孔質粒子から臭化リチウム等が除かれることにより形成された細孔を有し、機械的強度の良好な多孔質粒子となる。
本発明の製造方法により得られたセルロース多孔質粒子は、均一な球状を呈し、内部に細孔を有し、機械的強度が良好であるため、各種の用途に好適に使用しうる。
【0056】
以下に、本発明のセルロース多孔質粒子の好ましい物性を挙げる。
【0057】
[体積平均粒径]
セルロース多孔質粒子の大きさは特に限定されないが、体積平均粒径で1μm以上2000μm以下であることが好ましい。
セルロース多孔質粒子の体積平均粒径は、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。セルロース多孔質粒子の体積平均粒径は500μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、150μm以下が特に好ましい。
セルロース多孔質粒子を、例えば、精製用吸着体の担体として使用する場合においては、体積平均粒径は20μm以上1000μm以下が好ましい。セルロース多孔質粒子の体積平均粒径が20μm以上であることで、セルロース多孔質粒子の圧密化が起こり難いため好ましく、2000μm以下であることで、精製用吸着体の担体に用いた場合の精製目的物の吸着量が大きくなるため好ましい。
【0058】
セルロース多孔質粒子の体積平均粒径は、ランダムに選んだ1000個のセルロース多孔質粒子の粒径を測定して求めることができる。個々の多孔質粒子の粒径は、個々の多孔質粒子の顕微鏡写真を撮影して電子データとして保存し、アメリカ国立衛生研究所製のImageJ等の画像処理ソフトウェアを用いて解析することができる。顕微鏡写真の撮影対象粒子としては、湿潤状態のセルロース多孔質粒子又は凍結乾燥したセルロース多孔質粒子を用いる。
本発明においては、特に断らない限り、水分散された湿潤状態のセルロース多孔質粒子を用いて体積平均粒径を測定する。顕微鏡写真は、セルロース多孔質粒子の水分散物をプレパラート上に付与してカバーガラスで覆ったのち撮影した写真を用いる。
セルロース多孔質粒子の体積平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置やコールターカウンターを用いて測定することもできる。
本明細書においては、セルロース多孔質粒子の粒径は、セルロース多孔質粒子の顕微鏡写真を撮影した電子データを、アメリカ国立衛生研究所製の画像処理ソフトウェア「ImageJ」を用いて解析した値を採用している。
【0059】
[平均細孔径]
本発明のセルロース多孔質粒子の細孔径は、平均細孔径で10nm以上2000nm以下であることが好ましい。セルロース多孔質粒子の細孔径は、20nm以上1000nm以下がより好ましく、50nm以上800nm以下がさらに好ましく、50nm以上600nmが特に好ましい。
得られたセルロース多孔質粒子の細孔径が上記範囲において、例えば、クロマトグラフィーの担体、ろ過材等として使用した場合、試料として適用される物質の拡散が十分に行なわれ、セルロース多孔質粒子が以下に示す如き高い比表面積を有するために、優れた吸着性能が発現される。
【0060】
[比表面積]
セルロース多孔質粒子の比表面積は、140m
2/g以上であることが好ましく、150m
2/g以上であることがより好ましく、160m
2/g以上であることがさらに好ましく、180m
2/g以上であることが特に好ましい。
比表面積の上限には、特に制限はないが、比表面積が大きすぎると粒子内の物質拡散が阻害されることがあり、粒子内の物質拡散阻害を抑制するという観点からは1000m
2/g以下であることが好ましい。
例えば、比表面積が140m
2/g以上である場合には、例えば、クロマトグラフィーの担体に用いた場合等に吸着性能がより向上する。
本発明の製造方法によれば、既述の諸条件を調製することで、任意の粒子径、比表面積を有するセルロース多孔質粒子を調製できることが大きな特徴である。
【0061】
[弾性率]
本発明のセルロース多孔質粒子を、ろ過材等に使用することを考慮すれば、セルロース多孔質粒子は実用上の必要を満たす程度の良好な機械的強度を有することが好ましい。
本発明における「機械的強度」とは、セルロース多孔質粒子が圧力に対して変形し難い強度を有することを意味する。
セルロース多孔質粒子の機械的強度の目安として、弾性率を挙げることができる。本発明のセルロース多孔質粒子の弾性率は8.0MPa以上であることが好ましく、8.5MPa以上であることがより好ましく、9.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0062】
(弾性率の測定方法)
セルロース多孔質粒子の弾性率は、以下の方法で測定することができる。
微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製 微少硬度計 フィッシャースコープ(登録商標)HM2000:商品名)を使用し、200μm角平面圧子を用い、圧縮速度1μm/sにて、セルロース多孔質粒子の水分散物を対象として圧縮試験を行い、セルロース多孔質粒子の5%歪み時の荷重を求める。微小硬度計の測定プレート上に、周縁部に液体を保持するための枠を設けたガラス板を設置し、ガラス板の枠内にセルロース多孔質粒子の水分散物を配置し、水を加えて1mmの深さとなるまで枠内に水を張って、セルロース多孔質粒子が完全に水中に沈んだ状態で測定を行う。微小硬度計を用いた圧縮試験では、測定対象となる1個の粒子の半径を付属の顕微鏡により測定し、平面圧子により1μm/秒で押し込んだ際の、押し込み深さと荷重の関係を測定する。
弾性率の算出にはヘルツの式を使用する。
ヘルツの接触応力は、球面と球面、円柱面と円柱面、任意の曲面と曲面等の弾性接触部分にかかる応力或いは圧力を指す。2つの弾性球の半径をそれぞれR
1、R
2、縦弾性係数、即ち、本明細書における弾性率をE
1、E
2(Pa)、ポアソン比をν
1、ν
2、2つの接触面の接近量をδ(m)とすると、接触力P(N)は以下の式(1)で表される。
【数1】
【0063】
本発明における測定は、セルロース多孔質粒子の球面と平面圧子の平面とが接触する際の測定であり、上記式(1)において平面圧子:E
2=∞、R
2=∞とする。また、セルロース多孔質粒子のポアソン比はν
1=0.5とした。接近量δは粒子が上下ともに圧縮されることを考慮し、押し込み深さ5%の半分の2.5%とした。以上より、5%押し込み時の荷重の測定値をP(N)とし、粒子の半径をR
1(m)に入力することにより、弾性率E
1(MPa)を算出し、本発明におけるセルロース多孔質粒子の弾性率とする。
【0064】
[イオン含有量]
本発明のセルロース多孔質粒子は、残存するリチウムイオン含有量及び臭化物イオン含有量が少ないほど好ましく、イオン含有量の下限値には特に制限はない。
本発明のセルロース多孔質粒子は、残存するリチウムイオン含有量、及び、臭化物イオン含有量が、それぞれ、乾燥粒子1kgあたり100mmol以下であることが好ましく、50mmol以下であることがさらに好ましく、1mmol以下であることが特に好ましい。
リチウムイオン、及び臭化物イオンのうち、少なくともいずれかのイオンが、セルロース多孔質粒子に多く残存すると、例えば、セルロース多孔質粒子を吸着用担体、各種クロマトグラフィー担体等に用いる場合に、分離精製物に、セルロース多孔質粒子中に残存するリチウムイオン、臭化物イオンが混入して、精製物の品質の悪化を招く可能性があるためである。得られた精製物中に不純物としてのイオンが含まれる場合には、イオンの含有量を低減するために精製物の洗浄回数を増やすことが必要となり、製造コストの増大を招くため、セルロース多孔質粒子中のリチウムイオン、及び臭化物イオンの含有量は、既述の如く、いずれも、乾燥したセルロース多孔質粒子1kgあたり100mmol以下の範囲とすることが好ましい。
【0065】
セルロース多孔質粒子におけるリチウムイオン含有量及び臭化物イオン含有量は、乾燥粒子1kg当たり、それぞれ0.0001mmol以上100mmol以下であることが好ましい。
セルロース多孔質粒子の生産性及び一般的な測定装置を用いて測定した場合の検出限界を考慮すると、リチウムイオン含有量及び臭化物イオン含有量は、乾燥粒子1kg当たり、それぞれ0.01mmol以上100mmol以下であってもよく、0.1mmol以上100mmol以下であってもよく、1mmol以上100mmol以下であってもよい。
【0066】
リチウムイオン又は臭化物イオンの含有量の測定には乾燥セルロース多孔質粒子を用いる。乾燥セルロース多孔質粒子は、水湿潤状態のセルロース多孔質粒子をアセトンにより溶媒置換し、40℃にて5時間乾燥することにより作製することができる。
【0067】
残存リチウムイオン含有量の測定は、ICP発光分光分析装置(Optima 7300 DV、パーキンエルマー社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。測定は、乾燥セルロース多孔質粒子を酸(硝酸の70質量%水溶液)で溶解した溶液を得て、得られた溶液中のリチウムイオンを定量することで行なう。
【0068】
残存臭化物イオンの含有量の測定は、燃焼式ハロゲン分析装置(AQF−100、三菱化学アナリテック社製)を使用して、装置の標準的な条件で行なう。乾燥セルロース多孔質粒子を燃焼させ、発生した臭素を吸収液(過酸化水素水)に吸収させ、吸収液中の臭化物イオンの量を測定した。臭化物イオンの定量にはイオンクロマトグラフ(ICS−1500、ダイオネクス社製)を用いる。
【0069】
本発明の新規なセルロース多孔質粒子はイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー用の担体、吸着材、検査薬やバイオリアクター等の担体、光拡散用充填剤、細胞培養用の足場材等として利用可能である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
【0071】
[実施例1]
(セルロース溶液調製工程)
結晶性セルロース粉末〔KCフロックW−300G(商品名)、平均重合度370、日本製紙(株)製〕1.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液50gに加え、110℃にて加熱溶解して、セルロース溶液を調製した。
【0072】
(分散物調製工程)
有機分散媒であるキシレン270mLに、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート〔span80(商品名)、和光純薬工業(株)製〕0.3gを溶解したものを調製して分散媒を調製した。次に、得られた分散媒を125℃に加熱し、125℃に加熱された分散媒に、予め110℃に加温した上記セルロース溶液を加え、回転数400rpmで撹拌した。分散媒の温度を125℃に維持して、10分間撹拌を継続し分散物を得た。
【0073】
(セルロース凝固工程)
得られた分散物を約1時間かけて室温(25℃)まで冷却した(冷却速度:1.7℃/分)。冷却後、分散物の撹拌を、回転数を維持したまま継続し、凝固溶媒であるメタノール250mLを、10分間かけて滴下し、分散物中の分散相を凝固させた。分散相の凝固物を吸引ろ過して分散媒を除去し、つづいて、メタノール100mLで洗浄し、吸引ろ過することで、凝固によりセルロースが再生された多孔質粒子を得た。
【0074】
(洗浄工程)
得られた多孔質粒子をビーカーにとり、蒸留水100mLを加えて30分間撹拌して多孔質粒子を洗浄する水洗処理を行なった。撹拌にはテフロン(登録商標)(テトラフルオロエチレン)製撹拌羽根を用いた。撹拌後に吸引濾過により洗浄水を取り除いた。ここまでの水洗処理を1回とし、同じ水洗処理を2回実施して洗浄工程を終了した。水洗処理した後、残存する溶媒及び塩を除去し、湿潤状態の精製された凝固粒子、即ち、架橋されていないセルロース多孔質粒子を得た。
【0075】
(架橋工程)
洗浄工程後、湿潤状態の多孔質粒子10gに、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、45℃にて10分間加温した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(アルドリッチ社製)10mLを加え、45℃で3時間反応させ、水洗処理された多孔質粒子に含まれるセルロースに架橋構造を形成させた。
その後、架橋構造が形成されたセルロース多孔質粒子を含む反応液を吸引ろ過し、架橋構造が形成されたセルロース多孔質粒子を分取した。得られたセルロース多孔質粒子を蒸留水100mLで2回水洗処理する洗浄工程を実施し、水湿潤状態のセルロース多孔質粒子を得た。
水湿潤状態のセルロース多孔質粒子の水分散物を顕微鏡写真撮影し、既述の方法で体積平均粒径を測定したところ、得られたセルロース多孔質粒子の体積平均粒径は85μmであった。
得られた水湿潤状態のセルロース多孔質粒子をアセトン置換し、40℃5時間加熱することで乾燥させ、乾燥セルロース多孔質粒子を0.6g得た。
【0076】
(架橋後のセルロース多孔質粒子におけるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量)
実施例1で得られた乾燥セルロース多孔質粒子を測定対象として、既述の方法で、乾燥セルロース多孔質粒子に残存するリチウムイオン、臭化物イオンの含有量を測定したところ、リチウムイオンが乾燥粒子1kgあたり0.82mmol、臭化物イオンが乾燥粒子1kgあたり0.90mmolであった。
【0077】
[実施例2]
セルロース溶液調製工程において用いた、60質量%の臭化リチウム水溶液を、55質量%の臭化リチウム水溶液に換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定したセルロース多孔質粒子の体積平均粒径は80μmであった。
【0078】
[実施例3]
セルロース溶液調製工程において用いた、60質量%の臭化リチウム水溶液を、67質量%の臭化リチウム水溶液に換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.6g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は96μmであった。
【0079】
[実施例4]
セルロース溶液調製工程において用いた結晶性セルロース粉末の使用量を1.5gから1.0gに変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.4g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は64μmであった。
【0080】
[実施例5]
セルロース溶液調製工程において用いた結晶性セルロース粉末の使用量を1.5gから3.0gに変えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.7g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は136μmであった。
【0081】
[実施例6]
セルロース溶液調製工程において用いた結晶性セルロース粉末を、〔KC−フロックW−50G(商品名)、平均重合度820、日本製紙(株)製〕に換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.6g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は142μmであった。
【0082】
[実施例7]
凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをテトラヒドロフランに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は82μmであった。
【0083】
[実施例8]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをジクロロベンゼンに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は80μmであった。
【0084】
[実施例9]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをジクロロベンゼンに換え、凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをイソプロパノールに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.6g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は84μmであった。
【0085】
[実施例10]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをオリーブ油に換え、凝固工程における凝固溶媒をアセトンに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は32μmであった。
【0086】
[実施例11]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをトリオクタン酸グリセリルに換え、凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをエタノールに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.6g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は75μmであった。
【0087】
[実施例12]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをシリコーン油に換え、凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをメチルエチルケトンに換えた以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は72μmであった。
【0088】
[実施例13]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをジクロロベンゼンに換えた以外は実施例1と同様にして分散物を調製し、実施例1と同様にして室温(25℃)まで冷却した。その後、吸引ろ過により分散媒の大部分を除去し、凝固溶媒である蒸留水250mLの中に分散相を浸漬し、10分間静かに撹拌した。再び分散相の凝固物を吸引ろ過して水を除去し、分散相の凝固物を得た。
得られた分散相の凝固物をメタノールで洗浄後、蒸留水により洗浄し、残存する溶媒及び塩を除去し、湿潤状態のセルロース多孔質粒子を得た。その後、実施例1と同様にして架橋工程を行い、セルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.8g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は75μmであった。
【0089】
[比較例1]
結晶性セルロース粉末〔KC−フロックW−300G(商品名)、平均重合度370、日本製紙(株)製〕1.5gを60質量%のチオシアン酸カルシウム水溶液50gに加え、100℃にて加熱溶解した。
有機分散媒であるジクロロベンゼン270mLに、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート〔span80、商品名:和光純薬工業(株)製〕0.3gを溶解して分散媒を調製した。次に、得られた分散媒を130℃に加熱し、加熱した分散媒に、予め100℃に加温したセルロース溶媒を加え、回転数400rpmで撹拌して分散物を調製した。分散物の温度を130℃に維持し、10分間撹拌を継続した。
得られた分散物を、冷却速度2℃/分で室温まで冷却した。冷却後、分散物の撹拌を、回転数を400rpmに維持したまま継続し、凝固溶媒であるメタノール250mLを、10分間かけて分散物に滴下し、分散物中の分散相を凝固させた。
分散相の凝固物を吸引ろ過して分散媒を除去し、分散相の凝固物を得た。得られた分散相の凝固物をメタノールで洗浄後、蒸留水により洗浄し、残存する溶媒及び塩を除去し、湿潤状態の多孔質粒子を得た。その後、実施例1と同様の架橋操作を行なった。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.5g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は255μmであった。
【0090】
[比較例2]
二酢酸セルロース〔L−70(商品名)、平均重合度約190、(株)ダイセル製〕 12gを、80mLのジクロロメタンとメタノール20mLとの混合溶媒に溶解し、9質量%濃度の二酢酸セルロース溶液を調製した。
得られた二酢酸セルロース溶液に1−オクタノール〔和光純薬工業(株)製〕を加えて混合溶液を調製した。得られた混合溶液を、丸底フラスコ中に予め投入した約5質量%濃度のゼラチン含有水性媒質400mLに加え、150rpmの撹拌速度で撹拌して懸濁液を調製し、得られた懸濁液を35℃まで加熱し、35℃に温度を維持しつつ撹拌を続けて、懸濁粒子中に含まれるジクロロメタンを蒸発させ、除去した。
得られた懸濁液中の固形分を吸引ろ過し、残存する水性媒質等を分離除去して二酢酸セルロース球状粒子を得た。得られた二酢酸セルロース球状粒子中に含まれるアルコールを含む希釈剤をメタノールで洗浄して除去した。
洗浄後の二酢酸セルロース球状粒子を、メタノール10容量%を含有する2モル/L(リットル)濃度の水酸化ナトリウム水溶液250mL中で、鹸化した。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で10.2g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は480μmであった。
【0091】
[セルロース多孔質粒子の評価]
得られた実施例1〜13、比較例1〜2のセルロース多孔質粒子を以下の基準に従って評価した。結果を下記表1〜表3に示す。
【0092】
1.体積平均粒径の測定
実施例及び比較例において得られた各セルロース多孔質粒子について、それぞれランダムに選んだ1000個のセルロース多孔質粒子の水分散物を用いて、既述の方法で光学顕微鏡写真を撮影して電子データとして保存し、アメリカ国立衛生研究所製のソフトウェアImageJを用いて体積平均粒径を算出した。
【0093】
2.細孔径の測定
2−1.凍結乾燥粒子の作製
実施例及び比較例において得られた水湿潤状態のセルロース多孔質粒子を、50容量%エタノール水溶液、70容量%エタノール水溶液、95容量%エタノール水溶液、及び、100%エタノールにて順次置換処理を行い、さらにエタノールをt−ブタノールに置換したのち、凍結(−18℃以下)し、その後、凍結乾燥することにより細孔測定用の凍結乾燥粒子を得た。
【0094】
2−2.表面細孔形状の撮影
得られた凍結乾燥粒子に、撮影のため、オスミウムによる蒸着処理を実施し、蒸着処理したセルロース多孔質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像(倍率:200倍及び3万倍)を撮影した。
図1は、倍率200倍で撮影した実施例10で得たセルロース多孔質粒子の走査型電子顕微鏡写真であり、
図2は、倍率3万倍で撮影した実施例10で得たセルロース多孔質粒子の走査型電子顕微鏡写真である。走査型電子顕微鏡写真より、得られた凍結乾燥粒子は球形粒子であり、内部に微細な細孔を有することがわかる。
【0095】
2−3.平均細孔径、最大細孔径、及び比表面積の測定
得られた凍結乾燥粒子を使用し、島津製作所製、マイクロメリティックス細孔分布測定装置 オートポア9520形(商品名)を用いた水銀圧入法により、細孔分布解析を実施した。
セルロース多孔質粒子の凍結乾燥粒子試料約0.05gを容量5mLのセルに量りとり、初期圧約5kPaにて測定した。算出されたメジアン径を平均細孔径として採用した。得られた細孔分布において、検出された最も大きい細孔径の値を最大細孔径とした。また、得られた細孔分布より単位質量あたりの表面積を計算し、得られた値をセルロース多孔質粒子の比表面積とした。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
表1〜表3の結果より、本発明の製造方法により得られたセルロース多孔質粒子は、微細な細孔を有し、比表面積が大きいため、クロマトグラフィーの担体、ろ過材等、種々の用途に好適に使用しうることがわかる。
他方、比較例の方法で得たセルロース多孔質粒子は粒径、細孔径とも、実施例に比較して大きく、比表面積は小さいことがわかる。
【0100】
[実施例14]
結晶性セルロース粉末〔KCフロックW−300G(商品名)、平均重合度370、日本製紙(株)製〕1.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液50gに加え、110℃にて加熱溶解して得たセルロース溶液を用いて、溶液調製工程から洗浄工程までは、実施例1と同様にして、湿潤状態の多孔質粒子を得た。
洗浄工程後の多孔質粒子をエタノールで溶媒置換した後、エタノールをさらにt−ブタノールで溶媒置換する処理を行い、その後、−18℃以下にて凍結し、常法により凍結乾燥した乾燥多孔質粒子を得た。既述の方法で、得られた乾燥多孔質粒子に残存するリチウムイオン、臭化物イオンの含有量を測定したところ、リチウムイオンの含有量は、乾燥多孔質粒子1kgあたり40mmolであり、臭化物イオンの含有量は乾燥多孔質粒子1kgあたり46mmolであった。
【0101】
(架橋工程)
洗浄工程後の湿潤状態の多孔質粒子10gに、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、45℃にて10分間加温した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてエピクロロヒドリン(和光純薬社製)10mLを加え、45℃で3時間反応させ、多孔質粒子に架橋構造を形成させた。
その後、架橋構造が形成された凝固粒子を含む反応液を吸引ろ過して、架橋構造が形成された多孔質粒子を分取した。得られた多孔質粒子を蒸留水100mLで2回水洗処理する洗浄工程を実施し、水湿潤状態のセルロース多孔質粒子を得た。
【0102】
得られた水湿潤状態のセルロース多孔質粒子を、乾燥多孔質粒子を得たのと同様にして凍結乾燥し、凍結乾燥したセルロース多孔質粒子を得た。得られた乾燥セルロース多孔質粒子は、乾燥質量で0.6gであった。実施例1と同様にして測定したセルロース多孔質粒子の体積平均粒径は85μmであった。
【0103】
[実施例15〜実施例25]
架橋工程における架橋剤をトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルからエピクロロヒドリンに換えたこと、乾燥セルロース多孔質粒子を得る乾燥方法として、アセトン置換し、40℃5時間加熱することに換えて、実施例14と同様にして凍結乾燥により乾燥させた以外は、実施例2〜実施例12と同様にして、実施例15〜実施例25のセルロース多孔質粒子を得た。
【0104】
[実施例26]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるキシレンをジクロロベンゼンに換えた以外は実施例14と同様にして分散物を調製し、実施例14と同様にして室温(25℃)まで冷却した。その後、吸引ろ過により分散媒の大部分を除去し、凝固溶媒である蒸留水250mLの中に分散相を浸漬し、10分間静かに撹拌することで分散相が凝固した多孔質粒子が形成された。多孔質粒子を含む分散物を吸引ろ過して分散媒を除去し、つづいて分取した多孔質粒子をメタノール100mLで洗浄し、吸引ろ過することで多孔質粒子を得た。
その後、実施例14と同様にして洗浄工程および架橋工程を行い、セルロース多孔質粒子を得た。
セルロース多孔質粒子は、乾燥質量で0.8g得られた。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は75μmであった。
【0105】
[比較例3]
結晶性セルロース粉末〔KCフロックW−300G(商品名)、平均重合度370、日本製紙(株)製〕1.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液50gに加え、110℃にて加熱溶解して得たセルロース溶液を用いて、溶液調製工程から洗浄工程までは、比較例1と同様にして、湿潤状態の多孔質粒子を得た。
多孔質粒子を吸引ろ過して分散媒を除去し、つづいてメタノール100mLで洗浄し、吸引ろ過することで湿潤状態の多孔質粒子を得た。得られた多孔質粒子をビーカーにとり、蒸留水100mLを加えて30分間撹拌して水洗処理する洗浄工程を実施した。撹拌にはテトラフルオロエチレン製撹拌羽根を用いた。撹拌後に吸引濾過により洗浄水を取り除いた。ここまでの水洗処理を1回とし、ここでは水洗処理を2回実施した。残存する溶媒及び塩を除去し、洗浄された湿潤状態の多孔質粒子を得た。
その後、得られた多孔質粒子に対し、実施例14と同様にして架橋工程を行ない、実施例14と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
セルロース多孔質粒子は乾燥質量で0.5g得られた。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は255μmであった。
【0106】
[セルロース多孔質粒子の評価]
得られた実施例14〜26、比較例3のセルロース多孔質粒子に対し、以下の基準に従って弾性率を評価した。また、架橋工程に先立つ洗浄工程後の乾燥多孔質粒子に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を既述の方法により測定した。
また、実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子の体積平均粒径、比表面積、平均細孔径、最大細孔径を測定した。
評価結果を下記表4〜表6に示す。
【0107】
[弾性率]
微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製 微少硬度計 フィッシャースコープ(登録商標)HM2000:商品名)を使用し、200μm角平面圧子を用い、圧縮速度1μm/sにて、得られたセルロース多孔質粒子の弾性率を測定した。弾性率は、既述の「弾性率の測定方法」に従って測定した。
微小硬度計を使用した弾性率の測定を、セルロース多孔質粒子の水分散物を換えて、異なる試料に対して10回の試験を行ない、得られた弾性率を算術平均した値を本明細書におけるセルロース多孔質粒子の弾性率として採用した。
結果を下記表4〜表6に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
表4〜表6の結果より、本発明の製造方法により得られた実施例14〜実施例26のセルロース多孔質粒子は、微細な細孔を有し、比表面積が大きく、最大細孔径が小さいことがわかる。また、弾性率が8MPa以上であり、機械的強度も良好であるため、クロマトグラフィーの担体、ろ過材等、種々の用途に好適に使用しうることがわかる。
他方、セルロース溶液の調製にチオシアン酸カルシウムを用いた比較例3の方法で得たセルロース多孔質粒子は、架橋構造を形成していても、機械的強度が十分ではなく、細孔径が実施例に比較して大きく、比表面積は小さいことがわかる。
また、セルロース多孔質粒子の機械的強度に関しては、実施例14に対し、セルロース使用量の多い実施例18、重合度がより高いセルロースを用いた実施例19、分散媒にオリーブ油を用いた実施例23がより良好であることがわかる。
【0112】
[実施例27]
(セルロース溶液調製工程)
結晶性セルロース粉末〔セオラス(登録商標)PH−101、平均重合度220、旭化成ケミカルズ社製〕2.5gを60質量%の臭化リチウム水溶液50gに加え、110℃にて加熱溶解して、セルロース溶液を調製した。
【0113】
(分散物調製工程)
分散媒として、有機分散媒であるジクロロベンゼン270mLに、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート〔span80:商品名、和光純薬工業(株)製〕0.3gを溶解して分散媒を調製した。次に、得られた分散媒を125℃に加熱し、125℃に加熱された分散媒に、予め110℃に加温した上記セルロース溶液媒を加え、回転数400rpmで撹拌した。分散媒の温度を125℃に維持して、10分間撹拌を継続維持し分散物を得た。
【0114】
(セルロース凝固工程)
得られた分散物を、約1時間かけて室温(25℃)まで冷却した(冷却速度:1.7℃/分)。冷却後、分散物の撹拌を、回転数を400rpmに維持したまま継続し、凝固溶媒であるメタノール250mLを、10分間かけて滴下し、分散物中の分散相を凝固させた。
分散相の凝固物を含む分散物を吸引ろ過して分散媒を除去し、つづいてメタノール100mLで洗浄し、吸引ろ過することで湿潤状態の多孔質粒子を得た。
【0115】
(洗浄工程)
得られた湿潤状態の多孔質粒子をビーカーにとり、蒸留水100mLを加えて30分間撹拌して水洗処理する洗浄工程を行なった。撹拌にはテトラフルオロエチレン製撹拌羽根を用いた。撹拌後に吸引濾過により洗浄水を取り除いた。ここまでの水洗処理を1回とし、ここでは水洗処理を2回実施した。残存する溶媒及び塩を除去し、湿潤状態のセルロースを含む凝固粒子を得た。
(架橋工程)
湿潤状態の多孔質粒子10gに、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、45℃にて10分間加温した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を20mg、架橋剤としてエピクロロヒドリン(和光純薬社製)10mLを加え、45℃で3時間反応させ、多孔質粒子に架橋構造を形成させたセルロース多孔質粒子を得た。
【0116】
その後、架橋構造が形成されたセルロース多孔質粒子を含む反応液を吸引ろ過して、架橋構造が形成されたセルロース多孔質粒子を分取した。得られたセルロース多孔質粒子を蒸留水100mLで2回洗浄し、水湿潤状態のセルロース多孔質粒子を得た。湿潤状態のセルロース粒子を既述の方法により凍結乾燥を施し、凍結乾燥粒子を作製したところ、乾燥質量で1.1gであった。得られたセルロース多孔質粒子の体積平均粒径を実施例1と同様にして測定したところ、186μmであった。
【0117】
[実施例28]
分散物調製工程において用いた有機分散媒であるジクロロベンゼンを流動パラフィンに換え、凝固工程における凝固溶媒であるメタノールをテトラヒドロフランに換えたこと以外は実施例27と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.2g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は78μmであった。
【0118】
[実施例29]
架橋工程を実施しないこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.1g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は86μmであった。
【0119】
[実施例30]
架橋工程を2回繰り返し実施したこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.3g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は80μmであった。
【0120】
[実施例31]
セルロース溶液調製工程において用いた結晶性セルロース粉末の使用量を2.5gから1.5gに変えた以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で0.7g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は46μmであった。
【0121】
[実施例32]
セルロース溶液調製工程において用いた結晶性セルロース粉末の使用量を2.5gから3.5gに変えた以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.8g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は94μmであった。
【0122】
[実施例33]
分散物調製工程において用いた有機分散媒である流動パラフィンをオリーブ油に換え、凝固工程における凝固溶媒であるテトラヒドロフランをアセトンに換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.3g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は95μmであった。
【0123】
[実施例34]
分散物調製工程において用いた有機分散媒である流動パラフィンをごま油に換え、凝固工程における凝固溶媒であるテトラヒドロフランをアセトンに換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.2g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は126μmであった。
【0124】
[実施例35]
分散物調製工程において用いた有機分散媒である流動パラフィンを菜種油に換え、凝固工程における凝固溶媒であるテトラヒドロフランをアセトンに換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.1g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は142μmであった。
【0125】
[実施例36]
洗浄工程において、水洗処理の回数を2回から5回に換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.3g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は74μmであった。
【0126】
[実施例37]
洗浄工程において、水洗処理の回数を2回から1回に換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.1g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は82μmであった。
【0127】
[実施例38]
洗浄工程において、水洗処理の回数を2回から1回に換え、さらに1回の水洗処理に使用する蒸留水の量を100mLから50mLに換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.0g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は84μmであった。
【0128】
[実施例39]
洗浄工程において、水洗処理の回数を2回から1回に換え、さらに1回の洗浄処理に使用する蒸留水の量を100mLから10mLに換えたこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.3g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は85μmであった。
【0129】
[実施例40]
洗浄工程を架橋工程の前には実施せず、架橋工程終了後に実施したこと以外は実施例28と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.2g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は89μmであった。
【0130】
[実施例41]
洗浄工程を架橋工程の前には実施せず、架橋工程終了後に実施したこと以外は実施例27と同様にしてセルロース多孔質粒子を得た。
その結果、セルロース多孔質粒子を乾燥質量で1.1g得た。実施例1と同様にして測定した体積平均粒径は184μmであった。
【0131】
[セルロース多孔質粒子の評価]
得られた実施例27〜実施例41のセルロース多孔質粒子に対し、実施例14と同様にして、弾性率、架橋工程に先立つ洗浄工程後の乾燥多孔質粒子に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を測定した。
また、実施例1と同様にしてセルロース多孔質粒子の体積平均粒径、比表面積、平均細孔径、最大細孔径を測定した。
評価結果を下記表7〜表9に示す。
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
【表9】
【0135】
表7〜表9の結果より、本発明の製造方法により得られた実施例27〜実施例41のセルロース多孔質粒子は、微細な細孔を有し、比表面積が大きく、最大細孔径が小さいことがわかる。得られたセルロース多孔質粒子の弾性率はいずれも8MPa以上であり、機械的強度も良好であるため、クロマトグラフィーの担体、ろ過材等、種々の用途に好適に使用しうることがわかる。
また、セルロース多孔質粒子の機械的強度に関しては、実施例28と実施例36〜実施例39との対比より、洗浄工程において水洗処理を十分に実施し、架橋工程前の多孔質粒子に含まれるリチウムイオン及び臭化物イオンの含有量を低減させることで、得られたセルロース多孔質粒子の機械的強度をより高めることができることが確認された。実施例28と実施例30との対比により、架橋工程を2回行なうことによっても機械的強度がより高まることがわかる。
洗浄工程については、実施例27と実施例41、及び実施例28と実施例40の対比より、洗浄工程を架橋工程の前に実施することが、洗浄工程を架橋工程の後に実施するよりもセルロース多孔質粒子の機械的強度をより高めるという観点からはより有効であることがわかる。